JP3754920B2 - スローアウェイエンドミル - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、工具本体の外周に切削インサートを着脱自在に装着するスローアウェイエンドミルに係り、特に底刃によって穴底の切削も同時に行う3次元スローアウェイエンドミルに関するものである。
【0002】
【従来の技術】
従来、例えば2枚の平行四辺形板状のスローアウェイチップが工具本体の先端に装着されてなり、突き加工可能なスローアウェイエンドミルでは一方のチップは長辺刃を底刃とし、短辺刃を外周刃とするように配置し、他方のチップは短辺刃を底刃とし、長辺刃を外周刃とするように配置したものがある。
【0003】
しかしながらこのようなエンドミルで、外周刃を工具本体の回転軸線に沿って配設して肩削りや突き加工などに用いた場合、外周刃の一方が1枚刃列構成となり、このコーナー部において摩耗が大きくなったり、欠損が生じたりするという問題があった。
このような問題を解決するために特開平10―291115号公報および特開2001−121341号公報に示されるような解決方法が用いられた。
【0004】
図6は特開平10―291115号公報のスローアウェイエンドミルのチップ配置説明図(チップの回転軌跡の重なりを示す)である。
【0005】
このスローアウェイエンドミルにおいて、線対称で逆勝手となる2種類の平行四辺形板状のチップ50a,50bを用い、一方のチップ50aの短辺を底刃51とし、他方のチップ50bの長辺を底刃52として用いることで、それぞれの底刃51,52の外周側の円弧状切刃を重ね、短い方の底刃51の略全体を長い底刃52に略完全に重ねた2枚刃部分53を設けていた。これにより、外周コーナー刃の欠損を抑制して切削効率を向上できることが記載されている。
【0006】
図7は特開2001−121341号公報のスローアウェイエンドミルのチップ配置例説明図である。
【0007】
このスローアウェイエンドミルは、1種類のチップを2つの先端側チップ60,70,80として用いるものである。前記チップは底刃または外周刃として用いる短辺切刃61,71,81の両端コーナー角が90°未満となっている。また、底刃または外周刃として用いられる長辺切刃62,72,82を備えている。
【0008】
このスローアウェイエンドミルによれば、チップ1種類で先端チップを構成することにより、工具管理が容易である。
【0009】
【発明が解決しようとする課題】
しかしながら、上記従来技術は、突き(穴あけ)加工時の切くず処理や切削状態が良好とは言えないものである。線対称で逆勝手の2種類のチップを用いた場合、図6に示すように、穴あけ加工時、比較的軽切削で加工すると、1枚刃列部54と2枚刃列部53が混在し、特に2枚刃列部53で切削する箇所の切くずが薄くなり伸びやすい状態で排出される。
【0010】
また、底刃または外周刃として用いるとともに短辺61,71,81の両端コーナー角が90°未満となっている1種類のチップを用いた場合であって、前記短辺61の両コーナー角を等しくした場合、図7(a)に示すように、1枚刃列部64と2枚刃切列部63が存在し、2枚刃列部64で切くずが薄くなり伸びやすい状態で排出される。
【0011】
また前記コーナー角が異なる場合であって、図7(b)に示すように長辺切刃72を短辺切刃71よりも軸線方向先端部側(軸o)とした場合、チップ1枚のみに負荷がかかり、切削抵抗のバランスは良好でない。
【0012】
これに対して、図7(c)に示すように短辺切刃81を長辺切刃82よりも軸線方向先端部側(軸o)とした場合、突き加工において、短辺底刃81がすべて被削材にあたってから長辺底刃82が被削材にあたることになり、被削材への食い付きが悪くなってしまう。また、切刃の軌跡の交叉部分にコーナーの円弧状切刃が来るが、この円弧状切刃は、切屑の厚みが厚くなる結果、切屑の厚みが不均一となり、不安定な切屑となってしまう恐れがあった。
【0013】
このような従来技術の課題に鑑み、本発明は、突き加工の軽切削においても切屑処理が良好であり、切削抵抗のバランスが取れていて加工時にエンドミル本体が過度にしなったりせず、さらに、被削材への食い付を良くすることを目的とする。
【0014】
【課題を解決するための手段】
上記課題を解決するため請求項1のスローアウェイエンドミルは、長辺切刃と短辺切刃とこれら切刃間に挟まれた円弧状切刃とをそれぞれに有する第一チップと第二チップをエンドミル本体の先端部に着脱自在に備え、前記第一チップは長辺切刃を外周刃に短辺切刃を底刃として、前記第二チップは長辺切刃を底刃に短辺切刃を外周刃として装着され、さらに前記第一チップと前記第二チップは外周側に位置する前記円弧状切刃の回転軌跡が重なるように装着されたスローアウェイエンドミルにおいて、前記第一チップの底刃は、前記エンドミル本体の外周から軸に向かって軸方向基端部側に傾斜し、前記第二チップの底刃は、前記エンドミル本体の外周から軸に向かって軸方向基端部側へ傾斜する外周側の第一傾斜部と軸方向先端部側へ傾斜する軸側の第二傾斜部とを備え、前記第一チップの底刃の回転軌跡は、前記エンドミル本体の外周側で前記第二チップよりも前記軸方向先端側に位置するとともに前記第二チップの底刃に備える前記第二傾斜部の回転軌跡と交叉することを特徴とする。
【0015】
かかる構成によれば、通常の肩切削および溝切削を行う際に最も負荷のかかる先端外周側の円弧状切刃が2枚刃仕様であるので、前記円弧状切刃が大きく摩耗したり、欠損をしたりするのを防止できる。
【0016】
また前記第一チップの底刃の回転軌跡を前記エンドミル本体の外周側で前記第二チップ2よりも前記軸方向先端側に突出させ、前記第ニチップの底刃に備える前記第二傾斜部の回転軌跡と交叉させることにより、ドリル加工時に回転軌跡の交叉部分の内側と外側とで切屑が別個に形成される。そして、第一チップの底刃の回転軌跡がその途中で第二チップの底刃の回転軌跡と交わるので、外周側の第一チップによる切屑の幅をその底刃の幅よりも短くすることができる。したがって、切屑処理を良好とすることが可能となる。また、切刃の軌跡の交叉が直線での交わりなので、切屑の厚みが均一となり、切屑処理が安定する。
【0017】
また前記第二チップの底刃における第二傾斜部は前記エンドミルに軸に近づくに従って前記軸方向先端部に傾いているため、切削速度が遅く切削抵抗が大きいこの部分で、第二チップ外周刃からエンドミル本体の軸側に向かう切削応力の分力が発生すると同時に第一チップがエンドミル本体の軸から外周刃に向かう切削応力の分力が発生するためエンドミルとしては切削応力のバランスをとることができる。
【0018】
さらに、突き加工において第一チップの底刃のすべてが被削材に当たる前に第二チップの底刃が被削材に当たるので被削材への食い付きが良好である
次に、請求項2のスローアウェイエンドミルは前記第二傾斜部の途中から前記エンドミル本体の軸側の端部に向かって前記第二チップの底刃側のチップ厚みが漸減することを特徴とする。
【0019】
かかる構成によれば、エンドミルの径方向の芯高さを上げても回転軸付近の芯高さをある程度自由に設定することができ、過剰な芯上がりによる、第二チップの回転軸付近のチップ欠損を防止することが出来る。
【0020】
また、請求項3のスローアウェイエンドミルは前記エンドミル本体の軸方向基端部側に向かって前記第二チップの外周刃側のチップ厚みが漸減することを特徴とする。
【0021】
かかる構成によればエンドミル本体のバックメタルを大きくとることが出来るとともに実すくい角を大きくすることができ、切れ味も良好となる。
【0022】
【発明の実施の形態】
以下、本発明の実施形態について図を用いて説明する。
【0023】
図1乃至図5に本実施形態のスローアウェイエンドミル及びこれを構成するスローアウェイチップを示す。
【0024】
上記スローアウェイエンドミルは、側面と上面との交叉稜に2つの長辺切刃11、21と2つの短辺切刃12、22をそれぞれ有する第一チップ1と第二チップ2を備える。
【0025】
そのうち前記第一チップ1は図3に示すように平行四辺形板状であって、その長辺切刃を外周刃11として、その短辺切刃を底刃12としてエンドミル本体に取付けられる。
【0026】
前記第一チップ1の底刃12の回転軌跡は、図5のチップ配置説明図に示すように、外周から軸oの手前までの領域をカバーする。なお、図前記第一チップの底刃12は外周から軸oへの方向に軸方向基端側に傾いている。
【0027】
前記第二チップ2は、図1および図4に示すように、少なくとも前記底刃22が外周から軸に向かいある領域まで軸方向基端側に傾斜した第一傾斜部22aと、そこから逆に軸方向先端部側に傾斜した切刃第二傾斜部22bを有しており、その長辺切刃を底刃22として、短辺切刃を外周刃21として前記エンドミル本体Cに取り付けられる。この底刃22は外周から軸oを超える切刃を持つが、前記第一チップ1がカバーする領域から軸oを超える領域をカバーする。前記第二チップ2の底刃22は前述のように凹状となっているので、外周から軸oへの方向にこれに相反する方向よりも大きな切削応力が発生する。それと同時に前記第一チップ1は軸側から外周に向かう切削応力の分力がこれと相反する方向の分力より大きいのでエンドミル全体として切削応力のバランスをとることができる。
【0028】
前記第一チップ1の先端外周側の円弧状切刃13と第二チップ2の先端外周側の円弧状切刃23の工具回転軸oまわりの回転軌跡が重なるように第一チップ1と第二チップ2を配置しており、肩切削および溝切削時に最も負荷のかかる軸先端方向の2つの円弧状切刃を2枚刃構成にしたことにより大きく摩耗したり、欠損をしたりするのを防止されるようになる。
【0029】
また、図5に示すように前記第一チップ1の底刃12は、前記エンドミル本体の外周側で前記第二チップ2よりも前記軸方向先端側に位置するとともに前記第ニチップ2の底刃に備える前記第二傾斜部22bの回転軌跡と点pにて交叉している。ドリル加工時は第一チップ1と第二チップ2が切削領域を分担しているため、切くずが二分割され、切くずの排出性が改善されるとともに切削抵抗も低くなる。
【0030】
そして、外周側の第一チップ1による切屑の幅をその底刃の幅よりも短くすることができるので切屑処理を良好とすることが可能となる。また、切刃の軌跡の交叉が直線での交わりなので、切屑の厚みが均一となり、切屑処理が安定する。
【0031】
さらに、突き加工において第一チップ1の底刃12のすべてが被削材に当たる前に第二チップ2の底刃22が被削材に当たるので被削材への食い付きが良好である。
【0032】
また、前記第二チップ2の第二傾斜部22bの途中から前記エンドミル本体Cの軸側の端部に向かって前記第2チップ2の底刃22側のチップ厚みが漸減する(図1及び図4参照)。これにより、エンドミルの径方向の芯高さを挙げても回転軸付近の芯高さをある程度自由に設定することができ、過剰な芯上がりによる、第二チップ2の回転軸付近のチップ欠損を防止することが出来る。
【0033】
また、エンドミル本体Cの軸方向基端部側に向かって前記第二チップ2の外周刃21側はチップ厚みが漸減する(図1及び図4参照)。これにより、エンドミル本体Cのバックメタルを大きくとることが出来るとともに実すくい角を大きくすることができ、切れ味も良好となる。
【0034】
なお、本実施形態では第一チップ1が3枚および第二チップ2が1枚の構成となっているが第一チップの配置数を変化させ切刃長さを変えてもかまわない。
【0035】
また前記第一チップ1の切刃は、本実施例ではチップ下面14と平行だが、傾斜切刃を用いてもかまわなく、また副切刃15を設けて仕上加工に用いることもできる。
【0036】
前記第二チップ2の底刃22は少なくとも第一傾斜部22aと第二傾斜部22bを有していればよく、それ以外に傾斜部を有していても構わない。
また前記第二チップ2は本実施形態ではチップ厚み方向に屈曲した屈曲切刃だが、チップ下面24と平行な切刃としてもよい。
【0037】
以上、本発明の実施形態を例示したが、本発明は上記実施形態に限定されるものではなく、発明の目的を逸脱しない限り任意の形態とすることができることは云うまでもない。
【0038】
【発明の効果】
以上説明したように本発明のスローアウェイエンドミルは、長辺切刃と短辺切刃とこれら切刃間に挟まれた円弧状切刃とをそれぞれに有する第一チップと第二チップをエンドミル本体の先端部に着脱自在に備え、前記第一チップは長辺切刃を外周刃に短辺切刃を底刃として、前記第二チップは長辺切刃を底刃に短辺切刃を外周刃として装着され、さらに前記第一チップと前記第二チップは外周側に位置する前記円弧状切刃の回転軌跡が重なるように装着されたスローアウェイエンドミルにおいて、前記第一チップの底刃は、前記エンドミル本体の外周から軸に向かって軸方向基端部側に傾斜し、前記第二チップの底刃は、前記エンドミル本体の外周から軸に向かって軸方向基端部側へ傾斜する外周側の第一傾斜部と軸方向先端部側へ傾斜する軸側の第二傾斜部とを備え、前記第一チップの底刃の回転軌跡は、前記エンドミル本体の外周側で前記第二チップよりも前記軸方向先端側に位置するとともに前記第二チップの底刃に備える前記第二傾斜部の回転軌跡と交叉するようにしたことにより、通常の肩切削および溝切削を行う際に最も負荷のかかる先端外周側の円弧状切刃部が2枚刃仕様であるので、前記円弧状切刃が大きく摩耗したり、欠損をしたりするのを防止できる。
【0039】
また前記第一チップの底刃の回転軌跡を前記エンドミル本体の外周側で前記第二チップ2よりも前記軸方向先端側に突出させ、前記第ニチップの底刃に備える前記第二傾斜部の回転軌跡と交叉させることにより、ドリル加工時に回転軌跡の交叉部分の内側と外側とで切屑が別個に形成される。そして、第一チップの底刃の回転軌跡がその途中で第二チップの底刃の回転軌跡と交わるので、外周側の第一チップによる切屑の幅をその底刃の幅よりも短くすることができる。したがって、切屑処理を良好とすることが可能となる。また、切刃の軌跡の交叉が直線での交わりなので、切屑の厚みが均一となり、切屑処理が安定する。
【0040】
また前記第二チップの底刃における第二傾斜部は前記エンドミルに軸に近づくに従って前記軸方向先端部に傾いているため、切削速度が遅く切削抵抗が大きいこの部分で、第二チップ外周刃からエンドミル本体の軸側に向かう切削応力の分力が発生すると同時に第一チップがエンドミル本体の軸から外周刃に向かう切削応力の分力が発生するためエンドミルとしては切削応力のバランスをとることができる。
【0041】
さらに、突き加工において第一チップの底刃のすべてが被削材に当たる前に第二チップの底刃が被削材に当たるので被削材への食い付きが良好である
また、上記スローアウェイエンドミルにおいて、前記第二傾斜部の途中から前記エンドミル本体の軸側の端部に向かって第二チップの底刃側のチップ厚みが漸減する構成とした場合、エンドミルの径方向の芯高さを上げても回転軸付近の芯高さをある程度自由に設定することができ、過剰な芯上がりによる、第二チップの回転軸付近のチップ欠損を防止することが出来る。
【0042】
また、前記エンドミル本体の軸方向基端部側に向かって前記第二チップの外周刃側のチップ厚みが漸減する構成とした場合、エンドミル本体のバックメタルを大きくとることが出来るとともに実すくい角を大きくすることができ、切れ味も良好となる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明のスローアウェイエンドミルの一実施例を示す要部側面図である。
【図2】図1に示すスローアウェイエンドミルの180°回転視である。
【図3】第一のスローアウェイチップを示し、(a)は上面図、(b)は長辺側側面図を示す。
【図4】第二のスローアウェイチップを示し、(a)は上面図、(b)は長辺側側面図、(c)は短辺側側面図を示す。
【図5】図1のスローアウェイエンドミルのチップ配置説明図である。
【図6】従来のスローアウェイエンドミルのチップ配置説明図である。
【図7】(a)〜(c)は、従来のスローアウェイエンドミルのチップ配置説明図である。
【符号の説明】
C エンドミル本体
o 軸
p 第一チップと第二チップ第二傾斜部の回転軌跡の交点
1 第一チップ
2 第二チップ
11,21 外周刃
12,22 底刃
22a 第一傾斜部
22b 第二傾斜部
13,23 円弧状切刃
14,24 チップ下面
15 副切刃
Claims (3)
- 長辺切刃と短辺切刃とこれら切刃間に挟まれた円弧状切刃とをそれぞれに有する第一チップと第二チップをエンドミル本体の先端部に着脱自在に備え、前記第一チップは長辺切刃を外周刃に短辺切刃を底刃として、前記第二チップは長辺切刃を底刃に短辺切刃を外周刃として装着され、さらに前記第一チップと前記第二チップは外周側に位置する前記円弧状切刃の回転軌跡が重なるように装着されたスローアウェイエンドミルにおいて、
前記第一チップの底刃は、前記エンドミル本体の外周から軸に向かって軸方向基端部側に傾斜し、
前記第二チップの底刃は、前記エンドミル本体の外周から軸に向かって軸方向基端部側へ傾斜する外周側の第一傾斜部と軸方向先端部側へ傾斜する軸側の第二傾斜部とを備え、
前記第一チップの底刃の回転軌跡は、前記エンドミル本体の外周側で前記第二チップよりも前記軸方向先端側に位置するとともに前記第二チップの底刃に備える前記第二傾斜部の回転軌跡と交叉することを特徴とするスローアウェイエンドミル。 - 前記第二傾斜部の途中から前記エンドミル本体の軸側の端部に向かって前記第二チップの底刃側のチップ厚みが漸減することを特徴とする請求項1記載のスローアウェイエンドミル。
- 前記エンドミル本体の軸方向基端部側に向かって第二チップの外周刃側のチップ厚みが漸減することを特徴とする請求項1記載記載のスローアウェイエンドミル。
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