JP3766469B2 - 同調回路 - Google Patents
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Description
【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、ラジオ受信機等に用いられる同調回路に関する。
【0002】
【従来の技術】
AMラジオ等の各種の受信機には種々の周波数の信号が入力されるが、これらの信号の中から所望の信号を選局して受信するには、入力回路にバンドパスフィルタの特性を持たせ、受信周波数に応じてバンドパスフィルタの中心周波数を変えればよい。ところが、受信周波数に応じてバンドパスフィルタの中心周波数を安定した同調特性を維持しながら変えることが難しいことから、バンドパスフィルタの中心周波数を常に等しくするとともに、受信周波数をバンドパスフィルタの中心周波数に変換して所望の信号のみを取り出すスーパーヘテロダイン方式の受信機が汎用されている。
【0003】
【発明が解決しようとする課題】
ところで、上述した従来の受信機においては、入力回路をバーアンテナとバリコンによるLC共振回路によって形成するのが一般的であり、バリコンが不可欠の構成要素であった。また、スーパーヘテロダイン方式の受信機は、選択度を向上させるために、この入力回路による同調周波数と局部発振回路の発振周波数とを連動させる同調機構を備えており、この同調機構の連動を2連バリコンによって行っていた。上述したバリコンや2連バリコンは受信周波数に応じて所定の静電容量を有するように作られていて大きさが決まっていることから、同調機構全体の小型化や集積化が難しかった。また、上述した2連バリコンは、構造上静電容量の可変幅や静電容量そのものの値が小さいため、これと組み合わせるバーアンテナのインダクタンスを大きくする必要があった。
【0004】
また、スーパーヘテロダイン方式の受信機の局部発振回路や中間周波増幅回路には従来から局部発振トランスや中間周波トランスが使用されており(最近では中間周波増幅をセラミックフィルタを用いて行うものもある)、これらのトランスは外付け部品であって、この点からも同調機構全体の集積化が難しかった。
【0005】
本発明は、このような点に鑑みて創作されたものであり、その目的はバリコンが不要であって集積化に適した同調回路を提供することを目的とする。
【0006】
【課題を解決するための手段】
発明の一実施の形態を示す図1に対応づけて本発明を説明すると、本発明は、アンテナの1次コイルからなるインダクタと第1の抵抗とで構成される第1の直列回路を有する移相回路と、キャパシタおよび第2の抵抗からなる第2の直列回路を有する移相回路とを縦続接続し、1次コイルに磁気結合された2次コイルの両端から同調信号を取り出す。
【0007】
1次および2次コイルは、例えば受信機のバーアンテナ内部のコイルを用いて構成され、1次コイルに磁気結合された2次コイルから同調信号を取り出すため、同調信号のノイズを低減できるとともに、直流分をカットするためのキャパシタが不要となり、製造コストを低減できる。
【0008】
請求項2に記載の同調回路内の少なくとも一方の移相回路は、第3および第4の抵抗が反転入力端子に接続され、直列回路が非反転入力端子に接続された差動増幅器を備えるため、移相回路に入力された信号の位相は周波数に応じた量だけシフトして出力される。
【0009】
請求項3に記載の同調回路内の少なくとも一方の移相回路は、差動増幅器の出力端子に第1の分圧回路を接続し、この第1の分圧回路を介して差動増幅器の出力を入力側に帰還させるため、第3および第4の抵抗の抵抗比を1に設定しても、利得を稼ぐことができる。
【0010】
請求項4に記載の同調回路内の少なくとも一方の移相回路は、一方端が差動増幅器の反転入力端子に接続され他方端が接地された第3の抵抗を設けるため、第1および第2の抵抗の抵抗比を1以外にしても、同調出力の振幅変動を抑制できる。また、移相回路内に分圧回路を設ける必要もなくなる。
【0011】
請求項5に記載の同調回路は、縦続接続された2つの移相回路によって形成される閉ループの一部に非反転回路を挿入するため、移相回路を通過することによって損失が生じても非反転回路で利得を稼ぐことができる。
【0012】
請求項6に記載の同調回路は、縦続接続された2つの移相回路によって形成される閉ループの一部に位相反転回路を挿入するため、移相回路を通過することによって損失が生じても位相反転回路で利得を稼ぐことができる。
【0013】
請求項7および8に記載の同調回路は、移相回路内の直列回路の時定数を変更すると位相シフト量が変化することに着目し、この時定数を変えることで同調周波数を変更する。
【0014】
請求項10に記載の同調回路は、例えば受信機のバーアンテナに含まれる1次および2次コイル以外の構成部品を半導体基板上に一体形成するため、小型化が図れる。
【0015】
【発明の実施の形態】
以下、本発明の同調増幅器の一実施形態について、図面を参照しながら具体的に説明する。
【0016】
〔第1の実施形態〕
図1は、同調回路の第1の実施形態の詳細構成を示す回路図である。図1に示す同調回路は、所定の周波数において合計で360°の位相シフトを行う2つの移相回路10Lおよび30Cと、移相回路30Cの出力を移相回路10Lの入力側に帰還させる帰還抵抗70と、帰還抵抗70を介して帰還させた信号の一部を分岐するために設けられた可変抵抗74とを含んで構成されている。
【0017】
図2は、図1に示した前段の移相回路10Lの構成を抜き出して示したものである。同図に示す前段の移相回路10Lは、差動増幅器の一種であるオペアンプ12と、抵抗16およびインダクタ17AからなるLR回路と、仮想的な入力端22とオペアンプ12の反転入力端子との間に挿入された抵抗18と、オペアンプ12の出力端子に接続され分圧回路を構成する抵抗21および23と、この分圧回路とオペアンプ12の反転入力端子との間に挿入された抵抗20とを含んで構成されている。
【0018】
このような構成を有する移相回路10Lにおいて、抵抗18と抵抗20の抵抗値は同じに設定されている。また、インダクタ17Aは受信機のバーアンテナ17の1次コイルを用いて構成され、この1次コイルには2次コイル17Bが磁気結合されており、この2次コイル17Bの両端から同調回路の出力、すなわち同調信号が取り出される。
【0019】
図3は移相回路の動作を説明するための図である。放送波等がバーアンテナ17に到達すると、インダクタ17Aの両端には所定の交流電圧が発生する。図3(A)はインダクタ17Aの両端に発生した交流電圧を電圧源を用いて表した等価回路である。図3(A)に図示された位置に電圧源が接続されていると、インダクタ17Aおよび抵抗16とアース間に形成される閉ループに電流が流れ、抵抗16の両端には電圧VR1が現れる。
【0020】
また、図3(A)に示した電圧源は、上述した閉ループに沿って接続位置を変更することができ、例えば図3(B)では、入力端とアース間に電圧源を接続した例を示している。
【0021】
このように、バーアンテナ17に放送波等の電波が到達すると、インダクタ17Aと抵抗16のそれぞれに所定の電圧が発生し、図2に示す仮想的な入力端22には、それぞれの両端電圧VR1、VL1を加算した電圧が現れる。別の見方をすれば、移相回路10Lの入力端22に電圧源から仮想的な入力電圧Ei が印加されたことにより、インダクタ17Aと抵抗16のそれぞれの両端に所定の電圧が現れると考えることができる。
【0022】
また、オペアンプ12の2入力間には電位差が生じないので、反転入力端子の電位とインダクタ17Aおよび抵抗16の接続点の電位とは等しくなる。したがって、抵抗18の両端には、インダクタ17Aの両端に現れる電圧VL1と同じ電圧VL1が現れる。
【0023】
2つの抵抗18、20には同じ電流Iが流れ、しかも、上述したように抵抗18と抵抗20の各抵抗値は等しいので、抵抗20の両端にも電圧VL1が現れる。これら2つの抵抗18、20の各両端に現れる電圧VL1はベクトル的に同方向を向いており、オペアンプ12の反転入力端子(電圧VR1)を基準にして考えると、抵抗18の両端電圧VL1をベクトル的に加算したものが仮想的な入力電圧Ei に、抵抗20の両端電圧VL1をベクトル的に減算したものが抵抗21と抵抗23の接続点の電圧(分圧出力)Eo ′になる。
【0024】
また、移相回路10Lの出力端24からは、上述した抵抗21と抵抗23からなる分圧回路を介さずに、オペアンプ12の出力端子に現れる電圧がそのまま出力電圧Eo として取り出される。
【0025】
図4は、前段の移相回路10Lの入出力電圧とインダクタ等に現れる電圧との関係を示すベクトル図である。
【0026】
同図に示すように、電圧Ei とEo ′の大きさと位相の関係は、電圧Ei およびEo ′を斜辺とし、電圧VL1の2倍を底辺とする二等辺三角形で表すことができ、分圧出力Eo ′の振幅は周波数に関係なく仮想的な入力電圧の振幅と同じであって、移相回路10Lによる位相シフト量は図4に示すφ1 で表されることがわかる。
【0027】
また、この位相シフト量φ1 は、インダクタ17Aの両端に発生する電圧の周波数ωが0から∞まで変化するに従って0°から90°まで変化する。そして、移相回路10L全体のシフト量φ1 はその2倍であり、上述した周波数ωに応じて0°から180°まで変化する。
【0028】
また、移相回路10Lの出力端24はオペアンプ12の出力端子に接続されているため、抵抗21の抵抗値をR21、抵抗23の抵抗値をR23とすると、出力電圧Eo と上述した分圧出力Eo ′との間には、抵抗20の抵抗値に対してR21、R23が十分小さいときはEo =(1+R21/R23)Eo ′の関係がある。したがって、R21およびR23の値を調整することにより1より大きなゲインが得られ、しかも図4に示すように周波数が変化しても出力電圧Eo の振幅が一定であり、位相のみを所定量シフトすることができる。
【0029】
同様に、図5は図1に示した後段の移相回路30Cの構成を抜き出して示したものである。同図に示す後段の移相回路30Cは、差動増幅器の一種であるオペアンプ32と、入力端42に入力された信号の位相を所定量シフトさせてオペアンプ32の非反転入力端子に入力するキャパシタ34および可変抵抗36と、入力端42とオペアンプ32の反転入力端子との間に挿入された抵抗38と、オペアンプ32の出力端子に接続されて分圧回路を構成する抵抗41および43と、この分圧回路とオペアンプ32の反転入力端子との間に挿入された抵抗40とを含んで構成されている。
【0030】
このような構成を有する移相回路30Cにおいて、抵抗38と抵抗40の抵抗値は同じに設定されている。
【0031】
図5に示した入力端42に所定の交流信号が入力されると、オペアンプ32の非反転入力端子には、可変抵抗36の両端に現れる電圧VR2が印加される。また、オペアンプ32の2入力間には電位差が生じないので、反転入力端子の電位とキャパシタ34および可変抵抗36の接続点の電位とは等しくなる。したがって、抵抗38の両端には、キャパシタ34の両端に現れる電圧VC1と同じ電圧VC1が現れる。
【0032】
ここで、2つの抵抗38、40には同じ電流Iが流れ、しかも、上述したように抵抗38と抵抗40の各抵抗値が等しいので、抵抗40の両端にも電圧VC1が現れる。これら2つの抵抗38、40の各両端に現れる電圧VC1はベクトル的に同方向を向いており、オペアンプ32の反転入力端子(電圧VR2)を基準にして考えると、抵抗38の両端電圧VC1をベクトル的に加算したものが入力電圧Ei に、抵抗40の両端電圧C1をベクトル的に減算したものが抵抗41と抵抗43の接続点の電圧(分圧出力)Eo ′になる。
【0033】
また、移相回路30Cの出力端44からは、上述した抵抗41と抵抗43からなる分圧回路を介さずに、オペアンプ32の出力端子に現れる電圧がそのまま出力電圧Eo として取り出される。
【0034】
図6は、後段の移相回路30Lの入出力電圧とキャパシタ等に現れる電圧との関係を示すベクトル図である。
【0035】
同図に示すように、電圧Ei とEo ′の大きさと位相の関係は、入力電圧Ei および分圧出力Eo ′を斜辺とし、電圧VC1の2倍を底辺とする二等辺三角形で表すことができ、分圧出力Eo ′の振幅は周波数に関係なく入力信号の振幅と同じであって、位相シフト量は図6に示すφ2 で表されることがわかる。また、この位相シフト量φ2 は、周波数ωが0から∞まで変化するに従って90°から0°まで変化する。そして、移相回路30C全体のシフト量φ2 はその2倍であり、周波数に応じて180°から0°まで変化する。
【0036】
また、移相回路30Cの出力端44はオペアンプ32の出力端子に接続されているため、抵抗41の抵抗値をR41、抵抗43の抵抗値をR43とすると、出力電圧Eo と上述した分圧出力Eo ′との間には、抵抗40の抵抗値に対してR41、R43が十分小さいときはEo =(1+R41/R43)Eo ′の関係がある。したがって、R41およびR43の値を調整することにより1より大きなゲインが得られ、しかも図6に示すように周波数が変化しても出力電圧Eo の振幅が一定であり、位相のみを所定量シフトすることができる。
【0037】
このようにして、2つの移相回路10L、30Cのそれぞれにおいて位相が所定量シフトされる。しかも、図4および図6に示すように、所定の周波数において2つの移相回路10L、30Cの全体により位相シフト量の合計が360°となって同調動作が行われ、図1に示す2次コイル17Bからは、バーアンテナ17に到達した電波の中から同調周波数に一致した成分のみが選択的に抽出されて出力される。
【0038】
図7は、図1に示した同調回路に対応した等価回路を示す図であり、図3(B)と同様にバーアンテナ17で受信した電波により発生される電圧を等価的に電圧源76に置き換え、しかもその接続位置をずらしたものである。
【0039】
2つの移相回路10L、30Cにおける所定の周波数における位相シフト量の合計が360°となり、このとき2つの移相回路10L、30Cおよび帰還抵抗70により形成される帰還ループのループゲインを1以下に設定することにより、上述した所定の周波数成分の信号のみを通過させる同調動作が行われる。
【0040】
図8は、上述した構成を有する2つの移相回路10L、30Cの全体を伝達関数K1 を有する回路に置き換えたシステム図であり、伝達関数K1 を有する回路と並列に抵抗R0 を有する帰還抵抗70が、直列に抵抗74(抵抗74の抵抗値を抵抗70の抵抗値R0 のn倍とする)が接続されている。
【0041】
図9は、図8に示すシステムをミラーの定理によって変換したシステム図であり、変換後のシステム全体の伝達関数Aは、
A=Vo /Vi =K1 /{n(1−K1 )+1} ・・・(1)
で表すことができる。
【0042】
ところで、前段の移相回路10Lの伝達関数K2 は、インダクタ17Aと抵抗16からなるLR回路の時定数をT1 (インダクタ17AのインダクタンスをL、抵抗16の抵抗値をRとするとT1 =L/R)とすると、
K2 =a1 (1−T1 s)/(1+T1 s) ・・・(2)
となる。ここで、s=jωであり、a1 は移相回路10Lのゲインであってa1 =(1+R21/R23)>1である。
【0043】
また、後段の移相回路30Cの伝達関数K3 は、キャパシタ34と可変抵抗36からなるCR回路の時定数をT2 (キャパシタ34の静電容量をC、可変抵抗36の抵抗値をRとするとT2 =CR)とすると、
K3 =−a2 (1−T2 s)/(1+T2 s) ・・・(3)
となる。ここで、a2 は移相回路30Cのゲインであってa2 =(1+R41/R43)>1である。
【0044】
式を簡略化するためにa1 =1およびa2 =1とすると、2つの移相回路10L、30Cを縦続接続した場合の全体の伝達関数K1 は、
K1 =−{1+(Ts)2 −2Ts}/{1+(Ts)2 +2Ts}・・・(4)
となる。なお、上述した(4)式においては、計算を簡単なものとするために、各移相回路の時定数T1 、T2 をともにTとした。この(4)式を上述した(1)式に代入すると、
となる。
【0045】
この(5)式によれば、ω=0(直流の領域)のときにA=−1/(2n+1)となって、最大減衰量を与えることがわかる。また、ω=∞のときにもA=−1/(2n+1)となって、最大減衰量を与えることがわかる。さらに、ω=1/Tの同調点(一般には各移相回路の時定数が異なるので、ω=1/√(T1 ・T2 )の同調点)においてはA=1であって帰還抵抗70と入力抵抗74の抵抗比nに無関係であって、図10に示すように、同調帯域幅(すなわちQ)と最大減衰量が任意に設定可能なバンドパスフィルタとして動作することがわかる。
【0046】
次に、本実施形態の同調回路をAM受信機に適用した場合について説明する。図11に示すAM受信機は、図1に示した同調回路1、AM検波回路2、低周波増幅回路3およびスピーカ4を含んで構成され、AM検波回路2には同調回路1内の2次コイル17Bから出力される同調信号が入力される。
【0047】
図11に示すAM受信機において、同調回路1に含まれるバーアンテナ17によりAM波が受信されると、インダクタ17Aの両端にはAM波に含まれる各種周波数の交流電圧が発生する。この各種周波数の交流信号の中で、2つの移相回路10L、30Cを合わせた位相シフト量の合計が360°以外の成分は同調回路1の閉ループを介して帰還されることにより減衰し、その結果位相シフト量の合計が360°となる周波数成分のみが選択されて、2次コイル17Bから同調信号として出力される。この同調信号は、AM検波回路2でAM検波されて音声信号に変換された後、低周波増幅回路3で増幅されてスピーカ4から出力される。
【0048】
以上に説明したように、第1の実施形態の同調回路1は、前段の移相回路10L内のインダクタ17Aをバーアンテナ17の1次コイルにより構成したため、バーアンテナ17で受信した放送波等の各種の受信信号を直接同調回路1に取り込むことができ、従来不可欠であったバリコンが不要となる。このため、バーアンテナ17を除く同調回路1全体を半導体基板上に形成することができ、小型化およびコストの低減が図れる。
【0049】
また、1次コイルと磁気結合された2次コイル17Bから同調信号を取り出すため、直流成分をカットすることができ、次段の回路との接続が容易となる。なお、実際に図1に示す同調回路1を組み立てて出力波形を測定したところ、閉ループの一部から同調信号を直接取り出す場合に比べてノイズを低減することができた。
【0050】
また、例えば従来のAM受信機のようにLC共振回路によって同調を行う場合には、使用するバリコンの静電容量や可変範囲の制約から、バーアンテナ17のインダクタンスを十分に大きくする必要があった。これに対し、本実施形態の同調回路1では、インダクタ17Aを抵抗16と組み合わせているため、インダクタ17Aのインダクタンスをある程度自由に設定することができる。したがって、バーアンテナ17のインダクタンスを従来より小さくすることができ、受信機全体を小型化できる。
【0051】
また、同調回路1の後段の移相回路30Cに含まれる可変抵抗36の抵抗値を可変することにより、閉ループを一巡したときに移相量の合計が360°となる周波数を変えることができる。したがって、同調回路1の同調周波数を任意に変えることができ、必ずしも従来のようにスーパーヘテロダイン方式を用いなくとも受信機を構成することができる。このため、スーパーヘテロダイン方式の受信機では不可欠であった中間周波トランスや局部発振トランス等が不要となり、バーアンテナ17やスピーカ4等を除く受信機のほとんどを半導体基板上に一体形成することができる。
【0052】
また、前段の移相回路10Lの入力側に接続された可変抵抗74の抵抗値を変えることにより同調帯域幅、すなわちバンドパスフィルタのQを可変することができる。これにより、同調回路1を含む受信機において、混信が生じる場合には可変抵抗74の抵抗値を調整することにより同調帯域幅を狭くして混信を防ぎ、反対に混信が少ない場合においては可変抵抗74の抵抗値を調整することにより同調帯域幅を広げて受信信号を忠実に再現するといった制御が可能となる。
【0053】
なお、図11では、図1に示した同調回路をAM受信機に適用した例を説明したが、FM受信機に適用することも可能である。その場合には、図11に示すAM検波回路をFM検波回路に置き換えればよい。
【0054】
〔第2の実施形態〕
図12は同調回路の第2の実施形態の構成を示す回路図であり、図1に示した同調回路1の前段および後段の移相回路10L、30Cをそれぞれ移相回路30L、10Cに置き換えた構成を有している。
【0055】
図12に示した同調回路1Aの前段の移相回路30Lは、図5に示した移相回路30C内のキャパシタ34と可変抵抗36からなるCR回路を、抵抗35とインダクタ37AからなるLR回路に置き換えたものである。このインダクタ37Aはバーアンテナ37の1次コイルを用いて構成され、この1次コイルには2次コイル37Bが磁気結合されている。なお、移相回路30Lの仮想的な入力電圧と出力電圧の関係は移相回路30Cの入出力電圧間の関係と同じである。
【0056】
同様に、図12に示した後段の移相回路10Cは、図2に示した移相回路10L内のインダクタ17Aと抵抗16からなるLR回路を、可変抵抗15とキャパシタ14からなるCR回路に置き換えたものである。この移相回路10Cの入出力電圧の関係は移相回路10Lの仮想的な入力電圧と出力電圧の関係と同じである。
【0057】
このように、同調回路1A内の移相回路30L、10Cは、図1に示した同調回路1内の2つの移相回路10L、30Cと等価であり、前段の移相回路30L内にバーアンテナ37の1次コイルにより構成したインダクタ37Aを含み、1次コイルと磁気結合された2次コイル37Bから同調信号を取り出すことも同じであるから、図1に示した同調回路1と同様の効果が得られる。
【0058】
〔第3の実施形態〕
図13は同調回路の第3の実施形態の構成を示す回路図である。同図に示す同調回路1Bに含まれる前段の移相回路110Lは、内部に分圧回路を含んでいない代わりに、抵抗18′の抵抗値よりも抵抗20′の抵抗値を大きく設定することにより、移相回路110Lの利得を1より大きくしており、伝達関数および位相シフト量は移相回路10Lと基本的に同じである。
【0059】
同様に、後段の移相回路130Cは、内部に分圧回路を含んでいない代わりに、抵抗38′の抵抗値よりも抵抗40′の抵抗値を大きく設定することにより、移相回路130Cの利得を1より大きくしており、伝達関数および位相シフト量は移相回路30Cと基本的に同じである。
【0060】
抵抗19および抵抗39は、移相回路110Lおよび130Cの利得の変動を抑えるために設けられており、抵抗19および39の抵抗値Rは、(6)式に従って設定するのが望ましい。ただし、(6)式では、抵抗18′あるいは抵抗38′の抵抗値をr、抵抗20′あるいは抵抗40′の抵抗値をmrとしている。
【0061】
R=mr/(m−1) ・・・(6)
なお、図13に示した同調回路1Bは、2つの移相回路110L、130Cのそれぞれに抵抗19あるいは39を接続することにより、同調周波数を可変したときの振幅変動を防止したが、上述した抵抗19、39を取り除いて同調回路を構成することもできる。あるいは、抵抗19あるいは39の一方のみを取り除いて同調回路を構成してもよい。
【0062】
〔第4の実施形態〕
図14は同調回路の第4の実施形態の構成を示す回路図である。同図に示す同調回路1Cの前段の移相回路130Lは、図13に示した後段の移相回路130C内のキャパシタ34および可変抵抗36を、抵抗35およびインダクタ37Aに置き換えた構成を有する。インダクタ37Aは、図12と同様にバーアンテナ37の1次コイルにより構成されている。
【0063】
また、図14に示す後段の移相回路110Cは、図13に示した前段の移相回路110L内のインダクタ17Aおよび抵抗16を、可変抵抗15およびキャパシタ14に置き換えた構成を有する。
【0064】
〔第5の実施形態〕
図1に示した同調回路1では、2つの移相回路10Lと30Cを合わせた位相シフト量を360°としているが、縦続接続された移相回路10Lと30Cに、位相をシフトさせない非反転回路を接続して同調回路を構成してもよい。
【0065】
図15は、2つの移相回路の前段に非反転回路150を接続した同調回路1Dの構成を示す回路図である。同図に示す同調回路1D内部の移相回路210L、230Cは、オペアンプ12あるいは32の出力端子に分圧回路が接続されていない点を除いて図1に示した各移相回路10L、30Cと同じ構成を有しており、伝達関数および位相シフト量も移相回路10L、30Cと同じである。ただし、(2)式においてa1 =1、(3)式においてa2 =1となる。また、非反転回路150は、2つの抵抗54、56の抵抗比によって定まる所定の利得を有する。
【0066】
2つの移相回路210L、230Cは利得がともに1となる。したがって、図15に示す同調回路1Dでは、各移相回路で利得を稼ぐ代わりに、上述した非反転回路150の利得を1より大きな値に設定することにより、閉ループで生じる損失を補って、所定の同調動作を行わせている。
【0067】
〔第6の実施形態〕
図16は同調回路の第6の実施形態を示す回路図である。同図に示す同調回路1Eは、図15に示した後段の移相回路230Cの代わりに移相回路210Cを接続し、非反転回路150の代わりに位相反転回路180を接続したものである。移相回路210Cは、図15に示した移相回路210L内のインダクタ17Aおよび抵抗16を可変抵抗15およびキャパシタ14に置き換えたものである。また、位相反転回路180は、2つの抵抗84、86の抵抗比によって定まる所定の増幅度を有しており、抵抗84の抵抗値より抵抗86の抵抗値を大きくすることにより1より大きな利得が得られる。
【0068】
所定の周波数において、2つの移相回路210L、210Cによって位相が180°シフトされ、しかも位相反転回路180によって位相が反転されるため、全体として、位相が一巡して位相シフト量が360°となって所定の同調動作が行われる。
【0069】
〔第7の実施形態〕
図16に示した同調回路1Eは、2つの移相回路210L、210Cを縦続接続する例を示したが、図17に示すように2つの移相回路230L、230Cを縦続接続した場合も同調動作を行わせることができる。図17に示す同調回路1Fの前段の移相回路230Lは、図15に示した移相回路230C内のキャパシタ34および可変抵抗36をインダクタ37Aおよび抵抗35に置き換えたものである。
【0070】
〔その他の実施形態〕
本発明は上記実施形態に限定されるものではなく、本発明の要旨の範囲内で種々の変形実施が可能である。
【0071】
例えば、上述した各種の同調回路においては、バーアンテナ17の1次コイルにより構成されたインダクタを前段の移相回路内に設けているが、前段と後段の移相回路の配置を入れ換えて、後段の移相回路内にインダクタを設けてもよい。
【0072】
また、上述した各種の同調回路においては、LR回路を内部に含む移相回路とCR回路を内部に含む移相回路を縦続接続する例を説明したが、LR回路を内部に含む2つの移相回路を縦続接続してもよい。
【0073】
また、上述した各種の同調回路においては、一方の移相回路のみに可変抵抗を設けているが、両方の移相回路内に可変抵抗を設けてもよく、例えば図1に示した抵抗16を可変抵抗に置き換えてもよい。両方の移相回路内に可変抵抗を設けると、2つの移相回路による位相シフト量の合計を大きくできるため、同調回路全体の同調周波数の可変範囲を広げることができる。
【0074】
また、上述した各種の同調回路において、後段の移相回路の出力側に分圧回路を接続し、この分圧回路の分圧出力を前段の移相回路の入力側に帰還させてもよい。
【0075】
また、上述した実施形態においては、オペアンプを用いた移相回路110C等によって同調回路1〜1Eを構成することにより高い安定度を実現することができるが、本実施形態の移相回路110C等のような使い方をする場合にはオフセット電圧や電圧利得はそれほど高性能なものが要求されないため所定の増幅度を有する差動増幅器を各移相回路内のオペアンプの代わりに使用するようにしてもよい。
【0076】
図18は、オペアンプの構成の中で移相回路の動作に必要な部分を抽出した回路図であり、全体が所定の増幅度を有する差動増幅器として動作する。同図に示す差動増幅器は、FETにより構成された差動入力段100と、この差動入力段100に定電流を与える定電流回路102と、定電流回路102に所定のバイアス電圧を与えるバイアス回路104と、差動入力段100に接続された出力アンプ106とによって構成されている。同図に示すように、実際のオペアンプに含まれている電圧利得を稼ぐための多段増幅回路を省略して、差動増幅器の構成を簡略化し、広帯域化を図ることができる。このように、回路の簡略化を行うことにより、動作周波数の上限を高くすることができるため、その分この差動増幅器を用いて構成した同調回路1等の同調周波数の上限を高くすることができる。
【0077】
なお、上述した各種の同調回路内の可変抵抗(例えば図1の可変抵抗36)は、例えばFETによって構成できる。この場合、1個のFETによって可変抵抗を構成してもよいが、pチャネルのFETとnチャネルのFETとを並列接続して1つの可変抵抗を構成してもよい。このように、2つのFETを組み合わせて可変抵抗を構成することにより、FETの非線形領域の改善を行うことができるため、同調出力の歪みを少なくすることができる。
【0078】
【発明の効果】
以上詳細に説明したように、本発明によれば、バンドパスフィルタとして動作する同調回路内のインダクタをバーアンテナ等の1次コイルを用いて構成しているため、放送波等の各種の受信信号を直接同調回路に取り込むことができ、従来は不可欠であったバリコンが不要となる。このため、インダクタを除く同調回路全体を半導体基板上に形成することができ、集積化に適した同調回路が得られる。
【0079】
また、少なくとも一方の移相回路に含まれる可変抵抗の抵抗値を可変することにより、同調回路の閉ループを一巡したときの位相シフト量の合計が360°となる周波数を変えることができるため、同調周波数を任意に変更でき、必ずしも従来のようにスーパーヘテロダイン方式を用いなくても受信機を構成することができる。このため、スーパーヘテロダイン方式の受信機では不可欠であった中間周波トランスや局部発振回路が不要となり、同調機構全体、さらには受信機のほとんどを半導体基板上に一体形成することができる。
【0080】
また、前段の移相回路の入力側に接続された抵抗あるいは帰還抵抗の少なくとも一方の抵抗値を変えることにより、同調帯域幅すなわちバンドパスフィルタのQを可変することができるため、例えば本発明の同調回路を用いた受信機において、混信が生じる場合には同調帯域幅を狭くして混信を防ぎ、反対に混信が少ない場合には同調帯域幅を広げて受信信号を忠実に再現するといったことが可能であり、混信状態に応じて最適な受信機を設計できる。
【0081】
また、バーアンテナ等の2次コイルから同調信号を出力しているため、同調信号に含まれる直流成分を除去することができ、次段の回路との接続が容易になる。
【図面の簡単な説明】
【図1】同調回路の第1の実施形態の詳細構成を示す回路図である。
【図2】図1に示した前段の移相回路の構成を抜き出して示した回路図である。
【図3】移相回路の動作を説明するための図である。
【図4】前段の移相回路の入出力電圧とインダクタ等に現れる電圧との関係を示すベクトル図である。
【図5】図1に示した後段の移相回路の構成を抜き出して示した回路図である。
【図6】後段の移相回路の入出力電圧とキャパシタ等に現れる電圧との関係を示すベクトル図である。
【図7】図1に示した同調回路に対応した等価回路を示す図である。
【図8】2つの移相回路の全体を伝津関数K1 を有する回路に置き換えたシステム図である。
【図9】図8に示すシステムをミラーの定理によって変換したシステム図である。
【図10】図1に示した同調回路の同調特性を示す図である。
【図11】AM受信機の構成を示すブロック図である。
【図12】同調回路の第2の実施形態の構成を示す回路図である。
【図13】同調回路の第3の実施形態の構成を示す回路図である。
【図14】同調回路の第4の実施形態の構成を示す回路図である。
【図15】2つの移相回路の前段に非反転回路を接続した同調回路の構成を示す回路図である。
【図16】同調回路の第6の実施形態を示す回路図である。
【図17】同調回路の第7の実施形態を示す回路図である。
【図18】オペアンプの構成の中で移相回路の動作に必要な部分を抽出した回路図である。
【符号の説明】
1 同調回路
10L、30C 移相回路
12、32 オペアンプ
17 バーアンテナ17
17A 1次コイル
17B 2次コイル
70 帰還抵抗
74 可変抵抗
【発明の属する技術分野】
本発明は、ラジオ受信機等に用いられる同調回路に関する。
【0002】
【従来の技術】
AMラジオ等の各種の受信機には種々の周波数の信号が入力されるが、これらの信号の中から所望の信号を選局して受信するには、入力回路にバンドパスフィルタの特性を持たせ、受信周波数に応じてバンドパスフィルタの中心周波数を変えればよい。ところが、受信周波数に応じてバンドパスフィルタの中心周波数を安定した同調特性を維持しながら変えることが難しいことから、バンドパスフィルタの中心周波数を常に等しくするとともに、受信周波数をバンドパスフィルタの中心周波数に変換して所望の信号のみを取り出すスーパーヘテロダイン方式の受信機が汎用されている。
【0003】
【発明が解決しようとする課題】
ところで、上述した従来の受信機においては、入力回路をバーアンテナとバリコンによるLC共振回路によって形成するのが一般的であり、バリコンが不可欠の構成要素であった。また、スーパーヘテロダイン方式の受信機は、選択度を向上させるために、この入力回路による同調周波数と局部発振回路の発振周波数とを連動させる同調機構を備えており、この同調機構の連動を2連バリコンによって行っていた。上述したバリコンや2連バリコンは受信周波数に応じて所定の静電容量を有するように作られていて大きさが決まっていることから、同調機構全体の小型化や集積化が難しかった。また、上述した2連バリコンは、構造上静電容量の可変幅や静電容量そのものの値が小さいため、これと組み合わせるバーアンテナのインダクタンスを大きくする必要があった。
【0004】
また、スーパーヘテロダイン方式の受信機の局部発振回路や中間周波増幅回路には従来から局部発振トランスや中間周波トランスが使用されており(最近では中間周波増幅をセラミックフィルタを用いて行うものもある)、これらのトランスは外付け部品であって、この点からも同調機構全体の集積化が難しかった。
【0005】
本発明は、このような点に鑑みて創作されたものであり、その目的はバリコンが不要であって集積化に適した同調回路を提供することを目的とする。
【0006】
【課題を解決するための手段】
発明の一実施の形態を示す図1に対応づけて本発明を説明すると、本発明は、アンテナの1次コイルからなるインダクタと第1の抵抗とで構成される第1の直列回路を有する移相回路と、キャパシタおよび第2の抵抗からなる第2の直列回路を有する移相回路とを縦続接続し、1次コイルに磁気結合された2次コイルの両端から同調信号を取り出す。
【0007】
1次および2次コイルは、例えば受信機のバーアンテナ内部のコイルを用いて構成され、1次コイルに磁気結合された2次コイルから同調信号を取り出すため、同調信号のノイズを低減できるとともに、直流分をカットするためのキャパシタが不要となり、製造コストを低減できる。
【0008】
請求項2に記載の同調回路内の少なくとも一方の移相回路は、第3および第4の抵抗が反転入力端子に接続され、直列回路が非反転入力端子に接続された差動増幅器を備えるため、移相回路に入力された信号の位相は周波数に応じた量だけシフトして出力される。
【0009】
請求項3に記載の同調回路内の少なくとも一方の移相回路は、差動増幅器の出力端子に第1の分圧回路を接続し、この第1の分圧回路を介して差動増幅器の出力を入力側に帰還させるため、第3および第4の抵抗の抵抗比を1に設定しても、利得を稼ぐことができる。
【0010】
請求項4に記載の同調回路内の少なくとも一方の移相回路は、一方端が差動増幅器の反転入力端子に接続され他方端が接地された第3の抵抗を設けるため、第1および第2の抵抗の抵抗比を1以外にしても、同調出力の振幅変動を抑制できる。また、移相回路内に分圧回路を設ける必要もなくなる。
【0011】
請求項5に記載の同調回路は、縦続接続された2つの移相回路によって形成される閉ループの一部に非反転回路を挿入するため、移相回路を通過することによって損失が生じても非反転回路で利得を稼ぐことができる。
【0012】
請求項6に記載の同調回路は、縦続接続された2つの移相回路によって形成される閉ループの一部に位相反転回路を挿入するため、移相回路を通過することによって損失が生じても位相反転回路で利得を稼ぐことができる。
【0013】
請求項7および8に記載の同調回路は、移相回路内の直列回路の時定数を変更すると位相シフト量が変化することに着目し、この時定数を変えることで同調周波数を変更する。
【0014】
請求項10に記載の同調回路は、例えば受信機のバーアンテナに含まれる1次および2次コイル以外の構成部品を半導体基板上に一体形成するため、小型化が図れる。
【0015】
【発明の実施の形態】
以下、本発明の同調増幅器の一実施形態について、図面を参照しながら具体的に説明する。
【0016】
〔第1の実施形態〕
図1は、同調回路の第1の実施形態の詳細構成を示す回路図である。図1に示す同調回路は、所定の周波数において合計で360°の位相シフトを行う2つの移相回路10Lおよび30Cと、移相回路30Cの出力を移相回路10Lの入力側に帰還させる帰還抵抗70と、帰還抵抗70を介して帰還させた信号の一部を分岐するために設けられた可変抵抗74とを含んで構成されている。
【0017】
図2は、図1に示した前段の移相回路10Lの構成を抜き出して示したものである。同図に示す前段の移相回路10Lは、差動増幅器の一種であるオペアンプ12と、抵抗16およびインダクタ17AからなるLR回路と、仮想的な入力端22とオペアンプ12の反転入力端子との間に挿入された抵抗18と、オペアンプ12の出力端子に接続され分圧回路を構成する抵抗21および23と、この分圧回路とオペアンプ12の反転入力端子との間に挿入された抵抗20とを含んで構成されている。
【0018】
このような構成を有する移相回路10Lにおいて、抵抗18と抵抗20の抵抗値は同じに設定されている。また、インダクタ17Aは受信機のバーアンテナ17の1次コイルを用いて構成され、この1次コイルには2次コイル17Bが磁気結合されており、この2次コイル17Bの両端から同調回路の出力、すなわち同調信号が取り出される。
【0019】
図3は移相回路の動作を説明するための図である。放送波等がバーアンテナ17に到達すると、インダクタ17Aの両端には所定の交流電圧が発生する。図3(A)はインダクタ17Aの両端に発生した交流電圧を電圧源を用いて表した等価回路である。図3(A)に図示された位置に電圧源が接続されていると、インダクタ17Aおよび抵抗16とアース間に形成される閉ループに電流が流れ、抵抗16の両端には電圧VR1が現れる。
【0020】
また、図3(A)に示した電圧源は、上述した閉ループに沿って接続位置を変更することができ、例えば図3(B)では、入力端とアース間に電圧源を接続した例を示している。
【0021】
このように、バーアンテナ17に放送波等の電波が到達すると、インダクタ17Aと抵抗16のそれぞれに所定の電圧が発生し、図2に示す仮想的な入力端22には、それぞれの両端電圧VR1、VL1を加算した電圧が現れる。別の見方をすれば、移相回路10Lの入力端22に電圧源から仮想的な入力電圧Ei が印加されたことにより、インダクタ17Aと抵抗16のそれぞれの両端に所定の電圧が現れると考えることができる。
【0022】
また、オペアンプ12の2入力間には電位差が生じないので、反転入力端子の電位とインダクタ17Aおよび抵抗16の接続点の電位とは等しくなる。したがって、抵抗18の両端には、インダクタ17Aの両端に現れる電圧VL1と同じ電圧VL1が現れる。
【0023】
2つの抵抗18、20には同じ電流Iが流れ、しかも、上述したように抵抗18と抵抗20の各抵抗値は等しいので、抵抗20の両端にも電圧VL1が現れる。これら2つの抵抗18、20の各両端に現れる電圧VL1はベクトル的に同方向を向いており、オペアンプ12の反転入力端子(電圧VR1)を基準にして考えると、抵抗18の両端電圧VL1をベクトル的に加算したものが仮想的な入力電圧Ei に、抵抗20の両端電圧VL1をベクトル的に減算したものが抵抗21と抵抗23の接続点の電圧(分圧出力)Eo ′になる。
【0024】
また、移相回路10Lの出力端24からは、上述した抵抗21と抵抗23からなる分圧回路を介さずに、オペアンプ12の出力端子に現れる電圧がそのまま出力電圧Eo として取り出される。
【0025】
図4は、前段の移相回路10Lの入出力電圧とインダクタ等に現れる電圧との関係を示すベクトル図である。
【0026】
同図に示すように、電圧Ei とEo ′の大きさと位相の関係は、電圧Ei およびEo ′を斜辺とし、電圧VL1の2倍を底辺とする二等辺三角形で表すことができ、分圧出力Eo ′の振幅は周波数に関係なく仮想的な入力電圧の振幅と同じであって、移相回路10Lによる位相シフト量は図4に示すφ1 で表されることがわかる。
【0027】
また、この位相シフト量φ1 は、インダクタ17Aの両端に発生する電圧の周波数ωが0から∞まで変化するに従って0°から90°まで変化する。そして、移相回路10L全体のシフト量φ1 はその2倍であり、上述した周波数ωに応じて0°から180°まで変化する。
【0028】
また、移相回路10Lの出力端24はオペアンプ12の出力端子に接続されているため、抵抗21の抵抗値をR21、抵抗23の抵抗値をR23とすると、出力電圧Eo と上述した分圧出力Eo ′との間には、抵抗20の抵抗値に対してR21、R23が十分小さいときはEo =(1+R21/R23)Eo ′の関係がある。したがって、R21およびR23の値を調整することにより1より大きなゲインが得られ、しかも図4に示すように周波数が変化しても出力電圧Eo の振幅が一定であり、位相のみを所定量シフトすることができる。
【0029】
同様に、図5は図1に示した後段の移相回路30Cの構成を抜き出して示したものである。同図に示す後段の移相回路30Cは、差動増幅器の一種であるオペアンプ32と、入力端42に入力された信号の位相を所定量シフトさせてオペアンプ32の非反転入力端子に入力するキャパシタ34および可変抵抗36と、入力端42とオペアンプ32の反転入力端子との間に挿入された抵抗38と、オペアンプ32の出力端子に接続されて分圧回路を構成する抵抗41および43と、この分圧回路とオペアンプ32の反転入力端子との間に挿入された抵抗40とを含んで構成されている。
【0030】
このような構成を有する移相回路30Cにおいて、抵抗38と抵抗40の抵抗値は同じに設定されている。
【0031】
図5に示した入力端42に所定の交流信号が入力されると、オペアンプ32の非反転入力端子には、可変抵抗36の両端に現れる電圧VR2が印加される。また、オペアンプ32の2入力間には電位差が生じないので、反転入力端子の電位とキャパシタ34および可変抵抗36の接続点の電位とは等しくなる。したがって、抵抗38の両端には、キャパシタ34の両端に現れる電圧VC1と同じ電圧VC1が現れる。
【0032】
ここで、2つの抵抗38、40には同じ電流Iが流れ、しかも、上述したように抵抗38と抵抗40の各抵抗値が等しいので、抵抗40の両端にも電圧VC1が現れる。これら2つの抵抗38、40の各両端に現れる電圧VC1はベクトル的に同方向を向いており、オペアンプ32の反転入力端子(電圧VR2)を基準にして考えると、抵抗38の両端電圧VC1をベクトル的に加算したものが入力電圧Ei に、抵抗40の両端電圧C1をベクトル的に減算したものが抵抗41と抵抗43の接続点の電圧(分圧出力)Eo ′になる。
【0033】
また、移相回路30Cの出力端44からは、上述した抵抗41と抵抗43からなる分圧回路を介さずに、オペアンプ32の出力端子に現れる電圧がそのまま出力電圧Eo として取り出される。
【0034】
図6は、後段の移相回路30Lの入出力電圧とキャパシタ等に現れる電圧との関係を示すベクトル図である。
【0035】
同図に示すように、電圧Ei とEo ′の大きさと位相の関係は、入力電圧Ei および分圧出力Eo ′を斜辺とし、電圧VC1の2倍を底辺とする二等辺三角形で表すことができ、分圧出力Eo ′の振幅は周波数に関係なく入力信号の振幅と同じであって、位相シフト量は図6に示すφ2 で表されることがわかる。また、この位相シフト量φ2 は、周波数ωが0から∞まで変化するに従って90°から0°まで変化する。そして、移相回路30C全体のシフト量φ2 はその2倍であり、周波数に応じて180°から0°まで変化する。
【0036】
また、移相回路30Cの出力端44はオペアンプ32の出力端子に接続されているため、抵抗41の抵抗値をR41、抵抗43の抵抗値をR43とすると、出力電圧Eo と上述した分圧出力Eo ′との間には、抵抗40の抵抗値に対してR41、R43が十分小さいときはEo =(1+R41/R43)Eo ′の関係がある。したがって、R41およびR43の値を調整することにより1より大きなゲインが得られ、しかも図6に示すように周波数が変化しても出力電圧Eo の振幅が一定であり、位相のみを所定量シフトすることができる。
【0037】
このようにして、2つの移相回路10L、30Cのそれぞれにおいて位相が所定量シフトされる。しかも、図4および図6に示すように、所定の周波数において2つの移相回路10L、30Cの全体により位相シフト量の合計が360°となって同調動作が行われ、図1に示す2次コイル17Bからは、バーアンテナ17に到達した電波の中から同調周波数に一致した成分のみが選択的に抽出されて出力される。
【0038】
図7は、図1に示した同調回路に対応した等価回路を示す図であり、図3(B)と同様にバーアンテナ17で受信した電波により発生される電圧を等価的に電圧源76に置き換え、しかもその接続位置をずらしたものである。
【0039】
2つの移相回路10L、30Cにおける所定の周波数における位相シフト量の合計が360°となり、このとき2つの移相回路10L、30Cおよび帰還抵抗70により形成される帰還ループのループゲインを1以下に設定することにより、上述した所定の周波数成分の信号のみを通過させる同調動作が行われる。
【0040】
図8は、上述した構成を有する2つの移相回路10L、30Cの全体を伝達関数K1 を有する回路に置き換えたシステム図であり、伝達関数K1 を有する回路と並列に抵抗R0 を有する帰還抵抗70が、直列に抵抗74(抵抗74の抵抗値を抵抗70の抵抗値R0 のn倍とする)が接続されている。
【0041】
図9は、図8に示すシステムをミラーの定理によって変換したシステム図であり、変換後のシステム全体の伝達関数Aは、
A=Vo /Vi =K1 /{n(1−K1 )+1} ・・・(1)
で表すことができる。
【0042】
ところで、前段の移相回路10Lの伝達関数K2 は、インダクタ17Aと抵抗16からなるLR回路の時定数をT1 (インダクタ17AのインダクタンスをL、抵抗16の抵抗値をRとするとT1 =L/R)とすると、
K2 =a1 (1−T1 s)/(1+T1 s) ・・・(2)
となる。ここで、s=jωであり、a1 は移相回路10Lのゲインであってa1 =(1+R21/R23)>1である。
【0043】
また、後段の移相回路30Cの伝達関数K3 は、キャパシタ34と可変抵抗36からなるCR回路の時定数をT2 (キャパシタ34の静電容量をC、可変抵抗36の抵抗値をRとするとT2 =CR)とすると、
K3 =−a2 (1−T2 s)/(1+T2 s) ・・・(3)
となる。ここで、a2 は移相回路30Cのゲインであってa2 =(1+R41/R43)>1である。
【0044】
式を簡略化するためにa1 =1およびa2 =1とすると、2つの移相回路10L、30Cを縦続接続した場合の全体の伝達関数K1 は、
K1 =−{1+(Ts)2 −2Ts}/{1+(Ts)2 +2Ts}・・・(4)
となる。なお、上述した(4)式においては、計算を簡単なものとするために、各移相回路の時定数T1 、T2 をともにTとした。この(4)式を上述した(1)式に代入すると、
となる。
【0045】
この(5)式によれば、ω=0(直流の領域)のときにA=−1/(2n+1)となって、最大減衰量を与えることがわかる。また、ω=∞のときにもA=−1/(2n+1)となって、最大減衰量を与えることがわかる。さらに、ω=1/Tの同調点(一般には各移相回路の時定数が異なるので、ω=1/√(T1 ・T2 )の同調点)においてはA=1であって帰還抵抗70と入力抵抗74の抵抗比nに無関係であって、図10に示すように、同調帯域幅(すなわちQ)と最大減衰量が任意に設定可能なバンドパスフィルタとして動作することがわかる。
【0046】
次に、本実施形態の同調回路をAM受信機に適用した場合について説明する。図11に示すAM受信機は、図1に示した同調回路1、AM検波回路2、低周波増幅回路3およびスピーカ4を含んで構成され、AM検波回路2には同調回路1内の2次コイル17Bから出力される同調信号が入力される。
【0047】
図11に示すAM受信機において、同調回路1に含まれるバーアンテナ17によりAM波が受信されると、インダクタ17Aの両端にはAM波に含まれる各種周波数の交流電圧が発生する。この各種周波数の交流信号の中で、2つの移相回路10L、30Cを合わせた位相シフト量の合計が360°以外の成分は同調回路1の閉ループを介して帰還されることにより減衰し、その結果位相シフト量の合計が360°となる周波数成分のみが選択されて、2次コイル17Bから同調信号として出力される。この同調信号は、AM検波回路2でAM検波されて音声信号に変換された後、低周波増幅回路3で増幅されてスピーカ4から出力される。
【0048】
以上に説明したように、第1の実施形態の同調回路1は、前段の移相回路10L内のインダクタ17Aをバーアンテナ17の1次コイルにより構成したため、バーアンテナ17で受信した放送波等の各種の受信信号を直接同調回路1に取り込むことができ、従来不可欠であったバリコンが不要となる。このため、バーアンテナ17を除く同調回路1全体を半導体基板上に形成することができ、小型化およびコストの低減が図れる。
【0049】
また、1次コイルと磁気結合された2次コイル17Bから同調信号を取り出すため、直流成分をカットすることができ、次段の回路との接続が容易となる。なお、実際に図1に示す同調回路1を組み立てて出力波形を測定したところ、閉ループの一部から同調信号を直接取り出す場合に比べてノイズを低減することができた。
【0050】
また、例えば従来のAM受信機のようにLC共振回路によって同調を行う場合には、使用するバリコンの静電容量や可変範囲の制約から、バーアンテナ17のインダクタンスを十分に大きくする必要があった。これに対し、本実施形態の同調回路1では、インダクタ17Aを抵抗16と組み合わせているため、インダクタ17Aのインダクタンスをある程度自由に設定することができる。したがって、バーアンテナ17のインダクタンスを従来より小さくすることができ、受信機全体を小型化できる。
【0051】
また、同調回路1の後段の移相回路30Cに含まれる可変抵抗36の抵抗値を可変することにより、閉ループを一巡したときに移相量の合計が360°となる周波数を変えることができる。したがって、同調回路1の同調周波数を任意に変えることができ、必ずしも従来のようにスーパーヘテロダイン方式を用いなくとも受信機を構成することができる。このため、スーパーヘテロダイン方式の受信機では不可欠であった中間周波トランスや局部発振トランス等が不要となり、バーアンテナ17やスピーカ4等を除く受信機のほとんどを半導体基板上に一体形成することができる。
【0052】
また、前段の移相回路10Lの入力側に接続された可変抵抗74の抵抗値を変えることにより同調帯域幅、すなわちバンドパスフィルタのQを可変することができる。これにより、同調回路1を含む受信機において、混信が生じる場合には可変抵抗74の抵抗値を調整することにより同調帯域幅を狭くして混信を防ぎ、反対に混信が少ない場合においては可変抵抗74の抵抗値を調整することにより同調帯域幅を広げて受信信号を忠実に再現するといった制御が可能となる。
【0053】
なお、図11では、図1に示した同調回路をAM受信機に適用した例を説明したが、FM受信機に適用することも可能である。その場合には、図11に示すAM検波回路をFM検波回路に置き換えればよい。
【0054】
〔第2の実施形態〕
図12は同調回路の第2の実施形態の構成を示す回路図であり、図1に示した同調回路1の前段および後段の移相回路10L、30Cをそれぞれ移相回路30L、10Cに置き換えた構成を有している。
【0055】
図12に示した同調回路1Aの前段の移相回路30Lは、図5に示した移相回路30C内のキャパシタ34と可変抵抗36からなるCR回路を、抵抗35とインダクタ37AからなるLR回路に置き換えたものである。このインダクタ37Aはバーアンテナ37の1次コイルを用いて構成され、この1次コイルには2次コイル37Bが磁気結合されている。なお、移相回路30Lの仮想的な入力電圧と出力電圧の関係は移相回路30Cの入出力電圧間の関係と同じである。
【0056】
同様に、図12に示した後段の移相回路10Cは、図2に示した移相回路10L内のインダクタ17Aと抵抗16からなるLR回路を、可変抵抗15とキャパシタ14からなるCR回路に置き換えたものである。この移相回路10Cの入出力電圧の関係は移相回路10Lの仮想的な入力電圧と出力電圧の関係と同じである。
【0057】
このように、同調回路1A内の移相回路30L、10Cは、図1に示した同調回路1内の2つの移相回路10L、30Cと等価であり、前段の移相回路30L内にバーアンテナ37の1次コイルにより構成したインダクタ37Aを含み、1次コイルと磁気結合された2次コイル37Bから同調信号を取り出すことも同じであるから、図1に示した同調回路1と同様の効果が得られる。
【0058】
〔第3の実施形態〕
図13は同調回路の第3の実施形態の構成を示す回路図である。同図に示す同調回路1Bに含まれる前段の移相回路110Lは、内部に分圧回路を含んでいない代わりに、抵抗18′の抵抗値よりも抵抗20′の抵抗値を大きく設定することにより、移相回路110Lの利得を1より大きくしており、伝達関数および位相シフト量は移相回路10Lと基本的に同じである。
【0059】
同様に、後段の移相回路130Cは、内部に分圧回路を含んでいない代わりに、抵抗38′の抵抗値よりも抵抗40′の抵抗値を大きく設定することにより、移相回路130Cの利得を1より大きくしており、伝達関数および位相シフト量は移相回路30Cと基本的に同じである。
【0060】
抵抗19および抵抗39は、移相回路110Lおよび130Cの利得の変動を抑えるために設けられており、抵抗19および39の抵抗値Rは、(6)式に従って設定するのが望ましい。ただし、(6)式では、抵抗18′あるいは抵抗38′の抵抗値をr、抵抗20′あるいは抵抗40′の抵抗値をmrとしている。
【0061】
R=mr/(m−1) ・・・(6)
なお、図13に示した同調回路1Bは、2つの移相回路110L、130Cのそれぞれに抵抗19あるいは39を接続することにより、同調周波数を可変したときの振幅変動を防止したが、上述した抵抗19、39を取り除いて同調回路を構成することもできる。あるいは、抵抗19あるいは39の一方のみを取り除いて同調回路を構成してもよい。
【0062】
〔第4の実施形態〕
図14は同調回路の第4の実施形態の構成を示す回路図である。同図に示す同調回路1Cの前段の移相回路130Lは、図13に示した後段の移相回路130C内のキャパシタ34および可変抵抗36を、抵抗35およびインダクタ37Aに置き換えた構成を有する。インダクタ37Aは、図12と同様にバーアンテナ37の1次コイルにより構成されている。
【0063】
また、図14に示す後段の移相回路110Cは、図13に示した前段の移相回路110L内のインダクタ17Aおよび抵抗16を、可変抵抗15およびキャパシタ14に置き換えた構成を有する。
【0064】
〔第5の実施形態〕
図1に示した同調回路1では、2つの移相回路10Lと30Cを合わせた位相シフト量を360°としているが、縦続接続された移相回路10Lと30Cに、位相をシフトさせない非反転回路を接続して同調回路を構成してもよい。
【0065】
図15は、2つの移相回路の前段に非反転回路150を接続した同調回路1Dの構成を示す回路図である。同図に示す同調回路1D内部の移相回路210L、230Cは、オペアンプ12あるいは32の出力端子に分圧回路が接続されていない点を除いて図1に示した各移相回路10L、30Cと同じ構成を有しており、伝達関数および位相シフト量も移相回路10L、30Cと同じである。ただし、(2)式においてa1 =1、(3)式においてa2 =1となる。また、非反転回路150は、2つの抵抗54、56の抵抗比によって定まる所定の利得を有する。
【0066】
2つの移相回路210L、230Cは利得がともに1となる。したがって、図15に示す同調回路1Dでは、各移相回路で利得を稼ぐ代わりに、上述した非反転回路150の利得を1より大きな値に設定することにより、閉ループで生じる損失を補って、所定の同調動作を行わせている。
【0067】
〔第6の実施形態〕
図16は同調回路の第6の実施形態を示す回路図である。同図に示す同調回路1Eは、図15に示した後段の移相回路230Cの代わりに移相回路210Cを接続し、非反転回路150の代わりに位相反転回路180を接続したものである。移相回路210Cは、図15に示した移相回路210L内のインダクタ17Aおよび抵抗16を可変抵抗15およびキャパシタ14に置き換えたものである。また、位相反転回路180は、2つの抵抗84、86の抵抗比によって定まる所定の増幅度を有しており、抵抗84の抵抗値より抵抗86の抵抗値を大きくすることにより1より大きな利得が得られる。
【0068】
所定の周波数において、2つの移相回路210L、210Cによって位相が180°シフトされ、しかも位相反転回路180によって位相が反転されるため、全体として、位相が一巡して位相シフト量が360°となって所定の同調動作が行われる。
【0069】
〔第7の実施形態〕
図16に示した同調回路1Eは、2つの移相回路210L、210Cを縦続接続する例を示したが、図17に示すように2つの移相回路230L、230Cを縦続接続した場合も同調動作を行わせることができる。図17に示す同調回路1Fの前段の移相回路230Lは、図15に示した移相回路230C内のキャパシタ34および可変抵抗36をインダクタ37Aおよび抵抗35に置き換えたものである。
【0070】
〔その他の実施形態〕
本発明は上記実施形態に限定されるものではなく、本発明の要旨の範囲内で種々の変形実施が可能である。
【0071】
例えば、上述した各種の同調回路においては、バーアンテナ17の1次コイルにより構成されたインダクタを前段の移相回路内に設けているが、前段と後段の移相回路の配置を入れ換えて、後段の移相回路内にインダクタを設けてもよい。
【0072】
また、上述した各種の同調回路においては、LR回路を内部に含む移相回路とCR回路を内部に含む移相回路を縦続接続する例を説明したが、LR回路を内部に含む2つの移相回路を縦続接続してもよい。
【0073】
また、上述した各種の同調回路においては、一方の移相回路のみに可変抵抗を設けているが、両方の移相回路内に可変抵抗を設けてもよく、例えば図1に示した抵抗16を可変抵抗に置き換えてもよい。両方の移相回路内に可変抵抗を設けると、2つの移相回路による位相シフト量の合計を大きくできるため、同調回路全体の同調周波数の可変範囲を広げることができる。
【0074】
また、上述した各種の同調回路において、後段の移相回路の出力側に分圧回路を接続し、この分圧回路の分圧出力を前段の移相回路の入力側に帰還させてもよい。
【0075】
また、上述した実施形態においては、オペアンプを用いた移相回路110C等によって同調回路1〜1Eを構成することにより高い安定度を実現することができるが、本実施形態の移相回路110C等のような使い方をする場合にはオフセット電圧や電圧利得はそれほど高性能なものが要求されないため所定の増幅度を有する差動増幅器を各移相回路内のオペアンプの代わりに使用するようにしてもよい。
【0076】
図18は、オペアンプの構成の中で移相回路の動作に必要な部分を抽出した回路図であり、全体が所定の増幅度を有する差動増幅器として動作する。同図に示す差動増幅器は、FETにより構成された差動入力段100と、この差動入力段100に定電流を与える定電流回路102と、定電流回路102に所定のバイアス電圧を与えるバイアス回路104と、差動入力段100に接続された出力アンプ106とによって構成されている。同図に示すように、実際のオペアンプに含まれている電圧利得を稼ぐための多段増幅回路を省略して、差動増幅器の構成を簡略化し、広帯域化を図ることができる。このように、回路の簡略化を行うことにより、動作周波数の上限を高くすることができるため、その分この差動増幅器を用いて構成した同調回路1等の同調周波数の上限を高くすることができる。
【0077】
なお、上述した各種の同調回路内の可変抵抗(例えば図1の可変抵抗36)は、例えばFETによって構成できる。この場合、1個のFETによって可変抵抗を構成してもよいが、pチャネルのFETとnチャネルのFETとを並列接続して1つの可変抵抗を構成してもよい。このように、2つのFETを組み合わせて可変抵抗を構成することにより、FETの非線形領域の改善を行うことができるため、同調出力の歪みを少なくすることができる。
【0078】
【発明の効果】
以上詳細に説明したように、本発明によれば、バンドパスフィルタとして動作する同調回路内のインダクタをバーアンテナ等の1次コイルを用いて構成しているため、放送波等の各種の受信信号を直接同調回路に取り込むことができ、従来は不可欠であったバリコンが不要となる。このため、インダクタを除く同調回路全体を半導体基板上に形成することができ、集積化に適した同調回路が得られる。
【0079】
また、少なくとも一方の移相回路に含まれる可変抵抗の抵抗値を可変することにより、同調回路の閉ループを一巡したときの位相シフト量の合計が360°となる周波数を変えることができるため、同調周波数を任意に変更でき、必ずしも従来のようにスーパーヘテロダイン方式を用いなくても受信機を構成することができる。このため、スーパーヘテロダイン方式の受信機では不可欠であった中間周波トランスや局部発振回路が不要となり、同調機構全体、さらには受信機のほとんどを半導体基板上に一体形成することができる。
【0080】
また、前段の移相回路の入力側に接続された抵抗あるいは帰還抵抗の少なくとも一方の抵抗値を変えることにより、同調帯域幅すなわちバンドパスフィルタのQを可変することができるため、例えば本発明の同調回路を用いた受信機において、混信が生じる場合には同調帯域幅を狭くして混信を防ぎ、反対に混信が少ない場合には同調帯域幅を広げて受信信号を忠実に再現するといったことが可能であり、混信状態に応じて最適な受信機を設計できる。
【0081】
また、バーアンテナ等の2次コイルから同調信号を出力しているため、同調信号に含まれる直流成分を除去することができ、次段の回路との接続が容易になる。
【図面の簡単な説明】
【図1】同調回路の第1の実施形態の詳細構成を示す回路図である。
【図2】図1に示した前段の移相回路の構成を抜き出して示した回路図である。
【図3】移相回路の動作を説明するための図である。
【図4】前段の移相回路の入出力電圧とインダクタ等に現れる電圧との関係を示すベクトル図である。
【図5】図1に示した後段の移相回路の構成を抜き出して示した回路図である。
【図6】後段の移相回路の入出力電圧とキャパシタ等に現れる電圧との関係を示すベクトル図である。
【図7】図1に示した同調回路に対応した等価回路を示す図である。
【図8】2つの移相回路の全体を伝津関数K1 を有する回路に置き換えたシステム図である。
【図9】図8に示すシステムをミラーの定理によって変換したシステム図である。
【図10】図1に示した同調回路の同調特性を示す図である。
【図11】AM受信機の構成を示すブロック図である。
【図12】同調回路の第2の実施形態の構成を示す回路図である。
【図13】同調回路の第3の実施形態の構成を示す回路図である。
【図14】同調回路の第4の実施形態の構成を示す回路図である。
【図15】2つの移相回路の前段に非反転回路を接続した同調回路の構成を示す回路図である。
【図16】同調回路の第6の実施形態を示す回路図である。
【図17】同調回路の第7の実施形態を示す回路図である。
【図18】オペアンプの構成の中で移相回路の動作に必要な部分を抽出した回路図である。
【符号の説明】
1 同調回路
10L、30C 移相回路
12、32 オペアンプ
17 バーアンテナ17
17A 1次コイル
17B 2次コイル
70 帰還抵抗
74 可変抵抗
Claims (10)
- それぞれが差動増幅器を含み、互いに縦続接続された全域通過型の2つの移相回路を備え、
前記2つの移相回路の一方は、アンテナの1次コイルからなるインダクタと第1の抵抗とで構成される第1の直列回路と、前記1次コイルに磁気結合された2次コイルとを含み、
前記2つの移相回路の他方は、キャパシタと第2の抵抗とで構成される第2の直列回路を含み、
後段の前記移相回路の出力を前段の前記移相回路の入力側に帰還するとともに、前記2次コイルの両端から同調信号を取り出すことを特徴とする同調回路。 - 請求項1において、
前記2つの移相回路の少なくとも一方は、反転入力端子に第3の抵抗の一方端が接続され前記第3の抵抗を介して交流信号が入力される差動増幅器と、前記差動増幅器の出力端と前記差動増幅器の反転入力端子との間に接続された第4の抵抗とを含んで構成され、前記第1の直列回路内の前記インダクタと前記第1の抵抗との接続部、あるいは前記第2の直列回路内の前記キャパシタと前記第2の抵抗との接続部を前記差動増幅器の非反転入力端子に接続したことを特徴とする同調回路。 - 請求項1において、
前記2つの移相回路の少なくとも一方は、反転入力端子に第3の抵抗の一方端が接続され前記第3の抵抗を介して交流信号が入力される差動増幅器と、前記差動増幅器の出力端子に接続された第1の分圧回路と、前記第1の分圧回路の出力端と前記差動増幅器の反転入力端子との間に接続された第4の抵抗とを含んで構成され、前記第1の直列回路内の前記インダクタと前記第1の抵抗との接続部、あるいは前記第2の直列回路内の前記キャパシタと前記第2の抵抗との接続部を前記差動増幅器の非反転入力端子に接続したことを特徴とする同調回路。 - 請求項1において、
前記2つの移相回路の少なくとも一方は、反転入力端子に第3の抵抗の一方端が接続され前記第3の抵抗を介して交流信号が入力される差動増幅器と、前記差動増幅器の反転入力端子と出力端子との間に接続された第4の抵抗と、一方端が前記差動増幅器の反転入力端子に接続され他方端が接地された第5の抵抗とを含んで構成され、前記第1の直列回路内の前記インダクタと前記第1の抵抗との接続部、あるいは前記第2の直列回路内の前記キャパシタと前記第2の抵抗との接続部を前記差動増幅器の非反転入力端子に接続したことを特徴とする同調回路。 - 請求項2〜4のいずれかにおいて、
入力される交流信号の位相を変えずに出力する非反転回路を備え、前記非反転回路は前記縦続接続された2つの移相回路によって形成される帰還ループの一部に挿入され、
前記縦続接続された2つの移相回路の全体により位相シフト量の合計が360°となる周波数近傍の信号を前記同調信号として前記2次コイルの両端から取り出すことを特徴とする同調回路。 - 請求項2〜4のいずれかにおいて、
入力される交流信号の位相を反転して出力する位相反転回路を備え、前記位相反転回路は前記縦続接続された2つの移相回路によって形成される帰還ループの一部に挿入され、
前記縦続接続された2つの移相回路の全体により位相シフト量の合計が180°となる周波数近傍の信号を前記同調信号として前記2次コイルの両端から取り出すことを特徴とする同調回路。 - 請求項1〜6のいずれかにおいて、
前記第1および第2の直列回路の少なくとも一方の時定数を可変することにより、前記同調信号の同調周波数を変化させることを特徴とする同調回路。 - 請求項7において、
前記第1および第2の抵抗の少なくとも一方の抵抗を可変することにより、前記時定数を可変することを特徴とする同調回路。 - 請求項1〜8のいずれかにおいて、
前記差動増幅器は演算増幅器であることを特徴とする同調回路。 - 請求項1〜9のいずれかにおいて、
前記1次および2次コイル以外の構成部品を半導体基板上に一体形成したことを特徴とする同調回路。
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