JP5319928B2 - ボーリング工具及び孔開け加工方法 - Google Patents

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本発明は、アルミニウム合金等の板金に対して、細径の貫通孔を開けるのに好適なボーリング工具及び孔開け加工方法に関する。
例えば、アルミニウム合金等からなる金型に対して、ワークを吸引するための空気孔を削孔することがあり、ドリルやエンドミルを用いて孔開けをしている。
特許文献1には、孔開けから溝加工を連続的に行うエンドミルが記載されており、先端の3枚の切刃と、該切刃のコーナー部には面取り刃が設けられている。
特許文献2には、肩削り用のエンドミルが記載されており、端面のコーナー部には円弧状又は直線状を呈する面取り刃が設けられている。この肩削り用のエンドミルは、孔開け加工ではなく壁面加工に用いられるものであり、先端面には軸方向に直交する平面が構成されている。
つまり、孔開け加工をする工具の先端には必ず切刃が設けられており、斜面凹部は設けられていない。
特開2005−219176号公報 実用新案登録第2525984号公報
ところで、金型に対して、ワークを吸引するための空気孔を削孔する場合において、ワークを均一に吸引するためには、多数の微小径の空気孔を削孔する必要があるが、細径のドリルにはあまり大きい力をかけられず、削孔に時間がかかる。
また、微小径で比較的深い孔を加工する場合、切刃を具える部分が長いボーリング工具では、強度の関係上、びびり(工具と材料の間の共振等による振動)や、折損などの懸念がある。特に、微小径で長いボーリング工具(例えば、切刃を具える部分の長さが外径に対して7倍以上の工具)で、さらに形状が不適切であると、工具にびびりが生じて精度のよい加工ができないことや、工具の折損などが生じると考えられている。
本発明はこのような課題を考慮してなされたものであり、微小径の孔を効率的に開けることが可能なボーリング工具及び孔開け加工方法を提供することを目的とする。
本発明に係るボーリング工具は、先端外周にC面取が設けられ、該C面取に接続され、内径側に向かって奥の方向に傾斜する複数の傾斜面と、前記傾斜面によって形成される傾斜凹部とを備えることを特徴とする。
このような、ボーリング工具によれば、先端に傾斜面を備えるとともに先端外周にC面取が設けられていることにより、微小径の孔を効率的に開けることができる。
この場合、前記C面取の寸法は、側面に切刃を備え、該切刃を備える部分の長さが外径の7倍以上であり、外径が0.02〜0.18mmであり、前記C面取の寸法は、外径の0.075倍〜0.35倍であってもよい。このような、ボーリング工具によれば、一層効率的に微小径で深い孔を開けることができる。
また、前記C面取の寸法は、外径の0.15倍〜0.28倍であってもよい。前記傾斜面は、周方向の傾斜角度が0°であってもよい。
本発明に係る孔開け方法は、前記のボーリング工具によって、アルミニウム合金に貫通孔を開けることを特徴とする。
このような、孔開け加工方法によれば、先端に傾斜面を備えるとともに先端外周にC面取が設けられていることにより、微小径の孔を効率的に開けることができる。
さらに、所定の工具により、前記アルミニウム合金に対して有底の中心穴を設ける第1工程と、前記中心穴によって位置決めをして前記ボーリング工具により貫通孔を開ける第2工程とを有してもよい。これにより、一層正確な位置に孔を開けることができる。
本発明に係るボーリング工具及び孔開け加工方法によれば、先端に傾斜面を備えるとともに先端外周にC面取が設けられていることにより、微小径の孔を効率的に開けることができる。
以下、本発明に係るボーリング工具及び孔開け加工方法について実施の形態を挙げ、添付の図1〜図10を参照しながら説明する。本実施の形態に係るボーリング工具及び孔開け加工方法は、例えば、アルミニウム合金等からなる金型に対して、ワークを吸引するための微小な空気孔を開けることに用いられる。以下の説明では、ボーリング工具10の軸方向をZ方向、その基端側方向をZ1方向、軸芯を基準とした径方向をR方向とも呼ぶ。
図1及び図2に示すように、本実施の形態に係るボーリング工具10は、所定の工作機械36(図6参照)のチャックに固定するための基部12と、該基部12と同軸上で先端側(図1における左側)に設けられた工具部14とを有する。工具部14の先端側には、側面に螺旋状の一対の切刃15を備える切刃部16が設けられている。基部12と工具部14は、例えば9°傾斜のテーパ部18で接続されている。切刃15の数は3以上であってもよい。螺旋形状は、図2のような緩やかな形状に限らない。ボーリング工具10は、超硬合金製である。
工具部14及び切刃部16の外径Dは、0.02〜0.18mmであるとよく、ボーリング工具10では0.14mmである。ボーリング工具10は、微小孔を開けるためのものであり、外径Dは0.18mm以下に設定されている。一方、外径が0.02mm未満の孔はあまり用いられることがなく、しかも工具製作が困難となるため、結果として外径Dは、0.02〜0.18mmとなる。
切刃部16の長さLは、孔開け対象のアルミニウム材の厚みと同じかやや長く設定され、ボーリング工具10では1.0mmである。長さLの外径Dに対する比Rは、R=1.0/0.14=7.14である。ボーリング工具10は、微小径の孔をあけるボーリング工具を使用する使用者としては、ある程度深い孔を開けることができるように比Rが大きいことが望ましく、R≧7とするとよい。一方、長さLは孔開け対象のアルミニウム材の厚みとの関係で設定され、過度に長い必要はなく、しかも過度に長いとボーリング工具10の強度が低下するため、Rは7以上で、できるだけ小さい方がよい(例えば、10以下)。
図3及び図4に示すように、ボーリング工具10の先端10aには、中心点を基準に対象な一対の扇形の傾斜面20を有する。傾斜面20は、内径側に向かってZ1方向(奥の方向)に緩やかに傾斜する面であり、傾斜角度θ1は、1°〜5°程度が好適であり、例えば3°にするとよい。
傾斜面20は、R方向(径方向周)には傾斜しているが、周方向の傾斜角度は0°である。つまり、傾斜面20においてR方向値が同じ地点では、Z方向値も同じ値になる。
傾斜面20は一対設けられており、断面視では、これらの傾斜面20によって傾斜凹部23が形成されている。
先端10aの外周(つまり、溝部21のない傾斜面20の外周側部分)にはC面取22が設けられている。符号21は溝部である。C面取22と傾斜面20は接続されている。
C面取り22は、側面視(図1参照)で、軸に対して略45°である。C面取22には、側面の切刃15と連続的につながる切刃24が設けられている。C面取22の寸法Cは、後述するように外径Dの0.075倍〜0.35倍であるとよく、外径Dの0.15倍〜0.28倍であると一層好ましい。ボーリング工具10では、C=0.03であり、外径D(=0.14)の0.21倍である。C面取22は、必ずしも軸に対して45°である必要はなく、例えば角度θ2は20°〜60°に設定可能である。C面取22の寸法Cは、先端10aからの軸方向長さで表すものとする。
次に、このように構成されるボーリング工具10を用いて行う孔開け方法について説明する。孔開けの対象となるは、金型30であり、図示しないワークを吸引するための微小径の空気孔32(図6参照)を設けるためのものである。空気孔32は貫通孔であり、径は0.14mm、長さ1.0mmであって比較的深い。金型30はアルミニウム合金であり、例えば、JIS H2211(1999)のAC3A、AC4C、AC7A及びAC8Cである。
先ず、図5に示すように、第1工程として、所定の工具(例えばドリル)39により、金型30に対して、浅い有底の中心穴34を設ける。金型30には、空気管路接続部37が設けられている。反対側の金型面38には、図示しない樹脂ワークに細かい模様をつけるためのシボが設けられている。
中心穴34は、位置決め用であり、正確な位置に空気孔32を開けることができる。中心穴34の深さYは、例えば0.2mmである。なお、諸条件により第1工程は省略してもよい。第1工程は、連続して複数回行った中心穴34を予め必要数設けておき、その後に第2工程に移るようにしてもよい。
次に、図6に示すように、第2工程として、中心穴34によって位置決めをしてボーリング工具10により空気孔32を開ける。ボーリング工具10は、工作機械36のチャックに固定して回転させ、所定の力で金型30に対して押し付けることにより微小径(D=0.14)の空気孔32が設けられる。
従来、孔開けのためのボーリング工具の先端には、当然に切刃が必要であると考えられ、特に傾斜面20のような面があると切削がなされないと考えられていた。ところが、本発明者が傾斜面20を有するボーリング工具10を試作して、金型30に対して孔開け加工の実験をしてみたところ良好な結果が得られた。
実験は、D=0.14mmの場合で、一般的な従来ドリルと、本実施の形態に係るボーリング工具10でC0.01、C0.03、C0.05及びC0.07の場合に分けて、それぞれ10回の孔開けを行った。従来ドリルとしては、株式会社サイトウ製作所製の基端側で、柄径と刃先径が異なるリーマ型ドリル(型番ADRL−0014)を用いた。この従来ドリルは、超硬合金製である。
まず、得られた各空気孔32について、ばりの形状を拡大写真で確認して点数付けをした。図7に示すように、ばり40が同心状で歪みが小さいものを2点、図8に示すように、ばり40がやや歪んでいるが空気孔32自体はほぼ円形であり、あるものを1点、図9に示すように、ばり40の形又は空気孔32の形がかなり崩れている場合には0点として、10個ずつの空気孔32について合計点を求めた。その結果、従来ドリルでは14点、ボーリング工具10でC0.01の場合には17点、C0.03の場合には18点、C0.05の場合には16点、C0.07の場合には17点であった。つまり、ボーリング工具10では従来ドリルよりも高得点であり、特にC0.03の場合が最も高得点である。また、C0.03及びC0.05の場合には0点の孔が一つもなく、ばり40が良好な状態であった。一般的な切削工具で、切削時にびびりが生じると、ばり40が生じやすくなる傾向があるが、ボーリング工具10ではびびりが少なかったと考えられる。また、本実施の形態に係るボーリング工具10では、先端面に実質的な底刃がない構成であり、工具剛性が高まっている。特に、傾斜面20は、周方向の傾斜角度が0°であり、実質的に切削をしていないことから、該傾斜面20に加わる負荷が小さいと考えられる。
次に、得られた各10回分の空気孔32の径を計測して平均値Daveを求めた。その結果、従来ドリルではDave=0.1354mm、ボーリング工具10でC0.01の場合にはDave=0.1422mm、C0.03の場合にはDave=0.1389mm、C0.05の場合にはDave=0.1379mm、C0.07の場合にはDave=0.1405mmであった。つまり、ボーリング工具10では従来ドリルよりも、目標値であるD=0.140に近い空気孔32が得られた。
得られた各10回分の空気孔32の径の計測値を図10に示す。図10に示すように、径の標準偏差は、従来ドリルでは0.00624、ボーリング工具10でC0.01の場合には0.001874、C0.03の場合には0.00351、C0.05の場合には0.002331、C0.07の場合には0.002506であった。つまり、いずれの場合にもばらつきは十分に小さく、特に、ボーリング工具10ではC0.01、C0.03及びC0.05のときにばらつきが小さいことが分かる。
さらに、加工に要する時間を比較(前記の第2工程同士の比較)した。このとき、従来ドリルの加工条件は、回転数18000rpm、送り50mm/minであり、C0.03のボーリング工具10では、回転数5000rpm、送り50mm/minとした。結果は、従来ドリルでは57secを要したところ、C0.03のボーリング工具10では、回転数が小さいにも拘わらず56secで足り、加工時間は略同等であり、微小径で比較的に深い空気孔32を多数加工するのに好適に適用可能であることが分かった。
このように、ばり40の形状、空気孔32の平均値Dave、標準偏差及び加工時間を総合的に勘案すると、ボーリング工具10ではC0.01、C0.03及びC0.05のときに良好な空気孔32が安定して得られることが分かる。面取Cの寸法Cを外径Dとの比(C/D)で表せば、0.01/0.14=0.071、0.03/0.14=0.214、0.05/0.14=0.357であり、寸法Cは、外径Dの0.075倍〜0.35倍であると好適である。
特に、C0.03の場合に良好な空気孔32が得られることから、0.03/0.14=0.214の近傍の値が好ましく、例えば±30%程度であればほぼ同じように良好な結果が得られることから、寸法Cは、外径Dの0.15倍〜0.28倍であると一層好ましい。
上述したように、従来は、孔開けのためのボーリング工具の先端には、傾斜面20に相当する面がなかったが、本発明者が行った実験の結果、傾斜面20を有するボーリング工具10により、良好な空気孔32が得られることが分かった。これは、先端にC面取22が設けられていることから、金型30への噛み込みが向上し、さらに、切削された材料の少なくとも一部が傾斜面20によって傾斜凹部23に向かって塑性流動が促進されたためと思われる。傾斜凹部23に向かって塑性流動した成分は、両脇の溝部21に排出されていると思われる。
本発明に係るボーリング工具及び孔開け加工方法は、上述の実施の形態に限らず、本発明の要旨を逸脱することなく、種々の構成を採り得ることはもちろんである。
本実施の形態に係るボーリング工具の側面図である。 本実施の形態に係るボーリング工具の斜視図である。 本実施の形態に係るボーリング工具の正面図である。 図3における矢視IV−IVの断面側面図である。 第1工程において中心穴を設ける様子を示す図である。 第2工程において空気孔を設ける様子を示す図である。 ばりが同心状で歪みが小さい空気孔の正面図である。 ばりがやや歪んでいるが、ほぼ円形の空気孔の正面図である。 ばりの形がかなり崩れている空気孔の正面図である。 従来ドリル、本実施の形態に係る3種類のボーリング工具による各10回分の実験結果で、各空気孔の径の計測値を示す表である。
符号の説明
10…ボーリング工具 10a…先端
12…基部 14…工具部
15、24…切刃 16…切刃部
20…傾斜面 22…C面取
30…金型 32…空気孔
36…工作機械
D…外径 L…切刃部の長さ
C…C面取寸法

Claims (6)

  1. 金属製のワークに孔を開けるためのボーリング工具であって、
    先端外周にC面取が設けられ、
    該C面取に接続され、内径側に向かって奥の方向に傾斜すると共に周方向の傾斜角度が0°である複数の平坦な傾斜面と、
    前記傾斜面によって形成される傾斜凹部とを備え
    複数の前記傾斜面は、工具先端面の中心の1点で交わるようにして前記傾斜凹部を形成していることを特徴とするボーリング工具。
  2. 請求項1記載のボーリング工具において、
    側面に切刃を備え、該切刃を備える部分の長さが外径の7倍以上であり、
    外径が0.02〜0.18mmであり、前記C面取の寸法は、外径の0.075倍〜0.35倍であることを特徴とするボーリング工具。
  3. 請求項1又は2記載のボーリング工具において、
    前記C面取の寸法は、外径の0.15倍〜0.28倍であることを特徴とするボーリング工具。
  4. 先端外周にC面取が設けられ、
    該C面取に接続され、内径側に向かって奥の方向に傾斜すると共に周方向の傾斜角度が0°である複数の平坦な傾斜面と、
    前記傾斜面によって形成される傾斜凹部とを備え
    複数の前記傾斜面は、工具先端面の中心の1点で交わるようにして前記傾斜凹部を形成しているボーリング工具によって、アルミニウム合金に貫通孔を開けることを特徴とする孔開け加工方法。
  5. 請求項4記載の孔開け加工方法において、
    前記ボーリング工具の外径が0.02〜0.18mmであり、前記C面取の寸法は、外径の0.075倍〜0.35倍であることを特徴とする孔開け加工方法。
  6. 請求項5記載の孔開け加工方法において、
    所定の工具により、前記アルミニウム合金に対して有底の中心穴を設ける第1工程と、
    前記中心穴によって位置決めをして前記ボーリング工具により貫通孔を開ける第2工程と、
    を有することを特徴とする孔開け加工方法。
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