JPH0977900A - 親水性ポリエチレン微多孔膜の製造方法 - Google Patents

親水性ポリエチレン微多孔膜の製造方法

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JPH0977900A
JPH0977900A JP7260691A JP26069195A JPH0977900A JP H0977900 A JPH0977900 A JP H0977900A JP 7260691 A JP7260691 A JP 7260691A JP 26069195 A JP26069195 A JP 26069195A JP H0977900 A JPH0977900 A JP H0977900A
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polyethylene
microporous membrane
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acrylic monomer
molecular weight
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JP7260691A
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English (en)
Inventor
Norimitsu Kaimai
教充 開米
Kenji Miyasaka
健司 宮坂
Yuzo Izumi
祐三 出水
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Tonen Chemical Corp
Original Assignee
Tonen Sekiyu Kagaku KK
Tonen Chemical Corp
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Publication date
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Abstract

(57)【要約】 【課題】 保液性に優れ、イオン伝導性も良好な親
水性ポリエチレン微多孔膜の製造方法を提供する。 【解決手段】 超高分子量ポリエチレン成分を含有する
ポリエチレン微多孔膜に、架橋剤の存在下にアクリル系
モノマーを電離性放射線処理により特定量グラフト重合
させる方法。

Description

【発明の詳細な説明】
【0001】
【発明の属する技術分野】本発明は、超高分子量ポリエ
チレンを含有する親水性ポリエチレン微多孔膜の製造方
法に関し、特に保液性に優れ、イオン伝導性も良好な親
水性ポリエチレン微多孔膜の製造方法に関する。
【0002】
【従来の技術】ポリエチレン微多孔膜は疎水性であるた
め、有機電解液系電池用セパレータとして用いることが
できるが、水溶液系電池用セパレータで用いる場合に
は、界面活性剤などにより微多孔膜を親水化処理しなけ
ればならなかった。例えば、酸化銀電池においては、ポ
リエチレンフィルムに親水基を有する化合物をグラフト
化させたフィルムを用いている。
【0003】水溶液系電池用セパレータとして界面活性
剤処理をしたポリエチレン微多孔膜を用いる場合におい
ては、電解液中に長時間浸漬させていると界面活性剤が
溶け出して、親水基の減少とともに電池の出力が低下し
てしまうという問題がある。特に、二次電池において
は、セパレータの親水性の低下(保液率の低下)は、電
池の寿命(サイクル特性)を低下させる原因となり好ま
しくない。
【0004】また、常温型燃料電池においては、デュポ
ン社製のナフィオン(登録商標、以下省略)に代表され
るフッ素樹脂系イオン交換膜がしばしば用いられてい
る。このようなイオン交換膜を用いた常温型燃料電池は
出力密度が高く、電気自動車や小規模のコジェネレーシ
ョンシステムへの応用が期待されている。
【0005】しかしながら、上記のナフィオンは、電解
質の保持力が低く、ガスのクロスリークが大きいという
本質的な欠点があり、これを改良するためには通常膜厚
を80〜100μmにする必要がある。しかし、膜が厚
いほど出力密度の増大と共に電解質のオーム損失による
発熱も大きくなるためにセルの温度管理が難しくなり、
エネルギーロスも大きくなるといった問題が生じてい
る。また、フッ素樹脂系イオン交換膜の製造には多段階
工程が必要であるため製造コストが非常に高いという欠
点がある。さらに、フッ素樹脂系イオン交換膜は、膜中
に水分が含まれていなければイオン伝導体として機能し
ないため、水蒸気による加湿を施す必要がある。
【0006】
【発明が解決しようとする課題】したがって本発明の課
題は、保液性に優れ、イオン伝導性も良好な親水性ポリ
エチレン微多孔膜を製造する方法を提供することであ
る。
【0007】
【課題を解決するための手段】上記課題に鑑み鋭意研究
の結果、本発明者らは、超高分子量成分を含有するポリ
エチレンからなる微多孔膜に、架橋剤の存在下にアクリ
ル系モノマーを電離性放射線により特定量グラフト重合
処理してなる微多孔膜が、保液性に優れ、イオン伝導性
も良好であることを見出し、本発明に想到した。
【0008】すなわち、本発明の親水性ポリエチレン微
多孔膜を製造する方法は、重量平均分子量7×105
上の成分を1重量%以上含有するポリエチレンからなる
微多孔膜の細孔の表面および膜表面に、架橋剤の存在下
にアクリル系モノマーを電離性放射線処理により5〜3
0重量%グラフト重合させることを特徴とする。
【0009】
【発明の実施の形態】本発明の親水性ポリエチレン微多
孔膜は、超高分子量成分を含有するポリエチレンからな
る微多孔膜を基材とするものである。
【0010】本発明で用いるポリエチレン微多孔膜は、
重量平均分子量7×105 以上の超高分子量ポリエチレ
ンを1重量%以上含有するポリエチレンからなる。超高
分子量ポリエチレンの含有率が1重量%未満では、延伸
性の向上に寄与する超高分子量ポリエチレンの分子鎖の
絡み合いがほとんど形成されず、高強度の微多孔膜を得
ることができない。また、超高分子量ポリエチレンの含
有率の上限は特に限定的ではないが、90重量%を超え
ると目的とするポリエチレン溶液の高濃度化の達成が困
難となるため好ましくない。
【0011】このポリエチレンは、上記分子量を有して
いれば、単独のポリエチレン(混合物でないもの)か、
2種以上のポリエチレンからなる組成物のどちらでもよ
い。単独のポリエチレンの場合は、例えば重量平均分子
量7×105 以上の超高分子量ポリエチレンを1重量%
以上含有するように多段重合することにより製造するこ
とができる。多段重合としては、二段重合により高分子
量部分と低分子量部分とを製造するのが好ましい。
【0012】また、ポリエチレン組成物(混合物)の場
合は、超高分子量ポリエチレンは、重量平均分子量7×
105 以上、好ましくは1×106 から15×106
ものである。重量平均分子量が7×105 未満では、最
大延伸率が低く、目的の微多孔膜が得られない。一方、
上限は特に限定的ではないが15×106 を超えるもの
は、ゲル状成形物の形成において、成形性に劣る。
【0013】上記ポリエチレンの重量平均分子量/数平
均分子量(以下 「Mw /Mn」という)は、5〜300が
好ましい。Mw /Mn が10未満では、平均分子鎖長が
大きく、溶解時の分子鎖同志の絡み合い密度が高くなる
ため、高濃度溶液の調製が困難である。又、Mw /Mn
が300を超えると、延伸時に低分子量成分の破断が起
こり膜全体の強度が低下する。
【0014】このような超高分子量ポリエチレンとして
は、高密度ポリエチレン(HDPE)、高圧法による低
密度ポリエチレン(LDPE)、低圧法による直鎖状の
低密度ポリエチレン(LLDPE)があげられる。これ
らのうちでは、特に高密度の超高分子量ポリエチレンが
好ましい。
【0015】ポリエチレン組成物中の超高分子量ポリエ
チレン以外のポリエチレンは、重量平均分子量7×10
5 未満のものであるが、分子量の下限としては1×10
4 以上のものが好ましい。重量平均分子量が1×104
未満のポリエチレンを用いると、延伸時に破断が起こり
やすく、目的の微多孔膜が得られないので好ましくな
い。特に、重量平均分子量が1×105 以上7×105
未満のポリエチレンを超高分子量ポリエチレンに配合す
るのが好ましい。
【0016】このようなポリエチレンとしては、高密度
ポリエチレン、高圧法による低密度ポリエチレン、低圧
法による直鎖状の低密度ポリエチレンがあげられる。こ
れらのうちでは、特に高密度ポリエチレンが好ましい。
【0017】なお、前述したようなポリエチレンには、
必要に応じて、酸化防止剤、紫外線吸収剤、滑剤、アン
チブロック剤、顔料、染料、無機充填剤などの各種添加
剤を本発明の目的を損なわない範囲で添加することがで
きる。
【0018】次に、前述したようなポリエチレンから、
親水性ポリエチレン微多孔膜を製造する本発明の方法に
ついて以下説明する。
【0019】本発明において、原料となるポリエチレン
の高濃度溶液は、前述のポリエチレンを溶媒に加熱溶解
することにより調製する。
【0020】この溶媒としては、ポリエチレンを十分に
溶解できるものであれば特に限定されない。例えば、ノ
ナン、デカン、ウンデカン、ドデカン、流動パラフィン
などの脂肪族又は環式の炭化水素、あるいは沸点がこれ
らに対応する鉱油留分などが挙げられるが、溶媒含有量
が安定なゲル状成形物を得るためには流動パラフィンの
ような不揮発性の溶媒が好ましい。
【0021】加熱溶解は、ポリエチレンが溶媒中で完全
に溶解する温度で攪拌しながら行なう。その温度は、例
えば140〜250℃の範囲が好ましい。また、ポリエ
チレン溶液の濃度は、10〜50重量%が好ましく、よ
り好ましくは10〜40重量%である。濃度が10重量
%未満では、使用する溶媒量が多く経済的でないばかり
か、シート状に成形する際に、ダイス入り口でスウェル
やネックインが大きくシートの成形が困難となる。一
方、濃度が50重量%を超えると、均一な溶液の調製が
困難となる。なお、加熱溶解にあたってはポリエチレン
の酸化を防止するために酸化防止剤を添加するのが好ま
しい。
【0022】次にこのポリエチレンの加熱溶液を好まし
くはダイスから押し出して成形する。ダイスは、通常長
方形の口金形状をしたシートダイスが用いられるが、2
重円筒状のインフレーションダイスなども用いることが
できる。シートダイスを用いた場合のダイスギャップは
通常0.1〜5mmであり、押出し成形温度は140〜
250℃である。この際押出し速度は、通常20〜30
cm/分及至2〜3m/分である。
【0023】このようにしてダイスから押出された溶液
は、冷却することによりゲル状成形物に成形される。冷
却は少なくともゲル化温度以下までは50℃/分以上の
速度で行なうのが好ましい。一般に冷却速度が遅いと、
得られるゲル状成形物の高次構造が粗くなり、それを形
成する疑似細胞単位も大きなものとなるが、冷却速度が
速いと、密な細胞単位となる。冷却速度が50℃/分未
満では、結晶化度が上昇し、延伸に適したゲル状成形物
となりにくい、従って、冷却速度を調整することによ
り、得られる微多孔膜の孔径を変化させることができ
る。
【0024】冷却方法としては、冷風、冷却水、その他
の冷却媒体に直接接触させる方法、冷媒で冷却したロー
ルに接触させる方法などを用いることができる。なお、
ダイスから押出された溶液は、冷却前あるいは冷却中
に、1〜10好ましくは1〜5の引取比で引き取っても
よい。引取比が10以上になるとネックインが大きくな
り、また、延伸時に破断を起こしやすくなり好ましくな
い。
【0025】次に、このゲル状成形物に対して延伸を行
なう。延伸はゲル状成形物を加熱し、通常のテンター
法、ロール法、インフレーション法、圧延法もしくはこ
れらの方法の組み合わせによって所定の倍率で行う。延
伸は1軸延伸でも2軸延伸でもよいが、2軸延伸が好ま
しい。また、2軸延伸の場合は、縦横同時延伸または遂
次延伸のいずれでもよい。
【0026】延伸温度は、好ましくは融点+10℃以
下、より好ましくは、結晶分散温度以上融点以下の温度
範囲である。延伸温度が融点+10℃を超えると、樹脂
の溶融により延伸による分子鎖の配向のうえから好まし
くない。
【0027】延伸倍率は原反の厚さによって異なるが、
1軸延伸では2倍以上が好ましく、より好ましくは3〜
30倍である。2軸延伸では、面倍率で10倍以上が好
ましく、より好ましくは15〜400倍である。面倍率
が10倍未満では延伸が不十分で高弾性、高強度の微多
孔膜が得られない。一方、面倍率が400倍を超える
と、延伸装置、延伸操作などの点で制約が生じる。
【0028】得られた延伸成形物は、溶剤で洗浄し残留
する溶媒を除去する。洗浄溶剤としては、ペンタン、ヘ
キサン、ヘプタンなどの炭化水素、塩化メチレン、四塩
化炭素などの塩素化炭化水素、三フッ化エタンなどのフ
ッ化炭化水素、ジエチルエーテル、ジオキサンなどのエ
ーテル類などの易揮発性のものを用いることができる。
これらの溶媒はポリエチレンの溶解に用いた溶媒に応じ
て適宜選択し、単独もしくは混合して用いる。洗浄方法
は、溶剤に浸漬し抽出する方法、溶剤をシャワーする方
法、または、これらの組み合わせによる方法などにより
行なうことができる。
【0029】上述のような洗浄は、延伸成形物中の残留
溶媒が1重量%未満になるまで行なう。その後洗浄溶剤
を乾燥するが、洗浄溶剤の乾燥方法は、加熱乾燥、熱風
による風燥、加熱ロールに接触させる、加熱媒体に浸漬
するなどの方法で行なうことができる。
【0030】乾燥した延伸成形物は、結晶分散温度〜融
点の温度範囲で熱固定することが望ましい。熱固定温度
が融点を超えると、樹脂が溶融してしまう。熱固定処理
の時間は、熱固定温度により異なるが、10秒から10
分間行なうのが好ましい。
【0031】前述の方法によるポリエチレン微多孔膜
は、空孔率が好ましくは30〜95%、より好ましくは
35〜90%の範囲である。空孔率が30%未満では微
多孔内に親水性のアクリル系モノマーを十分な量グラフ
トさせることができないためイオン伝導性が不十分とな
り、一方、95%を超えると膜の機械的強度が小さくな
り実用性に劣る。また、平均貫通孔径は好ましくは0.
005〜1μm、より好ましくは0.01〜0.2μm
の範囲である。平均孔径が0.005μm未満であると
微多孔内に親水性のアクリル系モノマーを十分な量グラ
フトさせることができないため保水性が不十分となり、
一方、1μmを超えても保水性が悪くなる。さらに、強
度は、引張破断強度で200kg/cm2 以上が好まし
く、より好ましくは500kg/cm2 以上である。引
張破断強度を200kg/cm2 以上とすることによ
り、親水性ポリエチレン微多孔膜の耐久性が十分とな
る。
【0032】なお、ポリエチレン微多孔膜の厚さは適宜
選択されるが、0.1〜50μmが好ましく、より好ま
しくは1〜25μmである。厚さは0.1μm未満で
は、膜の機械的強度不足から実用に供することが難し
い。一方、50μmを超える場合には、厚すぎて実効抵
抗が大きくなり好ましくない。
【0033】本発明の親水性ポリエチレン微多孔膜は、
上述したポリエチレン微多孔膜に電離性放射線を照射し
て、微多孔膜内部にラジカルを生成させ、架橋剤の存在
下でアクリル系モノマーを気相または液相にて微多孔膜
に接触させ、アクリル系モノマーをグラフト重合して製
造される。電離性放射線はポリエチレン微多孔膜の内部
まで透過するため、電離性放射線重合法によれば膜の細
孔の表面及び膜表面にほぼ均一にグラフト重合体が形成
される。
【0034】なお、プラズマ照射後グラフト重合する方
法も可能である。
【0035】電離性放射線としては、α線、β線、γ線
およびX線をあげることができるが、取り扱いの上から
β線(電子線)による電子線グラフト重合法が好ましく
用いられる。
【0036】電子線グラフト重合法としては、前記の微
多孔膜とアクリル系モノマーを共存させて同時に電子線
を照射する同時照射法、および予め微多孔膜に電子線を
照射した後にアクリル系モノマーを反応させる前照射法
がある。アクリル系モノマーの単独重合を抑制すること
ができることから前照射法を用いることが好ましい。前
照射法では微多孔膜に加速電圧100〜5000keV
が好ましく、より好ましくは200〜800keVの電
子線を照射する。電子線の照射はプラズマ法の如く不活
性ガス雰囲気を必要とせず、空気雰囲気下で行なうこと
ができる。
【0037】照射線量としては10〜500kGyが適
当であり、好ましくは50〜200kGyである。10
kGy未満ではアクリル系モノマーのグラフトが十分に
行なわれず、500kGyを超えると微多孔膜が劣化す
ることがある。
【0038】次いで電子線照射したポリエチレン微多孔
膜をアクリル系モノマー溶液に浸漬処理してグラフト重
合体を形成する。
【0039】グラフト重合するアクリル系モノマーの具
体例としては、アクリル酸、アクリル酸メチル、アクリ
ル酸エチル、アクリル酸ブチル、アクリル酸2−エチル
ヘキシル、アクリル酸ベンジル、アクリル酸ビニル、ア
クリル酸ラウリル、アクリル酸ステアリル、メタクリル
酸メチル、メタクリル酸ブチル、メタクリル酸2−エチ
ルヘキシル、メタクリル酸2−ジメチルアミノエチル、
メタクリル酸ビニル、アクリルアミド、アクリロニトリ
ル等が挙げられる。これらの中では、特にアクリル酸が
好ましい。これらは単独でも複数種のモノマーの混合物
として用いてもよい。
【0040】また、本発明では、上記アクリル系モノマ
ーをグラフト重合させる際に、架橋剤を存在させること
が必要である。この架橋剤としては、分子中に2個以上
の2重結合有するもので、例えばジビニルベンゼン、ト
リメチロールプロパントリメタクリレート、ジアリルフ
タレート、トリアリルイソシアヌレート、トリメチロー
ルプロパントリアクリレート、テトラメチロールメタン
トリアクリレート、テトラエチレングリコールアクリレ
ートなどがあげられる。
【0041】この架橋剤の存在下でアクリル系モノマー
をグラフト重合させたポリエチレン微多孔膜は、架橋剤
を存在させない状態での同じグラフト重合量のものに比
べて保液率が著しく向上する。
【0042】また、上記モノマーの単独重合を防止する
ためにモール塩(硫酸アンモニウム鉄(II)・六水和
物)、ハイドロキノンモノメチルエーテルのような重合
禁止剤、およびイソプロピルアルコール(IPA)、二
塩化エチレンなどを併用することもできる。
【0043】電子線グラフト重合法の具体的工程につい
て以下に説明する。
【0044】(a)グラフト重合するアクリル系モノマ
ーは、水および有機溶媒、好ましくは低級アルコール、
より好ましくはイソプロピルアルコールが10〜50容
量%の水/アルコールの混合溶媒に溶解またはけん濁さ
せ、アクリル系モノマーの均一溶液またはエマルジョン
を調製する。なお、この際必要に応じて界面活性剤を用
いてもよい。この界面活性剤は、水または有機溶媒中に
0.1〜50容量%を含有することが好ましい。
【0045】また、アクリル系モノマーは、0.1〜5
0容量%が好ましく、より好ましくは0.5〜20容量
%で、前記の水および有機溶媒は、99.9〜50容量
%が好ましく、より好ましくは99.5〜80容量%で
ある。アクリル系モノマーが、0.1重量部未満では、
微多孔膜内部に十分な量のグラフト重合体を形成するこ
とができず、一方、アクリル系モノマーの量が50容量
%を超すと、重合量の制御が困難となる。
【0046】さらに、架橋剤は、前記のアクリル系モノ
マーの容量に対し、好ましくはその0.1〜10容量%
を、より好ましくはその1〜5容量%をさらに加える。
架橋剤の量がアクリル系モノマーに対して0.1容量%
未満では、得られる親水性微多孔膜の保液率の向上がみ
られず、一方10容量%を超えると本発明の効果が発現
されず、むしろモノマーの重合が先行されるために好ま
しくない。
【0047】(b)ポリエチレン微多孔膜内部に前述の
ように電子線を照射してラジカルを生成させ、このポリ
エチレン微多孔膜を上記の架橋剤が存在下のアクリル系
モノマーの均一溶液またはエマルジョンに接触させる。
具体的には、上記の架橋剤が存在下のアクリル系モノマ
ーの均一溶液またはエマルジョンに、ラジカルを生成さ
せたポリエチレン微多孔膜を浸漬するのがよい。なお、
この操作は、窒素ガス、アルゴンガス等をアクリル系モ
ノマーの均一溶液またはエマルジョンにバブリングしな
がら行なう。このときアクリル系モノマーの均一溶液ま
たはエマルジョンの温度は好ましくは0〜90℃、より
好ましくは20〜60℃である。
【0048】上記処理は、アクリル系モノマーのグラフ
ト率が5〜30重量%になるまで行なう。好ましくはグ
ラフト率が9〜30重量%で、より好ましくは15〜3
0重量%である。グラフト率が5重量%より小さいと、
電気抵抗は小さいものの、保液率が小さくガス透過係数
が大きくて保液性が良くない。また、グラフト率が30
重量%を超えると、電気抵抗が著しく大きくなりイオン
伝導性が悪化する。処理時間は、アクリル系モノマーの
均一溶液またはエマルジョンの温度により異なるが、例
えば、40℃では10〜40分間程度である。
【0049】(c)次に得られたグラフト微多孔膜を
水、トルエン、キシレン等で一昼夜洗浄し、真空乾燥さ
せる。
【0050】以上の電子線グラフト重合法により、微多
孔膜にほぼ均一にアクリル系モノマーのグラフト重合体
が膜の細孔の表面及び膜表面に形成された目的の親水性
微多孔膜を得ることができる。
【0051】以上のようにして製造した親水性ポリエチ
レン微多孔膜は、保液率が30重量%以上と大きい。特
に、架橋剤を存在させない状態でグラフト重合させたも
のに比べて同じグラフト量でも保液率が著しく向上して
いる。また、ガス透過係数が1×10-10 ml・cm/
cm2 ・秒・cmHg以下と小さく、電気抵抗も30Ω
以下と小さい。保液率が大きくガス透過係数が小さいこ
とは保液性が高いことを示し、電気抵抗が小さいことは
イオン伝導性が良いことを示している。このような微多
孔膜は、電池用セパレータ、特に水溶液系電池用セパレ
ータとして優れた性能を発揮する。
【0052】このような効果が得られる理由については
必ずしも明らかではないが、本発明の製造方法によるポ
リエチレン微多孔膜は、超高分子量ポリエチレン成分1
重量%以上を含有し、Mw /Mn が5〜300のポリエ
チレンからなり、空孔率が大きく、平均貫通孔径が小さ
く、薄膜で十分な機械的強度を有する微多孔膜を用い
て、架橋剤の存在下にアクリル系モノマーを電離性放射
線グラフト重合処理することにより、グラフト重合体が
基材となる膜の細孔の表面及び膜表面まで均一に形成さ
れ、かつ、重合体が架橋しているために、そこに水分を
保持して保液性およびイオン伝導性が良くなると考えら
れる。
【0053】
【実施例】以下に本発明の実施例を示すが、本発明は下
記の例に限定されるものではない。なお、実施例におけ
る試験方法は次の通りである。 (1)重量平均分子量:ウォーターズ(株)製のGPC
装置を用い、カラムに東ソー(株)製GMH−6、溶媒
に0−ジクロルベンゼンを使用し、温度135℃、流量
1.0ml/分にて、ゲルパーミエーションクロマトグ
ラフィー(GPC)法により測定した。 (2)膜厚:断面を走査型電子顕微鏡により測定した。
(μm) (3)空孔率:水銀ポロシメータにより測定した。
(%) (4)平均貫通孔径:窒素吸脱着方式の孔径測定機〔日
科機(株)製〕により測定した。(μm) (5)グラフト率:グラフト重合反応前後の重量差を測
定して、その重量増加率を計算してグラフト率をもとめ
た。(重量%) (6)保液率:微多孔膜を蒸留水に浸漬して1時間蒸留
水を吸収させた後、微多孔膜を引き上げて10分間放置
し、微多孔膜の重量増加量を測定して、その重量増加割
合を保液率とした。(重量%) (7)ガス透過係数:微多孔膜に85重量%リン酸水溶
液:ジプロピレングリコー3ルジエチルエーテル=9
0:10の溶液を含浸せしめた後、JISK7126に
準拠して測定した。(ml・cm/cm2 ・秒・cmH
g) (8)電気抵抗:直径1cmの微多孔膜に85重量%リ
ン酸水溶液:ジプロピレングリコールジエチルエーテル
=90:10の溶液を含浸せしめた後、インピーダンス
測定により電気抵抗を測定した。(Ω)
【0054】実施例1〜5、比較例1〜3 重量平均分子量(Mw)が2.5×106 の超高分子量
ポリエチレン3重量部と、重量平均分子量(Mw)6.
8×105 の高密度ポリエチレン14重量部とを混合し
たMw /Mn =18.2の原料樹脂と、流動パラフィン
(64CST/40℃)83重量部とを混合し、ポリエ
チレン組成物の溶液を調製した。
【0055】次に、このポリエチレン組成物の溶液10
0重量部に、酸化防止剤0.375重量部を混合した。
【0056】この混合液を攪拌機付きのオートクレーブ
に充填して、200℃で90分間攪拌し、均一な溶液を
得た。
【0057】この溶液を直径45mmの押出機により、
200℃のTダイから押し出し、20℃に冷却した冷却
ロールで引き取りながら厚さ1.8mmのゲル状シート
を形成した。
【0058】得られたシートを二軸延伸機にセットし、
温度115℃、製膜速度5m/分で5×5倍に同時二軸
延伸を行った。得られた延伸膜を塩化メチレンで洗浄し
て残留する流動パラフィンを抽出除去した、室温で乾燥
した後、120℃で30秒間熱固定処理して膜厚25μ
m、空孔率50%、平均貫通孔径0.03μmのポリエ
チレン微多孔膜を得た。
【0059】このポリエチレン微多孔膜を、空気中で加
速電圧250keV、照射線量100kGyで電子線照
射した後、反応温度40℃で表1に示す反応溶液組成に
モール塩を0.25g/100ml加え、窒素バブリン
グ下に表1に示す反応時間で反応させた。その後、蒸留
水で一昼夜洗浄し、2時間超音波洗浄を行い、80℃で
6時間真空乾燥を施し、アクリル酸グラフトの親水性ポ
リエチレン微多孔膜を得た。このポリエチレン微多孔膜
の保液率、ガス透過係数および電気抵抗の測定を行っ
た。その結果を表1に示す。
【0060】
【表1】
【0061】
【発明の効果】以上詳述したように、本発明の親水性ポ
リエチレン微多孔膜は、超高分子量ポリエチレン成分を
含有するポリエチレンからなる微多孔膜に、架橋剤の存
在下にアクリル系モノマーを電離性放射線により特定量
グラフト重合処理することにより製造しているので、得
られる微多孔膜は、特にグラフト率に対する保液率が大
きく水溶液系に対して親和性に優れており、またガス透
過係数が小さくて保液性に優れ、電気抵抗が小さくイオ
ン伝導性も良好であり、電池用セパレータとして優れた
性能を発揮する。
【0062】このような本発明の親水性ポリエチレン微
多孔膜は、電池用セパレータの他、常温型燃料電池用薄
膜電解質の支持体、各種フィルターなどの各種用途に好
適である。

Claims (3)

    【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】 重量平均分子量7×105 以上の成分を
    1重量%以上含有するポリエチレンからなる微多孔膜の
    細孔の表面および膜表面に、架橋剤の存在下にアクリル
    系モノマーを電離性放射線処理により5〜30重量%グ
    ラフト重合させることを特徴とする親水性ポリエチレン
    微多孔膜の製造方法。
  2. 【請求項2】 請求項1に記載の架橋剤が、アクリル系
    モノマーの容量に対し0.1〜10容量%であり、か
    つ、アクリル系モノマーが0.1〜50容量%で、水/
    アルコール(容量比90/10〜50/50)の混合物
    が99.1〜50容量%である反応液中でグラフト重合
    させる親水性ポリエチレン微多孔膜の製造方法。
  3. 【請求項3】 請求項1または2に記載の架橋剤が、ジ
    ビニルベンゼンまたはトリメチロールプロパントリメタ
    クリレートである親水性ポリエチレン微多孔膜の製造方
    法。
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