JPH10103487A - 自動変速機における変速時間自動調整装置 - Google Patents

自動変速機における変速時間自動調整装置

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JPH10103487A
JPH10103487A JP8256890A JP25689096A JPH10103487A JP H10103487 A JPH10103487 A JP H10103487A JP 8256890 A JP8256890 A JP 8256890A JP 25689096 A JP25689096 A JP 25689096A JP H10103487 A JPH10103487 A JP H10103487A
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oil pressure
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Abstract

(57)【要約】 【課題】自動変速機及びこれを制御する制御装置の何れ
かを交換したときに自動的に変速時間を適正値に保持す
る。 【解決手段】エンジン回転数の変化等から変速時間が設
定値以上となる棚外れ状態となった否かを検出し( ステ
ップS11)、棚はずれとなったときには、第1の締結
油圧設定手段に対応するラッピング制御処理を実行し
て、自動変速機の各種締結要素に供給するライン圧を高
くする補正値を設定し、変速負荷時間の経過と共に補正
値を低下させ、これと同時に第2の締結油圧設定手段に
対応する学習制御処理を実行し(ステップS17)、締
結要素等のバラツキや経時変化による締結油圧の変動を
学習して、自動変速機及び制御装置の何れかを交換した
ときに自動的に各種締結要素に適正なライン圧を作用さ
せる。

Description

【発明の詳細な説明】
【0001】
【発明の属する技術分野】本発明は、自動変速機におけ
る変速時間を自動変速機の交換や制御ユニットの交換に
応じて自動的に調整することができる自動変速機におけ
る変速時間自動調整装置に関する。
【0002】
【従来の技術】従来の自動変速機における変速時間自動
調整装置としては、例えば特開平5−99308号公報
(以下、第1従来例と称す)及び特開平1−16916
4号公報(以下、第2従来例と称す)に記載されている
ものがある。
【0003】そして、第1従来例は、本出願人が先に提
案したものであり、自動変速機が新品であるときに、締
結要素を構成する摩擦材のラッピングが不十分であると
きでも変速に要する時間を設定とおりとして変速の間延
びや変速ショックを防止するために、締結要素に与えら
れる変速負荷を例えばスロットル開度を検出することに
より検出し、この変速負荷を累積することにより、累積
変速負荷値が小さいうちは摩擦材のラッピングが不十分
であると判断して通常状態よりも高い油圧特性の初期用
特性の締結油圧として、摩擦材のラッピング不足を補う
ようにしている。
【0004】また、第2従来例は、変速時の変速歯車機
構の入力回転数と出力回転数とからスロットル開度毎に
両者の比で表されるギヤ比が変化している時間をイナー
シャフェーズ時間計測手段で計測し、計測したイナーシ
ャフェーズ時間が目標値となるように変速中のライン圧
を制御するライン圧調整手段によって制御することによ
り、ライン圧制御部品のバラツキや摩擦材の経時変化に
対処するようにした所謂学習制御を行うようにしてい
る。
【0005】
【発明が解決しようとする課題】しかしながら、上記第
1従来例にあっては、累積変速負荷値によって締結要素
に供給する締結油圧を制御するようにしているが、累積
変速負荷値は自動変速機とは独立した制御装置によって
管理されているので、この制御装置を交換したり自動変
速機を交換したときには、新たな制御装置の累積変速負
荷値が前回の制御装置の値とは異なることになり、この
新たな制御装置の累積変速負荷値を前回値に合わせて修
正する必要があり、これが面倒であると共に、修正し忘
れることもあり、累積変速負荷値に応じた良好な締結油
圧制御を行えない場合が生じ、さらに締結要素の摩擦材
の摩擦係数のバラツキや経時変化には対応することがで
きず、変速時間が予め設定した変速時間からずれてしま
うという未解決の課題がある。
【0006】また、上記第2従来例にあっては、ギヤ比
が変化している間のイナーシャフェーズ時間が目標値と
一致するように学習制御しているが、この学習制御がス
ロットル開度毎に行われるので、きめ細かい補正を行う
ことができる反面、使用頻度の少ないスロットル開度で
はあまり学習されないので、最適な制御を行うことがで
きないという未解決の課題があると共に、学習制御で
は、今回の変速時間のずれに基づき次回の油圧が補正さ
れることになるが、摩擦材の経時劣化(緩やかな変化)
には対応できるが、自動変速機の使用開始初期のラッピ
ング不足のような経時変化が大きい場合には対応でき
ず、変速時間が設定変速時間よりずれてしまうという未
解決の課題がある。
【0007】そこで、本発明は、上記従来例の未解決の
課題に着目してなされたものであり、自動変速機及び制
御装置の何れか一方を交換した場合でも、自動的に変速
時間を調整して最適な変速制御を行うことができる自動
変速機における変速時間自動調整装置を提供することを
目的としている。
【0008】
【課題を解決するための手段】上記目的を達成するため
に、請求項1に係る発明は、変速歯車機構の各種摩擦要
素に対する締結油圧を締結油圧調圧手段で調圧し、当該
摩擦要素を選択的に作動させて所定変速段を選択するよ
うにした自動変速機において、変速時間が予め設定した
棚時間を越えている棚外れ状態であるか否かを検出する
棚外れ検出手段と、棚外れを防止するために前記締結油
圧調圧手段に対して締結油圧を高める締結油圧補正値を
設定する第1の締結油圧設定手段と、該第1の締結油圧
設定手段で設定された締結油圧に基づいて前記締結油圧
調圧手段を制御する変速制御手段とを備え、前記第1の
締結油圧設定手段は、前記締結要素に与えられる変速負
荷を検出する変速負荷検出手段と、該変速負荷検出手段
が検出する変速負荷を累積する変速負荷累積手段とを有
して前記変速負荷累積手段の累積値が所定値以下の場合
には、変速時の締結油圧を累積値が所定値以上の場合よ
りも高める締結油圧補正値を設定し、前記変速負荷累積
手段は、前記棚外れ検出手段が棚外れを検出したとき
に、その累積値を小さくするように構成されていること
を特徴としている。
【0009】この請求項1の発明においては、変速歯車
機構で変速を行う場合に、そのときの締結要素に与えら
れる変速負荷を累積し、その累積値が所定値以下である
ときには締結要素がなじんでいないものと判断して変速
時の締結油圧を累積値が所定値以上の場合よりも高め、
ラッピング不足による変速時間の変動を抑制する。また
棚外れ検出手段で棚外れを検出したときには、変速負荷
の累積値を小さい値に変更することにより、ラッピング
制御を行う。
【0010】このため、棚外れを生じるか否かから自動
変速機及び制御装置の何れか一方の交換を制御装置側で
検出し、これに対応した良好な変速時間制御を行うこと
ができる。
【0011】また、請求項2に係る発明は、請求項1の
発明において、前記変速歯車機構のギヤ比が変化中であ
るか否かを検出するギヤ比変化検出手段と、該ギヤ比検
出手段でギヤ比変化中であることを検出したときにその
経過時間を計測するイナーシャフェーズ時間計測手段
と、該イナーシャフェーズ時間計測手段の計測時間が目
標時間となるように前記締結油圧調圧手段の締結油圧補
正値を設定する第2の締結油圧設定手段と、前記第1の
締結油圧設定手段及び第2の締結油圧設定手段で設定さ
れた締結油圧に基づいて前記締結油圧調圧手段を制御す
る変速制御手段とを備えたことを特徴としている。
【0012】この請求項2の発明においては、第1の締
結油圧設定手段によるラッピング制御を行うと共に、イ
ナーシャフェーズ時間計測手段の計測時間に基づいて第
2の締結油圧設定手段で締結油圧補正値を設定し、その
設定値に基づいて変速制御手段で締結油圧調圧手段を制
御することにより、締結要素の締結油圧を学習制御す
る。
【0013】さらに、請求項3に係る発明は、請求項1
又は2の発明において、前記変速負荷累積手段は、前記
棚外れ検出手段が棚外れを検出したときに、その累積値
を初期値に設定するように構成されていることを特徴と
している。
【0014】この請求項3の発明においては、棚外れが
検出されたときに変速負荷累積手段の累積値が初期値に
設定されるので、変速歯車機構が新品状態と同様のラッ
ピング制御を行ってラッピング不足による変速時間の変
動を抑制する。
【0015】さらにまた、請求項4に係る発明は、請求
項1乃至3の何れかの発明において、前記第1の締結油
圧設定手段は、前記変速負荷累積手段の累積値が大きく
なるに従って締結油圧補正値を小さくするように構成さ
れていることを特徴としている。
【0016】この請求項4の発明においては、変速負荷
の累積値が小さいとき即ち自動変速機が新品時で摩擦材
のラッピング不足を生じているときには締結油圧調圧手
段の締結油圧を通常状態よりかなり高くして、摩擦係数
の低下を抑制して変速時間の間延びを抑制し、その後、
摩擦材がなじむに従って締結油圧調圧手段の締結油圧を
通常状態に徐々に低下させることにより、締結要素の締
結油圧を適正に制御することが可能となり、変速時間の
間延びや変速ショックの発生を防止する。
【0017】さらに、請求項5に係る発明は、請求項1
の発明において、前記変速負荷検出手段は、スロットル
開度を検出するスロットル開度検出手段で構成され、前
記変速負荷累積手段は、変速時のスロットル開度に対応
した値を累積するように構成されていることを特徴とし
ている。
【0018】この請求項5の発明においては、スロット
ル開度検出手段の検出値に基づいて変速負荷を検出する
ので、通常の車両に装備されている検出手段を使用して
容易に変速負荷を検出することが可能となる。
【0019】
【発明の実施の形態】以下、本発明の実施の形態を図面
に基づいて説明する。図1は、本発明の一実施形態を示
す概略構成図であり、エンジン1の出力側に自動変速機
2が接続され、この自動変速機2の出力側が図示しない
が終減速機を介して駆動輪に接続されている。
【0020】自動変速機2はエンジン1の出力側に接続
されたトルクコンバータ3と、このトルクコンバータ3
の出力側に接続された変速歯車機構4とで構成され、そ
の変速特性及び変速段の制御が下部に設けられたコント
ロールバルブユニット10によって行われる。
【0021】そして、変速歯車機構4は、図2に示すよ
うに種々の締結要素を内蔵しており、図中21はリバー
スクラッチ、22はハイクラッチ、23はフォワードク
ラッチ、24はフォワードワンウェイクラッチ、25は
オーバーランクラッチ、26はローワンウェイクラッ
チ、29はオイルポンプ、30は入力軸、31はバンド
ブレーキ、32はフロントサンギヤ、33はフロントピ
ニオン、34はフロントインターナルギヤ、35はリヤ
インターナルギヤ、36はフロントプラネットキャリ
ア、37はリヤサンギヤ、38はリヤピニオン、39は
リヤプラネットキャリア、40は出力軸、41はローア
ンドリバースブレーキ、42はパーキングギヤ、43は
パーキングポールである。
【0022】そして、各クラッチ21,22,23,2
5及びブレーキ31,41からなる締結要素は、コント
ロールバルブユニット10により図3の締結作動表に示
すように作動制御される。なお、図3中○は締結状態
を、◎は設定アクセル開度以下で締結し、エンジンブレ
ーキが作用する状態を、●は加速状態で作動する状態
を、×は締結しているが動力伝達には寄与しない状態
を、□は設定アクセル開度以下で締結するがエンジンブ
レーキに寄与しない状態を夫々表す。
【0023】また、*1はオーバドライブスイッチをオ
フ状態としたときのみ作動することを表し、*2はバン
ドサーボピストンの2速締結側、3速開放側の両方に油
圧がさようするが、開放側の油圧面積が大きいため、ブ
レーキバンドは締結しないことを表し、*3は*2の状
態で4速締結側に油圧が作用するためブレーキバンドは
締結することを表している。
【0024】また、自動変速機2の変速段は、図1に示
すように、その下部側に設けられたコントロールバルブ
ユニット10内に設けられた各種コントロールバルブを
制御するシフトソレノイドSSA ,SSB 、オーバーラ
ンクラッチソレノイドOS、ロックアップソレノイドR
Sとコントロールバルブユニット4内のライン圧を制御
するライン圧ソレノイドLSとによって切換え制御され
る。
【0025】ここで、シフトソレノイドSSA,SS
B は、後述するコントローラ11からの制御信号によっ
て自動変速機2の変速段即ち車両走行状態に応じた変速
点ギヤ位置を制御するものであり、ギヤ位置が両シフト
ソレノイドSSA,SSB がオン状態(通電状態)である
ときには1速位置となり、シフトソレノイドSSA がオ
フ状態(非通電状態)でシフトソレノイドSSB がオン
状態であるときには2速位置となり、両シフトソレノイ
ドSSA,SSB がオフ状態であるときには3速位置とな
り、シフトソレノイドSSA がオン状態でシフトソレノ
イドSSB がオフ状態であるときには4速状態となる。
【0026】また、オーバーランクラッチソレノイドO
Sは、同様にコントローラ11からの制御信号によって
車両走行状態に応じたエンジンブレーキ効果を制御す
る。さらに、ロックアップソレノイドRSは、同様にコ
ントローラ11からの制御信号によってデューティ制御
され、これによってロックアップコントロールバルブに
供給するパイロット圧を制御し、ロックアップ圧を調整
する。
【0027】さらにまた、ライン圧ソレノイドLSは、
同様にコントローラ11からの制御信号によってデュー
ティ制御され、これによってプレッシャーモデファイヤ
バルブに供給するパイロット圧を制御し、コントロール
バルブユニット10内のポンプの吐出圧を車両走行状態
に応じたライン圧に調圧する。
【0028】そして、これら各ソレノイドSSA,
B 、OS、RS及びLSがコントローラ11によって
電気的に制御される。コントローラ11は、例えばマイ
クロコンピュータを含んで構成されており、その入力側
にはエンジン1に取付けたスロットルバルブ開度及び開
速度を検知するスロットルセンサ51、このスロットル
センサ51の異常時にスロットルバルブが全閉状態であ
ることを検知するアイドルスイッチ52、同様にスロッ
トルセンサ51の異常時にスロットルバルブが約1/2
開度以上であることを検知するフルスロットルスイッチ
53及びエンジン回転を検知するエンジン回転数検出手
段としてのエンジン回転センサ54が接続されている。
【0029】また、コントローラ11の入力側には、セ
レクトレバーに関連するインヒビタースイッチ55及び
自動変速機2のミッションオイルの温度を検知する油温
センサ56、自動変速機2の出力軸の回転から車速を検
知する車速センサ57が接続されている。
【0030】さらに、コントローラ11の入力側には、
変速歯車機構4の入力軸30の回転数を検出する入力軸
回転数センサ58及び出力軸40の回転数を検出する出
力軸回転数センサ59が接続されている。
【0031】一方、コントローラ11の出力側には、前
述した自動変速機2の変速段即ちギヤ位置を制御するシ
フトソレノイドSSA 及びSSB 、自動変速機2のエン
ジンブレーキ効果を制御するオーバーランソレノイドO
S、ロックアップ圧を制御するロックアップソレノイド
RS及びライン圧ソレノイドLSが接続されている。こ
こで、ライン圧ソレノイドLSにはそのニードル弁始動
時には直接大電流を供給するが、始動後はドロッピング
レジスタ58を介して小電流を供給する。
【0032】そして、コントローラ11ではこれに含ま
れるマイクロコンピュータで、主にスロットルセンサ1
2のスロットル開度検出値をもとに予め設定されたスロ
ットル開度とライン圧との関係を示すライン圧制御マッ
プを参照してライン圧を設定するライン圧制御処理及び
車速とスロットル開度に基づいて予め設定された変速特
性制御マップを参照してシフトソレノイドSSA,SSB
を制御することにより変速段即ちギヤ位置を制御する変
速制御処理を少なくとも実行する。
【0033】次に、上記実施形態の動作をコントローラ
11に含まれるマイクロコンピュータの処理手順を示す
図4〜図7を伴って説明する。マイクロコンピュータ
は、メインプログラムとして、図4の変速制御処理を繰
り返し実行する。
【0034】この変速制御処理は、先ず、ステップS1
で変速中であるか否かを判定する。この判定は、後述す
る図7の学習制御処理において、変速状態を表す変速状
態フラグFTMが“1”にセットされているか否かによっ
て判定し、変速状態フラグF TMが“0”にリセットされ
ているときには、変速中ではないものと判断して、ステ
ップS2に移行し、タービントルクMTとエンジン回転
数NE とに基づいて予め設定された変速制御マップを参
照してライン圧Pを算出し、算出したライン圧に応じた
デューティ比の制御信号をライン圧ソレノイドLSに出
力する。
【0035】ここで、タービントルクMTは、エンジン
1の噴射燃料制御を行うエンジンコントローラ(図示せ
ず)からの吸入空気量信号をもとに予め設定されたター
ビントルク特性マップを参照してエンジントルクを算出
し、このエンジントルクとトルクコンバータ3の特性マ
ップから算出したトルク倍率とを乗算することにより算
出してから一回の処理を終了する。
【0036】一方、ステップS1の判定結果が変速状態
フラグFTMが“1”にセットされているときには、変速
中であると判断してステップS4に移行する。このステ
ップS4では、前述したステップS2と同様にタービン
トルクMTとエンジン回転数NE とをもとに変速制御マ
ップを参照して通常ライン圧P1 を算出する。
【0037】次いで、ステップS5に移行して、現在の
スロットル開度THj に応じた後述する図7の学習制御
処理で設定されている学習補正油圧PADPjを読込んでか
らステップS6に移行して、通常ライン圧P1 、後述す
る図6のラッピング制御処理で設定されているラッピン
グ補正油圧PRAP 及び学習補正油圧PADPjをもとに下記
(1)式の演算を行ってライン圧Pを算出し、算出した
ライン圧に応じたデューティ比の制御信号をライン圧ソ
レノイドLSに出力してから一回の処理を終了する。
【0038】 P=P1 +PRAP +PADPj …………(1) また、マイクロコンピュータは、図4のメインプログラ
ムの他に所定時間(例えば10msec)毎のタイマ割
込処理としてライン圧補正処理であるラッピング処理と
学習制御処理を実行する。
【0039】このライン圧補正処理は、図5に示すよう
に、先ず、ステップS11で変速動作中に棚外れを生じ
たか否かを判定する。この判定は、変速時の変速制御が
予め設定した棚時間を越えているか否かを判定するもの
であり、例えばエンジン回転数NE を監視して、図8に
示すように、変速開始指令時点即ちシフトソレノイドS
A,SSB に対して変速を開始させるための制御信号C
SA, SBを出力した時点t1 からエンジン回転数NE
ピークに達した後所定回転数ΔNE だけ低下した時点t
2 までの変速時間Tが予め設定された設定時間TS 以下
であるか否かを判定することにより行う。
【0040】すなわち、変速時に変速歯車機構4の各種
締結要素に必要な油圧は、ライン圧ソレノイドLSをデ
ューティ制御してアキュームコントロールバルブを制御
することにより、各変速用アキュムレータを作動させて
形成するが、このときにできる油圧をアキュームの棚圧
と称している。
【0041】そして、正常な変速動作を行っている場合
には、図8(a)に示すように変速開始指令が出力され
た時点t1 で、アキュムレータの棚圧が図8(d)に示
すように上昇を開始し、時点t2 で締結要素が図8
(c)で実線図示のように締結状態となることにより、
エンジン回転数NE が図8(b)で実線図示のように減
少を開始し、このエンジン回転数NE がピークから所定
回転数ΔNだけ低下する時点t3 は、時点t1 から設定
変速時間TS が経過する時点t4 より前となり、変速機
出力トルクが図8(c)に示すように高トルク状態に短
時間で復帰するが、締結要素に供給するライン圧が足り
ない場合には、エンジン回転数NE の低下も図8(b)
で破線図示のように緩やかとなり、ピークから所定回転
数ΔNだけ低下する時点t5 が前述した時点t4 を越え
ることになり、棚外れを生じていることがわかると共
に、変速機出力トルクも図8(c)で破線図示のように
高トルク状態への復帰が遅れて変速ショックを生じる。
【0042】そして、ステップS11の判定結果が棚外
れを生じているものであるときには、ステップS12に
移行してラッピング処理状態を表すラッピング状態フラ
グをラッピング処理中を表す“1”にセットし、次いで
ステップS13に移行して、ラッピングカウンタのカウ
ント値CR を“0”にクリアしてからステップS14に
移行して変速歯車機構4の各種締結要素のラッピング不
足を補うラッピング制御処理を実行する。
【0043】次いで、ステップS15に移行して、ラッ
ピングカウンタのカウント値CR が予め設定したラッピ
ング処理を終了する設定値CRS以上となったか否かを判
定し、CR ≧CRSであるときにはラッピング処理終了と
判断してステップS16に移行してラッピング状態フラ
グFRAP を“0”にリセットしからタイマ割込処理を終
了し、CR <CRSであるときにはラッピング処理中であ
ると判断してそのままタイマ割込処理を終了して図4の
メインプログラムに復帰する。
【0044】一方、ステップS11の判定結果が棚外れ
でないものであるときには、ステップS18に移行し
て、ラッピング状態フラグFRAP が“1”にセットされ
ているか否かを判定し、これが“1”にセットされてい
るときには前記ステップS14に移行し、“0”にリセ
ットされているときにはステップS19に移行して
“0”のラッピング補正圧PRAP を内蔵メモリの所定記
憶領域に更新記憶してから前記ステップS17に移行す
る。
【0045】ここで、図5のラッピング制御処理の具体
例は、図6に示すように、先ずステップS22で、スロ
ットルセンサ51のスロットル開度TH、温度センサ5
6のトランスミッションオイル温度TT 及びエンジン回
転センサ54のエンジン回転数NE を読込み、次いでス
テップS23に移行して、トランスミッションオイル温
度TT が予め設定した設定温度TS を越えているか否か
を判定し、TT ≦TSであるときには変速歯車機構4の
各種摩擦要素のラッピングが進行しないものと判断し
て、後述するステップS26に移行する。
【0046】一方、ステップS23の判定結果がTT
S であるときには、変速歯車機構4のラッピングが進
行しているものと判断してステップS241 に移行し、
スロットル開度THがスロットル開度を全閉から全開ま
でをN(正の整数)等分したときの境界開度TH1 〜最
大開度THN-1 中の最小境界開度TH1 未満であるか否
かを判定し、TH<TH1 であるときには、ステップS
251 に移行して、現在のラッピングカウンタのカウン
ト値CR に予め実験によって設定された変速負荷値k1
を加算した値を新たなカウント値CR とし、これを内蔵
メモリの所定記憶領域に更新記憶してからステップS2
6に移行し、TH≧TH1 であるときには、ステップS
242 に移行して、スロットル開度THが第2番目の境
界開度TH2 未満であるか否かを判定し、TH<TH2
であるときにはステップS252に移行して、現在のラ
ッピングカウンタのカウント値CR に予め実験によって
設定された変速負荷値k2 を加算した値を新たなカウン
ト値CR とし、これを内蔵メモリの所定記憶領域に更新
記憶してからステップS26に移行し、TH≧TH 2
あるときには以後順次スロットル開度THを第3番目の
境界開度TH3 〜第N−1番目の境界開度THN-1 と比
較し、スロットル開度THが境界開度未満であるときに
はカウント値CR に変速負荷値ki を加算した値を新た
なカウント値CR とし、これを内蔵メモリの所定記憶領
域に更新記憶してからステップS25に移行し、スロッ
トル開度THが最後の境界開度THN-1 以上であるとき
にはステップS24N に移行して、現在のラッピングカ
ウンタのカウント値CR に予め実験によって設定された
変速負荷値k1 を加算した値を新たなカウント値CR
し、これを内蔵メモリの所定記憶領域に更新記憶してか
らステップS26に移行する。
【0047】ステップS26では、変速開始時のタービ
ントルクMTSTとエンジン回転数N E とをもとに図9に
示すラッピング油圧算出マップを参照してラッピング基
準油圧P0RAPを算出してからステップS27に移行す
る。
【0048】このステップS27では、所定記憶領域に
記憶されているラッピングカウンタのカウント値CR
読出し、これをもとに図10に示すラッピング油圧係数
算出マップを参照してラッピング油圧係数RK を算出す
る。
【0049】ここで、ラッピング油圧係数算出マップ
は、カウント値CR が“0”であるときにはラッピング
油圧係数RK が“1”に設定され、その後カウント値C
R が増加するに応じて比較的急な勾配でラッピング油圧
係数RK が減少し、カウント値CR が予め設定した設定
値CR1に達すると以後は比較的緩やかな勾配でラッピン
グ油圧係数RK が減少し、カウント値CR が予め設定さ
れた設定値CRSに達した後はラッピング油圧係数RK
“0”となるように構成されている。
【0050】次いで、ステップS28に移行して、ラッ
ピング基準油圧P0RAPとラッピング油圧係数RK とをも
とに下記(2)式の演算を行ってラッピング補正油圧P
RAPを算出してからラッピング制御処理を終了して図5
のステップS15の処理に移行する。
【0051】 PRAP =P0RAP×RK …………(2) また、学習制御処理は、図7に示すように、先ず、ステ
ップS31で変速状態フラグFTMが変速中を表す“1”
にセットされているか否かを判定し、これが“0”にリ
セットされているときには、変速中ではないものと判断
してステップS32に移行し、車速センサ57の車速検
出値V及びスロットルセンサ51のスロットル開度TH
をもとに予め設定された変速パターンを参照して要求変
速段を決定する。
【0052】次いで、ステップS33に移行して、要求
変速段が現在選択されている変速段と異なるか否かによ
って変速が必要であるか否かを判定し、要求変速段が現
在変速段と異なる場合には、変速が必要であると判断し
てステップS34に移行し、変速状態フラグFTM
“1”にセットし、次いでステップS35に移行して、
要求変速段に応じたシフトソレノイドSSA,SSB に対
する制御信号CSA,CSBを出力してからステップS36
に移行する。
【0053】このステップS36では、変速開始時から
の経過時間を表すカウント値T1 を“1”だけインクリ
メントし、次いでステップS37に移行して、入力軸回
転数センサ58の入力軸回転数NI と出力軸回転数セン
サ59の出力軸回転数NO との比で表されるギヤ比(N
I /NO )が変化しているイナーシャフェーズ中である
か否かを判定し、イナーシャフェーズ中であるときに
は、ステップS38に移行して、イナーシャフェーズの
経過時間を表すカウント値T2 を“1”だけインクリメ
ントしてからステップS39に移行し、イナーシャフェ
ーズ中でないときには直接ステップS39に移行する。
【0054】ステップS39では、ギヤ比(NI
O )が一定値となるイナーシャフェーズ終了状態とな
ったか否かを判定し、イナーシャフェーズが終了したと
きには、ステップS40に移行して、変速状態フラグF
MTを“0”にリセットすると共に、学習制御フラグF
ADP を学習状態を表す“1”にセットしてから処理を終
了する。
【0055】一方、前述したステップS33の判定結果
が要求変速段と現在変速段とが一致していて変速の必要
がないものであるときには、ステップS41に移行し
て、学習制御フラグFADP が“1”にセットされている
か否かを判定し、これが“0”にリセットされていると
きにはそのまま学習制御処理を終了し、“1”にセット
されているときには、ステップS42に移行する。
【0056】このステップS42では、内蔵メモリの所
定記憶領域に格納されている現在のスロットル開度TH
j に応じた学習補正油圧PADPjを読込み、次いでステッ
プS43に移行して、変速時間カウント値T1 が予め設
定された設定値T1S以上であるか否かを判定する。この
判定は、ライン圧ソレノイドLSに対するデューティ制
御出力のデューティ比が小さくて変速歯車機構4の各種
締結要素に対する締結油圧が小さくなって変速時間が長
くなって棚外れを生じる状態であるか否かを判定するも
のである。
【0057】ここで、通常の自動変速機では、変速時の
ライン圧ソレノイドLSを制御する制御信号のデューテ
ィ比(P1 +PADP )と変速時間のカウント値T1 及び
2との関係は、図11に示すように、デューティ比が
比較的小さい値αであるときには変速経過時間を表すカ
ウント値T1 が設定値T1S以上となり、イナーシャフェ
ーズ経過時間を表すカウント値T2 は目標値T2Sに略一
致し、デューティ比が中程度の値βであるときにはカウ
ント値T1 が設定値T1S未満となり、且つカウント値T
2 が目標値T2Sに略一致し、デューティ比が大きい値γ
であるときにはカウント値T1 が設定値T1S未満であ
り、且つカウント値T2 が目標値T2S未満となる。
【0058】したがって、ステップS43の判定結果が
1 ≧T1Sであるときには、ライン圧ソレノイドLSに
対する制御信号のデューティ比が小さすぎて変速時間が
長くなっているものと判断して、ステップS44に移行
し、現在のスロットル開度THj に応じた学習補正油圧
ADPjに例えば“1”を加算した値を新たな学習補正油
圧PADPjとし、これを内蔵メモリの所定記憶領域に更新
記憶してからステップS48に移行する。
【0059】また、ステップS43の判定結果がT1
1Sであるときには、ライン圧ソレノイドLSに対する
制御信号のデューティ比が大きいものと判断して、ステ
ップS45に移行し、イナーシャフェーズ経過時間を表
すカウント値T2 を目標値T 2Sと比較し、T2 =T2S
あるときにはイナーシャフェーズ時間が目標値に一致し
ているものと判断してそのままステップS48に移行
し、T2 >T2Sであるときには、イナーシャフェーズ時
間が目標値より長いと判断してステップS46に移行
し、現在のスロットル開度THj に応じた学習補正油圧
ADPjに例えば“0.1”を加算した値を新たな学習補
正油圧PADPjとし、これを内蔵メモリの所定記憶領域に
更新記憶してからステップS48に移行し、さらにT2
<T2Sであるときにはイナーシャフェーズ時間が目標値
より短いと判断してステップS47に移行し、現在のス
ロットル開度THj に応じた学習補正油圧PADPjに例え
ば“0.1”を加算した値を新たな学習補正油圧PADPj
とし、これを内蔵メモリの所定記憶領域に更新記憶して
からステップS48に移行する。
【0060】ステップS48では、学習補正油圧PADPj
が正であるか否かを判定し、これが正であるときにはス
テップS49に移行して、学習補正油圧PADPjが予め設
定された上限値PULを越えたか否かを判定し、上限値P
ULを越えているときには、ステップS50に移行して、
上限値PULを学習補正油圧PADPjとして所定記憶領域に
更新記憶してからステップS51に移行して、学習制御
フラグFADP を“0”にリセットすると共に、カウント
値T1 及びT2 を“0”にクリアしてから学習制御処理
を終了する。
【0061】一方、ステップS48の判定結果が学習補
正油圧PADPjが負又は“0”であるときには、ステップ
S52に移行して、学習補正油圧PADPjが予め設定した
上記上限値PULより絶対値が小さい下限値−PLLより小
さいか否かを判定し、PADPj<−PLLであるときにはス
テップS53に移行して、下限値−PLLを学習補正油圧
ADPjとして所定記憶領域に更新記憶してから前記ステ
ップS51に移行し、PADPj≧−PLLであるときにはそ
のままステップS51に移行する。
【0062】なお、図4の処理が変速制御手段に対応
し、図5の処理におけるステップS11が棚外れ検出手
段に対応し、ステップS12〜S16及びS18,S1
9の処理及び図6の処理が第1の締結油圧設定手段に対
応し、ステップS17の処理及び図7の処理が第2の締
結油圧設定手段に対応している。
【0063】したがって、今、自動変速機2及びコント
ローラ11が共に新品であって、工場から出荷する際で
あるときには、その最終ラインでの走行テスト開始時
に、初期状態であって、ラッピング補正油圧PRAP 及び
各スロットル開度に対応した学習補正油圧PADPjが全て
“0”にクリアされているので、図4の処理が実行され
て変速が開始されたときに、ライン圧Pが通常のライン
圧P1 のみとなり、これに応じたデューティ比の制御信
号がライン圧ソレノイドLSに出力されることになり、
ライン圧が自動変速機2の各摩擦要素が馴染んでラッピ
ング不足を解消したときの値に制御される。
【0064】このとき、自動変速機2が新品であるた
め、各摩擦要素が摩擦係数が小さくてラッピング不足状
態であることから、第1回目の変速を開始したときに図
5の変速制御処理で棚外れを検出することになる。
【0065】このため、ラッピング状態フラグFRAP
“1”にセットされると共に、ラッピングカウンタのカ
ウント値CR が“0”にクリアされるため、図6のラッ
ピング処理が開始されて、トランスミッションオイル温
度TT が設定温度TS 以下であるときにはラッピングカ
ウンタのカウント値CR は増加されず、“0”にクリア
されたままの状態を維持するので、ラッピング油圧係数
K が図10に示すように“1”となり、変速開始時の
タービントルクMTSTとエンジン回転数NE とから算出
されるラッピング基準油圧P0RAPがそのままラッピング
補正油圧PRAPとして算出され、これが所定記憶領域に
更新記憶されるので、次に図4のステップS6の処理が
実行されたときに、図12に示すように、ライン圧Pが
通常ライン圧P1 に対してラッピング補正油圧PRAP
高い圧力となり、これに応じてデューティ比の制御信号
がライン圧ソレノイドLSに出力されて、変速歯車機構
4の各種締結要素に供給されるライン圧が高められて、
ラッピング不足による摩擦係数の低下を抑制する。
【0066】これと同時に、図7に示す学習制御処理も
実行されるので、変速時間に対応するカウント値T1
設定値T1S以上となる。このため、第1回目の変速動作
が終了したときに、図7の学習制御処理で、ステップS
33からステップS41〜S43を経てステップS44
に移行して、スロットル開度THj に応じた学習補正油
圧PADPjが“1”だけ加算されて、これが新たな学習補
正油圧PADPjとして所定記憶領域に更新記憶される。
【0067】このため、アクセル開度THが一定のまま
次の変速動作に移行したときには、通常のライン圧P1
にラッピング補正油圧PRAP と加算された学習補正油圧
AD Pjとが加算されるので、ライン圧Pがより大きな値
となり、変速歯車機構4の締結要素の確実な締結状態が
確保されて、変速時間の間延びや変速ショックの発生を
確実に防止することができる。
【0068】なお、第2回目の変速時にスロットル開度
THが前回のスロットル開度とは異なる場合には、当該
スロットル開度THについては学習補正油圧が設定され
ていないので、学習制御によるライン圧の補正は行われ
ない。
【0069】この第2回目の変速制御では、変速歯車機
構4の各種締結要素に対するライン圧が高められている
ことにより、棚外れを生じることはないが、ラッピング
カウンタのカウント値CR は小さい値であって設定値C
RSに達しないので、ラッピング状態フラグFRAP
“0”にリセットされることはなく、図5の処理が実行
されたときにステップS11からステップS18に移行
するが、ラッピング状態フラグFRAP が“1”にセット
されているので、ステップS14に移行して、図6のラ
ッピング制御処理が継続される。
【0070】このとき、トランスミッションオイル温度
T が設定温度TS 以上となっているものとすると、ス
テップS23からステップS241 に移行して、そのと
きのスロットル開度THj に応じた変速負荷値kj がラ
ッピングカウンタのカウント値CR に加算されて新たな
カウント値CR が算出され、これが所定記憶領域に更新
記憶される。
【0071】このため、カウント値CR の増加に応じて
ステップS27で算出されるラッピング油圧係数RK
値が“1”より小さい値となるため、ステップS28で
算出されるラッピング補正油圧PRAP も小さい値となっ
て、変速歯車機構4の各種締結要素に供給されるライン
圧も馴染み量に応じて小さくなる。
【0072】その後、カウント値CR の増加に応じて順
次ラッピング補正油圧PRAP が小さくなり、時点t2
変速回数が例えば200回前後となってラッピングカウ
ンタのカウント値CR が設定値CRSに達すると、ラッピ
ング油圧係数RK が“0”となることにより、ラッピン
グ補正油圧PRAP が零となり、図5の処理においてステ
ップS15を経てステップS16に移行することによ
り、ラッピング状態フラグFRAP が“0”にリセットさ
れることにより、ラッピング制御処理が終了され、以後
は図7の学習制御処理のみが実行され、変速歯車機構4
の各種締結要素のバラツキ等による摩擦係数のバラツキ
にも対応して、適正なライン圧を確保して良好な変速制
御を行うことができる。
【0073】このように、自動変速機2の変速歯車機構
4の各種締結要素が馴染んでラッピング不足が解消され
て、通常制御状態に移行した後で、自動変速機2に異常
が発生して、図12の時点t3 で自動変速機2を新品に
交換した場合には、この時点では図6のラッピング制御
処理が終了しているので、ライン圧Pが通常ライン圧P
1 と学習補正油圧PADPjとによってのみ設定されること
になり、前述した時点t1 での自動変速機2及びコント
ローラ11が新品同志の場合と同様に、棚外れが検出さ
れることになり、再度図6のラッピング制御処理が実行
されて、図12で一点鎖線図示のようにライン圧Pが増
加され、自動変速機2を新品に交換した場合の変速時間
の間延びや変速ショックの発生を防止することができ
る。
【0074】また、ラッピング制御処理が終了した後
に、コントローラ11に異常が発生して新品のコントロ
ーラ11に交換した場合には、新品のコントローラ11
ではラッピング補正油圧PRAP 及び学習補正油圧PADPj
が共に“0”に初期化されているので、交換前のコント
ローラの学習補正油圧PADPjに対応するライン圧Pの変
動を伴うが、交換前の学習補正油圧PADPjが負である場
合には、新品のコントローラの学習補正油圧PADPjの方
が高いので棚外れを生じることはなく、また交換前の学
習補正油圧PADPjが正であって差が大きい場合でも、図
7の処理が実行されたときにステップS44で学習補正
油圧PADPjが大きく増加されるので、時間の経過と共に
新旧の学習補正油圧の差が縮まる。
【0075】この学習制御処理によっても、補正が追い
つかず、棚外れが生じる場合には、図6のラッピング制
御処理が実行されて、変速時間の間延びや変速ショック
の発生が防止される。
【0076】同様に、ラッピング制御処理が終了した後
に、コントローラ11を中古のコントローラに交換した
り、自動変速機を中古又はリビルトした自動変速機に交
換した場合でも、この中古のコントローラで図4〜図7
の処理を実行することにより、通常の学習制御処理が実
行されて、適正なライン圧が確保されると共に、棚外れ
を検出したときにはラッピング制御処理が実行されて変
速時間の間延び及び変速ショックの発生が防止される。
【0077】さらに、図12における時点t3 でライン
圧ソレノイドLSを含む制御系に異常が発生することに
より、変速歯車機構4の各種締結要素に供給するライン
圧が低下して棚外れが発生した場合には、この棚外れを
検出した時点で直ちにラッピング制御処理が実行され
て、ライン圧Pが増加され、これに応じてライン圧ソレ
ノイドLSに対する制御信号のデューティ比が大きくな
るので、各種締結要素に対する油圧低下分を補償するこ
とができ、その後ラッピング制御処理におけるラッピン
グ補正油圧PRAP は徐々に減少するが、この減少分を学
習制御処理における学習補正油圧PADPjの増加によって
補い、制御系の異常による油圧低下を学習幅の上限に近
いところで補償することができ、異常発生時でもライン
圧を確保することができる。
【0078】このように、上記実施形態によれば、自動
変速機2及び/又はコントローラ11が交換された場合
でも、コントローラ11側で棚外れを監視し、棚外れを
検出したときには直ちにラッピング制御処理を実行する
ことにより、変速歯車機構4の各種締結要素に対するラ
イン圧を増加させて、変速時間の間延びや変速ショック
の発生を防止することができる。
【0079】しかも、ラッピング制御処理は、学習制御
処理のようにスロットル開度毎に異なる学習補正油圧を
設定する場合とは異なり、スロットル開度とは無関係に
実行されるので、棚外れを生じたときには確実に実行さ
れて、以後の変速時間の間延びや変速ショックの発生を
確実に防止することができる。
【0080】さらに、学習制御処理を常時実行している
ので、締結要素等の摩擦係数変化や制御系の経時変化に
も確実に対応して、各種締結要素のライン圧を適正値に
維持するとこができるので、変速ショックの発生や摩擦
要素の寿命低下を防止することができる。
【0081】なお、上記実施形態においては、棚外れを
エンジン回転数NE がΔN分だけ減少するまでの時間が
設定値以上であるか否かによって検出する場合について
説明したが、これに限定されるものではなく、入力軸回
転数NI と出力軸回転数NOとの比で表されるギヤ比或
いはレシオ比が任意の値にまで変更される時間が設定値
以上であるか否かによって棚外れを検出するようにして
もよく、要は変速の進行状況が正常であるか否かを判断
し得るものであればよい。
【0082】また、上記実施形態においては、ラッピン
グ制御処理において、ラッピング油圧係数RK をカウン
ト値CR の増加に応じて連続的に減少させる場合につい
て説明したが、これに限定されるものではなく、ラッピ
ング油圧係数RK を順次ステップ状に減少させるように
してもよく、さらにはそのステップ数を2段階としてラ
ッピングカウント値CR が所定値の前後で“1”と
“0”に切換えるようにしてもよい。
【0083】
【発明の効果】以上説明したように、請求項1に係る発
明によれば、変速時間が予め設定した棚時間を越えてい
る棚外れ状態であるか否かを検出する棚外れ検出手段
と、棚外れを防止するために前記締結油圧調圧手段に対
して締結油圧を高める締結油圧補正値を設定する第1の
締結油圧設定手段と、該第1の締結油圧設定手段で設定
された締結油圧に基づいて前記締結油圧調圧手段を制御
する変速制御手段とを備え、前記第1の締結油圧設定手
段は、前記締結要素に与えられる変速負荷を検出する変
速負荷検出手段と、該変速負荷検出手段が検出する変速
負荷を累積する変速負荷累積手段とを有して前記変速負
荷累積手段の累積値が所定値以下の場合には、変速時の
締結油圧を累積値が所定値以上の場合よりも高める締結
油圧補正値を設定し、前記変速負荷累積手段は、前記棚
外れ検出手段が棚外れを検出したときに、その累積値を
小さくするように構成したので、変速歯車機構で変速を
行う場合に、そのときの締結要素に与えられる変速負荷
を累積値から締結要素がなじんでいるか否かを判断し、
その累積値が所定値以下であるときには締結要素がなじ
んでいないものと判断して変速時の締結油圧を累積値が
所定値以上の場合よりも高めてラッピング不足による変
速時間の変動を抑制し、また棚外れ検出手段で棚外れを
検出したときには、変速負荷の累積値を小さい値に変更
することにより、ラッピング制御を開始させてることが
でき、棚外れを生じるか否かから自動変速機及び制御装
置の何れか一方の交換を制御装置側で検出し、これに対
応した良好な変速時間制御を行って変速時間の間延びや
変速ショックの発生を防止することができるという効果
が得られる。
【0084】また、請求項2に係る発明によれば、第1
の締結油圧設定手段によるラッピング制御を行うと共
に、イナーシャフェーズ時間計測手段の計測時間に基づ
いて第2の締結油圧設定手段で締結油圧補正値を設定
し、その設定値に基づいて変速制御手段で締結油圧調圧
手段を制御することにより、締結要素の締結油圧を学習
制御することができ、より良好な変速時間制御を行って
変速時間の間延びや変速ショックの発生を防止すること
ができるという効果が得られる。
【0085】さらに、請求項3に係る発明によれば、棚
外れが検出されたときに変速負荷累積手段の累積値が初
期値に設定されるので、変速歯車機構が新品状態と同様
のラッピング制御を行ってラッピング不足による変速時
間の変動を抑制することができるという効果が得られ
る。
【0086】さらにまた、請求項4に係る発明によれ
ば、変速負荷の累積値が小さいとき即ち自動変速機が新
品時で摩擦材のラッピング不足を生じているときには締
結油圧調圧手段の締結油圧を通常状態よりかなり高くし
て、摩擦係数の低下を抑制して変速時間の間延びを抑制
し、その後、摩擦材がなじむに従って締結油圧調圧手段
の締結油圧を通常状態に徐々に低下させることにより、
締結要素の締結油圧を適正に制御することが可能とな
り、変速時間の間延びや変速ショックの発生を防止する
という効果が得られる。
【0087】さらに、請求項5に係る発明によれば、ス
ロットル開度検出手段の検出値に基づいて変速負荷を検
出するので、通常の車両に装備されている検出手段を使
用して容易に変速負荷を検出することが可能となり、製
品コストを低減することができるという効果が得られ
る。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の一実施形態を示す概略構成図である。
【図2】変速歯車機構の具体例を示す模式図である。
【図3】変速歯車機構の締結作動説明図ある。
【図4】コントローラの変速制御処理の一例を示すフロ
ーチャートである。
【図5】コントローラのライン圧制御処理の一例を示す
フローチャートである。
【図6】図5におけるラッピング制御処理の具体例を示
すフローチャートである。
【図7】図5における学習制御処理の具体例を示すフロ
ーチャートである。
【図8】棚外れを検出する動作を説明するためのタイム
チャートである。
【図9】ラッピング制御処理に使用するラッピング油圧
算出マップを示す特性線図である。
【図10】ラッピング制御処理に使用するラッピング油
圧係数算出マップを示す特性線図である。
【図11】変速中のライン圧ソレノイドに対する制御信
号のデューティ比と変速時間との関係を示す特性線図で
ある。
【図12】本発明の実施形態の動作の説明に供するタイ
ムチャートである。
【符号の説明】
1 エンジン 2 自動変速機 3 トルクコンバータ 4 変速歯車機構 10 コントロールバルブユニット 11 コントローラ 30 入力軸 40 出力軸 51 スロットルセンサ 54 エンジン回転数センサ 55 車速センサ 58 入力軸回転数センサ 59 出力軸回転数センサ SSA,SSB シフトソレノイド LS ライン圧ソレノイド

Claims (5)

    【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】 変速歯車機構の各種摩擦要素に対する締
    結油圧を締結油圧調圧手段で調圧し、当該摩擦要素を選
    択的に作動させて所定変速段を選択するようにした自動
    変速機において、 変速時間が予め設定した棚時間を越えている棚外れ状態
    であるか否かを検出する棚外れ検出手段と、棚外れを防
    止するために前記締結油圧調圧手段に対して締結油圧を
    高める締結油圧補正値を設定する第1の締結油圧設定手
    段と、該第1の締結油圧設定手段で設定された締結油圧
    に基づいて前記締結油圧調圧手段を制御する変速制御手
    段とを備え、 前記第1の締結油圧設定手段は、前記締結要素に与えら
    れる変速負荷を検出する変速負荷検出手段と、該変速負
    荷検出手段が検出する変速負荷を累積する変速負荷累積
    手段とを有して前記変速負荷累積手段の累積値が所定値
    以下の場合には、変速時の締結油圧を累積値が所定値以
    上の場合よりも高める締結油圧補正値を設定し、前記変
    速負荷累積手段は、前記棚外れ検出手段が棚外れを検出
    したときに、その累積値を小さくするように構成されて
    いることを特徴とする自動変速機における変速時間自動
    調整装置。
  2. 【請求項2】 前記変速歯車機構のギヤ比が変化中であ
    るか否かを検出するギヤ比変化検出手段と、該ギヤ比検
    出手段でギヤ比変化中であることを検出したときにその
    経過時間を計測するイナーシャフェーズ時間計測手段
    と、該イナーシャフェーズ時間計測手段の計測時間が目
    標時間となるように前記締結油圧調圧手段の締結油圧補
    正値を設定する第2の締結油圧設定手段と、前記第1の
    締結油圧設定手段及び第2の締結油圧設定手段で設定さ
    れた締結油圧に基づいて前記締結油圧調圧手段を制御す
    る変速制御手段とを備えたことを特徴とする請求項1記
    載の自動変速機における変速時間自動調整装置。
  3. 【請求項3】 前記変速負荷累積手段は、前記棚外れ検
    出手段が棚外れを検出したときに、その累積値を初期値
    に設定するように構成されていることを特徴とする請求
    項1又は2記載の自動変速機における変速時間自動調整
    装置。
  4. 【請求項4】 前記第1の締結油圧設定手段は、前記変
    速負荷累積手段の累積値が大きくなるに従って締結油圧
    補正値を小さくするように構成されていることを特徴と
    する請求項1乃至3の何れかに記載の自動変速機におけ
    る変速時間自動調整装置。
  5. 【請求項5】 前記変速負荷検出手段は、スロットル開
    度を検出するスロットル開度検出手段で構成され、前記
    変速負荷累積手段は、変速時のスロットル開度に対応し
    た値を累積するように構成されていることを特徴とする
    請求項1記載の自動変速機における変速時間自動調整装
    置。
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