JPH09289337A - 紫外領域エレクトロルミネッセンス素子及びレーザ発光素子 - Google Patents

紫外領域エレクトロルミネッセンス素子及びレーザ発光素子

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JPH09289337A
JPH09289337A JP26205196A JP26205196A JPH09289337A JP H09289337 A JPH09289337 A JP H09289337A JP 26205196 A JP26205196 A JP 26205196A JP 26205196 A JP26205196 A JP 26205196A JP H09289337 A JPH09289337 A JP H09289337A
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貴士 宮澤
Mitsuo Kira
満夫 吉良
Toshihiro Suzuki
俊博 鈴木
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Abstract

(57)【要約】 【課題】 波長純度の高い紫外光を得ることのできるE
L素子及びレーザ発光素子を提供する。 【解決手段】 ポリシラン又はオリゴシラン等、Si,
Ge,Sn,Pbから選ばれた同種又は異種の元素が直
接連結したポリマー又はオリゴマーからなる薄膜を発光
層13として透明電極12と上部電極14の間に配置し
てEL素子10を構成する。発光層としてポリ−ジ−n
−ヘキシルポリシリレン(PDHS)を用いた場合、両
電極12,14間に直流電圧を印加することで約370
nmに鋭いピークを有するELスペクトルが得られる。

Description

【発明の詳細な説明】
【0001】
【発明の属する技術分野】本発明は、紫外領域で発光す
ることのできるエレクトロルミネッセンス素子及びレー
ザ発光素子に関する。
【0002】
【従来の技術】エレクトロルミネッセンス(以下、EL
と記す)は、蛍光体に強い電場を加えたときに生じるル
ミネッセンスであり、発光ダイオードのような電流注入
型のELと電圧励起型のELがある。電圧励起型のEL
パネルには、蛍光体の微粉末を合成樹脂又は低融点ガラ
ス粉末中に分散させたものを透明電極と背面電極の間に
挟んだ分散型粉末ELパネルと、真空蒸着やスパッタ法
で形成した薄膜状の蛍光体発光層を誘電体絶縁層で完全
に封じて透明電極と背面電極の間に配置した二重絶縁膜
ELパネルが知られている。電圧励起型のEL素子の発
光色は蛍光物質によって変化し、硫化亜鉛にマンガンを
重量比で0.3〜0.5%添加した蛍光物質(ZnS:
Mn)によって黄橙色、SrS:Ceによって青色、C
aS:Ce又はCaS:Erによって緑色、CaS:E
uによって赤色の発光を得ることができる。その他にも
ZnS:TmF3によって青色、ZnS:TbF3によっ
て緑色、ZnS:SmF3によって橙赤色の発光が得ら
れている。
【0003】また近年、有機薄膜によって形成したホー
ル輸送層と発光層の2層構造を有する注入型EL素子が
注目されている。図11は、この2層型EL素子の断面
構造を示すもので、ガラス基板91上に形成した透明電
極(ITO)92の上にホール輸送層93と発光層94
を積層し、その上に上部電極95を形成したものであ
る。ホール輸送層93には芳香族ジアミン誘導体又はポ
リメチルフェニルシランが用いられ、発光層94には発
光性金属錯体である8−ヒドロキシキノリンアルミニウ
ム(Alq3)が用いられている。上部電極95はMn
とAgを積層した電極である。ホール輸送層93はホー
ルを輸送する役割と電子をブロックする役割を果たし、
電子がホールと再結合することなく電極に移動すること
を妨げる。
【0004】図11に示したEL素子を、ITOを正極
として順バイアスに連続直流モードで作動すると、明る
い緑色の発光が観察される。図12は、このEL素子の
発光スペクトルとAlq3の発光スペクトルを示すもの
で、実線はEL素子の発光スペクトルを破線はAlq3
の発光スペクトルを示す。ELスペクトルはAlq3
発光スペクトルと一致し、ELがAlq3のものである
ことを示している〔Polymer Preprints, Japan, 40(3),
1071(1991); Applied Physics Letter,59(21), 276
0〕。
【0005】また、「ポリマー・プレプリント」〔Poly
mer Preprints, Japan, 44(3), 325(1995)〕には、酸素
架橋構造を有するポリシランが電界発光することについ
て記載されている。この報告によると、ポリメチルフェ
ニルシラン(PMPS)をITO基板上に塗布し、加熱
により架橋させた後、Alを蒸着したITO/架橋PM
PS/Al構造の単層EL素子が、発光エネルギー中心
1.8eVで電界発光する。なお、酸素架橋構造を有し
ない通常のポリシランは電界発光しないと述べられてい
る。
【0006】
【発明が解決しようとする課題】光線によって記録媒体
に記録を行う光記録においては、記録波長が短いほど記
録密度を上げることができるため、紫外領域で発光する
小型の光源を利用できれば有利である。また、多くの蛍
光色素は紫外線を吸収して蛍光を発するので、紫外線面
光源を実現できれば、その上に蛍光色素を配置すること
でディスプレイパネルを構成することができる。なお、
紫外線を利用する光学系において、紫外線光源の発光波
長純度が高ければ、光学系に用いられる回折格子やミラ
ーの設計が簡単になる。このように、取り扱いの簡単な
紫外線光源に対する潜在需要は高い。
【0007】ところが前述のように、可視領域に発光ス
ペクトルを有するEL素子は従来から知られていたが、
紫外領域で発光するEL素子は知られていない。また、
従来のEL素子は、図12に典型的に示されているよう
に、ブロードな発光スペクトルを有する。本発明は、波
長純度の高い紫外光を得ることのできるEL素子を提供
することを目的とする。また、本発明は、紫外領域を含
む領域で発光可能な固体レーザ発光素子を提供すること
を目的とする。
【0008】
【課題を解決するための手段】本発明においては、EL
素子又はレーザ発光素子の発光層としてSi,Ge,S
n,Pbから選ばれた同種又は異種の元素が直接連結し
たポリマー又はオリゴマーからなる薄膜を用いることに
よって前記目的を達成する。効率よく発光させるために
は、前記ポリマー又はオリゴマーは主鎖骨格の原子数が
6以上であることが必要である。
【0009】すなわち、本発明のエレクトロルミネッセ
ンス素子又はレーザ発光素子は、Si,Ge,Sn,P
bから選ばれた同種又は異種の元素が直接連結したポリ
マー又はオリゴマーからなる薄膜を少なくとも一方が透
明電極である2枚の電極の間に配置した構造を有するこ
とを特徴とする。ただし、レーザ発光素子の場合には必
ずしも一方の電極を透明電極とする必要はない。
【0010】Si,Ge,Sn,Pbから選ばれた同種
又は異種の元素が直接連結したポリマー又はオリゴマー
としては、下記の〔化1〕に示されるように、Si,G
e,Sn,Pbから選ばれた同種の元素が直接連結した
ポリマー又はオリゴマー、あるいは下記〔化2〕に示さ
れるように、異種の元素が直接連結したポリマー又はオ
リゴマーを挙げることができる。
【0011】
【化1】
【0012】ここで、MはSi,Ge,Sn又はPbを
表す。R1及びR2は前記元素の置換基を表し、同一のも
のであっても異なっていてもよい。R1及びR2の例とし
ては、アルキル基、アリール基、フェノキシ基、アルコ
キシル基、アルキルアミノ基、アルキルチオ基、アルコ
ール性ヒドロキシ基等を挙げることができるが、特にこ
られのものに限定されるわけではない。
【0013】
【化2】
【0014】ここで、M1及びM2は、Si,Ge,Sn
又はPbを表す。また、R3,R4,R5,R6は前記元素
の置換基を表し、同一のものであっても異なっていても
よい。R3,R4,R5,R6の例としては、アルキル基、
アリール基、フェノキシ基、アルコキシル基、アルキル
アミノ基、アルキルチオ基、アルコール性ヒドロキシ基
等を挙げることができるが、特にこられのものに限定さ
れるわけではない。
【0015】4種の14族元素Si,Ge,Sn,Pb
からなるポリマーは基本的に同様な物理的性質を有する
ので、これらが交換されたポリマー又はオリゴマーを用
いても、同じように紫外領域に発光スペクトルを有する
EL素子やレーザ発光素子を得ることができる。また、
この種のEL素子は発光帯が極めて狭いので、14族元
素の種類あるいは元素の配列のシーケンスを変えること
により、発光波長の異なるEL素子やレーザ発光素子を
製造することができる。
【0016】Si,Ge,Sn,Pbから選ばれた同種
又は異種の元素が直接連結したポリマー又はオリゴマー
の光電子物性は主鎖の構造に強く依存することが知られ
ており、主鎖骨格は置換基によってある程度制御が可能
である。したがって、置換基を選択することによってE
L素子やレーザ発光素子としての性能を変化させること
ができる。このような観点から、発光層として例えば次
の〔化3〕や〔化4〕に示すように構造制御、すなわち
発光状態に適するように主鎖骨格を配座制御したポリマ
ー又はオリゴマーからなる薄膜を用いることもできる。
〔化3〕のポリマー又はオリゴマーは立体的に螺旋を描
き、室温においても比較的配座が固定されやすい。〔化
4〕のポリマー又はオリゴマーは、上記〔化1〕におい
て隣接するR1同士及び/又はR2同士が共同してアルキ
ル基を構成する場合に相当し、同様に室温においても比
較的配座が固定されやすい特徴を有する。また、ポリマ
ー又はオリゴマーの機械的強度を大きくするため、アル
キル鎖等の補強置換基とところどころで架橋した構造の
ものとしてもよい。
【0017】
【化3】
【0018】ここで、MはSi,Ge,Sn又はPbを
表し、R*は光学活性置換基を表す。光学活性置換基の
例としては、2−メチルブチル基を挙げることができ
る。また、R7は前記元素の置換基を表し、同一のもの
であっても異なっていてもよい。R7の例としては、ア
ルキル基、アリール基、フェノキシ基、アルコキシル
基、アルキルアミノ基、アルキルチオ基、アルコール性
ヒドロキシ基等を挙げることができるが、特にこられの
ものに限定されるわけではない。
【0019】
【化4】
【0020】ここで、MはSi,Ge,Sn又はPbを
表し、R8,R9は前記元素の置換基を表し、同一のもの
であっても異なっていてもよい。R8,R9の例として
は、アルキル基、アリール基、フェノキシ基、アルコキ
シル基、アルキルアミノ基、アルキルチオ基、アルコー
ル性ヒドロキシ基等を挙げることができるが特にこられ
のものに限定されるわけではない。また、次の〔化5〕
に示されるように、1つの置換基のみを有する同種の1
4族元素が直接連結したポリマー又はオリゴマーを用い
ることもできる。
【0021】
【化5】
【0022】ここで、MはSi,Ge,Sn又はPbを
表す。また、Rは前記元素の置換基を表し、同一のもの
であっても異なっていてもよい。Rの例としては、アル
キル基、アリール基、フェノキシ基、アルコキシル基、
アルキルアミノ基、アルキルチオ基、アルコール性ヒド
ロキシ基等を挙げることができるが特にこられのものに
限定されるわけではない。発光層の成膜方法としては、
スピンコート、真空蒸着、光CVD、熱CVD、MBE
(分子ビームエピタクシー)等の既知の方法を利用する
ことができる。CVD法によって発光層を石英ガラス基
板上に直接成膜する場合には、表面をシラン処理した石
英ガラス基板を用いるのが有利である。
【0023】本発明で発光層として用いるポリマー又は
オリゴマーは主骨格を構成するSi,Ge,Sn及び/
又はPbの原子数により発光波長を制御することが可能
である。一般に、ポリマー又はオリゴマーの鎖長が長く
なるにつれて発光ピーク波長は長波長側にシフトする。
従来のEL素子に用いられているポリシラン層は単なる
ホール輸送層としての機能を果たすものである。これに
対して本発明はポリシランそのものの発光を利用するも
のであり、これまで未開発であった紫外領域の発光素子
を提供することができる。
【0024】
【発明の実施の形態】以下、本発明の実施の形態を説明
する。ここでは、Si元素が直接連結したポリマー又は
オリゴマーを例にとって説明する。図1に断面構造を略
示するような、ポリ−ジ−n−ヘキシルポリシリレン
(PDHS:−SiRR’−;R=R’=C613)を
発光層とするEL素子を作製した。素子の作製は次の方
法で行った。
【0025】硫酸処理したのち脱気したn−オクタン5
0mlにナトリウム4.5gを溶解し、18−クラウン
−6エーテルを0.5g添加してn−オクタン溶液を調
製した。この溶液に、原料のジヘキシルジクロロシラン
10gのn−オクタン溶液を50ml滴下し、100℃
で終夜撹拌した。反応の副生成物である塩化ナトリウム
を濾過して除去した後、濾液を水で洗浄し、塩化カルシ
ウムで乾燥する。その後、溶媒を溜去してワックス状の
粗ポリマー(ポリ−ジ−n−ヘキシルポリシリレン)を
得た。この粗ポリマーをトルエンに溶解し、エタノール
により再沈殿を行った。再沈殿により得られたポリマー
を70℃、10-5Torrの雰囲気下で一晩真空乾燥し
てポリ−ジ−n−ヘキシルポリシリレン(PDHS:−
SiRR’−;R=R’=C613)を得た。得られた
PDHSの分子量をゲルパーミエーション液体クロマト
グラフによって測定したところ、ポリスチレン標準でお
よそ30万であった。
【0026】以上の操作によって得られたPDHSをト
ルエンに溶解し、透明電極12としてITO膜をコート
した石英ガラス基板11上にスピンコートしてPDHS
の薄膜を形成し、発光層13とした。形成されたPDH
Sの膜厚は0.1〜1μmであった。更にその上に上部
電極14としてアルミニウムを50〜100nmの厚さ
に蒸着してEL素子10を作製した。上部電極の材料と
してはアルミニウムの他に、マグネシウム又はカルシウ
ムを用いることもできる。作製したEL素子10を液体
窒素で77Kに冷却し、図2に示すように直流電源21
に接続した。EL素子10から発光された光線を集光レ
ンズ24で集光し、分光器25に導入して分光したのち
検出器26で検出し、発光スペクトルを測定したとこ
ろ、紫外部に鋭い電界発光が観測された。
【0027】図3に、測定された発光スペクトルを示
す。図3から明らかなように、発光スペクトルは、波長
約370nm(エネルギー約3.32eV)付近にPD
HSの励起子構造を直接反映した極めて強いピークを示
している。ピーク幅は約20nmであった。温度を室温
にした以外、他の条件は同一にしてEL素子10の発光
スペクトルを測定したところ、ブロードなスペクトルが
観察された。これは、室温ではポリシランが様々な配座
をとっているためと推定される。
【0028】鎖長の異なるオリゴシラン、ポリシランを
調製し、上記と同様の方法でその薄膜を発光層としたE
L素子を作製し、各EL素子を77Kに冷却して同様の
測定を行った。ケイ素原子の数が5以下のオリゴシラン
は発光が極めて微弱であり、発光スペクトルを測定する
ことができなかった。ケイ素原子の数が6のオリゴシラ
ンでは波長280nm付近に発光が観測され、鎖長を長
くするに従って発光のピーク波長は長波長側にシフトし
た。ポリシランでは、鎖長を長くすることにより発光の
ピーク波長を380〜400nmにシフトさせることが
できた。発光ピーク波長がシフトした場合においても、
ピーク幅約20nm程の鋭い発光スペクトルが観測され
た。
【0029】図4は、図2の測定系において直流電源2
1によるEL素子10への印加電圧を変化させて測定し
た、種々の電圧におけるEL発光強度及びEL素子に流
れる電流の変化を示す図である。黒丸はEL発光強度、
白丸はEL素子に流れる電流を表す。ここでは、発光層
としてのポリシラン薄膜をスピンコート法によって形成
したが、発光層は真空蒸着法、光CVD法又は熱CVD
法によっても成膜することができる。
【0030】図5は、真空蒸着法で成膜する方法を示す
略図である。ベルジャー50の下部にはヒーター51上
に試料皿52が配置されている。試料皿52の上方に
は、ITO等の透明電極がコートされた石英ガラス基板
53を、透明電極側を下方に向けて配置する。石英ガラ
ス基板53は液体窒素容器54から伸びるコールドフィ
ンガー55によって背面側から冷却されている。試料と
して例えば下記〔化6〕に示すポリシランを試料皿52
に入れ、ベルジャー50内を10-6Torr程度の真空
度に真空排気し、試料皿の下のヒーター51に通電して
試料を100℃から120℃程度に加熱する。試料が蒸
発して石英ガラス基板53の透明電極上に薄膜が形成さ
れたら真空を解除し、ベルジャー50から基板53を取
り出す。その後、薄膜上にアルミニウム等を蒸着するこ
とによって上部電極を形成してEL素子を作製する。
〔化6〕中、Meはメチル基を表す。
【0031】
【化6】
【0032】また、ポリシラン発光層の成膜は光CVD
又は熱CVDによって行うこともできる。この場合は、
図6に略示するように、トリシラン誘導体又はメトキシ
ジシラン誘導体を原料として光又は熱によって重合活性
な反応中間体シリレンを生成し、ITO等の透明電極を
コートした基板上でシリレンの重合を行って透明電極上
にポリシラン薄膜を形成する。その後、上部電極を蒸着
してEL素子を作製する。図6中、Meはメチル基を表
し、Rはアルキル基やアリール基等の置換基を表す。
【0033】CVD法でポリシランを成膜するとき、次
のようにして表面処理を施した石英ガラス基板を用いる
こともできる。まず石英ガラス基板をアセトン中に浸漬
して超音波洗浄した後、硝酸水溶液中に浸漬して超音波
洗浄する。さらに、洗浄した基板を飽和重曹水溶液中に
浸漬して超音波洗浄する。続いて、5%トリエトキシシ
ランのエタノール溶液中で基板を60分間煮沸する。そ
の後、基板をオーブンに入れ120℃で乾燥する。この
ような処理を行った基板に前述の光CVD又は熱CVD
の方法でポリシランの薄膜を形成する。
【0034】石英ガラス基板にこのような表面処理を施
すことによりポリシランの重合度を増し、かつ配向性を
揃えることができる。これは、図7(a)に示すよう
に、洗浄した石英ガラス基板をトリエトキシシラン溶液
で煮沸することによって石英ガラス基板70の表面にト
リエトキシシランが結合し、図7(b)に示すように、
そのSi−Hにシリレンが挿入される。さらに、図7
(c)に示すように、シリレンのSi−Hに対する挿入
が多数繰り返されるというような機構で反応が進行する
ためである。なお、図7中、Rはアルキル基やアリール
基等の置換基を表す。
【0035】表面処理を施した石英ガラス基板80上に
発光層81として直接ポリシランの薄膜を形成したあ
と、図8に示すようにポリシラン薄膜上に2つのアルミ
ニウム電極82,83を間隙をあけて蒸着形成し、さら
に保護膜84を形成することでEL素子を得ることがで
きる。
【0036】次に、石英ガラス基板上に形成したポリ−
ジ−n−ヘキシルポリシリレン(PDHSの薄膜に色素
レーザの2倍波である波長310nm、パルス幅3ps
のパルスレーザを照射し、PDHSから発せられる蛍光
スペクトルを測定した。図9に、時間分解蛍光スペクト
ルをパルスレーザ照射直後から5nsまで積算して得ら
れた蛍光スペクトルを示す。この蛍光スペクトルは波長
372nmと376nmに2つのピークを有する。矢印
Aのピークは通常の蛍光を示す。矢印Bのピークは波長
310nmの連続光による励起では観察されないピーク
である。このようにパルスレーザによる高密度光励起に
よって特定のフォノンサイドバンドが成長するというこ
とはPDHSがレーザ発振する可能性を示すものであ
る。したがって、本発明のEL素子は電気的に高密度パ
ルス励起を行うことでレーザ発振する可能性がある。
【0037】ここでは、EL素子の発光層としてSi元
素が直接連結したポリマー又はオリゴマーの薄膜を採用
した例について説明した。しかし、本発明のEL素子に
使用できる発光層はSi元素が直接連結したポリマー又
はオリゴマーの薄膜に限られるものではなく、〔化1〕
〜〔化5〕によって説明したように、Si,Ge,S
n,Pbから選ばれた同種又は異種の元素が直接連結し
たポリマー又はオリゴマーからなる薄膜であれば同様に
使用でき、かつ同様の効果を奏することができるもので
ある。
【0038】次に、本発明によるレーザ発光素子につい
てその一例を説明する。図1に断面構造を略示するよう
な、ポリジメチルシリレン(PDMS:−SiRR’
−;R=R’=CH3 )を発光層とするレーザ発光素子
を作製した。素子の作製は次の方法で行った。硫酸処理
したのち脱気したn−オクタン50mlにナトリウム
4.5gを溶解した。これに原料ジメチルジクロロシラ
ン10g(n−オクタン溶液)を50ml滴下し、10
0℃で終夜撹拌した。反応終了後、エタノールを加え、
さらに水を加える。エーテルで抽出し、溶媒をとばすと
ポリジメチルシリレンが得られる。
【0039】こうして得られたポリジメチルシリレン及
びITO電極12をコーティングした石英ガラス基板1
1を、図5に示した真空蒸着装置中に設置し、10-5
orrでポリジメチルシリレンを200℃程度に加熱
し、石英ガラス基板11にコーティングされたITO電
極12上に蒸着膜を形成し、発光層13とした。形成さ
れたPDMS蒸着膜の膜厚はおよそ100nmであっ
た。この蒸着膜は、光吸収測定の際の偏光特性から、高
度に配向制御された膜であることが確認された。蒸着膜
の上に更に上部電極14としてアルミニウムを50〜1
00nmの厚さに蒸着してレーザ発光素子10を作製し
た。
【0040】作製されたレーザ発光素子を図2に示すよ
うに直流電源21に接続し、室温で約50Vの電圧を印
加して発光させた。素子から発生された光線を分光器に
導入して発光スペクトルを測定したところ、多数の鋭い
ピークが観察された。図10に、測定された発光スペク
トルを示す。図10から明らかなように、通常の発光と
は異なり、レーザ発振に基づく鋭いピークのプログレッ
ションが観察された。発振波長は分子の構造によって変
えることができる。ここではPDMS蒸着膜によるレー
ザ発振について説明したが、他のオリゴシランやポリシ
ランでも分子の配向を揃えることによりレーザ発振が可
能である。
【0041】
【発明の効果】本発明によると、紫外領域に波長純度の
高い発光スペクトルを示すEL素子を得ることができ
る。また、極めて簡単な固体構造で紫外領域に発振線を
有するレーザ発光素子を得ることができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明のEL素子の断面構造を示す模式図。
【図2】発光スペクトル測定系の説明図。
【図3】本発明のEL素子の発光スペクトルを示す図。
【図4】EL素子への印加電圧と、発光強度及びEL素
子に流れる電流の変化を示す図。
【図5】図5は、真空蒸着法による成膜の説明図。
【図6】光CVD又は熱CVDによる成膜の説明図。
【図7】基板表面処理の効果を説明する図。
【図8】本発明によるEL素子の他の例の断面図。
【図9】PDHSの時間分解蛍光スペクトルを示す図。
【図10】本発明のレーザ発光素子の発光スペクトルを
示す図。
【図11】従来の2層型EL素子の断面構造を示す模式
図。
【図12】従来のEL素子の発光スペクトルとAlq3
の発光スペクトルを示す図。
【符号の説明】
10…EL素子、11…石英ガラス基板、12…透明電
極、13…発光層、14…上部電極、21…直流電源、
23…電流計、24…集光レンズ、25…分光器、26
…検出器、50…ベルジャー、51…ヒーター、52…
試料皿、53…石英ガラス基板、54…液体窒素容器、
55…コールドフィンガー、70…石英ガラス基板、8
0…石英ガラス基板、81…発光層、82,83…電
極、84…保護層、91…ガラス基板、92…透明電
極、93…ホール輸送層、94…発光層、95…上部電
───────────────────────────────────────────────────── フロントページの続き (72)発明者 吉良 満夫 宮城県仙台市青葉区長町字越路19−1399 理化学研究所 フォトダイナミクス研究セ ンター内 (72)発明者 鈴木 俊博 東京都目黒区大岡山1−4−10 高正大岡 山ハイツ203

Claims (10)

    【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】 Si,Ge,Sn,Pbから選ばれた同
    種又は異種の元素が直接連結したポリマー又はオリゴマ
    ーからなる薄膜を少なくとも一方が透明電極である2枚
    の電極の間に配置したことを特徴とする紫外領域エレク
    トロルミネッセンス素子。
  2. 【請求項2】 前記ポリマー又はオリゴマーは構造制御
    したポリマー又はオリゴマーであることを特徴とする請
    求項1記載の紫外領域エレクトロルミネッセンス素子。
  3. 【請求項3】 ポリシラン又はオリゴシランからなる薄
    膜を少なくとも一方が透明電極である2枚の電極の間に
    配置したことを特徴とする紫外領域エレクトロルミネッ
    センス素子。
  4. 【請求項4】 前記薄膜はスピンコート、真空蒸着又は
    CVDによって形成されたものであることを特徴とする
    請求項1、2又は3記載の紫外領域エレクトロルミネッ
    センス素子。
  5. 【請求項5】 表面をシラン処理した石英ガラス基板上
    にSi,Ge,Sn,Pbから選ばれた同種又は異種の
    元素が直接連結したポリマー又はオリゴマーからなる薄
    膜がCVD法によって形成され、さらに前記薄膜上に2
    枚の電極が配置されていることを特徴とする紫外領域エ
    レクトロルミネッセンス素子。
  6. 【請求項6】 Si,Ge,Sn,Pbから選ばれた同
    種又は異種の元素が直接連結したポリマー又はオリゴマ
    ーからなる薄膜を2枚の電極の間に配置したことを特徴
    とするレーザ発光素子。
  7. 【請求項7】 前記ポリマー又はオリゴマーは構造制御
    したポリマー又はオリゴマーであることを特徴とする請
    求項6記載のレーザ発光素子。
  8. 【請求項8】 ポリシラン又はオリゴシランからなる薄
    膜を2枚の電極の間に配置したことを特徴とするレーザ
    発光素子。
  9. 【請求項9】 前記薄膜はスピンコート、真空蒸着又は
    CVDによって形成されたものであることを特徴とする
    請求項6、7又は8記載のレーザ発光素子。
  10. 【請求項10】 表面をシラン処理した石英ガラス基板
    上にSi,Ge,Sn,Pbから選ばれた同種又は異種
    の元素が直接連結したポリマー又はオリゴマーからなる
    薄膜がCVD法によって形成され、さらに前記薄膜上に
    2枚の電極が配置されていることを特徴とするレーザ発
    光素子。
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