JPH10199549A - 電気化学セル用基体、電気化学セルおよび電気化学セル用基体の製造方法 - Google Patents

電気化学セル用基体、電気化学セルおよび電気化学セル用基体の製造方法

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JPH10199549A
JPH10199549A JP9001245A JP124597A JPH10199549A JP H10199549 A JPH10199549 A JP H10199549A JP 9001245 A JP9001245 A JP 9001245A JP 124597 A JP124597 A JP 124597A JP H10199549 A JPH10199549 A JP H10199549A
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electrochemical cell
solid electrolyte
cell
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Abstract

(57)【要約】 【課題】電気化学セルの機械的強度の向上と重量の減少
とを両立させうるようにし、電極中における内部抵抗お
よび分極を減少させること 【解決手段】電気化学セルが、一方の電極を構成する自
己支持型の基体と、この基体上に形成されている固体電
解質膜4と、固体電解質膜4上に形成されている他方の
電極5とを備えている。基体2がセラミックハニカム構
造体からなる。セラミックハニカム構造体2のうち、固
体電解質膜4と接する壁部2aの厚さが0.5mm以下
である。好ましくは、一方の電極2が陽極である。

Description

【発明の詳細な説明】
【0001】本発明は、自己支持型の電極基体を備えて
いる、固体電解質型燃料電池、水蒸気電解セル、酸素ポ
ンプ、ノックス分解セル等の電気化学セルに関するもの
である。
【0002】
【従来技術】固体電解質型燃料電池では、電極またはイ
ンターコネクタを基体として強度を付与し、基体以外の
構成要素(固体電解質、他方の電極)は、電池の抵抗を
小さくするために、基体上に薄膜として形成すること
が、一般的に行われている。例えば、いわゆるウエステ
ィングハウスタイプの固体電解質型燃料電池では、円筒
型の空気極を基体とし、この上に固体電解質膜、燃料電
極膜を形成している。また、本出願人も、空気極とイン
ターコネクタとからなる積層焼結体を、空気極/インタ
ーコネクタ基体とし、この上に固体電解質膜、燃料電極
膜を形成した構造の単電池について開示した(特開平5
−166518号公報)。
【0003】
【発明が解決しようとする課題】しかし、平板型、円筒
型の単電池は、多数積み重ねて集合電池とするものであ
り、従って一定の機械的強度が必要である。従来の単電
池では、電極を基体として用いるため、基体に対して所
定の機械的強度を付与するために、基体の厚さを3mm
〜10mm程度と大きくすることが必要不可欠であっ
た。このため、基体が重くなり、基体の材料コストも大
きいという問題があった。また、基体の肉厚が大きいこ
とから、基体における内部抵抗が大きくなる。更に、発
電は電極と、気孔と、固体電解質とが接触する三相界面
で行われるが、基体が厚いことから、ガスが基体内を拡
散する際の拡散抵抗が大きく、分極が大きくなるため、
発電性能を低下させていた。また、固体電解質型燃料電
池以外の電気化学セル、例えば高温水蒸気電解セルの場
合にも、これと同様の問題点があることが判明してき
た。
【0004】本発明の課題は、電気化学セルの一方の電
極を構成する自己支持型の基体と、この基体上に形成さ
れている固体電解質膜と、この固体電解質膜上に形成さ
れている他方の電極とを備えている電気化学セルにおい
て,その機械的強度の向上と重量の減少とを両立させう
るようにし、また、電極中における内部抵抗および分極
を減少させることである。
【0005】
【課題を解決するための手段】本発明は、電気化学セル
用の自己支持型の基体であって、基体が少なくとも一方
の電極を備えており、基体がセラミックハニカム構造体
からなり、このセラミックハニカム構造体が固体電解質
膜を形成するための壁部を備えており、壁部の厚さが
0.5mm以下であることを特徴とする、電気化学セル
用基体に係るものである。
【0006】また、本発明は、前記の基体と、この基体
上に形成されている固体電解質膜と、この固体電解質膜
上に形成されている他方の電極とを備えていることを特
徴とする、電気化学セルに係るものである。
【0007】また、本発明は、基体が少なくとも一方の
電極とインターコネクターとを備えている場合に、一方
の電極を構成するセラミックス層に対応する坏土と、イ
ンターコネクターを構成するセラミックス層に対応する
坏土とを口金に対して同時に供給することによって基体
の成形体を製造し、この成形体を焼成することを特徴と
する、基体の製造方法に係るものである。
【0008】本発明者は、固体電解質型燃料電池の電極
基体を、セラミックハニカム構造体によって形成するこ
とを想到し、実際に単電池の製作を行い、発電実験を行
った。この結果、壁の厚さを小さくしても、所定の構造
体としての機械的強度を保持することができ、これによ
って単電池の軽量化が可能となった。更に、電極中にお
ける内部抵抗を減少させることができ、反応場へのガス
の供給性が高くなるために、分極を低下させる効果があ
り、単電池当たりの発電性能を一層向上させうることを
確認し、本発明に到達した。
【0009】本発明においては、基体を電極のみに構成
することができるが、基体を電極とインターコネクター
との積層物とすることもできる。
【0010】
【発明の実施形態】本発明の電気化学セルを、酸素ポン
プとして使用できる。また、本発明の電気化学セルを、
高温水蒸気電解セルとして使用できる。このセルは、水
素の製造装置に使用でき、また水蒸気の除去装置に使用
できる。この場合には、各電極で次の反応を生じさせ
る。
【0011】陰極:H2 O+2e- →H2 +O2 - 陽極:O2 - →2e- +1/2O2
【0012】更に、本発明の電気化学セルを、NOxの
分解セルとして使用できる。この分解セルは、自動車、
発電装置からの排ガスの浄化装置として使用できる。現
在、ガソリンエンジンから発生するNOxには、三元機
能触媒によって対応している。しかし、リーンバーンエ
ンジンやディーゼルエンジンなど、低燃費型のエンジン
が増加すると、これらのエンジンの排ガス中の酸素量が
多いので、三元機能触媒が機能しなくなる。
【0013】ここで、本発明の電気化学セルをNOx分
解セルとして使用すると、固体電解質膜を通して排ガス
中の酸素を除去するのと共に、NOxを電解してN2
2 - とに分解し、この分解によって生成した酸素をも
除去できる。また、このプロセスと共に、排ガス中の水
蒸気が電解されて水素と酸素とを生じ、この水素がNO
xをN2 へと還元する。
【0014】セラミックハニカム構造体に設けられた穴
の横断面の形状は特に限定されず、三角形、四角形、六
角形、その他の多角形であってよく、これらの組み合わ
せであってよい。好ましくは正三角形、正方形または長
方形、正六角形であってよい。
【0015】セラミックハニカム構造体のうち固体電解
質と接触する壁部の厚さは、0.5mm以下とする。こ
れによって、セラミックハニカム構造体のうち固体電解
質と接触する部分における分極抵抗が著しく減少する。
この観点からは、0.3mm以下とすることが、一層好
ましい。ただし、固体電解質を保持するためにはこの壁
部の厚さを0.1mm以上とすることが好ましい。
【0016】また、セラミックハニカム構造体のうち、
固体電解質と接触しない壁部の厚さは、限定されない。
しかし、基体をできる限り軽くするという観点からは、
1mm以下とすることが好ましく、強度を向上させると
いう観点からは、0.1mm以上とすることが好まし
い。
【0017】セラミックハニカム構造体の貫通孔の横断
面の幅は、縦横共に、構造的強度を一層向上させるため
には、5mm以下とすることが好ましく、製造し易さの
観点からは、0.5mm以上とすることが好ましい。
【0018】図1は、本発明の一つの実施形態に係る電
気化学セル1を示す正面図である。電極として働く基体
2が、セラミックハニカム構造体からなっている。セラ
ミックハニカム構造体2の外周面側の壁部2aの横断面
の形状は円形であるが、特に円形には限定されない。壁
部2aの内側に、例えば碁盤目形状に縦横に延びる多数
の直線状の壁部が形成されており、図1において縦方向
に延びる壁部2cと横方向に延びる壁部2bとを備えて
いる。壁部2bと2cとは互いに直交しており、これら
の間に正方形の貫通孔3が多数形成されている。
【0019】セラミックハニカム構造体2の外周面側の
壁部2aの表面に、固体電解質膜4が形成されており、
固体電解質膜4上に陰極膜5が形成されている。壁部2
aのうち、一部分には固体電解質膜4が形成されておら
ず、この部分にインターコネクター6が形成されてい
る。気密質の固体電解質膜4の端部と気密質のインター
コネクター6の端部とは互いにつながっており、貫通孔
3内を流れるガスがセル1の外部に漏出しないようにな
っている。
【0020】実際の作動時には、貫通孔3のうち、壁部
2aに対して直接に面している、最外周の貫通孔3Aの
みにガスを流し、壁部2aに対して直接に接触していな
い貫通孔3Bにはガスを流さないようにすることができ
る。また、貫通孔3A、3Bのいずれにも同時にガスを
流すことができる。
【0021】本発明において、セラミックハニカム構造
体からなる電極は、陽極または陰極であるが、陽極の方
が一層好適である。
【0022】陽極の主原料は、ランタンを含有するペロ
ブスカイト型複合酸化物であることが好ましく、ランタ
ンマンガナイト又はランタンコバルタイトであることが
更に好ましく、ランタンマンガナイトが一層好ましい。
ランタンマンガナイトは、ストロンチウム、カルシウ
ム、クロム、コバルト、鉄、ニッケル、アルミニウム等
をドープしたものであってよい。
【0023】陰極の主原料は、ニッケル、酸化ニッケ
ル、ニッケル─ジルコニア混合粉末、酸化ニッケル─ジ
ルコニア混合粉末、パラジウム、白金、パラジウム−ジ
ルコニア混合粉末、白金─ジルコニア混合粉末、ニッケ
ル−セリア、酸化ニッケル−セリア、パラジウム−セリ
ア、白金−セリアの各混合粉末等が好ましい。
【0024】固体電解質膜の材料としては、イットリア
安定化ジルコニア又はイットリア部分安定化ジルコニア
が好ましいが、他の材料を使用することもできる。ま
た、NOx分解セルの場合には、固体電解質膜を酸化セ
リウム系セラミックスとすることが特に好ましい。
【0025】インターコネクターの主原料は、ランタン
を含有するペロブスカイト型複合酸化物であることが好
ましく、ランタンクロマイトであることが更に好まし
い。耐熱性、耐酸化性、耐還元性を有しているからであ
る。ランタンクロマイトには、前記のような金属をドー
プすることもできる。
【0026】本発明において、電極基体として使用する
セラミックハニカム構造体を製造するためには、前記し
た電極の原料となる坏土を押出成形し、この際、ハニカ
ム形状の成形体に対応したダイスに通過させる。電極の
成形体を構成する坏土は、電極の主原料に対して、有機
バインダーと造孔材と水とを混合することで、製造でき
る。
【0027】この有機バインダーとしては、ポリメチル
アクリレート、ニトロセルロース、ポリビニルアルコー
ル、メチルセルロース、エチルセルロース、スターチ、
ワックス、アクリル酸ポリマー、メタクリル酸ポリマー
等を例示することができる。造孔材としては、セルロー
ス、カーボン、アクリルパウダー等を例示できる。主原
料の重量を100重量部としたとき、有機バインダーの
添加量は、0.5〜5重量部とすることが好ましく、造
孔材の添加量は、2〜20重量部とすることが好まし
い。
【0028】セラミックハニカム構造体が一方の電極と
インターコネクターとからなる場合には、一方の電極を
構成するセラミックス層に対応する坏土と、インターコ
ネクターを構成するセラミックス層に対応する坏土とを
口金に対して同時に供給することによって成形体を製造
し、この成形体を焼成することによって、セラミックハ
ニカム構造体を製造することが好ましい。
【0029】この場合、インターコネクターのグリーン
成形体を構成する坏土は、前記の主原料に対して有機バ
インダーと水とを混合することで、製造できる。この有
機バインダーとしては、ポリメチルアクリレート、ニト
ロセルロース、ポリビニルアルコール、メチルセルロー
ス、エチルセルロース、スターチ、ワックス、アクリル
酸ポリマー、メタクリル酸ポリマー等を例示することが
できる。主原料の重量を100重量部としたとき、有機
バインダーの添加量は0.5〜5重量部とすることが好
ましい。
【0030】図2は、この実施形態に係る電気化学セル
18を示す断面図である。セル18の基体19は、断面
形状が略長方形のセラミックハニカム構造体からなって
いる。基体19の上側は陽極22からなり、陽極22の
下側にはインターコネクター25が一体焼成によって接
合されている。陽極22を取り囲むように、水平方向に
壁部22aが延びており、壁部22aの末端から垂直方
向に壁部22eが延びている。各壁部22a、22eの
厚さmは、0.5mm以下である。
【0031】陽極22を取り巻く壁部22a、22eの
内側に、縦横に碁盤目状に延びる壁部22b、22fが
形成されている。壁部22bと22fとによって多数の
貫通孔23Cが形成されている。また、壁部22aと壁
部22bとの間に一列の貫通孔23Aが形成されてお
り、壁部22eと壁部22fとの間に貫通孔23Bが形
成されている。貫通孔23A、23Bは、陽極22の外
周を取り巻く壁部22a、22eに直接に面している。
陽極22それ自体もハニカム構造体を構成している。
【0032】陽極22の最下部の壁部22fに対して、
インターコネクター25の垂直方向に延びる壁部25b
が接合されており、各壁部25bは、インターコネクタ
ー25の外縁部を形成している壁部25aにつながって
いる。29は陽極とインターコネクターとの接合部分で
ある。壁部22b、22f、25b、25aによって、
貫通孔24が形成されており、各貫通孔24は陽極とイ
ンターコネクターとに対して面している。
【0033】陽極22の壁部22aの表面22cに固体
電解質膜20の水平部分20aが形成されており、壁部
22eの表面22dに固体電解質膜20の垂直部分20
bが形成されている。固体電解質膜20bの端部はイン
ターコネクター25の表面25cまで達している。固体
電解質膜20a、20bによって、セラミックハニカム
構造体19内の貫通孔23A、23B、23C、24が
気密に保持されている。固体電解質膜20a上に陰極膜
21の水平部分21aが形成されており、膜20b上に
陰極膜21の垂直部分21bが形成されている。
【0034】発電時には、少なくとも貫通孔23A、2
3Bに酸化ガスを流すことによって、固体電解質膜20
a、20bの全体で同時に起電力を発生させることがで
きる。
【0035】固体電解質型燃料電池の場合、貫通孔23
C、24にも酸化ガスを流すことができる。この場合に
は、貫通孔23C、24中を流れる酸化ガスが、発電に
よって生じた熱を奪いながら単電池の外部へと抜け、こ
の過程で単電池を冷却する作用がある。これによって、
単電池の長手方向の温度分布が均一化するという作用効
果が得られる。
【0036】更に、インターコネクター材料として一般
に使用されているランタンクロマイトは、還元雰囲気中
よりも酸化雰囲気中の方が、抵抗が低くなることが知ら
れている。本実施形態において、インターコネクター2
5をランタンクロマイトによって形成すると、貫通孔2
4中にも酸化ガスを供給できるので、これによってイン
ターコネクター25の抵抗を小さくでき、かつインター
コネクター25の壁部の厚さを小さくできるので、更に
インターコネクターの抵抗を低減できる。これによって
セルの内部抵抗を一層低減できる。
【0037】本発明においては、例えば図2に示したよ
うに、電極とインターコネクターとを一体化した構造の
セラミックハニカム基体を使用することが特に好まし
い。こうした構造の基体は梁構造を持っており、構造強
度が高いからである。
【0038】また、電気化学セルの断面形状は、図2に
示すような長方形状とすることが好ましい。例えば、固
体電解質型燃料電池の場合に、単電池の外側を燃料ガス
が流れるが、この際単電池の形状が図1に示すような円
形であると、反応に関与しない余分なデッドスペースに
も燃料ガスが流れる。これに対して、長方形状とするこ
とによって、こうしたデッドスペースが少なくなり、燃
料利用効率が向上するからである。
【0039】
〔実験A〕
(実施例1の単電池の製造)平均粒径3μmのランタン
マンガナイト原料粉末100重量部、セルロース5重量
部、メチルセルロース3重量部、および水12重量部を
混練機に入れ、混練して坏土を調製した。この坏土を、
真空土練機を用いて成形し、直径50mm、長さ300
mmの円柱形状の坏土成形体を作製した。押し出し機の
シリンダーに、ハニカム構造を成形するための口金を取
り付けた。前記の坏土の成形体を、シリンダー内に収容
し、ピストンを前進させ、押出成形し、図1に示すよう
な形状のセラミックハニカム成形体を製造した。この成
形体の外形は、直径18mm、長さ500mmであり、
各貫通孔の横断面の形状は略正方形であり、壁厚は成形
体の全体にわたって0.6mmであり、各貫通孔の幅
は、縦横共に0.6mmであり、貫通孔のピッチは1.
2mmであった。
【0040】この成形体を、乾燥機を用いて100℃で
乾燥し、次いで、電気炉で昇温速度100℃/時間で1
600℃まで昇温し、1600℃で3時間焼成し、セラ
ミックハニカム構造体1を得た。この構造体1の外形
は、直径15mm、長さ300mmであり、各貫通孔の
横断面の形状は略正方形であり、壁厚は成形体の全体に
わたって0.5mmであり、各貫通孔の幅は、縦横共に
0.5mmであり、貫通孔のピッチは1.0mmであっ
た。
【0041】次いで、このセラミックハニカム構造体1
の外周面のうち、成膜しない部分を耐熱テープでマスキ
ングをした。インターコネクターをプラズマ溶射機を用
いて成膜する。平均粒径35μmのランタンクロマイト
粉末を、出力40kwで、アルゴンと水素のプラズマガ
ス中で溶かし、膜厚150μm成膜した。その後マスク
を剥がした。
【0042】次いで、固体電解質をプラズマ溶射機で製
膜した。まず、固体電解質を製膜しない部分を、耐熱テ
ープでマスキングをした。平均粒径25μmの9mol
%イットリア安定化ジルコニア粉末を、出力40kw
で、アルゴンと水素のプラズマガス中で溶かし、ハニカ
ム構造体上に膜厚100μm成膜した。その後マスクを
剥がした。インターコネクターと固体電解質の緻密化を
するため、構造体の全体を、1450℃で3時間、空気
中、電気炉で熱処理をした。
【0043】次に、燃料極を固体電解質上にスクリーン
印刷で成膜した。ニッケルの体積割合が60体積%とな
るように、NiO粉末とイットリア安定化ジルコニア粉
末とポリエチレングリコールとを混合し、ペーストを調
合した。このペーストを、円筒用スクリーン印刷機で固
体電解質膜上に成膜した。ペーストの膜厚は100μm
とした。その後、構造体の全体を電気炉に収容し、14
00℃で2時間焼成することによって、ニッケル−ジル
コニアサーメットからなる燃料極膜を形成した。こうし
て実施例1の単電池を作成した。
【0044】(実施例2、3の単電池の製造)セラミッ
クハニカム構造体の壁部の厚さの効果を調べるため、上
記の実施例1と同様にして、実施例2、3の各単電池を
製造した。ただし、実施例2においては、焼成後の構造
体1の壁部の厚さが0.1mmとなるようにし、実施例
3においては、焼成後の構造体1の壁部の厚さが0.2
mmとなるようにした。
【0045】(比較例1)実施例1と同様にして単電池
を製造した。ただし、空気極基体として、円筒形状の基
体を製造した。円筒を成形するための口金を押出成形装
置に取り付け、次いで前記の坏土の成形体を押出成形装
置内に収容した。ピストンを前進させ、直径18mm、
肉厚2.4mm、長さ500mmの円筒形状の成形体を
得た。この成形体を、実施例1と同様にして焼成するこ
とによって、円筒形状の空気極基体管を製造した。この
直径は15mmであり、肉厚は2.0mmであり、長さ
は300mmであった。
【0046】(固体電解質型燃料電池の発電試験)図3
および図4に模式的に示した発電試験装置を使用し、発
電試験を行った。実施例1、2、3および比較例の各単
電池14を、集電体12と13との間に設置し、各集電
体を白金線10、11に接続した。集電体12、13と
しては、ニッケル製の板を使った。集電体12、13と
単電池14との間には、ニッケルフェルト15を介在さ
せた。これらを容器9内に収容した。室温バブラーに水
素を通して加湿し、矢印Aのように容器9内に供給し、
単電池14の燃料極に対して接触させ、矢印Bのように
容器9から排出した。
【0047】単電池14を、セラミックス製のマニホー
ルド8A、8Bに対して気密に固定した。マニホールド
8Bを通して、矢印Cのように空気を供給し、単電池の
内部に流し、矢印Dのように排出した。
【0048】温度1000℃の発電条件下で、各単電池
の分極値を、電流遮断法によって測定した。使用電流密
度は、電極面積当たりで300mA/cm2 とした。こ
れらの測定結果を、表1に示す。
【0049】
【表1】
【0050】表1から判るように、本発明の単電池は、
比較例の単電池に比較して、分極値が著しく小さくなっ
ている。また、壁部の厚さを0.5mm以下とすること
によって、分極値が著しく小さくなった。
【0051】〔実験B〕 (実施例4、5、6の単電池の製造)平均粒径3μmの
ランタンマンガナイト原料粉末100重量部、セルロー
ス5重量部、メチルセルロース3重量部、および水14
重量部を混練機に入れ、混練することによって、直径5
0mm、長さ300mmの円柱形状の坏土を製造した。
一方、平均粒径3μmのランタンクロマイト原料粉末1
00重量部、メチルセルロース3重量部および水14重
量部を混練機に入れ、混練することによって、直径50
mm、長さ300mmの円柱形状の坏土を製造した。
【0052】前記の各坏土を使用して、同時押出成形に
よって基体19の成形体を製造した。この際には、図5
に示す形態の押出成形機を使用した。即ち、各成形胴3
6A、36Bの各通路40A、40Bの中に、空気極用
坏土39Aとインターコネクター用坏土39Bとを投入
した。プランジャー37Aの軸38Aを移動させ、空気
極用坏土39Aを口金32の方向へと押し出した。これ
と同時に、プランジャー37Bの軸38Bを移動させ、
坏土39Bを口金32へと押し出した。口金32は、入
口部分32aと出口部分32bとからなる。入口部分3
2aにおいては、2つの入口通路34A、34Bが形成
されており、両者の間に隔壁が設けられている。各入口
通路の横断面は、それぞれ円形である。出口部分32b
中の出口通路35の横断面は長方形である。口金32の
先端部分にダイス33が設置されている。
【0053】第一のプランジャー37Aと第二のプラン
ジャー37Bとの各押出速度や圧力を、成形体の曲がり
が発生しないように調整した。こうして得られた成形体
は、図2の基体19の形状に対応する断面形状を有して
いる。この成形体を、乾燥機を用いて100℃で乾燥
し、次いで、電気炉で昇温速度100℃/時間で160
0℃まで昇温し、1600℃で3時間焼成することによ
って、基体19を得た。この基体19の寸法は、縦約6
mm、横約20mm、長さ約300mmであった。
【0054】固体電解質膜を成膜しない部分を耐熱テー
プでマスキングした後、固体電解質である8mol%イ
ットリア安定化ジルコニア粉末を、プラズマ溶射機によ
って、空気極の全面を覆うように溶射し、厚さ60μm
の溶射膜を得た。こうして得られた構造体の全体を電気
炉内に収容し、1400℃で4時間熱処理し、溶射膜を
緻密化させた。次いで、成膜しない部分を耐熱テープで
マスキングした後、酸化ニッケル50重量%と8mol
%イットリア安定化ジルコニア50重量%との混合粉末
を、固体電解質膜上に40kWの出力でプラズマ溶射
し、燃料電極膜を形成した。
【0055】前記において、ダイスの形状を変化させる
ことによって,固体電解質膜に接する壁部の厚さを、表
2に示すように変更した。
【0056】(比較例2の単電池の製造)実施例4と同
じようにして比較例2の単電池を製造した。ただし、ダ
イスの形状を変更することによって、図6に示す構造の
単電池26を製造した。ただし、図2に示した構成部分
には同じ符号を付け、その説明は省略する。ここで、単
電池26の基体45の断面形状は略長方形であり、基体
45の上側は空気極27からなり、空気極27の下側に
はインターコネクター30が一体焼成によって接合され
ている。空気極27とインターコネクター30との間に
複数個の貫通孔28が形成されている。各貫通孔28
は、それぞれ空気極27とインターコネクター30とに
面している。
【0057】(発電特性の測定)実施例4、5、6およ
び比較例2の各単電池について、重量当たりの出力密度
を測定し、測定結果を表2に示した。
【0058】
【表2】
【0059】この結果からわかるように、本発明によっ
て基体をハニカム構造体とすることによって、単電池の
重量当たりの出力密度が著しく上昇した。これは、空気
極の壁部を薄くできるために、分極値が小さいからであ
る。また、基体をハニカム形状としたことによって、基
体が軽量でありながら、固体電解質型燃料電池用の構造
体として十分な強度を有するからである。
【0060】〔実験C〕実施例4、5、6に示すように
して、図2の形態を有する本発明例の高温水蒸気電解セ
ルを製造した。ただし、固体電解質膜に接する壁部の厚
さを0.3mmとした。また、比較例2に示すようにし
て、図6に示す構造の比較例の高温水蒸気電解セルを製
造した。
【0061】本発明例および比較例の各高温水蒸気電解
セルを使用して、電気炉内で1000℃で水蒸気電解を
実施した。陰極(ニッケル−ジルコニアサーメット)側
には、0.5%の水素を含有するヘリウムをキャリアガ
スとして、5.6%H2 Oを供給した。陽極(ランタン
マンガナイト)側には空気を供給した。この際、陰極側
のガスと陽極側のガスとが互いに混合しないように、セ
ルの端部をガラスによってガス供給マニホールドに対し
てシールした。電圧と電流密度との関係を測定した結果
を、図7に示す。
【0062】この結果から判るように、電圧が同じであ
っても、本発明例の方が電流密度が高く、電解効率が高
いことがわかった。これは、固体電解質に面する陽極の
厚さを薄くできるために、陽極に発生した酸素がスムー
ズに除去されるためと考えられる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の一つの実施形態に係る円筒型の単電池
を示す正面図である。
【図2】本発明の他の実施形態に係る単電池を示す正面
図である。
【図3】固体電解質型燃料電池の発電試験に使用した装
置を、その長手方向にみたときの模式図である。
【図4】図3の装置を、その幅方向にみたときの模式図
である。
【図5】図2のような基体を製造するのに好適な押し出
し成形装置を概略的に示す断面図である。
【図6】比較例で製造した単電池を示す正面図である。
【図7】本発明例および比較例の各高温水蒸気電解セル
の電圧−電流密度特性を示すグラフである。
【符号の説明】
1、18、21、26 電気化学セル 2 セラミッ
クハニカム構造体からなる電極 2a セラミックハ
ニカム構造体2の固体電解質と接触する壁部 2b
その他の壁部 3 貫通孔 3A 最外周の貫通孔
3B 壁部2aに対して直接に接触していない貫通孔
4、20 固体電解質膜 5、21 陰極膜
6、25、30 インターコネクター 9 容器
10、11 白金線 12、13 集電体 19
陽極とインターコネクターとを備えている基体 22
ハニカム構造の陽極 22a、22e固体電解質と
接する壁部 23A、23B 外周側の貫通孔

Claims (5)

    【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】電気化学セル用の自己支持型の基体であっ
    て、前記基体が少なくとも一方の電極を備えており、前
    記基体がセラミックハニカム構造体からなり、このセラ
    ミックハニカム構造体が固体電解質膜を形成するための
    壁部を備えており、前記壁部の厚さが0.5mm以下で
    あることを特徴とする、電気化学セル用基体。
  2. 【請求項2】前記基体を構成する前記セラミックハニカ
    ム構造体が、前記一方の電極とインターコネクターとを
    備えていることを特徴とする、請求項1記載の電気化学
    セル用基体。
  3. 【請求項3】前記一方の電極が陽極であることを特徴と
    する、請求項1または2記載の電気化学セル用基体。
  4. 【請求項4】請求項2記載の電気化学セル用基体を製造
    する方法であって、前記一方の電極を構成するセラミッ
    クス層に対応する坏土と、前記インターコネクターを構
    成するセラミックス層に対応する坏土とを口金に対して
    同時に供給することによって前記基体の成形体を製造
    し、この成形体を焼成することを特徴とする、電気化学
    セル用基体の製造方法。
  5. 【請求項5】請求項1〜3のいずれか一つの請求項に記
    載の電気化学セル用基体と、この基体上に形成されてい
    る固体電解質膜と、この固体電解質膜上に形成されてい
    る他方の電極とを備えていることを特徴とする、電気化
    学セル。
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