JPS6110887Y2 - - Google Patents

Description

【考案の詳細な説明】 本考案はガンドリル等の一枚刃穴明け工具に関
するものである。

一般に、深穴切削には、１枚の切刃とねじれの
ない単一刃溝（Ｖ溝）および切削油の流通孔をも
つ一枚刃穴明け工具が用いられる。この一枚刃穴
明け工具の代表例はガンドリルであり、このガン
ドリルは、第１図および第２図に示すように、直
径の1/3〜1/6程度偏芯した位置にアペツクスポイ
ント（刃先頂部）１を有し、この点から半径線に
沿いかつそれぞれ所定の先端角をもつた直線状の
内刃２と外刃３とが形成され、さらにこれら内刃
２、外刃３に対応して切屑排出用のＶ溝４が形成
されており、そしてこのＶ溝４に壁面のうち前記
内刃２と外刃３とに対応する平坦壁面がすくい面
５とされてなるものである。なお第１図中符号６
は切削部へ高圧の切削油剤を供給するための油孔
である。このようなガンドリルで切削を行なつた
場合、前記アペツクスポイント１を境として内刃
２と外刃３との両者から切屑が生じるが、この切
屑は内刃２と外刃３との先端角が相違しているこ
とによつて流出方向が相違し、その結果内刃２か
ら生じた切屑と外刃３から生じた切屑とが互いに
干渉し、この干渉作用によつて各切屑が分断され
る。しかしながら、このような干渉作用による切
屑の分断には限度があるから、上記ガンドリルの
如き一枚刃穴明け工具にあつてはその送り速度が
高々0.05mm／rev程度に限定され、それ以上の高
送り切削を行なうことができなかつた。

本考案は上記事情に鑑みてなされたもので、高
送り切削を行なうことができる一枚刃穴明け工具
を提供することを目的とし、その特徴とするとこ
ろは切刃を内周側で凸曲線状とするとともに外周
側で直線状となし、しかもその内周側の内刃と外
周側の外刃との境界部に先端視においてそれら内
刃と外刃とが互いに屈曲するように屈曲部を設け
た点にある。

以下本考案の実施例を図面を参照して説明す
る。第３図および第４図は本考案に係るガンドリ
ルの先端部を示すもので、これらの図中符号１１
は内刃であり、また符号１２は外刃であつて、内
刃１１は第３図に示すように先端側から見てほぼ
半円弧状をなしており、その始端は先端回転中心
Ｏ若しくはその近傍に（たとえば、半径方向外側
に0.1〜0.15mm程度）あり、また終端は先端回転
中心Ｏから半径の約1/2偏つた位置にある。他
方、外刃１２は前記内刃１１の終端から外周縁に
至る直線状をなしている。この場合、各切刃１
１，１２を先端視したとき、円弧状の内刃１１と
直線状の外刃との境界部に屈曲部Ｂがあることに
留意されたい。この屈曲部Ｂは、内刃１１と外刃
１２とを互いに屈曲させることにより、内刃１１
と外刃１２とからそれぞれ別個に切屑を生成させ
て切屑の幅を狭くし、切屑自体を分断されやすく
するためのものである。なお、内刃１１と外刃１
２とは第４図に示すように先端回転中心Ｏを頂点
として外周縁側で軸線方向へ後退しており、内刃
１１はその先端角がθ_１に、また外刃１２はその
先端角がθ_２（＞θ_１）に設定されている。そし
て、各切刃１１，１２に対応して軸線方向に沿う
切屑排出溝１３が形成されており、その壁面のう
ち回転方向Ａを向く壁面すなわち前記切刃１１，
１２に対応する壁面は、円弧状をなす内刃１１に
一致する半円柱状凸曲面１４および直線状をなす
外刃１２に一致する平坦面１５とされている。勿
論、これら凸曲面１４と平坦面１５とは、内刃１
１と外刃１２とが互いに屈曲せしめられているの
に対応して屈曲せしめられている。なお、第３図
中符号１６は前記凸曲面１４とで内刃１１を形成
するニゲ面であり、また符号１７は前記平坦面１
５とで外刃１２を形成するニゲ面であり、さらに
符号１８は高圧の切削油剤を切削部へ供給するた
めの油孔である。

上記のように構成されたガンドリルで穴明け加
工を行なつた場合、切屑は各切刃１１，１２のそ
れぞれに対応して別個に生じるが、内刃１１にて
切削されて生じた切屑は、内刃１１が円弧状をな
すとともにそのすくい面が凸曲面１４であるか
ら、これらによつて押し拡げられる。また、外刃
１２にて切削されて生じた切屑は、外刃１２の内
周面において回転方向Ａへ突出する前記凸曲面１
４の一部分に当接することにより、両切刃１１，
１２による切屑の相互干渉も加わり細かく分断さ
れる。

すなわち、穴明け加工を行なうに伴つて生じる
切屑全体についみれば、切屑は屈曲部Ｂによつて
まず２つに分断され、内刃１１と外刃１２とのそ
れぞれに対応して別個に生成される。内刃１１に
よつて生成される切屑は凸曲面１４の拡散作用に
よつて分断される。一方、外刃１２によつて生成
される切屑は、凸曲面１４に当接することによつ
て分断される。しかも、これら内刃１１と外刃１
２とによつて生成される切屑は互いに干渉し、さ
らには排出溝１３をなす110゜壁面に衝突し、こ
れらの相乗作用によつてより一層細かく分断され
る。そして、分断された切屑は油孔１８から供給
される切削油剤によつて切屑排出溝１８から速や
かに排出される。

なお、上記ガンドリルにあつては、切削速度の
遅い回転中心Ｏ側で切刃１１が円弧状となつてい
るから、刃先部に超硬合金を採用したとしても切
刃１１，１２の欠損やチツピングが生じることな
く、また各切刃１１，１２が摩耗した場合、その
すくい面である凸曲面１４と平坦面１５とは軸線
方向に沿つているから各ニゲ面１６，１７を研摩
するだけで各切刃１１，１２を再生することがで
き、再研摩が極めて容易である。

なお、本考案は上記実施例に限定されるもので
はなく、第５図あるいは第６図に示すように構成
したものであつてもよい。すなわち、第５図は、
他の実施例を上記実施例と同一部分に同一符号を
付して示すもので、内刃１１ａを回転中心Ｏ側で
凸曲線状とし、外周面で回転方向に対し所定角度
で交差する直線状としたものである。また、第６
図は更に他の実施例を上記実施例と同一部分に同
一符号を付して示すもので、円弧状の内刃１１ｂ
の終端を外刃１２の始端よりも回転方向前方側へ
わずか突出した位置に設定し、同時に内刃１１ｂ
のすくい面である凸曲面１４をこれに対応した形
状とし、もつて外刃１２およびそのすくい面であ
る平坦面１５の内周側に壁面１９を形成したもの
である。これら第５図あるいは第６図に示すよう
に構成した穴明け工具であつても第３図および第
４図に示すガンドリルと同様に切屑を細かく分断
することができ、したがつて切屑に阻害されるこ
となく高送り切削をすることができる。

また、上記実施例においては、外刃１２の先端
角θ_２を内刃１１の先端角θ_１よりも大きく設定
することにより、外刃１２による切屑を内刃１１
に続く半円柱状凸曲面１４により強牲的に衝突さ
せているが、加工な容易な被削材（たとえばアル
ミニウムまたはアルミニウム合金など）によつて
は、θ_２＝θ_１となるように設定することもでき
る。

以上説明したように本考案に係る一枚刃穴明け
工具によれば、切刃を、始端が先端回転中心若し
くはその近傍に位置する凸曲線状切刃と、この凸
曲線状切刃の終端若しくはその近傍から外周縁に
至る直線状切刃とし、しかも先端視において両切
刃が互いに屈曲するように両切刃の境界部に屈曲
部を設けているので、切刃によつて生じる切屑
は、まず２分されて幅の狭いものとされ、さらに
円柱面による拡散作用、円柱面の一部分に当接す
ることによる衝突（または折り曲げ）作用および
各切刃で生じた切屑同士の干渉作用によつて細か
く分断されて速やかに排出され、したがつて切屑
が障害とならないから高送り切削を行なうことが
できる。

【図面の簡単な説明】

第１図は従来のガンドリルの先端視図、第２図
はその側面図、第３図は本考案の一実施例を示す
先端視図、第４図はその側面図、第５図は他の実
施例を示す先端視図、第６図は更に他の実施例を
示す先端視図である。 １１，１１ａ，１１ｂ……内刃、１２……外
刃、１４……凸曲面、１５……平坦面、Ａ……回
転方向、Ｏ……先端回転中心、Ｂ……屈曲部。

Claims (1)

1. 【実用新案登録請求の範囲】 一枚の切刃とそれに対応した単一刃溝および切
   削油の流通孔をもつ一枚刃穴明け工具において、
   前記切刃を次のような内刃イと外刃ロとにより構
   成し、しかも先端視においてそれら内刃と外刃と
   が互いに屈曲するように内刃と外刃との境界部に
   屈曲部を設けたことを特徴とする一枚刃穴明け工
   具。 (イ) 先端回転中心若しくはその近傍を始端として
   回転方向へ凸となる曲線状切刃。 (ロ) その曲線状刃の終端若しくはその近傍から外
   周縁に至る直線状切刃。