【発明の詳細な説明】
プロピレンポリマー及びその製造方法
本発明は、非共役α,ω−ジエンを含むプロピレンブロックコポリマーに関す
る。更に詳細には、ブロックの少なくとも1つに非共役α,ω−ジエンを含むプ
ロピレンブロックコポリマー及びその製造方法に関する。
ポリプロピレンをエチレン−プロピレンエラストマーと混合することにより衝
撃強さを向上させることは既知である。しかし、そのような混合物は完全に均一
ではないので、所望の性質を全て示すものではない。
この課題を克服するために、プロピレンをエチレンのような他のα−オレフィ
ンと共重合することによる試みが行われた。
プロピレンコポリマーの中で、衝撃強さ/剛性の最良の関係を示すものは、プ
ロピレンの単独重合又はプロピレンと最高6モル%のエチレンのような他のα−
オレフィンとの共重合の第1段階、次いで、エチレンの重合又はエチレンの量が
10モル%より大きいような割合でのエチレンとプロピレン及び任意により他の
α−オレフィンとの共重合の第2段階を含む2段工程で調製されたブロックコポ
リマーとして既知のコポリマーである(例えば、欧州特許第 0,202,946号参照)
。
しかしながら、これらのブロックコポリマーのレオロジー的性質、特に溶融強
度は、熱成形又は発泡体の製造のような特定の用途には依然として不十分である
。
更に、ブロックコポリマーが炭化水素ような希釈剤又は液体状態に維持された
モノマーの1種において重合することにより得られると、有意量の希釈剤可溶性
ポリマーの生成が第2重合段階において見られ、重合混合物の粘度の増大、熱交
換の劣化及びポリマー粒子相互の又は反応器壁上の凝集を生じる。これらの条件
下では、この段階で製造されるポリマーの量を制限することが必要であり、最終
コポリマーの衝撃強さについて限界を生じる。可溶化によるポリマーの損失は、
生産コストの実質的な増加の原因にもなる。
更に、日本特許公報第 59/155416号には、ブロックの各々が4又は5−メチル
−1,4−ヘキサジエンを1〜30重量%含むプロピレンブロックコポリマーが
開
示されている。これらのコポリマーは、衝撃強さが良好であり、化学的に反応性
である。
本発明は、従来技術に記載されているものと異なりかつ後者の引例に対しては
多くの利点を示すプロピレンブロックコポリマーに関する。
これを目的として、本発明は、以下のポリマー:
− プロピレンホモポリマー及び6重量%を超えないエチレン及び/又は炭素原
子4〜6個を有するα−オレフィンを含むプロピレンコポリマーより選ばれたプ
ロピレンのポリマー(a) 100重量部あたり、
− エチレンホモポリマー及び90重量%を超えないプロピレン及び/又は炭素
原子4〜6個を有する他のα−オレフィンを含むエチレンコポリマーより選ばれ
たエチレンのポリマー(b) 1〜100重量部、
を含むプロピレンブロックコポリマーであって、該ブロックコポリマーの全重量
に対して約0.001〜約20重量%のα,ω−ジエン誘導モノマー単位を更に
含むプロピレンブロックコポリマーに関する。
本発明のプロピレンブロックコポリマーは、たいてい、ポリマー(a)100
重量部あたりポリマー(b)を少なくとも5重量部、好ましくは少なくとも10
重量部含む。ポリマー(a)100重量部あたりポリマー(b)を少なくとも2
0重量部含む本発明のコポリマーは、良好な結果を示す。更に、ポリマー(b)
の量は、通常、90重量部より大きくない。ポリマー(a)の100重量部あた
りポリマー(b)の量が80重量部以下である場合に良好な結果が得られる。
ポリマー(a)は、通常、プロピレンホモポリマー又は3重量%を超えないエ
チレンを含むプロピレンとエチレンのコポリマーである。ポリマー(a)がプロ
ピレンホモポリマーである場合に良好な結果が得られる。
ポリマー(b)は、通常、エチレンコポリマーである。たいていは、プロピレ
ンを少なくとも30重量%、好ましくは少なくとも40重量%含むコポリマーで
ある。更に、ポリマー(b)のプロピレン濃度は、通常70重量%以下、特に6
0重量%以下である。
本発明のブロックコポリマーは、プロピレン、エチレン及び任意によりα−オ
レフィンから誘導されたモノマー単位のほかに、ブロックコポリマーの全重量に
対してα,ω−ジエンから誘導されたモノマー単位約0.001〜約20重量%
を含む。
α,ω−ジエンは、2つの末端炭素−炭素二重結合を含むジオレフィンを示す
。本発明のブロックコポリマーに用いられるα,ω−ジエンは、通常、6〜30
個の炭素原子を含む。好ましいα,ω−ジエンは、少なくとも7個の炭素原子を
含む。たいてい、炭素原子は15個を超えない。これらの化合物の例としては、
1,6−ヘプタジエン、1,7−オクタジエン、1,8−ノナジエン、1,9−デカ
ジエン、1,10−ウンデカジエン、1,11−ドデカジエン、1,12−トリデ
カジエン及び1,13−テトラデカジエンが挙げられる。これらの化合物の中で
は、1,7−オクタジエン、1,8−ノナジエン及び1,9−デカジエンが良好な
結果を生じる。1,9−デカジエンが特に好ましい。
1つのα,ω−ジエンから又は多数のα,ω−ジエンから誘導されるモノマー
単位を含む本発明のブロックコポリマーも本発明の範囲内であることは明らかで
ある。
本発明のブロックコポリマー中α,ω−ジエン誘導モノマー単位の濃度は、通
常、ブロックコポリマーの全重量に対して約0.01重量%以上である。この濃
度は、ブロックコポリマーの全重量に対して約0.02重量%以上であることが
好ましい。α,ω−ジエン誘導モノマー単位は、たいてい、ブロックコポリマー
の全重量に対して約10重量%以下である。ブロックコポリマーの全重量に対し
て約5重量%より大きくない場合に良好な結果が得られる。α,ω−ジエン誘導
モノマー単位の濃度が全重量に対して0.02〜10重量%であるブロックコポ
リマーが非常に適切である。
好ましいブロックコポリマーは、通常、α,ω−ジエン誘導モノマー単位がポ
リマー(b)にだけ存在するようなものである。
従って、本発明のプロピレンブロックコポリマーは、たいてい、以下のポリマ
ー:
− プロピレンホモポリマー及び6重量%を超えないエチレン及び/又は炭素原
子4〜6個を有するα−オレフィンを含むプロピレンコポリマーより選ばれたプ
ロピレンポリマー(a) 100重量部あたり、
− 少なくとも30重量%で70重量%を超えないプロピレンを含み、ブロック
コポリマーの全重量に対して約0.001〜約20重量%のα,ω−ジエン誘導
モノマー単位を更に含むエチレンコポリマーより選ばれたエチレンポリマー(b
) 1〜100重量部、
を含む。
特に好ましいブロックコポリマーは、以下のポリマー:
− プロピレンのホモポリマーであるポリマー(a)100重量部あたり、
− プロピレンを40〜60重量%含み、α,ω−ジエンから誘導されたモノマ
ー単位を約0.02〜約5重量%更に含むエチレンコポリマーであるポリマー(
b) 1〜80重量部、
を含む。
本発明のブロックコポリマーは、剛性/衝撃強さの良好な関係、低温における
良好な衝撃強さ等のブロックコポリマーの通常の性質を有する。本発明のブロッ
クコポリマーの剛性/衝撃強さの関係は、一般に、第1ブロックがプロピレンホ
モポリマーであり第2ブロックがプロピレン−エチレンエラストマーであるブロ
ックコポリマーより優れている。
更に、α,ω−ジエンから誘導されたモノマー単位の存在のために、比較的多
数の分枝を示し、低速度勾配の高い伸び粘度を特徴とする良好な溶融強度が付与
される。
これらのブロックコポリマーは、また、溶融状態において伸長又は拡張中の変
形に対する抵抗が増大する。そのような現象は、一般に“応力硬化”として既知
である。これは、一定の温度及び一定の伸び速度に対して溶融状態におけるブロ
ックコポリマーの伸び粘度の変化を伸び時間の関数として求めることにより容易
に確認することができる。本発明のブロックコポリマーをかかる試験に供すると
、溶融ポリマー塊が破壊するまで伸び粘度の増加を示し、この破壊は一般的には
脆性である。
従来技術のブロックコポリマーを同じ試験に供すると、そのような現象を示さ
ない。
これらの種々の性質は、本発明のブロックコポリマーが押出し又は射出、特に
押出式吹込成形法又は射出式吹込成形法によって成形されるのに特に適切にする
。これらのブロックコポリマーは、また、熱成形又はコーティングで用いるのに
適切である。また、発泡体の形成に非常に適切である。
本発明のブロックコポリマーは、更に、広範囲のメルトフローインデックス(
MFI、ASTM規格D 1238(1986)に準じて測定)を示し、従来技術のブロック
コポリマーの場合に通常見られるものよりも小さいMFI値を示すことができる
。このために、MFIが1g/10分未満、特に0.7g/10分未満、更に0.
4g/10分未満である本発明のブロックコポリマーは本発明の追加の態様を構
成する。これらの特定のブロックコポリマーは、上記のように極めて良好な溶融
強度を必要とする用途に特に良好に適合する。
更に、本発明のブロックコポリマーは、一般的には、ポリマー鎖においてα,
ω−ジエン誘導単位の取込みから生じる不飽和を示す。これらの不飽和は、ポリ
マーを有意に分解せずに無制限の例としてのマレイン酸無水物のような極性モノ
マーをグラフトすることを可能にする。これにより、ブロックコポリマーの印刷
適性、種々の基質に対する接着性及びこれらのブロックコポリマーから得られた
物品に対する塗料の付着性を改善することが可能である。これらの不飽和は、ま
た、適切な手段によって、ブロックコポリマーを構成するポリマー(a)と(b
)間の良好な相溶性を得るように用いられる。
従って、かかる使用は、本発明の追加の態様を構成する。
本発明は、また、これらのブロックコポリマーの製造方法に関する。本発明の
ブロックコポリマーは、一般的には、ポリマー(a)及び(b)が各々生成され
る少なくとも2段の連続重合段階を含む方法に従って得られる。
従って、本発明の方法は、重合化条件下、触媒系の存在下に、以下のモノマー
:
− 第1段階では、プロピレン及び任意によりこの段階で用いられる合計モノマ
ーに対して約5重量%までのエチレン及び/又は炭素原子4〜6個を有するα−
オレフィン及び/又は約50重量%までのα,ω−ジエン、及び
− 第2段階では、エチレン及び任意によりこの段階で用いられる合計モノマー
に対して95重量%までのプロピレン及び/又は炭素原子4〜6個を有する他の
α−オレフィン及び/又は約50重量%までのα,ω−ジエン、
を含むモノマーの混合物を使用し、これらの2段のうちの少なくとも1段がα,
ω−ジエンを少なくとも0.005重量%含むモノマーの混合物を使用しつつ行
われる少なくとも2段の連続重合段階を含む。
これらの2段のうちの少なくとも1段に用いられるα,ω−ジエンの最少量は
、通常、約0.01重量%、特に約0.1重量%である。
これらの2段のうちの少なくとも1段に用いられるα,ω−ジエンの量は、通
常、1段又は2段に用いられるモノマーの混合物の30重量%、特に20重量%
を超えない。
通常、α,ω−ジエンは、少なくとも第2重合段階に用いられる。良好な結果
を得る方法は、モノマーとして下記のモノマーを使用するような方法である。
− 第1段階では、用いられる合計モノマーに対して約5重量%までのエチレン
及び/又は炭素原子4〜6個を有するα−オレフィン及び/又は約50重量%ま
でのα,ω−ジエンを任意に含むことができるプロピレン、及び
− 第2段階では、この段階で用いられる合計モノマーに対して約90重量%ま
でのプロピレン及び約50重量%までのα,ω−ジエンを含むエチレン、プロピ
レン及びα,ω−ジエンの混合物。
更に、この第2段階に用いられるプロピレンの量は、たいてい少なくとも約5
0重量%、特に少なくとも約80重量%である。
α,ω−ジエンは、第2重合段階にだけ用いられることが好ましい。
本発明の方法は、通常、第2段階では、第1段階において生成されたポリマー
100重量部あたりポリマー1〜100重量部が生成されるように行われる。
更に、第1及び第2段階は、たいてい、生成された各ポリマー量が本発明のブ
ロックコポリマーのポリマー(a)及び(b)に対して上記の量であるような条
件下で行われる。
本発明の方法の2段重合段階は、同じ反応器で連続して行われる。そのとき、
第2段階は、第1段階で生成したポリマーの存在下に及び未反応モノマーを完全
に又は部分的に除去した後に行われる。これらの2段は、また、連続的に配置さ
れた2つの反応器でも行われる。そのとき、第2段階は、第1段階で生成された
ポリマーの存在下に及び第1反応器から生じる未反応モノマーを完全に又は部分
的に除去した後に第2反応器で行われる。
本発明の重合方法は、連続する2つの反応器で行われることが有利である。
本発明の方法の第1段階は、通常、炭素原子4〜6個を有するα−ジエンを存
在させずに行われる。更に、この段階を行うときにエチレンを使用しない場合に
良好な結果が得られる。
本発明の方法の第1段階は、プロピレンの単独重合の段階であることが好まし
い。
第2段階で用いられるモノマーは、通常、エチレン、プロピレン及びα,ω−
ジエンである。更に、用いられるエチレン及びプロピレンの各量がこの段階で生
成されるポリマーにおけるこれらのモノマーの重量比が0.4以上、特に0.65
以上であるような場合に、良好な結果が得られる。更に、これらの量は、たいて
い、この段階で生成されるポリマーにおけるこれらのモノマーの重量比が2.4
未満、好ましくは1.5未満であるような量である。
本発明の方法に用いられるα,ω−ジエンの量は、一般的には、生成されるブ
ロックコポリマーの組成物全体が本発明のブロックコポリマーに対して上で記載
したものであるような量である。
本発明の方法では、重合は既知の方法に従って行われる。この重合は、一般的
には液状脂肪族、脂環式及び芳香族炭化水素、例えば、液状アルカン及びイソア
ルカン、ベンゼン並びにその誘導体より選ばれた不活性炭化水素希釈剤に溶解又
は懸濁した状態で行われる。好ましく用いられる炭化水素希釈剤は、ブタン、イ
ソブタン、ヘキサン、ヘプタン、シクロヘキサン、メチルシクロヘキサン又はそ
の混合物である。ヘキサン及びヘプタンが非常に適切である。液体状態或いは気
相に維持されたモノマー又はモノマー群の1種中で重合を行うこともできる。
2つの異なる方法に従って第1段階及び第2段階を行うこともできる。
有利には、少なくとも第2段階は、上記のような炭化水素溶媒に懸濁した状態
で行われる。
重合温度は、通常、20〜200℃、好ましくは50〜90℃より選ばれる。
圧力は、たいてい、大気圧と50気圧との間で選ばれる。温度と圧力が、相互に
及び使用される重合方法の種類の関数であることは当然のことである。
本発明の好ましい方法は、炭化水素溶媒に懸濁した状態で行われる2段重合段
階を含んでいる。
この個々の場合においては、第1段階に用いられるモノマーの量は、液相にお
けるエチレン及びプロピレンのモル比が約0.015以下であり、液相における
α,ω−ジエン及びプロピレンのモル比が約5以下であるような量である。
更に、第2段階に用いられるモノマーの量は、液相におけるエチレン及びプロ
ピレンのモル比が約0.06以下であり、液相におけるα,ω−ジエン及びプロ
ピレンのモル比が5以下であるような量である。
本発明のブロックコポリマーの製造に用いられるモノマーの量が下記のような
量である場合に、良好な結果が得られる。
− 第1段階では、液相におけるエチレン及びプロピレンのモル比が約0.01
5以下であり、液相におけるα,ω−ジエン及びプロピレンのモル比が約5以下
であり、
− 第2段階では、液相におけるエチレン及びプロピレンのモル比が約0.06
以下であり、液相におけるα,ω−ジエン及びプロピレンのモル比が5以下であ
る。
第1段階では、液相におけるエチレン及びプロピレンのモル比が約0.006
以下であることが好ましい。第1段階にα,ω−ジエンを使用する場合、用いら
れるモノマーの量は、たいてい、液相におけるα,ω−ジエン及びプロピレンの
モル比が約2.5以下、特に約1.5以下であるような量である。エチレンを用い
ることは好ましくない。α,ω−ジエンを第1段階で用いると良好な結果が得ら
れない。第1段階にプロピレンだけを用いると最良の結果が得られる。
第2段階では、液相におけるエチレン及びプロピレンのモル比が約0.12以
下であることが好ましい。更に、たいていは約0.08以上である。この第2段
階に用いられるα,ω−ジエンは、たいてい、液相におけるα,ω−ジエン及び
プロピレンのモル比が約2.5以下、特に約1.5以下であるような量である。更
に、この比は、通常少なくとも2×10-4、たいてい少なくとも2×10-3、好
ましくは少なくとも5×10-3である。
重合が炭化水素希釈剤中で行われると、驚くべきことに、α,ω−ジエンの存
在が重合混合物に可溶なポリマー量の減少をもたらすことが認められる。そのよ
うな挙動は、ポリマー(b)の製造で特に有利である。実際に、ポリマー粒子相
互の又は反応器壁に対する付着の問題が見られることなく最終ブロックコポリマ
ーにおいてエラストマーブロックの取込みを大きくすることを可能にする。この
ようにして、エラストマー部分の割合が大きく、衝撃強さが特に高いブロックコ
ポリマーが容易に得られる。液体状態に維持されたモノマーの1種において重合
が行われても、そのような現象が見られる。
更に、ポリマー(b)の一定含量でα,ω−ジエンを含むブロックコポリマー
は、より経済的な収量で得られかつより良い形態を示す。
本発明の方法に用いられる触媒系は、一般的には、周期律表IVb族に属する
少なくとも1種の遷移金属を含む触媒固体及び通常は有機アルミニウム化合物よ
り選ばれる活性化剤を含む。
これらの触媒系は、当業者に周知である。
本発明の好ましい触媒系は、触媒固体として、例えば、米国特許出願第4,210,
738号、同第4,210,736号及び同第5,206,108号(Solvay)並びに欧州特許出願第261
,727号(Solvay)に記載されている三塩化チタン(TiCl3)に基づく複合固体を
含み、これらの特許出願の内容を本発明の説明に参考として引用する。特に美し
い形態を示すブロックコポリマーを得るために、重合条件下好ましくはプロピレ
ン又はエチレンのようなα−オレフィンと接触させて塩化チタンの重量に対して
ポリマーを少なくとも50重量%含む固体を得ることを含む予備重合処理した触
媒固体を使用することは有利なことである。プレポリマーの最大量は重要ではな
い。経済的理由でTiCl3に対して2000重量%を超えないことが好ましい
。この段階で製造されるポリマーの量は、TiCl31kgあたり100gより大
きいことが好ましい。TiCl31kgあたり1000g未満のプレポリマーの量
が満足な結果を生じる。予備重合は、通常、触媒固体の調製の終わりに行われる
。ポリマー(a)及び(b)の製造段階の直前の重合段階に行うこともできる。
有機アルミニウム活性化剤は、一般的には、下記式に相当する化合物より選ば
れる。
AlR1 nX3-n
式中、
− R1は炭素原子1〜18個を有する炭化水素基であり;
− Xはハロゲンであり;
− nは0<n≦3である。
驚くべきことに、触媒固体がTiCl3に基づく固体である場合、ブロックコ
ポリマーの性質は、製造に用いられる触媒系の種類及び特に有機アルミニウム活
性化剤の種類に左右される。
即ち、一般的には、ハロゲン化有機アルミニウム活性化剤の使用により分枝ポ
リマー鎖を優先的に示すブロックコポリマーが得られ、上記の有利なレオロジー
特性が付与される。
更に、非ハロゲン化有機アルミニウム活性化剤、例えば、トリアルキルアルミ
ニウムの使用は、ポリマー鎖に不飽和の存在をも促進し、場合によっては化学変
換後に上記の接着性及び印刷適性を生じる。
このために、本発明の製造方法は、活性化剤の種類を簡便に変化させることに
より種々の性質を示すブロックコポリマーの製造をもたらすことができるという
利点がある。
本発明のブロックコポリマーの製造に用いられる触媒系は、また、その立体特
異性及び/又は活性を改善することが既知の第3成分を少なくとも1種含むこと
もできる。
本発明の方法に用いられる触媒系の種々の成分は、第1重合段階で一般的には
全て導入される。
本発明に従って用いられる触媒系の種々の成分の全量は重要ではなく、当業者
に一般に既知であるものの一部をなしている。使用される活性化剤の全量は、希
釈剤、液体モノマー又は反応器容量1リットルあたり通常0.1ミリモルより大
きく、1リットルあたり0.5ミリモルより大きい。触媒固体がTiCl3に基づ
く触媒固体である場合、触媒固体の使用量はそのTiCl3含量の関数として求
め
られる。たいていは、重合混合物中のTiCl3濃度が希釈剤、液体モノマー又
は反応器容量1リットルあたり0.01ミリモルより大きく、好ましくは0.05
ミリモルより大きい。TiCl3に基づく触媒固体量に対する有機アルミニウム
化合物量の比率は、通常、TiCl3に対する活性化剤のモル比が0.5〜20、
好ましくは1〜15であるように選ばれる。モル比が2〜12である場合に最良
の結果が得られる。
本発明のブロックコポリマーの平均分子量は、水素、ジエチル亜鉛、アルコー
ル、エーテル及びアルキルハロゲン化物のような平均分子量を調節する1種又は
多数の物質を重合混合物に添加することにより調節される。水素が特に適してい
る。
下記の実施例は、本発明を具体的に説明するためのものである。これらの実施
例で得られたブロックコポリマーの伸び粘度は、レオメトリクスエクステンショ
ナルレオメータRER-9000の名称でレオメトリクスから販売されているレオメータ
によって求められる。0.1s-1の伸び速度勾配の伸び時間(sとして示される
)の関数として溶融状態における伸び粘度(Pa・sで示される)の変化の曲線
を1枚の添付の図面に示す。これらの曲線は、190℃において記録された。曲
線1Rは実施例1Rに関し、曲線2及び3は各々実施例2及び実施例3に関する
。これらの実施例に用いられる記号の意味、言及される量を示す単位及びこれら
の量を測定する方法を次に説明する。
prod = 触媒固体に含まれるTiCl31gに対して得られたポリマー
のgで慣用的に表される触媒生産性。この活性は、ポリマー中
に残留しているチタン含量をX線蛍光で求めることにより間接
的に評価される。
sol = 収集したポリマーの全量に対して重量%として示される重合混
合物に可溶なポリマー量。
AD = g/dm3で示される不溶性ポリマーの見掛け密度。
MFI = 230℃において2.16kgの荷重で測定され、g/10分で示
されるメルトフローインデックス(ASTM規格D 1238(1986))
。
Flex.Mod. = MPaで示されるISO規格 178(1993)に準じて測定されるブ
ロックコポリマーの曲げモジュラス。
g = 100℃で測定され、60°のねじれ角のブロックコポリマー
のねじれ剛性率、成形温度を70℃、調整時間を5分に設定す
る(ASTM規格D 1043(1987))。このモジュラスはdaN/
cm2で示される。
Izod = ISO規格180/1A(1993)に準じて測定されたkJ/m2で示され
るポリマーの反発弾性の測定値。
Embrit.Temp. = ℃で示されるASTM規格 D 746に準じて測定されたポリマー
の脆化温度。実施例1R
本実施例は、比較のために示される。α,ω−ジエンを含まないブロックコポ
リマーを示すものである。
A.触媒固体の調製
窒素雰囲気下、800mlの反応器に90mlのヘキサン及び60mlのTiCl4
を攪拌しながら導入する。このヘキサン/TiCl4溶液を0(±1)℃に冷却
し、これに190mlのヘキサン及び70mlの塩化ジエチルアルミニウム(DEA
C)からなる溶液を4時間かけて加え、反応器内は0℃の温度が維持される。
次に、微細粒子の懸濁液からなる反応混合液をこの温度で15分間攪拌し、次
に1時間かけて25℃にしてこの温度で1時間維持した後、約1時間かけて65
℃にする。この混合液を65℃で2時間攪拌し、次に約55℃に冷却し、2バー
ルの圧力下に反応器の気体の上部空間にプロピレンを導入する。この導入は、最
終固体1kgあたり65gの重合プロピレンを得るのに十分な時間(約45分)続
けられる。次に、このように予備重合した固体の懸濁液を40℃まで冷却し、ヘ
キサンで洗浄する。
次に、減少した固体を456mlのヘキサンに懸濁し、これに86mlのジイソア
ミルエーテル(DIAE)を加える。この懸濁液を50℃で1時間250回転/
分で攪拌し、次に沈降により分離する。上澄みを除去した後、固体を210mlの
ヘキサンに再懸濁し、これに52mlのTiCl4を加える。次に、懸濁液を75
℃で2時間攪拌(150回転/分)する。洗浄後、TiCl3に基づく複合固体
をヘキサンに再懸濁し(固体1gあたりヘキサン4mlの割合で)、ヘキサン1リ
ットルあたり80gのDEAC及び176gのn−オクタデシル3−(3′,5
′−ジ−tert−ブチル−4′−ヒドロキシフェニル)プロピオネートを含む12
0mlの溶液と接触させる。
添加の完了時に、懸濁液を30℃で1時間攪拌した後、2バールの圧力下最終
乾燥生成物1kgあたり170gのPPを得るのに十分な時間(約30分)プロピ
レンを導入する。
洗浄及び乾燥後、触媒固体1kgあたりTiCl3630gを含有する。
B.ブロックコポリマーの調製
乾燥窒素流れのもとで、予備乾燥した5リットルのオートクレーブに下記のも
のを導入する。
− 1.5リットルのヘキサン、
− 700mgのDEAC、
− 20mgの安息香酸エチル。
次に、オートクレーブを60℃に加熱し、プロピレンで大気圧まで再加圧した
後、1バールの水素圧、4バールのプロピレン圧及び反応器に導入されたTiC
l3量が約120mgであるのに十分なパートAに記載された触媒固体を連続的に
導入する。
反応器内の圧力が一定に保たれるようにプロピレンを供給しながら、60℃で
3時間反応器を維持する。これらの条件下、液相におけるプロピレンのモル比は
0.25である。
3時間重合した後、3バールの圧力に脱ガスしながらオートクレーブの温度を
45℃にする。
次に、約0.03バールの水素を導入し、プロピレンによって3.1バールに、
次にエチレンを添加して4.6バールに調整する。
これらの条件下で1時間重合しかつ気相の組成を一定に保つことにより、ポリ
マー(b)を得る。
液相におけるエチレンのモル比は0.028であり、プロピレンのそれは
0.253である。
このようにして、次の性質を示すブロックコポリマーが生産性prop365
3で得られる。
Sol = 3.2
AD = 500
MFI = 5.4
最終ブロックコポリマーのエチレン含量=9重量%。実施例2〜4
これらの実施例は、本発明のブロックコポリマーの製造を示すものであり、ポ
リマー(a)はプロピレンホモポリマーであり、ポリマー(b)はα,ω−ジエ
ン:1,9−デカジエンを含むエチレン−プロピレンコポリマーである。
これらの実施例を行うのに用いられる触媒固体は実施例1のものである。
ポリマー(b)の調製に対してオートクレーブを3バールに脱ガスした後にα
,ω−ジエンを導入する以外は、実施例1の手順を繰り返すことによりブロック
コポリマーを得る。
これらのブロックコポリマーの製造条件及び性質を表Iに示す。
これらの結果を比較のために示した実施例1と比べると、α,ω−ジエンの存
在下に行われる場合に見られる低レベルの可溶性物質及び得られたブロックコポ
リマーの良好な形態が証明される。
1枚の図面に示された曲線の試験により、本発明のブロックコポリマーが応力
硬化の現象を示すことが明らかに示される。実施例5
ポリマー(b)の生成の段階の重合時間(1.5時間)及びα,ω−ジエンの
使用量(20ml)に関する以外は実施例2を繰り返す。
得られたブロックコポリマーの性質は次の通りである。
prod=3833;ポリマー(a)量=73;ポリマー(b)量=27;
Sol=2.2;AD=489;MFI=0.2;最終ブロックコポリマーのエチ
レン含量=12重量%。実施例6R
α,ω−ジエンを導入しない以外は実施例5を繰り返す。
得られたブロックコポリマーの性質は次の通りである。
prod=3833;ポリマー(a)量=73;ポリマー(b)量=27;So
l=4.0;AD=487;MFI=3.2;最終ブロックコポリマーのエチレン
含量=12重量%。参考実施例7R及び本発明の実施例8
A.触媒固体の調製
プロピレンで最終処理をしない以外は実施例1R、パートAに記載されるよう
に触媒固体を調製する。
B.ブロックコポリマーの調製
実施例7Rは、実施例1RのパートBを繰り返して行われる。実施例2を繰り
返すことにより、実施例8のブロックコポリマーを得る。得られたブロックコポ
リマーの性質を下記表IIに示す。
これらの結果を比べると、本発明のブロックコポリマーの衝撃強さ/剛性の良
好な関係が証明される。