JPH10184842A - 回転運動と直線運動の変換装置 - Google Patents

回転運動と直線運動の変換装置

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JPH10184842A
JPH10184842A JP8346337A JP34633796A JPH10184842A JP H10184842 A JPH10184842 A JP H10184842A JP 8346337 A JP8346337 A JP 8346337A JP 34633796 A JP34633796 A JP 34633796A JP H10184842 A JPH10184842 A JP H10184842A
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teeth
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pinion
tooth
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憲司 今瀬
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洋 牧野
Hidetsugu Terada
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Abstract

(57)【要約】 【課題】 騒音や振動が小さく、伝達抵抗が小さく、運
動伝達が連続的で、正逆方向にもガタが発生せず、剛性
が高い、回転運動と直線運動の変換装置1を提供する。 【解決手段】 複数の歯4を備えるラック5と、歯4に
噛み合う複数のローラ6を備えるピニオン7とで、回転
運動と直線運動の変換を行うもので、ラック5に噛合す
るローラ6の中心軌跡がトロコイド曲線を描くように、
歯4の歯形は、歯底がローラ6の径より大きく略弧状を
描くように設けられている。また、ラック5とピニオン
7は、予圧が加えられて用いられる。さらに、歯4の歯
末には、ローラ6の外形軌跡より徐々に離れるアプロー
チが形成されている。このように設けられることによ
り、上記の課題を達成する。

Description

【発明の詳細な説明】
【0001】
【発明の属する技術分野】本発明は、回転運動を直線運
動に変換する、あるいは直線運動を回転運動に変換する
変換装置に関する。
【0002】
【従来の技術】回転運動と直線運動の変換装置として、
ラックとピニオンとを噛合させた所謂ラック&ピニオン
が知られている。通常用いられているラック&ピニオン
は、ラックの歯も、ピニオンの歯も、どちらも歯面をイ
ンボリュート曲線を基本原理にした歯形を用いている。
【0003】
【発明が解決しようとする課題】インボリュート歯形を
用いたラック&ピニオンは、図16の(a)に示すよう
に、予圧が加わると、ラックJ1 の歯J2 と歯J2 の間
に、ピニオンJ3 の歯J4 が食い込むように接触するこ
ととなり、大きな摩擦が生じ、著しく効率が低下してし
まう。このため、設計段階から、図16の(b)に示す
ように、歯J2 と歯J4 との間に隙間(バックラッシ)
を設け、上記の食い込みを回避している。しかし、この
ような隙間を設けると、運動の伝達が歯J2 から歯J4
へと断続的になり、騒音や振動を発生させる不具合があ
る。また、反転時のガタの要因になる。
【0004】上記の不具合を無くす手段として、図17
に示すように、ピニオンJ3 の歯J4 をローラJ5 に
し、ラックJ1 の歯J2 をサイクロイド曲線を基にした
歯形としたラック&ピニオンが考えられている。このタ
イプのラック&ピニオンは、ローラJ5 が自転しながら
ラックJ1 の歯面を移動して運動の伝達を行うので、伝
達抵抗が少なく、また、複数のローラJ5 が、複数の歯
J2 に同時に噛み合うことが可能となるため、運動の伝
達が連続的になり、また正逆方向にもガタが発生しない
とされていた。
【0005】しかしながら、サイクロイド曲線を基準に
したラックJ1 の歯J2 では、ローラJ5 が歯底J6 に
達した際、ローラJ5 の中心軌跡の曲率半径がゼロにな
る。このため、この付近のラックJ1 の加工時に、図1
8の(a)のハッチング部分に示すように、切下げA
(アンダーカット)が生じる。このような切下げAは、
精度を必要としない装置に用いられる場合は問題になら
ないが、図18の(b)に示すように、切下げA部分で
はローラJ5 がラックJ1 の歯J2 から離れ、ローラJ
5 が正規のサイクロイド軌跡をたどれないので、トルク
伝達ができなくなり、精密機械など、高い精度が要求さ
れる装置には使用できなかった。つまり、切下げAによ
って、ラックJ1 の歯J2 からローラJ5 の離脱と噛み
合いが発生し、音や振動を発生するとともに、歯面の寿
命に悪影響を与える不具合が生じる。
【0006】また、上述のように、サイクロイド曲線を
基準にしたラックJ1 の歯J2 は、ローラJ5 が歯底J
6 に達した際、ローラJ5 の中心軌跡の曲率半径がゼロ
になる。このため、ローラJ5 の径と歯底J6 の径とが
一致する。このことにより、ローラJ5 が歯底J6 に達
した際、ローラJ5 の全周のうちの半周近くが歯底J6
と密着することになり、ローラJ5 は回転不能になる。
このため、歯底J6 の付近において、ローラJ5 の回転
と停止とが発生することになるとともに、ローラJ5 が
歯底J6 に衝突するため、音と振動が発生する。特に、
バックラッシをなくし、剛性を高めるために、ラックJ
1 とピニオンJ3 との間に予圧を加えて使用する場合に
は、上述した欠点が顕著になる。
【0007】さらに、サイクロイド曲線を基準にしたラ
ックJ1 の歯J2 では、上述のような切下げAが発生す
るため、ローラJ5 数が少ないと、複数の歯J2 の常時
噛み合いができない状態が発生し、その点では、正逆方
向にバックラッシが発生してしまうが、この事実はこれ
まで全く見逃されてきた。
【0008】ここで、歯J2 とローラJ5 との間の隙間
をなくしてバックラッシを取り除いて使用するために、
ラックJ1 とピニオンJ3 とに予圧を加える手法が考え
られる。この予圧を加える手法は、ローラJ5 と歯J2
の面に力が加わるので、隙間が全くなく、また部品の初
期歪みを消去され、剛性が非常に高くなる利点がある。
サイクロイド歯車の歯形は、ピニオンJ3 を転がした時
のローラJ5 の中心が描く軌跡(サイクロイド曲線)
に、ローラJ5 の半径寸法を加味したもので、これによ
り理論的に転がり接触による円滑な動力伝達が行えると
されている。
【0009】しかるに、予圧を加えて使用すると、図1
9に示すように、ラックJ1 の歯J2 とローラJ5 の噛
み合い開始時と離脱時に、予圧分だけ衝突と開放がなさ
れ、この衝突と開放によっても、衝突音や振動が発生す
る不具合が生じる。また、この衝突と開放は、ローラJ
5 や歯J2 の疲労につながり、ラック&ピニオンの寿命
低下を招く不具合がある。
【0010】
【発明の目的】本発明は、上記の事情を種々鑑みてなさ
れたもので、その目的は、騒音や振動が抑えられ、伝達
抵抗が少なく、運動の伝達が連続的で、正逆方向にもガ
タが発生せず、剛性も高い、回転運動と直線運動の変換
装置の提供にある。
【0011】
【課題を解決するための手段】本発明の回転運動と直線
運動の変換装置は、次の技術的手段を採用した。 〔請求項1の手段〕回転運動と直線運動の変換装置は、
複数の歯が設けられたラックと、前記歯に噛み合う複数
の噛合手段が設けられたピニオンとを具備し、前記ラッ
クと前記ピニオンとの間に予圧が加えられ、前記噛合手
段は、回転軸受を介して前記ピニオンに回転自在に支持
されるローラであり、前記歯と歯の間に形成される歯底
は、前記ローラの径より大きい弧状に設けられ、前記歯
の歯末の外側に、前記ローラの外径軌跡より徐々に離れ
るアプローチが設けられ、さらに、複数のローラが同時
に複数の前記歯に噛み合うことを特徴とする。
【0012】〔請求項2の手段〕回転運動と直線運動の
変換装置は、複数の歯が設けられたピニオンと、前記歯
に噛み合う複数の噛合手段が設けられたラックとを具備
し、前記ラックと前記ピニオンとの間に予圧が加えら
れ、前記噛合手段は、回転軸受を介して前記ラックに回
転自在に支持されるローラであり、前記歯と歯の間に形
成される歯底は、前記ローラの径より大きい弧状に設け
られ、前記歯の歯末の外側に、前記ローラの外径軌跡よ
り徐々に離れるアプローチが設けられ、さらに、複数の
ローラが同時に複数の前記歯に噛み合うことを特徴とす
る。
【0013】〔請求項3の手段〕請求項1または請求項
2の回転運動と直線運動の変換装置において、前記ロー
ラは、中央側がその外側よりも太いビヤ樽形状に設けら
れたことを特徴とする回転運動と直線運動の変換装置。
【0014】〔請求項4の手段〕請求項3の回転運動と
直線運動の変換装置において、前記歯は、中央側がその
外側よりも薄く、且つ前記ローラの曲率よりも大きい凹
状の逆クラウニングが設けられたことを特徴とする回転
運動と直線運動の変換装置。
【0015】〔請求項5の手段〕請求項1または請求項
2の回転運動と直線運動の変換装置において、前記歯
は、中央側がその外側よりも厚い凸状のクラウニングが
設けられたことを特徴とする回転運動と直線運動の変換
装置。
【0016】〔請求項6の手段〕請求項5の回転運動と
直線運動の変換装置において、前記ローラは、中央側が
その外側よりも細く、且つ前記歯のクラウニングの曲率
よりも大きい鼓形状に設けられたことを特徴とする回転
運動と直線運動の変換装置。
【0017】
【発明の作用および効果】
〔請求項1の作用および効果〕ラックの歯と噛合するピ
ニオンの噛合手段が、回転軸受により回転自在に支持さ
れるローラであるとともに、ラックとピニオンとの間に
予圧が加えられている。このため、ラックとピニオンと
の間に隙間(バックラッシ)がなく、ローラが自転しな
がらラックの歯面を移動して運動の伝達を行うので、伝
達抵抗が少ない。また、複数のローラが、複数の歯に同
時に噛み合うため、運動の伝達が連続的になり、正逆方
向にもガタが発生しない。さらに、伝達力の変動などに
よって、接触圧に変化が生じても、予圧が加えられたこ
とによって、部品の初期歪みが消去されるとともに、伝
達力の変動も消去され、常に安定した動力伝達を行うこ
とができるとともに、剛性が非常に高くなる。
【0018】ラックの歯と歯の間に形成される歯底が、
ローラの径より大きい弧状に設けられているため、歯底
においてもローラの回転は停止することなく、ローラは
常にラックに対して転がり接触となる。このように、ロ
ーラの回転が歯底で停止する不具合がないため、歯底に
おいてローラが停止することによる衝突音や振動の発生
がなく、静かな噛合音にすることができる。また、ラッ
クの歯底は、ローラの径より大きい弧状であるため、切
下げの発生が抑えられ、噛み合うローラ数が少なくて
も、常に複数の歯とローラとの噛み合いが達成される。
【0019】ラックとピニオンとの間に予圧が加えられ
ているが、ラックに設けられる歯の歯末の外側を、ロー
ラの外径軌跡より徐々に離れるアプローチを設けたた
め、ローラが歯と噛み合う開始時に、ローラと歯とがス
ムーズに噛み合いを開始した後に次第に予圧が加わる。
逆に、ローラが歯から離脱する離脱時は、予圧が徐々に
弱まり、ローラが歯からスムーズに離脱する。この結
果、歯とローラの噛み合い開始時と離脱時に、予圧分に
よる衝突と開放による衝突音や振動の発生がなくなり、
噛合音を静かにできる。また、予圧分による衝突と開放
がなくなることにより、ローラや歯の疲労にが軽減で
き、ラックとピニオンを長寿命化できる。
【0020】〔請求項2の作用および効果〕請求項2
は、上記の請求項1の作用効果におけるラックの歯をピ
ニオンの歯に置き換え、ピニオンのローラをラックのロ
ーラに置き換えたもので、上記請求項1の作用および効
果と同等の作用および効果を奏する。
【0021】〔請求項3ないし請求項7の作用および効
果〕ローラをビヤ樽形状に設けたり、歯の中央側を厚く
設けるなどにより、ローラと歯とに多少の傾きが生じて
も、円滑な噛み合いがなされる。つまり、ローラと歯と
に多少の傾きが生じても、噛合音が静かになる。
【0022】
【発明の実施の形態】次に、本発明の回転運動と直線運
動の変換装置を、複数の実施例に基づき説明する。 〔第1実施例の構成〕図1ないし図7は第1実施例を説
明するためのもので、図1は回転運動と直線運動の変換
装置の斜視図、図2は回転運動と直線運動の変換装置の
側面断面図、図3は図2のI−I線に沿う断面図、図4
は歯底形状の説明図、図5および図6は歯の形状説明
図、図7は歯末形状の説明図である。
【0023】回転運動と直線運動の変換装置1は、所謂
ラック&ピニオンを基本とするもので、搬送装置、産業
用ロボット、工作機械、精密機械など、高効率、高精
度、長寿命、高トルク伝達が要求される機械装置に使用
可能なものである。この第1実施例の回転運動と直線運
動の変換装置1は、入力軸2に伝達される回転運動によ
って、水平方向に移動可能に配置されたベース3を駆動
するものである。回転運動と直線運動の変換装置1は、
複数の歯4が設けられたラック5と、このラック5の歯
4に噛み合う複数のローラ6(噛合手段)が設けられた
ピニオン7とを具備し、ピニオン7が入力軸2と一体に
回転し、またラック5はベース3と一体にスライドする
ように設けられている。
【0024】ラック5とピニオン7との間には、予圧が
常に加えられるように設けられている。なお予圧とは、
ラック5とピニオン7を相互に押し付ける圧力である。
この予圧を加える方法としては、ラック5とピニオン7
をバネ等の付勢手段によって一定の力で押し付ける定圧
法と、ラック5とピニオン7を一定の寸法を予め圧縮さ
せて噛合させる定位置法とがある。この発明はどちらの
方法を用いても良いが、この実施例では、後者の定位置
法を用いる。
【0025】この定位置法の一例を説明する。ラック5
の両側に、ラック5に対して平行に延びるレール8をベ
ース3に設ける。この2本のレール8には、枠状に設け
られたサドル9が嵌め合わされる。このサドル9は、レ
ール8に沿ってスライド自在なもので、サドル9内にお
いてピニオン7を回転自在に支持する。そして、このサ
ドル9は、ピニオン7をラック5に押し付けた状態で噛
合させるものである。なお、この実施例では、サドル9
は図示しない固定部材に固定されており、ピニオン7が
回転すると、ラック5とともにベース3がスライドする
ように設けられている。なお、この実施例では、ベース
3がスライドする例を示すが、ベース3を固定し、ピニ
オン7およびサドル9がスライドするように設けても良
い。また、ピニオン7に回転を入力するのではなく、サ
ドル9を固定した上で、ベース3をスライド駆動させ
て、ピニオン7を回転させるように設けても良い。つま
り、直線運動から回転運動に変換しても良い。
【0026】ラック5は、コモン・トロコイド曲線を採
用した直線状のトロコイド歯車で、その歯4の形状につ
いては後述する。このラック5の歯4に噛合するピニオ
ン7のローラ6は、図2に示すように、回転軸受10を
介して回転自在に支持されるもので、この複数のローラ
6が複数の歯4と同時に噛み合うように設けられてい
る。
【0027】ここで、ピニオン7の具体的な構造を、図
2および図3を参照して説明する。ピニオン7は、複数
のローラ6と、この複数のローラ6を支持する環状のロ
ーラ保持部材11とからなる。複数のローラ6は、ロー
ラ保持部材11によって環状に配置されるもので、それ
ぞれ等間隔で且つ平行に配置されている。また、ローラ
保持部材11は、複数の部品よりなり、回転軸受10を
介してそれぞれのローラ6を回転自在に支持するもの
で、中央部分において入力軸2に固定される。
【0028】次に、ラック5の歯4の形状について説明
する。ラック5は、上述したように、コモン・トロコイ
ド曲線を採用した直線状のトロコイド歯車で、その歯4
と歯4の歯底4aは、その歯底4aであっても、ローラ
6が転がり接触するように、ローラ6の径より大きい弧
状に設けられている。具体的なラック5の歯4の基本形
状は、この歯4に対して噛合するローラ6の中心の描く
軌跡が、コモン・トロコイド曲線(円が直線に沿って転
がる際、円の周囲より内側の一点が描く軌跡、図4の
(b)参照)を描くように、ラック5の歯4の形状は、
図4の(a)に示すように、コモン・トロコイド曲線か
らローラ6の半径分だけ離れた輪郭として形成されてい
る。
【0029】さらに具体的に説明すると、図5に示すよ
うに、まず、ラック5のピッチ線をピニオン7の実際の
取付ピッチ円(直径D)よりも外側へずらす。これを
「正の転位」と呼ぶ。転位量y・mは、一般歯車諸元で
言うモジュールm(=D/歯数)のy倍で、yを転位係
数と呼ぶ。この場合、転位するとは、ピニオン7の噛み
合いピッチ円を、実際のローラ6の取付ピッチ円よりも
大きくするという意味である。
【0030】すると、図6に示すように、ローラ6の中
心は、転がり円の内側の一点が描く軌跡のコモン・トロ
コイド曲線になる。そして、ラック5の歯4は、得られ
たコモン・トロコイド曲線から、ローラ6の半径分だけ
離れた輪郭として形成される。これによって、ローラ6
の中心軌跡が描くトロコイド曲線の屈曲部(ローラ6が
歯底に達した際)の曲率半径が、常にローラ6の半径よ
り大きくなるため、切下げが完全に回避されるととも
に、ローラ6の径より大きい連続的に変化する曲率の弧
状の歯底が得られる。
【0031】また、ラック5の歯4は、図7に示すよう
に、その歯末の外側に、ローラ6の外径軌跡より徐々に
離れる弧状のアプローチ12が設けられている。このア
プローチ12は、トロコイド歯車の歯末をカット(図7
のハッチング部分)することによって設けられている。
なお、アプローチ12は、弧状でなく、直線状に設けて
も良い。この発明では、ピニオン7とラック5とに予圧
を加えているため、アプローチ12を設けないと、歯4
とローラ6の噛み合い開始時と離脱時に、予圧分による
衝突と開放による衝突音や振動が発生するが、アプロー
チ12を設けたことにより、歯4とローラ6の噛み合い
開始と離脱が円滑に行われ、予圧分による衝突と開放が
なくなる。
【0032】トロコイド歯車を用いたラック5は、圧力
角90°の時(ローラ6が歯底4aに接触している時)
トルク伝達は行われず、主にトルク伝達が行われる領域
は、歯底4aからの立ち上がり部分から歯末の部分であ
る。ここで、歯末まで噛み合いを行なった場合、歯厚が
減少して鋭角になり強度が著しく低下する場合がある。
このような場合には、複歯噛み合いが実現されているこ
とを考慮して、トルク伝達を他歯で行ない、歯末付近で
トルク伝達に関与させないように、歯4の外側にローラ
6の外径軌跡より徐々に離れるアプローチ12を設け
る。すなわち、トルク伝達の行なわれる範囲を図7中に
示す実トルク伝達範囲とするように、安定した強度を有
する歯形を形成する。
【0033】なお、ラック5の歯4は、上述したよう
に、歯底4aがローラ6の径より大きく、且つ歯末の外
側にローラ6の外径軌跡より徐々に離れるアプローチ1
2を備えるトロコイド歯車であるが、このラック5の歯
4は、NCフライス等の工作機械を用いることにより、
容易に形成することができる。
【0034】〔第1実施例の作動〕次に、上記実施例の
作動を簡単に説明する。電動機などの出力によって入力
軸2が回転駆動されると、入力軸2とともにピニオン7
が回転する。ピニオン7の回転によって複数のローラ6
が環状に回転し、ローラ6と噛合するラック5を直線的
に駆動する。この結果、ラック5が設けられたベース3
が水平方向にスライドする。なお、この実施例では、ベ
ース3がスライドする例を示すが、ベース3を固定し、
ピニオン7およびサドル9がスライドするように設けて
も良い。また、ピニオン7に回転を入力するのではな
く、サドル9を固定した上で、ベース3をスライド駆動
させて、ピニオン9を回転させるように設けても良い。
つまり、直線運動から回転運動に変換しても良い。
【0035】〔第1実施例の効果〕ラック5とピニオン
7との間に予圧が加えられているため、ラック5とピニ
オン7との間に隙間(バックラッシ)がなく、また、ロ
ーラ6が自転しながらラック5の歯面を移動して運動の
伝達を行うので、伝達抵抗が少ない。ピニオン7におけ
る複数のローラ6が、ラック5に設けられた複数の歯4
に同時に噛み合うため、運動の伝達が連続的になり、正
逆方向にもガタが発生しない。
【0036】ローラ6や歯形に製作誤差が生じたり、伝
達力や負荷の変動などによって、接触圧に変化が生じて
も、予圧が加えられて用いられることによって、部品の
初期歪みが消去されるとともに、伝達力や負荷の変動も
吸収され、常に安定した動力伝達を行うことができる。
予圧が加えられて用いられることによって、ラック5と
ピニオン7との剛性が非常に高い。
【0037】ラック5の歯底4aが、ローラ6の径より
大きい弧状に設けられているため、歯底4aにおいても
ローラ6の回転は停止することなく、ローラ6は常にラ
ック5に対して転がり接触となる。このため、ローラ6
の回転が歯底4aで停止する不具合がないため、歯底4
aにおいてローラ6が停止することによる速度変動、衝
突音、振動などの発生がなく、作動時の噛合音が静かに
なる。
【0038】ラック5とピニオン7との間に予圧が加え
られているが、ラック5に設けられる歯4の歯末の外側
に、ローラ6の外径軌跡より徐々に離れるアプローチ1
2を弧状に設けたため、ローラ6が歯4と噛み合う開始
時に、ローラ6と歯4とがスムーズに噛み合いを開始し
た後に次第に予圧が加わる。逆に、ローラ6が歯4から
離脱する離脱時は、予圧が徐々に弱まり、ローラ6が歯
4からスムーズに離脱する。この結果、歯4とローラ6
の噛み合い開始時と離脱時に、予圧分による衝突と開放
による衝突音や振動の発生がなくなり、噛合音が静かに
なる。また、予圧分による衝突と開放がなくなることに
より、ローラ6や歯4の疲労が軽減でき、ラック5とピ
ニオン7を長寿命化できる。また、アプローチ12を設
けたことにより、歯末の形状が鈍角になり、歯4の強度
が向上する。
【0039】〔第2実施例〕図8ないし図11は第2実
施例を説明するためのもので、図8および図9は回転運
動と直線運動の変換装置1の要部斜視図、図10は歯底
4a形状の説明図、図11は歯末形状の説明図である。
上記の第1実施例では、ラック5に歯4を形成し、ピニ
オン7にローラ6を設けた例を示したが、この第2実施
例は第1実施例とは逆に、ラック5にローラ6を設け、
ピニオン7に歯4を形成したものである。つまり、第1
実施例に示したローラ6と歯4の取付関係を逆転しただ
けで、基本構成は第1実施例と同じである。
【0040】具体的には、ラック5とピニオン7との間
には、予圧が常に加えられるように設けられている。ま
た、ピニオン7は、修正インボリュート曲線を採用した
歯車で、そのピニオン7の歯4に噛合するラック5の噛
合手段は、回転軸受(第2実施例では図示しない)を介
して回転自在に支持されるローラ6であり、複数のロー
ラ6が複数の歯4と同時に噛み合うように設けられてい
る。
【0041】ピニオン7の歯4は、上述したように、修
正インボリュート曲線を採用した歯車で、その歯4と歯
4の歯底4aは、その歯底4aであっても、ローラ6が
転がり接触するように、ローラ6の径より大きい弧状に
設けられている。具体的なピニオン7の歯4の基本形状
は、この歯4に対して噛合するローラ6の中心の描く軌
跡が、修正インボリュート曲線を描くように、ピニオン
7の歯4の形状は、図10の(a)に示すように、修正
インボリュート曲線からローラ6の半径分だけ離れた輪
郭として形成されている。
【0042】具体的には、ピニオン7の歯4の基本曲線
はインボリュート曲線である。しかし、第1実施例で示
したように、ラック5のピッチ線をピニオン7の実際の
取付ピッチ円よりも外側へずらす。これを「正の転位」
と呼ぶ。転位量y・mは、第1実施例と同じ定義であ
る。このように、ラック5にピッチ線に正の転位を行う
と、図10の(b)に示すように、もとのピッチ線上に
描かれるローラ6の中心P’の軌跡は、コモン・インボ
リュート曲線となるが、転位されたピッチ線上のローラ
6の中心Pの軌跡は滑らかな修正インボリュート曲線と
なる。そして、ピニオン7の歯4は、得られた修正イン
ボリュート曲線からローラ6の半径分だけ離れた輪郭と
して形成される。
【0043】また、ピニオン7の歯4は、図11に示す
ように、その歯末の外側に、ローラ6の外径軌跡より徐
々に離れるアプローチ12が設けられている。この第2
実施例で示す回転運動と直線運動の変換装置1は、第1
実施例のローラ6と歯4の取付関係が逆転しただけで、
第1実施例と同じ効果を得ることができる。
【0044】〔第3実施例〕図12は第1実施例および
第2実施例に適用可能な第3実施例を示すもので、ロー
ラ6と歯4の噛み合い部分を示す断面図である。この第
3実施例では、ローラ6の形状を、中央側がその外側よ
りも太いビヤ樽形状に設けたものである。このように設
けることで、歯4の幅の中央部分で噛み合いが行われ、
ラック5とピニオン7とに多少の傾きがあっても、円滑
な噛み合いがなされる。つまり、ローラ6と歯4とに多
少の傾きが生じても、噛合音を静かにできる。なお、ロ
ーラ6をビヤ樽形状に加工するものは、歯4をクラウニ
ングするより、安価でかつ精度良く製作できる利点があ
る。
【0045】〔第4実施例〕図13は第4実施例を示す
もので、ローラ6と歯4の噛み合い部分を示す断面図で
ある。この第4実施例では、第3実施例で示したよう
に、ローラ6がビヤ樽形状に加工された場合に採用可能
なもので、ローラ6と噛合する歯4は、中央側がその外
側よりも薄く、且つローラ6の曲率よりも大きい凹状の
逆クラウニングが施されたものである。このように設け
ることにより、第3実施例の効果に加え、接触点の面積
が増大し、トルクの伝達力が著しく向上する。また、ヘ
ルツ応力が低下するため、ローラ6および歯4が長寿命
化する利点もある。
【0046】〔第5実施例〕図14は第1実施例および
第2実施例に適用可能な第5実施例を示すもので、ロー
ラ6と歯4の噛み合い部分を示す断面図である。この第
5実施例の歯4は、中央側がその外側よりも厚くなる凸
状のクラウニングが施されたもので、第3実施例と同じ
効果を得ることができる。
【0047】〔第6実施例〕図15は第6実施例を示す
もので、ローラ6と歯4の噛み合い部分を示す断面図で
ある。この第6実施例では、第5実施例で示したよう
に、歯4に凸状のクラウニングが施された場合に採用可
能なもので、その歯4に噛合するローラ6は、中央側が
その外側よりも細く、且つ歯4のクラウニングの曲率よ
りも大きい鼓形状に設けられたもので、上記第4実施例
と同じ効果を得ることができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】回転運動と直線運動の変換装置の斜視図である
(第1実施例)。
【図2】回転運動と直線運動の変換装置の側面断面図で
ある(第1実施例)。
【図3】図2のI−I線に沿う断面図である(第1実施
例)。
【図4】歯底形状の説明図である(第1実施例)。
【図5】歯の形状説明図である(第1実施例)。
【図6】歯の形状説明図である(第1実施例)。
【図7】歯末形状の説明図である(第1実施例)。
【図8】回転運動と直線運動の変換装置の要部斜視図で
ある(第2実施例)。
【図9】回転運動と直線運動の変換装置の要部斜視図で
ある(第2実施例)。
【図10】歯底形状の説明図である(第2実施例)。
【図11】歯末形状の説明図である(第2実施例)。
【図12】ローラと歯の噛み合い部分を示す断面図であ
る(第3実施例)。
【図13】ローラと歯の噛み合い部分を示す断面図であ
る(第4実施例)。
【図14】ローラと歯の噛み合い部分を示す断面図であ
る(第5実施例)。
【図15】ローラと歯の噛み合い部分を示す断面図であ
る(第6実施例)。
【図16】インボリュート歯車を用いたラック&ピニオ
ンの要部説明図である(従来例)。
【図17】ローラ歯車とサイクロイド歯車を採用したラ
ック&ピニオンの説明図である(従来例)。
【図18】切下げの説明図である(従来例)。
【図19】歯末形状の説明図である(従来例)。
【符号の説明】
1 回転運動と直線運動の変換装置 4 歯 4a 歯底 5 ラック 6 ローラ(噛合手段) 7 ピニオン 10 回転軸受 12 アプローチ

Claims (6)

    【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】複数の歯が設けられたラックと、前記歯に
    噛み合う複数の噛合手段が設けられたピニオンとを具備
    し、 前記ラックと前記ピニオンとの間に予圧が加えられ、 前記噛合手段は、回転軸受を介して前記ピニオンに回転
    自在に支持されるローラであり、 前記歯と歯の間に形成される歯底は、前記ローラの径よ
    り大きい弧状に設けられ、 前記歯の歯末の外側に、前記ローラの外径軌跡より徐々
    に離れるアプローチが設けられ、 複数のローラが同時に複数の前記歯に噛み合うことを特
    徴とする回転運動と直線運動の変換装置。
  2. 【請求項2】複数の歯が設けられたピニオンと、前記歯
    に噛み合う複数の噛合手段が設けられたラックとを具備
    し、 前記ラックと前記ピニオンとの間に予圧が加えられ、 前記噛合手段は、回転軸受を介して前記ラックに回転自
    在に支持されるローラであり、 前記歯と歯の間に形成される歯底は、前記ローラの径よ
    り大きい弧状に設けられ、 前記歯の歯末の外側に、前記ローラの外径軌跡より徐々
    に離れるアプローチが設けられ、 複数のローラが同時に複数の前記歯に噛み合うことを特
    徴とする回転運動と直線運動の変換装置。
  3. 【請求項3】請求項1または請求項2の回転運動と直線
    運動の変換装置において、 前記ローラは、中央側がその外側よりも太いビヤ樽形状
    に設けられたことを特徴とする回転運動と直線運動の変
    換装置。
  4. 【請求項4】請求項3の回転運動と直線運動の変換装置
    において、 前記歯は、中央側がその外側よりも薄く、且つ前記ロー
    ラの曲率よりも大きい凹状の逆クラウニングが設けられ
    たことを特徴とする回転運動と直線運動の変換装置。
  5. 【請求項5】請求項1または請求項2の回転運動と直線
    運動の変換装置において、 前記歯は、中央側がその外側よりも厚い凸状のクラウニ
    ングが設けられたことを特徴とする回転運動と直線運動
    の変換装置。
  6. 【請求項6】請求項5の回転運動と直線運動の変換装置
    において、 前記ローラは、中央側がその外側よりも細く、且つ前記
    歯のクラウニングの曲率よりも大きい鼓形状に設けられ
    たことを特徴とする回転運動と直線運動の変換装置。
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