JPH10191830A - 泉水を用いた魚介類の生産方法 - Google Patents

泉水を用いた魚介類の生産方法

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JPH10191830A
JPH10191830A JP485097A JP485097A JPH10191830A JP H10191830 A JPH10191830 A JP H10191830A JP 485097 A JP485097 A JP 485097A JP 485097 A JP485097 A JP 485097A JP H10191830 A JPH10191830 A JP H10191830A
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Shinya Nakamura
真也 中村
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Abstract

(57)【要約】 【課題】 飼育水の交換および特別な水浄化処理を行う
必要のない簡便で効率的な魚介類の生産方法を提供する
こと。 【解決手段】 上記課題を解決する本発明の魚介類生産
方法は、閉鎖系水槽を用いる循環方式によって魚介類を
成長および/または繁殖させる魚介類の生産方法であっ
て、その閉鎖系水槽に貯留する飼育水として、ナトリウ
ム−炭酸水素塩泉水または該泉水と同等の成分となるよ
うに調製された人工泉水を使用することを特徴とする方
法である。

Description

【発明の詳細な説明】
【0001】
【発明の属する技術分野】本発明は魚介類の生産(養
殖)に関し、詳しくは、閉鎖系水槽を用いる循環方式に
基づく魚介類の生産(養殖)方法に関する。
【0002】
【従来の技術】海や川から離れた内陸部での魚介類の生
産(養殖)あるいは活魚料理店等における食用魚の飼育
は、ヒラメ、アマゴ等の対象魚介類各々に適応する水
(以下「飼育水」という。)の供給が容易ではないこと
から、通常、閉鎖系水槽を用いたいわゆる循環方式によ
って行われている。この循環方式は、沿岸水域や河川内
に設けられた囲い内での魚介類の養殖(生産)とは異な
り、飼育過程において水槽内に蓄積された残餌あるいは
飼育魚介類から排出された老廃物や有毒物(アンモニア
等)を循環濾過によって除去しつつ、一定量の限られた
飼育水を長期間継続して使用することを特徴とする。こ
のため、従来の循環方式に基づく魚介類の養殖では飼育
水の水質を維持・浄化するための水質管理に多大な労力
を払う必要があった。
【0003】例えば、特公平7−55116号公報に
は、飼育水槽中のアンモニア酸化速度や硝酸分解速度等
をパラメータとして運転される「魚介類の循環濾過養殖
システム」が開示されている。図2に模式的に示すよう
に、このような従来の循環濾過式養殖システムには飼育
水を維持・浄化するための水質管理装置として、(i).不
溶性有機物を物理的に除去するためのトラップ装置、(i
i). アンモニア態窒素を亜硝酸態窒素および硝酸態窒素
に酸化させるための硝化菌等を付着させた濾材を有する
アンモニア処理槽(生物学的濾過槽)、(iii).蓄積した
硝酸態窒素を除去するための脱窒槽、(iv). 飼育水のp
Hを調整するためのpH調節槽、および(v).有害(病
原)微生物を死滅させるための紫外線照射装置等が必要
であり、これら装置はエアポンプ付き飼育水槽本体に付
設されている。そして、上述のパラメータに基づいて上
記各装置を作動させることによって、飼育水槽に貯留す
る飼育水の水質をコントロールしている。
【0004】
【発明が解決しようとする課題】しかしながら、既存の
装置における水処理能力には限界があるため、従来の循
環方式によっては飼育水を全く交換せずに長期間(典型
的には5〜6カ月またはそれ以上)魚介類を飼育するの
に限界があった。例えば、ヒラメの養殖生産に関して
は、商業的観点から飼育密度を高くした場合(30〜4
0kg/m2 )、一般的には2〜20日に一度の割合で
水槽中の飼育水の全交換を必要とし、上記公報に記載さ
れる循環濾過養殖システムを利用した場合でも3〜4カ
月に一度は全飼育水量の1/4〜1/3程度の換水が必
要であった(上記公報参照)。このため、従来の循環方
式による魚介類の生産では、水槽内の水質を長期間維持
するために商業的採算性を度外視して水槽内における魚
介類の飼育密度を低く抑える必要があった。従って、面
倒な換水作業等の水浄化処理を全く行う必要のない新規
な魚介類の循環式生産方法の開発が要望されていた。
【0005】本発明は、従来の循環方式に基づく魚介類
生産方法における上記問題点を根本から解決するもので
あり、その目的とするところは、飼育水の交換および特
別な水浄化処理を行う必要のない簡便で効率的な魚介類
の生産(養殖)方法を提供することである。さらに本発
明の他の目的は、水質の劣化等に起因する魚介類の疾病
を予防し、皮膚の変色等の飼育魚介類特有の疾患を治療
する方法を提供することである。
【0006】
【課題を解決するための手段】本発明者は、循環方式に
おける飼育水の浄化(濾過)工程の簡素化を目的とし
て、長期にわたって魚介類飼育に適する水質を鋭意検討
した結果、ある種の泉水を飼育水に適用することで、特
別な水浄化処理(典型的には循環濾過処理)を施すこと
なく魚介類を長期間飼育し得ることを見出し、本発明を
完成するに至った。
【0007】すなわち、本発明では、閉鎖系水槽を用い
る循環方式によって魚介類を成長および/または繁殖さ
せる魚介類の生産方法であって、その閉鎖系水槽に貯留
する飼育水として、ナトリウム−炭酸水素塩泉水または
該泉水と同等の成分となるように調製された人工泉水を
使用することを特徴とする魚介類の生産方法(以下「本
発明の魚介類生産方法」という。)を提供する。
【0008】本発明の魚介類生産方法においてはナトリ
ウム−炭酸水素塩泉水または該泉水と同等の成分になる
ように調製された人工泉水(以下「本発明の飼育泉水」
と総称する。)を閉鎖系水槽における飼育水として使用
する。本発明者が見出した本発明の飼育泉水中では、長
期にわたって魚介類を高密度で飼育した場合であって
も、残餌や排泄物等に因る水質の劣化が認められず、さ
らには魚介類に有毒な溶存アンモニア態窒素、亜硝酸態
窒素等の蓄積が抑制され得る。このため、本発明の飼育
泉水中では水質の劣化に起因する魚介類の生育阻害が認
められず、むしろ魚介類の健全な成長を促進することが
できる。従って、本発明の魚介類生産方法に基づけば、
閉鎖系水槽における魚介類飼育密度を高く維持したまま
生物学的濾過等の特別な水浄化処理や換水処理を行うこ
となく一定量の飼育水中で長期にわたって魚介類を迅速
に成長および/または繁殖させることができる。すなわ
ち、本発明の魚介類生産方法によれば、簡便且つ効率的
に魚介類の商業的生産を行うことができる。
【0009】また、本発明の他の側面は、上記本発明の
飼育泉水中で魚介類を飼育することを特徴とする魚介類
の疾患を治療する方法を提供することである。上述のよ
うに、本発明の飼育泉水では残餌や排泄物等に因る水質
の劣化が認められず、さらには魚介類に有毒な溶存アン
モニア態窒素、亜硝酸態窒素等の蓄積が抑制され得る。
このため、本発明の飼育泉水中では魚介類の成長が損な
われないばかりでなくその生育活性を高めることができ
る。従って、本発明の飼育泉水中で魚介類を飼育するこ
とによって、従来の閉鎖系循環方式に基づいて生産され
た養殖魚介類に散見される皮膚(体表面)の変色等の疾
患を予防および治癒することができる。
【0010】本発明の魚介類生産方法の好ましい一態様
は、上記ナトリウム−炭酸水素塩泉水中の塩分を調整す
ることによって海洋性魚介類の成長および/または繁殖
が実現されることを特徴とする。本態様の魚介類生産方
法においても、本発明の飼育泉水を飼育水のベースとし
ているため、所望する塩分濃度に関わらず、特別な水浄
化処理や換水処理を行うことなく一定量の飼育水中で長
期にわたって海洋性魚介類を成長および/または繁殖さ
せることができる。さらに、本態様の魚介類生産方法で
は、本発明の飼育泉水を飼育水のベースとする結果、天
然の海水における塩分濃度(典型的には30〜35パー
ミル)よりも低い塩分濃度で海洋性魚介類を飼育するこ
とが可能である。従って、本態様における海洋性魚介類
の生産方法によれば、塩分調整のために使用する岩塩等
の塩分補給材の使用量を低減させることができる。
【0011】さらに好ましい本発明の魚介類生産方法
は、上記ナトリウム−炭酸水素塩泉水のpHが8.0〜
9.0の範囲内にあることを特徴とする。本態様の魚介
類生産方法によれば、長期にわたって飼育水を魚介類の
生育に適したアルカリ性に維持することができる。この
ため、飼育水の水質維持および飼育魚介類の生育活性増
大効果がさらに顕著である。
【0012】
【発明の実施の形態】本発明は、典型的には以下のよう
に実施され得る。
【0013】本発明の魚介類生産方法において飼育水と
して使用し得る上記本発明の飼育泉水は、いわゆるナト
リウム−炭酸水素塩泉(炭酸水素イオンおよびナトリウ
ムイオンを主要なミネラル成分とするアルカリ性泉水)
であればよく、特定のイオン組成や微量元素を要求する
ものではない。炭酸水素イオンおよびナトリウムイオン
を主要なミネラル成分とするアルカリ性泉水であって魚
介類に有毒な成分を含有しないものである限り、天然産
の泉水(温泉、冷泉のいずれでもよい。)を本発明の飼
育泉水としてそのまま使用することができる。あるい
は、典型的な天然産ナトリウム−炭酸水素塩泉と同等の
成分となるように、種々の無機イオンを配合して調製し
てもよい。そのような人工泉水も本発明の飼育泉水とし
て好適である。炭酸水素イオン濃度が500mg/kg
以上であるナトリウム−炭酸水素塩泉が本発明の飼育泉
水として好適である。炭酸水素イオン濃度がおおよそ8
00mg/kg〜1200mg/kgの範囲内にあるナ
トリウム−炭酸水素塩泉が本発明の飼育泉水として特に
好ましい。
【0014】また、本発明の飼育泉水は魚介類の生育活
性を増大させるため、魚介類の疾患を予防および治癒さ
せることができる。特に養殖ヒラメ特有の腹側体表面の
黒化の発生を防止することができる。さらには既に腹側
体表面が黒化したヒラメを本発明の飼育泉水中で飼育す
ることによって、当該黒化現象を解消して腹側体表面を
天然産ヒラメと同様の正常な白色に戻すことができる。
【0015】本発明の飼育泉水には炭酸水素イオンおよ
びナトリウムイオンの他に、魚介類の生育(成長および
繁殖を包含する。以下同じ。)に悪影響を及ぼさない種
々のミネラル成分を含ませることができる。例えば、陽
イオンとしてカリウムイオン、マグネシウムイオン、カ
ルシウムイオン、アルミニウムイオン、鉄イオン(典型
的には2価)のいずれかまたはこれら陽イオンを適宜組
み合わせて含ませることができ、陰イオンとしては塩素
イオン、炭酸イオン、硫酸イオン、フッ素イオン、ホウ
酸イオンのいずれかまたはこれら陰イオンを適宜組み合
わせて含ませることができる。本発明の飼育泉水として
はカリウムイオンを高濃度に含むものが良く、魚介類の
生育を早めることができる。例えば海洋性魚介類を生産
する場合には、1000mg/kg〜5000mg/k
gのカリウムイオンを含むものが好ましく、2000m
g/kg〜5000mg/kgのカリウムイオンを含む
ものが特に好適である。本発明の飼育泉水は、魚介類の
生育に悪影響を及ぼさない種々の非イオン性成分を含有
することができる。メタケイ酸等のケイ素化合物の含有
が好ましい。
【0016】本発明の実施にあたっては、飼育水をアル
カリ性〜弱アルカリ性に維持し得るように本発明の飼育
泉水のpHを調整しておくことが好ましい。pH値が
7.0〜9.0の範囲内にあるものが良く、8.0〜
9.0の範囲内にあるものが本発明の飼育泉水として特
に好適である。この範囲内においては本発明の飼育泉水
の緩衝能が高いため、飼育期間が長期に及んだ場合でも
当該飼育水のpH変動を抑制することができる。
【0017】本発明の飼育泉水は、ナトリウム−炭酸水
素塩を主成分とするため、含有する塩分を適宜調整する
ことで殆ど全ての魚種を成長および/または繁殖させる
ことができる。例えば、本発明の魚介類生産方法によっ
てヒラメ、オニオコゼ、クルマエビ、トラフグ、ハタ
類、アマゴ、コイを好適に生産することができる。本発
明の魚介類生産方法は、特にヒラメあるいはオニオコゼ
の商業生産に好ましい。
【0018】本発明の飼育泉水の塩分は、生産対象の魚
介類に応じて適宜調節することができる。たとえば、コ
イ、アマゴ等の淡水性魚介類を飼育、生産する場合に
は、低張性のアルカリ性泉水であればそのまま使用する
ことができる。他方、岩塩等を補給することによって本
発明の飼育泉水を所望の塩分濃度に調整することでヒラ
メ、オニオコゼ、クルマエビ等の海洋性魚介類を飼育、
生産することができる。例えば、天然産ナトリウム−炭
酸水素塩泉水を本発明の飼育泉水として用いる場合に
は、当該ナトリウム−炭酸水素塩泉水に市販の岩塩等を
適宜補給することで容易に塩分調整することができる。
このとき、本発明の飼育泉水においては、炭酸水素イオ
ン等が多量に含有されることから、天然の海水と同等レ
ベルの高塩分濃度(30〜35パーミル)は要求されな
い。1.5パーミル程度の低塩分濃度であっても本発明
の飼育泉水であれば種々の海洋性魚介類を長期間飼育す
ることが可能となる。生産対象の魚種によって変動し得
るが大凡15〜35パーミルの範囲内の塩分濃度(塩化
ナトリウム換算)が、海洋性魚介類の飼育用の本発明の
飼育泉水として好適である。塩分濃度が27パーミル〜
35パーミルのものが特に好ましい。
【0019】次に、本発明を実施するのに好適な循環式
施設(システム)を説明する。本発明の魚介類生産方法
の実施にあたっては上述の本発明の飼育泉水を閉鎖系水
槽の飼育水として用いればよく、特定の設備や煩雑な水
浄化処理等を必要としない。従って、従来型の種々の形
状の閉鎖系水槽をそのまま使用することができ、特段の
変更を加えることなく一般的な循環式養魚法に基づいて
本発明の魚介類生産方法を好適に実施することができ
る。
【0020】このとき、上述のとおり、本発明の飼育泉
水では濁りおよび悪臭の発生やpHの酸性側へのシフト
等の水質の劣化、ならびにアンモニア態/亜硝酸態窒素
等の有毒成分の蓄積が飼育期間中ほとんど認められない
ため、本発明の実施施設においては上述の図2に示すよ
うな種々の水浄化装置(硝化槽、pH調整槽等)を飼育
水槽に付設する必要がない。典型的には、図1に示すよ
うに、通常のエアポンプ付き循環式飼育水槽と大型の不
溶性不純物を取り除くためのストレーナ(および必要に
応じて水温調節器)とを循環ポンプを介して接続し、蒸
発した水分を補給しつつ当該飼育水槽に供給した一定量
の本発明の飼育泉水を循環させるだけでよい(図中の矢
印は水の循環を示す。)。図1に例示するような簡便な
システムで、少なくとも5〜6ヶ月間若しくはそれ以上
の期間、換水処理や煩雑な水浄化処理を施すことなく所
望する魚介類を飼育、生産することができる。
【0021】本発明の飼育泉水は飼育過程において水質
の劣化がほとんど認められないため、本発明の魚介類生
産方法においては魚介類の飼育密度を従来法よりも高く
設定することができる。例えば、ヒラメの生産に本方法
を適用する場合、図1に示すような簡便なシステムにお
いても水深20cmの水槽の底面積当たりに換算して8
〜10kg/0.36m2 (ヒラメ成魚)の飼育密度を設定
することができる。また、オニオコゼについても同様の
システムにおいて水深20cmの水槽の底面積当たりに
換算して10〜15kg/m2 (出荷サイズ時)の飼育
密度を設定することが可能である。
【0022】
【実施例】以下の実施例において、本発明の魚介類生産
方法をさらに詳細に説明するが、これらはなんら本発明
を限定するものではない。
【0023】<実施例1>本発明の魚介類生産方法に基
づいて、ヒラメ稚魚を5ヶ月間飼育し、ヒラメ成魚の生
産を行った。なお、本実施例においては、天然のナトリ
ウム−炭酸水素塩温泉水に岩塩を適宜補給して調製した
もの(以下「人工海水」という。)を飼育水として使用
した。人工海水の調製は以下のとおりである。すなわ
ち、三重県北牟婁郡紀伊長島町海野字タキノハナ816
番地を湧出地とする源泉名「きいながしま古里温泉」を
採取した。この温泉水の泉質はナトリウム−炭酸水素塩
温泉(低張性、アルカリ性)であり、pH値は8.74
である(ガラス電極法)。採取時の泉温は34.0℃で
あった。本温泉水に含まれる各種成分を表1に示す。
【0024】
【表1】
【0025】次に、採取した上記温泉水に岩塩を添加し
た。こうして得られた人工海水の主要イオン含有量を表
2に示す。
【0026】
【表2】
【0027】表2に示すように、本実施例においてヒラ
メ飼育水として使用した人工海水の塩分濃度は、天然海
水の塩分濃度(典型的には30〜35パーミル)よりも
低い約27パーミルに設定した。また、ここで使用した
人工海水においてはカリウムイオン濃度(2200mg
/l、イオン全体の7.8wt%)を、天然海水中のカ
リウムイオン濃度(約400mg/l、イオン全体の約
1wt%)よりも高く設定した。他方、本人工海水のナ
トリウムイオン濃度(6600mg/l、イオン全体の
23.4wt%)は、天然海水中のナトリウムイオン濃
度(約11000mg/l、イオン全体の約31wt
%)よりも低い。なお、本人工海水の飼育開始前pH値
は8.46(ガラス電極法;測定温度21.1℃)であ
った。
【0028】上記のようにして調製した人工海水を上述
の図1に模式化したような閉鎖系飼育水槽に供給し、ヒ
ラメ飼育を開始した。すなわち、エアポンプを付設した
FRP製円筒形状飼育水槽(水槽の底面積;約12
2 )を屋内に設置し、当該水槽に水深20〜25cm
となるように上記人工海水を飼育水として供給した。一
方、この飼育水槽には、飼育水中に混入したゴミや生物
残渣等の不純物を捕捉して除去するためのエレメント
(濾材)を備えたストレーナと、飼育水の水温を適宜調
節するための水温調節器(ヒーター)とが装備されてお
り、当該飼育水は循環ポンプを介してこれら装置間を循
環することができる。なお、エアポンプは常時作動さ
せ、飼育水槽への直接給気(酸素供給)を継続した。
【0029】上記水温調節器によって飼育水槽内の水温
を20〜24℃に調節、安定させた後、ヒラメの稚魚
(体長10〜15cm、平均体重約50g)を水槽底面
積あたり概ね8〜10尾/0.36m2 となるように投入し
た。そして、上記水温を維持しつつ、充分量のヒラメ用
配合飼料を毎日給餌することによって飼育を継続した。
なお、飼育期間中は蒸発した水分を補給するのみであ
り、換水その他の特別な水浄化処理は行わなかった。飼
育開始から150日(約5ヶ月)経過後に飼育水をサン
プリングし、当該飼育水の飼育開始前からの水質の変化
の度合を調べた。結果を表3に示す。
【0030】
【表3】
【0031】本実施例において使用した人工海水(即ち
本実施例に係る本発明の飼育泉水)は、150日の長期
飼育に供した後においても水質に変化が殆ど認められ
ず、pH値の変動幅もきわめて小さいものであった(表
3参照)。また、表3に示すように、150日間の長期
飼育の結果、水中に残餌等が蓄積されている(リン酸値
の上昇参照)にも関わらず、ヒラメに有毒なアンモニア
態窒素および亜硝酸態窒素の蓄積はほとんど認められな
かった。このことから、本人工海水中では硝化処理(生
物学的濾過処理)等の特別な水浄化処理を施していない
にも関わらず、ヒラメの生育活性が阻害されることがな
くヒラメの食欲は飼育期間中常に旺盛であった。このた
め、飼育150日目において、ヒラメは平均体長約40
cm(平均体重640g)にまで成長した。なお、本実
施例において生産されたヒラメ成魚は体表面のつやも良
く、食味も良好であった。また、上述の黒化現象等の疾
患の発生は全く認められなかった。さらには、ヒラメ稚
魚の本人工海水中における生存率は極めて高く、事故死
および間引き分を除けばほぼ100%であった。なお、
本実施例における150日目のヒラメ成魚飼育密度は、
約6kg/0.36m2 であった。
【0032】<実施例2>次に、従来の養殖槽で飼育し
た結果として腹側体表面の大部分が黒化したヒラメ(体
重300g)を上記実施例1において使用した水槽中に
移し、実施例1と同様の条件で60日間飼育を行った。
その結果、上記黒化ヒラメは上記人工海水中に移した直
後から食欲が旺盛となり、飼育期間の経過と共に順調に
成長した。本人工海水中での飼育開始後60日目の体重
は約420gであった。一方、飼育の経過とともに腹側
体表面の黒化した部分は徐々に白色化していき、飼育開
始後60日目に至っては腹側体表面の大半が天然産のヒ
ラメと同様の白色となり且つ健全なつやも保っていた。
このことは、本発明の魚介類生産方法が、本発明の他の
側面として、ヒラメの体表面黒化現象を予防および治療
する方法としても適用され得ることを示すものである。
【0033】
【発明の効果】本発明によれば、飼育水の交換および特
別な水浄化処理を行う必要のない簡便で効率的な魚介類
の生産(養殖)方法を提供することができる。また、本
発明の他の側面として、水質の劣化等に起因する魚介類
の疾病を予防し、皮膚の変色等の飼育魚介類特有の疾患
を治療する方法を提供することができる。
【0034】本発明の魚介類生産方法によれば、閉鎖系
水槽を用いる循環方式において、魚介類飼育密度を高く
維持したまま生物学的濾過等の特別な水浄化処理や換水
処理を行うことなく一定量の飼育水中で長期にわたって
魚介類を迅速に成長および/または繁殖させることがで
きる。すなわち、本発明の魚介類生産方法によれば、簡
便且つ効率的に魚介類の商業的生産を行うことができ
る。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の魚介類生産方法を実施するための循環
式システムの一例を示した模式図である。
【図2】従来の循環式魚介類養殖システムの一例を示し
た模式図である。

Claims (3)

    【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】 閉鎖系水槽を用いる循環方式によって魚
    介類を成長および/または繁殖させる魚介類の生産方法
    であって、 その閉鎖系水槽に貯留する飼育水として、ナトリウム−
    炭酸水素塩泉水または該泉水と同等の成分となるように
    調製された人工泉水を使用することを特徴とする魚介類
    の生産方法。
  2. 【請求項2】 前記ナトリウム−炭酸水素塩泉水中の塩
    分を調整することによって海洋性魚介類の成長および/
    または繁殖が実現されることを特徴とする請求項1に記
    載の魚介類の生産方法。
  3. 【請求項3】 前記ナトリウム−炭酸水素塩泉水のpH
    が8.0〜9.0の範囲内にある、請求項1または2に
    記載の魚介類の生産方法。
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