JP3625526B2 - 同調増幅器 - Google Patents
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Description
【0001】
【産業上の利用分野】
この発明は、同調周波数と最大減衰量とを互いに干渉することなく、任意に調整し得る同調増幅器に関する。
【0002】
【従来の技術】
同調増幅器として従来より能動素子およびリアクタンス素子を使用した各種の増幅回路が提案され実用化されている。
【0003】
【発明が解決しようとする課題】
従来の同調増幅器においては、同調周波数を調整すると、LC回路に依存するQと利得が変化し、最大減衰量を調整すると同調周波数が変化したり、また、図24の特性曲線AおよびBに示すように、最大減衰量を調整すると同調周波数における利得が変化するので、同調周波数、同調周波数における利得、最大減衰量C1、C2を互いに干渉しあうことなく調整することは極めて困難であった。
【0004】
さらに、同調周波数および最大減衰量を調整し得る同調増幅器を集積回路によって形成することも困難であった。
【0005】
そこで、この発明は、このような課題を解決するために考えられたものである。
【0006】
【課題を解決するための手段】
上述した課題を解決するために、この発明の同調増幅器は、
入力信号が一方端に入力される入力側インピーダンス素子と、帰還信号が一方端に入力される帰還側インピーダンス素子とを含んでおり、前記入力信号と前記帰還信号とを加算する加算回路と、
入力される交流信号が両端に印加される抵抗値がほぼ等しい第1および第2の抵抗により構成された第1の直列回路と、前記交流信号が両端に印加される第3の抵抗とキャパシタにより構成された第2の直列回路と、前記第1の直列回路を構成する前記第1および第2の抵抗の接続点の電位と前記第2の直列回路を構成する前記第3の抵抗と前記キャパシタの接続点の電位との差分を所定の増幅度で増幅して出力する差動増幅器とを含む2つの移相回路と、
を備え、前記2つの移相回路を縦続接続し、これら縦続接続された2つの移相回路の中の前段の移相回路に対して前記加算回路によって加算された信号を入力するとともに、後段の移相回路から出力される信号を前記帰還信号として前記帰還側インピーダンス素子の一方端に入力し、これら2つの移相回路のいずれかの出力を同調信号として取り出すことを特徴とする。
【0007】
また、この発明の同調増幅器は、
入力端子に入力される交流信号が一方端に入力される入力側インピーダンス素子と、帰還信号が一方端に入力される帰還側インピーダンス素子とを含んでおり、前記入力端子に入力される交流信号と前記帰還信号とを加算する加算回路と、入力される交流信号が両端に印加される抵抗値がほぼ等しい第1および第2の抵抗により構成された第1の直列回路と、前記交流信号が両端に印加される第3の抵抗とキャパシタにより構成された第2の直列回路と、前記第1の直列回路を構成する前記第1および第2の抵抗の接続点の電位と前記第2の直列回路を構成する前記第3の抵抗と前記キャパシタの接続点の電位との差分を所定の増幅度で増幅して出力する差動増幅器とを含む2つの移相回路と、
入力される交流信号の位相を変えずに出力する非反転回路と、
を備え、前記2つの移相回路および前記非反転回路のそれぞれを縦続接続し、これら縦続接続された複数の回路の中の初段の回路に対して前記加算回路によって加算された信号を入力するとともに、最終段の回路から出力される信号を前記帰還信号として前記帰還側インピーダンス素子の一方端に入力し、これら複数の回路のいずれかの出力を同調信号として取り出すことを特徴とする。
【0008】
また、この発明の同調増幅器は、
入力端子に入力される交流信号が一方端に入力される入力側インピーダンス素子と、帰還信号が一方端に入力される帰還側インピーダンス素子とを含んでおり、前記入力端子に入力される交流信号と前記帰還信号とを加算する加算回路と、入力される交流信号が両端に印加される抵抗値がほぼ等しい第1および第2の抵抗により構成された第1の直列回路と、前記交流信号が両端に印加される第3の抵抗とキャパシタにより構成された第2の直列回路と、前記第1の直列回路を構成する前記第1および第2の抵抗の接続点の電位と前記第2の直列回路を構成する前記第3の抵抗と前記キャパシタの接続点の電位との差分を所定の増幅度で増幅して出力する差動増幅器とを含む2つの移相回路と、
入力される交流信号の位相を反転して出力する位相反転回路と、
を備え、前記2つの移相回路および前記位相反転回路のそれぞれを縦続接続し、これら縦続接続された複数の回路の中の初段の回路に対して前記加算回路によって加算された信号を入力するとともに、最終段の回路から出力される信号を前記帰還信号として前記帰還側インピーダンス素子の一方端に入力し、これら複数の回路のいずれかの出力を同調信号として取り出すことを特徴とする。
【0009】
また、この発明の同調増幅器は、
入力側インピーダンス素子を介して入力された交流信号を同相で出力する非反転回路と、
2つの抵抗の直列接続およびキャパシタと抵抗との直列接続よりなり、前記非反転回路の出力が印加される第1のブリッジ回路と、前記第1のブリッジ回路の2つの出力の差を得る第1の差動増幅器とを有し、前記第1のブリッジ回路に入力された信号を移相する第1の移相回路と、
2つの抵抗の直列接続および抵抗とキャパシタとの直列接続よりなり、前記第1の移相回路の出力が印加される第2のブリッジ回路と、前記第2のブリッジ回路の2つの出力の差を得る第2の差動増幅器とを有し、前記第2のブリッジ回路に入力された信号を前記第1の移相回路とは反対方向に移相する第2の移相回路と、
前記第2の移相回路の出力を帰還側インピーダンス素子を介して前記非反転回路の入力へ帰還する回路と、
を備えることを特徴とする。
【0010】
また、この発明の同調増幅器は、
入力抵抗を介して入力された交流信号を反転して出力する位相反転回路と、
2つの抵抗の直列接続およびキャパシタと抵抗との直列接続よりなり、前記位相反転回路の出力が印加される第1のブリッジ回路と、前記第1のブリッジ回路の2つの出力の差を得る第1の差動増幅器とを有し、前記第1のブリッジ回路に入力された信号を移相する第1の移相回路と、
2つの抵抗の直列接続およびキャパシタと抵抗との直列接続よりなり、前記第1の移相回路の出力が印加される第2のブリッジ回路と、前記第2のブリッジ回路の2つの出力の差を得る第2の差動増幅器とを有し、前記第2のブリッジ回路に入力された信号を前記第1の移相回路と同じ方向に移相する第2の移相回路と、
前記第2の移相回路の出力を帰還抵抗を介して前記位相反転回路の入力へ帰還する回路と、
を備えることを特徴とする。
【0011】
【実施例】
以下、この発明を適用した一実施例の同調増幅器について、図面を参照しながら具体的に説明する。
【0012】
(第1実施例)
図1は、この発明を適用した第1実施例の同調増幅器の構成を示す回路図である。同図に示す同調増幅器1は、入力信号の位相を変えずに出力する非反転回路50と、それぞれが入力信号の位相を所定量シフトさせることにより所定の周波数において合計で0°の位相シフトを行う2つの移相回路10、30と、帰還抵抗70および入力抵抗74(入力抵抗74は帰還抵抗70の抵抗値のn倍の抵抗値を有しているものとする)のそれぞれを介することにより後段の移相回路30から出力される信号(帰還信号)と入力端子90に入力される信号(入力信号)とを所定の割合で加算する加算回路とを含んで構成されている。なお、非反転回路50はバッファ回路として機能するものであるが、同調増幅器の基本動作のみに着目した場合には省略してもよい。
【0013】
図2は、図1に示した前段の移相回路10の構成を抜き出して示したものである。同図に示す前段の移相回路10は、2入力の差分電圧を所定の増幅度(例えば約2倍)で増幅して出力する差動増幅器12と、入力端22に入力された信号の位相を所定量シフトさせて差動増幅器12の非反転入力端子に入力するキャパシタ14および可変抵抗16と、入力端22に入力された信号の位相を変えずにその電圧レベルを約1/2に分圧して差動増幅器12の反転入力端子に入力する抵抗18および20とを含んで構成されている。なお、可変抵抗16と抵抗20の接続点が接地されている場合を考えて以下の説明を行うものとする。
【0014】
このような構成を有する移相回路10において、所定の交流信号が入力端22に入力されると、差動増幅器12の反転入力端子には、入力端22に印加される電圧(入力電圧Ei)を抵抗18と抵抗20とによって分圧した電圧が印加される。抵抗18および20の各抵抗値はほぼ等しく設定されており、これら2つの抵抗18、20の直列回路により構成される分圧回路によって約1/2に分圧された電圧Ei/2が差動増幅器12の反転入力端子に印加される。
【0015】
一方、入力信号が入力端22に入力されると、差動増幅器12の非反転入力端子には、キャパシタ14と可変抵抗16の接続点に現れる信号が入力される。キャパシタ14と可変抵抗16により構成されるCR回路(直列回路)の一方端には入力信号が入力されているため、入力信号の位相をこのCR回路によって所定量シフトした信号の電圧が差動増幅器12の非反転入力端子には印加される。
【0016】
差動増幅器12は、このようにして2つの入力端子に印加される電圧の差分を所定の増幅度、例えば約2倍に増幅した信号を出力する。
【0017】
図3は、移相回路10の入出力電圧とキャパシタ等に現れる電圧との関係を示すベクトル図である。
【0018】
同図に示すように、可変抵抗16の両端に現れる電圧VR1とキャパシタ14の両端に現れる電圧VC1は、互いに位相が90°ずれており、これらをベクトル的に合成(加算)したものが入力電圧Eiとなる。したがって、入力信号の振幅が一定で周波数のみが変化した場合には、図3に示す半円の円周に沿って可変抵抗16の両端電圧VR1とキャパシタ14の両端電圧VC1とが変化する。
【0019】
また、差動増幅器12の非反転入力端子に印加される電圧(可変抵抗16の両端電圧VR1)から反転入力端子に印加される電圧(抵抗20の両端電圧Ei/2)をベクトル的に減算したものが差分電圧Eo′となる。この差分電圧Eo′は、図3に示した半円において、その中心点を始点とし、電圧VR1と電圧VC1とが交差する円周上の一点を終点とするベクトルで表すことができ、その大きさは半円の半径Ei/2に等しくなる。実際には、差動増幅器12はこの差分電圧Eo′を2倍に増幅しており、出力電圧Eo=Eo′×2=Eiとなる。したがって、この実施例の移相回路10において、入力信号の振幅と出力信号の振幅とは等しく、入出力信号間で信号の減衰が生じないことがわかる。
【0020】
また、図3から明らかなように、電圧VR1と電圧VC1とは円周上で直角に交わるため、入力電圧Eiと電圧VR1との位相差は、周波数ωが0から∞まで変化するに従って90°から0°まで変化する。そして、移相回路10全体の位相シフト量φ1はその2倍であり、周波数に応じて180°から0°まで変化する。
【0021】
次に、上述した入出力電圧間の関係を定量的に検証する。
【0022】
図4は、前段の移相回路10を等価的に表した図であり、差動増幅器12の入力側に設けられた2つの直列回路に対応する構成が示されている。
【0023】
抵抗18および20により構成される直列回路の両端には入力電圧Eiが印加されるため、抵抗18、20のそれぞれは電圧Ei/2を発生する2つの電圧源27、28に置き換えて考えることができる。このとき、図4に示す等価回路の閉ループに流れる電流Iは、キャパシタ14の静電容量をC、可変抵抗16の抵抗値をRとすると、
【数1】
となる。ここで、図4に示す2点間の電位差(差分)Eo′を求めると、
【数2】
となる。上述した(2)式に(1)式を代入して計算すると、
【数3】
となる。また、この実施例の移相回路10の出力電圧Eoは、上述した差分Eo′を2倍したものであるから、
【数4】
となる。ここで、キャパシタ14と可変抵抗16からなるCR回路の時定数をT(=CR)とした。
【0024】
この(4)式においてs=jωを代入して変形すると、
【数5】
となる。(5)式から出力電圧Eoの絶対値を求めると、
【数6】
となる。すなわち、(6)式は、この実施例の移相回路10は入出力間の位相がどのように回転しても、その出力信号の振幅は入力信号の振幅に等しく一定であることを表している。
【0025】
また、(5)式から出力電圧Eoの入力電圧Eiに対する位相シフト量φ1を求めると、
【数7】
となる。この(7)式から、例えばωがほぼ1/T(=1/(CR))となるような周波数における位相シフト量φ1はほぼ90°となり、入力信号の振幅を減衰させることなく位相のみをほぼ90°シフトさせることができる。しかも、可変抵抗16の抵抗値Rを可変することにより、位相シフト量φ1がほぼ90°となる周波数ωを変化させることができる。
【0026】
図5は、図1に示した後段の移相回路30の構成を抜き出して示したものである。同図に示す後段の移相回路30は、2入力の差分電圧を所定の増幅度(例えば約2倍)で増幅して出力する差動増幅器32と、入力端42に入力された信号の位相を所定量シフトさせて差動増幅器32の非反転入力端子に入力する可変抵抗36およびキャパシタ34と、入力端42に入力された信号の位相を変えずにその電圧レベルを約1/2に分圧して差動増幅器32の反転入力端子に入力する抵抗38および40とを含んで構成されている。
【0027】
このような構成を有する移相回路30において、所定の交流信号が入力端42に入力されると、差動増幅器32の反転入力端子には、入力端42に印加される電圧(入力電圧Ei)を抵抗38と抵抗40とによって分圧した電圧が印加される。抵抗38および40の各抵抗値はほぼ等しく設定されており、これら2つの抵抗38、40の直列回路により構成される分圧回路によって約1/2に分圧された電圧Ei/2が差動増幅器32の反転入力端子に印加される。
【0028】
一方、入力信号が入力端42に入力されると、差動増幅器32の非反転入力端子には、可変抵抗36とキャパシタ34の接続点に現れる信号が入力される。可変抵抗36とキャパシタ34により構成されるCR回路(直列回路)の一方端には入力信号が入力されているため、入力信号の位相をこのCR回路によって所定量シフトした信号の電圧が差動増幅器32の非反転入力端子には印加される。
【0029】
差動増幅器32は、このようにして2つの入力端子に印加される電圧の差分を所定の増幅度、例えば約2倍に増幅した信号を出力する。
【0030】
図6は、移相回路30の入出力電圧とキャパシタ等に現れる電圧との関係を示すベクトル図である。
【0031】
同図に示すように、キャパシタ34の両端に現れる電圧VC2と可変抵抗36の両端に現れる電圧VR2は、互いに位相が90°ずれており、これらをベクトル的に合成(加算)したものが入力電圧Eiとなる。したがって、入力信号の振幅が一定で周波数のみが変化した場合には、図6に示す半円の円周に沿ってキャパシタ34の両端電圧VC2と可変抵抗36の両端電圧VR2とが変化する。
【0032】
また、差動増幅器32の非反転入力端子に印加される電圧(キャパシタ34の両端電圧VC2)から反転入力端子に印加される電圧(抵抗40の両端電圧Ei/2)をベクトル的に減算したものが差分電圧Eo′となる。この差分電圧Eo′は、図6に示した半円において、その中心点を始点とし、電圧VC2と電圧VR2とが交差する円周上の一点を終点とするベクトルで表すことができ、その大きさは半円の半径Ei/2に等しくなる。実際には、差動増幅器32はこの差分電圧Eo′を2倍に増幅しており、出力電圧Eo=Eo′×2=Eiとなる。したがって、この実施例の移相回路30において、入力信号の振幅と出力信号の振幅とは等しく、入出力信号間で信号の減衰が生じないことがわかる。
【0033】
また、図6から明らかなように、電圧VC2と電圧VR2とは円周上で直角に交わるため、入力電圧Eiと電圧VC2との位相差は、周波数ωが0から∞まで変化するに従って0°から90°まで変化する。そして、移相回路30全体の位相シフト量φ2はその2倍であり、周波数に応じて0°から180°まで変化する。
【0034】
次に、上述した入出力電圧間の関係を定量的に検証する。
【0035】
図7は、後段の移相回路30を等価的に表した図であり、差動増幅器32の入力側に設けられた2つの直列回路に対応する構成が示されている。
【0036】
抵抗38および40により構成される直列回路の両端には入力電圧Eiが印加されるため、前段の移相回路10の場合と同様に、抵抗38、40のそれぞれは電圧Ei/2を発生する2つの電圧源27、28に置き換えて考えることができる。このとき、図7に示す等価回路の閉ループに流れる電流Iは、可変抵抗36の抵抗値をR、キャパシタ34の静電容量をCとすると、上述した(1)式で表すことができる。
【0037】
ここで、図7に示す2点間の電位差(差分)Eo′を求めると、
【数8】
となる。上述した(8)式に(1)式を代入して計算すると、
【数9】
となる。また、この実施例の移相回路30の出力電圧Eoは、上述した差分Eo′を2倍したものであるから、
【数10】
となる。ここで、移相回路10と同様に、可変抵抗36とキャパシタ34からなるCR回路の時定数をT(=CR)とした。
【0038】
(10)式においてs=jωを代入して変形すると、
【数11】
となる。
【0039】
上述した(10)式および(11)式は、前段の移相回路10について示した(4)式および(5)式と符号のみ異なっている。したがって、出力電圧Eoの絶対値は(6)式をそのまま適用することができ、後段の移相回路30は入出力間の位相がどのように回転しても、その出力信号の振幅は入力信号の振幅に等しく一定であることがわかる。
【0040】
また、(11)式から出力電圧Eoの入力電圧Eiに対する位相シフト量φ2を求めると、
【数12】
となる。この(12)式から、例えばωがほぼ1/T(=1/(CR))となるような周波数における位相シフト量φ2はほぼ90°となり、入力信号の振幅を減衰させることなく位相のみをほぼ90°シフトさせることができる。しかも、可変抵抗36の抵抗値Rを可変することにより、位相シフト量φ2がほぼ90°となる周波数ωを変化させることができる。
【0041】
このようにして、2つの移相回路10、30のそれぞれにおいて位相が所定量シフトされる。しかも、図3および図6に示すように、各移相回路10、30における入出力電圧の相対的な位相関係は反対方向であって、所定の周波数において2つの移相回路10、30の全体により位相シフト量が0°となる信号が出力される。
【0042】
また、後段の移相回路30の出力は、帰還抵抗70を介して移相回路10の前段に設けられた非反転回路50の入力側に帰還されており、この帰還された信号と入力抵抗74を介して入力される信号とが加算される。この加算された信号は、バッファ回路として機能する非反転回路50を介して移相回路10の入力端(図2に示した入力端22)に入力される。
【0043】
このような帰還ループを形成することにより、ある周波数において帰還ループを一巡する信号の位相シフト量が0°となる。このとき、非反転回路50や2つの移相回路10、30の各増幅度を調整して、同調増幅器1全体のループゲインをほぼ1に設定することにより、同調動作が行われる。
【0044】
図8は、上述した構成を有する2つの移相回路10、30および非反転回路50の全体を伝達関数K1を有する回路に置き換えたシステム図であり、伝達関数K1を有する回路と並列に抵抗R0を有する帰還抵抗70が、直列に帰還抵抗70のn倍の抵抗値(nR0)を有する入力抵抗74が接続されている。図9は、図8に示すシステムをミラーの定理によって変換したシステム図であり、変換後のシステム全体の伝達関数Aは、
【数13】
で表すことができる。
【0045】
ところで、(4)式から明らかなように、前段の移相回路10の伝達関数K2は、
【数14】
であり、(10)式から明らかなように、後段の移相回路30の伝達関数K3は、
【数15】
である。したがって、移相回路10、30を2段縦続接続した場合の全体の伝達関数K1は、
【数16】
となる。この(16)式を上述した(13)式に代入すると、
【数17】
となる。
【0046】
この(17)式によれば、ω=0(直流の領域)のときにA=−1/(2n+1)となって、最大減衰量を与えることがわかる。また、ω=∞のときにも最大減衰量を与えることがわかる。さらに、ω=1/Tの同調点(2つの移相回路10、30の各時定数が異なる場合であってそれぞれをT1、T2とした場合には、ω=1/√(T1・T2)の同調点)においてはA=1であって帰還抵抗70と入力抵抗74の抵抗比nに無関係であることがわかる。換言すれば、図10に示すように、nの値を変化させても同調点がずれることなく、かつ同調点の減衰量も変化しない。
【0047】
このように、この実施例の同調増幅器1によれば、帰還抵抗70と入力抵抗74の抵抗比nを変えても同調周波数および同調時の利得が一定であり、最大減衰量のみを変化させることができる。反対に、最大減衰量は上述した抵抗比nによって決定されるため、各移相回路10、30内の可変抵抗16あるいは36の抵抗値を変えて同調周波数を変えた場合であっても、この最大減衰量に影響を与えることはなく、同調周波数、同調周波数における利得、最大減衰量を互いに干渉しあうことなく調整することができる。
【0048】
また、この実施例の同調増幅器1は、差動増幅器やキャパシタあるいは抵抗を組み合わせて構成しており、どの構成素子も半導体基板上に形成することができることから、同調周波数および最大減衰量を調整し得る同調増幅器1の全体を半導体基板上に形成して集積回路とすることも容易である。
【0049】
なお、上述した第1実施例の同調増幅器1では、前段に移相回路10を、後段に移相回路30をそれぞれ配置したが、これらの全体によって入出力信号間の位相シフト量が0°となればよいことから、これらの前後を入れ換えて前段に移相回路30を、後段に移相回路10をそれぞれ配置して同調増幅器を構成するようにしてもよい。
【0050】
(第2実施例)
上述した第1実施例の同調増幅器1は、構成が異なる2つの移相回路10および30を組み合わせて構成したが、同じ構成を有する2つの移相回路を組み合わせて同調増幅器を構成するようにしてもよい。
【0051】
図1に示す同調増幅器1に含まれる一方の移相回路10は図2に示した基本構成を有しており、移相回路10の入力と出力との間には(4)式で表される関係が成立する。以下では、図2に示す構成を有する移相回路10を(4)式中の分数の符号を用いて便宜上「−型の移相回路」と称して説明を行う。また、図1に示す同調増幅器1に含まれる他方の移相回路30は図5に示した基本構成を有しており、移相回路30の入力と出力との間には(10)式で表された関係が成立する。以下では、図5に示す構成を有する移相回路30を(10)式中の分数の符号を用いて便宜上「+型の移相回路」と称して説明を行う。
【0052】
このように各移相回路を便宜上2つのタイプに分類した場合には、第1実施例の同調増幅器1は、タイプが異なる2つの移相回路10および30を組み合わせることにより、全体としての位相シフト量が0°となる周波数において同調動作を行うようになっている。
【0053】
ところで、1つの−型の移相回路10に信号の位相を反転させる位相反転回路を接続した場合のその全体の入出力間の関係に着目すると、(4)式において分数の符号「−」を反転して「+」にすればよく、1つの−型の移相回路に位相反転回路を接続した構成が1つの+型の移相回路に等価であるといえる。同様に、1つの+型の移相回路30に信号の位相を反転させる位相反転回路を接続した場合のその全体の入出力間の関係に着目すると、(10)式において分数の符号「+」を反転して「−」にすればよく、1つの+型の移相回路に位相反転回路を接続した構成が1つの−型の移相回路に等価であるといえる。
【0054】
したがって、第1実施例においてタイプが異なる2つの移相回路10および30を組み合わせて同調増幅器を構成する代わりに、同タイプの2つの移相回路と位相反転回路を組み合わせて同調増幅器を構成することができる。
【0055】
図11は、第2実施例の同調増幅器の構成を示す図である。同図に示す同調増幅器1aは、入力信号の位相を反転する位相反転回路80と、図2に示す−型の2つの移相回路10と、帰還抵抗70および入力抵抗74(入力抵抗74は帰還抵抗70の抵抗値のn倍の抵抗値を有しているものとする)のそれぞれを介することにより後段の移相回路10から出力される信号(帰還信号)と入力端子90に入力される信号(入力信号)とを所定の割合で加算する加算回路とを含んで構成されている。
【0056】
このような構成を有する同調増幅器1aにおいて、ある周波数において2つの移相回路10によって位相が180°シフトされるとともに、位相反転回路80によって位相が反転されるため、全体として信号の位相シフト量が0°となる。例えば、2つの移相回路10内のCR回路の時定数が同じであると仮定し、その値をTとおくと、ω=1/Tの周波数では2つの移相回路10のそれぞれにおける位相シフト量が90°となる。したがって、位相反転回路80によって位相が反転されるとともに、2つの移相回路10の全体によって位相が180°シフトされ、全体として、位相が一巡して位相シフト量が0°となる信号が後段の移相回路10から出力される。
【0057】
また、後段の移相回路10の出力は、帰還抵抗70を介して位相反転回路80の入力側に帰還されており、この帰還された信号と入力抵抗74を介して入力される信号とが加算され、この加算された信号が位相反転回路80に入力されている。
【0058】
このような帰還ループを形成することにより、位相反転回路80によって信号の位相が反転されるとともに、ある周波数において2つの移相回路10によって位相が180°シフトされ、全体として帰還ループを一巡する信号の位相シフト量が0°となる。このとき、位相反転回路80や2つの移相回路10の各増幅度を調整して、同調増幅器1a全体のループゲインをほぼ1に設定することにより、同調動作が行われる。
【0059】
ところで、上述した位相反転回路80および2つの移相回路10を含む第2実施例の同調増幅器1aは、その全体を伝達関数K1を有する回路に置き換えると、第1実施例の場合と同様に、図8に示すシステム図で表すことができる。したがって、ミラーの定理によって変換することにより図9に示すシステム図で表すことができ、変換後のシステム全体の伝達関数Aは(13)式で表すことができる。
【0060】
また、移相回路10の伝達関数K2は(14)式で表されるため、位相反転回路80と2段の移相回路10とを接続した場合の全体の伝達関数K1は、
【数18】
となる。この(18)式で求めた伝達関数K1は、(16)式で求めた第1実施例の同調増幅器1の2つの移相回路10、30の全体の伝達関数K1と同じであり、同調増幅器1aの全体の伝達関数は(17)式に示したAをそのまま適用することができる。
【0061】
したがって、第2実施例の同調増幅器1aは、第1実施例の同調増幅器1と同様の特性を有しており、ω=0(直流の領域)のときにA=−1/(2n+1)となって、最大減衰量を与えることがわかる。また、ω=∞のときにも最大減衰量を与えることがわかる。さらに、ω=1/Tの同調点(2つの移相回路10の各時定数が異なる場合であってそれぞれをT1、T2とした場合には、ω=1/√(T1・T2)の同調点)においてはA=1であって帰還抵抗70と入力抵抗74の抵抗比nに無関係であって、図10に示すようにnの値を変化させても同調点がずれることなく、かつ同調点の減衰量も変化しない。
【0062】
このように、この実施例の同調増幅器1aによれば、帰還抵抗70と入力抵抗74の抵抗比nを変えても同調周波数および同調時の利得が一定であり、最大減衰量のみを変化させることができる。反対に、最大減衰量は上述した抵抗比nによって決定されるため、各移相回路10内の可変抵抗16の抵抗値を変えて同調周波数を変えた場合であっても、この最大減衰量に影響を与えることはなく、同調周波数、同調周波数における利得、最大減衰量を互いに干渉しあうことなく調整することができる。
【0063】
また、第1実施例の同調増幅器1と同様にこの実施例の同調増幅器1aは、差動増幅器やキャパシタあるいは抵抗を組み合わせて構成しており、どの構成素子も半導体基板上に形成することができることから、同調周波数および最大減衰量を調整し得る同調増幅器1aの全体を半導体基板上に形成して集積回路とすることも容易である。
【0064】
(第3実施例)
上述した第2実施例の同調増幅器1aでは−型の2つの移相回路10を接続した場合を説明したが、+型の移相回路30を2段接続することにより同調増幅器を構成するようにしてもよい。
【0065】
図12は、第3実施例の同調増幅器の構成を示す図である。同図に示す同調増幅器1bは、入力信号の位相を反転する移相反転回路80と、図5に示す+型の2つの移相回路30と、帰還抵抗70および入力抵抗74(入力抵抗74は帰還抵抗70の抵抗値のn倍の抵抗値を有しているものとする)のそれぞれを介することにより後段の移相回路30から出力される信号(帰還信号)と入力端子90に入力される信号(入力信号)とを所定の割合で加算する加算回路とを含んで構成されている。
【0066】
上述した第1実施例で説明したように、+型の2つの移相回路30のそれぞれは、入力信号の周波数ωが0から∞まで変化するにしたがって位相シフト量が0°から180°まで変化する。例えば、2つの移相回路30内のCR回路の時定数が同じであると仮定し、その値をTとおくと、ω=1/Tの周波数では2つの移相回路30のそれぞれにおける位相シフト量が90°となる。したがって、2つの移相回路30の全体によって位相が180°シフトされるとともに、前段に設けられた位相反転回路80によって位相が反転されるため、全体として、位相が一巡して位相シフト量が0°となる信号が後段の移相回路30から出力される。
【0067】
また、後段の移相回路30の出力は、帰還抵抗70を介して位相反転回路80の入力側に帰還されており、この帰還された信号と入力抵抗74を介して入力される信号とが加算され、この加算された信号が位相反転回路80に入力されている。
【0068】
このような帰還ループを形成することにより、位相反転回路80によって信号の位相が反転されるとともに、ある周波数において2つの移相回路30によって位相が180°シフトされ、全体として帰還ループを一巡する信号の位相シフト量が0°となる。このとき、位相反転回路80や2つの移相回路30の各増幅度を調整して、同調増幅器1b全体のループゲインをほぼ1に設定することにより、同調動作が行われる。
【0069】
ところで、上述した位相反転回路80および2つの移相回路30を含む第3実施例の同調増幅器1bは、その全体を伝達関数K1を有する回路に置き換えると、第1実施例の場合と同様に、図8に示すシステム図で表すことができる。したがって、ミラーの定理によって変換することにより図9に示すシステム図で表すことができ、変換後のシステム全体の伝達関数Aは(13)式で表すことができる。
【0070】
また、(15)式から明らかなように、2つの移相回路30のそれぞれの伝達関数K3は、(14)式で表される移相回路10の伝達関数K2と符号のみ異なっていることから、位相反転回路80と2段の移相回路30とを接続した場合の全体の伝達関数K1は(18)式に示したものをそのまま適用することができる。このため、第2実施例の同調増幅器1aと同様に、同調増幅器1bの全体の伝達関数は(17)式に示したAをそのまま適用することができる。
【0071】
したがって、第3実施例の同調増幅器1bは、第1実施例の同調増幅器1等と同様の特性を有しており、ω=0(直流の領域)のときにA=−1/(2n+1)となって、最大減衰量を与えることがわかる。また、ω=∞のときにも最大減衰量を与えることがわかる。さらに、ω=1/Tの同調点(2つの移相回路30の各時定数が異なる場合であってそれぞれをT1、T2とした場合には、ω=1/√(T1・T2)の同調点)においてはA=1であって帰還抵抗70と入力抵抗74の抵抗比nに無関係であって、図10に示すようにnの値を変化させても同調点がずれることなく、かつ同調点の減衰量も変化しない。
【0072】
このように、この実施例の同調増幅器1bによれば、帰還抵抗70と入力抵抗74の抵抗比nを変えても同調周波数および同調時の利得が一定であり、最大減衰量のみを変化させることができる。反対に、最大減衰量は上述した抵抗比nによって決定されるため、各移相回路30内の可変抵抗36の抵抗値を変えて同調周波数を変えた場合であっても、この最大減衰量に影響を与えることはなく、同調周波数、同調周波数における利得、最大減衰量を互いに干渉しあうことなく調整することができる。
【0073】
また、第1実施例の同調増幅器1等と同様にこの実施例の同調増幅器1bは、差動増幅器やキャパシタあるいは抵抗を組み合わせて構成しており、どの構成素子も半導体基板上に形成することができることから、同調周波数および最大減衰量を調整し得る同調増幅器1bの全体を半導体基板上に形成して集積回路とすることも容易である。
【0074】
(その他の実施例)
上述した各実施例の同調増幅器に含まれる非反転回路50あるいは位相反転回路80は、トランジスタやオペアンプや抵抗等を組み合わせて簡単に構成することができる。
【0075】
図13は、オペアンプを用いて構成した非反転回路と位相反転回路の具体例を示す図である。同図(A)に示す非反転回路50は、反転入力端子が抵抗54を介して接地されているとともにこの反転入力端子と出力端子との間に抵抗56が接続されたオペアンプ52を含んで構成されており、2つの抵抗54、56の抵抗比によって定まる所定の増幅度を有するバッファとして機能する。オペアンプ52の非反転入力端子に交流信号が入力されると、オペアンプ52の出力端子からは同相の信号が出力される。
【0076】
また、同図(B)に示す位相反転回路80は、入力信号が抵抗84を介して反転入力端子に入力されるとともに非反転入力端子が接地されたオペアンプ82と、このオペアンプ82の反転入力端子と出力端子との間に接続された抵抗86とを含んで構成されている。この位相反転回路80は、2つの抵抗84、86の抵抗比によって定まる所定の増幅度を有しており、抵抗84を介してオペアンプ82の反転入力端子に交流信号が入力されると、オペアンプ82の出力端子からは位相が反転した逆相の信号が出力される。
【0077】
ところで、上述した各実施例の同調増幅器は、2つの移相回路と非反転回路あるいは位相反転回路によって構成されており、接続された複数の回路の全体によって所定の周波数において合計の位相シフト量を0°にすることにより所定の同調動作を行うようになっている。したがって、位相シフト量だけに着目すると、移相回路と非反転回路あるいは位相反転回路とをどのような順番で接続するかはある程度の自由度があり、必要に応じて接続順番を決めることができる。
【0078】
図14は、タイプが異なる2つの移相回路と非反転回路とを組み合わせて同調増幅器を構成した場合において、2つの移相回路と非反転回路50の接続状態を示す図である。なお、これらの図において、帰還側インピーダンス素子70aおよび入力側インピーダンス素子74aは、各同調増幅器の出力信号と入力信号とを所定の割合で加算するためのものであり、最も一般的には図1等に示すように、帰還側インピーダンス素子70aとして帰還抵抗70を、入力側インピーダンス素子74aとして入力抵抗74を使用する。
【0079】
但し、帰還側インピーダンス素子70aおよび入力側インピーダンス素子74aは、それぞれの素子に入力された信号の位相関係を変えることなく加算できればよいことから、帰還側インピーダンス素子70aおよび入力側インピーダンス素子74aをともにキャパシタにより、あるいは帰還側インピーダンス素子70aおよび入力側インピーダンス素子74aをともにインダクタにより形成するようにしてもよい。または、抵抗やキャパシタあるいはインダクタを組み合わせることにより、インピーダンスの実数分および虚数分の比を同時に調整しうるようにして各インピーダンス素子を形成してもよい。
【0080】
図14(A)には、タイプが異なる(一方が−型であって他方が+型である)2つの移相回路の後段に非反転回路50を配置した構成が示されている。このように、後段に非反転回路50を配置した場合には、この非反転回路50に出力バッファの機能を持たせることにより、大きな出力電流を取り出すこともできる。
【0081】
図14(B)には、タイプが異なる2つの移相回路の中間に非反転回路50を配置した構成が示されている。このように、中間に非反転回路50を配置した場合には、前段の移相回路10あるいは30と後段の移相回路30あるいは10の相互干渉を完全に防止することができる。
【0082】
図14(C)には、タイプが異なる2つの移相回路の前段に非反転回路50を配置した構成が示されており、図1に示した同調増幅器1に対応している。このように、前段に非反転回路50を配置した場合には、前段の移相回路10あるいは30に対する帰還側インピーダンス素子70aや入力側インピーダンス素子74aの影響を最小限に抑えることができる。
【0083】
同様に、図15は、同タイプの2つの移相回路を組み合わせて同調増幅器を構成した場合において、2つの移相回路と位相反転回路80の接続状態を示す図である。なお、図14について説明したように、帰還側インピーダンス素子70aおよび入力側インピーダンス素子74aは、各同調増幅器の出力信号と入力信号とを所定の割合で加算するためのものであり、最も一般的には図1等に示すように、帰還側インピーダンス素子70aとして帰還抵抗70を、入力側インピーダンス素子74aとして入力抵抗74を使用する。但し、帰還側インピーダンス素子70aおよび入力側インピーダンス素子74aは、それぞれの素子に入力された信号の位相関係を変えることなく加算できればよいことから、キャパシタ等によって形成するようにしてもよい。
【0084】
図15(A)には、同タイプの2つの移相回路の後段に位相反転回路80を配置した構成が示されている。このように、後段に位相反転回路80を配置した場合には、この位相反転回路80に出力バッファの機能を持たせることにより、大きな出力電流を取り出すこともできる。
【0085】
図15(B)には、同タイプの2つの移相回路の間に位相反転回路80を配置した構成が示されている。このように、中間に位相反転回路80を配置した場合には、2つの移相回路間の相互干渉を完全に防止することができる。
【0086】
図15(C)には、2つの移相回路の前段に位相反転回路80を配置した構成が示されており、図11に示した同調増幅器1aや図12に示した同調増幅器1bに対応している。このように、前段に位相反転回路80を配置した場合には、前段の移相回路10あるいは30に対する帰還側インピーダンス素子70aや入力側インピーダンス素子74aの影響を最小限に抑えることができる。
【0087】
また、上述した各実施例において示した移相回路10、30には可変抵抗16あるいは36が含まれている。これらの可変抵抗16、36は、具体的には接合型あるいはMOS型のFETを用いて実現することができる。
【0088】
図16は、各実施例において示した2種類の移相回路内の可変抵抗16あるいは36をFETに置き換えた場合の移相回路の構成を示す図である。
【0089】
同図(A)には、図1等に示した一方の移相回路10において、可変抵抗16をFETに置き換えた構成が示されている。同図(B)には、図1等に示した他方の移相回路30において、可変抵抗36をFETに置き換えた構成が示されている。
【0090】
このように、FETのソース・ドレイン間に形成されるチャネルを抵抗体として利用して可変抵抗16あるいは36の代わりに使用すると、ゲート電圧を可変に制御してこのチャネル抵抗をある範囲で任意に変化させて各移相回路における位相シフト量を変えることができる。したがって、各同調増幅器において一巡する信号の位相シフト量が0°となる周波数を変えることができるため、同調増幅器の同調周波数を任意に変更することができる。
【0091】
なお、図16に示した各移相回路は、可変抵抗を1つのFET、すなわちpチャネルあるいはnチャネルのFETによって構成したが、pチャネルのFETとnチャネルのFETとを並列接続して1つの可変抵抗を構成し、各FETのゲートとサブストレート間に大きさが等しく極性が異なるゲート電圧を印加するようにしてもよい。抵抗値を可変する場合にはこのゲート電圧の大きさを変えればよい。このように、2つのFETを組み合わせて可変抵抗を構成することにより、FETの非線形領域の改善を行うことができるため、同調信号の歪みを少なくすることができる。
【0092】
また、上述した各実施例において示した移相回路10あるいは30は、キャパシタ14、34と直列に接続された可変抵抗16あるいは36の抵抗値を変化させて位相シフト量を変化させることにより全体の同調周波数を変えるようにしたが、キャパシタ14、34を可変容量素子によって形成し、その静電容量を変化させることにより全体の同調周波数を変えるようにしてもよい。
【0093】
図17は、各実施例において示した2種類の移相回路内のキャパシタ14あるいは34を可変容量ダイオードに置き換えた場合の移相回路の構成を示す図である。
【0094】
同図(A)には、図1等に示した一方の移相回路10において、可変抵抗16を固定抵抗に置き換えるとともにキャパシタ14を可変容量ダイオードに置き換えた構成が示されている。同図(B)には、図1等に示した他方の移相回路30において、可変抵抗36を固定抵抗に置き換えるとともにキャパシタ34を可変容量ダイオードに置き換えた構成が示されている。
【0095】
おな、図17(A)、(B)において、可変容量ダイオードに直列に接続されたキャパシタは、可変容量ダイオードのアノード・カソード間に逆バイアス電圧を印加する際にその直流電流を阻止するためのものであり、そのインピーダンスは動作周波数において極めて小さく、すなわち大きな静電容量を有している。また、図17(A)、(B)に示したキャパシタの両端の電位は直流成分をみると一定であるため、交流成分の振幅より大きな逆バイアス電圧をアノード・カソード間に印加することにより、各可変容量ダイオードを容量可変のキャパシタとして機能させることができる。
【0096】
このように、キャパシタ14あるいは34を可変容量ダイオードで構成し、そのアノード・カソード間に印加する逆バイアス電圧の大きさを可変に制御してこの可変容量ダイオードの静電容量をある範囲で任意に変化させて各移相回路における位相シフト量を変えることができる。したがって、各同調増幅器において一巡する信号の位相シフト量が0°となる信号の周波数を変えることができ、同調増幅器の同調周波数を任意に変更することができる。
【0097】
ところで、上述した図17(A)、(B)では可変容量素子として可変容量ダイオードを用いたが、ソースおよびドレインを直流的に固定電位に接続するとともにゲートに可変電圧を印加したFETを用いるようにしてもよい。上述したように、図17(A)、(B)に示した可変容量ダイオードの両端電位は直流的に固定されているため、これらの可変容量ダイオードを上述したFETに置き換えるだけでよく、ゲートに印加する電圧を可変することによりゲート容量、すなわちFETが有する静電容量を変えることができる。
【0098】
また、上述した図17(A)、(B)では可変容量ダイオードの静電容量のみを可変したが、同時に可変抵抗16あるいは36の抵抗値を可変するようにしてもよい。図17(C)には、図1等に示した一方の移相回路10において、可変抵抗16を用いるとともにキャパシタ14を可変容量ダイオードに置き換えた構成が示されている。同図(D)には、図1等に示した他方の移相回路30において、可変抵抗36を用いるとともにキャパシタ34を可変容量ダイオードに置き換えた構成が示されている。これらにおいて可変容量ダイオードをゲート容量可変のFETに置き換えてもよいことは当然である。
【0099】
また、図17(C)、(D)に示した可変抵抗を図16に示したようにFETのチャネル抵抗を利用して形成することができることはいうまでもない。特に、pチャネルのFETとnチャネルのFETとを並列接続して1つの可変抵抗を構成し、各FETのベースとサブストレート間に大きさが等しく極性が異なるゲート電圧を印加した場合には、FETの非線形領域の改善を行うことができるため、同調信号の歪みを少なくすることができる。
【0100】
このように、可変抵抗と可変容量素子を組み合わせて移相回路を構成した場合であっても、可変抵抗の抵抗値および可変容量素子の静電容量をある範囲で任意に変化させて各移相回路における位相シフト量を変えることができる。したがって、各同調増幅器において一巡する信号の位相シフト量が0°となる信号の周波数を変えることができ、同調増幅器の同調周波数を任意に変更することができる。
【0101】
また、上述したように可変抵抗や可変容量素子を用いる場合の他、素子定数が異なる複数の抵抗あるいはキャパシタを用意しておいて、スイッチを切り換えることにより、これら複数の素子の中から1つあるいは複数を選ぶようにしてもよい。この場合にはスイッチ切り換えにより接続する素子の個数および接続方法(直列接続、並列接続あるいはこれらの組み合わせ)によって、素子定数を不連続に切り換えることができる。例えば、可変抵抗の代わりに抵抗値がR、2R、4R、…といった2のn乗の系列の複数の抵抗を用意しておいて、1つあるいは任意の複数を選択して直列接続することにより、等間隔の抵抗値の切り換えをより少ない素子で容易に実現することができる。同様に、キャパシタの代わりに静電容量がC、2C、4C、…といった2のn乗の系列の複数のキャパシタを用意しておいて、1つあるいは任意の複数を選択して並列接続することにより、等間隔の静電容量の切り換えをより少ない素子で容易に実現することができる。このため、同調周波数が複数ある回路、例えばAMラジオにこの実施例の同調増幅器を適用して、複数の放送局から1局を選局して受信するような用途に適している。
【0102】
また、上述した各実施例の同調増幅器1等を半導体基板上に形成した場合には、キャパシタ14あるいは34としてあまり大きな静電容量を設定することができない。したがって、半導体基板上に実際に形成したキャパシタの小さな静電容量を、回路を工夫することにより見かけ上大きくすることができれば、時定数Tを大きな値に設定して同調周波数の低周波数化を図る際に都合がよい。
【0103】
図18は、図1等に示した移相回路10、30に用いたキャパシタ14あるいは34を素子単体ではなく回路によって構成した変形例を示す図であり、実際に半導体基板上に形成されるキャパシタの静電容量を見かけ上大きくみせる静電容量変換回路として機能する。なお、図18に示した回路全体が移相回路10、30に含まれるキャパシタ14あるいは34に対応している。
【0104】
図18に示す静電容量変換回路14aは、所定の静電容量C0を有するキャパシタ210と、2つのオペアンプ212、214と、4つの抵抗216、218、220、222とを含んで構成されている。
【0105】
1段目のオペアンプ212は、出力端子と反転入力端子との間に抵抗218(この抵抗値をR18とする)が接続されており、さらにこの反転入力端子が抵抗216(この抵抗値をR16とする)を介して接地されている。
【0106】
1段目のオペアンプ212の非反転入力端子に印加される電圧E1と出力端子に現れる電圧E2との間には、
【数19】
の関係がある。この1段目のオペアンプ212は、主にインピーダンス変換を行うバッファとして機能するものであり、利得は1であってもよい。利得1の場合とはR18/R16=0のとき、すなわちR16を無限大(抵抗216を除去すればよい)、あるいはR18を0Ω(直結すればよい)に設定する。
【0107】
また、2段目のオペアンプ214は、出力端子と反転入力端子との間に抵抗222(この抵抗値をR22とする)が接続されているとともに反転入力端子と上述したオペアンプ212の出力端子との間に抵抗220(この抵抗値をR20とする)が接続されており、さらに非反転入力端子が接地されている。
【0108】
2段目のオペアンプ214の出力端子に現れる電圧をE3とすると、この電圧E3と1段目のオペアンプ212の出力端子に現れる電圧E2との間には、
【数20】
の関係がある。このように2段目のオペアンプ214は反転増幅器として機能するものであり、その入力側を高インピーダンスに設定するために1段目のオペアンプ212が使用されている。
【0109】
また、このような接続がなされた1段目のオペアンプ212の非反転入力端子と2段目のオペアンプ214の出力端子との間には、上述したように所定の静電容量を有するキャパシタ210が接続されている。
【0110】
図18に示した静電容量変換回路14aにおいて、キャパシタ210を除く回路全体の伝達関数をK4とすると、静電容量変換回路14aは図19に示すシステム図で表すことができる。図20は、これをミラーの定理によって変換したシステム図である。
【0111】
図19に示したインピーダンスZ0を用いて図20に示したインピーダンスZ1を表すと、
【数21】
となる。ここで、図18に示した静電容量変換回路14aの場合には、インピーダンスZ0=1/(jωC0)であり、これを(21)式に代入して、
【数22】
【数23】
となる。この(23)式は、静電容量変換回路14aにおいてキャパシタ210が有する静電容量C0が見掛け上は(1−K4)倍になったことを示している。
【0112】
したがって、増幅器の利得K4が負の場合には常に(1−K4)は1より大きくなるため、静電容量C0を大きいほうに変化させることができる。
【0113】
ところで、図18に示した静電容量変換回路14aにおける増幅器の利得、すなわちオペアンプ212と214の全体により構成される増幅器の利得K4は、(19)式および(20)式から、
【数24】
となる。この(24)式を(23)式に代入すると、
【数25】
となる。したがって、4つの抵抗216、218、220、222の抵抗値を所定の値に設定することにより、2つの端子224、226間の見掛け上の静電容量Cを大きくすることができる。
【0114】
また、1段目のオペアンプ212による増幅器の利得が1の場合、すなわち上述したようにR16を無限大(抵抗216を除去)、あるいはR18を0Ωに設定したときであってR18/R16=0の場合には、上述した(25)式は簡略化されて、
【数26】
となる。
【0115】
図21は、図18に示した第1のオペアンプ212の反転入力端子に接続されている抵抗216を除去した静電容量変換回路14bの構成を示す図である。この場合には、端子224、226間に現れる静電容量Cは(26)式により表されるため、R22とR20の比を変化させるだけでC0から大きいほうに変化させることができる。
【0116】
このように、上述した静電容量変換回路14aあるいは14bは、抵抗220と抵抗222との抵抗比R22/R20あるいは抵抗216と抵抗218との抵抗比R18/R16を変えることにより、実際に半導体基板上に形成するキャパシタ210の静電容量C0を見掛け上大きい方に変換することができる。そのため、半導体基板上に図1等に示した同調増幅器1等の全体を形成するような場合には、半導体基板上に小さな静電容量C0を有するキャパシタ210を形成しておいて、図18あるいは図21に示した回路によって大きな静電容量Cに変換することができ、集積化に際して好都合となる。特に、このようにして大きな静電容量を確保することができれば、図1に示した同調増幅器1等の全体の実装面積を小型化して、材料コスト等の低減も可能となる。
【0117】
また、抵抗216、218、220、222の中の少なくとも1つ(図21に示した静電容量変換回路14bの場合は抵抗220、222の少なくとも1つ)を可変抵抗により形成することにより、具体的には接合型やMOS型のFETあるいはpチャネルFETとnチャネルFETとを並列に接続して可変抵抗を形成することにより、容易に静電容量が可変の静電容量変換回路を形成することができる。したがって、この静電容量変換回路を図17に示した可変容量ダイオードの代わりに使用することにより、位相シフト量をある範囲で任意に変化させることができる。このため、同調増幅器において一巡する信号の位相シフト量が0°となる周波数を変えることができ、上述した同調増幅器の同調周波数を任意に変更することができる。
【0118】
なお、上述したように第1段目のオペアンプ212は入力インピーダンスを高くするためのバッファとして用いているため、このオペアンプ212をエミッタホロワ回路あるいはソースホロワ回路に置き換えるようにしてもよい。
【0119】
図22は、1段目にエミッタホロワ回路を用いた静電容量変換回路14cの構成を示す図である。同図に示す静電容量変換回路14cは、図18に示した1段目のオペアンプ212および2つの抵抗216、218をバイポーラトランジスタと抵抗からなるエミッタホロワ回路228に置き換えた構成を有している。
【0120】
図23は、1段目にソースホロワ回路を用いた静電容量変換回路14dの構成を示す図である。同図に示す静電容量変換回路14dは、図18に示した1段目のオペアンプ212および2つの抵抗216、218をFETと抵抗からなるソースホロワ回路230に置き換えた構成を有している。
【0121】
また、上述した静電容量変換回路14c、14dのそれぞれは、オペアンプ214に接続されている抵抗220、222の抵抗比を変えることにより端子224、226間の見掛け上の静電容量Cを任意に変化させることができる点は図18等に示した静電容量変換回路14a等と同じである。したがって、抵抗220、222の少なくとも一方を、接合型やMOS型のFETあるいはpチャネルFETとnチャネルFETとを並列に接続した可変抵抗に置き換えることにより、静電容量が可変の静電容量変換回路を構成することができ、この静電容量変換回路を図17に示した可変容量ダイオードの代わりに使用することにより、位相シフト量をある範囲で任意に変化させることができる。このため、各同調増幅器において一巡する信号の位相シフト量が0°となる周波数を変えることができ、同調周波数を任意に変更することができる。
【0122】
なお、この発明は上記実施例に限定されるものではなく、この発明の要旨の範囲内で種々の変形実施が可能である。
【0123】
例えば、上述した各実施例の同調増幅器においては、移相回路10、30内の差動増幅器12、32によって2入力の差分を2倍に増幅して各移相回路の出力とすることにより、同調増幅器のループゲインをほぼ1に設定するようにしたが、差動増幅器12、32の増幅度をこれ以外の値に設定してもよい。例えば、各差動増幅器12、32において2入力の差分を増幅せずに、あるいは2倍以外の増幅度で増幅して出力するとともに、非反転回路50あるいは位相反転回路80の増幅度を調整して同調増幅器のループゲインをほぼ1に設定するようにしてもよい。
【0124】
また、図1等に示した各同調増幅器においては、帰還側インピーダンス素子として抵抗値が固定の帰還抵抗70を用い、入力側インピーダンス素子として抵抗値が固定の入力抵抗74を用いるようにしたが、少なくとも一方の抵抗を可変抵抗により構成して最大減衰量を任意に変更可能に形成してもよい。この場合に、可変抵抗を図16に示したようにFETのチャネル抵抗を利用して形成することができることはいうまでもない。特に、pチャネルのFETとnチャネルのFETとを並列接続して1つの可変抵抗を構成し、各FETのベースとサブストレート間に大きさが等しく極性が異なるゲート電圧を印加した場合には、FETの非線形領域の改善を行うことができるため、同調信号の歪みを少なくすることができる。
【0125】
同様に、帰還側インピーダンス素子および入力側インピーダンス素子をキャパシタとした場合には少なくとも一方を可変容量ダイオードやゲート容量可変のFETにより構成して最大減衰量を任意に変更可能に形成してもよい。
【0126】
また、上述した実施例の同調増幅器1等には2つの移相回路が含まれているが、同調周波数を可変する場合には、両方の移相回路に含まれるCR回路を構成するキャパシタと抵抗の少なくとも一方の素子定数を変える場合の他、一方の移相回路に含まれるCR回路を構成するキャパシタと抵抗の少なくとも一方の素子定数を変える場合が考えられる。また、全ての抵抗やインダクタの各素子定数を固定して、同調周波数が固定の同調増幅器を構成することもできる。
【0127】
【発明の効果】
以上の各実施例に基づく説明から明らかなように、この発明の同調増幅器を構成する各素子は集積回路の製法によって形成することが可能であるから、同調増幅器を半導体ウエハ上に集積回路として小型に形成でき、大量生産によって安価に作ることができる。
【0128】
特に、各移相回路におけるCR回路の可変抵抗としてFETのソース・ドレイン間のチャネルを使用し、このFETのゲートに印加する制御電圧を変化させてチャネルの抵抗を変化させるように構成すると、制御電圧を印加する配線のインダクタンスや静電容量の影響を回避することができ、ほぼ設計どおりの理想的な特性を備えた同調増幅器を得ることができる。
【0129】
また、この発明の同調増幅器は、最大減衰量が入力側インピーダンス素子と帰還側インピーダンス素子の抵抗比によって決まるとともに、同調周波数が各移相回路におけるCR回路の時定数によって決まるため、最大減衰量や同調周波数および同調周波数における利得を互いに干渉しあうことなく設定することができる。
【0130】
従来のLC共振を利用した同調増幅器においては、同調周波数ωが1/√LCであるから、同調周波数を調整するために静電容量CまたはインダクタンスLを変化させると、同調周波数はその変化量の平方根に比例して変化するが、この発明の同調増幅器では同調周波数ωが例えば1/(CR)であって、同調周波数は抵抗値Rあるいは静電容量Cに比例して変化させることができるので、大幅な変更および調整が可能となる。
【図面の簡単な説明】
【図1】この発明を適用した第1実施例の同調増幅器の構成を示す回路図、
【図2】図1に示した前段の移相回路の構成を抜き出して示した図、
【図3】前段の移相回路の入出力電圧とキャパシタ等に現れる電圧との関係を示すベクトル図、
【図4】図2に示した移相回路を等価的に表した図、
【図5】図1に示した後段の移相回路の構成を抜き出して示した図、
【図6】後段の移相回路の入出力電圧とキャパシタ等に現れる電圧との関係を示すベクトル図、
【図7】図5に示した移相回路を等価的に表した図、
【図8】2つの移相回路および非反転回路の全体を伝達関数K1を有する回路に置き換えたシステム図、
【図9】図8に示すシステムをミラーの定理によって変換したシステム図、
【図10】この実施例の同調増幅器の同調特性を示す図、
【図11】第2実施例の同調増幅器の構成を示す回路図、
【図12】第3実施例の同調増幅器の構成を示す回路図、
【図13】非反転回路および位相反転回路の具体例を示す図、
【図14】移相回路と非反転回路との接続形態を示す図、
【図15】移相回路と位相反転回路との接続形態を示す図、
【図16】移相回路の可変抵抗をFETに置き換えた移相回路の構成を示す図、
【図17】移相回路のキャパシタを可変容量ダイオードに置き換えた移相回路の構成を示す図、
【図18】キャパシタが実際に有する静電容量を見かけ上大きくする静電容量変換回路の構成を示す図、
【図19】図18に示した回路を伝達関数を用いて表した図、
【図20】図19に示す構成をミラーの定理によって変換した図、
【図21】図18の回路を簡略化した静電容量変換回路の構成を示す図、
【図22】1段目にエミッタホロワ回路を用いた静電容量変換回路の構成を示す図、
【図23】1段目にソースホロワ回路を用いた静電容量変換回路の構成を示す図、
【図24】従来の同調増幅器における同調周波数、同調周波数における利得、最大減衰量の関係の一例を示す特性曲線図である。
【符号の説明】
1 同調増幅器
10、30 移相回路
12、32 差動増幅器
14、34 キャパシタ
16、36 可変抵抗
18、20、38、40 抵抗
50 非反転回路
70 帰還抵抗
74 入力抵抗
90 入力端子
92 出力端子
【産業上の利用分野】
この発明は、同調周波数と最大減衰量とを互いに干渉することなく、任意に調整し得る同調増幅器に関する。
【0002】
【従来の技術】
同調増幅器として従来より能動素子およびリアクタンス素子を使用した各種の増幅回路が提案され実用化されている。
【0003】
【発明が解決しようとする課題】
従来の同調増幅器においては、同調周波数を調整すると、LC回路に依存するQと利得が変化し、最大減衰量を調整すると同調周波数が変化したり、また、図24の特性曲線AおよびBに示すように、最大減衰量を調整すると同調周波数における利得が変化するので、同調周波数、同調周波数における利得、最大減衰量C1、C2を互いに干渉しあうことなく調整することは極めて困難であった。
【0004】
さらに、同調周波数および最大減衰量を調整し得る同調増幅器を集積回路によって形成することも困難であった。
【0005】
そこで、この発明は、このような課題を解決するために考えられたものである。
【0006】
【課題を解決するための手段】
上述した課題を解決するために、この発明の同調増幅器は、
入力信号が一方端に入力される入力側インピーダンス素子と、帰還信号が一方端に入力される帰還側インピーダンス素子とを含んでおり、前記入力信号と前記帰還信号とを加算する加算回路と、
入力される交流信号が両端に印加される抵抗値がほぼ等しい第1および第2の抵抗により構成された第1の直列回路と、前記交流信号が両端に印加される第3の抵抗とキャパシタにより構成された第2の直列回路と、前記第1の直列回路を構成する前記第1および第2の抵抗の接続点の電位と前記第2の直列回路を構成する前記第3の抵抗と前記キャパシタの接続点の電位との差分を所定の増幅度で増幅して出力する差動増幅器とを含む2つの移相回路と、
を備え、前記2つの移相回路を縦続接続し、これら縦続接続された2つの移相回路の中の前段の移相回路に対して前記加算回路によって加算された信号を入力するとともに、後段の移相回路から出力される信号を前記帰還信号として前記帰還側インピーダンス素子の一方端に入力し、これら2つの移相回路のいずれかの出力を同調信号として取り出すことを特徴とする。
【0007】
また、この発明の同調増幅器は、
入力端子に入力される交流信号が一方端に入力される入力側インピーダンス素子と、帰還信号が一方端に入力される帰還側インピーダンス素子とを含んでおり、前記入力端子に入力される交流信号と前記帰還信号とを加算する加算回路と、入力される交流信号が両端に印加される抵抗値がほぼ等しい第1および第2の抵抗により構成された第1の直列回路と、前記交流信号が両端に印加される第3の抵抗とキャパシタにより構成された第2の直列回路と、前記第1の直列回路を構成する前記第1および第2の抵抗の接続点の電位と前記第2の直列回路を構成する前記第3の抵抗と前記キャパシタの接続点の電位との差分を所定の増幅度で増幅して出力する差動増幅器とを含む2つの移相回路と、
入力される交流信号の位相を変えずに出力する非反転回路と、
を備え、前記2つの移相回路および前記非反転回路のそれぞれを縦続接続し、これら縦続接続された複数の回路の中の初段の回路に対して前記加算回路によって加算された信号を入力するとともに、最終段の回路から出力される信号を前記帰還信号として前記帰還側インピーダンス素子の一方端に入力し、これら複数の回路のいずれかの出力を同調信号として取り出すことを特徴とする。
【0008】
また、この発明の同調増幅器は、
入力端子に入力される交流信号が一方端に入力される入力側インピーダンス素子と、帰還信号が一方端に入力される帰還側インピーダンス素子とを含んでおり、前記入力端子に入力される交流信号と前記帰還信号とを加算する加算回路と、入力される交流信号が両端に印加される抵抗値がほぼ等しい第1および第2の抵抗により構成された第1の直列回路と、前記交流信号が両端に印加される第3の抵抗とキャパシタにより構成された第2の直列回路と、前記第1の直列回路を構成する前記第1および第2の抵抗の接続点の電位と前記第2の直列回路を構成する前記第3の抵抗と前記キャパシタの接続点の電位との差分を所定の増幅度で増幅して出力する差動増幅器とを含む2つの移相回路と、
入力される交流信号の位相を反転して出力する位相反転回路と、
を備え、前記2つの移相回路および前記位相反転回路のそれぞれを縦続接続し、これら縦続接続された複数の回路の中の初段の回路に対して前記加算回路によって加算された信号を入力するとともに、最終段の回路から出力される信号を前記帰還信号として前記帰還側インピーダンス素子の一方端に入力し、これら複数の回路のいずれかの出力を同調信号として取り出すことを特徴とする。
【0009】
また、この発明の同調増幅器は、
入力側インピーダンス素子を介して入力された交流信号を同相で出力する非反転回路と、
2つの抵抗の直列接続およびキャパシタと抵抗との直列接続よりなり、前記非反転回路の出力が印加される第1のブリッジ回路と、前記第1のブリッジ回路の2つの出力の差を得る第1の差動増幅器とを有し、前記第1のブリッジ回路に入力された信号を移相する第1の移相回路と、
2つの抵抗の直列接続および抵抗とキャパシタとの直列接続よりなり、前記第1の移相回路の出力が印加される第2のブリッジ回路と、前記第2のブリッジ回路の2つの出力の差を得る第2の差動増幅器とを有し、前記第2のブリッジ回路に入力された信号を前記第1の移相回路とは反対方向に移相する第2の移相回路と、
前記第2の移相回路の出力を帰還側インピーダンス素子を介して前記非反転回路の入力へ帰還する回路と、
を備えることを特徴とする。
【0010】
また、この発明の同調増幅器は、
入力抵抗を介して入力された交流信号を反転して出力する位相反転回路と、
2つの抵抗の直列接続およびキャパシタと抵抗との直列接続よりなり、前記位相反転回路の出力が印加される第1のブリッジ回路と、前記第1のブリッジ回路の2つの出力の差を得る第1の差動増幅器とを有し、前記第1のブリッジ回路に入力された信号を移相する第1の移相回路と、
2つの抵抗の直列接続およびキャパシタと抵抗との直列接続よりなり、前記第1の移相回路の出力が印加される第2のブリッジ回路と、前記第2のブリッジ回路の2つの出力の差を得る第2の差動増幅器とを有し、前記第2のブリッジ回路に入力された信号を前記第1の移相回路と同じ方向に移相する第2の移相回路と、
前記第2の移相回路の出力を帰還抵抗を介して前記位相反転回路の入力へ帰還する回路と、
を備えることを特徴とする。
【0011】
【実施例】
以下、この発明を適用した一実施例の同調増幅器について、図面を参照しながら具体的に説明する。
【0012】
(第1実施例)
図1は、この発明を適用した第1実施例の同調増幅器の構成を示す回路図である。同図に示す同調増幅器1は、入力信号の位相を変えずに出力する非反転回路50と、それぞれが入力信号の位相を所定量シフトさせることにより所定の周波数において合計で0°の位相シフトを行う2つの移相回路10、30と、帰還抵抗70および入力抵抗74(入力抵抗74は帰還抵抗70の抵抗値のn倍の抵抗値を有しているものとする)のそれぞれを介することにより後段の移相回路30から出力される信号(帰還信号)と入力端子90に入力される信号(入力信号)とを所定の割合で加算する加算回路とを含んで構成されている。なお、非反転回路50はバッファ回路として機能するものであるが、同調増幅器の基本動作のみに着目した場合には省略してもよい。
【0013】
図2は、図1に示した前段の移相回路10の構成を抜き出して示したものである。同図に示す前段の移相回路10は、2入力の差分電圧を所定の増幅度(例えば約2倍)で増幅して出力する差動増幅器12と、入力端22に入力された信号の位相を所定量シフトさせて差動増幅器12の非反転入力端子に入力するキャパシタ14および可変抵抗16と、入力端22に入力された信号の位相を変えずにその電圧レベルを約1/2に分圧して差動増幅器12の反転入力端子に入力する抵抗18および20とを含んで構成されている。なお、可変抵抗16と抵抗20の接続点が接地されている場合を考えて以下の説明を行うものとする。
【0014】
このような構成を有する移相回路10において、所定の交流信号が入力端22に入力されると、差動増幅器12の反転入力端子には、入力端22に印加される電圧(入力電圧Ei)を抵抗18と抵抗20とによって分圧した電圧が印加される。抵抗18および20の各抵抗値はほぼ等しく設定されており、これら2つの抵抗18、20の直列回路により構成される分圧回路によって約1/2に分圧された電圧Ei/2が差動増幅器12の反転入力端子に印加される。
【0015】
一方、入力信号が入力端22に入力されると、差動増幅器12の非反転入力端子には、キャパシタ14と可変抵抗16の接続点に現れる信号が入力される。キャパシタ14と可変抵抗16により構成されるCR回路(直列回路)の一方端には入力信号が入力されているため、入力信号の位相をこのCR回路によって所定量シフトした信号の電圧が差動増幅器12の非反転入力端子には印加される。
【0016】
差動増幅器12は、このようにして2つの入力端子に印加される電圧の差分を所定の増幅度、例えば約2倍に増幅した信号を出力する。
【0017】
図3は、移相回路10の入出力電圧とキャパシタ等に現れる電圧との関係を示すベクトル図である。
【0018】
同図に示すように、可変抵抗16の両端に現れる電圧VR1とキャパシタ14の両端に現れる電圧VC1は、互いに位相が90°ずれており、これらをベクトル的に合成(加算)したものが入力電圧Eiとなる。したがって、入力信号の振幅が一定で周波数のみが変化した場合には、図3に示す半円の円周に沿って可変抵抗16の両端電圧VR1とキャパシタ14の両端電圧VC1とが変化する。
【0019】
また、差動増幅器12の非反転入力端子に印加される電圧(可変抵抗16の両端電圧VR1)から反転入力端子に印加される電圧(抵抗20の両端電圧Ei/2)をベクトル的に減算したものが差分電圧Eo′となる。この差分電圧Eo′は、図3に示した半円において、その中心点を始点とし、電圧VR1と電圧VC1とが交差する円周上の一点を終点とするベクトルで表すことができ、その大きさは半円の半径Ei/2に等しくなる。実際には、差動増幅器12はこの差分電圧Eo′を2倍に増幅しており、出力電圧Eo=Eo′×2=Eiとなる。したがって、この実施例の移相回路10において、入力信号の振幅と出力信号の振幅とは等しく、入出力信号間で信号の減衰が生じないことがわかる。
【0020】
また、図3から明らかなように、電圧VR1と電圧VC1とは円周上で直角に交わるため、入力電圧Eiと電圧VR1との位相差は、周波数ωが0から∞まで変化するに従って90°から0°まで変化する。そして、移相回路10全体の位相シフト量φ1はその2倍であり、周波数に応じて180°から0°まで変化する。
【0021】
次に、上述した入出力電圧間の関係を定量的に検証する。
【0022】
図4は、前段の移相回路10を等価的に表した図であり、差動増幅器12の入力側に設けられた2つの直列回路に対応する構成が示されている。
【0023】
抵抗18および20により構成される直列回路の両端には入力電圧Eiが印加されるため、抵抗18、20のそれぞれは電圧Ei/2を発生する2つの電圧源27、28に置き換えて考えることができる。このとき、図4に示す等価回路の閉ループに流れる電流Iは、キャパシタ14の静電容量をC、可変抵抗16の抵抗値をRとすると、
【数1】
となる。ここで、図4に示す2点間の電位差(差分)Eo′を求めると、
【数2】
となる。上述した(2)式に(1)式を代入して計算すると、
【数3】
となる。また、この実施例の移相回路10の出力電圧Eoは、上述した差分Eo′を2倍したものであるから、
【数4】
となる。ここで、キャパシタ14と可変抵抗16からなるCR回路の時定数をT(=CR)とした。
【0024】
この(4)式においてs=jωを代入して変形すると、
【数5】
となる。(5)式から出力電圧Eoの絶対値を求めると、
【数6】
となる。すなわち、(6)式は、この実施例の移相回路10は入出力間の位相がどのように回転しても、その出力信号の振幅は入力信号の振幅に等しく一定であることを表している。
【0025】
また、(5)式から出力電圧Eoの入力電圧Eiに対する位相シフト量φ1を求めると、
【数7】
となる。この(7)式から、例えばωがほぼ1/T(=1/(CR))となるような周波数における位相シフト量φ1はほぼ90°となり、入力信号の振幅を減衰させることなく位相のみをほぼ90°シフトさせることができる。しかも、可変抵抗16の抵抗値Rを可変することにより、位相シフト量φ1がほぼ90°となる周波数ωを変化させることができる。
【0026】
図5は、図1に示した後段の移相回路30の構成を抜き出して示したものである。同図に示す後段の移相回路30は、2入力の差分電圧を所定の増幅度(例えば約2倍)で増幅して出力する差動増幅器32と、入力端42に入力された信号の位相を所定量シフトさせて差動増幅器32の非反転入力端子に入力する可変抵抗36およびキャパシタ34と、入力端42に入力された信号の位相を変えずにその電圧レベルを約1/2に分圧して差動増幅器32の反転入力端子に入力する抵抗38および40とを含んで構成されている。
【0027】
このような構成を有する移相回路30において、所定の交流信号が入力端42に入力されると、差動増幅器32の反転入力端子には、入力端42に印加される電圧(入力電圧Ei)を抵抗38と抵抗40とによって分圧した電圧が印加される。抵抗38および40の各抵抗値はほぼ等しく設定されており、これら2つの抵抗38、40の直列回路により構成される分圧回路によって約1/2に分圧された電圧Ei/2が差動増幅器32の反転入力端子に印加される。
【0028】
一方、入力信号が入力端42に入力されると、差動増幅器32の非反転入力端子には、可変抵抗36とキャパシタ34の接続点に現れる信号が入力される。可変抵抗36とキャパシタ34により構成されるCR回路(直列回路)の一方端には入力信号が入力されているため、入力信号の位相をこのCR回路によって所定量シフトした信号の電圧が差動増幅器32の非反転入力端子には印加される。
【0029】
差動増幅器32は、このようにして2つの入力端子に印加される電圧の差分を所定の増幅度、例えば約2倍に増幅した信号を出力する。
【0030】
図6は、移相回路30の入出力電圧とキャパシタ等に現れる電圧との関係を示すベクトル図である。
【0031】
同図に示すように、キャパシタ34の両端に現れる電圧VC2と可変抵抗36の両端に現れる電圧VR2は、互いに位相が90°ずれており、これらをベクトル的に合成(加算)したものが入力電圧Eiとなる。したがって、入力信号の振幅が一定で周波数のみが変化した場合には、図6に示す半円の円周に沿ってキャパシタ34の両端電圧VC2と可変抵抗36の両端電圧VR2とが変化する。
【0032】
また、差動増幅器32の非反転入力端子に印加される電圧(キャパシタ34の両端電圧VC2)から反転入力端子に印加される電圧(抵抗40の両端電圧Ei/2)をベクトル的に減算したものが差分電圧Eo′となる。この差分電圧Eo′は、図6に示した半円において、その中心点を始点とし、電圧VC2と電圧VR2とが交差する円周上の一点を終点とするベクトルで表すことができ、その大きさは半円の半径Ei/2に等しくなる。実際には、差動増幅器32はこの差分電圧Eo′を2倍に増幅しており、出力電圧Eo=Eo′×2=Eiとなる。したがって、この実施例の移相回路30において、入力信号の振幅と出力信号の振幅とは等しく、入出力信号間で信号の減衰が生じないことがわかる。
【0033】
また、図6から明らかなように、電圧VC2と電圧VR2とは円周上で直角に交わるため、入力電圧Eiと電圧VC2との位相差は、周波数ωが0から∞まで変化するに従って0°から90°まで変化する。そして、移相回路30全体の位相シフト量φ2はその2倍であり、周波数に応じて0°から180°まで変化する。
【0034】
次に、上述した入出力電圧間の関係を定量的に検証する。
【0035】
図7は、後段の移相回路30を等価的に表した図であり、差動増幅器32の入力側に設けられた2つの直列回路に対応する構成が示されている。
【0036】
抵抗38および40により構成される直列回路の両端には入力電圧Eiが印加されるため、前段の移相回路10の場合と同様に、抵抗38、40のそれぞれは電圧Ei/2を発生する2つの電圧源27、28に置き換えて考えることができる。このとき、図7に示す等価回路の閉ループに流れる電流Iは、可変抵抗36の抵抗値をR、キャパシタ34の静電容量をCとすると、上述した(1)式で表すことができる。
【0037】
ここで、図7に示す2点間の電位差(差分)Eo′を求めると、
【数8】
となる。上述した(8)式に(1)式を代入して計算すると、
【数9】
となる。また、この実施例の移相回路30の出力電圧Eoは、上述した差分Eo′を2倍したものであるから、
【数10】
となる。ここで、移相回路10と同様に、可変抵抗36とキャパシタ34からなるCR回路の時定数をT(=CR)とした。
【0038】
(10)式においてs=jωを代入して変形すると、
【数11】
となる。
【0039】
上述した(10)式および(11)式は、前段の移相回路10について示した(4)式および(5)式と符号のみ異なっている。したがって、出力電圧Eoの絶対値は(6)式をそのまま適用することができ、後段の移相回路30は入出力間の位相がどのように回転しても、その出力信号の振幅は入力信号の振幅に等しく一定であることがわかる。
【0040】
また、(11)式から出力電圧Eoの入力電圧Eiに対する位相シフト量φ2を求めると、
【数12】
となる。この(12)式から、例えばωがほぼ1/T(=1/(CR))となるような周波数における位相シフト量φ2はほぼ90°となり、入力信号の振幅を減衰させることなく位相のみをほぼ90°シフトさせることができる。しかも、可変抵抗36の抵抗値Rを可変することにより、位相シフト量φ2がほぼ90°となる周波数ωを変化させることができる。
【0041】
このようにして、2つの移相回路10、30のそれぞれにおいて位相が所定量シフトされる。しかも、図3および図6に示すように、各移相回路10、30における入出力電圧の相対的な位相関係は反対方向であって、所定の周波数において2つの移相回路10、30の全体により位相シフト量が0°となる信号が出力される。
【0042】
また、後段の移相回路30の出力は、帰還抵抗70を介して移相回路10の前段に設けられた非反転回路50の入力側に帰還されており、この帰還された信号と入力抵抗74を介して入力される信号とが加算される。この加算された信号は、バッファ回路として機能する非反転回路50を介して移相回路10の入力端(図2に示した入力端22)に入力される。
【0043】
このような帰還ループを形成することにより、ある周波数において帰還ループを一巡する信号の位相シフト量が0°となる。このとき、非反転回路50や2つの移相回路10、30の各増幅度を調整して、同調増幅器1全体のループゲインをほぼ1に設定することにより、同調動作が行われる。
【0044】
図8は、上述した構成を有する2つの移相回路10、30および非反転回路50の全体を伝達関数K1を有する回路に置き換えたシステム図であり、伝達関数K1を有する回路と並列に抵抗R0を有する帰還抵抗70が、直列に帰還抵抗70のn倍の抵抗値(nR0)を有する入力抵抗74が接続されている。図9は、図8に示すシステムをミラーの定理によって変換したシステム図であり、変換後のシステム全体の伝達関数Aは、
【数13】
で表すことができる。
【0045】
ところで、(4)式から明らかなように、前段の移相回路10の伝達関数K2は、
【数14】
であり、(10)式から明らかなように、後段の移相回路30の伝達関数K3は、
【数15】
である。したがって、移相回路10、30を2段縦続接続した場合の全体の伝達関数K1は、
【数16】
となる。この(16)式を上述した(13)式に代入すると、
【数17】
となる。
【0046】
この(17)式によれば、ω=0(直流の領域)のときにA=−1/(2n+1)となって、最大減衰量を与えることがわかる。また、ω=∞のときにも最大減衰量を与えることがわかる。さらに、ω=1/Tの同調点(2つの移相回路10、30の各時定数が異なる場合であってそれぞれをT1、T2とした場合には、ω=1/√(T1・T2)の同調点)においてはA=1であって帰還抵抗70と入力抵抗74の抵抗比nに無関係であることがわかる。換言すれば、図10に示すように、nの値を変化させても同調点がずれることなく、かつ同調点の減衰量も変化しない。
【0047】
このように、この実施例の同調増幅器1によれば、帰還抵抗70と入力抵抗74の抵抗比nを変えても同調周波数および同調時の利得が一定であり、最大減衰量のみを変化させることができる。反対に、最大減衰量は上述した抵抗比nによって決定されるため、各移相回路10、30内の可変抵抗16あるいは36の抵抗値を変えて同調周波数を変えた場合であっても、この最大減衰量に影響を与えることはなく、同調周波数、同調周波数における利得、最大減衰量を互いに干渉しあうことなく調整することができる。
【0048】
また、この実施例の同調増幅器1は、差動増幅器やキャパシタあるいは抵抗を組み合わせて構成しており、どの構成素子も半導体基板上に形成することができることから、同調周波数および最大減衰量を調整し得る同調増幅器1の全体を半導体基板上に形成して集積回路とすることも容易である。
【0049】
なお、上述した第1実施例の同調増幅器1では、前段に移相回路10を、後段に移相回路30をそれぞれ配置したが、これらの全体によって入出力信号間の位相シフト量が0°となればよいことから、これらの前後を入れ換えて前段に移相回路30を、後段に移相回路10をそれぞれ配置して同調増幅器を構成するようにしてもよい。
【0050】
(第2実施例)
上述した第1実施例の同調増幅器1は、構成が異なる2つの移相回路10および30を組み合わせて構成したが、同じ構成を有する2つの移相回路を組み合わせて同調増幅器を構成するようにしてもよい。
【0051】
図1に示す同調増幅器1に含まれる一方の移相回路10は図2に示した基本構成を有しており、移相回路10の入力と出力との間には(4)式で表される関係が成立する。以下では、図2に示す構成を有する移相回路10を(4)式中の分数の符号を用いて便宜上「−型の移相回路」と称して説明を行う。また、図1に示す同調増幅器1に含まれる他方の移相回路30は図5に示した基本構成を有しており、移相回路30の入力と出力との間には(10)式で表された関係が成立する。以下では、図5に示す構成を有する移相回路30を(10)式中の分数の符号を用いて便宜上「+型の移相回路」と称して説明を行う。
【0052】
このように各移相回路を便宜上2つのタイプに分類した場合には、第1実施例の同調増幅器1は、タイプが異なる2つの移相回路10および30を組み合わせることにより、全体としての位相シフト量が0°となる周波数において同調動作を行うようになっている。
【0053】
ところで、1つの−型の移相回路10に信号の位相を反転させる位相反転回路を接続した場合のその全体の入出力間の関係に着目すると、(4)式において分数の符号「−」を反転して「+」にすればよく、1つの−型の移相回路に位相反転回路を接続した構成が1つの+型の移相回路に等価であるといえる。同様に、1つの+型の移相回路30に信号の位相を反転させる位相反転回路を接続した場合のその全体の入出力間の関係に着目すると、(10)式において分数の符号「+」を反転して「−」にすればよく、1つの+型の移相回路に位相反転回路を接続した構成が1つの−型の移相回路に等価であるといえる。
【0054】
したがって、第1実施例においてタイプが異なる2つの移相回路10および30を組み合わせて同調増幅器を構成する代わりに、同タイプの2つの移相回路と位相反転回路を組み合わせて同調増幅器を構成することができる。
【0055】
図11は、第2実施例の同調増幅器の構成を示す図である。同図に示す同調増幅器1aは、入力信号の位相を反転する位相反転回路80と、図2に示す−型の2つの移相回路10と、帰還抵抗70および入力抵抗74(入力抵抗74は帰還抵抗70の抵抗値のn倍の抵抗値を有しているものとする)のそれぞれを介することにより後段の移相回路10から出力される信号(帰還信号)と入力端子90に入力される信号(入力信号)とを所定の割合で加算する加算回路とを含んで構成されている。
【0056】
このような構成を有する同調増幅器1aにおいて、ある周波数において2つの移相回路10によって位相が180°シフトされるとともに、位相反転回路80によって位相が反転されるため、全体として信号の位相シフト量が0°となる。例えば、2つの移相回路10内のCR回路の時定数が同じであると仮定し、その値をTとおくと、ω=1/Tの周波数では2つの移相回路10のそれぞれにおける位相シフト量が90°となる。したがって、位相反転回路80によって位相が反転されるとともに、2つの移相回路10の全体によって位相が180°シフトされ、全体として、位相が一巡して位相シフト量が0°となる信号が後段の移相回路10から出力される。
【0057】
また、後段の移相回路10の出力は、帰還抵抗70を介して位相反転回路80の入力側に帰還されており、この帰還された信号と入力抵抗74を介して入力される信号とが加算され、この加算された信号が位相反転回路80に入力されている。
【0058】
このような帰還ループを形成することにより、位相反転回路80によって信号の位相が反転されるとともに、ある周波数において2つの移相回路10によって位相が180°シフトされ、全体として帰還ループを一巡する信号の位相シフト量が0°となる。このとき、位相反転回路80や2つの移相回路10の各増幅度を調整して、同調増幅器1a全体のループゲインをほぼ1に設定することにより、同調動作が行われる。
【0059】
ところで、上述した位相反転回路80および2つの移相回路10を含む第2実施例の同調増幅器1aは、その全体を伝達関数K1を有する回路に置き換えると、第1実施例の場合と同様に、図8に示すシステム図で表すことができる。したがって、ミラーの定理によって変換することにより図9に示すシステム図で表すことができ、変換後のシステム全体の伝達関数Aは(13)式で表すことができる。
【0060】
また、移相回路10の伝達関数K2は(14)式で表されるため、位相反転回路80と2段の移相回路10とを接続した場合の全体の伝達関数K1は、
【数18】
となる。この(18)式で求めた伝達関数K1は、(16)式で求めた第1実施例の同調増幅器1の2つの移相回路10、30の全体の伝達関数K1と同じであり、同調増幅器1aの全体の伝達関数は(17)式に示したAをそのまま適用することができる。
【0061】
したがって、第2実施例の同調増幅器1aは、第1実施例の同調増幅器1と同様の特性を有しており、ω=0(直流の領域)のときにA=−1/(2n+1)となって、最大減衰量を与えることがわかる。また、ω=∞のときにも最大減衰量を与えることがわかる。さらに、ω=1/Tの同調点(2つの移相回路10の各時定数が異なる場合であってそれぞれをT1、T2とした場合には、ω=1/√(T1・T2)の同調点)においてはA=1であって帰還抵抗70と入力抵抗74の抵抗比nに無関係であって、図10に示すようにnの値を変化させても同調点がずれることなく、かつ同調点の減衰量も変化しない。
【0062】
このように、この実施例の同調増幅器1aによれば、帰還抵抗70と入力抵抗74の抵抗比nを変えても同調周波数および同調時の利得が一定であり、最大減衰量のみを変化させることができる。反対に、最大減衰量は上述した抵抗比nによって決定されるため、各移相回路10内の可変抵抗16の抵抗値を変えて同調周波数を変えた場合であっても、この最大減衰量に影響を与えることはなく、同調周波数、同調周波数における利得、最大減衰量を互いに干渉しあうことなく調整することができる。
【0063】
また、第1実施例の同調増幅器1と同様にこの実施例の同調増幅器1aは、差動増幅器やキャパシタあるいは抵抗を組み合わせて構成しており、どの構成素子も半導体基板上に形成することができることから、同調周波数および最大減衰量を調整し得る同調増幅器1aの全体を半導体基板上に形成して集積回路とすることも容易である。
【0064】
(第3実施例)
上述した第2実施例の同調増幅器1aでは−型の2つの移相回路10を接続した場合を説明したが、+型の移相回路30を2段接続することにより同調増幅器を構成するようにしてもよい。
【0065】
図12は、第3実施例の同調増幅器の構成を示す図である。同図に示す同調増幅器1bは、入力信号の位相を反転する移相反転回路80と、図5に示す+型の2つの移相回路30と、帰還抵抗70および入力抵抗74(入力抵抗74は帰還抵抗70の抵抗値のn倍の抵抗値を有しているものとする)のそれぞれを介することにより後段の移相回路30から出力される信号(帰還信号)と入力端子90に入力される信号(入力信号)とを所定の割合で加算する加算回路とを含んで構成されている。
【0066】
上述した第1実施例で説明したように、+型の2つの移相回路30のそれぞれは、入力信号の周波数ωが0から∞まで変化するにしたがって位相シフト量が0°から180°まで変化する。例えば、2つの移相回路30内のCR回路の時定数が同じであると仮定し、その値をTとおくと、ω=1/Tの周波数では2つの移相回路30のそれぞれにおける位相シフト量が90°となる。したがって、2つの移相回路30の全体によって位相が180°シフトされるとともに、前段に設けられた位相反転回路80によって位相が反転されるため、全体として、位相が一巡して位相シフト量が0°となる信号が後段の移相回路30から出力される。
【0067】
また、後段の移相回路30の出力は、帰還抵抗70を介して位相反転回路80の入力側に帰還されており、この帰還された信号と入力抵抗74を介して入力される信号とが加算され、この加算された信号が位相反転回路80に入力されている。
【0068】
このような帰還ループを形成することにより、位相反転回路80によって信号の位相が反転されるとともに、ある周波数において2つの移相回路30によって位相が180°シフトされ、全体として帰還ループを一巡する信号の位相シフト量が0°となる。このとき、位相反転回路80や2つの移相回路30の各増幅度を調整して、同調増幅器1b全体のループゲインをほぼ1に設定することにより、同調動作が行われる。
【0069】
ところで、上述した位相反転回路80および2つの移相回路30を含む第3実施例の同調増幅器1bは、その全体を伝達関数K1を有する回路に置き換えると、第1実施例の場合と同様に、図8に示すシステム図で表すことができる。したがって、ミラーの定理によって変換することにより図9に示すシステム図で表すことができ、変換後のシステム全体の伝達関数Aは(13)式で表すことができる。
【0070】
また、(15)式から明らかなように、2つの移相回路30のそれぞれの伝達関数K3は、(14)式で表される移相回路10の伝達関数K2と符号のみ異なっていることから、位相反転回路80と2段の移相回路30とを接続した場合の全体の伝達関数K1は(18)式に示したものをそのまま適用することができる。このため、第2実施例の同調増幅器1aと同様に、同調増幅器1bの全体の伝達関数は(17)式に示したAをそのまま適用することができる。
【0071】
したがって、第3実施例の同調増幅器1bは、第1実施例の同調増幅器1等と同様の特性を有しており、ω=0(直流の領域)のときにA=−1/(2n+1)となって、最大減衰量を与えることがわかる。また、ω=∞のときにも最大減衰量を与えることがわかる。さらに、ω=1/Tの同調点(2つの移相回路30の各時定数が異なる場合であってそれぞれをT1、T2とした場合には、ω=1/√(T1・T2)の同調点)においてはA=1であって帰還抵抗70と入力抵抗74の抵抗比nに無関係であって、図10に示すようにnの値を変化させても同調点がずれることなく、かつ同調点の減衰量も変化しない。
【0072】
このように、この実施例の同調増幅器1bによれば、帰還抵抗70と入力抵抗74の抵抗比nを変えても同調周波数および同調時の利得が一定であり、最大減衰量のみを変化させることができる。反対に、最大減衰量は上述した抵抗比nによって決定されるため、各移相回路30内の可変抵抗36の抵抗値を変えて同調周波数を変えた場合であっても、この最大減衰量に影響を与えることはなく、同調周波数、同調周波数における利得、最大減衰量を互いに干渉しあうことなく調整することができる。
【0073】
また、第1実施例の同調増幅器1等と同様にこの実施例の同調増幅器1bは、差動増幅器やキャパシタあるいは抵抗を組み合わせて構成しており、どの構成素子も半導体基板上に形成することができることから、同調周波数および最大減衰量を調整し得る同調増幅器1bの全体を半導体基板上に形成して集積回路とすることも容易である。
【0074】
(その他の実施例)
上述した各実施例の同調増幅器に含まれる非反転回路50あるいは位相反転回路80は、トランジスタやオペアンプや抵抗等を組み合わせて簡単に構成することができる。
【0075】
図13は、オペアンプを用いて構成した非反転回路と位相反転回路の具体例を示す図である。同図(A)に示す非反転回路50は、反転入力端子が抵抗54を介して接地されているとともにこの反転入力端子と出力端子との間に抵抗56が接続されたオペアンプ52を含んで構成されており、2つの抵抗54、56の抵抗比によって定まる所定の増幅度を有するバッファとして機能する。オペアンプ52の非反転入力端子に交流信号が入力されると、オペアンプ52の出力端子からは同相の信号が出力される。
【0076】
また、同図(B)に示す位相反転回路80は、入力信号が抵抗84を介して反転入力端子に入力されるとともに非反転入力端子が接地されたオペアンプ82と、このオペアンプ82の反転入力端子と出力端子との間に接続された抵抗86とを含んで構成されている。この位相反転回路80は、2つの抵抗84、86の抵抗比によって定まる所定の増幅度を有しており、抵抗84を介してオペアンプ82の反転入力端子に交流信号が入力されると、オペアンプ82の出力端子からは位相が反転した逆相の信号が出力される。
【0077】
ところで、上述した各実施例の同調増幅器は、2つの移相回路と非反転回路あるいは位相反転回路によって構成されており、接続された複数の回路の全体によって所定の周波数において合計の位相シフト量を0°にすることにより所定の同調動作を行うようになっている。したがって、位相シフト量だけに着目すると、移相回路と非反転回路あるいは位相反転回路とをどのような順番で接続するかはある程度の自由度があり、必要に応じて接続順番を決めることができる。
【0078】
図14は、タイプが異なる2つの移相回路と非反転回路とを組み合わせて同調増幅器を構成した場合において、2つの移相回路と非反転回路50の接続状態を示す図である。なお、これらの図において、帰還側インピーダンス素子70aおよび入力側インピーダンス素子74aは、各同調増幅器の出力信号と入力信号とを所定の割合で加算するためのものであり、最も一般的には図1等に示すように、帰還側インピーダンス素子70aとして帰還抵抗70を、入力側インピーダンス素子74aとして入力抵抗74を使用する。
【0079】
但し、帰還側インピーダンス素子70aおよび入力側インピーダンス素子74aは、それぞれの素子に入力された信号の位相関係を変えることなく加算できればよいことから、帰還側インピーダンス素子70aおよび入力側インピーダンス素子74aをともにキャパシタにより、あるいは帰還側インピーダンス素子70aおよび入力側インピーダンス素子74aをともにインダクタにより形成するようにしてもよい。または、抵抗やキャパシタあるいはインダクタを組み合わせることにより、インピーダンスの実数分および虚数分の比を同時に調整しうるようにして各インピーダンス素子を形成してもよい。
【0080】
図14(A)には、タイプが異なる(一方が−型であって他方が+型である)2つの移相回路の後段に非反転回路50を配置した構成が示されている。このように、後段に非反転回路50を配置した場合には、この非反転回路50に出力バッファの機能を持たせることにより、大きな出力電流を取り出すこともできる。
【0081】
図14(B)には、タイプが異なる2つの移相回路の中間に非反転回路50を配置した構成が示されている。このように、中間に非反転回路50を配置した場合には、前段の移相回路10あるいは30と後段の移相回路30あるいは10の相互干渉を完全に防止することができる。
【0082】
図14(C)には、タイプが異なる2つの移相回路の前段に非反転回路50を配置した構成が示されており、図1に示した同調増幅器1に対応している。このように、前段に非反転回路50を配置した場合には、前段の移相回路10あるいは30に対する帰還側インピーダンス素子70aや入力側インピーダンス素子74aの影響を最小限に抑えることができる。
【0083】
同様に、図15は、同タイプの2つの移相回路を組み合わせて同調増幅器を構成した場合において、2つの移相回路と位相反転回路80の接続状態を示す図である。なお、図14について説明したように、帰還側インピーダンス素子70aおよび入力側インピーダンス素子74aは、各同調増幅器の出力信号と入力信号とを所定の割合で加算するためのものであり、最も一般的には図1等に示すように、帰還側インピーダンス素子70aとして帰還抵抗70を、入力側インピーダンス素子74aとして入力抵抗74を使用する。但し、帰還側インピーダンス素子70aおよび入力側インピーダンス素子74aは、それぞれの素子に入力された信号の位相関係を変えることなく加算できればよいことから、キャパシタ等によって形成するようにしてもよい。
【0084】
図15(A)には、同タイプの2つの移相回路の後段に位相反転回路80を配置した構成が示されている。このように、後段に位相反転回路80を配置した場合には、この位相反転回路80に出力バッファの機能を持たせることにより、大きな出力電流を取り出すこともできる。
【0085】
図15(B)には、同タイプの2つの移相回路の間に位相反転回路80を配置した構成が示されている。このように、中間に位相反転回路80を配置した場合には、2つの移相回路間の相互干渉を完全に防止することができる。
【0086】
図15(C)には、2つの移相回路の前段に位相反転回路80を配置した構成が示されており、図11に示した同調増幅器1aや図12に示した同調増幅器1bに対応している。このように、前段に位相反転回路80を配置した場合には、前段の移相回路10あるいは30に対する帰還側インピーダンス素子70aや入力側インピーダンス素子74aの影響を最小限に抑えることができる。
【0087】
また、上述した各実施例において示した移相回路10、30には可変抵抗16あるいは36が含まれている。これらの可変抵抗16、36は、具体的には接合型あるいはMOS型のFETを用いて実現することができる。
【0088】
図16は、各実施例において示した2種類の移相回路内の可変抵抗16あるいは36をFETに置き換えた場合の移相回路の構成を示す図である。
【0089】
同図(A)には、図1等に示した一方の移相回路10において、可変抵抗16をFETに置き換えた構成が示されている。同図(B)には、図1等に示した他方の移相回路30において、可変抵抗36をFETに置き換えた構成が示されている。
【0090】
このように、FETのソース・ドレイン間に形成されるチャネルを抵抗体として利用して可変抵抗16あるいは36の代わりに使用すると、ゲート電圧を可変に制御してこのチャネル抵抗をある範囲で任意に変化させて各移相回路における位相シフト量を変えることができる。したがって、各同調増幅器において一巡する信号の位相シフト量が0°となる周波数を変えることができるため、同調増幅器の同調周波数を任意に変更することができる。
【0091】
なお、図16に示した各移相回路は、可変抵抗を1つのFET、すなわちpチャネルあるいはnチャネルのFETによって構成したが、pチャネルのFETとnチャネルのFETとを並列接続して1つの可変抵抗を構成し、各FETのゲートとサブストレート間に大きさが等しく極性が異なるゲート電圧を印加するようにしてもよい。抵抗値を可変する場合にはこのゲート電圧の大きさを変えればよい。このように、2つのFETを組み合わせて可変抵抗を構成することにより、FETの非線形領域の改善を行うことができるため、同調信号の歪みを少なくすることができる。
【0092】
また、上述した各実施例において示した移相回路10あるいは30は、キャパシタ14、34と直列に接続された可変抵抗16あるいは36の抵抗値を変化させて位相シフト量を変化させることにより全体の同調周波数を変えるようにしたが、キャパシタ14、34を可変容量素子によって形成し、その静電容量を変化させることにより全体の同調周波数を変えるようにしてもよい。
【0093】
図17は、各実施例において示した2種類の移相回路内のキャパシタ14あるいは34を可変容量ダイオードに置き換えた場合の移相回路の構成を示す図である。
【0094】
同図(A)には、図1等に示した一方の移相回路10において、可変抵抗16を固定抵抗に置き換えるとともにキャパシタ14を可変容量ダイオードに置き換えた構成が示されている。同図(B)には、図1等に示した他方の移相回路30において、可変抵抗36を固定抵抗に置き換えるとともにキャパシタ34を可変容量ダイオードに置き換えた構成が示されている。
【0095】
おな、図17(A)、(B)において、可変容量ダイオードに直列に接続されたキャパシタは、可変容量ダイオードのアノード・カソード間に逆バイアス電圧を印加する際にその直流電流を阻止するためのものであり、そのインピーダンスは動作周波数において極めて小さく、すなわち大きな静電容量を有している。また、図17(A)、(B)に示したキャパシタの両端の電位は直流成分をみると一定であるため、交流成分の振幅より大きな逆バイアス電圧をアノード・カソード間に印加することにより、各可変容量ダイオードを容量可変のキャパシタとして機能させることができる。
【0096】
このように、キャパシタ14あるいは34を可変容量ダイオードで構成し、そのアノード・カソード間に印加する逆バイアス電圧の大きさを可変に制御してこの可変容量ダイオードの静電容量をある範囲で任意に変化させて各移相回路における位相シフト量を変えることができる。したがって、各同調増幅器において一巡する信号の位相シフト量が0°となる信号の周波数を変えることができ、同調増幅器の同調周波数を任意に変更することができる。
【0097】
ところで、上述した図17(A)、(B)では可変容量素子として可変容量ダイオードを用いたが、ソースおよびドレインを直流的に固定電位に接続するとともにゲートに可変電圧を印加したFETを用いるようにしてもよい。上述したように、図17(A)、(B)に示した可変容量ダイオードの両端電位は直流的に固定されているため、これらの可変容量ダイオードを上述したFETに置き換えるだけでよく、ゲートに印加する電圧を可変することによりゲート容量、すなわちFETが有する静電容量を変えることができる。
【0098】
また、上述した図17(A)、(B)では可変容量ダイオードの静電容量のみを可変したが、同時に可変抵抗16あるいは36の抵抗値を可変するようにしてもよい。図17(C)には、図1等に示した一方の移相回路10において、可変抵抗16を用いるとともにキャパシタ14を可変容量ダイオードに置き換えた構成が示されている。同図(D)には、図1等に示した他方の移相回路30において、可変抵抗36を用いるとともにキャパシタ34を可変容量ダイオードに置き換えた構成が示されている。これらにおいて可変容量ダイオードをゲート容量可変のFETに置き換えてもよいことは当然である。
【0099】
また、図17(C)、(D)に示した可変抵抗を図16に示したようにFETのチャネル抵抗を利用して形成することができることはいうまでもない。特に、pチャネルのFETとnチャネルのFETとを並列接続して1つの可変抵抗を構成し、各FETのベースとサブストレート間に大きさが等しく極性が異なるゲート電圧を印加した場合には、FETの非線形領域の改善を行うことができるため、同調信号の歪みを少なくすることができる。
【0100】
このように、可変抵抗と可変容量素子を組み合わせて移相回路を構成した場合であっても、可変抵抗の抵抗値および可変容量素子の静電容量をある範囲で任意に変化させて各移相回路における位相シフト量を変えることができる。したがって、各同調増幅器において一巡する信号の位相シフト量が0°となる信号の周波数を変えることができ、同調増幅器の同調周波数を任意に変更することができる。
【0101】
また、上述したように可変抵抗や可変容量素子を用いる場合の他、素子定数が異なる複数の抵抗あるいはキャパシタを用意しておいて、スイッチを切り換えることにより、これら複数の素子の中から1つあるいは複数を選ぶようにしてもよい。この場合にはスイッチ切り換えにより接続する素子の個数および接続方法(直列接続、並列接続あるいはこれらの組み合わせ)によって、素子定数を不連続に切り換えることができる。例えば、可変抵抗の代わりに抵抗値がR、2R、4R、…といった2のn乗の系列の複数の抵抗を用意しておいて、1つあるいは任意の複数を選択して直列接続することにより、等間隔の抵抗値の切り換えをより少ない素子で容易に実現することができる。同様に、キャパシタの代わりに静電容量がC、2C、4C、…といった2のn乗の系列の複数のキャパシタを用意しておいて、1つあるいは任意の複数を選択して並列接続することにより、等間隔の静電容量の切り換えをより少ない素子で容易に実現することができる。このため、同調周波数が複数ある回路、例えばAMラジオにこの実施例の同調増幅器を適用して、複数の放送局から1局を選局して受信するような用途に適している。
【0102】
また、上述した各実施例の同調増幅器1等を半導体基板上に形成した場合には、キャパシタ14あるいは34としてあまり大きな静電容量を設定することができない。したがって、半導体基板上に実際に形成したキャパシタの小さな静電容量を、回路を工夫することにより見かけ上大きくすることができれば、時定数Tを大きな値に設定して同調周波数の低周波数化を図る際に都合がよい。
【0103】
図18は、図1等に示した移相回路10、30に用いたキャパシタ14あるいは34を素子単体ではなく回路によって構成した変形例を示す図であり、実際に半導体基板上に形成されるキャパシタの静電容量を見かけ上大きくみせる静電容量変換回路として機能する。なお、図18に示した回路全体が移相回路10、30に含まれるキャパシタ14あるいは34に対応している。
【0104】
図18に示す静電容量変換回路14aは、所定の静電容量C0を有するキャパシタ210と、2つのオペアンプ212、214と、4つの抵抗216、218、220、222とを含んで構成されている。
【0105】
1段目のオペアンプ212は、出力端子と反転入力端子との間に抵抗218(この抵抗値をR18とする)が接続されており、さらにこの反転入力端子が抵抗216(この抵抗値をR16とする)を介して接地されている。
【0106】
1段目のオペアンプ212の非反転入力端子に印加される電圧E1と出力端子に現れる電圧E2との間には、
【数19】
の関係がある。この1段目のオペアンプ212は、主にインピーダンス変換を行うバッファとして機能するものであり、利得は1であってもよい。利得1の場合とはR18/R16=0のとき、すなわちR16を無限大(抵抗216を除去すればよい)、あるいはR18を0Ω(直結すればよい)に設定する。
【0107】
また、2段目のオペアンプ214は、出力端子と反転入力端子との間に抵抗222(この抵抗値をR22とする)が接続されているとともに反転入力端子と上述したオペアンプ212の出力端子との間に抵抗220(この抵抗値をR20とする)が接続されており、さらに非反転入力端子が接地されている。
【0108】
2段目のオペアンプ214の出力端子に現れる電圧をE3とすると、この電圧E3と1段目のオペアンプ212の出力端子に現れる電圧E2との間には、
【数20】
の関係がある。このように2段目のオペアンプ214は反転増幅器として機能するものであり、その入力側を高インピーダンスに設定するために1段目のオペアンプ212が使用されている。
【0109】
また、このような接続がなされた1段目のオペアンプ212の非反転入力端子と2段目のオペアンプ214の出力端子との間には、上述したように所定の静電容量を有するキャパシタ210が接続されている。
【0110】
図18に示した静電容量変換回路14aにおいて、キャパシタ210を除く回路全体の伝達関数をK4とすると、静電容量変換回路14aは図19に示すシステム図で表すことができる。図20は、これをミラーの定理によって変換したシステム図である。
【0111】
図19に示したインピーダンスZ0を用いて図20に示したインピーダンスZ1を表すと、
【数21】
となる。ここで、図18に示した静電容量変換回路14aの場合には、インピーダンスZ0=1/(jωC0)であり、これを(21)式に代入して、
【数22】
【数23】
となる。この(23)式は、静電容量変換回路14aにおいてキャパシタ210が有する静電容量C0が見掛け上は(1−K4)倍になったことを示している。
【0112】
したがって、増幅器の利得K4が負の場合には常に(1−K4)は1より大きくなるため、静電容量C0を大きいほうに変化させることができる。
【0113】
ところで、図18に示した静電容量変換回路14aにおける増幅器の利得、すなわちオペアンプ212と214の全体により構成される増幅器の利得K4は、(19)式および(20)式から、
【数24】
となる。この(24)式を(23)式に代入すると、
【数25】
となる。したがって、4つの抵抗216、218、220、222の抵抗値を所定の値に設定することにより、2つの端子224、226間の見掛け上の静電容量Cを大きくすることができる。
【0114】
また、1段目のオペアンプ212による増幅器の利得が1の場合、すなわち上述したようにR16を無限大(抵抗216を除去)、あるいはR18を0Ωに設定したときであってR18/R16=0の場合には、上述した(25)式は簡略化されて、
【数26】
となる。
【0115】
図21は、図18に示した第1のオペアンプ212の反転入力端子に接続されている抵抗216を除去した静電容量変換回路14bの構成を示す図である。この場合には、端子224、226間に現れる静電容量Cは(26)式により表されるため、R22とR20の比を変化させるだけでC0から大きいほうに変化させることができる。
【0116】
このように、上述した静電容量変換回路14aあるいは14bは、抵抗220と抵抗222との抵抗比R22/R20あるいは抵抗216と抵抗218との抵抗比R18/R16を変えることにより、実際に半導体基板上に形成するキャパシタ210の静電容量C0を見掛け上大きい方に変換することができる。そのため、半導体基板上に図1等に示した同調増幅器1等の全体を形成するような場合には、半導体基板上に小さな静電容量C0を有するキャパシタ210を形成しておいて、図18あるいは図21に示した回路によって大きな静電容量Cに変換することができ、集積化に際して好都合となる。特に、このようにして大きな静電容量を確保することができれば、図1に示した同調増幅器1等の全体の実装面積を小型化して、材料コスト等の低減も可能となる。
【0117】
また、抵抗216、218、220、222の中の少なくとも1つ(図21に示した静電容量変換回路14bの場合は抵抗220、222の少なくとも1つ)を可変抵抗により形成することにより、具体的には接合型やMOS型のFETあるいはpチャネルFETとnチャネルFETとを並列に接続して可変抵抗を形成することにより、容易に静電容量が可変の静電容量変換回路を形成することができる。したがって、この静電容量変換回路を図17に示した可変容量ダイオードの代わりに使用することにより、位相シフト量をある範囲で任意に変化させることができる。このため、同調増幅器において一巡する信号の位相シフト量が0°となる周波数を変えることができ、上述した同調増幅器の同調周波数を任意に変更することができる。
【0118】
なお、上述したように第1段目のオペアンプ212は入力インピーダンスを高くするためのバッファとして用いているため、このオペアンプ212をエミッタホロワ回路あるいはソースホロワ回路に置き換えるようにしてもよい。
【0119】
図22は、1段目にエミッタホロワ回路を用いた静電容量変換回路14cの構成を示す図である。同図に示す静電容量変換回路14cは、図18に示した1段目のオペアンプ212および2つの抵抗216、218をバイポーラトランジスタと抵抗からなるエミッタホロワ回路228に置き換えた構成を有している。
【0120】
図23は、1段目にソースホロワ回路を用いた静電容量変換回路14dの構成を示す図である。同図に示す静電容量変換回路14dは、図18に示した1段目のオペアンプ212および2つの抵抗216、218をFETと抵抗からなるソースホロワ回路230に置き換えた構成を有している。
【0121】
また、上述した静電容量変換回路14c、14dのそれぞれは、オペアンプ214に接続されている抵抗220、222の抵抗比を変えることにより端子224、226間の見掛け上の静電容量Cを任意に変化させることができる点は図18等に示した静電容量変換回路14a等と同じである。したがって、抵抗220、222の少なくとも一方を、接合型やMOS型のFETあるいはpチャネルFETとnチャネルFETとを並列に接続した可変抵抗に置き換えることにより、静電容量が可変の静電容量変換回路を構成することができ、この静電容量変換回路を図17に示した可変容量ダイオードの代わりに使用することにより、位相シフト量をある範囲で任意に変化させることができる。このため、各同調増幅器において一巡する信号の位相シフト量が0°となる周波数を変えることができ、同調周波数を任意に変更することができる。
【0122】
なお、この発明は上記実施例に限定されるものではなく、この発明の要旨の範囲内で種々の変形実施が可能である。
【0123】
例えば、上述した各実施例の同調増幅器においては、移相回路10、30内の差動増幅器12、32によって2入力の差分を2倍に増幅して各移相回路の出力とすることにより、同調増幅器のループゲインをほぼ1に設定するようにしたが、差動増幅器12、32の増幅度をこれ以外の値に設定してもよい。例えば、各差動増幅器12、32において2入力の差分を増幅せずに、あるいは2倍以外の増幅度で増幅して出力するとともに、非反転回路50あるいは位相反転回路80の増幅度を調整して同調増幅器のループゲインをほぼ1に設定するようにしてもよい。
【0124】
また、図1等に示した各同調増幅器においては、帰還側インピーダンス素子として抵抗値が固定の帰還抵抗70を用い、入力側インピーダンス素子として抵抗値が固定の入力抵抗74を用いるようにしたが、少なくとも一方の抵抗を可変抵抗により構成して最大減衰量を任意に変更可能に形成してもよい。この場合に、可変抵抗を図16に示したようにFETのチャネル抵抗を利用して形成することができることはいうまでもない。特に、pチャネルのFETとnチャネルのFETとを並列接続して1つの可変抵抗を構成し、各FETのベースとサブストレート間に大きさが等しく極性が異なるゲート電圧を印加した場合には、FETの非線形領域の改善を行うことができるため、同調信号の歪みを少なくすることができる。
【0125】
同様に、帰還側インピーダンス素子および入力側インピーダンス素子をキャパシタとした場合には少なくとも一方を可変容量ダイオードやゲート容量可変のFETにより構成して最大減衰量を任意に変更可能に形成してもよい。
【0126】
また、上述した実施例の同調増幅器1等には2つの移相回路が含まれているが、同調周波数を可変する場合には、両方の移相回路に含まれるCR回路を構成するキャパシタと抵抗の少なくとも一方の素子定数を変える場合の他、一方の移相回路に含まれるCR回路を構成するキャパシタと抵抗の少なくとも一方の素子定数を変える場合が考えられる。また、全ての抵抗やインダクタの各素子定数を固定して、同調周波数が固定の同調増幅器を構成することもできる。
【0127】
【発明の効果】
以上の各実施例に基づく説明から明らかなように、この発明の同調増幅器を構成する各素子は集積回路の製法によって形成することが可能であるから、同調増幅器を半導体ウエハ上に集積回路として小型に形成でき、大量生産によって安価に作ることができる。
【0128】
特に、各移相回路におけるCR回路の可変抵抗としてFETのソース・ドレイン間のチャネルを使用し、このFETのゲートに印加する制御電圧を変化させてチャネルの抵抗を変化させるように構成すると、制御電圧を印加する配線のインダクタンスや静電容量の影響を回避することができ、ほぼ設計どおりの理想的な特性を備えた同調増幅器を得ることができる。
【0129】
また、この発明の同調増幅器は、最大減衰量が入力側インピーダンス素子と帰還側インピーダンス素子の抵抗比によって決まるとともに、同調周波数が各移相回路におけるCR回路の時定数によって決まるため、最大減衰量や同調周波数および同調周波数における利得を互いに干渉しあうことなく設定することができる。
【0130】
従来のLC共振を利用した同調増幅器においては、同調周波数ωが1/√LCであるから、同調周波数を調整するために静電容量CまたはインダクタンスLを変化させると、同調周波数はその変化量の平方根に比例して変化するが、この発明の同調増幅器では同調周波数ωが例えば1/(CR)であって、同調周波数は抵抗値Rあるいは静電容量Cに比例して変化させることができるので、大幅な変更および調整が可能となる。
【図面の簡単な説明】
【図1】この発明を適用した第1実施例の同調増幅器の構成を示す回路図、
【図2】図1に示した前段の移相回路の構成を抜き出して示した図、
【図3】前段の移相回路の入出力電圧とキャパシタ等に現れる電圧との関係を示すベクトル図、
【図4】図2に示した移相回路を等価的に表した図、
【図5】図1に示した後段の移相回路の構成を抜き出して示した図、
【図6】後段の移相回路の入出力電圧とキャパシタ等に現れる電圧との関係を示すベクトル図、
【図7】図5に示した移相回路を等価的に表した図、
【図8】2つの移相回路および非反転回路の全体を伝達関数K1を有する回路に置き換えたシステム図、
【図9】図8に示すシステムをミラーの定理によって変換したシステム図、
【図10】この実施例の同調増幅器の同調特性を示す図、
【図11】第2実施例の同調増幅器の構成を示す回路図、
【図12】第3実施例の同調増幅器の構成を示す回路図、
【図13】非反転回路および位相反転回路の具体例を示す図、
【図14】移相回路と非反転回路との接続形態を示す図、
【図15】移相回路と位相反転回路との接続形態を示す図、
【図16】移相回路の可変抵抗をFETに置き換えた移相回路の構成を示す図、
【図17】移相回路のキャパシタを可変容量ダイオードに置き換えた移相回路の構成を示す図、
【図18】キャパシタが実際に有する静電容量を見かけ上大きくする静電容量変換回路の構成を示す図、
【図19】図18に示した回路を伝達関数を用いて表した図、
【図20】図19に示す構成をミラーの定理によって変換した図、
【図21】図18の回路を簡略化した静電容量変換回路の構成を示す図、
【図22】1段目にエミッタホロワ回路を用いた静電容量変換回路の構成を示す図、
【図23】1段目にソースホロワ回路を用いた静電容量変換回路の構成を示す図、
【図24】従来の同調増幅器における同調周波数、同調周波数における利得、最大減衰量の関係の一例を示す特性曲線図である。
【符号の説明】
1 同調増幅器
10、30 移相回路
12、32 差動増幅器
14、34 キャパシタ
16、36 可変抵抗
18、20、38、40 抵抗
50 非反転回路
70 帰還抵抗
74 入力抵抗
90 入力端子
92 出力端子
Claims (27)
- 入力信号が一方端に入力される入力側インピーダンス素子と、帰還信号が一方端に入力される帰還側インピーダンス素子とを含んでおり、前記入力信号と前記帰還信号とを加算する加算回路と、
入力される交流信号が両端に印加される抵抗値がほぼ等しい第1および第2の抵抗により構成された第1の直列回路と、前記交流信号が両端に印加される第3の抵抗とキャパシタにより構成された第2の直列回路と、前記第1の直列回路を構成する前記第1および第2の抵抗の接続点の電位と前記第2の直列回路を構成する前記第3の抵抗と前記キャパシタの接続点の電位との差分を所定の増幅度で増幅して出力する差動増幅器とを含む2つの移相回路と、
を備え、前記2つの移相回路を縦続接続し、これら縦続接続された2つの移相回路の中の前段の移相回路に対して前記加算回路によって加算された信号を入力するとともに、後段の移相回路から出力される信号を前記帰還信号として前記帰還側インピーダンス素子の一方端に入力し、これら2つの移相回路のいずれかの出力を同調信号として取り出すことを特徴とする同調増幅器。 - 入力端子に入力される交流信号が一方端に入力される入力側インピーダンス素子と、帰還信号が一方端に入力される帰還側インピーダンス素子とを含んでおり、前記入力端子に入力される交流信号と前記帰還信号とを加算する加算回路と、
入力される交流信号が両端に印加される抵抗値がほぼ等しい第1および第2の抵抗により構成された第1の直列回路と、前記交流信号が両端に印加される第3の抵抗とキャパシタにより構成された第2の直列回路と、前記第1の直列回路を構成する前記第1および第2の抵抗の接続点の電位と前記第2の直列回路を構成する前記第3の抵抗と前記キャパシタの接続点の電位との差分を所定の増幅度で増幅して出力する差動増幅器とを含む2つの移相回路と、
入力される交流信号の位相を変えずに出力する非反転回路と、
を備え、前記2つの移相回路および前記非反転回路のそれぞれを縦続接続し、これら縦続接続された複数の回路の中の初段の回路に対して前記加算回路によって加算された信号を入力するとともに、最終段の回路から出力される信号を前記帰還信号として前記帰還側インピーダンス素子の一方端に入力し、これら複数の回路のいずれかの出力を同調信号として取り出すことを特徴とする同調増幅器。 - 請求項1または2において、
前記第2の直列回路を構成する前記第3の抵抗および前記キャパシタの接続の仕方を、前記2つの移相回路において反対にしたことを特徴とする同調増幅器。 - 入力端子に入力される交流信号が一方端に入力される入力側インピーダンス素子と、帰還信号が一方端に入力される帰還側インピーダンス素子とを含んでおり、前記入力端子に入力される交流信号と前記帰還信号とを加算する加算回路と、
入力される交流信号が両端に印加される抵抗値がほぼ等しい第1および第2の抵抗により構成された第1の直列回路と、前記交流信号が両端に印加される第3の抵抗とキャパシタにより構成された第2の直列回路と、前記第1の直列回路を構成する前記第1および第2の抵抗の接続点の電位と前記第2の直列回路を構成する前記第3の抵抗と前記キャパシタの接続点の電位との差分を所定の増幅度で増幅して出力する差動増幅器とを含む2つの移相回路と、
入力される交流信号の位相を反転して出力する位相反転回路と、
を備え、前記2つの移相回路および前記位相反転回路のそれぞれを縦続接続し、これら縦続接続された複数の回路の中の初段の回路に対して前記加算回路によって加算された信号を入力するとともに、最終段の回路から出力される信号を前記帰還信号として前記帰還側インピーダンス素子の一方端に入力し、これら複数の回路のいずれかの出力を同調信号として取り出すことを特徴とする同調増幅器。 - 請求項4において、
前記第2の直列回路を構成する前記第3の抵抗および前記キャパシタの接続の仕方を、前記2つの移相回路において同じにしたことを特徴とする同調増幅器。 - 請求項1〜5のいずれかにおいて、
前記入力側インピーダンス素子および前記帰還側インピーダンス素子のそれぞれは抵抗であることを特徴とする同調増幅器。 - 請求項6において、
前記入力側インピーダンス素子および前記帰還側インピーダンス素子の少なくとも一方を可変抵抗により形成し、前記入力側インピーダンス素子および前記帰還側インピーダンス素子の抵抗比を変えることにより、最大減衰量を変化させることを特徴とする同調増幅器。 - 請求項1〜5のいずれかにおいて、
前記入力側インピーダンス素子および前記帰還側インピーダンス素子のそれぞれはキャパシタであることを特徴とする同調増幅器。 - 請求項8において、
前記入力側インピーダンス素子および前記帰還側インピーダンス素子の少なくとも一方を可変容量素子により形成し、前記入力側インピーダンス素子および前記帰還側インピーダンス素子の静電容量比を変化させることにより、最大減衰量を変えることを特徴とする同調増幅器。 - 請求項1〜5のいずれかにおいて、
前記2つの移相回路の少なくとも一方に含まれる前記第3の抵抗を可変抵抗により形成し、この抵抗値を変えることにより、同調周波数を変化させることを特徴とする同調増幅器。 - 請求項7または10において、
前記可変抵抗をFETのチャネルによって形成し、ゲート電圧を変えてチャネル抵抗を変えることを特徴とする同調増幅器。 - 請求項7または10において、
前記可変抵抗をpチャネル型のFETとnチャネル型のFETとを並列接続することにより形成し、極性が異なる各FETのゲート電圧の大きさを変えてチャネル抵抗を変えることを特徴とする同調増幅器。 - 請求項1〜5のいずれかにおいて、
前記2つの移相回路の少なくとも一方に含まれる前記キャパシタを可変容量素子により形成し、この静電容量を変えることにより、同調周波数を変化させることを特徴とする同調増幅器。 - 請求項9または13において、
前記可変容量素子を逆バイアス電圧が変更可能な可変容量ダイオード、あるいはゲート電圧可変によってゲート容量が変更可能なFETによって形成することを特徴とする同調増幅器。 - 請求項1〜5のいずれかにおいて、
前記2つの移相回路の少なくとも一方に含まれる前記第3の抵抗として抵抗値が固定の複数の抵抗を有しており、スイッチ切り換えにより選択的に接続することにより、同調周波数を変化させることを特徴とする同調増幅器。 - 請求項1〜5のいずれかにおいて、
前記2つの移相回路の少なくとも一方に含まれる前記キャパシタとして静電容量が固定の複数のキャパシタを有しており、スイッチ切り換えにより選択的に接続することにより、同調周波数を変化させることを特徴とする同調増幅器。 - 請求項1〜5のいずれかにおいて、
前記2つの移相回路の少なくとも一方に含まれる前記キャパシタを、利得が負の値を有する増幅器と、前記増幅器の入出力間に並列接続されたキャパシタ素子に置き換えることにより、前記増幅器の入力側からみた静電容量を実際に前記キャパシタ素子が有する静電容量よりも大きくすることを特徴とする同調増幅器。 - 請求項17において、
前記増幅器の利得を可変して前記増幅器の入力側からみた静電容量を変えることにより、同調周波数を変化させることを特徴とする同調増幅器。 - 入力側インピーダンス素子を介して入力された交流信号を同相で出力する非反転回路と、
2つの抵抗の直列接続およびキャパシタと抵抗との直列接続よりなり、前記非反転回路の出力が印加される第1のブリッジ回路と、前記第1のブリッジ回路の2つの出力の差を得る第1の差動増幅器とを有し、前記第1のブリッジ回路に入力された信号を移相する第1の移相回路と、
2つの抵抗の直列接続および抵抗とキャパシタとの直列接続よりなり、前記第1の移相回路の出力が印加される第2のブリッジ回路と、前記第2のブリッジ回路の2つの出力の差を得る第2の差動増幅器とを有し、前記第2のブリッジ回路に入力された信号を前記第1の移相回路とは反対方向に移相する第2の移相回路と、
前記第2の移相回路の出力を帰還側インピーダンス素子を介して前記非反転回路の入力へ帰還する回路と、
を備えることを特徴とする同調増幅器。 - 請求項19において、
前記第1の移相回路の前記キャパシタと直列接続された抵抗の抵抗値および/または前記第2の移相回路の前記キャパシタと直列接続された前記抵抗の抵抗値を変化させて同調周波数を変化させることを特徴とする同調増幅器。 - 請求項19において、
前記入力側インピーダンス素子および前記帰還側インピーダンス素子の素子定数の比を変化させて最大減衰量を変化させることを特徴とする同調増幅器。 - 請求項19において、
各抵抗をFETのチャネルで形成し、このチャネル抵抗を変化させることを特徴とする同調増幅器。 - 入力抵抗を介して入力された交流信号を反転して出力する位相反転回路と、
2つの抵抗の直列接続およびキャパシタと抵抗との直列接続よりなり、前記位相反転回路の出力が印加される第1のブリッジ回路と、前記第1のブリッジ回路の2つの出力の差を得る第1の差動増幅器とを有し、前記第1のブリッジ回路に入力された信号を移相する第1の移相回路と、
2つの抵抗の直列接続およびキャパシタと抵抗との直列接続よりなり、前記第1の移相回路の出力が印加される第2のブリッジ回路と、前記第2のブリッジ回路の2つの出力の差を得る第2の差動増幅器とを有し、前記第2のブリッジ回路に入力された信号を前記第1の移相回路と同じ方向に移相する第2の移相回路と、
前記第2の移相回路の出力を帰還抵抗を介して前記位相反転回路の入力へ帰還する回路と、
を備えることを特徴とする同調増幅器。 - 請求項23において、
前記第1の移相回路のキャパシタと直列接続された抵抗の抵抗値および/または前記第2の移相回路のキャパシタと直列接続された抵抗の抵抗値を変化させて同調周波数を変化させることを特徴とする同調増幅器。 - 請求項23において、
前記入力抵抗および前記帰還抵抗の抵抗値の比を変化させて最大減衰量を変化させることを特徴とする同調増幅器。 - 請求項23において、
各抵抗をFETのチャネルで形成し、このチャネル抵抗を変化させることを特徴とする同調増幅器。 - 請求項1〜26のいずれかにおいて、
半導体集積回路として形成することを特徴とする同調増幅器。
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JP14520595A JP3625526B2 (ja) | 1994-06-13 | 1995-05-22 | 同調増幅器 |
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