JPH09287029A - 靱性に優れた高強度継目無鋼管の製造方法 - Google Patents
靱性に優れた高強度継目無鋼管の製造方法Info
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Abstract
な継目無鋼管を高い生産効率で特性のバラツキなく製造
する方法の提供。 【解決手段】下記の (a)式で定義される炭素当量Ceqが
0.6重量%以下の鋼片を用いて熱間加工により継目無鋼
管を製造し、熱間加工後の鋼管を、その温度が Ar3変態
点以下にならないうちに「A3変態点−50℃」を超えて11
00℃以下の温度に保持された保熱炉に装入して1〜30分
間保持し、その後、5℃/sec 以上の冷却速度で焼入れ
し、以後、空冷することを特徴とする靱性に優れた継目
無鋼管の製造方法』を要旨とする。 Ceq=C+ Mn/6 + (Cu+Ni)/15 + (Cr+Mo+V)/5 〔%〕 ・・・ (a)
Description
で、しかも特性のバラツキが小さく、特にラインパイプ
として用いるのに好適な継目無鋼管を、高い生産効率で
製造する方法に関する。
と優れた靱性とが要求されるが、さらにパイプライン敷
設時に溶接によって接続される関係上、優れた溶接性も
必要である。また、曲げ加工性や使用中の破壊安全性の
確保のために、引張強さに対する降伏強さの比が小さい
こと、即ち、降伏比が小さいことも望まれる。
ンとは別に焼入れ装置と焼戻し装置を設置し、圧延ライ
ンで製造され、一旦室温まで冷却された鋼管を再加熱し
て、焼入れ−焼戻しの処理を行う、という方法で製造さ
れてきた (以下、この方法を「再加熱−焼入れ法」とい
う) 。
法として、直接焼入れ法も既に採用されている。「直接
焼入れ法」とは、圧延材の保有熱を利用し、実質的な再
加熱を行うことなく、焼入れを行う方法である。
い、即ち焼入性の高い鋼種に対しては、上記の直接焼入
れ法でも高強度および高靱性を付与することができる。
しかし、圧延による継目無鋼管の製造では、潤滑の困難
性などから、圧延仕上げ温度を低くすることが難しく、
通常、仕上げ温度は 800℃以上である。従って、圧延工
程でオーステナイト結晶粒を微細化することが困難であ
り、特に、溶接性を高めるために低炭素当量の成分系と
するラインパイプ用の継目無鋼管を通常の直接焼入れで
製造した場合には低温靱性に劣るものとなる。
を得る手段として圧延後直ちに水冷し、一定の温度域で
水冷を停止した後、空冷するプロセス(以下「制御冷却
法」と略称する)が提案されている。
80516 号公報および特開平5-148543号公報には、圧延後
に水冷を行い、500 ℃前後で水冷を停止することによっ
て、組織を細粒とし、強度、靭性に優れた厚鋼鈑を製造
する方法が開示されている。
目無鋼管の製造に適用した場合、鋼管の各部分での性能
のバラツキが著しく、局部的な硬化部分や軟化部分が生
じ、鋼管全体として所定の性能を確保することは困難で
ある。その理由は、次のように考えられる。
板の製造では、ロールとの接触による冷却が鋼板の幅全
体に均一に起こる。従って、焼入れ前の鋼板には殆ど温
度ムラはない。しかし、継目無鋼管の場合には、複雑な
ロール群によって中空円筒形に成形されるため、ロール
との接触が鋼管の円周方向位置によって異なり、さらに
圧延後の鋼管の搬送時にも、鋼管と搬送床のビームとの
接触が均等でないために、鋼管の長手方向にも温度ムラ
が生じる。このように部位によって温度ムラのある鋼管
をそのまま水冷すると、温度の高い部分は膜沸騰によっ
て冷却速度が低下するのに対して、温度の低い部分は膜
沸騰が起らず冷却速度が高くなりやすく、鋼管部位の温
度ムラは一層大きくなる。
って行う場合には、鋼管の部位によって多少の冷却速度
の相違があっても、完全に変態するまで冷却されるため
水冷の効果は比較的均一に現れる。しかし、500 ℃前後
で水冷を停止する制御冷却法では、冷却前の鋼管に温度
ムラがあると、水冷停止時にもなお 600℃以上の二相温
度域にある部分と、500 ℃以下の完全に変態を終了した
部分とが生じる。従って、以後の空冷の際には部位によ
って異なった組織が生成し、当然に機械的性質等にもバ
ラツキが発生する。
圧延条件を始めとする様々な製造条件に大きな違いがあ
るため、鋼板の製造で行われている技術をそのまま継目
無鋼管の製造に転用することはきわめて困難である。
は、ラインパイプ用鋼管のような低炭素当量の継目無鋼
管を、直接焼入れ法に準じた生産性の高い方法で製造す
ることにある。第2の課題は、製品鋼管として高い強度
と優れた低温靱性を有し、かつ、これらの特性にムラ
(バラツキ) のないものを製造することにある。そし
て、本発明は、上記の二つの課題をともに解決できる新
しい継目無鋼管の製造方法を提供することを目的とす
る。
ンパイプ用鋼管のような低炭素当量の鋼を素材とするも
のでは、単なる直接焼入れ法では高強度かつ高靱性の製
品は得られない。一方、前記の制御冷却法を適用すれ
ば、鋼管は微細なフェライトとベイナイトの混合組織と
なって、強度−靱性のバランスの良いものとなるが、実
際の継目無鋼管の製造にこの2段冷却法を適用すると製
品鋼管中に特性のバラツキが発生する。
決した画期的なものであり、その要旨は次の継目無鋼管
の製造方法にある。
0.6重量%以下の鋼片を用いて熱間加工により継目無鋼
管を製造し、熱間加工後の鋼管を、炉温が「A3変態点−
50℃」を超えて1100℃以下の温度に設定された保熱炉に
装入して1〜30分間保持し、その後、5℃/sec 以上の
冷却速度で冷却し、以後、空冷することを特徴とする靱
性に優れた継目無鋼管の製造方法。
備を用いて製管工程から熱処理までオンラインで連続的
に実施できる。保熱は、圧延後の鋼管に再結晶を起こさ
せてオーステナイト粒を細かく均一にすること、および
鋼管全体を均一な温度にして、部位による温度ムラを小
さくすることが目的である。
に暫時空冷されてもよいが、 Ar1変態点以下に冷却して
はならない。保熱炉内で保持することを、以下、「保
熱」と記すが、それは炉内に装入された鋼管が、前記
「A3変態点−50℃」を超える温度で、しかも1100℃以下
の温度 (以下、この温度範囲を「保熱温度範囲」と記
す)に設定された保熱炉内に置かれることを意味する。
従って、鋼管は、保熱温度範囲内の一定温度に保持され
てもよいし、昇温または冷却されてもよく、そのヒート
パターンには何ら制約はない。要するに、保熱温度範囲
内での所定時間の保持が重要なのである。
しいのは、例えば下記の組成を持つ鋼である (%は重量
%を意味する) 。
施したままでも優れた特性を持つが、必要に応じて、さ
らに焼戻し処理を施してもよい。
方法を工程順に説明する。
となる鋼片(ビレット)は、丸棒状に分塊圧延した鋼片
あるいは横断面が円形の鋳型を持つ連続鋳造機で鋳造し
た鋳片など、いわゆる丸形鋼片(以下、これらを単に
「ビレット」という)である。なお、エネルギー節減の
ためにはビレットは、分塊圧延や連続鋳造された後、室
温まで完全に冷却する前に加熱炉に装入するのがよい。
きる温度であればよく、材質の高温延性と高温変形抵抗
を考慮して定めればよい。通常は、1100〜1300℃の範囲
に加熱する。穿孔工程においては、例えば傾斜ロール圧
延機のようなピアサーを用いて中実のビレットに熱間で
貫通孔を開け中空素管(ホローシェル)を製造する。
穿孔された中空素管は、延伸圧延機および仕上げ圧延機
によって延伸され、かつ寸法調整される。この圧延を行
う設備にも幾つかの方式があるが、例えばマンネスマン
・マンドレルミル方式では、マンドレルミルで延伸圧延
が、サイザーまたはレデューサーで仕上げ圧延が行われ
る。
めるためには、延伸圧延、仕上げ圧延とも、なるべく低
い温度で行うことが望ましい。しかし、圧延温度を低く
しすぎると、圧延後マンドレルバーの引き出しのとき、
焼き付きが生じ、マンドレルバーの分離が困難になるこ
とがある。従って、仕上げ温度が 800℃以上、望ましく
は 900℃以上となる範囲で、できるだけ低温側で加工を
行うべきである。
点−50℃」を超えて1100℃以下の「保熱温度範囲」で保
熱するのが本発明方法の大きな特徴である。
態点以上、望ましくは Ar3変態点以上とする。
範囲内の所定の温度に設定する。1100℃よりも高い温度
ではオーステナイト粒が粗大化し、靱性が低下する。他
方「A3変態点−50℃」以下の低温では、保熱炉内でフェ
ライト析出が起き、次の冷却工程で望ましい変態組織が
得られない。炭素当量が前記の範囲にある成分系の鋼で
は「A3変態点−50℃」以上(概ね800 ℃以上)の温度と
しておけば実質的にフェライトの析出は起こらない。
結晶によって十分にオーステナイト粒を微細化させ、か
つ鋼管全体の温度を均一にするために、少なくとも1分
は必要である。しかし、30分を超えて装入してもその効
果は飽和し、生産性を低下させるだけである。
なものを置くのは、設備価格が嵩むので、好ましいもの
ではない、とされる。実際、厚鋼板のような鋼板製造の
場合は、保熱炉等を使用せずに、直接焼入れ法を実施し
ている。しかし、低炭素当量の鋼の継目無鋼管を直接焼
入れ法に準ずる方法で量産し、しかも製品鋼管に均一な
特性を持たせるには、炉温を任意に調整できる保熱炉が
必要である。それによって始めて製品の長手方向および
円周方向の組織および性能の均一性を確保することが可
能になる。この利点は、保熱炉設置のコスト増を補って
余りある。
の空冷):保熱炉で温度を均一化された鋼管を水冷等に
より 650℃ないし 300℃の温度域まで冷却して、細粒な
フェライトとベイナイトとの混合組織とする。このとき
の冷却は、早ければ早いほど組織の均一性を増すことが
できるので上限を設け必要はない。5℃/sec以下では、
強度が低下し、また組織も粗大になって、靱性も低下す
る。冷却停止温度が 650℃よりも高温であると、この急
冷の効果が十分でなく、強度、特に降伏強さが低くな
る。しかし、300 ℃よりも低温まで冷却すると過度に焼
入れされた状態になって靱性が低下する。従って、第1
段冷却の停止温度は 650℃以下、300 ℃以上の温度とす
る。
えば室温まで冷却すればよい。
も、製品鋼管は優れた特性のものとなる。しかし、これ
に焼戻し処理を施せば、組織の硬さを減じ、靱性をさら
に改善することができる。但し、焼戻し温度が Ac1変態
点を超えると、強度の低下と組織の粗大化による靱性の
低下が起こる。従って、焼戻しを行う場合は、その温度
は Ac1変態点以下とする。
材鋼について、それを構成する合金成分の作用と望まし
い含有量について説明する。
度を向上させる元素である。0.02%未満では焼入れ性が
低下し必要とする強度が得難い。一方、0.20%を超える
と、母材の靭性が低下するのみならず、溶接後の熱影響
部における靭性が低下する。従って、C含有量の望まし
い範囲は0.02〜0.20%である。
され、鋼材の強度上昇にも寄与する。しかし、Siの含
有量が1.0 %を超えると、製品鋼管の靱性が低下する。
従って、脱酸の目的さえ達成できれば、鋼中の残存量は
0でもよい。ただし、鋼管の強度を上げるために、積極
的に含有させる場合は、0.1 %以上とするのがよい。
焼入れによって所定の組織とし、鋼管の強度と靱性を確
保するのに有効な成分である。その含有量が 0.02 %未
満では、焼入れ性が低下して所期の強度、靭性を確保す
ることが困難である。一方、Mnの含有量が 2.0%を超
えると、鋼中での偏析が生じ、また、製品鋼管を過度に
強化して靭性を低下させ、降伏比を高める。従って、M
n含有量の望ましい範囲は0.02〜2.0 %である。
存在する。0.05%を超えると、粒界に偏析して靱性を低
下するのみならず、溶接時に高温割れを招く。従って、
P含有量は、0.05%以下でできるだけ低いことが望まし
い。
入する。0.02%を超えると粗大なMnSなどの硫化物を
形成し、これが熱間圧延によって延伸され製品鋼管の耐
水素誘起割れ性および靱性を低下させる。従って、S含
有量は0.02%以下で、かつできるだけ低いことが望まし
い。
り、含有量は少ないほど良い。適正量のTiが含有され
ている場合には、Tiによって固定されて悪影響を与え
ることが少ないが、0.020 %を超える場合にはTiN系
の粗大介在物が形成され、靱性を低下させる。従って、
N含有量は0.02%以下とすべきである。
い。しかし、不純物であるNの固定と、析出強化による
強度上昇を図るためには、少なくとも0.005 %含有させ
るのが望ましい。ただし、Tiが 0.1%を超えると、過
度の析出強化によって鋼管の靭性が劣化する。従って、
Tiの含有量は0〜0.1 %の範囲、または 0.005〜0.1
%の範囲とするのがよい。
元素である。しかし、sol.Al含有量で0.001%以下で
は脱酸不足となって鋼質の劣化を招く。また、sol.Al
が 0.2%を超えると、鋼管そのものの靱性の劣化や、溶
接部の靭性の低下を招く。従って、sol.Al含有量は
0.001〜0.2 %とするのがよい。
用な元素である。しかし、他の元素で本発明に必要な焼
入性は確保できるのでCrは、必ずしも添加しなくとも
よい。しかし、肉厚の厚い鋼管の焼入れ性を確保するた
め、または焼戻し軟化抵抗を高めるためには 0.02 %以
上含有させることが望ましい。一方、Crの含有量が
1.5%を超えると溶接部の靱性が低下する。従って、C
rを添加する場合でもその含有量は 1.5%までとするべ
きである。
し、Crと同じく、厚肉の鋼管の焼入れ性向上、または
焼戻し軟化抵抗を高めるためには、0.02%以上含有させ
ることが望ましい。しかし、1.5 %を超えると溶接部の
靱性が劣化する。
し、Cuには直接焼入れにおける焼入性を高め、鋼材の
強度と耐食性の向上に有効なので、0.05%以上含有させ
るのが望ましい。しかし、2.0 %を超えて含有させて
も、コスト上昇に見合った性能の改善が得られない。従
って、Cuを添加する場合には、その含有量は 2.0%ま
でとするのがよい。
状態において鋼のマトリックス(基地)の靱性を高める
効果があるので、より優れた靱性を安定して得たい場合
に添加すればよい。その場合には、その含有量を0.05%
以上とするのが望ましい。しかし、2.5 %を超えても、
材料コストの上昇に見合うほどの靱性の向上が得られな
い。
bを含有する鋼では圧延の際の鋼の未再結晶温度域が高
温まで拡大される。従って、圧延による加工歪を蓄積し
た状態で、直接焼入れ前の加熱(徐冷)中に再結晶が起
こり、結晶粒は細かくなり靱性が向上する。また、Nb
は焼戻し時のNbCの二次析出により焼戻し軟化抵抗を
高める効果もある。これらの作用を得るためには 0.005
%以上含有させるのが望ましい。しかし、その含有量が
0.10 %を超えると溶接部の靱性が低下する。従ってN
b含有量は0〜0.10%の範囲、積極的に添加する場合は
0.005〜0.10%とするのがよい。
すればよい成分である。Vは、直接焼入れした後に焼戻
しを行えば、その時に析出して、焼戻し軟化抵抗を高め
るので、降伏強さを特に高めたい場合に添加すればよ
い。Vには焼入性を向上させる効果もある。これらの効
果を狙う場合には、0.01%以上含有させるのが望まし
い。しかし、0.3 %を超えると鋼の靱性が低下する。
物を生成する。この硫酸化物は、MnSなどと異なり、
圧延加工によって圧延方向に伸びることがなく、圧延後
も球状である。このため、延伸した介在物の先端等を割
れの起点とする溶接割れまたは水素誘起割れを抑制す
る。これらの効果を得ようとする場合には 0.0002 %以
上含有させるのが望ましいが、その添加は必須ではな
い。一方、Ca含有量が 0.01 %を超えると母材靱性が
低下し、同時に鋼管表面に疵が多発することになる。従
って、Caを添加する場合は、その含有量は 0.01 %ま
でとするべきである。
すればよい成分である。微量の含有で焼入れ性を増し、
母材強度を高めることができるので、特に鋼管の強度を
高める必要がある場合に含有させるのが望ましい。しか
し、0.0030%を超えると母材および溶接熱影響部の靱性
が低下する。
て、上記の諸元素の他に、Zr、REM(希土類元素)
等もある。Zrは、固溶Nの固定と、組織を細粒化する
作用をもち鋼の靱性を改善する。REMは、溶接熱影響
部の組織の微細化や、Sの固定に寄与する。
る炭素当量Ceqを 0.6%以下とするのは、鋼管の溶接性
を確保するためである。ラインパイプ用継目無鋼管は、
パイプラインの敷設現場で周溶接して連結される。炭素
当量の大きな鋼管では、溶接の際に割れを生じたり、割
れ防止のために予熱が必要になる等の問題がある。炭素
当量が 0.6%以下であれば、予熱等の余分な作業を要せ
ずに、周溶接ができる。
く、低降伏比の鋼管を製造することも可能である。鋼材
に要求される降伏比は、用途に応じて様々であり、例え
ば建築用鋼材においては、70%以下のものを要求される
こともある。このような建築用低降伏比鋼材は、構造物
が衝撃を受けた場合、意識的に鋼材を降伏させ、変形さ
せつつ衝撃のエネルギーを吸収させて、構造物の安全性
を高めることに狙いがある。
ペックを鋼材の降伏強さで決めている場合には、降伏か
ら破断に至る強度の余裕を確保する目的で、降伏比を一
定の上限以下に抑えることを要求する場合も多い。この
ような場合には、極端な低降伏比は必要としないため、
本発明方法を適用して継目無鋼管を製造する場合でも、
靱性確保を主眼とした製造条件を選択することになる。
る炭素当量Ceqを 0.6重量% 以下とするのは、鋼管の
溶接性を確保するためである。ラインパイプ用継目無鋼
管は、パイプラインの敷設現場で周溶接して連結され
る。炭素当量の大きな鋼管では、溶接の際に割れを生じ
たり、割れ防止のために予熱が必要になる等の問題があ
る。炭素当量が 0.6重量%以下であれば、予熱等の余分
な作業を要せずに、周溶接ができる。
ン転炉で溶製し、通常の造塊および分塊工程を経て鋼片
を得た。これらの鋼片を1250℃に加熱し、傾斜圧延式穿
孔機により中空素管を得た。その後、延伸圧延と仕上げ
圧延によって外径 457 mm 、長さ10m、肉厚12.7mmから
25.4mmの管に仕上げた。そのときの仕上げ圧延温度は、
970℃から1000℃の範囲で変化させた。
調整と温度調整を行った後に制御冷却を行うことにあ
る。そこで、圧延仕上げ温度、鋼管の肉厚、保熱炉装入
前の温度、保熱炉の設定温度、鋼管の在炉時間、最初の
冷却の速度および冷却停止温度を変化させた試験を行っ
た。
おきの3カ所、およびこれらの各位置について円周方向
に4等分した位置、合計12カ所から管軸方向に引張試験
片とシャルピー衝撃試験片を採取した。引張り試験は常
温で、シャルピー試験は温度を変えて行い、強度と靭性
のバラツキを調査した。
引張試験片を用い、衝撃試験には2mmVノッチ付きフル
サイズシャルピー試験片(JIS4号)を用いた。
降伏比およびシャルピー衝撃試験の破面遷移温度(vTr
s) として最大値、最小値、バラツキおよび12個の単純
平均値を測定した。
をみれば、下記の事実が明らかである。即ち、発明例の
No.1〜3 は、降伏強さ、引張り強さ、降伏比および破面
遷移温度の平均値は、435 MPa 以上、530 MPa 以上、8
3.0%以下、−75℃〜−81℃が得られ、また、降伏強
さ、引張り強さ、および破面遷移温度のバラツキは、13
〜18 MPa、 8〜13 MPa、 6〜8 ℃となり良好である。
することなく急冷処理したので、降伏強さ、引張り強
さ、および破面遷移温度のバラツキは、108 から122 MP
a 、62から161 MPa 、58から67℃となり、品質にバラツ
キの大きいことがわかる。
変態点−50℃」よりも低くしたため、保熱中に軟質のフ
ェライトが析出したため、均一で良好な靱性を示すもの
の、強度が非常に低くなっている。
たため、オーステナイト粒が粗大化して、水冷後の組織
も粗大になり、靱性が低下した。
ると、下記のとおりである。
強さ、降伏比および破面遷移温度の平均値は、472 MPa
以上、590 MPa 以上、85.2%以下、−65℃〜−68℃が得
られ、また、降伏強さ、引張り強さ、および破面遷移温
度のバラツキは、19〜20 MPa、14〜16 MPa、 6〜9 ℃と
なり良好である。
ことなく室温まで冷却したので、降伏強さの平均値は 4
93 MPa、引張り強さの平均値は 679 MPaと、いずれも高
く、降伏比は72.4%と低く良好であるが、破面遷移温度
の平均値は3℃と靱性が低下した。
と高くなったので、降伏強さの平均値は 411 MPa、引張
り強さの平均値は 506 MPaといずれも低い。
ことなく室温まで冷却速度1℃/sで冷却したので、降伏
強さの平均値は 331 MPa、引張り強さの平均値は423 MP
a といずれも低く、また破面遷移温度の平均値は−20℃
と靱性が低下した。
点温度よりも低くなったため、保熱炉中で軟質なフェラ
イトの析出が起こり、強度が著しく低くなった。
め、オーステナイト粒が粗大化し、冷却後の最終組織も
粗大化して靱性が低下した。
て、保熱炉の効果を調べる試験を行った。試験方法は実
施例1で示した方法と同様である。それらの処理条件と
試験結果を表3に示す。
さ、引張り強さ、降伏比および破面遷移温度の平均値
は、359 MPa 以上、461 MPa 以上、85.2 %以下、−88
℃〜−65℃が得られ、また、降伏強さ、引張り強さ、お
よび破面遷移温度のバラツキは、11〜17 MPa、14〜22 M
Pa、 7〜11℃と良好であることがわかる。
に装入することなく急冷処理したので、破面遷移温度の
平均値は−39〜−52℃と高く、靱性が劣る。また降伏強
さ、引張り強さ、および破面遷移温度のバラツキは、47
〜66 MPa、50〜102MPa、33〜48℃となり、品質にバラツ
キの大きいことがわかる。
ながら高強度で靱性に優れた継目無鋼管が、安定して高
い生産性で製造できる。この方法で製造される鋼管は、
性能が鋼管全体で均一であるため、特にラインパイプ用
として好適であり、その信頼性、安全性を著しく高め
る。
Claims (3)
- 【請求項1】下記の (a)式で定義される炭素当量Ceqが
0.6重量%以下の鋼片を用いて熱間圧延により継目無鋼
管を製造し、熱間圧延後の鋼管を、炉温が「A3変態点−
50℃」を超えて1100℃以下に設定された保熱炉に装入し
て1〜30分間保持し、その後、650 ℃から300 ℃の範囲
内の温度まで5℃/sec 以上の冷却速度で冷却し、以
後、空冷することを特徴とする靱性に優れた高強度継目
無鋼管の製造方法。 Ceq=C+ Mn/6 + (Cu+Ni)/15 + (Cr+Mo+V)/5 〔%〕 ・・・ (a) - 【請求項2】空冷した後の鋼管に Ac1以下の温度での焼
戻しを施すことを特徴とする請求項1に記載の靱性に優
れた高強度継目無鋼管の製造方法。 - 【請求項3】炭素当量Ceqが 0.6重量%以下の鋼片とし
て、重量%で、 C :0.02〜0.20%、 Si:0〜1.0 %、 Mn:0.02〜2.0 %、 P :0.05%以下、 S :0.02%以下、 N :0.02%以下、 sol.Al:0.001 〜0.2 %、 Cr:0〜1.5 %、 Mo:0〜1.5 %、 Ni:0〜2.5 %、 Cu:0〜2.0 %、 Ti:0〜0.10%、 Nb:0〜0.10%、 V :0〜0.3 %、 Ca:0〜0.01%、 B :0〜0.0030%、 で、残部がFeと不可避的不純物からなる鋼片を用いるこ
とを特徴とする請求項1または2に記載の靱性に優れた
高強度継目無鋼管の製造方法。
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Cited By (7)
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