したがって、本発明の目的は、1度の動作だけで、被加工物の荒削りおよび仕上げを行うための改善された正面フライス工具を提供し、これにより、仕上げ表面のばり、擦り傷、または剥離をできるかぎり残さないことによって、改善された表面仕上げを実現することである。特に、目的は、先行技術に比べて必要な機械加工時間を短縮するように適合された、そのような改善された正面フライス工具を提供することである。これらの目的は、独立請求項1に定義されるフライス工具によって達成される。好ましい実施形態は、従属請求項に定義される。
本発明の一態様によれば、被加工物の正面フライス加工用のフライス工具が提供される。フライス工具は、工具本体であって、軸方向を定義する中心回転軸を有し、軸方向の広がりAに沿って延在する包囲表面、および径方向の広がりRに沿って延在する前表面を有する工具本体と、被加工物の径方向および軸方向の機械加工を行うための、工具本体の周囲に沿って連続的に配置された複数の切削部材とを備える。切削部材のそれぞれは、すくい面、逃げ表面、および荒削り動作用の主切削刃を備え、主切削刃は、すくい面と逃げ表面との間に形成され、工具本体の包囲表面の周囲で軸方向に沿って延在し、前記切削部材の少なくともサブセットであって、少なくとも2つの切削部材を備える前記サブセットが、仕上げ動作用の複数の副切削刃を備え、複数の副切削刃は、工具本体の前表面の周囲ですくい面と逃げ表面の間に形成される。複数の副切削刃は、少なくとも第1の副切削刃、第2の副切削刃、および第3の副切削刃を備える。第1および第3の副切削刃は、軸方向Aに垂直な方向に延在し、第2の副切削刃は、第1と第3の副切削刃の間(すなわち、第1と第3の副切削刃のそれぞれの端点間)に延在し、切削部材の主切削刃は、工具本体の包囲表面の周囲に沿って同じ径方向位置にあり、第1の副切削刃は、同じ軸方向位置にあり、前記第1の副切削刃は、角切削刃を介して前記主切削刃につながっており、それにより前記角切削刃上の軸方向位置が、フライス工具の切削の総深さのうち、それぞれ主切削刃および副切削刃によって機械加工される材料の相対量を決定付け、第2の副切削刃の第1の端点が、径方向内向きに連続的に推移し、第2の副切削刃の第2の端点が、工具本体の前表面の周囲に沿って、径方向内向きかつ軸方向外向きに連続的に推移し、それにより、後に続く切削インサートの第2の副切削刃が、工具本体の前表面の周囲に沿って前にある切削部材の第2の副切削刃よりも、長さが長くなり、工具本体の中心回転軸の近くにくる。
第1の態様によれば、フライス工具は、上に述べた目的に対して、主切削刃といくつかの副切削刃を同じ切削部材上で組み合わせることができるようにする切削部材の設計により、所望の特性を達成することができるという認識から導かれる解決策を提供する。主切削刃は、すべての切削部材について同じ直径で位置付けられ、すべての切削部材について同じ軸方向位置で終わるが、仕上げ動作用の副切削刃は、副切削刃の少なくともいくつかによる径方向および軸方向への所定の推移があることによって、サブセットに含まれる少なくとも2つの切削部材間で異なる。したがって、切削部材は、副切削刃に関して異なる形状を有する。副切削刃の推移は、対象となる特定の用途に合わせて適合されてもよく、さらに、手元のフライス加工動作において用いられる切削深さ、送り速度、および切削スピードに応じて異なる。推移という用語は、副切削刃および/または副切削刃上の点が、後に続く切削部材間で段階的に変わることとして理解されるべきであり、それにより、たとえば、後に続く切削インサートの副切削刃上の点が、工具本体の前表面の周囲に沿って前にある切削部材の対応する点および/または副切削刃よりも、工具本体の前表面から軸方向に遠く、かつ/またはフライス工具の回転軸に径方向に近くなるよう位置付けられる。
したがって、主切削刃は、予めの荒削りが全くない状態で直接荒削り動作を実行するために、同じ直径に位置付けられ、副切削刃は、滑らかな仕上げ表面を提供するために、径方向および軸方向に段階的なやり方で徐々に延びて、仕上げ動作を行う。したがって、切削刃によって残されたばりは、副切削刃が推移することによって徐々に抑えられる。これにより、先行技術に比べて改善された表面仕上げが達成される。さらに、段階的な副切削刃の推移を有する設計により、たとえば多数の切削部材を提供することができるので、非常に高速な送りフライス加工が可能になり、これにより、完全な荒削りおよび仕上げの動作に対して1つの複合型工具を使用することにより時間の短縮が実現されることに加えて、1つのフライス加工動作自体に必要な時間が有利なことにさらに短縮されることも実現される。
一実施形態では、サブセットに含まれる切削部材の数は、工具本体の周囲に沿って配置された切削部材の総数に等しい。しかし、サブセットに含まれる切削部材の数、すなわち、前に述べたように、副切削刃を実際に備える切削部材の数は、2つから切削部材の総数までの任意の数であってもよい。
いくつか実施形態では、主切削刃は、切削部材が工具本体に配置されたとき、主切削刃の切込み角が90°になるように、工具本体の包囲表面の周囲において軸方向に沿って延在する。こうした実施形態は、機械加工される部分の近くに工具を寄せることができ、さらに、切削部材の強度および耐性を効率的に管理することができるので、有利であり得る。しかし、本発明の正面フライス工具では、軸方向に沿って延在する主切削刃は、切削部材が工具本体に配置されたとき、主切削刃の切込み角が<90°になるように、工具本体の包囲表面の周囲における主切削刃上の径方向の広がりも含むと解釈されるべきである。
開示するフライス加工工具は、任意のタイプの正面フライス加工にさらに好適であり、フライス工具のいくつかの実施形態は、ショルダフライス加工を実行するのに特に好適であってもよい。さらに、いくつかの実施形態は、アルミニウム被加工物の正面フライス加工および/またはショルダフライス加工、特に、自動車業界内および航空業界内のアルミニウム部品の正面フライス加工およびショルダフライス加工に適合されてもよい。
フライス工具は、任意の回転方向を提供するように、すなわちそうした方向で使用されるように、適合されてもよい。言い換えれば、フライス工具は、右手用カッターであっても左手用カッターであってもよい。
いくつかの実施形態では、フライス工具は、工具に回転運動を提供するスピンドルにフライス工具を取り付けるための好適な固定手段を備えてもよく、こうした手段は、たとえば切削部材が配置される端部に比べてフライス工具の反対側の端部に配置されてもよい。こうした手段の例は、工具とスピンドルの対応する構造部との間で形状嵌めを提供するための手段、すなわち、スピンドルに配置された対応する固定手段と嵌合するまたは協働するように適合された手段を含む。
正面フライス工具の工具本体には、好ましくは、工具本体の座部にろう付けされた切削インサートの形態の、固定取り付けされた/半永久的に取り付けられた切削部材が設けられてもよい。製造公差と、交換可能なインサートを正しい順序で装着することとの両方を保証することを考慮して、十分な管理がなされる場合には、代替的に、工具本体に交換可能なインサートが設けられてもよい。いくつかの実施形態では、特に小さい直径を有する正面フライス工具では、正面フライス工具は、工具本体と切削部材が一体に形成された中実の超硬合金工具として有利に形成されてもよい。
一実施形態によれば、第1の副切削刃は、角面取り切削刃を介して前記主切削刃につながっており、すなわち、角切削刃は、前記主切削刃と前記第1の副切削刃の間に延在し面取りを形成する。角面取り切削刃は、たとえば工具にかかる負荷が制限されるので有利である。さらに、面取り刃は、切りくずを短くすることができるので、半径部に比べて切りくずの制御をしやすくすることができる。
これは、仕上げする段階的な領域のサイズ、すなわち、段階的な副切削刃によって取り除くことになる残りの材料の量が、主切削刃と第1の副切削刃の間に形成されたこの角の軸方向位置によって管理されることから、有利である。言い換えれば、主刃と第1の副刃との間の角の軸方向位置は、最大切削深さのうち、それぞれ仕上げ動作用の副切削刃、および荒削り用の主切削刃によって機械加工される材料の相対量を決定付ける。したがって、フライス工具上で角がより軸方向後ろにあるフライス工具を設計すると、仕上げ刃のための材料が多くなり、荒削り刃のための材料が少なくなる。副切削刃のために残される材料が多くなるほど、より多くの切削が必要になり、同時に係合する副切削刃が多くなることにより、「ハンマリング」としても知られている現象である振動を著しく低減することができる。
したがって、上に述べた切削部材の有利な機能性は、組み合わされた荒削り動作と仕上げ動作を可能にする本発明の設計によりもたらされるものであり、この設計は、この角を再位置決めすることによって、主切削刃(すなわち荒削り動作)から副切削刃(すなわち仕上げ動作)に、取り除くべき残りの材料を「移す」または再分配することを可能にする。
いくつかの実施形態では、第1の副切削刃は、半径部のある角切削刃、すなわち丸い角刃を介して、主切削刃につながっていてもよい。当業者であれば、第1の副切削刃と主切削刃の間のつながりの任意の他のタイプの設計が本願の範囲内で想定されることを、さらに認識する。
いずれの事例でも、主切削刃および副切削刃によってもたらされる総切削深さの部分は、この角刃の軸方向位置、言い換えれば、主切削刃の長さによって決定される。
切削部材の全体的な配向に関して、いくつかの実施形態では、切削部材は、主切削刃とフライス工具の回転軸との間に定義される径方向に対して、ある角度で配置されてもよい。たとえば、第3の副切削刃が、たとえば第3の副切削刃の外側の端点からフライス工具の中心まで定義された径方向に対して、ある角度を形成する(すなわちその角度で延在する)ように、配置される。いくつかの実施形態では、こうした角度は、径方向に対して−10°〜+10°の範囲に属してもよい。提供される利点は、より滑らかな切削動作を含む。
さらに、いくつかの実施形態では、主切削刃が軸方向に平行な平面にあるが軸方向に対してある角度で延在するように、切削部材が配置される。いくつかの実施形態では、こうした軸方向すくい角γは、−10°〜+10°の範囲に属してもよく、さらに好ましくは、滑らかな切削作用を提供するように正の軸方向すくい角である。
一実施形態によれば、前記第2の副切削刃の第1の端点は、後に続く切削部材間で、第1の径方向距離r1だけ径方向内向きに連続的に推移し、前記第2の副切削刃の前記第2の端点は、後に続く切削部材間で、第2の径方向距離r2だけ径方向内向きに連続的に推移し、それにより、それぞれの第2の副切削刃が、中心回転軸に対して鋭角で傾斜することにより軸方向外向きかつ径方向内向きに延在し、好ましくは、すべての第2の副切削刃において鋭角の傾斜角度が同じになるように延在する。こうした角度は、切りくずの厚さを低減することができ、それによりより滑らかな切削効果が得られるので、特に有利である。しかし、軸方向にのみ延在する第2の副切削刃を有する実施形態は、本願の範囲内にあると考えられる。
いくつかの実施形態では、前記第1の径方向距離r1および前記第2の径方向距離r2のうちの少なくとも1つは、0.1〜0.50の範囲にあり、いくつかの実施形態では、r1およびr2のうちの少なくとも1つは、0.15〜0.20mmの範囲にある。
さらに、いくつかの実施形態では、r1および/またはr2の値は、切削部材間で、用途に応じて選択されたある値に固定されてもよく、それにより、考えられる1回転あたりの送り量が、歯の数に依存し、すなわち、1回転あたりの送り量が、1歯あたりの送り量と切削部材の数の積によって定義される。
いくつかの実施形態では、第2の副切削刃の第2の端点は、後に続く切削部材間で軸方向距離a2だけ軸方向外向きに連続的に推移する。
上で述べたことと同様に、いくつかの実施形態では、軸方向距離a2の値は、たとえば(用途に応じて選択された)ある値に固定されてもよく、それにより、考えられる1回転あたりの送り量が、歯の数に依存し、すなわち、1回転あたりの送り量が、1歯あたりの送り量と切削部材の数の積によって定義される。
いくつかの実施形態では、フライス工具はn個の切削部材を備えてもよく、第2の副切削刃の第2の端点が、後に続く切削部材1−(n−1)間で軸方向距離a2だけ軸方向外向きに連続的に推移し、第2の副切削刃の第2の端点が、後に続く切削部材(n−1)とnとの間で別の軸方向距離a3だけ軸方向外向きに連続的に推移し、a3≠a2である。
たとえば用途に応じて、a2とa3の関係が、a3>a2またはa3<a2のうちのいずれか1つとして説明され得る実施形態が考えられる。特に、関係a3<a2を示す実施形態に関し、こうした最後の切削部材はワイパー効果を有し、所望の表面品質を保証するものとして説明されてもよい。さらに、こうした設計は、たとえば最小の切りくず厚さを効果的に制御できることから、有利であってもよい。
いくつかの実施形態では、第1の径方向距離r1は、第2の径方向距離r2に等しく、他の実施形態では、r1はr2とは異ってもよい。したがって、鋭角は、それぞれの第2の副切削刃のr1とr2の関係、および軸方向の広がり、または推移によって決まる。
いくつかの実施形態では、第2の副切削刃の第1の端点の径方向内向きの推移、副切削刃の第2の端点の径方向内向きの推移、および軸方向外向きの推移のうちの少なくとも1つは、工具本体の周囲に沿ったすべての切削部材間で均一である。他の実施形態では、第2の副切削刃の第1の端点の径方向内向きの推移、副切削刃の第2の端点の径方向内向きの推移、および軸方向外向きの推移のうちの少なくとも1つは、工具本体の周囲に沿った異なる切削部材間、たとえば異なる切削部材の隣接する対同士の間で異ってもよい。たとえば、n個の切削部材を備える切削工具については、以下の関係、すなわちr1n≠r1(n+1)、r2n≠r2(n+1)、およびa2n≠a2(n+1)のうちの少なくとも1つが当てはまってもよい。
一実施形態によれば、主切削刃の切削深さは、0.1〜4mmの範囲内、好ましくは少なくとも1〜4mmの範囲内にある。一実施形態によれば、主切削刃と副切削刃を含むフライス工具の総切削深さは、0.2〜5mmの範囲内にある。したがって、総切削深さは、主切削刃と、副切削刃の軸方向の最大広がりとの切削深さとして定義される。言い換えれば、副切削刃の軸方向の広がりは、周囲に沿った最後の切削部材、すなわち、すべての切削部材にわたる軸方向の総推移を含む。したがって、上で説明したように、主刃と第1の副刃との間の角の軸方向位置は、仕上げ動作用の副切削刃、および荒削り用の主切削刃によってそれぞれ機械加工される材料の相対量、すなわち、総切削深さに関する主切削刃の切削深を決定付ける。
一実施形態によれば、切削部材は、工具本体にろう付けされた、好ましくはPCD材料で形成された主切削刃および副切削刃を有する切削インサートによって形成される。PCD材料は、アルミニウム部品の機械加工に特に有利であってもよい。他の例は、CBN材料または超硬合金で形成された副切削刃を含む。
ろう付けされたこうした切削部材の1つの重要な利点は、たとえばフライス工具の使用者が、不用意に間違った順序で部材を装着する可能性がないことから、フライス工具のハンドリングが容易になることである。さらに、ろう付けされた切削インサートは、インサート設計に比べてより多くの切削部材を含むことが可能であってもよい。
一実施形態によれば、切削工具の直径の範囲は、直径12mm〜直径100mmである。いくつかの実施形態では、直径の範囲は25〜75mmである。
フライス工具の直径が小さいことは、たとえばより多くの切削部材を提供できる可能性があることから、薄肉の機械加工に関しては特に有利であるが、その理由はより多くの切削部材が被加工物に同時に係合することができるからであり、このことは上で述べたように、いわゆるハンマリングの問題をかなり低減する。
一実施形態によれば、フライス工具の隣接する切削部材同士間の角度距離は、10°〜90°の範囲内にある。いくつかの実施形態では、35〜75°の範囲内にある。こうした角度距離はピッチとよばれてもよく、切削部材の数およびフライス工具の直径によって決まる。
たとえばいくつかの実施形態では、異なる例示的な直径についての好適な歯の数の例は、直径25mmを有する工具については最大数8個の切削部材、および直径100mmを有する工具については最大数26個の切削部材を含む。上に述べたことと同様に、切削部材同士間のピッチが狭いことは有利な配置にも寄与し、薄肉をフライス加工するときでも、いくつかの切削部材が同時に係合して、ハンマリング、すなわち振動を防止する。
本発明の第2の態様によれば、正面フライス加工用のフライス加工の工具本体の周囲に沿って連続的に配置されるように適合された交換可能な切削インサートのキットであって、工具本体であって、軸方向を定義する中心回転軸を有し、軸方向の広がりAに沿って延在する包囲表面と、径方向Rに沿って延在する前表面とを有する、被加工物を径方向および軸方向に機械加工するための工具本体を備え、切削インサートのそれぞれは、すくい面と、逃げ表面と、荒削り動作用の主切削刃であって、主切削刃が、すくい面と逃げ表面との間に形成され、工具本体の包囲表面の周囲で軸方向に延在するように適合された主切削刃と、仕上げ動作用の複数の副切削刃であって、複数の副切削刃が、工具本体の前表面の周囲ですくい面と逃げ表面の間に形成される、副切削刃とを備え、複数の副切削刃は、少なくとも第1の副切削刃、第2の副切削刃、および第3の副切削刃を備える。第1および第3の副切削刃は、軸方向Aに垂直な方向に延在するように適合され、第2の副切削刃は、第1と第3の副切削刃の間に延在するように適合され、切削インサートの主切削刃は、工具本体の包囲表面の周囲に沿って同じ径方向位置にあるように適合され、第1の副切削刃は、同じ軸方向位置にあるように適合され、第2の副切削刃の第1の端点は、径方向内向きに連続的に推移するように適合され、第2の副切削刃の第2の端点は、工具本体の前表面の周囲に沿って径方向内向きかつ軸方向外向きに連続的に推移するように適合され、それにより、工具本体に配置されたときに、後に続く切削インサートの第2の副切削刃が、工具本体の前表面の周囲に沿って前にある切削インサートの第2の副切削刃よりも、長さが長くなり、工具本体の中心回転軸の近くにくる。
たとえば、こうしたキットは、新しい機械加工段階の前にフライス工具にろう付けされるように適合された切削インサートの完全なセットとすることができる。
本発明のさらなる目的、特徴、および利点は、以下の詳細な開示、図面、および添付の特許請求の範囲を研究すると、明らかになろう。当業者であれば、本発明の異なる特徴を組み合わせて、以下に記載する実施形態以外の実施形態を作り出せることを認識する。
本発明は、添付図面を参照しながら、好ましい実施形態の以下の例示的で非限定的な詳細な説明を通して、よりよく理解されよう。
すべての図面は概略的であり、必ずしも原寸に比例しておらず、全般的に、本発明を明からにするために必要な部分のみを示し、他の部分は、省略されてもよく、単に示唆されるだけでもよい。
例示的な一実施形態によるフライス工具が、図1a〜図1cにおいて3つの異なる図で示される。工具1は、軸方向の広がりAに沿って延在する包囲表面11と、径方向の広がりRに沿って延在する前表面12とを有する工具本体10を備える。図1a〜図1cの示される例示的な実施形態は、正面フライス加工用に適合され、工具本体の周囲に沿って配置された10個の切削部材100を備え、その設計は、以下でより詳細に説明する。切削部材は、工具本体に固定取付けされ、示される事例では、ろう付けによって取り付けられる。
図1bで見ることができるように、切削部材は、径方向すくい角γで配置され、すなわち、たとえば第3の副切削刃が、たとえば第3の副切削刃の第1の端点からフライス工具の中心まで定義された径方向に対して、径方向すくい角γ1で延在するように配置される。全般的に、こうした径方向すくい角γ1は、−10°〜+10°の範囲に属してもよい。しかし、開示する実施形態では、主切削刃で容易な/軽い切削作用を可能にするために、径方向すくい角は正である。軸方向に関しては、主切削刃が軸方向に平行な平面にあるが、軸方向に対して軸方向すくい角γ2で延在するように、切削部材が配置され、全般的に、こうした軸方向すくい角γ2は、−10°〜+10°の範囲に属してもよい(図1cに示す)。開示する実施形態は、主切削刃に正の傾斜をもたらすために、軸方向すくい角の正の角度も開示しており、これは、主切削刃の容易な/軽い切削作用にさらに寄与する。正の軸方向すくい角は、副切削刃の容易な/軽い切削作用ももたらす。
第2の例示的な実施形態による第2のフライス工具が、図2a〜図2cにおいて、3つの異なる図で示される。工具1’は、軸方向の広がりAに沿って延在する包囲表面11’と、径方向の広がりRに沿って延在する前表面12’とを有する工具本体10’を備える。図2a〜図2cの示される例示的な実施形態は、ショルダフライス加工用に適合され、工具本体10の周囲に沿って配置された8個の切削部材100’を備える。切削部材は、工具本体に固定取付けされ、示される事例では、ろう付けによって取り付けられる。図1a〜図1cに示す実施形態と同様に、切削部材は径方向すくい角γ1で配置され、全般的にこうした角度は−10°〜+10°の範囲に属してもよい(図2bに示す)。また同様に、主切削刃が軸方向に平行な平面にあるが、軸方向に対して軸方向すくい角γ2で延在するように、切削部材が配置され、全般的に、こうした軸方向すくい角γ2は、−10°〜+10°の範囲に属してもよい(図2cに示す)。さらに、前の実施形態で述べたように、径方向と軸方向の両方のすくい角は、主切削刃および副切削刃の容易で/軽い切削作用をもたらすように、この実施形態では正である。
図1a〜図1cおよび図2a〜図2cの示される例示的な実施形態では、切削工具の周囲に沿って配置されたすべての切削部材は、第1、第2、および第3の副切削刃を備える。
図3〜図3hを見ながら、工具本体の例示的な切削部材の設計を詳細に説明する。
図3は、例示的な一実施形態による切削部材100の斜視図であり、切削部材は、すくい面110と、逃げ表面120と、荒削り動作用の主切削刃130とを備える。主切削刃130は、すくい面110と逃げ表面120との間に形成され、工具本体10に配置されたときに、主切削刃の切込み角が90°になるように、軸Aに平行な方向に延在するように適合され、軸Aは、図示する事例ではフライス工具の回転軸に一致する。
仕上げ動作用の3つの副切削刃が、すくい面110と逃げ表面120の間に形成され、これらは第1の副切削刃140、第2の副切削刃150、および第3の副切削刃160である。第1および第3の副切削刃140、160は、工具本体に配置されたときに、回転軸に垂直な方向、すなわち径方向に延在するように適合され、第2の副切削刃150は、第1と第3の副切削刃の間、すなわち、それぞれ第1と第3の副切削刃のそれぞれの端点141、162の間に延在する。
主切削刃130は、角切削刃170、すなわち示される事例では角面取り刃170を介して、第1の副切削刃140につながる。
切削部材100の総切削深さは、切削部材の総高さ、すなわち主切削刃130、角面取り刃170、および副切削刃140、150、160によって定義される。したがって、角面取り切削刃170の軸方向位置を変えることによって、それぞれ荒削り動作中および(副切削刃140、150、160によって提供される)仕上げ動作中に機械加工される材料の相対量を決定することができる。
図3aは、図3に比べて反対方向から見た、すなわち工具本体に配置されたときに工具本体の座部に面するように適合された、すくい面とは反対側の底部側111を示す切削部材の斜視図である。図3bは、切削部材の側面図であり、主切削刃の逃し角αを示し、全般的にこの逃し角αは、0〜20°の範囲に属する。図3cは、第3の副切削刃の逃し角βを示し、全般的にこの逃し角βは、0〜20°の範囲に属する。図3eは、図3cの反対側の側面図であり(この場合も第3の副切削刃の逃し角βを示す)、図3gは、切削部材の側面図であり、これも主切削刃の逃し角αを示す。図3hは、下側の超硬合金材料の上に上側のPCD材料を備える切削部材の断面図を示しており、これにより切削部材が、アルミニウムの正面フライス加工に特に適したものになる。
図4aおよび図4bは、工具本体の前表面の周囲に沿った切削部材100の副切削刃の推移、すなわち例示的な実施形態については、後に続く切削部材間の推移を示しており、図4aは、工具本体10に配置された第1の切削部材100を示し、図4bは、工具本体の周囲に沿ったすべての副切削刃を重ね合わせた図(すなわち推移)を示す。
前で説明したように、切削部材100の主切削刃130は、図4aに示すように工具本体に配置されたときに、軸方向Aに平行な平面に延在しており、角面取り切削刃170を介して第1の副切削刃140につながっている。第1の副切削刃140は、図4aに示すように工具本体に配置されたときに、軸方向に垂直な方向(すなわち回転軸に垂直な平面内)に延在するように適合される。主切削刃130と角面取り刃のそれぞれの広がりは、切削工具の周囲に沿った切削部材にわたって同じ、すなわち一定のままである。
角面取り切削刃170は、第1の副切削刃140の第1の端点141に接合する。第1の副切削刃のこの第1の端点141の位置、ならびに第1の副切削刃がそれに沿って延在する平面の軸方向位置も、周囲の沿った切削部材にわたって一定のままである。したがって、第1の副切削刃の広がりは、常に軸方向に垂直であり、第1の副刃は、回転軸に垂直な同じ平面内にあるままである。
しかし、第2および第3の副切削刃150、160は、径方向および/または軸方向の広がりという点で変化し、すなわち、工具本体の周囲に沿って推移する。
端点151、152間に延在する第2の副切削刃150は、第1の端点151が径方向内向きに連続的に推移し、第2の副切削刃の第2の端点が、径方向内向きかつ軸方向外向きに連続的に推移するように、工具の周囲に沿って切削インサート間で変形している。その結果、図4bに示すように、後に続く切削インサートの第2の副切削刃は、工具本体の前記前表面の周囲に沿って前にある切削部材の第2の副切削刃よりも、長さが長くなり、前記工具本体の中心回転軸の近くにくる。
端点161と162の間で軸方向に垂直な平面に延在する第3の副切削刃160は、工具本体の周囲に沿って、以下のように変化、すなわち推移する。第2の副切削刃の第2の端点152と一致している第1の端点161は推移し、すなわち周囲に沿った切削部材ごとに径方向内向きかつ軸方向外向きに推移し、一方、外側端点162は、後に続く切削部材ごとに軸方向外向きにのみ動く。その結果、後に続く切削インサートの第3の副切削刃は、工具本体の前表面の周囲に沿って前にある切削部材の第3の副切削刃よりも、長さが短くなり、軸方向に垂直な平面に延在する、すなわち工具本体の中心回転軸に沿って前表面から遠くなる軸方向位置にくる、延在している。しかし、各切削部材の第3の副切削刃は、常に回転軸に垂直なそれぞれの平面に延在している。
本発明は、図面および上の説明において詳細に図示および説明されたが、こうした図および説明は、例証または例示とみなされるべきであり、限定するものとみなされるべきではなく、本発明は、開示した実施形態に限定されない。当業者であれば、添付の特許請求の範囲で定義される範囲内で、多くの修正形態、変形形態、および代替形態が考えられることを理解している。
さらに、開示した実施形態に対する変形形態は、図面、本開示、および添付の特許請求の範囲を研究することによって、特許請求した本発明を実践する際に当業者によって理解され、実行されることが可能である。特許請求の範囲では、「備える」という単語は、他の要素またはステップを排除せず、不定冠詞「a」または「an」は、複数を排除しない。相互に異なる従属請求項において特定の測定値が述べられていることは、これらの測定値の組合せを有利に使用できないということを示すのではない。特許請求の範囲における任意の参照符号は、特許請求の範囲に記載の範囲を限定するものとみなされるべきではない。