JP3628407B2 - 同調増幅器 - Google Patents

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毅 池田
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Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
この発明は、集積化が容易な同調増幅器に関し、特に、同調周波数と最大減衰量とを互いに干渉することなく、任意に調整し得る同調増幅器に関する。
【0002】
【従来の技術および発明が解決しようとする課題】
同調増幅器として従来より能動素子およびリアクタンス素子を使用した各種の増幅回路が提案され実用化されている。
【0003】
例えばLC共振を利用した従来の同調増幅器は、同調周波数を調整するとLC回路に依存するQと利得が変化し、最大減衰量を調整すると同調周波数が変化する。あるいは、図18の特性曲線AおよびBに示すように、最大減衰量を調整すると同調周波数における利得が変化する。
【0004】
このように、従来の同調増幅器においては、同調周波数、同調周波数における利得、最大減衰量C1、C2を互いに干渉しあうことなく調整することは極めて困難であった。また、同調周波数および最大減衰量を調整し得る同調増幅器を集積回路によって形成することは困難であった。
【0005】
本発明は、このような点に鑑みて創作されたものであり、その目的は集積化に適しており、同調周波数、同調周波数における利得、最大減衰量を互いに干渉することなく調整することができ、特に同調周波数を可変したときに出力振幅の変化を抑え、しかも同調と同時に信号振幅の増幅が可能な同調増幅器を提供することにある。
【0006】
【課題を解決するための手段】
上述した課題を解決するために、本発明の同調増幅器は、全域通過型の2つの移相回路、非反転回路、分圧回路および帰還信号と入力信号とを加算する加算回路とを有している。全域通過型の2つの移相回路全体による位相シフト量の合計が360°となる周波数の信号のみが選択されるため、所定の同調動作が行われる。また、加算回路を構成する帰還インピーダンス素子と入力インピーダンス素子のいずれかの素子定数を変えて、帰還信号と入力信号とを加算する割合を変えることにより、同調周波数近傍の同調帯域幅とこの同調周波数から遠ざかったときの最大減衰量を変えることができる。また、各移相回路に含まれる第2の直列回路(CR回路あるいはLR回路)の時定数を変えることにより、各移相回路におる位相シフト量が変わるため、同調周波数を変化させることができる。しかも、2つの移相回路は全域通過型であるため、上述した同調帯域幅、最大減衰量あるいは同調周波数を変化させた場合であっても、同調周波数における出力信号の振幅、すなわち同調増幅器の利得は変化しない。さらに、同調増幅器の出力として、分圧回路によって分圧される前の信号が取り出されているため、入力信号よりも振幅が大きな出力信号を得ることができ、同調動作と同時に信号振幅の増幅が可能となる。
【0007】
【発明の実施の形態】
以下、本発明を適用した一の実施形態の同調増幅器について、図面を参照しながら具体的に説明する。
【0008】
〔第1の実施形態〕
図1は、本発明を適用した第1の実施形態の同調増幅器の構成を示す回路図である。同図に示す同調増幅器1は、入力される交流信号の位相を変えずに出力する非反転回路50と、それぞれが入力信号の位相を所定量シフトさせることにより所定の周波数において合計で360°の位相シフトを行う2つの移相回路10C、30Cと、後段の移相回路30Cのさらに後段に設けられた抵抗62および64からなる分圧回路60と、帰還抵抗70および入力抵抗74(入力抵抗74は帰還抵抗70のn倍の抵抗値を有しているものとする)のそれぞれを介することにより分圧回路60の分圧出力(帰還信号)と入力端子90に入力される信号(入力信号)とを所定の割合で加算する加算回路とを含んで構成されている。
【0009】
なお、非反転回路50はバッファ回路として機能するものであり、前段の移相回路10Cと上述した加算回路とを直接接続した場合に生じる信号の損失等を防止するために設けられている。例えば、エミッタホロワ回路やソースホロワ回路等により構成されている。直接接続した場合の損失等を最小限に抑えるように帰還抵抗70等の各素子の素子定数を選定した場合には、この非反転回路50を省略して同調回路を構成してもよい。
【0010】
図2は、図1に示した前段の移相回路10Cの構成を抜き出して示したものである。同図に示す前段の移相回路10Cは、2入力の差分電圧を所定の増幅度で増幅して出力する差動増幅器12と、入力端22に入力された信号の位相を所定量シフトさせて差動増幅器12の非反転入力端子に入力する可変抵抗16およびキャパシタ14(これらの可変抵抗16、キャパシタ14により第2の直列回路が構成される)と、入力端22に入力された信号の位相を変えずにその電圧レベルを約1/2に分圧して差動増幅器12の反転入力端子に入力する抵抗18および20(これら2つの抵抗18、20により第1の直列回路が構成される)とを含んで構成されている。
【0011】
このような構成を有する移相回路10Cにおいて、所定の交流信号が入力端22に入力されると、差動増幅器12の反転入力端子には、入力端22に印加される電圧Ei を抵抗18と抵抗20とによって約1/2に分圧した電圧が印加される。
【0012】
一方、入力信号が入力端22に入力されると、差動増幅器12の非反転入力端子には、可変抵抗16とキャパシタ14の接続点に現れる信号が入力される。可変抵抗16とキャパシタ14により構成されるCR回路の一方端には入力信号が入力されているため、入力信号の位相をこのCR回路によって所定量シフトした信号の電圧が差動増幅器12の非反転入力端子には印加される。差動増幅器12は、このようにして2つの入力端子に印加される電圧の差分を所定の増幅度で増幅した信号を出力する。
【0013】
図3は、移相回路10Cの入出力電圧とキャパシタ等に現れる電圧との関係を示すベクトル図である。
【0014】
同図に示すように、キャパシタ14の両端に現れる電圧VC1と可変抵抗16の両端に現れる電圧VR1は、互いに位相が90°ずれており、これらをベクトル的に加算したものが入力電圧Ei となる。したがって、入力信号の振幅が一定で周波数のみが変化した場合には、図3に示す半円の円周に沿ってキャパシタ14の両端電圧VC1と可変抵抗16の両端電圧VR1とが変化する。
【0015】
また、差動増幅器12の非反転入力端子に印加される電圧(キャパシタ14の両端電圧VC1)から反転入力端子に印加される電圧(抵抗20の両端電圧Ei /2)をベクトル的に減算したものが差分電圧Eo ′となる。この差分電圧Eo ′は、図3に示した半円において、その中心点を始点とし、電圧VC1と電圧VR1とが交差する円周上の一点を終点とするベクトルで表すことができ、その大きさは半円の半径Ei /2に等しくなる。
【0016】
差動増幅器12の出力電圧Eo はこの差分電圧Eo ′を所定の増幅度で増幅したものとなる。したがって、上述した移相回路10Cにおいて、出力電圧Eo は入力信号の周波数によらず一定であって、全域通過回路として動作する。
【0017】
また、図3から明らかなように、電圧VC1と電圧VR1とは円周上で直角に交わるため、入力電圧Ei と電圧VC1との位相差は、周波数ωが0から∞まで変化するに従って0°から90°まで変化する。そして、移相回路10C全体の位相シフト量φ1 はその2倍であり、周波数に応じて0°から180°まで変化する。
【0018】
同様に、図4は図1に示した後段の移相回路30Cの構成を抜き出して示したものである。同図に示す後段の移相回路30Cは、2入力の差分電圧を所定の増幅度で増幅して出力する差動増幅器32と、入力端42に入力された信号の位相を所定量シフトさせて差動増幅器32の非反転入力端子に入力するキャパシタ34および可変抵抗36(これらのキャパシタ34、可変抵抗36により第2の直列回路が構成される)と、入力端42に入力された信号の位相を変えずにその電圧レベルを約1/2に分圧して差動増幅器32の反転入力端子に入力する抵抗38および40(これら2つの抵抗38、40により第1の直列回路が構成される)とを含んで構成されている。
【0019】
このような構成を有する移相回路30Cにおいて、所定の交流信号が入力端42に入力されると、差動増幅器32の反転入力端子には、入力端42に印加される電圧Ei を抵抗38と抵抗40とによって約1/2に分圧した電圧が印加される。
【0020】
一方、入力信号が入力端42に入力されると、差動増幅器32の非反転入力端子には、キャパシタ34と可変抵抗36の接続点に現れる信号が入力される。キャパシタ34と可変抵抗36により構成されるCR回路の一方端には入力信号が入力されているため、入力信号の位相をこのCR回路によって所定量シフトした信号の電圧が差動増幅器32の非反転入力端子には印加される。差動増幅器32は、このようにして2つの入力端子に印加される電圧の差分を所定の増幅度で増幅した信号を出力する。
【0021】
図5は、移相回路30Cの入出力電圧とキャパシタ等に現れる電圧との関係を示すベクトル図である。
【0022】
同図に示すように、可変抵抗36の両端に現れる電圧VR2とキャパシタ34の両端に現れる電圧VC2は、互いに位相が90°ずれており、これらをベクトル的に加算したものが入力電圧Ei となる。したがって、入力信号の振幅が一定で周波数のみが変化した場合には、図5に示す半円の円周に沿って可変抵抗36の両端電圧VR2とキャパシタ34の両端電圧VC2とが変化する。
【0023】
また、差動増幅器32の非反転入力端子に印加される電圧(可変抵抗36の両端電圧VR2)から反転入力端子に印加される電圧(抵抗40の両端電圧Ei /2)をベクトル的に減算したものが差分電圧Eo ′となる。この差分電圧Eo ′は、図5に示した半円において、その中心点を始点とし、電圧VR2と電圧VC2とが交差する円周上の一点を終点とするベクトルで表すことができ、その大きさは半円の半径Ei /2に等しくなる。
【0024】
差動増幅器32の出力電圧Eo はこの差分電圧Eo ′を所定の増幅度で増幅したものとなる。したがって、上述した移相回路30Cにおいて、出力電圧Eo は入力信号の周波数によらず一定であって、全域通過回路として動作する。
【0025】
また、図5から明らかなように、電圧VR2と電圧VC2とは円周上で直角に交わるため、入力電圧Ei と電圧VR2との位相差は、周波数ωが0から∞まで変化するに従って90°から0°まで変化する。そして、移相回路30C全体の位相シフト量φ2 はその2倍であり、周波数に応じて180°から0°まで変化する。
【0026】
このようにして、2つの移相回路10C、30Cのそれぞれにおいて位相が所定量シフトされる。しかも、図3および図5に示すように、各移相回路10C、30Cのそれぞれにおける入出力電圧の相対的な位相関係は反対方向であって、所定の周波数において2つの移相回路10C、30Cの全体により位相シフト量の合計が360°となる信号が出力される。
【0027】
また、後段の移相回路30Cの出力は、出力端子92から同調増幅器1の出力として取り出されるとともに、この移相回路30Cの出力を分圧回路60を通した信号が帰還抵抗70を介して非反転回路50の入力側に帰還されている。そして、この帰還された信号と入力抵抗74を介して入力される信号とが加算され、この加算された信号が非反転回路50を介して前段の移相回路10Cに入力されている。
【0028】
また、上述した2つの移相回路10C、30Cの各利得を調整することにより、図1に示した2つの移相回路10C、30C、分圧回路60および帰還抵抗70を含んで形成される帰還ループのオープンループゲインが1以下になるように設定されている。すなわち、分圧回路60や帰還抵抗70を通すことにより信号振幅の減衰が生じるが、この減衰分を移相回路10C、30Cによる増幅で補うことにより、同調増幅器全体の帰還ループのオープンループゲインが1以下になるように設定されている。なお、移相回路10C、30Cの各利得を調整する代わりに、非反転回路50に1以上の利得を持たせ、この値を調整してもよい。
【0029】
また、同調増幅器1の出力端子92からは、分圧回路60に入力される前の移相回路30Cの出力信号が取り出されているため、同調増幅器1自体に利得を持たせることができ、後述する同調動作と同時に信号振幅の増幅が可能となる。
【0030】
図6は、上述した構成を有する2つの移相回路10C、30Cおよびその前後に接続された非反転回路50および分圧回路60の全体を伝達関数K1 を有する回路に置き換えたシステム図であり、伝達関数K1 を有する回路と並列に抵抗R0 を有する帰還抵抗70が、直列に帰還抵抗70のn倍の抵抗値(nR0 )を有する入力抵抗74が接続されている。図7は、図6に示すシステムをミラーの定理によって変換したシステム図であり、変換後のシステム全体の伝達関数Aは、
A=Vo /Vi =K1 /{n(1−K1 )+1} ・・・(1)
で表すことができる。
【0031】
ところで、前段の移相回路10Cの伝達関数K2 は、可変抵抗16とキャパシタ14からなるCR回路の時定数をT(可変抵抗16の抵抗値をR、キャパシタ14の静電容量をCとするとT=CR)とすると、
K2 =a(1−Ts)/(1+Ts) ・・・(2)
となる。ここで、s=jω、aは移相回路10Cの利得であって1以上の値となる。
【0032】
また、後段の移相回路30Cの伝達関数K3 は、キャパシタ34と可変抵抗36からなるCR回路の時定数をT(可変抵抗36の抵抗値をR、キャパシタ34の静電容量をCとするとT=CR)とすると、
K3 =−a(1−Ts)/(1+Ts) ・・・(3)
となる。ここで、aは移相回路30Cの利得であって1以上の値となる。
【0033】
また、分圧回路60の利得をa(≦1)、非反転回路50の利得をaとするとともに、これら分圧回路60および非反転回路50による信号の減衰等を補うために2つの移相回路10C、30Cの利得a、aを設定すると、非反転回路50、移相回路10C、30Cおよび分圧回路60を縦続接続した場合の全体の伝達関数K1 は、
K1 =−{1+(Ts)−2Ts}/{1+(Ts)+2Ts}・・・(4)
となる。なお、計算を簡単なものとするために、各移相回路の時定数T、T をともにTとした。この(4)式を上述した(1)式に代入すると、
Figure 0003628407
となる。
【0034】
この(5)式によれば、ω=0(直流の領域)のときにA=−1/(2n+1)となって、最大減衰量を与えることがわかる。また、ω=∞のときにもA=−1/(2n+1)となって、最大減衰量を与えることがわかる。さらに、ω=1/Tの同調点(各移相回路の時定数が異なる場合には、ω=1/√(T・T )の同調点)においてはA=1であって帰還抵抗70と入力抵抗74の抵抗比nに無関係であることがわかる。換言すれば、図8に示すように、nの値を変化させても同調点がずれることなく、かつ同調点の減衰量も変化しない。
【0035】
しかも、前段の移相回路10C内の可変抵抗16の抵抗値、あるいは後段の移相回路30C内の可変抵抗36の抵抗値の少なくとも一方を変えることにより、移相回路10Cあるいは30Cに含まれるCR回路の時定数を変化させることができ、同調周波数ωをある範囲で任意に変化させることができる。
【0036】
なお、(2)式あるいは(3)式から図3、図5に示したφ1 、φ2 を求めると、
φ1 =tan{2ωT/(1−ω )} ・・・(6)
φ2 =−tan{2ωT/(1−ω )} ・・・(7)
となる。なお、ここでは図3に示したφ1 を基準に考えて、図5に示したφ2 の符号を「−」として表した。
【0037】
例えばT=T(=T)の場合には、ω=1/Tのときに2つの移相回路10C、30Cによる位相シフト量の合計が360°となって上述した同調動作が行われ、このときφ1 =90°、φ2 =−90°となる。
【0038】
ところで、図5では前段の移相回路30Cの入力電圧と同相の電圧Ei よりも出力電圧Eo の方が位相が進んでいるように図示したが、実際には入力信号を基準に考えると出力信号は常に遅れ位相の状態にある。
【0039】
図9は、2つの移相回路10C、30Cに入出力される信号間の位相関係を示す図であり、前段の移相回路10Cに同調周波数と等しい周波数の信号が入力された場合であって、一例として各移相回路10C、30Cの時定数T、Tが等しい場合が示されている。
【0040】
前段の移相回路10Cは、図9(A)に示すように、入力信号S1に対してφ1 (=90°)の位相シフトを行って、出力信号S2を出力している。
【0041】
また、後段の移相回路30Cは、図9(B)に示すように、入力信号S2(前段の移相回路10Cの出力信号と共通)に対してφ2 の位相シフトを行って、出力信号S3を出力している。ここで、出力信号S3は入力信号S2に対して、一見90°位相が進んでいるように見えるが、実際には信号が反転してさらに90°の位相遅れになるので、位相遅れ方向にφ2 ′=270°の位相シフトが行われる。
【0042】
したがって、2つの移相回路10C、30Cを縦続接続した場合には、図9(C)に示すように、上述したφ1 =90°とφ2 ′=270°が足し合わされて、全体として360°の位相シフトが行われる。
【0043】
別の見方をすれば、同調増幅器1に入力される信号の中で2つの移相回路10C、30Cによる位相シフト量の合計が360°以外の周波数成分は閉ループを循環する際に減衰し、位相シフト量の合計が360°となる周波数成分のみが選択、出力されて所定の同調動作が行われる。
【0044】
このように、上述した同調増幅器1によれば、入力抵抗74の抵抗値を可変して帰還抵抗70と入力抵抗74の抵抗比nを変えても同調周波数および同調時の利得が一定であり、最大減衰量のみを変化させることができる。なお、帰還抵抗70と入力抵抗74の抵抗比を変えるには、少なくとも一方を可変抵抗によって形成すればよい。
【0045】
また、移相回路10Cあるいは30C内のCR回路を構成する可変抵抗の抵抗値を変えることにより、このCR回路の時定数を変化させることができるため、1/√(T)によって算出される同調周波数ωもある範囲で可変することができる。
【0046】
また、最大減衰量は、帰還抵抗70と入力抵抗74の抵抗比nによって決定されるため、移相回路10Cあるいは30C内のCR回路を構成する可変抵抗の抵抗値を変えて同調周波数を変えた場合であっても、この最大減衰量に影響を与えることはなく、同調周波数や最大減衰量を互いに干渉しあうことなく調整することができる。
【0047】
また、移相回路30Cの後段に分圧回路60を接続して、この分圧回路60による分圧出力を帰還信号として用いるとともに分圧前の信号を同調増幅器1の出力として取り出すことにより、同調動作と同時に信号の増幅を行うことができる。
【0048】
また、上述した同調増幅器1は、差動増幅器、キャパシタおよび抵抗を組み合わせて構成しており、どの構成素子も半導体基板上に形成することができることから、同調周波数および最大減衰量を調整し得る同調増幅器1の全体を半導体基板上に形成して集積回路とすることも容易である。
【0049】
〔第2の実施形態〕
上述した第1の実施形態の同調増幅器1は、各移相回路10C、30CをCR回路を含んで構成したが、CR回路を抵抗とインダクタからなるLR回路に置き換えた移相回路を用いて同調増幅器を構成することもできる。
【0050】
図10は、LR回路を含む移相回路の構成を示す回路図であり、図1に示した同調増幅器1の前段の移相回路10Cと置き換え可能な構成が示されている。同図に示す移相回路10Lは、2入力の差分電圧を所定の増幅度で増幅して出力する差動増幅器12と、入力端22に入力された信号の位相を所定量シフトさせて差動増幅器12の非反転入力端子に入力するインダクタ17および可変抵抗16と、入力端22に入力された信号の位相を変えずにその電圧レベルを約1/2に分圧して差動増幅器12の反転入力端子に入力する抵抗18および20とを含んで構成されている。なお、インダクタ17に直列に接続されたキャパシタ19は直流電流阻止用であり、そのインピーダンスは動作周波数において極めて小さく設定され、すなわち大きな静電容量を有している。
【0051】
この移相回路10Lは、図2に示した移相回路10C内の可変抵抗16とキャパシタ14からなるCR回路を、インダクタ17と可変抵抗16からなるLR回路に置き換えた構成を有している。
【0052】
図11は、移相回路10Lの入出力電圧とインダクタ等に現れる電圧との関係を示すベクトル図である。図2に示した移相回路10Cと同様に、差動増幅器12の非反転入力端子に印加される電圧(可変抵抗16の両端電圧VR3)から反転入力端子に印加される電圧(抵抗20の両端電圧Ei /2)をベクトル的に減算したものが差分電圧Eo ′となる。この差分電圧Eo ′は、図11に示した半円において、その中心点を始点とし、電圧VR3とインダクタ17の両端電圧VL1とが交差する円周上の一点を終点とするベクトルで表すことができ、その大きさは半円の半径Ei /2に等しくなる。差動増幅器12の出力電圧Eo はこの差分電圧Eo ′を所定の増幅度で増幅したものであり、移相回路10Lは、出力電圧Eo が入力信号の周波数によらず一定であって全域通過回路として動作する。
【0053】
また、図11に示した移相回路10Lの位相シフト量φ3 は、インダクタ17と可変抵抗16により構成されるLR回路の時定数をT(インダクタ17のインダクタンスをL、可変抵抗16の抵抗値をRとするとT=L/R)とすると、上述した(6)式に示したφ1 と同じとなる。
【0054】
図12は、LR回路を含む移相回路の他の構成を示す回路図であり、図1に示した同調増幅器1の後段の移相回路30Cと置き換え可能な構成が示されている。同図に示す移相回路30Lは、2入力の差分電圧を所定の増幅度で増幅して出力する差動増幅器32と、入力端42に入力された信号の位相を所定量シフトさせて差動増幅器32の非反転入力端子に入力する可変抵抗36およびインダクタ37と、入力端42に入力された信号の位相を変えずにその電圧レベルを約1/2に分圧して差動増幅器32の反転入力端子に入力する抵抗38および40とを含んで構成されている。なお、インダクタ37に直列に接続されたキャパシタ39は直流電流阻止用であり、そのインピーダンスは動作周波数において極めて小さく設定され、すなわち大きな静電容量を有している。
【0055】
この移相回路30Lは、図4に示した移相回路30C内のキャパシタ34と可変抵抗36からなるCR回路を、可変抵抗36とインダクタ37からなるLR回路に置き換えた構成を有している。
【0056】
図13は、移相回路30Lの入出力電圧とインダクタ等に現れる電圧との関係を示すベクトル図である。図4に示した移相回路30Cと同様に、差動増幅器32の非反転入力端子に印加される電圧(インダクタ37の両端電圧VL2)から反転入力端子に印加される電圧(抵抗40の両端電圧Ei /2)をベクトル的に減算したものが差分電圧Eo ′となる。この差分電圧Eo ′は、図13に示した半円において、その中心点を始点とし、電圧VL2と可変抵抗36の両端電圧VR4とが交差する円周上の一点を終点とするベクトルで表すことができ、その大きさは半円の半径Ei /2に等しくなる。差動増幅器32の出力電圧Eo はこの差分電圧Eo ′を所定の増幅度で増幅したものであり、移相回路30Lは、出力電圧Eo が入力信号の周波数によらず一定であって全域通過回路として動作する。
【0057】
また、図13に示した移相回路30Lの位相シフト量φ4 は、可変抵抗36とインダクタ37により構成されるLR回路の時定数をT(可変抵抗36の抵抗値をR、インダクタ37のインダクタンスをLとするとT=L/R)とすると、上述した(7)式に示したφ2 と同じとなる。
【0058】
このように、図10に示した移相回路10Lおよび図12に示した移相回路30Lのそれぞれは、図2あるいは図4に示した移相回路10C、30Cと等価であり、図1に示した同調増幅器1において、前段の移相回路10Cを図10に示した移相回路10Lに、後段の移相回路30Cを図12に示した移相回路30Lにそれぞれ置き換えることが可能である。
【0059】
また、上述した2つの移相回路10L、30Lのそれぞれは、各移相回路10L、30Lに含まれるLR回路の時定数によって同調周波数が決まることになるが、各時定数Tは例えばL/Rであって、同調周波数ωは1/T=R/Lに比例する。ここで、LR回路を構成するインダクタは、写真触刻法等により渦巻き形状の導体を半導体基板上に形成することにより実現できるが、このようにして形成したインダクタを用いることにより、同調増幅器の全体を半導体基板上に集積化することができる。
【0060】
但し、この場合にはインダクタが有するインダクタンスが極めて小さくなるため、同調周波数が高くなる。別の見方をすれば、同調増幅器の同調周波数は例えば各移相回路10L、30L内のLR回路の時定数の逆数R/Lに比例し、この中でインダクタンスLは集積化等により小さくすることが容易であるため、2つの移相回路10L、30Lを含んで構成した同調増幅器全体を集積化することにより同調周波数の高周波化が容易となる。
【0061】
また、図1に示した同調増幅器1において、移相回路10C、30Cのいずれか一方を図10あるいは図12に示した移相回路10L、30Lに置き換えるようにしてもよい。特に、このような同調増幅器全体を集積化した場合には、温度変化による同調周波数の変動を防止する、いわゆる温度補償が可能となる。すなわち、CR回路の時定数TはCRであり、LR回路の時定数TはL/Rであって、それぞれにおいて抵抗値Rが分子と分母に分かれるため、集積化によってCR回路およびLR回路を構成する抵抗を半導体材料によって形成するような場合には、これら各抵抗の温度変化に対する同調周波数の変動を抑制する効果がある。
【0062】
〔第3の実施形態〕
上述した第1および第2の実施形態の同調増幅器は、互いに移相方向が異なる2つの移相回路を含んで構成したが、基本的に同じ構成を有する2つの移相回路を組み合わせて同調増幅器を構成することもできる。
【0063】
図14は、本発明の第3の実施形態の同調増幅器の構成を示す回路図である。同図に示す同調増幅器1Aは、入力される交流信号の位相を反転して出力する位相反転回路80と、それぞれが入力される交流信号の位相を所定量シフトさせることにより所定の周波数において合計で180°の位相シフトを行う2つの移相回路10Cと、後段の移相回路10Cのさらに後段に設けられた抵抗62および64からなる分圧回路60と、帰還抵抗70および入力抵抗74(入力抵抗74は帰還抵抗70の抵抗値のn倍の抵抗値を有しているものとする)のそれぞれを介することにより分圧回路60の分圧出力(帰還信号)と入力端子90に入力される信号(入力信号)とを所定の割合で加算する加算回路とを含んで構成されている。
【0064】
前段および後段の移相回路10Cは、その詳細構成および入出力信号の位相関係は図2および図3を用いて説明した通りであり、例えば可変抵抗16とキャパシタ14からなるCR回路の時定数をTとすると、ω=1/Tの周波数において位相シフト量φ1 が遅れ位相方向に90°となり、2つの移相回路10Cの全体による位相シフト量の合計が180°となる。
【0065】
また、2つの移相回路10Cの前段に接続された位相反転回路80は、入力される交流信号の位相を反転するものであり、例えば、エミッタ接地回路やソース接地回路あるいはオペアンプと抵抗を組み合わせた回路によって実現される。
【0066】
このように、所定の周波数において、2つの移相回路10Cによって位相が180°シフトされ、さらにその前段に接続された位相反転回路80によって位相が反転され、これら3つの回路の全体による位相シフト量の合計が360°となる。
【0067】
また、後段の移相回路10Cの出力は出力端子92から同調増幅器1Aの出力として取り出されるとともに、後段の移相回路10Cの出力を分圧回路60を通した信号が帰還抵抗70を介して位相反転回路80の入力側に帰還されている。そして、この帰還される信号と入力抵抗74を介して入力される信号とが加算され、この加算された信号が位相反転回路80に入力されている。
【0068】
このように、分圧回路60の出力を帰還抵抗70を介して位相反転回路80の入力側に帰還させ、この帰還信号に入力抵抗74を介して入力した信号を加算するとともに、2つの移相回路10Cの利得を調整して分圧回路60や帰還抵抗70と入力抵抗74の接続部において生じる損失等を補って帰還ループのオープンループゲインを1以下に設定することにより、図1に示した同調増幅器1と同様の同調動作および増幅動作を行うことができる。なお、移相回路10Cの各利得を調整する代わりに、位相反転回路80の利得を調整してもよい。
【0069】
図15は、第3の実施形態の同調増幅器の他の構成を示す回路図である。同図に示す同調増幅器1Bは、入力される交流信号の位相を反転して出力する位相反転回路80と、それぞれが入力される交流信号の位相を所定量シフトさせることにより所定の周波数において合計で180°の位相シフトを行う2つの移相回路30Cと、後段の移相回路30Cのさらに後段に設けられた抵抗62および64からなる分圧回路60と、帰還抵抗70および入力抵抗74(入力抵抗74は帰還抵抗70の抵抗値のn倍の抵抗値を有しているものとする)のそれぞれを介することにより分圧回路60の分圧出力(帰還信号)と入力端子90に入力される信号(入力信号)とを所定の割合で加算する加算回路とを含んで構成されている。
【0070】
前段および後段の移相回路30Cは、その詳細構成および入出力信号の位相関係は図4および図5を用いて説明した通りであり、例えばキャパシタ34と可変抵抗36からなるCR回路の時定数をTとすると、ω=1/Tの周波数において位相シフト量φ2 が進み位相方向に90°となり、2つの移相回路30Cの全体による位相シフト量の合計が180°となる。
【0071】
このように、上述した2つの移相回路30Cを用いた場合であっても、所定の周波数において2つの移相回路30Cによって位相が180°シフトされ、さらにその前段に接続された位相反転回路80によって位相が反転され、これら3つの回路の全体による位相シフト量の合計が360°となる。
【0072】
したがって、上述した同調増幅器1Bは、分圧回路60の出力を帰還抵抗70を介して位相反転回路80の入力側に帰還させ、この帰還信号に入力抵抗74を介して入力した信号を加算するとともに、2つの移相回路30Cの利得を調整して分圧回路60や帰還抵抗70と入力抵抗74の接続部において生じる損失等を補って帰還ループのオープンループゲインを1以下に設定することにより、図14に示した同調増幅器1A等と同様の同調動作および増幅動作を行うことができる。
【0073】
なお、図14、図15に示した同調増幅器1A、1Bは、いずれも2つの移相回路をCR回路を含んで構成したが、少なくとも一方をLR回路を含んで構成するようにしてもよい。
【0074】
具体的には、図14に示した同調増幅器1Aにおいて、前段あるいは後段の移相回路10Cを図10に示した移相回路10Lに置き換える。または、2つの移相回路10Cの両方を上述した移相回路10Lに置き換える。
【0075】
また、図15に示した同調増幅器1Bにおいて、前段あるいは後段の移相回路30Cを図12に示した移相回路30Lに置き換える。または、2つの移相回路30Cの両方を上述した移相回路30Lに置き換える。
【0076】
特に、両方の移相回路をLR回路を有する移相回路に置き換えた場合には、同調増幅器全体を集積化することにより同調周波数の高周波化が容易となり、一方の移相回路をLR回路を有する移相回路に置き換えた場合には、温度変化による同調周波数の変動を防止する、いわゆる温度補償が可能となる。
【0077】
〔その他の実施形態〕
ところで、上述した各種の同調増幅器1等は、非反転回路と2つの移相回路あるいは位相反転回路と2つの移相回路を含んで構成されており、接続された3つの回路の全体によって所定の周波数において合計の位相シフト量を360°にすることにより所定の同調動作を行うようになっている。したがって、位相シフト量だけに着目すると、2つの移相回路のどちらを前段に用いるか、あるいは上述した3つの回路をどのような順番で接続するかはある程度の自由度があり、必要に応じて接続順番を決めることができる。
【0078】
図16は、2つの移相回路と非反転回路50を組み合わせて同調増幅器を構成した場合において、その接続状態を示す図である。なお、これらの図において、帰還インピーダンス素子70aおよび入力インピーダンス素子74aは、各同調増幅器の出力信号と入力信号とを所定の割合で加算するためのものであり、最も一般的には図1等に示すように、帰還インピーダンス素子70aとして帰還抵抗70を、入力インピーダンス素子74aとして入力抵抗74を使用する。
【0079】
但し、帰還インピーダンス素子70aおよび入力インピーダンス素子74aは、それぞれの素子に入力された信号の位相関係を変えることなく加算できればよいことから、帰還インピーダンス素子70aおよび入力インピーダンス素子74aをともにキャパシタにより形成したり、抵抗やキャパシタ等を組み合わせてインピーダンスの実数分と虚数分の比を同時に調整しうるようにしてもよい。
【0080】
また、図16および後述する図17に示した同調増幅器の構成には分圧回路60を除いた構成を示したが、実際には最終段の回路のさらに後段にこの分圧回路60を接続し、分圧後の信号を帰還信号として用いるとともに分圧前の信号を出力として取り出せばよい。
【0081】
図16(A)には2つの移相回路の後段に非反転回路50を配置した構成が示されている。このように、後段に非反転回路50を配置した場合には、この非反転回路50に出力バッファの機能を持たせることにより、大きな出力電流を取り出すこともできる。
【0082】
図16(B)には2つの移相回路の間に非反転回路50を配置した構成が示されている。このように、中間に非反転回路50を配置した場合には、前段の移相回路と後段の移相回路の相互干渉を完全に防止することができる。
【0083】
図16(C)には2つの移相回路のさらに前段に非反転回路50を配置した構成が示されており、図1に示した同調増幅器1に対応している。このように、初段に非反転回路50を配置した場合には、帰還インピーダンス素子70aや入力インピーダンス素子74aと非反転回路50の接続部において生じる損失等を防止することができる。
【0084】
同様に、図17は、2つの移相回路と位相反転回路を組み合わせて同調増幅器を構成した場合において、その接続状態を示す図である。
【0085】
図17(A)には2つの移相回路の後段に位相反転回路80を配置した構成が示されている。このように、後段に位相反転回路80を配置した場合には、この位相反転回路80に出力バッファの機能を持たせることにより、大きな出力電流を取り出すこともできる。
【0086】
図17(B)には2つの移相回路の間に位相反転回路80を配置した構成が示されており、この場合には2つの移相回路間の相互干渉を完全に防止することができる。図17(C)には2つの移相回路のさらに前段に位相反転回路80を配置した構成が示されており、図14に示した同調増幅器1Aあるいは図15に示した同調増幅器1Bに対応している。この場合には帰還インピーダンス素子70aや入力インピーダンス素子74aと位相反転回路80の接続部において生じる損失等を防止することができる。
【0087】
本発明は上述した各種の実施形態に限定されるものではなく、この発明の要旨の範囲内で種々の変形実施が可能である。
【0088】
例えば、上述した各種の同調増幅器に含まれる可変抵抗16、36は、半導体基板上に集積化するには接合型あるいはMOS型のFETのチャネルを抵抗体として用いて実現することができる。このようにFETによって可変抵抗を形成した場合には、ゲート電圧を可変することによりソース・ドレイン間の抵抗を変化させることができる。
【0089】
また、上述した可変抵抗16、36をpチャネルのFETとnチャネルのFETとを並列接続して構成してもよい。このように、2つのFETを組み合わせて可変抵抗を構成することにより、FETの非線形領域の改善を行うことができるため、同調出力の歪みを少なくすることができる。
【0090】
また、上述した各種の同調増幅器においては、2つの移相回路に可変抵抗を含ませておいたが、どちらか一方の移相回路に可変抵抗を含ませておいて同調周波数を変化させるようにしてもよい。2つの移相回路に可変抵抗を含ませておいた場合には、これらの抵抗値を同時に可変することにより同調周波数の可変範囲を大きく設定できる利点がある。一方の移相回路のみに可変抵抗を含ませておいた場合には、同調周波数の可変制御が容易に行えるという利点がある。
【0091】
また、上述した可変抵抗をPINダイオードによって構成し、このPINダイオードに流す電流値を変化させて、両端に現れる抵抗を変化させるようにしてもよい。
【0092】
また、CR回路を有する移相回路においては、各移相回路内のCR回路を構成する抵抗の抵抗値を変化させるのではなく、キャパシタの静電容量を変えることによりCR回路の時定数を変化させ、これにより移相回路の位相シフト量、すなわち同調増幅器の同調周波数を変化させるようにしてもよい。
【0093】
具体的には、CR回路を構成するキャパシタ(例えば図2に示したキャパシタ14)を可変容量ダイオードと直流電流阻止用のキャパシタに置き換える。可変容量ダイオードは、印加する逆バイアス電圧を変えることによりアノード・カソード間の静電容量が変化するものである。このような可変容量ダイオードと抵抗とを直列接続してCR回路を構成することにより、印加する逆バイアス電圧を変えてこのCR回路の時定数を変えることができ、移相回路による位相シフト量を変化させることができる。
【0094】
また、この可変容量ダイオードの代わりに、ゲートに印加する制御電圧に応じてそのゲート容量がある範囲で変更可能なFETを可変容量素子として用いるようにしてもよい。
【0095】
また、上述したように可変抵抗や可変容量素子を用いる場合の他、素子定数が異なる複数の抵抗、キャパシタあるいはインダクタを用意しておいて、スイッチを切り換えることにより、これら複数の素子の中から1つあるいは複数を選ぶようにしてもよい。この場合にはスイッチ切り換えにより接続する素子の個数および接続方法(直列接続、並列接続あるいはこれらの組み合わせ)によって、素子定数を不連続に切り換えることができる。
【0096】
例えば、可変抵抗の代わりに抵抗値がR、2R、4R、…といった2のn乗の系列の複数の抵抗を用意しておいて、1つあるいは任意の複数を選択して直列接続することにより、等間隔の抵抗値の切り換えをより少ない素子で容易に実現することができる。同様に、キャパシタの代わりに静電容量がC、2C、4C、…といった2のn乗の系列の複数のキャパシタを用意しておいて、1つあるいは任意の複数を選択して並列接続することにより、等間隔の静電容量の切り換えをより少ない素子で容易に実現することができる。このため、同調周波数が複数ある回路、例えばAMラジオにこの実施形態の同調増幅器を適用して、複数の放送局から1局を選局して受信するような用途に適している。
【0097】
【発明の効果】
以上の各実施形態に基づく説明から明らかなように、この発明の同調増幅器は、最大減衰量が入力インピーダンス素子と帰還インピーダンス素子の抵抗比nによって決まるとともに、同調周波数が各移相回路におけるCR回路やLR回路の時定数によって決まるため、最大減衰量や同調周波数および同調周波数における利得を互いに干渉しあうことなく設定することができる。
【0098】
また、同調増幅器内の2つの移相回路をCR回路を含んで構成した場合には、同調増幅器全体を容易に集積化することができる。同様に、2つの移相回路をLR回路を含んで構成した場合には、集積化によって小さなインダクタを形成することにより容易に同調周波数の高周波化が可能となる。一方の移相回路をCR回路を含んで、他方の移相回路をLR回路を含んで構成した場合には、温度等による特性の変動を防止して特性の安定化が可能となる。
【0099】
また、同調増幅器の出力として分圧回路を通す前の信号を取り出すことにより、同調増幅器に増幅作用を持たせることができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明を適用した第1の実施形態の同調増幅器の構成を示す回路図である。
【図2】図1に示した前段の移相回路の構成を抜き出して示した回路図である。
【図3】前段の移相回路の入出力電圧とキャパシタ等に現れる電圧との関係を示すベクトル図である。
【図4】図1に示した後段の移相回路の構成を抜き出して示した回路図である。
【図5】後段の移相回路の入出力電圧とキャパシタ等に現れる電圧との関係を示すベクトル図である。
【図6】2つの移相回路の全体を所定の伝達関数を有する回路に置き換えた回路図である。
【図7】図6に示す構成をミラーの定理によって変換した回路図である。
【図8】図1に示した同調増幅器の同調特性を示す図である。
【図9】同調増幅器に含まれる2つの移相回路に入出力される信号間の位相関係を示す図である。
【図10】図2に示した移相回路と置き換え可能な移相回路の構成を示す回路図である。
【図11】図10に示した移相回路の入出力電圧とインダクタ等に現れる電圧との関係を示すベクトル図である。
【図12】図4に示した移相回路と置き換え可能な移相回路の構成を示す回路図である。
【図13】図12に示した移相回路の入出力電圧とインダクタ等に現れる電圧との関係を示すベクトル図である。
【図14】本発明を適用した第3の実施形態の同調増幅器の構成を示す回路図である。
【図15】第3の実施形態の同調増幅器の他の構成を示す回路図である。
【図16】移相回路と非反転回路の接続形態を示す図である。
【図17】移相回路と位相反転回路の接続形態を示す図である。
【図18】従来の同調増幅器における同調周波数、同調周波数における利得、最大減衰量の関係の一例を示す特性曲線図である。
【符号の説明】
1 同調増幅器
10C、30C 移相回路
12、32 差動増幅器
14、34 キャパシタ
16、36 可変抵抗
18、20、38、40 抵抗
50 非反転回路
70 帰還抵抗
74 入力抵抗
90 入力端子
92 出力端子
60 分圧回路

Claims (8)

  1. 縦続接続された全域通過型の2つの移相回路および分圧回路と、これら縦続接続された複数の回路の最終段の出力を初段の入力側に帰還させるとともにこの帰還信号と入力信号とを加算して初段の回路に入力する加算回路とを有する同調増幅器において、
    前記2つの移相回路のそれぞれは、
    抵抗値がほぼ等しい第1および第2の抵抗により構成されており、入力される交流信号が両端に印加される第1の直列回路と、キャパシタあるいはインダクタによるリアクタンス素子と第3の抵抗により構成されており、前記交流信号が両端に印加される第2の直列回路と、前記第1の直列回路を構成する前記第1および第2の抵抗の接続点の電位と前記第2の直列回路を構成する前記リアクタンス素子と前記第3の抵抗の接続点の電位との差分を所定の増幅度で増幅して出力する差動増幅器とを含み、互いに移相方向が反対であり、
    前記2つの移相回路の全体により位相シフト量の合計が360°となる周波数近傍の信号のみを通過させるとともに、前記分圧回路に入力前の信号を同調出力として取り出すことを特徴とする同調増幅器。
  2. 縦続接続された全域通過型の2つの移相回路、非反転回路および分圧回路と、これら縦続接続された複数の回路の最終段の出力を初段の入力側に帰還させるとともにこの帰還信号と入力信号とを加算して初段の回路に入力する加算回路とを有する同調増幅器において、
    前記2つの移相回路のそれぞれは、
    抵抗値がほぼ等しい第1および第2の抵抗により構成されており、入力される交流信号が両端に印加される第1の直列回路と、キャパシタあるいはインダクタによるリアクタンス素子と第3の抵抗により構成されており、前記交流信号が両端に印加される第2の直列回路と、前記第1の直列回路を構成する前記第1および第2の抵抗の接続点の電位と前記第2の直列回路を構成する前記リアクタンス素子と前記第3の抵抗の接続点の電位との差分を所定の増幅度で増幅して出力する差動増幅器とを含み、互いに移相方向が反対であり、
    前記2つの移相回路の全体により位相シフト量の合計が360°となる周波数近傍の信号のみを通過させるとともに、前記分圧回路に入力前の信号を同調出力として取り出すことを特徴とする同調増幅器。
  3. 縦続接続された全域通過型の2つの移相回路、位相反転回路および分圧回路と、これら縦続接続された複数の回路の最終段の出力を初段の入力側に帰還させるとともにこの帰還信号と入力信号とを加算して初段の回路に入力する加算回路とを有する同調増幅器において、
    前記2つの移相回路のそれぞれは、
    抵抗値がほぼ等しい第1および第2の抵抗により構成されており、入力される交流信号が両端に印加される第1の直列回路と、キャパシタあるいはインダクタによるリアクタンス素子と第3の抵抗により構成されており、前記交流信号が両端に印加される第2の直列回路と、前記第1の直列回路を構成する前記第1および第2の抵抗の接続点の電位と前記第2の直列回路を構成する前記リアクタンス素子と前記第3の抵抗の接続点の電位との差分を所定の増幅度で増幅して出力する差動増幅器とを含み、互いに移相方向が同じであり、
    前記2つの移相回路の全体により位相シフト量の合計が180°となる周波数近傍の信号のみを通過させるとともに、前記分圧回路に入力前の信号を同調出力として取り出すことを特徴とする同調増幅器。
  4. 請求項1〜3のいずれかにおいて、
    前記加算回路は、前記帰還信号が入力される帰還インピーダンス素子と、前記入力信号が入力される入力インピーダンス素子とを有しており、これら帰還インピーダンス素子と入力インピーダンス素子の素子定数の比を可変することにより、全体の同調帯域幅および最大減衰量を変化させることを特徴とする同調増幅器。
  5. 請求項1〜4のいずれかにおいて、
    前記2つの移相回路の少なくとも一方に含まれる前記第2の直列回路の時定数を可変することにより同調周波数を変化させることを特徴とする同調増幅器。
  6. 請求項5において、
    前記第2の直列回路を構成する前記第3の抵抗を可変抵抗によって形成し、この可変抵抗の抵抗値を変えることを特徴とする同調増幅器。
  7. 請求項6において、
    前記可変抵抗をpチャネル型のFETとnチャネル型のFETとを並列接続することにより形成し、ゲート電圧を変えることにより並列接続された各FETのチャネル抵抗を変えることを特徴とする同調増幅器。
  8. 請求項1〜7のいずれかにおいて、
    構成部品を半導体基板上に一体形成したことを特徴とする同調増幅器。
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