JPH10202410A - トレパニングカッター - Google Patents

Abstract

(57)【要約】 【課題】 有底の穴内に円筒ボスを形成する被削材の切
削加工を１行程で行うことを可能としたトレパニングカ
ッターを得ることにより、切削加工時間を大幅に減少す
るとともに、円筒ボスと穴の内壁との間に形成される溝
の大きさに左右されることなく、あらゆるサイズの有底
穴及び円筒ボスの加工に適用を可能とする。 【解決手段】 内径穴を有して筒状に形成され、先端部
に切刃を有するトレパニングカッターにおいて、上記先
端部の端面に、カッターの軸心に略直角な端面切刃を設
け、上記先端部の外周端部及び内周端部に夫々外径周端
部切刃及び内径周端部切刃を設け、有底穴内に円筒ボス
を有する被削物の切削加工を同時に１行程で施行可能と
なる。

Description

【発明の詳細な説明】

【０００１】

【発明の属する技術分野】本発明は、有底穴内に円筒ボ
スを削り出し加工する際等に使用して好適なトレパニン
グカッターに関する。

【０００２】

【従来の技術】図５〜図８には、航空機用エンジン部品
の加工に使用されるトレパニングカッターの従来の１例
が示されている。

【０００３】図５〜図６に示されるトレパニングカッタ
ー２０は、内径穴１１を有する先端部が筒状に形成され
ている。そして、同カッター２０の先端面には軸心３０
に対して直角な端面切刃５及び外周の先端部には外径周
端部切刃６が夫々設けられ、また外周には、同外径周端
部切刃６の部位から一定角度で縮径されるような外径逃
がし８が設けられている。

【０００４】かかるカッター２０は、図５に示されるよ
うに、板金部品等の被削材２に穴２ａを穿ける穴あけ加
工等被削材２の内径を加工する際に使用される。

【０００５】図７〜図８に示されるトレパニングカッタ
ー２０は、先端面に図５〜図６に示されるものと同様な
端面切刃５を設けるとともに、内径穴１１の先端部に内
径周端部切刃４を設け、さらに内径周端部切刃４から内
径穴１１を拡径するように一定勾配の内径逃がし７を設
けている。かかるカッター２０は、図７に示されるよう
に、被削材２の上面にボス３を削り出しによって形成す
る場合等、被削材２の外径を加工する際に使用される。

【０００６】

【発明が解決しようとする課題】航空機用エンジン部品
等においては、図４に示されるように、被削材２の上面
に一定深さの穴２ａを穿け、この有底穴２ａ内に円筒ボ
ス３を削り出し加工にて形成する部品（被削材）が多々
ある。

【０００７】かかる被削材２の加工を行うには、穴２ａ
の内径、円筒ボス３の外径及び上記穴２ａの底面の３面
を同時に加工することが要求される。

【０００８】然るに、図５〜図６に示される従来のトレ
パニングカッター２０は端面（端面切刃５）及び外周端
部（外径周端部切刃６）に切刃を有するのみであり、ま
た図７〜図８に示される従来のトレパニングカッター２
０は端面（端面切刃５）及び内径端部（内径周端部切
刃）に切刃を有するのみであるので、上記のような３面
の同時加工は不可能であり、図４に示されるような被削
材２の加工成形には使用できない。

【０００９】このため、図４に示されるような、被削材
２に、穴２ａ内に円筒ボス３をり立設するような加工を
施こす際には、通常はエンドミルカッターによるコンタ
リング加工によっている。しかしながら、かかるエンド
ミルカッターによる加工は、次のような問題点がある。

【００１０】（１） 円筒ボス３を残しながら環状の穴
２ａを穿けていくため、多大な加工時間を要する。

【００１１】（２） 円筒ボス３の外周と穴２ａの内周
との間の溝の幅が狭い場合には、エンドミルカッターの
径も小径となるため、カッターが切損し易くなり、また
加工精度も低下する。

【００１２】従って本発明の第１の目的は、有底の穴内
に円筒ボスを形成する被削材の切削加工を１段の加工工
程で行うことを可能としたトレパニングカッターを得る
ことにより、切削加工時間を大幅に減少することであ
る。また第２の目的は、円筒ボスと穴の内壁との間に形
成される溝の大きさに左右されることなく、あらゆるサ
イズの有底穴及び円筒ボスの加工に適用可能とするトレ
パニングカッターを得ることである。

【００１３】

【課題を解決するための手段】本発明は上記課題を解決
するものでその要旨とする第１の手段は、内径穴を有し
て筒状に形成され、先端部に切刃を有するトレパニング
カッターにおいて、上記先端部の端面に、カッターの軸
心に略直角な端面切刃を設け、上記先端部の外周端部及
び内周端部に夫々外径周端部切刃及び内径周端部切刃を
設けたことにある。

【００１４】上記第１の手段によれば、トレパニングカ
ッターを所定の回転速度で回転させ、下方に送りながら
被削材に切り込み、所定の送り速度で送ることによっ
て、外径周端部切刃が穴の内周面を切削し、内径周端部
切刃が円筒ボスの外周面を削り出し、端面切刃が穴と円
筒ボスとの間の溝を形成するという、３通りの切削加工
を同時に行うことができる。これにより、有底の穴内に
円筒ボスを形成する切削加工を１段の加工工程で同時に
行なうことができる。

【００１５】また、トレパニングカッターによる加工で
あるので、従来のエンドミルによる加工に較べ高い加工
精度が得られる。

【００１６】また本発明の第２の手段は、上記第１の手
段において、外周に、上記外径周端部切刃から所定勾配
にて縮径された外径逃がしを設けるとともに、上記内径
穴に、上記内径周端部切刃から所定勾配にて拡径された
内径逃がしを設けたことにある。

【００１７】上記第２の手段によれば、上記のような有
底の穴内に円筒ボスを切削加工する際において、外径逃
がし及び内径逃がしが設けられているのでカッターを小
さな抵抗で被削材中を送ることができ切削効率が向上す
る。また、上記逃がしの形成により、切り粉の排出もよ
りスムーズに行われる。

【００１８】

【発明の実施の形態】以下図１〜図３及び図４を参照し
て本発明の実施形態につき詳細に説明する。図１は本発
明の実施形態に係るトレパニングカッターの先端部側面
図、図２は図１のＺ矢視図、図３はカッター先端逃がし
部の詳細図、図４は上記トレパニングカッターによる被
削材の加工状況説明図である。

【００１９】図１〜図３において、１はトレパニングカ
ッターであり、従来のものと同様、先端部が所定深さの
内径穴１１を有する筒状に形成されている。５は上記カ
ッター１の先端面に軸心３０に直角に設けられた端面切
刃、４は上記内径穴１１の先端つまり内周端部に設けら
れた内径周端部切刃、６は外周の先端部つまり外径周端
部に設けられた外径周端部切刃である。

【００２０】そして上記トレパニングカッター１の外周
部には、外径周端部６から微小な勾配で以って外径を縮
径するように外径逃がし８が形成され、また内径部に
は、内径周端部切刃４から微小な勾配で以って内径穴１
１を拡径するように内径逃がし７が形成されている。９
は先端面から切り込まれてなるチップポケットである。

【００２１】かかる構成を備えたトレパニングカッター
１を使用して、被削材２に、図４に示すような有底の穴
２ａ内に円筒ボス３が立設される形状の切削加工を施こ
す際には、トレパニングカッター１を所定の切削速度が
得られるように回転させながら、図４の矢印のように被
削材２の上面から切り込み、下方に送って切削を行う。

【００２２】かかる加工の際において、上記トレパニン
グカッター１は、端面切刃５の内周側に内径周端部切刃
４が、また外周側に外径周端部切刃６が夫々設けられて
いるので、外径周端部切刃６が穴２ａの内周面を切削
し、内径周端部切刃４が円筒ボス３の外周面を削り出
し、端面切刃５が上記穴２ａと円筒ボス３との間の環状
空間（溝）を形成するという３通りの切削加工が同時に
行なわれる。

【００２３】また、上記切削加工時において、トレパニ
ングカッター１には外径逃がし８及び内径逃がし７が設
けられているので、カッター１が最小の抵抗で以ってス
ムーズに被削材２の内部に切り込まれて行き、切削速度
を上げることができる。また、切り粉の排出はチップポ
ケット９を介して行われるが、双方の逃がし７，８の形
成により、切り粉の排出が、よりスムーズに行われる。

【００２４】尚、上記トレパニングカッターは、被削材
２の穴２ａの径及び円筒ボス３の径毎に別種類のものを
用意するが、円筒ボスの高さについては、１種類のカッ
ターで任意の高さの円筒ボスの加工が可能である。

【００２５】

【実施例】上記実施形態に係るトレパニングカッター１
を使用して、航空機のエンジン部品の切削加工を行った
実施結果を次の表に示す。

【００２６】 カッター１の要目： カッターの外径 10.0±0.1mm 内径穴１１の径 4.75±0.03mm 外径逃がし８の逃げ角 ２°〜３° 内径逃がし７の逃げ角 ０°３０′〜１° カッターの材質 ＩＳＯ Ｋ１０ 加工条件： 被削材２の材質 ＳＵＳ ３４７ 加工形状 円筒ボス３の外径4.75±0.05mm, 高さ10mm カッター１の回転速度 １４００rpm 送り ２０mm／min 但し、０．５mm／リピートのリピートサイクルにて加工

【００２７】

【発明の効果】本発明は以上のように構成されており、
請求項１の発明によれば、有底の穴内に円筒ボスを削り
出しにて形成する被削材の加工において、トレパニング
カッターの外径周端部切刃で穴の内周面を削り内径周端
部切刃で円筒ボスの外周面を削り出し、端面切刃で穴と
円筒ボスとの間の溝を形成するという３通りの切削を同
時に行なうことができる。これにより、トレパニングカ
ッターを使用した１段の加工工程で上記有底穴内円筒ボ
スを形成する被削材の加工を行なうことができ、従来の
エンドミルによる加工に較べ加工時間が大幅に低減され
るとともに加工精度も向上する。

【００２８】また、上記溝の幅が小さい被削材でも容易
に加工が可能であり、如何なるサイズの穴及び円筒ボス
についても、カッターの切損の等の不具合を伴なうこと
なく加工が可能となる。

【００２９】さらに請求項２のように構成すれば、外径
逃がし及び内径逃がしの形成により、カッターの切削抵
抗が少なくなり、切削速度の増大が可能となって切削効
率が向上するとともに、切り粉の排出もスムーズ化にも
寄与する。

【図面の簡単な説明】

【図１】本発明の実施形態に係るトレパニングカッター
の先端部側面図。

【図２】図１のＺ矢視図。

【図３】上記実施形態におけるカッター先端逃がし部の
詳細図。

【図４】トレパニングカッターによる加工状況の説明
図。

【図５】従来のトレパニングカッターの第１例を示す要
部外観図。

【図６】図５のＡ部詳細図。

【図７】従来のトレパニングカッターの第２例を示す要
部外観図。

【図８】図７のＢ部詳細図。

【符号の説明】

１ トレパニングカッター ２ 被削材 ２ａ 穴 ３ 円筒ボス ４ 内径周端部切刃 ５ 端面切刃 ６ 外径周端部切刃 ７ 内径逃がし ８ 外径逃がし １１ 内径穴 １２ 外周

───────────────────────────────────────────────────── フロントページの続き (72)発明者 加藤 邦男 愛知県小牧市大字東田中1200番地 三菱重 工業株式会社名古屋誘導推進システム製作 所内 (72)発明者 吉田 信夫 京都市南区吉祥院九条町18 株式会社吉田 製作所内

Claims (2)

【特許請求の範囲】
1. 【請求項１】 内径穴を有して筒状に形成され、先端部
   に切刃を有するトレパニングカッターであって、上部先
   端部の端面に、カッターの軸心に略直角な端面切刃を設
   け、上記先端部の外周端部及び内周端部に夫々外径周端
   部切刃及び内径周端部切刃を設けたことを特徴とするト
   レパニングカッター。
2. 【請求項２】 外周に、上記外径周端部切刃から所定勾
   配にて縮径された外径逃がしを設けるとともに、上記内
   径穴に、上記内径周端部切刃から所定勾配にて拡径され
   た内径逃がしを設けてなる請求項１に記載のトレパニン
   グカッター。