JPH0936658A - 発振器 - Google Patents

発振器

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JPH0936658A
JPH0936658A JP22867595A JP22867595A JPH0936658A JP H0936658 A JPH0936658 A JP H0936658A JP 22867595 A JP22867595 A JP 22867595A JP 22867595 A JP22867595 A JP 22867595A JP H0936658 A JPH0936658 A JP H0936658A
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JP
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phase shift
resistor
inductor
circuit
voltage
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JP22867595A
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Takeshi Ikeda
毅 池田
Tsutomu Nakanishi
努 中西
Akira Okamoto
明 岡本
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Original Assignee
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  • Inductance-Capacitance Distribution Constants And Capacitance-Resistance Oscillators (AREA)
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Abstract

(57)【要約】 【課題】 集積化が容易であり、発振周波数を大幅に可
変することが可能な発振器を提供すること。 【解決手段】 FETのソースおよびドレインに発生す
る同相および逆相の信号をキャパシタと可変抵抗からな
る直列回路を介して合成することにより所定の位相シフ
トを行う移相回路10Cと、抵抗を介して入力信号が反
転入力端子に入力されるオペアンプ、入力信号の電圧が
両端に印加されるキャパシタおよび可変抵抗からなる直
列回路、オペアンプの出力を反転入力端子に帰還させる
抵抗を含む移相回路130Cと、入力信号と同相の信号
を出力する非反転回路50と、非反転回路50から出力
される信号を移相回路10Cの入力側に帰還させる帰還
抵抗70とを含んで構成されている。直列回路の時定数
を変化させて発振周波数を調整する。

Description

【発明の詳細な説明】
【0001】
【発明の属する技術分野】この発明は、発振周波数を大
幅に調整することが可能な発振器に関する。
【0002】
【従来の技術および発明が解決しようとする課題】正弦
波発振器として従来より能動素子およびリアクタンス素
子を使用した各種の発振回路が提案され実用化されてい
る。例えば、図34に示すウィーン・ブリッジ型発振
器、図35に示すブリッジT型発振器が従来より知られ
ている。
【0003】図34より明らかなように、ウィーン・ブ
リッジ型発振器においては、周波数を変化させるために
キャパシタCとともに直列回路を構成する可変抵抗Rs
の抵抗値と、キャパシタCとともに並列回路を構成する
可変抵抗Rp の抵抗値とを連動して変化させなければな
らない。直列回路の可変抵抗Rs の抵抗値と並列回路の
可変抵抗Rp の抵抗値に連動誤差が生じると、増幅器A
に入力される電圧が増減するので、その結果、発振出力
が変動する。そして、発振出力が小さくなれば発振が停
止し、大きくなれば発振出力に著しい歪みを生じること
になる。
【0004】通常、正弦波発振器の出力変動を少なくす
るように安定化することは難しく、その安定化手段は増
幅器の振幅特性に非線形を付加すること、すなわち、出
力の大きさによってその増幅度が変化するような特性を
付加することになる。
【0005】このように特性を付加することは増幅器の
直線性を悪化させることになるから、出力波形の歪率を
悪化させることになり、出力電圧の安定性と歪率とは二
率背反の関係にある。
【0006】特に、回路全体を集積化して、外部から電
圧制御の手法で抵抗値を可変する場合には、可変抵抗R
s と可変抵抗Rp の抵抗比を一定に保って変化させるこ
とは困難である。
【0007】ウィーン・ブリッジ型発振器に限らず、図
35に示すブリッジT型発振器や移相型発振器でも同様
のことがいえる。
【0008】さらに、発振周波数を大幅に調整し得る可
変周波数発振器を集積回路によって形成することも困難
である。
【0009】そこで、この発明は、このような課題を解
決するために考えられたものであり、その目的は集積化
に適し、発振周波数の大幅な変更が可能な発振器を提供
することにある。
【0010】
【課題を解決するための手段】上述した課題を解決する
ために、請求項1の発振器は、入力される交流信号を同
相および逆相の交流信号に変換して出力する変換手段
と、前記変換手段によって変換された一方の交流信号を
第1のキャパシタを介して他方の交流信号を第1の抵抗
を介して合成する合成手段とを含む第1の移相回路と、
反転入力端子に第2の抵抗の一方端が接続された差動入
力増幅器と、前記差動入力増幅器の反転入力端子と出力
端子との間に接続された第3の抵抗と、前記第2の抵抗
の他方端に接続された第4の抵抗および第2のキャパシ
タからなる直列回路とを含み、前記第4の抵抗および前
記第2のキャパシタの接続部を前記差動入力増幅器の非
反転入力端子に接続した第2の移相回路と、入力される
交流信号の位相を変えずに所定の増幅度で増幅して出力
する非反転回路と、を備え、前記第1および第2の移相
回路と前記非反転回路のそれぞれを縦続接続し、これら
縦続接続された複数の回路の中の最終段の出力を初段の
入力側に帰還させるとともに、これら複数の回路のいず
れかから正弦波発振出力を取り出すことを特徴とする。
【0011】請求項2の発振器は、入力される交流信号
を同相および逆相の交流信号に変換して出力する変換手
段と、前記変換手段によって変換された一方の交流信号
を第1のインダクタを介して他方の交流信号を第1の抵
抗を介して合成する合成手段とを含む第1の移相回路
と、反転入力端子に第2の抵抗の一方端が接続された差
動入力増幅器と、前記差動入力増幅器の反転入力端子と
出力端子との間に接続された第3の抵抗と、前記第2の
抵抗の他方端に接続された第4の抵抗および第2のイン
ダクタからなる直列回路とを含み、前記第4の抵抗およ
び前記第2のインダクタの接続部を前記差動入力増幅器
の非反転入力端子に接続した第2の移相回路と、入力さ
れる交流信号の位相を変えずに所定の増幅度で増幅して
出力する非反転回路と、を備え、前記第1および第2の
移相回路と前記非反転回路のそれぞれを縦続接続し、こ
れら縦続接続された複数の回路の中の最終段の出力を初
段の入力側に帰還させるとともに、これら複数の回路の
いずれかから正弦波発振出力を取り出すことを特徴とす
る。
【0012】請求項3の発振器は、入力される交流信号
を同相および逆相の交流信号に変換して出力する変換手
段と、前記変換手段によって変換された一方の交流信号
をキャパシタを介して他方の交流信号を第1の抵抗を介
して合成する合成手段とを含む第1の移相回路と、反転
入力端子に第2の抵抗の一方端が接続された差動入力増
幅器と、前記差動入力増幅器の反転入力端子と出力端子
との間に接続された第3の抵抗と、前記第2の抵抗の他
方端に接続された第4の抵抗およびインダクタからなる
直列回路とを含み、前記第4の抵抗および前記インダク
タの接続部を前記差動入力増幅器の非反転入力端子に接
続した第2の移相回路と、入力される交流信号の位相を
変えずに所定の増幅度で増幅して出力する非反転回路
と、を備え、前記第1および第2の移相回路と前記非反
転回路のそれぞれを縦続接続し、これら縦続接続された
複数の回路の中の最終段の出力を初段の入力側に帰還さ
せるとともに、これら複数の回路のいずれかから正弦波
発振出力を取り出すことを特徴とする。
【0013】請求項4の発振器は、入力される交流信号
を同相および逆相の交流信号に変換して出力する変換手
段と、前記変換手段によって変換された一方の交流信号
をインダクタを介して他方の交流信号を第1の抵抗を介
して合成する合成手段とを含む第1の移相回路と、反転
入力端子に第2の抵抗の一方端が接続された差動入力増
幅器と、前記差動入力増幅器の反転入力端子と出力端子
との間に接続された第3の抵抗と、前記第2の抵抗の他
方端に接続された第4の抵抗およびキャパシタからなる
直列回路とを含み、前記第4の抵抗および前記キャパシ
タの接続部を前記差動入力増幅器の非反転入力端子に接
続した第2の移相回路と、入力される交流信号の位相を
変えずに所定の増幅度で増幅して出力する非反転回路
と、を備え、前記第1および第2の移相回路と前記非反
転回路のそれぞれを縦続接続し、これら縦続接続された
複数の回路の中の最終段の出力を初段の入力側に帰還さ
せるとともに、これら複数の回路のいずれかから正弦波
発振出力を取り出すことを特徴とする。
【0014】請求項5の発振器は、請求項1〜4のいず
れかにおいて、前記2つの移相回路および前記非反転回
路から2相出力を取り出すことを特徴とする。
【0015】請求項6の発振器は、請求項1〜5のいず
れかにおいて、前記第1および第2の移相回路のいずれ
か一方では入力電圧に対して出力電圧が進み位相であ
り、いずれか他方では入力電圧に対して出力電圧が遅れ
位相であり、前記第1および第2の移相回路の合計の移
相量が0°となる周波数で発振することを特徴とする。
【0016】請求項7の発振器は、請求項1〜6のいず
れかにおいて、前記差動入力増幅器は演算増幅器である
ことを特徴とする。
【0017】請求項8の発振器は、請求項1〜7のいず
れかにおいて、前記第1の移相回路に含まれる前記第1
の抵抗および前記第2の移相回路に含まれる前記第4の
抵抗の少なくとも一方を可変抵抗により形成し、この抵
抗値を変えることにより、発振周波数を変化させること
を特徴とする。
【0018】請求項9の発振器は、請求項8において、
前記可変抵抗をFETのチャネルによって形成し、ゲー
ト電圧を変えてチャネル抵抗を変えることを特徴とす
る。
【0019】請求項10の発振器は、請求項8におい
て、前記可変抵抗をpチャネル型のFETとnチャネル
型のFETとの各ソース・ドレイン間を並列接続するこ
とにより形成し、各ゲート電圧の大きさを変えてチャネ
ル抵抗を変えることを特徴とする。
【0020】請求項11の発振器は、請求項1、3、4
のいずれかにおいて、前記第1および第2の移相回路の
少なくとも一方に含まれる前記キャパシタを可変容量素
子により形成し、この静電容量を変えることにより、発
振周波数を変化させることを特徴とする。
【0021】請求項12の発振器は、請求項11におい
て、前記可変容量素子を逆バイアス電圧が変更可能な可
変容量ダイオード、あるいはゲート電圧可変によってゲ
ート容量が変更可能なFETによって形成することを特
徴とする。
【0022】請求項13の発振器は、請求項2〜4のい
ずれかにおいて、前記第1および第2の移相回路の少な
くとも一方に含まれる前記インダクタが有するインダク
タンスを変えることにより、発振周波数を変化させるこ
とを特徴とする。
【0023】請求項14の発振器は、請求項13におい
て、前記インダクタは、半導体基板上に形成されてお
り、磁性体を介して相互に磁気結合した2本の渦巻き形
状の電極を有しており、一方の電極に流す直流バイアス
電流の大きさを変えることにより、他方の電極が有する
インダクタンスを変化させることを特徴とする。
【0024】請求項15の発振器は、請求項13におい
て、前記インダクタは、基板上にほぼ平面状に渦巻き形
状に形成されたインダクタ導体と、前記基板上であって
前記インダクタ導体とほぼ同心状に形成されており、所
定の直流バイアス電流が流される制御用導体と、前記イ
ンダクタ導体と前記制御用導体とを覆うように形成され
た磁性体と、を備え、前記制御用導体に流す直流バイア
ス電流を変えて前記インダクタ導体の両端に現れるイン
ダクタンスを変化させることを特徴とする。
【0025】請求項16の発振器は、請求項13におい
て、前記インダクタは、基板上にほぼ平面状に渦巻き形
状に形成されたインダクタ導体と、前記基板上であって
前記インダクタ導体に隣接する位置にほぼ平面状で渦巻
き形状に形成されており、所定の直流バイアス電流が流
される制御用導体と、前記インダクタ導体と前記制御用
導体の各渦巻き中心を貫通するように環状に形成された
磁性体と、を備え、前記制御用導体に流す直流バイアス
電流を変えて前記インダクタ導体の両端に現れるインダ
クタンスを変化させることを特徴とする。
【0026】請求項17の発振器は、請求項1〜7のい
ずれかにおいて、前記第1の移相回路に含まれる前記第
1の抵抗と前記第2の移相回路に含まれる前記第4の抵
抗の少なくとも一方を、抵抗値が固定の複数の抵抗に置
き換えて、スイッチ切り換えにより選択的に接続するこ
とにより、発振周波数を変化させることを特徴とする。
【0027】請求項18の発振器は、請求項1、3、4
のいずれかにおいて、前記第1および第2の移相回路の
少なくとも一方に含まれる前記キャパシタを、静電容量
が固定の複数のキャパシタに置き換えて、スイッチ切り
換えにより選択的に接続することにより、発振周波数を
変化させることを特徴とする。
【0028】請求項19の発振器は、請求項2〜4のい
ずれかにおいて、前記第1および第2の移相回路の少な
くとも一方に含まれる前記インダクタを、インダクタン
スが固定の複数のインダクタに置き換えて、スイッチ切
り換えにより選択的に接続することにより、発振周波数
を変化させることを特徴とする。
【0029】請求項20の発振器は、請求項1、3、4
のいずれかにおいて、前記第1および第2の移相回路の
少なくとも一方に含まれる前記キャパシタを、利得が負
の値を有する増幅器と、前記増幅器の入出力間に並列接
続されたキャパシタ素子に置き換えることにより、前記
増幅器の入力側からみた静電容量を実際に前記キャパシ
タ素子が有する静電容量よりも大きくすることを特徴と
する。
【0030】請求項21の発振器は、請求項20におい
て、前記増幅器の利得を可変して前記増幅器の入力側か
らみた静電容量を変えることにより、発振周波数を変化
させることを特徴とする。
【0031】請求項22の発振器は、請求項2〜4のい
ずれかにおいて、前記第1および第2の移相回路の少な
くとも一方に含まれる前記インダクタを、利得を0から
1の間に設定した増幅器と、前記増幅器の入出力間に並
列接続されたインダクタ素子に置き換えることにより、
前記増幅器の入力側からみたインダクタンスを実際に前
記インダクタ素子が有するインダクタンスよりも大きく
することを特徴とする。
【0032】請求項23の発振器は、請求項22におい
て、前記増幅器の利得を可変して前記増幅器の入力側か
らみたインダクタンスを変えることにより、発振周波数
を変化させることを特徴とする。
【0033】請求項24の発振器は、請求項1〜23の
いずれかにおいて、半導体集積回路として形成すること
を特徴とする。
【0034】上述した各請求項に係る発明においては、
第1および第2の移相回路のそれぞれにおいて入出力信
号の振幅が変化せずに位相のみがキャパシタ等の素子定
数に応じて所定量シフトされており、2つの移相回路の
全体により位相シフト量の合計が0°となるような周波
数で発振動作が行われる。
【0035】特に、上述した移相回路に含まれる差動入
力増幅器を演算増幅器とした場合には、移相回路の動作
を安定させることができる。
【0036】また、移相回路に含まれるキャパシタやイ
ンダクタあるいはこれらの素子と直列に接続された抵抗
の各素子定数を変化させることにより、各移相回路にお
ける位相シフト量が変わるため、2つの移相回路の全体
により位相シフト量の合計が0°となる周波数、すなわ
ち発振周波数を任意に変化させることができる。特に、
抵抗値を変化させる場合にはFETのソース・ドレイン
間抵抗を利用し、キャパシタの静電容量を変化させる場
合には可変容量ダイオード等の素子を利用することがで
き、これらは半導体基板上に形成する場合に適してい
る。さらに、インダクタについては、半導体基板上に形
成された相互に磁気結合した2本の電極において、一方
の電極に流す直流バイアス電流の大きさを変えることに
より他方の電極が有するインダクタンスを直接変化させ
ることができ、この場合も可変インダクタを半導体基板
上に形成する場合に適している。
【0037】また、上述したように発振周波数を変化さ
せるには、抵抗等の素子定数を連続的に変化させる場合
のほか、複数の抵抗等をスイッチ切り換えにより選択的
に用いてもよい。
【0038】また、移相回路に含まれるキャパシタやイ
ンダクタは、キャパシタ素子あるいはインダクタ素子と
増幅器とを並列接続した回路に置き換えることにより、
実際にキャパシタ素子が有する静電容量やインダクタ素
子が有するインダクタンスを見かけ上大きくみせること
ができる。したがって、実際には少ない占有面積でキャ
パシタ素子やインダクタ素子を形成しておいて、これら
の静電容量やインダクタンスを大きな値に変換すること
ができ、半導体基板の占有面積を少なくすることができ
る。
【0039】また、上述した発振器は、どの構成部品も
半導体基板上に形成することができ、このように集積化
した場合には、回路全体を小型化するとともに製造コス
トの低減等が可能となる。
【0040】
【発明の実施の形態】以下、本発明を適用した一実施形
態の発振器について、図面を参照しながら具体的に説明
する。
【0041】(第1の実施形態)図1は、本発明を適用
した第1の実施形態の発振器の構成を示す回路図であ
る。同図に示す発振器1は、それぞれが入力信号の位相
を所定量シフトさせることにより所定の周波数において
合計で0°の位相シフトを行う2つの移相回路10Cお
よび130Cと、移相回路130Cの出力信号の位相を
変えずに所定の増幅度で増幅して出力する非反転回路5
0と、非反転回路50の出力を移相回路10Cの入力側
に帰還させる帰還抵抗70とを含んで構成されている。
この帰還抵抗70は0Ωから有限の抵抗値を有してい
る。
【0042】図2は、図1に示した前段の移相回路10
Cの構成を抜き出して示したものである。同図に示す前
段の移相回路10Cは、ゲートがキャパシタ28を介し
て入力端22に接続されたFET12と、このFET1
2のソース・ドレイン間に直列に接続されたキャパシタ
14および可変抵抗16と、FET12のドレインと正
電源との間に接続された抵抗18と、FET12のソー
スとアースとの間に接続された抵抗20とを含んで構成
されている。
【0043】ここで、上述したFET12のソースおよ
びドレインに接続された2つの抵抗20、18の抵抗値
はほぼ等しく設定されており、入力端22に印加される
入力電圧の交流成分に着目すると、位相が一致した信号
がFET12のソースから、位相が反転した信号がFE
T12のドレインからそれぞれ出力されるようになって
いる。
【0044】なお、FET12のゲートと入力端22と
の間に挿入されたキャパシタ28は直流電流を阻止する
ためのものであり、そのインピーダンスは動作周波数に
おいて極めて小さく、すなわち大きな静電容量を有して
いる。また、FET12のゲートとアースとの間に接続
された抵抗26は、FET12に適切なバイアス電圧を
印加するためのものである。
【0045】このような構成を有する移相回路10Cに
おいて、所定の交流信号が入力端22に入力されると、
すなわちFET12のゲートに所定の交流電圧(入力電
圧)が印加されると、FET12のソースにはこの入力
電圧と同相の交流電圧が現れ、反対にFET12のドレ
インにはこの入力電圧と逆相であってソースに現れる電
圧と振幅が等しい交流電圧が現れる。このソースおよび
ドレインに現れる交流電圧の振幅をともにEi とする。
【0046】このFET12のソース・ドレイン間には
可変抵抗16とキャパシタ14とにより構成される直列
回路が接続されている。したがって、FET12のソー
スおよびドレインに現れる電圧のそれぞれをキャパシタ
14あるいは可変抵抗16を介して合成した信号が出力
端24から出力される。
【0047】図3は、移相回路10Cの入出力電圧とキ
ャパシタ等に現れる電圧との関係を示すベクトル図であ
る。
【0048】FET12のソースとドレインにはそれぞ
れ入力電圧と同相および逆相であって電圧振幅がEi の
交流電圧が現れるため、ソース・ドレイン間の電位差
(交流成分)は2Ei となる。また、可変抵抗16の両
端に現れる電圧VR1とキャパシタ14の両端に現れる電
圧VC1とは互いに90°位相がずれており、これらをベ
クトル的に合成(加算)したものが、FET12のソー
ス・ドレイン間の電位差2Ei に等しくなる。
【0049】したがって、図3に示すように、電圧Ei
の2倍を斜辺とし、可変抵抗16の両端電圧VR1とキャ
パシタ14の両端電圧VC1とが直交する2辺を構成する
直角三角形を形成することになる。このため、入力信号
の振幅が一定で周波数のみが変化した場合には、図3に
示す半円の円周に沿って可変抵抗16の両端電圧VR1と
キャパシタ14の両端電圧VC1とが変化する。
【0050】ところで、可変抵抗16とキャパシタ14
の接続点とアースとの電位差を出力電圧Eo として取り
出すものとすると、この出力電圧Eo は、図3に示した
半円においてその中心点を始点とし、電圧VR1と電圧V
C1とが交差する円周上の一点を終点とするベクトルで表
すことができ、その大きさは半円の半径Ei に等しくな
る。しかも、入力信号の周波数が変化しても、このベク
トルの終点は円周上を移動するだけであるため、周波数
に応じて出力振幅が変化しない安定した出力を得ること
ができる。
【0051】また、図3から明らかなように、電圧VR1
と電圧VC1とは円周上で直角に交わるため、理論的には
FET12のゲートに印加される入力電圧と電圧VR1と
の位相差は、周波数ωが0から∞まで変化するに従って
90°から0°まで変化する。そして、移相回路10C
全体の位相シフト量φ1 はその2倍であり、周波数に応
じて180°から0°まで変化する。しかも、可変抵抗
16の抵抗値Rを可変することにより、位相シフト量φ
1 を変化させることができる。
【0052】図4は、図1に示した後段の移相回路13
0Cの構成を抜き出して示したものである。同図に示す
後段の移相回路130Cは、差動入力増幅器の一種であ
るオペアンプ132と、入力端142に入力された信号
の位相を所定量シフトさせてオペアンプ132の非反転
入力端子に入力する可変抵抗136およびキャパシタ1
34と、入力端142とオペアンプ132の反転入力端
子との間に挿入された抵抗138と、オペアンプ132
の出力端144と反転入力端子との間に挿入された抵抗
140とを含んで構成されている。
【0053】このような構成を有する移相回路130C
において、所定の交流信号が入力端142に入力される
と、オペアンプ132の非反転入力端子には、キャパシ
タ134の両端に現れる電圧VC2が印加される。
【0054】また、図4に示したオペアンプ132の2
入力(反転入力端子と非反転入力端子)間には電位差が
生じないので、オペアンプ132の反転入力端子の電位
と、可変抵抗136とキャパシタ134の接続点の電位
とは等しくなる。したがって、抵抗138の両端には、
可変抵抗136の両端に現れる電圧VR2と同じ電圧VR2
が現れる。
【0055】ここで、抵抗138と抵抗140の各抵抗
値が等しい場合には、これら2つの抵抗138、140
に同じ電流が流れるため、抵抗140の両端にも電圧V
R2が現れる。しかも、これら2つの抵抗138、140
の各両端に現れる電圧VR2はベクトル的に同方向を向い
ており、オペアンプ132の反転入力端子(電圧VC2)
を基準にして考えると、抵抗138の両端電圧VR2をベ
クトル的に加算したものが入力電圧Ei ′に、抵抗14
0の両端電圧R2をベクトル的に減算したものが出力電圧
Eo になる。
【0056】図5は、後段の移相回路130Cの入出力
電圧とキャパシタ等に現れる電圧との関係を示すベクト
ル図である。
【0057】同図に示すように、キャパシタ134の両
端に現れる電圧VC2と可変抵抗136の両端に現れる電
圧VR2とは互いに90°位相がずれており、これらをベ
クトル的に加算したものが入力電圧Ei ′となる。した
がって、入力信号の振幅が一定で周波数のみが変化した
場合には、図5に示す半円の円周に沿ってキャパシタ1
34の両端電圧VC2と可変抵抗136の両端電圧VR2と
が変化する。
【0058】また、上述したように電圧VC2から電圧V
R2をベクトル的に減算したものが出力電圧Eo となる。
非反転入力端子に印加される電圧VC2を基準に考える
と、入力電圧Ei ′と出力電圧Eo とは電圧VR2を合成
する方向が異なるだけでありその絶対値は等しくなる。
したがって、入出力電圧の大きさと位相の関係は、入力
電圧Ei ′および出力電圧Eo を斜辺とし、電圧VR2の
2倍を底辺とする二等辺角形で表すことができ、出力信
号の振幅は周波数に関係なく入力信号の振幅と同じであ
って、位相シフト量は図5に示すφ2 で表されることが
わかる。
【0059】また、図5から明らかなように、電圧VC2
と電圧VR2とは円周上で直角に交わるため、理論的には
入力電圧Ei ′と電圧VC2との位相差は、周波数ωが0
から∞まで変化するに従って0°から90°まで変化す
る。そして、移相回路130C全体のシフト量φ2 はそ
の2倍であり、周波数に応じて0°から180°まで変
化する。しかも、可変抵抗136の抵抗値Rを可変する
ことにより、位相シフト量φ2 を変化させることができ
る。
【0060】このようにして、2つの移相回路10C、
130Cのそれぞれにおいて位相が所定量シフトされ
る。しかも、図3および図5に示すように、各移相回路
10C、130Cにおける入出力電圧の相対的な位相関
係は反対方向であって、所定の周波数において2つの移
相回路10C、130Cの全体により位相シフト量が0
°となる信号が出力される。
【0061】また、図1に示した非反転回路50は、反
転入力端子が抵抗54を介して接地されているとともに
この反転入力端子と出力端子との間に抵抗56が接続さ
れたオペアンプ52を含んで構成されており、所定の増
幅度を有するバッファとして機能し、入力信号の位相を
変えずに出力する。
【0062】この非反転回路50の出力は、出力端子9
2から発振器1の出力として取り出されるとともに、帰
還抵抗70を介して前段の移相回路10Cの入力側に帰
還されており、この帰還路のループゲインを1以上に設
定することにより、閉ループを一巡したときに位相シフ
ト量が0°となるような周波数で正弦波発振が行われ
る。なお、上述した非反転回路50の増幅度は抵抗5
4、56の抵抗比によって決まり、この抵抗比を調整す
ることにより、上述した発振器1のループゲインを容易
に1以上にすることができる。
【0063】図6は、上述した構成を有する2つの移相
回路10Cおよび130Cと非反転回路50の全体を伝
達関数K1 を有する回路に置き換えたシステム図であ
り、伝達関数K1 を有する回路と抵抗値R0 の帰還抵抗
70とによって閉ループが形成されている。図7は、図
6に示すシステムをミラーの定理によって変換したシス
テム図であり、同図に示すように抵抗値R0 を有する帰
還抵抗70を入力シャント抵抗に変換すると、その抵抗
値Rs は、
【数1】 で表すことができる。
【0064】この式において、K1 が1より大きい場合
を考えると、入力シャント抵抗Rsは負性抵抗となるこ
とがわかる。
【0065】伝達関数K1 を有する理想的な移相回路
(オール・パス・ネットワーク)で任意の有限な周波数
において位相シフト量が0°である条件を満たすものと
すれば、この周波数において、選択的に負性抵抗を実現
することになり、発振が可能となる。実際には入力シャ
ント抵抗は移相回路の入力インピーダンスと並列接続さ
れた形となり、これらを合成したものが負性抵抗となる
必要があるが、帰還抵抗70の抵抗値R0 を低く設定し
たり、移相回路の入力インピーダンスを高く設定するこ
とは設計上極めて容易であるため、理論上は移相回路の
入力インピーダンスの影響を無視して考えることができ
る。
【0066】ところで、前段の移相回路10Cの伝達関
数K2 は、可変抵抗16の抵抗値をR、キャパシタ14
の静電容量をC、これら可変抵抗16とキャパシタ14
からなるCR回路の時定数をT1 とすると、
【数2】 となる。ここで、kは入出力信号の減衰比であり、1以
下の値となる。
【0067】また、後段の移相回路130Cの伝達関数
K3 は、可変抵抗136の抵抗値をR、キャパシタ13
4の静電容量をC、これら可変抵抗136とキャパシタ
134からなるCR回路の時定数をT2 とすると、
【数3】 となる。したがって、移相回路10C、130Cと利得
1/kの非反転回路50を接続した場合の全体の伝達関
数K1 は、
【数4】 となる。ここで、計算を簡単にするために、s=jω、
2 =−ω2 、A=1+T1 2 2 =1−T1 2 ω
2 、B=T1 +T2 とおくと、
【数5】 となる。この(5)式において、移相回路10C、13
0Cを2段接続した全体の入出力間の位相差が0°とな
るには、(5)式の右辺の虚数項が0にならなければな
らないので、次の式が成立する。
【0068】
【数6】 したがって、1−T1 2 ω2 =0またはω=0とな
る。ここで、ω=0の場合は入力信号が直流の場合であ
って位相差が180°となるので、結局他方の条件(1
−T1 2 ω2 =0)を満たすω=1/√(T1 2
のときに位相差が0°となる。この周波数において入力
シャント抵抗Rs は負性抵抗となって、発振電圧条件と
周波数条件を同時に満たすことになる。
【0069】このように、2つの移相回路10C、13
0Cを組み合わせることにより、閉ループを一巡する信
号の位相シフト量をある周波数において0°とすること
ができ、このときのループゲインを1以上に設定するこ
とにより正弦波発振が持続される。また、位相シフト量
が0°となる周波数は、各移相回路10C、130C内
の可変抵抗16あるいは136の抵抗値を変えることに
より変化させることができるため、容易に周波数可変型
の発振器を実現することができる。
【0070】また、上述した発振器1において、例えば
2つの移相回路10C、130Cの時定数が同じであっ
てこれをTとおくと、発振周波数ωは1/√(T
1 2 )=1/T=1/(CR)となって、抵抗値Rを
変えることにより大きく可変することができる。これに
対し、LC共振を利用した従来の正弦波発振器では、そ
の発振周波数は√LCによって決まるため、Cの変化量
に対する発振周波数の可変幅は、この実施形態の発振器
1に比べると少ないといえる。
【0071】また、第1の実施形態の発振器1は、FE
Tやオペアンプあるいはキャパシタや抵抗を組み合わせ
て構成しており、どの構成素子も半導体基板上に形成す
ることができることから、発振周波数を調整し得る発振
器1の全体を半導体基板上に形成して集積回路とするこ
とも容易である。
【0072】ところで、上述した第1の実施形態の発振
器では、2つの移相回路10C、130Cのそれぞれを
キャパシタ14あるいは134を含んで構成したが、キ
ャパシタの代わりにインダクタを用いることもできる。
【0073】図8は、前段の移相回路10Cの変形例を
示す図であり、FETのソース・ドレイン間にLR回路
を接続した移相回路10Lの構成が示されている。同図
に示す移相回路10Lは、図2に示した移相回路10C
内の可変抵抗16とキャパシタ14からなるCR回路
を、インダクタ17と可変抵抗16からなるLR回路に
置き換えた構成を有している。図8に示すように、可変
抵抗16の一方端がFET12のソースに接続されてい
るとともに、インダクタ17の一方端が直流電流阻止用
のキャパシタ19を介してFET12のドレインに接続
されている。
【0074】したがって、FET12のソースおよびド
レインに現れる電圧のそれぞれを可変抵抗16あるいは
インダクタ17を介して合成した信号が出力端24から
出力される。
【0075】図9は、移相回路10Lの入出力電圧とイ
ンダクタ等に現れる電圧との関係を示すベクトル図であ
る。
【0076】移相回路10Cについて説明したように、
FET12のソースとドレインにはそれぞれ入力電圧と
同相および逆相であって電圧振幅がEi の交流電圧が現
れるため、ソース・ドレイン間の電位差(交流成分)は
2Ei となる。また、インダクタ17の両端に現れる電
圧VL1と可変抵抗16の両端に現れる電圧VR3とは互い
に90°位相がずれており、これらをベクトル的に合成
(加算)したものが、FET12のソース・ドレイン間
の電位差2Ei に等しくなる。
【0077】したがって、図9に示すように、電圧Ei
の2倍を斜辺とし、インダクタ17の両端電圧VL1と可
変抵抗16の両端電圧VR3とが直交する2辺を構成する
直角三角形を形成することになる。このため、入力信号
の振幅が一定で周波数のみが変化した場合には、図9に
示す半円の円周に沿ってインダクタ17の両端電圧VL1
と可変抵抗16の両端電圧VR3とが変化する。
【0078】ところで、インダクタ17と可変抵抗16
の接続点とアースとの電位差を出力電圧Eo として取り
出すものとすると、この出力電圧Eo は、図9に示した
半円においてその中心点を始点とし、電圧VL1と電圧V
R3とが交差する円周上の一点を終点とするベクトルで表
すことができ、その大きさは半円の半径Ei に等しくな
る。しかも、入力信号の周波数が変化しても、このベク
トルの終点は円周上を移動するだけであるため、周波数
に応じて出力振幅が変化しない安定した出力を得ること
ができる。
【0079】また、図9から明らかなように、電圧VL1
と電圧VR3とは円周上で直角に交わるため、理論的には
FET12のゲートに印加される入力電圧と電圧VL1と
の位相差は、周波数ωが0から∞まで変化するに従って
90°から0°まで変化する。そして、移相回路10L
全体の位相シフト量φ1 はその2倍であり、周波数に応
じて180°から0°まで変化する。しかも、可変抵抗
16の抵抗値Rを可変することにより、位相シフト量φ
1 を変化させることができる。
【0080】なお、移相回路10Lの伝達関数は、可変
抵抗16の抵抗値をR、インダクタ17のインダクタン
スをL、これら可変抵抗16とインダクタ17からなる
LR回路の時定数をT1 (=L/R)とすると、上述し
た(2)式で表すことができる。すなわち、時定数を用
いて表現すると、図2に示した移相回路10Cと図8に
示した移相回路10Lとが等価であることがわかる。
【0081】したがって、図1において、前段の移相回
路10Cを図8に示す移相回路10Lに置き換えて発振
器を構成することもでき、この場合であっても、容易に
周波数可変型の発振器を実現することができる。
【0082】特に、前段の移相回路10Cを図8に示す
移相回路10Lに置き換えた場合には、前段の移相回路
10L内のLR回路の時定数TはL/Rであり、後段の
移相回路130C内のCR回路の時定数TはCRであっ
て、それぞれにおいて抵抗値Rが分母と分子に分かれる
ため、例えば半導体基板上に発振器の全体を形成すると
ともに各可変抵抗をFETで形成したような場合には、
各可変抵抗の抵抗値の温度変化に対する発振周波数の変
動を抑制する、いわゆる温度補償が可能度照る。この点
については、後述する各種の発振器をCR回路を含む移
相回路とLR回路を含む移相回路とを組み合わせて構成
する場合についても同様である。
【0083】図10は、後段の移相回路130Cの変形
例を示す図であり、オペアンプの入力側にLR回路を接
続した移相回路130Lの構成が示されている。同図に
示す移相回路130Lは、図4に示した移相回路130
C内の可変抵抗136とキャパシタ134からなるCR
回路を、インダクタ137と可変抵抗136からなるL
R回路に置き換えた構成を有している。図10に示すよ
うに、インダクタ137の一方端が入力端142に接続
され、インダクタ137と可変抵抗136の接続点がオ
ペアンプ132の非反転入力端子に接続されている。
【0084】図11は、移相回路130Lの入出力電圧
とインダクタ等に現れる電圧との関係を示すベクトル図
である。
【0085】同図に示すように、可変抵抗136の両端
に現れる電圧VR4とインダクタ137の両端に現れる電
圧VL2とは互いに90°位相がずれており、これらをベ
クトル的に加算したものが入力電圧Ei ′となる。した
がって、入力信号の振幅が一定で周波数のみが変化した
場合には、図11に示す半円の円周に沿って可変抵抗1
36の両端電圧VR4とインダクタ137の両端電圧VL2
とが変化する。
【0086】また、上述したように電圧VR4から電圧V
L2をベクトル的に減算したものが出力電圧Eo となる。
非反転入力端子に印加される電圧VR4を基準に考える
と、入力電圧Ei ′と出力電圧Eo とは電圧VL2を合成
する方向が異なるだけでありその絶対値は等しくなる。
したがって、入出力電圧の大きさと位相の関係は、入力
電圧Ei ′および出力電圧Eo を斜辺とし、電圧VL2の
2倍を底辺とする二等辺三角形で表すことができ、出力
信号の振幅は周波数に関係なく入力信号の振幅と同じで
あって、位相シフト量は図11に示すφ2 で表されるこ
とがわかる。
【0087】また、図11から明らかなように、電圧V
R4と電圧VL2とは円周上で直角に交わるため、理論的に
は入力電圧Ei ′と電圧VC2との位相差は、周波数ωが
0から∞まで変化するに従って0°から90°まで変化
する。そして、移相回路130L全体のシフト量φ2 は
その2倍であり、周波数に応じて0°から180°まで
変化する。しかも、可変抵抗136の抵抗値Rを可変す
ることにより、位相シフト量φ2 を変化させることがで
きる。
【0088】なお、移相回路130Lの伝達関数は、可
変抵抗136の抵抗値をR、インダクタ137のインダ
クタンスをL、これら可変抵抗136とインダクタ13
7からなるLR回路の時定数をT2 (=L/R)とする
と、上述した(3)式で表すことができる。すなわち、
時定数を用いて表現すると、図4に示した移相回路13
0Cと図10に示した移相回路130Lとが等価である
ことがわかる。
【0089】したがって、図1において、後段の移相回
路130Cを図10に示す移相回路130Lに置き換え
て発振器を構成することもでき、この場合であっても、
容易に周波数可変型の発振器を実現することができる。
【0090】なお、図1において、前段の移相回路10
Cを図8に示す移相回路10Lに置き換えるとともに、
後段の移相回路130Cを図10に示す移相回路130
Lに置き換えて発振器を構成することもできる。特に、
発振器を構成する2つの移相回路をともにLR回路を含
むように構成すると、集積回路として発振器を形成した
場合に各移相回路に含まれるインダクタのインダクタン
スを小さくして周波数ω(=R/L)を高くすることが
容易であり、発振周波数を高周波化するのに適してい
る。
【0091】また、上述した各種の発振器では、前段に
移相回路10Cあるいは10Lを、後段に移相回路13
0Cあるいは130Lをそれぞれ配置したが、これらの
全体によって入出力信号間の位相シフト量が0°となれ
ばよいことから、これらの前後を入れ換えて前段に移相
回路130Cあるいは130Lを、後段に移相回路10
Cあるいは10Lをそれぞれ配置して発振器を構成する
ようにしてもよい。
【0092】(第2の実施形態)図12は、本発明を適
用した第2の実施形態の発振器の構成を示す回路図であ
る。同図に示す発振器2は、それぞれが入力信号の位相
を所定量シフトさせることにより所定の周波数において
合計で0°の位相シフトを行う2つの移相回路30Cお
よび110Cと、移相回路110Cの出力信号の位相を
変えずに所定の増幅度で増幅して出力する非反転回路5
0と、非反転回路50の出力を移相回路30Cの入力側
に帰還させる帰還抵抗70とを含んで構成されている。
この帰還抵抗70は0Ωから有限の抵抗値を有してい
る。
【0093】図13は、図12に示した前段の移相回路
30Cの構成を抜き出して示したものである。同図に示
す前段の移相回路30Cは、ゲートがキャパシタ48を
介して入力端42に接続されたFET32と、このFE
T32のソース・ドレイン間に直列に接続された可変抵
抗36およびキャパシタ34と、FET32のドレイン
と正電源との間に接続された抵抗38と、FET32の
ソースとアースとの間に接続された抵抗40とを含んで
構成されている。
【0094】ここで、上述したFET32のソースおよ
びドレインに接続された2つの抵抗40、38の抵抗値
はほぼ等しく設定されており、入力端42に印加される
入力電圧の交流成分に着目すると、位相が一致した信号
がFET32のソースから、位相が反転した信号がFE
T32のドレインからそれぞれ出力されるようになって
いる。
【0095】なお、FET32のゲートと入力端42と
の間に挿入されたキャパシタ48は直流電流を阻止する
ためのものであり、そのインピーダンスは動作周波数に
おいて極めて小さく、すなわち大きな静電容量を有して
いる。また、FET32のゲートとアースとの間に接続
された抵抗46は、FET32に適切なバイアス電圧を
印加するためのものである。
【0096】このような構成を有する移相回路30Cに
おいて、所定の交流信号が入力端42に入力されると、
すなわちFET32のゲートに所定の交流電圧(入力電
圧)が印加されると、FET32のソースにはこの入力
電圧と同相の交流電圧が現れ、反対にFET32のドレ
インにはこの入力電圧と逆相であってソースに現れる電
圧と振幅が等しい交流電圧が現れる。このソースおよび
ドレインに現れる交流電圧の振幅をともにEi とする。
【0097】このFET32のソース・ドレイン間には
キャパシタ34と可変抵抗36とにより構成される直列
回路が接続されている。したがって、FET32のソー
スおよびドレインに現れる電圧のそれぞれを可変抵抗3
6あるいはキャパシタ34を介して合成した信号が出力
端44から出力される。
【0098】図14は、移相回路30Cの入出力電圧と
キャパシタ等に現れる電圧との関係を示すベクトル図で
ある。
【0099】FET32のソースとドレインにはそれぞ
れ入力電圧と同相および逆相であって電圧振幅がEi の
交流電圧が現れるため、ソース・ドレイン間の電位差
(交流成分)は2Ei となる。また、キャパシタ34の
両端に現れる電圧VC3と可変抵抗36の両端に現れる電
圧VR5とは互いに90°位相がずれており、これらをベ
クトル的に合成(加算)したものが、FET32のソー
ス・ドレイン間の電位差2Ei に等しくなる。
【0100】したがって、図14に示すように、電圧E
i の2倍を斜辺とし、キャパシタ34の両端電圧VC3と
可変抵抗36の両端電圧VR5とが直交する2辺を構成す
る直角三角形を形成することになる。このため、入力信
号の振幅が一定で周波数のみが変化した場合には、図1
4に示す半円の円周に沿ってキャパシタ34の両端電圧
VC3と可変抵抗36の両端電圧VR5とが変化する。
【0101】ところで、可変抵抗36とキャパシタ34
の接続点とアースとの電位差を出力電圧Eo として取り
出すものとすると、この出力電圧Eo は、図14に示し
た半円においてその中心点を始点とし、電圧VC3と電圧
VR5とが交差する円周上の一点を終点とするベクトルで
表すことができ、その大きさは半円の半径Ei に等しく
なる。しかも、入力信号の周波数が変化しても、このベ
クトルの終点は円周上を移動するだけであるため、周波
数に応じて出力振幅が変化しない安定した出力を得るこ
とができる。
【0102】また、図14から明らかなように、電圧V
C3と電圧VR5とは円周上で直角に交わるため、理論的に
はFET32のゲートに印加される入力電圧と電圧VC3
との位相差は、周波数ωが0から∞まで変化するに従っ
て0°から90°まで変化する。そして、移相回路30
C全体の位相シフト量φ3 はその2倍であり、周波数に
応じて0°から180°まで変化する。しかも、可変抵
抗36の抵抗値Rを可変することにより、位相シフト量
φ3 を変化させることができる。
【0103】図15は、図12に示した後段の移相回路
110Cの構成を抜き出して示したものである。同図に
示す後段の移相回路110Cは、差動入力増幅器の一種
であるオペアンプ112と、入力端122に入力された
信号の位相を所定量シフトさせてオペアンプ112の非
反転入力端子に入力するキャパシタ114および可変抵
抗116と、入力端122とオペアンプ112の反転入
力端子との間に挿入された抵抗118と、オペアンプ1
12の出力端124と反転入力端子との間に挿入された
抵抗120とを含んで構成されている。
【0104】このような構成を有する移相回路110C
において、所定の交流信号が入力端122に入力される
と、オペアンプ112の非反転入力端子には、可変抵抗
116の両端に現れる電圧VR6が印加される。
【0105】また、図15に示したオペアンプ112の
2入力(反転入力端子と非反転入力端子)間には電位差
が生じないので、オペアンプ112の反転入力端子の電
位と、キャパシタ114と可変抵抗116の接続点の電
位とは等しくなる。したがって、抵抗118の両端に
は、キャパシタ114の両端に現れる電圧VC4と同じ電
圧VC4が現れる。
【0106】ここで、抵抗118と抵抗120の各抵抗
値が等しい場合には、これら2つの抵抗118、120
に同じ電流が流れるため、抵抗120の両端にも電圧V
C4が現れる。しかも、これら2つの抵抗118、120
の各両端に現れる電圧VC4はベクトル的に同方向を向い
ており、オペアンプ112の反転入力端子(電圧VR6)
を基準にして考えると、抵抗118の両端電圧VC4をベ
クトル的に加算したものが入力電圧Ei ′に、抵抗12
0の両端電圧C4をベクトル的に減算したものが出力電圧
Eo になる。
【0107】図16は、後段の移相回路110Cの入出
力電圧とキャパシタ等に現れる電圧との関係を示すベク
トル図である。
【0108】同図に示すように、可変抵抗116の両端
に現れる電圧VR6とキャパシタ114の両端に現れる電
圧VC4とは互いに90°位相がずれており、これらをベ
クトル的に加算したものが入力電圧Ei ′となる。した
がって、入力信号の振幅が一定で周波数のみが変化した
場合には、図16に示す半円の円周に沿って可変抵抗1
16の両端電圧VR6とキャパシタ114の両端電圧VC4
とが変化する。
【0109】また、上述したように電圧VR6から電圧V
C4をベクトル的に減算したものが出力電圧Eo となる。
非反転入力端子に印加される電圧VR6を基準に考える
と、入力電圧Ei ′と出力電圧Eo とは電圧VC4を合成
する方向が異なるだけでありその絶対値は等しくなる。
したがって、入出力電圧の大きさと位相の関係は、入力
電圧Ei ′および出力電圧Eo を斜辺とし、電圧VC4の
2倍を底辺とする二等辺角形で表すことができ、出力信
号の振幅は周波数に関係なく入力信号の振幅と同じであ
って、位相シフト量は図16に示すφ4 で表されること
がわかる。
【0110】また、図16から明らかなように、電圧V
R6と電圧VC4とは円周上で直角に交わるため、理論的に
は入力電圧Ei ′と電圧VR6との位相差は、周波数ωが
0から∞まで変化するに従って90°から0°まで変化
する。そして、移相回路110C全体のシフト量φ4 は
その2倍であり、周波数に応じて180°から0°まで
変化する。しかも、可変抵抗116の抵抗値Rを可変す
ることにより、位相シフト量φ4 を変化させることがで
きる。
【0111】このようにして、2つの移相回路30C、
110Cのそれぞれにおいて位相が所定量シフトされ
る。しかも、図14および図16に示すように、各移相
回路30C、110Cにおける入出力電圧の相対的な位
相関係は反対方向であって、所定の周波数において2つ
の移相回路30C、110Cの全体により位相シフト量
が0°となる信号が出力される。
【0112】また、図12に示した非反転回路50は図
1に示したものであり、抵抗54、56の抵抗比によっ
て決まる増幅度を有する増幅器として機能するととも
に、入力信号の位相を変えずに出力する。
【0113】この非反転回路50の出力は、出力端子9
2から発振器2の出力として取り出されるとともに、帰
還抵抗70を介して前段の移相回路30Cの入力側に帰
還されており、この帰還路のループゲインを1以上に設
定することにより、閉ループを一巡したときに位相シフ
ト量が0°となるような周波数で正弦波発振が行われ
る。
【0114】ところで、前段の移相回路30Cの伝達関
数K21は、可変抵抗36の抵抗値をR、キャパシタ34
の静電容量をC、これら可変抵抗36とキャパシタ34
からなるCR回路の時定数をT1 とすると、
【数7】 となる。ここで、kは入出力信号の減衰比であり、1以
下の値となる。
【0115】また、後段の移相回路110Cの伝達関数
K31は、可変抵抗116の抵抗値をR、キャパシタ11
4の静電容量をC、これら可変抵抗116とキャパシタ
114からなるCR回路の時定数をT2 とすると、
【数8】 となる。したがって、移相回路30C、110Cと利得
1/kの非反転回路50を接続した場合の全体の伝達関
数K11は、
【数9】 となって、第1の実施形態の発振器1について計算した
(4)式と同じとなる。すなわち、第2のの実施形態の
発振器2において移相回路30C、110Cと非反転回
路50を接続した構成が、第1の実施形態の発振器1に
おいて移相回路10C、130Cと非反転回路50を接
続した構成に等価であることがわかる。
【0116】したがって、第2の実施形態の発振器2に
おいて、非反転回路50の増幅度を調整して発振器2の
ループゲインを1以上に設定することにより、一巡した
ときに位相シフト量が0°となるような周波数で正弦波
発振が持続される。
【0117】また、各移相回路30C、110C内の可
変抵抗36、116の抵抗値Rを可変することにより、
各移相回路における位相シフト量を変えることができる
ため、2つの移相回路30C、110Cの全体により合
計で位相シフト量が0°となる周波数を変えることがで
き、容易に周波数可変型の発振器2を実現することがで
きる。
【0118】また、第2の実施形態の発振器2は、FE
Tやオペアンプあるいはキャパシタや抵抗を組み合わせ
て構成しており、どの構成素子も半導体基板上に形成す
ることができることから、発振周波数を調整し得る発振
器2の全体を半導体基板上に形成して集積回路とするこ
とも容易である。
【0119】ところで、上述した第2の実施形態の発振
器2では、2つの移相回路30C、110Cのそれぞれ
をキャパシタ34あるいは114を含んで構成したが、
キャパシタの代わりにインダクタを用いることもでき
る。
【0120】図17は、前段の移相回路30Cの変形例
を示す図であり、FETのソース・ドレイン間にLR回
路を接続した移相回路30Lの構成が示されている。同
図に示す移相回路30Lは、図13に示した移相回路3
0C内のキャパシタ34と可変抵抗36からなるCR回
路を、可変抵抗36とインダクタ37からなるLR回路
に置き換えた構成を有している。図17に示すように、
インダクタ37の一方端が直流阻止用のキャパシタ39
を介してFET32のソースに接続されているととも
に、可変抵抗36の一方端がFET32のドレインに接
続されている。
【0121】したがって、FET32のソースおよびド
レインに現れる電圧のそれぞれをインダクタ37あるい
は可変抵抗36を介して合成した信号が出力端44から
出力される。
【0122】図18は、移相回路30Lの入出力電圧と
インダクタ等に現れる電圧との関係を示すベクトル図で
ある。
【0123】移相回路30Cについて説明したように、
FET32のソースとドレインにはそれぞれ入力電圧と
同相および逆相であって電圧振幅がEi の交流電圧が現
れるため、ソース・ドレイン間の電位差(交流成分)は
2Ei となる。また、可変抵抗36の両端に現れる電圧
VR7とインダクタ37の両端に現れる電圧VL3とは互い
に90°位相がずれており、これらをベクトル的に合成
(加算)したものが、FET32のソース・ドレイン間
の電位差2Ei に等しくなる。
【0124】したがって、図18に示すように、電圧E
i の2倍を斜辺とし、可変抵抗36の両端電圧VR7とイ
ンダクタ37の両端電圧VL3とが直交する2辺を構成す
る直角三角形を形成することになる。このため、入力信
号の振幅が一定で周波数のみが変化した場合には、図1
8に示す半円の円周に沿って可変抵抗36の両端電圧V
R7とインダクタ37の両端電圧VL3とが変化する。
【0125】ところで、可変抵抗36とインダクタ37
の接続点とアースとの電位差を出力電圧Eo として取り
出すものとすると、この出力電圧Eo は、図18に示し
た半円においてその中心点を始点とし、電圧VR7と電圧
VL3とが交差する円周上の一点を終点とするベクトルで
表すことができ、その大きさは半円の半径Ei に等しく
なる。しかも、入力信号の周波数が変化しても、このベ
クトルの終点は円周上を移動するだけであるため、周波
数に応じて出力振幅が変化しない安定した出力を得るこ
とができる。
【0126】また、図18から明らかなように、電圧V
R7と電圧VL3とは円周上で直角に交わるため、理論的に
はFET32のゲートに印加される入力電圧と電圧VR7
との位相差は、周波数ωが0から∞まで変化するに従っ
て0°から90°まで変化する。そして、移相回路30
L全体の位相シフト量φ3 はその2倍であり、周波数に
応じて0°から180°まで変化する。しかも、可変抵
抗36の抵抗値Rを可変することにより、位相シフト量
φ3 を変化させることができる。
【0127】なお、移相回路30Lの伝達関数は、可変
抵抗36の抵抗値をR、インダクタ37のインダクタン
スをL、これら可変抵抗36とインダクタ37からなる
LR回路の時定数をT1 (=L/R)とすると、上述し
た(7)式で表すことができる。すなわち、時定数を用
いて表現すると、図13に示した移相回路30Cと図1
7に示した移相回路30Lとが等価であることがわか
る。
【0128】したがって、図12において、前段の移相
回路30Cを図17に示す移相回路30Lに置き換えて
発振器を構成することもでき、この場合であっても、容
易に周波数可変型の発振器を実現することができる。
【0129】図19は、後段の移相回路110Cの変形
例を示す図であり、オペアンプの入力側にLR回路を接
続した移相回路110Lの構成が示されている。同図に
示す移相回路110Lは、図15に示した移相回路11
0C内のキャパシタ114と可変抵抗116からなるC
R回路を、可変抵抗116とインダクタ117からなる
LR回路に置き換えた構成を有している。図19に示す
ように、可変抵抗116の一方端が入力端122に接続
され、可変抵抗116とインダクタ117の接続点がオ
ペアンプ112の非反転入力端子に接続されている。
【0130】図20は、移相回路110Lの入出力電圧
とインダクタ等に現れる電圧との関係を示すベクトル図
である。
【0131】同図に示すように、インダクタ117の両
端に現れる電圧VL4と可変抵抗116の両端に現れる電
圧VR8とは互いに90°位相がずれており、これらをベ
クトル的に加算したものが入力電圧Ei ′となる。した
がって、入力信号の振幅が一定で周波数のみが変化した
場合には、図20に示す半円の円周に沿ってインダクタ
117の両端電圧VL4と可変抵抗116の両端電圧VR8
とが変化する。
【0132】また、上述したように電圧VL4から電圧V
R8をベクトル的に減算したものが出力電圧Eo となる。
非反転入力端子に印加される電圧VL4を基準に考える
と、入力電圧Ei ′と出力電圧Eo とは電圧VR8を合成
する方向が異なるだけでありその絶対値は等しくなる。
したがって、入出力電圧の大きさと位相の関係は、入力
電圧Ei ′および出力電圧Eo を斜辺とし、電圧VR8の
2倍を底辺とする二等辺三角形で表すことができ、出力
信号の振幅は周波数に関係なく入力信号の振幅と同じで
あって、位相シフト量は図20に示すφ4 で表されるこ
とがわかる。
【0133】また、図20から明らかなように、電圧V
L4と電圧VR8とは円周上で直角に交わるため、理論的に
は入力電圧Ei ′と電圧VL4との位相差は、周波数ωが
0から∞まで変化するに従って90°から0°まで変化
する。そして、移相回路110L全体のシフト量φ4 は
その2倍であり、周波数に応じて180°から0°まで
変化する。しかも、可変抵抗116の抵抗値Rを可変す
ることにより、位相シフト量φ4 を変化させることがで
きる。
【0134】なお、移相回路110Lの伝達関数は、可
変抵抗116の抵抗値をR、インダクタ117のインダ
クタンスをL、これら可変抵抗116とインダクタ11
7からなるLR回路の時定数をT31(=L/R)とする
と、上述した(8)式で表すことができる。すなわち、
時定数を用いて表現すると、図15に示した移相回路1
10Cと図19に示した移相回路110Lとが等価であ
ることがわかる。
【0135】したがって、図12において、後段の移相
回路110Cを図19に示す移相回路110Lに置き換
えて発振器を構成することもでき、この場合であって
も、容易に周波数可変型の発振器を実現することができ
る。
【0136】なお、図12において、前段の移相回路3
0Cを図17に示す移相回路30Lに置き換えるととも
に、後段の移相回路110Cを図19に示す移相回路1
10Lに置き換えて発振器を構成することもできる。
【0137】また、上述した各種の発振器では、前段に
移相回路30Cあるいは30Lを、後段に移相回路11
0Cあるいは110Lをそれぞれ配置したが、これらの
全体によって入出力信号間の位相シフト量が0°となれ
ばよいことから、これらの前後を入れ換えて前段に移相
回路110Cあるいは110Lを、後段に移相回路30
Cあるいは30Lをそれぞれ配置して発振器を構成する
ようにしてもよい。
【0138】(その他の実施形態)ところで、上述した
各実施形態の発振器は、2つの移相回路と非反転回路に
よって構成されており、接続された3つの回路の全体に
よって所定の周波数において合計の位相シフト量を0°
にすることにより所定の発振動作を行うようになってい
る。したがって、位相シフト量だけに着目すると、移相
回路と非反転回路をどのような順番で接続するかはある
程度の自由度があり、必要に応じて接続順番を決めるこ
とができる。
【0139】図21は、2つの移相回路と非反転回路を
組み合わせて発振器を構成した場合において、その接続
状態を示す図である。なお、これらの図において、帰還
側インピーダンス素子70aは、最も一般的には図1等
に示すように帰還抵抗70を使用する。但し、帰還側イ
ンピーダンス素子70aをキャパシタあるいはインダク
タにより形成したり、抵抗やキャパシタあるいはインダ
クタを組み合わせて形成してもよい。
【0140】図21(A)には2つの移相回路の後段に
非反転回路50を配置した構成が示されており、図1に
示した発振器1あるいは図12に示した発振器2に対応
している。このように、後段に非反転回路50を配置し
た場合には、この非反転回路50に出力バッファの機能
を持たせることにより、大きな出力電流を取り出すこと
もできる。
【0141】図21(B)には2つの移相回路の間に非
反転回路50を配置した構成が示されている。このよう
に、中間に非反転回路50を配置した場合には、前段の
移相回路と後段の移相回路の相互干渉を完全に防止する
ことができる。
【0142】図21(C)には2つの移相回路のさらに
前段に非反転回路50を配置した構成が示されている。
このように、前段に非反転回路50を配置した場合に
は、前段の移相回路に対する帰還側インピーダンス素子
70aの影響を最小限に抑えることができる。
【0143】また、上述した各実施形態において示した
移相回路には可変抵抗16等が含まれている。これらの
可変抵抗は、具体的には接合型あるいはMOS型のFE
Tを用いて実現することができる。
【0144】図22は、図1に示した発振器1を構成す
る2種類の移相回路内の可変抵抗をFETに置き換えた
場合の移相回路の構成を示す図である。同図(A)に
は、移相回路10Cにおいて可変抵抗16をFETに置
き換えた構成が示されている。同図(B)には、移相回
路130Cにおいて可変抵抗136をFETに置き換え
た構成が示されている。
【0145】このように、FETのソース・ドレイン間
に形成されるチャネルを抵抗体として利用して可変抵抗
16あるいは136の代わりに使用すると、ゲート電圧
を可変に制御してこのチャネル抵抗をある範囲で任意に
変化させて各移相回路における位相シフト量を変えるこ
とができる。したがって、各発振器において一巡する信
号の位相シフト量が0°となる周波数を変えることがで
きるため、発振器の発振周波数を任意に変更することが
できる。
【0146】なお、図22に示した各移相回路は、可変
抵抗を1つのFET、すなわちpチャネルあるいはnチ
ャネルのFETによって構成したが、pチャネルのFE
TとnチャネルのFETとを並列接続して1つの可変抵
抗を構成するようにしてもよい。抵抗値を可変する場合
にはこのゲート電圧の大きさを変えればよい。このよう
に、2つのFETを組み合わせて可変抵抗を構成するこ
とにより、FETの非線形領域の改善を行うことができ
るため、発振信号の歪みを少なくすることができる。
【0147】また、図22には図1に示した発振器1を
構成する2つの移相回路10C、130C内の可変抵抗
をFETに置き換えた場合について説明したが、図12
に示す発振器2を構成する2つの移相回路30C、11
0C内の可変抵抗をFETに置き換える場合や、図8等
に示すその他の移相回路内の可変抵抗をFETに置き換
える場合も同様である。
【0148】また、上述した各実施形態において示した
移相回路は、キャパシタ14等と直列に接続された可変
抵抗の抵抗値を変化させて位相シフト量を変化させるこ
とにより全体の発振周波数を変えるようにしたが、キャ
パシタ14等を可変容量素子によって形成し、その静電
容量を変化させることにより全体の発振周波数を変える
ようにしてもよい。
【0149】図23は、図1に示した発振器1を構成す
る2種類の移相回路内のキャパシタを可変容量ダイオー
ドに置き換えた場合の移相回路の構成を示す図である。
同図(A)には、移相回路10Cにおいて可変抵抗16
を固定抵抗に置き換えるとともにキャパシタ14を可変
容量ダイオードに置き換えた構成が示されている。同図
(B)には、移相回路130Cにおいて可変抵抗136
を固定抵抗に置き換えるとともにキャパシタ134を可
変容量ダイオードに置き換えた構成が示されている。
【0150】なお、図23(A)、(B)において、可
変容量ダイオードに直列に接続されたキャパシタは、可
変容量ダイオードのアノード・カソード間に逆バイアス
電圧を印加する際にその直流電流を阻止するためのもの
であり、そのインピーダンスは動作周波数において極め
て小さく、すなわち大きな静電容量を有している。ま
た、図23(A)、(B)に示したキャパシタの両端の
電位は直流成分をみると一定であるため、交流成分の振
幅より大きな逆バイアス電圧をアノード・カソード間に
印加することにより、各可変容量ダイオードを容量可変
のキャパシタとして機能させることができる。
【0151】このように、キャパシタ14あるいは13
4を可変容量ダイオードで構成し、そのアノード・カソ
ード間に印加する逆バイアス電圧の大きさを可変に制御
してこの可変容量ダイオードの静電容量をある範囲で任
意に変化させて各移相回路における位相シフト量を変え
ることができる。したがって、発振器において一巡する
信号の位相シフト量が0°となる周波数を変えることが
でき、発振器の発振周波数を任意に変更することができ
る。
【0152】ところで、上述した図23(A)、(B)
では可変容量素子として可変容量ダイオードを用いた
が、ソースおよびドレインを直流的に固定電位に接続す
るとともにゲートに可変電圧を印加したFETを用いる
ようにしてもよい。上述したように、図23(A)、
(B)に示した可変容量ダイオードの両端電位は直流的
に固定されているため、これらの可変容量ダイオードを
上述したFETに置き換えるだけでよく、ゲートに印加
する電圧を可変することによりゲート容量、すなわちF
ETが有する静電容量を変えることができる。
【0153】また、上述した図23(A)、(B)では
可変容量ダイオードの静電容量のみを可変したが、同時
に可変抵抗の抵抗値を可変するようにしてもよい。ま
た、これらの可変抵抗を図22に示したようにFETの
チャネル抵抗を利用して形成することができることはい
うまでもない。特に、pチャネルのFETとnチャネル
のFETとを並列接続して1つの可変抵抗を構成した場
合には、FETの非線形領域の改善を行うことができる
ため、発振信号の歪みを少なくすることができる。
【0154】なお、図23には図1に示した発振器1を
構成する2つの移相回路10C、130C内のキャパシ
タを可変容量素子に置き換えた場合について説明した
が、図12に示す発振器2を構成する2つの移相回路3
0C、110C内のキャパシタを可変容量素子に置き換
える場合も同様である。
【0155】また、、上述した各実施形態において示し
た移相回路は、インダクタ17等と直列に接続された可
変抵抗の抵抗値を変化させて位相シフト量を変化させる
ことにより全体の発振周波数を変えるようにしたが、イ
ンダクタ17等を可変インダクタによって形成し、その
インダクタンスを変化させることにより全体の発振周波
数を変えるようにしてもよい。
【0156】図24は、各種の移相回路内のインダクタ
を可変インダクタに置き換えた場合の構成を示す図であ
る。同図(A)には、図8に示した移相回路10Lにお
いてインダクタ17を可変インダクタ17aに置き換え
た構成が示されている。同図(B)には、図10に示し
た移相回路130Lにおいてインダクタ137を可変イ
ンダクタ137aに置き換えた構成が示されている。
【0157】このように、インダクタ17あるいは13
7を可変インダクタ17aあるいは137aに置き換え
て、それらが有するインダクタンスをある範囲で任意に
変化させて各移相回路における位相シフト量を変えるこ
とができる。したがって、各発振器において一巡する信
号の位相シフト量が0°となる周波数を変えることがで
き、発振周波数を任意に変更することができる。
【0158】また、上述した図24(A)、(B)では
可変インダクタ17a等のインダクタンスのみを可変し
たが、同時に可変抵抗の抵抗値を可変するようにしても
よい。また、図24では図8あるいは図10に示した移
相回路内のインダクタ17等を可変インダクタに置き換
えた場合について説明したが、図17に示した移相回路
30L内のインダクタ37あるいは図19に示した移相
回路110L内のインダクタ117を可変インダクタに
置き換える場合も同様である。
【0159】ところで、上述したように可変抵抗や可変
容量素子あるいは可変インダクタを用いる場合の他、素
子定数が異なる複数の抵抗あるいはキャパシタを用意し
ておいて、スイッチを切り換えることにより、これら複
数の素子の中から1つあるいは複数を選ぶようにしても
よい。この場合にはスイッチ切り換えにより接続する素
子の個数および接続方法(直列接続、並列接続あるいは
これらの組み合わせ)によって、素子定数を不連続に切
り換えることができる。例えば、可変抵抗の代わりに抵
抗値がR、2R、4R、…といった2のn乗の系列の複
数の抵抗を用意しておいて、1つあるいは任意の複数を
選択して直列接続することにより、等間隔の抵抗値の切
り換えをより少ない素子で容易に実現することができ
る。同様に、キャパシタの代わりに静電容量がC、2
C、4C、…といった2のn乗の系列の複数のキャパシ
タを用意しておいて、1つあるいは任意の複数を選択し
て並列接続することにより、等間隔の静電容量の切り換
えをより少ない素子で容易に実現することができる。
【0160】図25は、図24に示した可変インダクタ
17a等の具体例を示す図であり、半導体基板上に形成
された平面構造の概略が示されている。なお、同図に示
す可変インダクタ17aの構造は、そのまま可変インダ
クタ137a等にも適用することができる。
【0161】同図に示す可変インダクタ17aは、半導
体基板310上に形成された渦巻き形状のインダクタ導
体312と、その外周を周回するように形成された制御
用導体314と、これらインダクタ導体312および制
御用導体314の両方を覆うように形成された絶縁性磁
性体318とを含んで構成されている。
【0162】上述した制御用導体314は、制御用導体
314の両端に可変のバイアス電圧を印加するために可
変電圧電源316が接続され、この可変電圧電源316
によって印加する直流バイアス電圧を可変に制御するこ
とにより、制御用導体314に流れるバイアス電流を変
化させることができる。
【0163】また、半導体基板310は、例えばn型シ
リコン基板(n−Si基板)やその他の半導体材料(例
えばゲルマニウムやアモルファスシリコン等の非晶質材
料)が用いられる。また、インダクタ導体312は、ア
ルミニウムや金等の金属薄膜あるいはポリシリコン等の
半導体材料を渦巻き形状に形成されている。
【0164】なお、図25に示した半導体基板310に
は、可変インダクタ17aの他に図8等に示した移相回
路を含む発振器の他の構成部品が形成されている。
【0165】図26は、図25に示した可変インダクタ
17aのインダクタ導体312および制御用導体314
の形状をさらに詳細に示す図である。
【0166】同図に示すように、内周側に位置するイン
ダクタ導体312は、所定ターン数(例えば約4ター
ン)の渦巻き形状に形成されており、その両端には2つ
の端子電極322、324が接続されている。同様に、
外周側に位置する制御用導体314は、所定ターン数
(例えば約2ターン)の渦巻き形状に形成されており、
その両端には2つの制御電極326、328が接続され
ている。
【0167】図27は、図26のA−A線拡大断面図で
あり、インダクタ導体312と制御用導体314を含む
絶縁性磁性体318の横断面が示されている。
【0168】同図に示すように、半導体基板310表面
に絶縁性の磁性体膜318aを介してインダクタ導体3
12および制御用導体314が形成されており、さらに
その表面に絶縁性の磁性体膜318bが被覆形成されて
いる。これら2つの磁性体膜318a、318bによっ
て図25に示した絶縁性磁性体318が形成されてい
る。
【0169】例えば、磁性体膜318a、318bとし
ては、ガンマ・フェライトやバリウム・フェライト等の
各種磁性体膜を用いることができる。また、これらの磁
性体膜の材質や形成方法については各種のものが考えら
れ、例えばFeO等を真空蒸着して磁性体膜を形成する
方法や、その他分子線エピタキシー法(MBE法)、化
学気相成長法(CVD法)、スパッタ法等を用いて磁性
体膜を形成する方法等がある。
【0170】なお、絶縁膜330は、非磁性体材料によ
って形成されており、インダクタ導体312および制御
用導体314の各周回部分の間を覆っている。このよう
にして各周回部分間の磁性体膜318a、318bを排
除することにより、各周回部分間に生じる漏れ磁束を最
小限に抑えることができるため、インダクタ導体312
が発生する磁束を有効に利用して大きなインダクタンス
を有する可変インダクタ17aを実現することができ
る。
【0171】このように、図25等に示した可変インダ
クタ17aは、インダクタ導体312と制御用導体31
4とを覆うように絶縁性磁性体318(磁性体膜318
a、318b)が形成されており、制御用導体314に
流す直流バイアス電流を可変に制御することにより、上
述した絶縁性磁性体318を磁路とするインダクタ導体
312の飽和磁化特性が変化し、インダクタ導体312
が有するインダクタンスが変化する。
【0172】したがって、インダクタ導体312のイン
ダクタンスそのものを直接変化させることができ、しか
も、半導体基板310上に薄膜形成技術や半導体製造技
術を用いて形成することができるため製造が容易とな
る。さらに、半導体基板310上には発振器1等の他の
構成部品を形成することも可能であるため、各実施形態
の発振器の全体を集積化によって一体形成する場合に適
している。
【0173】なお、図25等に示した可変インダクタ1
7aは、インダクタ導体312と制御用導体314とを
交互に周回させたり、インダクタ導体312と制御用導
体314とを重ねて形成するようにしてもよい。いずれ
の場合であっても、制御用導体314に流す直流バイア
ス電流を変化させることにより絶縁性磁性体318の飽
和磁化特性を変えることができ、インダクタ導体312
が有するインダクタンスをある範囲で変化させることが
できる。
【0174】また、図25等に示した可変インダクタ1
7aは、半導体基板310上にインダクタ導体312等
を形成する場合を例にとり説明したが、セラミックス等
の絶縁性あるいは導電性の各種基板上に形成するように
してもよい。
【0175】また、磁性体膜318a、318bとして
絶縁性材料を用いたが、メタル粉(MP)のような導電
性材料を用いるようにしてもよい。但し、このような導
電性の磁性体膜を上述した絶縁性の磁性体膜318a等
に置き換えて使用すると、インダクタ導体312等の各
周回部分が短絡されてインダクタ導体として機能しなく
なるため、各インダクタ導体と導電性の磁性体膜との間
を電気的に絶縁する必要がある。この絶縁方法として
は、インダクタ導体312等を酸化して絶縁酸化膜を形
成する方法や、化学気相法等によりシリコン酸化膜ある
いは窒化膜を形成する方法等がある。
【0176】特に、メタル粉等の導電性材料は、ガンマ
・フェライト等の絶縁性材料に比べると透磁率が大きい
ため、大きなインダクタンスを確保することができる利
点がある。
【0177】また、図25等に示した可変インダクタ1
7aは、インダクタ導体312と制御用導体314の両
方の全体を絶縁性磁性体318で覆うようにしたが、一
部のみを覆って磁路を形成するようにしてもよい。この
ように、磁路となる絶縁性磁性体(あるいは導電性磁性
体でもよい)を部分的に形成した場合には、磁路が狭ま
ることによりインダクタ導体312および制御用導体3
14によって生じる磁束が飽和しやすくなる。したがっ
て、制御用導体314に少ないバイアス電流を流した場
合であっても磁束が飽和し、少ないバイアス電流を可変
に制御することによりインダクタ導体312のインダク
タンスを変えることができる。このため、制御系の構造
を簡略化することができる。
【0178】また、図25等に示した可変インダクタ1
7aは、インダクタ導体312と制御用導体314とを
同心状に巻回して形成したが、これら各導体を半導体基
板310表面の隣接した位置に形成してそれらの間を絶
縁性あるいは導電性の磁性体によって形成した磁路によ
って磁気結合させてもよい。
【0179】図28は、インダクタ導体と制御用導体と
を隣接した位置に並べて形成した場合の可変インダクタ
17bの概略を示す平面図である。
【0180】同図に示す可変インダクタ17bは、半導
体基板310上に形成された渦巻き形状のインダクタ導
体312aと、このインダクタ導体312aと隣接した
位置に形成された渦巻き形状の制御用導体314aと、
インダクタ導体312aと制御用導体314aの各渦巻
き中心を覆うように形成された絶縁性磁性体(あるいは
導電性磁性体)319とを含んで構成されている。
【0181】図25等に示した可変インダクタ17aと
同様に、制御用導体314aにはその両端に可変のバイ
アス電圧を印加するために可変電圧電源316が接続さ
れており、この可変電圧電源316によって印加するバ
イアス電圧を可変に制御することにより、制御用導体3
14aに流れる所定のバイアス電流を変化させることが
できる。
【0182】上述した可変インダクタ17bは、インダ
クタ導体312aと制御用導体314aの各渦巻き中心
を通るように環状の絶縁性磁性体319(磁性体膜31
9a、319b)が形成されている。したがって、制御
用導体314aに流す直流バイアス電流を可変に制御す
ることにより、上述した磁性体319を磁路とするイン
ダクタ導体312aの飽和磁化特性が変化し、インダク
タ導体312aが有するインダクタンスも変化する。
【0183】また、上述した各実施形態の発振器1等を
半導体基板上に形成した場合には、キャパシタ14等と
してあまり大きな静電容量を設定することができない。
したがって、半導体基板上に実際に形成したキャパシタ
の小さな静電容量を回路を工夫することにより、見かけ
上大きくすることができれば時定数Tを大きな値に設定
して発振周波数の低周波数化を図る際に都合がよい。
【0184】図29は、図1等に示した移相回路10C
等に用いたキャパシタ14等を素子単体ではなく回路に
よって構成した変形例を示す図であり、実際に半導体基
板上に形成されるキャパシタの静電容量を見かけ上大き
くみせる静電容量変換回路として機能する。なお、図2
9に示した回路全体が移相回路10C等に含まれるキャ
パシタ14等に対応している。
【0185】図29に示す静電容量変換回路14aは、
所定の静電容量C0 を有するキャパシタ210と、2つ
のオペアンプ212、214と、4つの抵抗216、2
18、220、222とを含んで構成されている。
【0186】1段目のオペアンプ212は、出力端子と
反転入力端子との間に抵抗218(この抵抗値をR18と
する)が接続されており、さらにこの反転入力端子が抵
抗216(この抵抗値をR16とする)を介して接地され
ている。
【0187】1段目のオペアンプ212の非反転入力端
子に印加される電圧E1 と出力端子に現れる電圧E2 と
の間には、
【数10】 の関係がある。この1段目のオペアンプ212は、主に
インピーダンス変換を行うバッファとして機能するもの
であり、利得は1であってもよい。利得1の場合とはR
18/R16=0のとき、すなわちR16を無限大(抵抗21
6を除去すればよい)、あるいはR18を0Ω(直結すれ
ばよい)に設定する。
【0188】また、2段目のオペアンプ214は、出力
端子と反転入力端子との間に抵抗222(この抵抗値を
R22とする)が接続されているとともに反転入力端子と
上述したオペアンプ212の出力端子との間に抵抗22
0(この抵抗値をR20とする)が接続されており、さら
に非反転入力端子が接地されている。
【0189】2段目のオペアンプ214の出力端子に現
れる電圧をE3 とすると、この電圧E3 と1段目のオペ
アンプ212の出力端子に現れる電圧E2 との間には、
【数11】 の関係がある。このように2段目のオペアンプ214は
反転増幅器として機能するものであり、その入力側を高
インピーダンスに設定するために1段目のオペアンプ2
12が使用されている。
【0190】また、このような接続がなされた1段目の
オペアンプ212の非反転入力端子と2段目のオペアン
プ214の出力端子との間には、上述したように所定の
静電容量を有するキャパシタ210が接続されている。
【0191】図29に示した静電容量変換回路14aに
おいて、キャパシタ210を除く回路全体の伝達関数を
K4 とすると、静電容量変換回路14aは図30に示す
システム図で表すことができる。図31は、これをミラ
ーの定理によって変換したシステム図である。
【0192】図30に示したインピーダンスZ0 を用い
て図31に示したインピーダンスZ1 を表すと、
【数12】 となる。ここで、図29に示した静電容量変換回路14
aの場合には、インピーダンスZ0 =1/(jωC0 )
であり、これを(12)式に代入して、
【数13】
【数14】 となる。この(14)式は、静電容量変換回路14aに
おいてキャパシタ210が有する静電容量C0 が見掛け
上は(1−K4)倍になったことを示している。したがっ
て、増幅器の利得K4 が負の場合には(1−K4)は常に
1より大きくなるため、静電容量C0 を大きいほうに変
化させることができる。
【0193】ところで、図29に示した静電容量変換回
路14aにおける増幅器の利得、すなわちオペアンプ2
12と214の全体により構成される増幅器の利得K4
は、(10)式および(11)式から、
【数15】 となる。この(15)式を(14)式に代入すると、
【数16】 となる。したがって、4つの抵抗216、218、22
0、222の抵抗値を所定の値に設定することにより、
2つの端子224、226間の見掛け上の静電容量Cを
大きくすることができる。
【0194】また、1段目のオペアンプ212による増
幅器の利得が1の場合、すなわち上述したようにR16を
無限大(抵抗216を除去)、あるいはR18を0Ωに設
定したときであってR18/R16=0の場合には、上述し
た(16)式は簡略化されて、
【数17】 となる。
【0195】このように、上述した静電容量変換回路1
4aは、抵抗220と抵抗222との抵抗比R22/R20
あるいは抵抗216と抵抗218との抵抗比R18/R16
を変えることにより、実際に半導体基板上に形成するキ
ャパシタ210の静電容量C0 を見掛け上大きい方に変
換することができる。そのため、半導体基板上に図1等
に示した発振器1等の全体を形成するような場合には、
半導体基板上に小さな静電容量C0 を有するキャパシタ
210を形成しておいて、図29に示した回路によって
大きな静電容量Cに変換することができ、集積化に際し
て好都合となる。特に、このようにして大きな静電容量
を確保することができれば、図1に示した発振器1等の
全体の実装面積を小型化して、材料コスト等の低減も可
能となる。
【0196】また、抵抗216、218、220、22
2の中の少なくとも1つを可変抵抗により形成すること
により、具体的には接合型やMOS型のFETあるいは
pチャネルFETとnチャネルFETとを並列に接続し
て可変抵抗を形成することにより、容易に静電容量が可
変のキャパシタを形成することができる。したがって、
このキャパシタを図23に示した可変容量ダイオードの
代わりに使用することにより、位相シフト量をある範囲
で任意に変化させることができる。このため、発振器に
おいて一巡する信号の位相シフト量が0°となる周波数
を変えることができ、上述した発振器の発振周波数を任
意に変更することができる。
【0197】なお、上述したように第1段目のオペアン
プ212は入力インピーダンスを高くするためのバッフ
ァとして用いているため、このオペアンプ212をエミ
ッタホロワ回路あるいはソースホロワ回路に置き換える
ようにしてもよい。
【0198】ところで、上述した図29では、所定の利
得を有する増幅器とキャパシタとを組み合わせることに
より、見かけ上の静電容量を実際にキャパシタ素子が有
する静電容量より大きくする場合を説明したが、キャパ
シタの代わりにインダクタを用い、このインダクタが有
するインダクタンスを見かけ上大きくすることもでき
る。
【0199】すなわち、上述したように図30に示した
インピーダンスZ0 を用いて図31に示したインピーダ
ンスZ1 を表すと(12)式のようになる。ここで、イ
ンダクタンスL0 を有するインダクタの場合には、イン
ピーダンスZ0 =jωL0 であり、これを(12)式に
代入して、
【数18】
【数19】 となる。この(19)式は、実際にインダクタ素子が有
するインダクタンスが見かけ上1/(1−K4 )倍にな
ったことを示しており、利得K4 が0から1の間に設定
されているときには見かけ上のインダクタンスが大きく
なることがわかる。
【0200】図32は、図8等に示した移相回路10L
等に用いたインダクタ17等を素子単体ではなく回路に
よって構成した変形例を示す図であり、実際に半導体基
板上に形成されるインダクタ素子(インダクタ導体)の
インダクタンスを見かけ上大きくみせるインダクタンス
変換回路として機能する。なお、図32に示した回路全
体が移相回路10Lに含まれるインダクタ17等に対応
している。
【0201】図32に示すインダクタンス変換回路17
cは、所定のインダクタンスL0 を有するインダクタ2
60と、2つのオペアンプ262、264と、2つの抵
抗266、268とを含んで構成されている。
【0202】1段目のオペアンプ262は、出力端子が
反転入力端子に接続された利得1の非反転増幅器であっ
て、主にインピーダンス変換を行うバッファとして機能
する。同様に、2段目のオペアンプ264も出力端子が
反転入力端子に接続されており、利得1の非反転増幅器
として機能する。また、これら2つの非反転増幅器の間
には抵抗266と268による分圧回路が挿入されてい
る。
【0203】このように、間に分圧回路を挿入すること
により、2つの非反転増幅器を含む増幅器全体の利得を
0から1の間で自由に設定することができる。
【0204】図32に示したインダクタンス変換回路1
7cにおいて、インダクタ260を除く回路(増幅器)
全体の伝達関数をK4 とすると、この利得K4 は抵抗2
66と268によって構成される分圧回路の分圧比によ
って決まり、それぞれの抵抗値をR66、R68とすると、
【数20】 となる。この利得K4 を(19)式に代入して見かけ上
のインダクタンスLを計算すると、
【数21】 となる。したがって、抵抗266と268の抵抗比R68
/R66を大きくすることにより、2つの端子254、2
56間の見かけ上のインダクタンスLを大きくすること
ができる。例えば、R68=R66の場合には、(21)式
からインダクタンスLをL0 の2倍にすることができ
る。
【0205】このように、上述したインダクタンス変換
回路17cは、2つの非反転増幅器の間に挿入された分
圧回路の分圧比を変えることにより、実際に接続されて
いるインダクタ260のインダクタンスL0 を見かけ上
大きくすることができる。そのため、半導体基板上に図
8等に示した移相回路を含む発振器の全体を形成するよ
うな場合には、半導体基板上に小さなインダクタンスL
0 を有するインダクタ260をスパイラル状の導体等に
よって形成しておいて、図32に示したインダクタンス
変換回路によって大きなインダクタンスLに変換するこ
とができ、集積化に際して好都合となる。特に、このよ
うにして大きなインダクタンスを確保することができれ
ば、発振器の発振周波数を比較的低い周波数領域まで下
げることが容易となる。また、集積化を行うことによ
り、発振器全体の実装面積を小型化して、材料コスト等
の低減も可能となる。
【0206】なお、抵抗266、268による分圧回路
の分圧比を固定した場合の他、これら2つの抵抗26
6、268の少なくとも一方を可変抵抗により形成する
ことにより、具体的には接合型やMOS型のFETある
いはpチャネルFETとnチャネルFETとを並列に接
続して可変抵抗を形成することにより、この分圧比を連
続的に変化させてもよい。この場合には、図32に示し
たオペアンプ262、264を含んで構成される増幅器
全体の利得が変わり、端子254、256間のインダク
タンスLも連続的に変化する。したがって、このインダ
クタンス変換回路17cを図24に示した可変インダク
タ17a等の代わりに使用することにより、各移相回路
における位相シフト量をある範囲で任意に変化させるこ
とができる。このため、発振器において一巡する信号の
位相シフト量が0°となる周波数を変えることができ、
上述した発振器の発振周波数を任意に変更することがで
きる。
【0207】また、図32に示したインダクタンス変換
回路17cは、2つのオペアンプ262、264を含む
増幅器全体の利得が1以下に設定されているため、全体
をエミッタホロワ回路あるいはソースホロワ回路に置き
換えるようにしてもよい。
【0208】なお、この発明は上述した各種の実施形態
に限定されるものではなく、この発明の要旨の範囲内で
種々の変形実施が可能である。
【0209】例えば、上述した実施形態の発振器1等に
は2つの移相回路が含まれているが、発振周波数を可変
する場合には、両方の移相回路に含まれるCR回路ある
いはLR回路を構成する抵抗とキャパシタあるいはイン
ダクタの少なくとも1つの素子定数を変える場合の他、
一方の移相回路に含まれるCR回路あるいはLR回路を
構成する抵抗とキャパシタあるいはインダクタの少なく
とも1つの素子定数を変える場合が考えられる。また、
全ての抵抗やキャパシタあるいはインダクタの各素子定
数を固定して、発振周波数が固定の発振器を構成するこ
ともできる。
【0210】また、上述した各実施形態においては、発
振器を構成する一方の移相回路10C、10L等を接合
型のFETを用いて構成したが、MOS型のFETによ
り、あるいはバイポーラトランジスタによって移相回路
を構成するようにしてもよい。
【0211】FETをバイポーラトランジスタに置き換
えた移相回路においては、入力信号がベースに入力され
たときにベース・エミッタ間で電流が流れるため、エミ
ッタに現れる電圧(交流電圧)とコレクタに現れる電圧
(交流電圧)とは正確には同じにはならない。但し、電
流増幅度が数十倍から百倍程度である場合には、その差
は1%から数%であり、事実上無視することができる。
あるいは、エミッタ抵抗よりコレクタ抵抗を若干大きく
設定することにより、この差を補正するようにしてもよ
い。
【0212】特に、バイポーラトランジスタを用いて移
相回路を構成した場合には、動作周波数の上限を高くす
ることができ、また、ベース・エミッタ間の電位差がF
ETのゲート・ソース間の電位差よりも小さいため移相
回路に入出力される信号振幅の減衰を少なくすることが
できる。したがって、バイポーラトランジスタを用いて
構成した移相回路は、発振器の前段に用いる場合に適し
ている。
【0213】また、上述した各実施形態においては、発
振器を構成する一方の移相回路110C、110L等を
オペアンプを用いて構成することにより安定度を高める
ことができるが、各実施形態のような使い方をする場合
にはオフセット電圧や電圧利得はそれほど高性能なもの
が要求されないため、所定の増幅度を有する差動入力増
幅器を各移相回路内のオペアンプの代わりに使用するよ
うにしてもよい。
【0214】図33は、オペアンプの構成の中で各実施
形態の移相回路の動作に必要な部分を抽出した回路図で
あり、全体が所定の増幅度を有する差動入力増幅器とし
て動作する。同図に示す差動入力増幅器は、FETによ
り構成された差動入力段300と、この差動入力段30
0に定電流を与える定電流回路302と、定電流回路3
02に所定のバイアス電圧を与えるバイアス回路304
と、差動入力段300に接続された出力アンプ306と
によって構成されている。同図に示すように、実際のオ
ペアンプに含まれている電圧利得を稼ぐための多段増幅
回路を省略して、差動入力増幅器の構成を簡略化し、広
帯域化を図ることができる。このように、回路の簡略化
を行うことにより、動作周波数の上限を高くすることが
できるため、その分この差動入力増幅器を用いて構成し
た発振器1等の動作周波数の上限を高くすることができ
る。
【0215】また、上述した各実施形態においては、発
振器を構成する2つの移相回路と非反転回路50の中の
1つの回路から正弦波信号を取り出すようにしたが、発
振器を構成する3つの回路の中の複数から正弦波信号を
取り出すようにしてもよい。特に、発振器を構成する2
つの移相回路の各時定数を同じに設定した場合には、各
移相回路における位相シフト量が90°となるため、互
いに位相が90°ずれた2相出力を取り出すことができ
る。
【0216】
【発明の効果】上述したように、各請求項に係る発明に
おいては、第1および第2の移相回路のそれぞれにおい
て入出力信号の振幅が変化せずに位相のみがキャパシタ
等の素子定数に応じて所定量シフトされており、2つの
移相回路の全体により位相シフト量の合計が0°となる
ような周波数で発振動作が行われる。
【0217】特に、上述した移相回路に含まれる差動入
力増幅器を演算増幅器とした場合には、移相回路の動作
を安定させることができる。
【0218】また、移相回路に含まれるキャパシタやイ
ンダクタあるいはこれらの素子と直列に接続された抵抗
の各素子定数を変化させることにより、各移相回路にお
ける位相シフト量が変わるため、2つの移相回路の全体
により位相シフト量の合計が0°となる周波数、すなわ
ち発振周波数を任意に変化させることができる。特に、
従来のLC共振を利用した発振器においては、発振周波
数ωが1/√LCであるから、発振周波数を調整するた
めに静電容量CまたはインダクタンスLを変化させる
と、発振周波数はその変化量の平方根に比例して変化す
るが、この発明の発振器では発振周波数ωが例えば1/
(CR)であって、発振周波数は抵抗値Rあるいは静電
容量Cに比例して変化させることができるので、発振周
波数の大幅な変更および調整が可能となる。
【0219】また、抵抗値を変化させる場合にはFET
のソース・ドレイン間抵抗を利用し、キャパシタの静電
容量を変化させる場合には可変容量ダイオード等の素子
を利用することができ、これらは半導体基板上に形成す
る場合に適している。さらに、インダクタについては、
半導体基板上に形成された相互に磁気結合した2本の電
極において、一方の電極に流す直流バイアス電流の大き
さを変えることにより他方の電極が有するインダクタン
スを直接変化させることができ、この場合も可変インダ
クタを半導体基板上に形成する場合に適している。
【0220】また、上述したように発振周波数を変化さ
せるには、抵抗等の素子定数を連続的に変化させる場合
のほか、複数の抵抗等をスイッチ切り換えにより選択的
に用いてもよい。
【0221】また、移相回路に含まれるキャパシタやイ
ンダクタは、キャパシタ素子あるいはインダクタ素子と
増幅器とを並列接続した回路に置き換えることにより、
実際にキャパシタ素子が有する静電容量やインダクタ素
子が有するインダクタンスを見かけ上大きくみせること
ができる。したがって、実際には少ない占有面積でキャ
パシタ素子やインダクタ素子を形成しておいて、これら
の静電容量やインダクタンスを大きな値に変換すること
ができ、半導体基板の占有面積を少なくすることができ
る。
【0222】また、各請求項の発振器を構成する各素子
は集積回路の製法によって形成することが可能であるか
ら、発振器を半導体ウエハ上に集積回路として小型に形
成でき、大量生産によって安価に作ることができる。
【0223】特に、各移相回路におけるCR回路の可変
抵抗としてFETのソース・ドレイン間のチャネルを使
用し、このFETのゲートに印加する制御電圧を変化さ
せてチャネルの抵抗を変化させるように構成すると、制
御電圧を印加する配線のインダクタンスや静電容量の影
響を回避することができ、ほぼ設計どおりの理想的な特
性を備えた発振器を得ることができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】この発明を適用した第1の実施形態の発振器の
構成を示す回路図である。
【図2】図1に示した前段の移相回路の構成を抜き出し
て示した回路図である。
【図3】前段の移相回路の入出力電圧とキャパシタ等に
現れる電圧との関係を示すベクトル図である。
【図4】図1に示した後段の移相回路の構成を抜き出し
て示した回路図である。
【図5】後段の位相回路の入出力電圧とキャパシタ等に
現れる電圧との関係を示すベクトル図である。
【図6】2つの移相回路の全体を所定の伝達関数を有す
る回路に置き換えたシステム図である。
【図7】図6に示すシステムをミラーの定理によって変
換したシステム図である。
【図8】移相回路の他の例を示す回路図である。
【図9】図8に示す移相回路の入出力電圧とインダクタ
等に現れる電圧との関係を示すベクトル図である。
【図10】移相回路の他の例を示す回路図である。
【図11】図10に示す移相回路の入出力電圧とインダ
クタ等に現れる電圧との関係を示すベクトル図である。
【図12】この発明を適用した第2の実施形態の発振器
の構成を示す回路図である。
【図13】図12に示した前段の移相回路の構成を抜き
出して示した回路図である。
【図14】前段の移相回路の入出力電圧とインダクタ等
に現れる電圧との関係を示すベクトル図である。
【図15】図12に示した後段の移相回路の構成を抜き
出して示した回路図である。
【図16】後段の移相回路の入出力電圧とキャパシタ等
に現れる電圧との関係を示すベクトル図である。
【図17】移相回路の他の例を示す回路図である。
【図18】図17に示す移相回路の入出力電圧とインダ
クタ等に現れる電圧との関係を示すベクトル図である。
【図19】移相回路の他の例を示す回路図である。
【図20】図19に示す移相回路の入出力電圧とインダ
クタ等に現れる電圧との関係を示すベクトル図である。
【図21】移相回路と非反転回路との接続形態を示す図
である。
【図22】移相回路の可変抵抗をFETに置き換えた移
相回路の構成を示す図である。
【図23】移相回路のキャパシタを可変容量ダイオード
に置き換えた移相回路の構成を示す図である。
【図24】移相回路のインダクタを可変インダクタに置
き換えた移相回路の構成を示す図である。
【図25】可変インダクタの一例を示す図である。
【図26】図25に示した可変インダクタのインダクタ
導体および制御用導体の形状をさらに詳細に示す図であ
る。
【図27】図26のA−A線拡大断面図である。
【図28】可変インダクタの他の例を示す図である。
【図29】キャパシタが実際に有する静電容量を見かけ
上大きくする静電容量変換回路の構成を示す図である。
【図30】図29に示した回路を伝達関数を用いて表し
た図である。
【図31】図30に示す構成をミラーの定理によって変
換した図である。
【図32】インダクタが実際に有するインダクタンスを
見かけ上大きくするインダクタンス変換回路の構成を示
す図である。
【図33】オペアンプの構成の中でこの発明の移相回路
の動作に必要な部分を抽出した回路図である。
【図34】従来の正弦波発振器の一例を示す回路図であ
る。
【図35】従来の正弦波発振器の一例を示す回路図であ
る。
【符号の説明】
1 発振器 10C、130C 移相回路 12 FET 14、134 キャパシタ 16、136 可変抵抗 18、20、138、140 抵抗 50 非反転回路 52、132 オペアンプ 70 帰還抵抗

Claims (24)

    【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】 入力される交流信号を同相および逆相の
    交流信号に変換して出力する変換手段と、前記変換手段
    によって変換された一方の交流信号を第1のキャパシタ
    を介して他方の交流信号を第1の抵抗を介して合成する
    合成手段とを含む第1の移相回路と、 反転入力端子に第2の抵抗の一方端が接続された差動入
    力増幅器と、前記差動入力増幅器の反転入力端子と出力
    端子との間に接続された第3の抵抗と、前記第2の抵抗
    の他方端に接続された第4の抵抗および第2のキャパシ
    タからなる直列回路とを含み、前記第4の抵抗および前
    記第2のキャパシタの接続部を前記差動入力増幅器の非
    反転入力端子に接続した第2の移相回路と、 入力される交流信号の位相を変えずに所定の増幅度で増
    幅して出力する非反転回路と、 を備え、前記第1および第2の移相回路と前記非反転回
    路のそれぞれを縦続接続し、これら縦続接続された複数
    の回路の中の最終段の出力を初段の入力側に帰還させる
    とともに、これら複数の回路のいずれかから正弦波発振
    出力を取り出すことを特徴とする発振器。
  2. 【請求項2】 入力される交流信号を同相および逆相の
    交流信号に変換して出力する変換手段と、前記変換手段
    によって変換された一方の交流信号を第1のインダクタ
    を介して他方の交流信号を第1の抵抗を介して合成する
    合成手段とを含む第1の移相回路と、 反転入力端子に第2の抵抗の一方端が接続された差動入
    力増幅器と、前記差動入力増幅器の反転入力端子と出力
    端子との間に接続された第3の抵抗と、前記第2の抵抗
    の他方端に接続された第4の抵抗および第2のインダク
    タからなる直列回路とを含み、前記第4の抵抗および前
    記第2のインダクタの接続部を前記差動入力増幅器の非
    反転入力端子に接続した第2の移相回路と、 入力される交流信号の位相を変えずに所定の増幅度で増
    幅して出力する非反転回路と、 を備え、前記第1および第2の移相回路と前記非反転回
    路のそれぞれを縦続接続し、これら縦続接続された複数
    の回路の中の最終段の出力を初段の入力側に帰還させる
    とともに、これら複数の回路のいずれかから正弦波発振
    出力を取り出すことを特徴とする発振器。
  3. 【請求項3】 入力される交流信号を同相および逆相の
    交流信号に変換して出力する変換手段と、前記変換手段
    によって変換された一方の交流信号をキャパシタを介し
    て他方の交流信号を第1の抵抗を介して合成する合成手
    段とを含む第1の移相回路と、 反転入力端子に第2の抵抗の一方端が接続された差動入
    力増幅器と、前記差動入力増幅器の反転入力端子と出力
    端子との間に接続された第3の抵抗と、前記第2の抵抗
    の他方端に接続された第4の抵抗およびインダクタから
    なる直列回路とを含み、前記第4の抵抗および前記イン
    ダクタの接続部を前記差動入力増幅器の非反転入力端子
    に接続した第2の移相回路と、 入力される交流信号の位相を変えずに所定の増幅度で増
    幅して出力する非反転回路と、 を備え、前記第1および第2の移相回路と前記非反転回
    路のそれぞれを縦続接続し、これら縦続接続された複数
    の回路の中の最終段の出力を初段の入力側に帰還させる
    とともに、これら複数の回路のいずれかから正弦波発振
    出力を取り出すことを特徴とする発振器。
  4. 【請求項4】 入力される交流信号を同相および逆相の
    交流信号に変換して出力する変換手段と、前記変換手段
    によって変換された一方の交流信号をインダクタを介し
    て他方の交流信号を第1の抵抗を介して合成する合成手
    段とを含む第1の移相回路と、 反転入力端子に第2の抵抗の一方端が接続された差動入
    力増幅器と、前記差動入力増幅器の反転入力端子と出力
    端子との間に接続された第3の抵抗と、前記第2の抵抗
    の他方端に接続された第4の抵抗およびキャパシタから
    なる直列回路とを含み、前記第4の抵抗および前記キャ
    パシタの接続部を前記差動入力増幅器の非反転入力端子
    に接続した第2の移相回路と、 入力される交流信号の位相を変えずに所定の増幅度で増
    幅して出力する非反転回路と、 を備え、前記第1および第2の移相回路と前記非反転回
    路のそれぞれを縦続接続し、これら縦続接続された複数
    の回路の中の最終段の出力を初段の入力側に帰還させる
    とともに、これら複数の回路のいずれかから正弦波発振
    出力を取り出すことを特徴とする発振器。
  5. 【請求項5】 請求項1〜4のいずれかにおいて、 前記2つの移相回路および前記非反転回路から2相出力
    を取り出すことを特徴とする発振器。
  6. 【請求項6】 請求項1〜5のいずれかにおいて、 前記第1および第2の移相回路のいずれか一方では入力
    電圧に対して出力電圧が進み位相であり、いずれか他方
    では入力電圧に対して出力電圧が遅れ位相であり、前記
    第1および第2の移相回路の合計の移相量が0°となる
    周波数で発振することを特徴とする発振器。
  7. 【請求項7】 請求項1〜6のいずれかにおいて、 前記差動入力増幅器は演算増幅器であることを特徴とす
    る発振器。
  8. 【請求項8】 請求項1〜7のいずれかにおいて、 前記第1の移相回路に含まれる前記第1の抵抗および前
    記第2の移相回路に含まれる前記第4の抵抗の少なくと
    も一方を可変抵抗により形成し、この抵抗値を変えるこ
    とにより、発振周波数を変化させることを特徴とする発
    振器。
  9. 【請求項9】 請求項8において、 前記可変抵抗をFETのチャネルによって形成し、ゲー
    ト電圧を変えてチャネル抵抗を変えることを特徴とする
    発振器。
  10. 【請求項10】 請求項8において、 前記可変抵抗をpチャネル型のFETとnチャネル型の
    FETとの各ソース・ドレイン間を並列接続することに
    より形成し、各ゲート電圧の大きさを変えてチャネル抵
    抗を変えることを特徴とする発振器。
  11. 【請求項11】 請求項1、3、4のいずれかにおい
    て、 前記第1および第2の移相回路の少なくとも一方に含ま
    れる前記キャパシタを可変容量素子により形成し、この
    静電容量を変えることにより、発振周波数を変化させる
    ことを特徴とする発振器。
  12. 【請求項12】 請求項11において、 前記可変容量素子を逆バイアス電圧が変更可能な可変容
    量ダイオード、あるいはゲート電圧可変によってゲート
    容量が変更可能なFETによって形成することを特徴と
    する発振器。
  13. 【請求項13】 請求項2〜4のいずれかにおいて、 前記第1および第2の移相回路の少なくとも一方に含ま
    れる前記インダクタが有するインダクタンスを変えるこ
    とにより、発振周波数を変化させることを特徴とする発
    振器。
  14. 【請求項14】 請求項13において、 前記インダクタは、半導体基板上に形成されており、磁
    性体を介して相互に磁気結合した2本の渦巻き形状の電
    極を有しており、一方の電極に流す直流バイアス電流の
    大きさを変えることにより、他方の電極が有するインダ
    クタンスを変化させることを特徴とする発振器。
  15. 【請求項15】 請求項13において、 前記インダクタは、 基板上にほぼ平面状に渦巻き形状に形成されたインダク
    タ導体と、 前記基板上であって前記インダクタ導体とほぼ同心状に
    形成されており、所定の直流バイアス電流が流される制
    御用導体と、 前記インダクタ導体と前記制御用導体とを覆うように形
    成された磁性体と、 を備え、前記制御用導体に流す直流バイアス電流を変え
    て前記インダクタ導体の両端に現れるインダクタンスを
    変化させることを特徴とする発振器。
  16. 【請求項16】 請求項13において、 前記インダクタは、 基板上にほぼ平面状に渦巻き形状に形成されたインダク
    タ導体と、 前記基板上であって前記インダクタ導体に隣接する位置
    にほぼ平面状で渦巻き形状に形成されており、所定の直
    流バイアス電流が流される制御用導体と、 前記インダクタ導体と前記制御用導体の各渦巻き中心を
    貫通するように環状に形成された磁性体と、 を備え、前記制御用導体に流す直流バイアス電流を変え
    て前記インダクタ導体の両端に現れるインダクタンスを
    変化させることを特徴とする発振器。
  17. 【請求項17】 請求項1〜7のいずれかにおいて、 前記第1の移相回路に含まれる前記第1の抵抗と前記第
    2の移相回路に含まれる前記第4の抵抗の少なくとも一
    方を、抵抗値が固定の複数の抵抗に置き換えて、スイッ
    チ切り換えにより選択的に接続することにより、発振周
    波数を変化させることを特徴とする発振器。
  18. 【請求項18】 請求項1、3、4のいずれかにおい
    て、 前記第1および第2の移相回路の少なくとも一方に含ま
    れる前記キャパシタを、静電容量が固定の複数のキャパ
    シタに置き換えて、スイッチ切り換えにより選択的に接
    続することにより、発振周波数を変化させることを特徴
    とする発振器。
  19. 【請求項19】 請求項2〜4のいずれかにおいて、 前記第1および第2の移相回路の少なくとも一方に含ま
    れる前記インダクタを、インダクタンスが固定の複数の
    インダクタに置き換えて、スイッチ切り換えにより選択
    的に接続することにより、発振周波数を変化させること
    を特徴とする発振器。
  20. 【請求項20】 請求項1、3、4のいずれかにおい
    て、 前記第1および第2の移相回路の少なくとも一方に含ま
    れる前記キャパシタを、利得が負の値を有する増幅器
    と、前記増幅器の入出力間に並列接続されたキャパシタ
    素子に置き換えることにより、前記増幅器の入力側から
    みた静電容量を実際に前記キャパシタ素子が有する静電
    容量よりも大きくすることを特徴とする発振器。
  21. 【請求項21】 請求項20において、 前記増幅器の利得を可変して前記増幅器の入力側からみ
    た静電容量を変えることにより、発振周波数を変化させ
    ることを特徴とする発振器。
  22. 【請求項22】 請求項2〜4のいずれかにおいて、 前記第1および第2の移相回路の少なくとも一方に含ま
    れる前記インダクタを、利得を0から1の間に設定した
    増幅器と、前記増幅器の入出力間に並列接続されたイン
    ダクタ素子に置き換えることにより、前記増幅器の入力
    側からみたインダクタンスを実際に前記インダクタ素子
    が有するインダクタンスよりも大きくすることを特徴と
    する発振器。
  23. 【請求項23】 請求項22において、 前記増幅器の利得を可変して前記増幅器の入力側からみ
    たインダクタンスを変えることにより、発振周波数を変
    化させることを特徴とする発振器。
  24. 【請求項24】 請求項1〜23のいずれかにおいて、 半導体集積回路として形成することを特徴とする発振
    器。
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Cited By (1)

* Cited by examiner, † Cited by third party
Publication number Priority date Publication date Assignee Title
EP1362411B1 (en) * 2001-02-13 2007-04-11 Telefonaktiebolaget LM Ericsson (publ) Oscillators with active higher-in-order phase shift filtering

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