【発明の詳細な説明】
ポリ−N−ビニルラクタムおよび
デキストリンからなるヨードホア
本発明は、特性および製造方法の簡単さに関して改良されたヨードホアに関し
、その際この担体はデキストリンとポリ−N−ビニルラクタム、すなわちポリ−
N−ビニルピロリドン(PVPまたはポリビドン)またはポリ−N−ビニルカプ
ロラクタムの混合物からなる。
ライトデューティー(light-duty)消毒剤の分野においてPVP−ヨウ素は従
来から知られた、しかし費用のかかる生成物である。それぞれのオリゴ糖または
多糖類の存在下でビニルピロリドンを重合することにより、サッカリドを含有す
るヨードホアを製造することは欧州特許出願公開第526800号明細書から公
知である。この種の生成物はPVP−ヨウ素より格安であるが、PVP−ヨウ素
の要求を満足しない。更にこれらは従来から薬理学的に認容されていない。
欧州特許公告第196813号明細書にはPVP−ヨウ素と糖の混合物が、欧
州特許出願公開第259982号明細書にはPVP−ヨウ素と糖アルコールおよ
び場合により糖の混合物が、欧州特許出願公開第213717号明細書にはPV
P−ヨウ素と糖およびゲル
化した多糖類の混合物が記載されている。これらの製造は手間がかかる、それと
いうのもまずPVP−ヨウ素を製造し、引き続きこれを添加物と混合しなければ
ならないからである。すべての成分を直接混合することは不可能である。さらに
これらの生成物は製薬目的に適さない、それというのもその使用可能なヨウ素含
量、遊離ヨウ素含量およびヨウ素損失は一般に保健所で許容される範囲をこえて
いるからである。
米国特許第4719106号明細書にはポリデキストロース−ヨウ素およびP
VP−ヨウ素からなる混合物が記載されている。これに使用するためにポリデキ
ストロースの製造は手間がかかり、不経済である。まず多糖類をグルコースに分
解し、引き続きこれをソルビットおよびクエン酸の存在下で再び重縮合する(欧
州特許第380248号明細書を参照)。
本発明の課題は、すべての点でPVP−ヨウ素の要求を満足するヨードホアを
製造する簡単かつ経済的な方法を開発することであった。
前記課題は、PVPまたはポリ−N−ビニルカプロラクタムおよび2〜40、
有利には10〜30の範囲内のデキストロース当量(DE値)を有するデキスト
リンの混合物を通常の方法で反応させ、ヨウ素錯体を形成することにより解決さ
れる。
デキストリンは市販されており、澱粉から、希釈した酸で不完全な加水分解に
より、熱にさらすことによ
りおよび酸化分解またはアミラーゼを用いた酵素分解により簡単な方法で得られ
る。
水相中の加水分解により得られ、重量平均分子量2500〜25000を有す
る澱粉分解生成物は、焙焼デキストリンと異なり、一般に糖化した澱粉と呼ばれ
、それ自体市販されている。
この種の糖化した澱粉は、一般に固体含量10〜30重量%で、有利には酸ま
たは酵素の触媒作用により行われる水性媒体(一般に懸濁液または溶液)中の加
水分解の際に、組みかえおよび枝分かれの可能性が実質的に付与されず、これが
特に異なる分子量分布の形で表わされることにより、特に焙焼デキストリンと化
学的に異なる。
糖化した澱粉の製造は一般に公知であり、特にGuenther Tegge,Staerke und S
taerkederivate,Behr's Verlag,Hamburg 1984,173頁および220頁以
下および欧州特許出願公開第441197号明細書に記載されている。本発明に
より使用すべき糖化した澱粉は、有利には重量平均分子量Mwが4000〜16
000、特に有利には6500〜13000の範囲内である澱粉である。
本発明により使用すべき糖化した澱粉は一般に室温で水に完全に溶解し、その
際溶解範囲は一般に50重量%より高い。有利には10〜20重量%溶液、特に
有利には30〜40重量%溶液が室温で透明であり、
コロイド状に懸濁しない。
更に、本発明により、デキストロース当量DE2〜40、有利には10〜30
、特に有利には10〜20を有する糖化した澱粉を使用することが好ましい。D
E値は水不含のデキストロースの還元能力に対する還元能力を表し、DIN第1
0308号,5.71、ドイツ規格協会の食品および農業製品の規格により決め
られている(Guenther Tegge,Staerke und Staerkederivate,Behr's Verlag,Ham
burg 1984,305頁参照)。
本発明により使用すべき糖化した澱粉を製造する出発澱粉として、原則的にす
べての天然の澱粉、たとえば穀物澱粉(たとえばトウモロコシ、小麦、米または
きび)、じゃがいも澱粉および根の澱粉(たとえばじゃがいも、タピオカ澱粉ま
たはクズウコン澱粉)またはサゴ澱粉が適している。
本発明により使用すべき糖化した澱粉のすぐれた利点は、その使用に関して、
きわめて簡単な方法で実施できる出発澱粉の部分的加水分解のほかに、製造する
ために更に化学的変性を必要としないことである。
例において、糖化した澱粉として、C★ PUR Produkt 0190
6,01908,01910,01915,01921,01924,0193
2または01934 Cerestar Deutschland 社、Krefeldを使用した。これらは
実質的にすべて二モード分子量分布を有し、以下に特徴づけられる。
蒸気圧オスモメトリーによるMnの決定により、有利な種類01910および
01915に関して以下の値が得られた。
1560g/モル(1910)
980g/モル(1915)
U=不均一性
Mw=重量平均分子量
Mn=数平均分子量
DE=デキストロース当量
ヨウ素およびヨウ化物を固体の状態で担体と反応するために、担体は均一の形
で存在しなければならない。この均一性はすべての成分の溶液を乾燥することに
より達成することができるが、粉末状の成分を一緒に徹底的に粉砕することで十
分である。これは通常の技術により、たとえばボールミル、強力混合機、球を有
する反転混合機等で行うことができる。引き続き、ヨウ素および還元剤またはヨ
ウ化物を固体または溶液として同じ容器内で混合することができる。最終混合物
がヨウ素6〜25重量%、有利には15〜20重量%およびヨウ素(I2)1モ
ル当りヨウ化物1モルを含有するほど十分にヨウ素およびヨウ化物を添加し、引
き続き50〜110℃で数時間加熱することにより、錯体形成が行われる。ヨウ
化物に対してすべてのカチオンが適しており、一般にナトリウムイオンまたはカ
リウムイオンが該当する。出発ヨウ素の量を相当して高める場合は、ヨウ化物の
代りに当量の、ヨウ素をヨウ化物に還元する還元剤、たとえばギ酸およびその塩
、有利にはギ酸アンモニウム、グルコース、アスコルビン酸、マロン酸、蓚酸、
蓚酸アンモニウム、尿素、尿素−H2O2、カルバミン酸アンモニウムを使用する
ことができる。その際、デキストリンがそのアルデヒド末端基によりヨウ素に対
して一定の還元能力を有することを考慮しなければならない。
全混合物は、溶液(有利には水中で)として存在する場合は、この形で販売し
、使用することができる。しかしながらたいていは粉末の形でヨードホアを製造
し、販売する。ライトデューティー消毒剤としての使用は同様に粉末の形でまた
は水溶液で行うことができる。いずれの場合も、溶液中でのみ作用が開始し、従
って乾燥して使用する場合は、少なくとも湿らせた形
で(医学的な使用、たとえば傷の包囲)添加することが必要である。ヨードホア
はクリーム、エーロゾルまたは座薬のような投与形に配合し、使用することがで
きる。
製造した全混合物の重量割合(溶液の場合は固体含量に対して)は、PVPま
たはポリ−N−ビニルカプロラクタム20〜71%、有利には30〜60%、デ
キストリン20〜71%、有利には30〜60%、ヨウ素9〜37.5%および
水0〜900%、有利には0〜500%であり、このうちそれぞれの場合にヨウ
素の3分の1はヨウ化物イオンの形で存在する。
ポリマーのビニルラクタムは12〜100、有利には25〜70の範囲のフィ
ッケンチャーによるK値(Cellulosechemie 13(1932),58〜64および71
〜74)を有する。架橋したPVPを固体のヨードホアを製造するために使用す
ることができ、水に不溶性の澱粉と反応してヨウ素錯体を形成し、従ってたとえ
ば傷に塗布するために使用することができる。
ポリビドン−ヨウ素に関して、使用可能なヨウ素含量の決定は、Deutschen Ar
zneimittel Codex(DAC)1986,2nd Supplement 1990 により実施する。ここで
少なくとも9%から多くても12%の間の使用可能なヨウ素含量が決められてい
る。同じことはUSP XXII(ポリビドン−ヨウ化物)に該当し、ヨウ化物
含量の決定はここにも記載されている。使用可能なヨウ素含
量はチオ硫酸塩で滴定により測定される値に相当する。遊離ヨウ素含量の決定は
、D.HornおよびW.Ditter“PVP-Iod in der operativen Medizin”,7頁以下,S
pringer-Verlag,Heidelberg 1984 により実施する。
乾燥棚内で100〜105℃で乾燥する場合の全重量損失(乾燥損失)はDA
C 1986,3rd part 1988に決定されており、物質0.5gで最高8%であり、
本発明による生成物はこれを満たす。
高温で保存した場合の使用可能なヨウ素の損失(ヨウ素損失)は錯体の安定性
に関する情報を提供し、以下のように決定する。
使用可能なヨウ素1%を含有するPVP−ヨウ素溶液から決定する。これは以
下のように製造する。栓を有するエーレンマイヤーフラスコ100mlにPVP
−ヨウ素試料xgを計量供給し、水を加えて全重量を50gにする。
計量供給した量x(g)の計算:
x=5000/(100−TV)×VJ
式中、
TV=DAC法による乾燥損失%
VJ=DAC法による使用可能なヨウ素%
を表す。
溶液を3時間振とうする。
振とう後、検定済みの全容ピペットでエーレンマイヤーフラスコ250mlに
5.0mlをピペットで入
れ、蒸留水ほぼ100mlおよび酢酸1滴で希釈し、最終点(無色またはわずか
に黄色)まで可能な限り速く0.02Nチオ硫酸ナトリウム溶液で滴定する(消
費量V)。
高温保存
褐色の25mlの栓を有する瓶にPVP−ヨウ素溶液を栓の下側1cmまで満
たし、引き続き15時間80℃±0.5℃で加熱棚内に保存する。加熱棚に瓶を
装入して約15分後に栓を持ち上げることにより瓶を短時間換気する。15時間
保存し、瓶内容物を冷却した後に5.0mlを取り出し、使用可能なヨウ素含量
をDACに記載されたように0.02Nチオ硫酸ナトリウム溶液で決定する(消
費量N)。
ヨウ素損失の計算
ヨウ素損失%=(V−N/V)×100
式中、
V=保存前のNa2S2O3溶液の消費量(ml)
N=保存後のNa2S2O3溶液の消費量(ml)
を表す。
考察:
保存中の不規則性(温度の変動、流用の低下等)を認識できるために、公知の
ヨウ素損失を有する比較試料とともに分析することが有利である。
デキストリンは単独では十分に安定なヨウ素錯体を形成することができない。
しかしながら驚いたことに
は、デキストリンはPVPまたはポリ−N−ビニルカプロラクタムと混合すると
ヨウ素錯体を形成することができ、デキストリンとの混合物を使用しても、混合
物と同じ量の混合しないPVPまたはポリ−N−ビニルカプロラクタムを使用し
ても、同じ量のヨウ素を、しかも同じ結合力で吸収するのである。従って混合の
際に1種の相乗作用が明らかに存在する。グラフトポリマーと異なり混合物は薬
理的に認容される生成物である。PVP−ヨウ素に比較して、本発明のヨードホ
アは、デキストリン成分の良好な生物学的分解可能性に関する生態学的な利点の
ほかに経済的な利点を提供する、それというのも出発物質経費が決定的に減少す
るからである。更に本発明のヨードホアは、驚異的にも、公知の異なる性質の(
多)糖類を有するものに対して、すべての点で、以下の表に示すように、許可規
定のおよび実際の要求を満足する。
従来公知のPVP−ヨウ素に関するエキステンダー、すなわち糖、糖アルコー
ルおよびゲル形成多糖類および費用のかかるポリデキストロースが薬理学的許容
規定を満足しないことにより十分な溶液を提供できなかったことにより、本発明
による技術的により簡単な溶液が良好な結果を生じることは予測されなかったこ
とである。従って、本発明は、驚くべき簡単な方法で
PVP−ヨウ素より廉価な、技術的に少なくとも同じ価値である新規のヨードホ
アを提供する。
例
1.同じ重量部の、DE値17.5〜19を有するデキストリンおよびポリビ
ニルピロリドン(K値30)からなる混合物を、ポリマー含量に対してギ酸アン
モニウム1.5%およびヨウ素17%とともに混合機内で、まず室温で1時間、
引き続き70℃で20時間混合した。粉末の固体含量は95.8%であり、使用
可能なヨウ素含量は11.7%であり、ヨウ素損失は2.6%であり、遊離ヨウ
素含量は3.0ppmであり、ヨウ化物含量は5.3%であった。
2.同じ重量部の、DE値17.5〜19を有するデキストリンおよびポリビ
ニルピロリドン(K値30)からなる混合物を、ポリマー含量に対してギ酸アン
モニウム1.5%およびヨウ素17%とともに混合機内で、まず室温で1時間、
引き続き80℃で8時間混合した。粉末の固体含量は97.0%であり、使用可
能なヨウ素含量は12.0%であり、ヨウ素損失は1.5%であり、遊離ヨウ素
含量は2.6ppmであり、ヨウ化物含量は4.7%であった。
3.同じ重量部の、DE値13を有するデキストリンおよびポリビニルピロリ
ドン(K値30)からなる混合物を、ポリマー含量に対してギ酸アンモニウム1
.5%およびヨウ素17%とともに混合機内で、まず
室温で1時間、引き続き70℃で20時間混合した。粉末の固体含量は96.8
%であり、使用可能なヨウ素含量は10.7%であり、ヨウ素損失は3.0%で
あり、遊離ヨウ素含量は3ppmであり、ヨウ化物含量は5.9%であった。
4.同じ重量部の、DE値10を有するデキストリンおよびポリビニルピロリ
ドン(K値30)からなる混合物を、ポリマー含量に対してギ酸アンモニウム1
.5%およびヨウ素17%とともに混合機内で、まず室温で1時間、引き続き8
0℃で8時間混合した。粉末の固体含量は96.5%であり、使用可能なヨウ素
含量は11.3%であり、ヨウ素損失は2.5%であり、遊離ヨウ素含量は3p
pmであり、ヨウ化物含量は5.6%であった。
5.同じ重量部の、DE値10を有するデキストリンおよびポリビニルピロリ
ドン(K値30)からなる溶液にギ酸1.5%を加え、噴霧乾燥した。引き続き
ヨウ素15%を加え、粉末を室温で1時間、引き続き70℃で20時間混合した
。生成物は固体含量96.5%を有し、使用可能なヨウ素含量は10.8%であ
り、ヨウ素損失は4%であり、遊離ヨウ素含量は2.5ppmであり、ヨウ化物
含量は6.0%であった。
6.重量比1.25:1の、DE値17.5〜19を有するデキストリンおよ
びポリビニルピロリドン(K値30)からなる混合物を、ポリマー含量に対して
ギ酸アンモニウム1.5%およびヨウ素17%とともに混合機内で、まず室温で
1時間、引き続き80℃で9時間混合した。粉末の固体含量は95.0%であり
、使用可能なヨウ素含量は11.9%であり、ヨウ素損失は3.3%であり、遊
離ヨウ素含量は3.2ppmであり、ヨウ化物含量は4.9%であった。
7.重量比1.5:1の、DE値17.5〜19を有するデキストリンおよび
ポリビニルピロリドン(K値60)からなる混合物を、ポリマー含量に対してギ
酸アンモニウム1.5%およびヨウ素17%とともに混合機内で、まず室温で2
時間、引き続き80℃で8時間混合した。粉末の固体含量は95.6%であり、
使用可能なヨウ素含量は11.5%であり、ヨウ素損失は1.6%であり、遊離
ヨウ素含量は1.5ppmであり、ヨウ化物含量は5.9%であった。
8.重量比2:1の、DE値17.5〜19を有するデキストリンおよびポリ
ビニルピロリドン(K値30)からなる混合物を、ポリマー含量に対してギ酸ア
ンモニウム1.5%およびヨウ素17%とともに混合機内で、まず室温で2時間
、引き続き80℃で8時間混合した。粉末の固体含量は94.9%であり、使用
可能なヨウ素含量は11.8%であり、ヨウ素損失は1.6%であり、遊離ヨウ
素含量は5ppmであり、ヨウ化物含量は5%であった。
9.重量比1:1の、DE値17.5〜19を有す
るデキストリンおよびポリビニルカプロラクタム(K値32)からなる混合物を
、ポリマー含量に対してギ酸アンモニウム1%およびヨウ素15%とともに混合
機内で、まず室温で1時間、引き続き90℃で8時間混合した。粉末の固体含量
は96%であり、使用可能なヨウ素含量は10.1%であり、ヨウ素損失は1.
7%であり、遊離ヨウ素含量は5.9ppmであり、ヨウ化物含量は4.7%で
あった。
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フロントページの続き
(72)発明者 ディートリッヒ トーマ
ドイツ連邦共和国 D−68219 マンハイ
ム グスタフ−ナハティガル−シュトラー
セ 81