JP3754915B2 - ミーリングカッタ - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、金属被削材などの切削加工に用いられるスローアウェイ式のミーリングカッタに関するものであって、特に、横送りと軸方向送りとを同期させた斜め方向送り、即ち彫り込み切削加工可能で、重切削に用いることが可能なミーリングカッタに関する。
【0002】
【従来の技術】
横送り切削加工、軸方向送り切削加工ならびに彫り込み切削可能であり、重切削対応のために底刃の一部を二枚刃としたミーリングカッタが従来、提案されている。
【0003】
特開平11−138324号は、そのような従来のミーリングカッタを記載する。
【0004】
このミーリングカッタ300は、図5に示すように、底刃を提供する平行四辺形板状の第1のチップ100と第2のチップ200をカッタ本体301の軸方向先端部側に装着したものである。各チップ100,200は2つの長辺切刃と2つの短辺切刃をそれぞれ備え、前記第1のチップ100はその長辺切刃を外周刃101として、短辺切刃を底刃102としてカッタ本体301に取り付けられ、前記第2のチップ200はその長辺切刃を底刃202として、短辺切刃を外周刃201としてカッタ本体301に取り付けられたものである。そして、第1のチップ100における底刃102の一部の回転軌跡は第2のチップ200における底刃202の回転軌跡と重なるようになっており、その範囲でのみ2枚刃仕様である。さらに、前記第2のチップ200における底刃202は凹凸の波状に形成され、切削応力のバランスを取ることが提案されている。
【0005】
なお、前記第2のチップ200の底刃202において、カッタ本体300の軸o付近を切削する領域Aは外周刃201から離れるに従って、カッタ本体の軸方向後端部側に傾く傾斜を有している。
【0006】
また、ミリンクカッタ300の先端部は、彫り込み切削加工が可能となるように第1のチップ100の底刃102からカッタ本体301の軸oまでの部分が前記第1のチップ100の底刃102の延長線102'よりも、前記カッタ本体301の軸方向後端部側の配置となっていた。
【0007】
【発明が解決しようとする課題】
ところが、上記従来技術において前記第2のチップの底刃を凹凸の波状に形成して、第2のチップ外周刃からカッタ本体の軸側に向かう切削応力の分力と、これと相反する方向の分力とが釣り合うようにしているため、底刃とは反対側の長辺切刃に沿った側面とこれに対面するカッタ本体の拘束面との間に隙間が存在する場合、前記第2チップの側面とカッタ本体の拘束面とが密着せず前記第2のチップにガタツキが起こりやすいという問題がある。
【0008】
また、前記第2のチップにおける底刃に凸状部(図5中、符号203で示す)を設けるため、この部分では切屑が衝突してしまい、切屑処理性が悪いという問題がある。
【0009】
また、底刃の2枚刃部分の長さが短く、第2チップの底刃の一枚刃部分への切削応力が大きくなるため、切削条件を厳しくすることができないという問題がある。
【0010】
さらに、前記第2のチップにおいてカッタ本体の回転軸付近を切削する領域は外周刃から離れるに従って、カッタ本体の回転軸方向の後ろ側に傾く傾斜を有しており、ミリンクカッタの先端部は、彫り込み切削加工が可能となるように第1のチップの底刃からカッタ本体の軸までの部分が前記第1のチップの底刃の延長線よりも、前記カッタ本体の回転軸方向の後ろ側の配置としていたため、カッタ本体の先端部の肉量がその分少ない。そのため、重切削時にカッタ本体の先端部が破損し易いという問題がある。
【0011】
このような従来技術の課題に鑑み、本発明は、彫り込み切削加工可能で、重切削に用いることが可能なミーリングカッタにおいて、切削応力のバランスを取りつつ、第2のチップのガタツキを防止すること、切削条件を厳しくしても良好な加工が可能であること、切屑処理性を良好に維持すること、並びに、カッタ本体先端部の破損を防止することを目的とする。
【0012】
【課題を解決するための手段】
上記課題を解決するため、請求項1のミーリングカッタは、側面と上面との交叉稜に短辺切刃と長辺切刃を備えた第1のチップと、側面と上面との交叉稜に短辺切刃とチップの上面視で凹状の長辺切刃とを備えた第2のチップを備えるとともに、前記第1のチップはその長辺切刃を外周刃として、短辺切刃を底刃としてカッタ本体に取り付けられ、前記第2のチップは長辺切刃を底刃として、短辺切刃を外周刃としてカッタ本体に取り付けられたミーリングカッタであって、前記第1のチップにおける底刃の略全長分の回転軌跡が前記第2のチップにおける底刃の回転軌跡に重なることを特徴とする。
【0013】
かかる構成によれば、第2のチップの底刃における前記カッタの軸側の第2傾斜部が、前記カッタの軸に近づくにしたがって前記軸方向先端部側に傾き、回転速度が遅く切削抵抗が大きいこの部分で、第2のチップ外周刃からカッタ本体の軸側に向かう切削応力の分力を大きくする。これにより、第2のチップは外周刃からカッタ本体の軸側に向かう切削応力の分力がこれと相反する方向の分力より大きくなり、第2のチップは外周刃からカッタ本体の軸に向かって押し付けられる。これにより第2のチップはカッタ本体の軸側のチップ拘束面に押し付けられのでチップのガタツキを防止することが可能である。
【0014】
同時に、第1のチップがカッタ本体の軸側から外周刃に向かう切削応力の分力がこれと相反する方向の分力より大きいので、ミーリングカッタ全体として切削応力のバランスを取ることができる。
【0015】
また、第2のチップの底刃における前記カッタの軸側の第2傾斜部が、前記カッタの軸に近づくにしたがって前記軸方向先端部側に傾く構成となるので、ミリンクカッタの先端部の、第1のチップの底刃からカッタ本体の軸までの部分を前記第1のチップの底刃の延長線よりも、前記カッタ本体の軸方向先端側配置としても、彫り込み切削加工が可能である。したがって、カッタ本体の先端部の肉量が多く、そのため、重切削時にカッタ本体の先端部が破損し難い。
【0016】
さらに、第1のチップにおける底刃の略全長分が2枚刃領域となるので、切削条件を厳しくすることができる。
【0017】
次に、請求項2のミーリングカッタは、前記第2のチップの前記側面と上面との交叉稜に前記底刃に対して180°回転対称の切刃を形成したことを特徴とする。
【0018】
かかる構成によれば、第2のチップにおいて、前記底刃とは反対側の長辺切刃の外周刃側となる第1傾斜部とこれに沿ったカッタ本体の拘束面は、外周刃から離れるにしたがってカッタ本体の軸方向後端側に傾く。そして、この拘束面は、外周刃からカッタ本体の軸に向かって押し付けられる第2のチップと密着する。これにより、第2のチップのガタツキをより確実に防止することができる。
【0019】
次に請求項3のミーリングカッタは、前記第2のチップの底刃における、前記カッタ本体の軸近傍を削る部分が円弧状の切刃となっていることを特徴とする。
【0020】
かかる構成によれば、回転速度が遅く切削抵抗が大きいカッタ本体の軸近傍の前記チップの底刃の耐欠損性を高めることができる。
【0021】
また、請求項4のミーリングカッタは、前記第2のチップの底刃は、前記外周刃側の第1傾斜部と前記カッタの軸側の第2傾斜部からなり、前記第1傾斜部が前記第2傾斜部よりも長いことを特徴とする。
【0022】
かかる構成によれば、底刃の2枚刃部分を長くすることができ、その分、切削条件を厳しくすることができる。
【0023】
また、請求項5のミーリングカッタは、前記第2のチップの底刃は、第2のチップの前記外周刃に隣接する部分が前記カッタ本体の軸方向先端部側に最も突出していることを特徴とする。
【0024】
かかる構成によれば、横送り加工において、底刃と加工面との接触を小さくすることができるので、切削抵抗を低減することができる。
【0025】
【発明の実施の形態】
以下、本発明の実施形態を図を用いて説明する。
【0026】
図1乃至2に示すように、本実施形態のミーリングカッタCは、側面と上面との交叉稜に2つの長辺切刃と2つの短辺切刃をそれぞれ有する第1のチップ1と第2のチップ2を備えたミーリングカッタである。
【0027】
そのうち前記第1のチップ1は、平行四辺形板状であって、その長辺切刃の1つを外周刃11として、その短辺切刃の1つを底刃12としてカッタ本体c1に取り付けられる。
【0028】
前記第1のチップ1の底刃12は、外周sから軸oの手前までの領域をカバーする。この底刃12は外周sから軸oへの方向(図1中矢印xの方向)に軸方向後端側に傾いている。
【0029】
前記第2のチップ2は、前記長辺切刃がチップの上面視で凹状となった六角形板状であって、その長辺切刃を底刃22として、短辺切刃を外周刃21として前記カッタ本体c1に取り付けられる。この底刃22は、外周sから軸oを超える領域をカバーする。前記第2のチップ2の底刃22は前記外周刃21側の第1傾斜部22aと前記軸側の第2傾斜部22bからなる。第1傾斜部22aは外周sから軸oへの方向(図1中矢印xの方向)に軸方向後端部側に傾き、第2傾斜部22bは軸方向先端部側に傾いている。
【0030】
前記第2のチップ2は、底刃22が前述のように凹状となっているので、外周sから軸oへの方向(図1中矢印yの方向)にこれに相反する方向よりも大きな切削応力が作用する。これにより、前記第2のチップ2は、外周sから軸oへの方向に押圧され、前記第2のチップ2はカッタ本体c1の軸o側の拘束面に密着する。
【0031】
一方、第2のチップ2において、前記底刃22とは反対側の長辺切刃23の前記外周刃21側となる第1傾斜部23aとこれに沿ったカッタ本体c1の拘束面ch1は、外周刃21から離れるにしたがってカッタ本体c1の軸方向後端側に傾く。前記底刃22と前記長辺切刃23とは180°回転対称であり、底刃22が摩耗したり欠損したりした場合、前記長辺切刃23を底刃とするように取り付けて使用することができる。前記カッタの拘束面ch1は、外周刃21から軸oに向かって押し付けられる第2のチップ2と密着する。これにより、第2のチップ2のガタツキを確実に防止する。
【0032】
同時に、前記第1のチップ1は、軸o側から外周sに向かう切削応力の分力がこれと相反する方向の分力より大きいので、ミーリングカッタC全体として切削応力のバランスを取ることができる。
【0033】
前記第1のチップ1の底刃12における略全長分の回転軌跡は、前記第2のチップ2の底刃22における前記第1傾斜回転軌跡と重なり、その範囲でこれら底刃12、22は2枚刃仕様となっている。本実施形態において、前記第2のチップ2の底刃22は、第1傾斜部22aが第2傾斜部22bよりも長い。この構成によれば、2枚刃領域が大きくなるので切削効率が上がる。
【0034】
前記第2のチップ2の底刃22において、前記外周刃21に隣接する端部は軸o側の端部よりも軸方向先端部側に配置されている。これにより、横方向送り加工のときに底刃22と加工面との接触を最小限に抑えることができ、横方向送り加工のときの切削抵抗を低減することができるので、このような構成が好ましい。
【0035】
また、本実施形態において、前記第2のチップ2の底刃22は、前記軸oに最も近い部分を削る部分が円弧状の切刃22cとなっている。この構成によれば、切削抵抗を最も受ける軸o近傍を、刃先強度が大きい円弧状の切刃22cで切削するので、この部分での切刃の欠損が起こりにくい。
【0036】
図3は、前記第2のチップ2を装着するカッタ本体c1のチップポケットcpを正面に示す。同図に示すように、軸方向後端部側のチップ拘束面chは外周s側の第1傾斜面ch1と軸o側の第2傾斜面ch2を備える。前記第1傾斜面ch1は、外周sから軸oへの方向に軸方向先端部側に傾斜し、第2傾斜面ch2は外周sから軸oへの方向に軸方向後端部側に傾斜している。図4に示すように、このチップポケットcpには、前記第1傾斜面ch1を利用して第1のチップを取り付けることが可能である。軽切削の場合は、このようなチップ配置でも十分、効率的に加工を行なうことができる。
【0037】
以上、本発明の実施形態を例示したが、本発明は前記実施形態に限定されるものでなく、発明の目的を逸脱しない限り任意の構成とすることができることは云うまでもない。
【0038】
【発明の効果】
以上のように本発明によれば、ミーリングカッタは、側面と上面との交叉稜に長辺切刃と短辺切刃とを備えた第1のチップと、側面と上面との交叉稜に短辺切刃とチップの上面視で凹状の2つの長辺切刃とを備えた第2のチップを備えるとともに、前記第1のチップはその長辺切刃を外周刃として、短辺切刃を底刃としてカッタ本体に取り付けられ、前記第2のチップは一方の長辺切刃を底刃として、短辺切刃を外周刃としてカッタ本体に取り付けられたミーリングカッタであって、前記第1のチップにおける底刃の略全長分の回転軌跡が前記第2のチップにおける底刃の回転軌跡に重なる構成としたことにより、第2のチップは外周刃からカッタ本体の軸側に向かう切削応力の分力がこれと相反する方向の分力より大きくなり、第2のチップは外周刃からカッタ本体の軸に向かって押し付けられる。したがって、第2のチップはカッタ本体の軸側のチップ拘束面に押し付けられるのでチップのガタツキを防止することができる。
同時に、第1のチップがカッタ本体の軸側から外周刃に向かう切削応力の分力がこれと相反する方向の分力より大きいので、ミーリングカッタ全体として切削応力のバランスを取ることができる。
【0039】
また、第2のチップの底刃における前記カッタの軸側の第2傾斜部が、前記カッタの軸に近づくにしたがって前記軸方向先端部側に傾く構成となるので、ミリンクカッタの先端部の、第1のチップの底刃からカッタ本体の軸までの部分を前記第1のチップの底刃の延長線よりも、前記カッタ本体の軸方向先端側配置としても、彫り込み切削加工が可能である。したがって、カッタ本体の先端部の肉量が多く、そのため、重切削時にカッタ本体の先端部が破損し難い。
【0040】
さらに、第1のチップにおける底刃の略全長分が2枚刃領域となるので、切削条件を厳しくすることができる。
【0041】
また、前記ミーリングカッタにおいて、前記第2のチップの前記側面と上面との交叉稜に前記底刃に対して180°回転対称のの切刃を形成した場合、前記底刃とは反対側の長辺切刃の外周刃側となる第1傾斜部とこれに沿ったカッタ本体の拘束面とが密着する。これにより、第2のチップのガタツキをより確実に防止することができる。 また、前記ミーリングカッタにおいて、前記第2のチップの底刃における、前記カッタ本体の軸近傍を削る部分が円弧状の切刃とした場合、回転速度が遅く切削抵抗が大きいカッタ本体の軸近傍の前記チップの底刃の耐欠損性を高めることができる。
【0042】
また、前記ミーリングカッタにおいて、前記第2のチップの底刃は、前記外周刃側の第1傾斜部と前記カッタの軸側の第2傾斜部からなり、前記第1傾斜部が前記第2傾斜部よりも長い構成とした場合、底刃の2枚刃部分を長くすることができ、切削条件を厳しくすることができる。
【0043】
さらに、前記ミーリングカッタにおいて、前記第2のチップの底刃は、第2のチップの前記外周刃に隣接する部分が前記カッタ本体の軸方向先端部側に最も突出した構成とした場合、横送り加工において、底刃と加工面との接触を小さくすることができるので、切削抵抗を低減することができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の実施形態のミーリングカッタを示し、第2のチップが装着された側からの正面図である。
【図2】本発明の実施形態のミーリングカッタを示し、第1のチップが装着された側からの正面図である。
【図3】図1のミーリングカッタを第2のチップを省いて示し、第2のチップを装着するチップポケットの側からの正面図である。
【図4】図1のミーリングカッタにおいて第2のチップの替わりに第1のチップを装着する状態を示す正面図である。
【図5】従来のミーリングカッタのチップを配置を示す、概略説明図である。
【符号の説明】
1 第1のチップ
2 第2のチップ
11,21 外周刃
12,22 底刃
22a 第1傾斜部
22b 第2傾斜部
C ミーリングカッタ
c1 カッタ本体
o 軸
s 外周
Claims (5)
- 側面と上面との交叉稜に短辺切刃と長辺切刃を備えた第1のチップと、側面と上面との交叉稜に短辺切刃とチップの上面視で凹状の長辺切刃とを備えた第2のチップを備えるとともに、前記第1のチップはその長辺切刃を外周刃として、短辺切刃を底刃としてカッタ本体に取り付けられ、前記第2のチップは長辺切刃を底刃として、短辺切刃を外周刃としてカッタ本体に取り付けられたミーリングカッタであって、前記第1のチップにおける底刃の略全長分の回転軌跡が前記第2のチップにおける底刃の回転軌跡に重なることを特徴とするミーリングカッタ。
- 前記第2のチップの前記側面と上面との交叉稜に前記底刃に対して180°回転対称の切刃を形成したことを特徴とする請求項1記載のミーリングカッタ。
- 前記第2のチップの底刃における、前記カッタ本体の軸近傍を削る部分が円弧状の切刃となっていることを特徴とする請求項1記載のミーリングカッタ。
- 前記第2のチップの底刃は、前記外周刃側の第1傾斜部と前記カッタの軸側の第2傾斜部からなり、前記第1傾斜部が前記第2傾斜部よりも長いことを特徴とする請求項1記載のミーリングカッタ。
- 前記第2のチップの底刃は、第2のチップの前記外周刃に隣接する部分が前記カッタ本体の軸方向先端部側に最も突出していることを特徴とすることを特徴とする請求項1記載のミーリングカッタ。
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