JPH09286790A - アクリルシランの蒸留方法 - Google Patents

アクリルシランの蒸留方法

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JPH09286790A
JPH09286790A JP8121047A JP12104796A JPH09286790A JP H09286790 A JPH09286790 A JP H09286790A JP 8121047 A JP8121047 A JP 8121047A JP 12104796 A JP12104796 A JP 12104796A JP H09286790 A JPH09286790 A JP H09286790A
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Abstract

(57)【要約】 【課題】 メタクリルオキシ基またはアクリルオキシ基
を有するクロロシランもしくはアセトキシシランを工業
的規模で蒸留精製する際に生じるアクリルシランの自発
重合を効果的に抑制するための蒸留方法に関する 【解決手段】 式(I)で表されるアクリルシランを蒸
留により精製するに当たり、ヒンダートフェノール化合
物および/またはアミン化合物と、ジアルキルジチオカ
ルバミン酸銅および/またはN−ニトロソフェニルヒド
ロキシルアミン塩との存在下、ヒンダートフェノール化
合物および/またはアミン化合物と、N−ニトロソフェ
ニルヒドロキシルアミン塩とを含む混合液を蒸留塔の上
部から供給しながら行う。 CH2=CR1COO(X)mSiR2 n3 3ーn …(I) [式中、R1は水素、炭素数が1〜8のアルキル基また
は炭素数が6〜10のアリール基であり、XはCH2
2OもしくはCH2またはこれらの2個の基の組み合わ
せであり、mは1〜12であり、R2は加水分解性基で
あり、R3は炭素数が1〜12のアルキル基、アルケニ
ル基またはアリール基であり、nは1〜3である。]

Description

【発明の詳細な説明】
【0001】
【発明の属する技術分野】本発明は、メタクリルオキシ
基またはアクリルオキシ基を有するクロロシランもしく
はアセトキシシラン(以下、アクリルシランと言う。)
の蒸留方法に関し、さらに詳しくは工業的規模で蒸留精
製する際に生じるアクリルシランの自発重合を効果的に
抑制するための蒸留方法に関する。
【0002】
【従来の技術】アクリルシランは、シランカップリング
剤、シランカップリング剤の原料、ポリシロキサンの原
料、ポリシロキサンの製造時における末端停止剤、各種
基材の表面処理剤、各種樹脂の変性材料など、幅広い用
途に有効である。一般に、このような有用性の高いアク
リルシランは、不飽和部位をもつアクリル酸エステルま
たはメタクリル酸エステルとヒドロシラン化合物とを白
金などの遷移金属触媒の存在下でヒドロシリル化反応を
行い、さらに該反応液を減圧下で蒸留精製することによ
って得られる。
【0003】この様な製造例は、特公平6ー51707
号公報にも開示されており、該公報には、アリルメタク
リレートとメチルジクロロシランとを白金触媒の存在下
で反応させた後、減圧下で蒸留を行ない、3−メタクリ
ロキシプロピルジメチルクロロシランを製造する方法が
記載されている。
【0004】しかし、アクリルシランは、その高い重合
性のために、各種の機能性材料などを製造するための原
料となりうる反面、アクリルシランの合成反応工程、蒸
留精製工程、貯蔵工程および運搬工程において、熱的に
自発重合しやすいという欠点を有している。このため、
アクリルシランの合成反応工程および合成反応後の蒸留
精製工程において、室温以上の加熱を余儀なくされる場
合は、いかにアクリルシランの自発重合を防止するかが
最も重要となる。通常、このようなアクリルシランの自
発重合を防止するために、アクリルシランの原料もしく
は反応液(以下、アクリルシラン溶液と言う。)に、重
合禁止剤が加えられており、ヒドロキノンやメトキノン
といったフェノール系の重合禁止剤が好んで使用されて
いる。
【0005】しかしながら、フェノール系重合禁止剤
は、珪素原子に塩素原子が結合しているアクリルシラン
(以下、クロロシランと言う。)と縮合反応をおこし、
重合禁止能がなくなるという欠点を持っている。このこ
とは、特公平6−51707号公報やEfimovらの
論文(Zh.Obsch.Khim.(1991)61(10)2244
-53)にも記載されている。
【0006】通常、使用する重合禁止剤を選定する場
合、該重合禁止剤の性能は、メタクリル酸エステルやア
クリル酸エステルを用い、該エステルを自発重合が起こ
る温度にまで加熱した時、加えられている該重合禁止剤
によって、該エステルの自発重合がどの程度抑えられて
いるかを調べることによって判断している。普通、この
ような試験は、ビーカースケールのテーブルテストによ
って行われ、この方法の結果より、2、6−ジ−t−ブ
チル−4−メチルフェノールに代表されるヒンダートフ
ェノール類や、N,N’−ジフェニル−p−フェニレン
ジアミンあるいはフェノチアジンに代表されるアミン類
が、アクリルシラン用の重合禁止剤として極めて有効で
あることが知られている。しかし、該ヒンダートフェノ
ール類や該アミン類には、テーブルテストでは効果的で
あるが、工業的規模にまでスケールアップすると、アク
リルシランの自発重合を充分に抑制できなくなるという
欠点を有していた。
【0007】本発明者らは、上記問題点について、鋭意
検討を重ねた結果、アクリルシランの自発重合形態に
は、均一重合と増殖重合の二種類があることに気が付い
た。均一重合は、アクリルシランの重合に伴い、溶液粘
度が徐々に上昇しプリン状に固化するものであり、一
方、増殖重合は、フリーラジカル重合における異常反応
で、溶液中にポップコーンのような形状をした不溶性の
ポリマ−が生成し、これが次第に生長、膨張する形態を
有するものである。アクリルシランが増殖重合を起こし
た場合、重合物の体積がモノマーの2倍以上となるの
で、反応装置や配管などの閉塞を起こすばかりでなく、
装置の破壊など重大な事故につながる。
【0008】理由は明かではないが、テーブルテストで
は、均一重合の依存性が極めて高く、増殖重合が観測さ
れにくい。前記にように、テーブルテストで、重合禁止
剤の性能を検討したとしても、均一重合に対しての効果
が把握できるに過ぎず、その結果に基づいてスケールア
ップを行っても、増殖重合を抑制できないのである。従
って、工業的規模にまでスケールアップする場合は、均
一重合と増殖重合を共に防止できる重合禁止剤と該禁止
剤を用いた製造方法を確立する必要がある。
【0009】また、一般的に蒸留精製に使用する装置
は、合成反応工程で得られたアクリルシラン溶液を加熱
減圧して気化させる蒸留釜と気化されたアクリルシラン
を蒸留する蒸留塔とで構成されているため、重合禁止剤
を蒸留釜内に配合しても、蒸留釜内部のアクリルシラン
溶液の自発重合を抑制するには効果があるかもしれない
が、蒸留塔内部を通過するアクリルシラン蒸気もしくは
液滴(以下、アクリルシラン蒸気という。)の自発重合
を抑制する効果はない。これは、アクリルシラン溶液に
添加されている重合禁止剤が、蒸留釜で気化されないた
め、蒸留塔内部に重合禁止剤が存在しないからである。
【0010】蒸留塔内部の自発重合を抑制する方法とし
ては、アクリルシランと同等もしくはそれより若干低い
沸点を有する重合禁止剤を用いるという方法がある。し
かし、この方法は、蒸留後の製品に多量の重合禁止剤が
混入し、製品の品質を低下させるという問題やアクリル
シランの沸点に合わせて重合禁止剤の種類を適宜選択し
なければならないという欠点を有していた。また、酸素
や笑気ガスを使用する方法もあるが、酸素や笑気ガスだ
けでは充分に自発重合を防止することができないのが現
状であった。
【0011】
【発明が解決しようとする課題】本発明の目的は、前記
した従来技術の欠点を解消し、蒸留精製時にアクリルシ
ランの自発重合を効果的に抑制することができるアクリ
ルシランの蒸留方法を提供することにある。
【0012】
【課題を解決する為の手段】本発明は下記の(1)ない
し(4)の構成を有している。 (1)式(I)で表されるアクリルシランを蒸留により
精製するに当たり、これをヒンダートフェノール化合物
および/またはアミン化合物と、ジアルキルジチオカル
バミン酸銅および/またはN−ニトロソフェニルヒドロ
キシルアミン塩との存在下、ヒンダートフェノール化合
物および/またはアミン化合物と、N−ニトロソフェニ
ルヒドロキシルアミン塩とを含む混合液を蒸留塔の上部
から供給しながら行うアクリルシランの蒸留方法。 CH2=CR1COO(X)mSiR2 n3 3ーn …(I) [式中、R1は水素、炭素数が1〜8のアルキル基また
は炭素数が6〜10のアリール基であり、XはCH2
2OもしくはCH2またはこれらの2個の基の組み合わ
せであり、mは1〜12であり、R2は加水分解性基で
あり、R3は炭素数が1〜12のアルキル基、アルケニ
ル基またはアリール基であり、nは1〜3である。] (2)N−ニトロソフェニルヒドロキシルアミン塩が、
式(II) (R4N(NO)O)pq …(II) [式中、R4は炭素数が6〜10のアリール基であり、
pは1〜4であり、qは1〜4であり、Yは陽イオン原
子または分子である。]により表される化合物である前
記第(1)項記載のアクリルシランの蒸留方法。 (3)ジアルキルジチオカルバミン酸銅が、式(III) (R5 2NC(=S)S)2Cu …(III) [式中、R5は炭素数が1〜5のアルキル基である。]
により表される化合物である前記第(1)項または前記
第(2)項に記載のアクリルシランの蒸留方法。 (4)ヒンダートフェノール化合物が、芳香族環の水酸
基の近傍に立体障害を与える置換基を少なくとも1個以
上有するものである前記第(1)項ないし前記第(3)
項のいずれかに記載のアクリルシランの蒸留方法。
【0013】以下、本発明を詳細に説明する。本発明
は、特定構造を有するアクリルシランを蒸留により精製
するに当たり、これをヒンダートフェノール化合物およ
び/またはアミン化合物と、ジアルキルジチオカルバミ
ン酸銅および/またはN−ニトロソフェニルヒドロキシ
ルアミン塩との存在下、ヒンダートフェノール化合物お
よび/またはアミン化合物と、N−ニトロソフェニルヒ
ドロキシルアミン塩とを含む混合液を蒸留塔の上部から
供給しながら行う蒸留方法である。
【0014】本発明の蒸留方法は、一般式(I)で示さ
れるアクリルシランの自発重合を抑制するのに効果的で
ある。該アクリルシランは、有用性が高い反面、自発重
合を起こし易いものである。 CH2=CR1COO(X)mSiR2 n3 3ーn …(I) [式中、R1は水素、炭素数が1〜8のアルキル基また
は炭素数が6〜10のアリール基であり、XはCH2
2OもしくはCH2またはこれらの2個の基の組み合わ
せであり、mは1〜12であり、R2は加水分解性基で
あり、R3は炭素数が1〜12のアルキル基、アルケニ
ル基またはアリール基であり、nは1〜3である。]
【0015】本発明は、中でも、一般式(I)のR
2が、−OC(=O)R5[式中、R5は炭素数が1〜8
のアルキル基、炭素数が1〜8のアルケニル基、炭素数
が1〜8のアルキニル基または炭素数が6〜10のアリ
ール基である。]、好ましくは、−OC(=O)CR6
=CH2[式中、R6は炭素数が1〜2のアルキル基また
は水素である。]またはハロゲン元素、特に好ましく
は、−OC(=O)CH3 または塩素原子の構造を有す
るものに有効である。
【0016】具体的には、3−メタクリロキシプロピル
トリクロロシラン、3−メタクリロキシプロピルメチル
ジクロロシラン、3−メタクリロキシプロピルジメチル
クロロシラン、3−アクリロキシプロピルトリクロロシ
ラン、3−アクリロキシプロピルメチルジクロロシラ
ン、3−アクリロキシプロピルジメチルクロロシラン、
3−メタクリロキシプロピルジメチルアセトキシシラ
ン、3−メタクリロキシプロピルジメチルメタクリロキ
シシラン、3−アクリロキシプロピルジメチルアセトキ
シシラン、3−アクリロキシプロピルジメチルアクリロ
キシシラン等を例示することができる。
【0017】本発明は、ヒンダートフェノール化合物お
よび/またはアミン化合物と、ジアルキルジチオカルバ
ミン酸銅および/またはN−ニトロソフェニルヒドロキ
シルアミン塩との存在下で蒸留精製が行なわれる。本発
明に用いるヒンダートフェノール化合物としては、具体
的に、2,6ージーt−ブチルー4ーメチルフェノー
ル、2,6ージーt−ブチルー4ージメチルアミノメチ
ルフェノール等を例示することができる。また、本発明
に用いるアミン化合物としては、具体的に、N,N’−
ジフェニル−p−フェニレンジアミン、フェノチアジン
等を例示することができる。
【0018】本発明に使用するヒンダートフェノール化
合物および/またはアミン化合物の使用量は、アクリル
シランに対し、1〜100000ppm(重量換算)が
好ましく、10〜5000ppm(重量換算)がより好
ましい。本発明では、ヒンダートフェノール化合物また
はアミン化合物をそれぞれ単独で用いても、1種以上の
ヒンダートフェノール化合物と1種以上のアミン化合物
とを組み合わせて用いてもよい。
【0019】具体的な使用方法としては、アクリルシラ
ンの合成反応工程の直前に添加する方法、アクリルシラ
ンの原料に予め混合しておく方法、蒸留精製工程直前
に、反応混合物の中に添加する方法等を例示することが
できる。ただし、ヒンダートフェノール化合物およびア
ミン化合物は、均一重合抑制には優れた効果を有する
が、増殖重合抑制には効果がないので、必ずジアルキル
ジチオカルバミン酸銅および/またはN−ニトロソフェ
ニルヒドロキシルアミン塩と併用しなければならない。
【0020】本発明に使用するN−ニトロソフェニルヒ
ドロキシルアミン塩は、下記式(II)の化合物で示すこ
とができる。 (R4N(NO)O)pq …(II) [式中、R4は炭素数が6〜10のアリ−ル基であり、
pが1〜4であり、qが1〜4であり、Yが陽イオン原
子または分子である。] 具体的には、N−ニトロソフェニルヒドロキシルアミン
アンモニウム塩、N−ニトロソフェニルヒドロキシルア
ミンナトリウム塩、N−ニトロソフェニルヒドロキシル
アミンカリウム塩、N−ニトロソフェニルヒドロキシル
アミンアルミニウム塩を例示することができる。本発明
に使用するジアルキルジチオカルバミン酸銅は、下記式
(III)の化合物の化合物で示すことができる。 (R5 2NC(=S)S)2Cu …(III) [式中、R5は炭素数が1〜5のアルキル基である。] 具体的には、ジメチルジチオカルバミン酸銅、ジエチル
ジチオカルバミン酸銅、ジ−n−プロピルジチオカルバ
ミン酸銅、ジイソプロピルジチオカルバミン酸銅、ジ−
n−ブチルジチオカルバミン酸銅等を例示することがで
きる。これらは、単独で用いても、複数組み合わせて用
いてもどちらでもよい。具体的な使用方法としては、ア
クリルシランの合成反応工程の直前に添加する方法、ア
クリルシランの原料に予め混合しておく方法、蒸留精製
工程直前に、反応混合物の中に添加する方法等を例示す
ることができる。
【0021】本発明に使用するジアルキルジチオカルバ
ミン酸銅および/またはN−ニトロソフェニルヒドロキ
シルアミン塩の使用量は、アクリルシランに対し、1〜
100000ppm(重量換算)が好ましく、10〜5
000ppm(重量換算)がより好ましい。ただし、ジ
アルキルジチオカルバミン酸銅およびN−ニトロソフェ
ニルヒドロキシルアミン塩は、増殖重合抑制には優れた
効果を有するが、均一重合抑制には効果がないので、必
ずヒンダートフェノール化合物および/またはアミン化
合物と併用しなければならない。
【0022】本発明では、ヒンダートフェノール化合物
および/またはアミン化合物とN−ニトロソフェニルヒ
ドロキシルアミン塩とを含む混合液を蒸留塔の上部から
供給しながら蒸留精製が行われる。ヒンダートフェノー
ル化合物および/またはアミン化合物とN−ニトロソフ
ェニルヒドロキシルアミン塩が分散または溶解された混
合液を、蒸留塔上部から継続的に供給することによっ
て、蒸留塔内部のアクリルシラン蒸気の自発重合を効果
的に抑制することができる。該混合液の供給方法には、
特に限定はなく、滴下法または噴霧法のいずれの方法を
使用しても差し支えない。N−ニトロソフェニルヒドロ
キシルアミン塩は、蒸留精製されたアクリルシラン溶液
に極めて混入し難いので、製品の品質を悪化させること
がない。また、ヒンダートフェノール化合物およびアミ
ン化合物は、該化合物の沸点温度を適宜選択することに
よって、蒸留精製されたアクリルシラン溶液への混入を
抑制することができる。
【0023】該混合液に使用するヒンダートフェノール
化合物およびアミン化合物としては、具体的に、2,6
ージーt−ブチルー4ーメチルフェノール、2,6ージ
ーt−ブチルー4ージメチルアミノメチルフェノール,
N,N’−ジフェニル−p−フェニレンジアミン、フェ
ノチアジン等を例示することができる。これらは、単独
で用いても、複数組み合わせて用いてもどちらでもよ
い。該混合液に使用するN−ニトロソフェニルヒドロキ
シルアミン塩は、下記式(II)の化合物で示すことがで
きる。 (R4N(NO)O)pq …(II) [式中、R4は炭素数が6〜10のアリ−ル基であり、
pが1〜4であり、qが1〜4であり、Yが陽イオン原
子または分子である。] 具体的には、N−ニトロソフェニルヒドロキシルアミン
アンモニウム塩、N−ニトロソフェニルヒドロキシルア
ミンナトリウム塩、N−ニトロソフェニルヒドロキシル
アミンカリウム塩、N−ニトロソフェニルヒドロキシル
アミンアルミニウム塩を例示することができる。これら
は、単独で用いても、複数組み合わせて用いてもどちら
でもよい。
【0024】該混合液に使用するヒンダートフェノール
化合物および/またはアミン化合物の供給量は、蒸留塔
の形状に依存するが、1時間当たりに揮発するアクリル
シランの量に対し、0.1〜10000ppm(重量換
算)であることが適当であり、特に1〜100ppm
(重量換算)であることが好ましい。該混合液に使用す
るN−ニトロソフェニルヒドロキシルアミン塩の供給量
は、1時間当たりに揮発するアクリルシランの量に対
し、0.1〜10000ppm(重量換算)であること
が適当であり、特に1〜100ppm(重量換算)であ
ることが好ましい。
【0025】また、該混合液として、ヒンダートフェノ
ール化合物および/またはアミン化合物とN−ニトロソ
フェニルヒドロキシルアミン塩とを分散または溶解させ
る液体は、特に限定しないが、アクリルシランや重合禁
止剤と反応せず、かつ蒸留精製したアクリルシランに混
入しないものが好ましく、特に蒸留精製するアクリルシ
ランそのものやアクリルシランより沸点の高い液体が好
ましい。
【0026】また、本発明の蒸留方法において、分子状
酸素を不活性ガスで希釈したガスや空気を装置内部に導
入しても良い。
【0027】本発明において使用し得る蒸留装置の一例
を、添付図面を参照しながら説明する。本発明の蒸留方
法は、図1に示される蒸留装置を用いて行うのが最も好
ましいが、本発明の技術思想を逸脱しない限り、該蒸留
装置に限定する必要はない。合成反応によって得られた
アクリルシラン溶液を蒸留釜1に投入し、加熱減圧する
ことによって、アクリルシランを気化させる。減圧は、
減圧ポンプ6によって行い、加熱は、蒸留釜1の周りに
設置してあるジャッケット7に熱媒を循環させることに
よって行う。気化されたアクリルシランは、蒸留塔2に
導かれ、蒸留塔2を上昇してゆき、蒸留塔2の上部から
排出され、凝集器4に導かれる。一方、塔頂フィード液
タンク3には、ヒンダートフェノール化合物および/ま
たはアミン化合物とN−ニトロソフェニルヒドロキシル
アミン塩とを含む混合液を投入しておき、流量調節弁8
により流量を調節しながら、該混合液を蒸留塔2の内部
に供給する。凝集器4により、アクリルシランは液化さ
れた後、留出液タンク5に溜められる。場合によって
は、蒸留塔2の上部に導かれ、再度蒸留精製が行われ
る。
【0028】
【実施例】以下、本発明を実施例、比較例および参考例
を用いて詳細を説明する。なお、本実施例は本発明をな
んら限定するものではない。
【0029】(実施例1)アリルメタクリレートとジメ
チルクロロシランから白金触媒存在下で3−メタクリロ
キシプロピルジメチルクロロシランを主成分とするアク
リルシラン溶液を既知の方法により合成した。このアク
リルシラン溶液5kgにフェノチアジン0.5gとジメ
チルジチオカルバミン酸銅0.5gとを配合し、蒸留釜
1に投入し、加熱減圧をおこなった。まず、装置内部を
30kPaに減圧し、蒸留塔2の塔頂温度60〜85℃
で、アリルメタクリレートを主成分とする低沸成分を留
去した後、15kPaに減圧し、塔頂温度69〜75℃
で3−メタクリロキシプロピルジメチルクロロシランの
留分を得た。その間、ヘリパックが充填された内径約5
0cmの蒸留塔2の塔頂部から、3−メタクリロキシプ
ロピルジメチルクロロシランに対し重量比2%のN−ニ
トロソフェニルヒドロキシルアミンアルミニウム塩と、
重量比1%の2,6ージーt−ブチルー4ーメチルフェ
ノールを溶解させた液を供給し、蒸留精製を行った。該
蒸留精製の際、蒸留釜2内部のアクリルシラン溶液に
は、粘度が上昇する重合は観察されず、増殖重合物の生
成も見られなかった。また、蒸留精製終了後、蒸留塔2
の内部を点検したが、均一重合物や増殖重合物の生成は
みられなかった。
【0030】(実施例2)実施例1の蒸留精製を繰り返
し5回行なった。該蒸留精製の際、蒸留釜2内部のアク
リルシラン溶液には、粘度が上昇する重合は観察され
ず、増殖重合物の生成も見られなかった。また、蒸留精
製の繰り返し後、蒸留塔2の内部を点検したが、均一重
合物や増殖重合物の生成はみられなかった。
【0031】(比較例1)3−メタクリロキシプロピル
ジメチルクロロシランに対し重量比2%のN−ニトロソ
フェニルヒドロキシルアミンアルミニウム塩と、重量比
1%の2,6ージーt−ブチルー4ーメチルフェノール
を溶解させた液を供給しない以外は、実施例1に準拠し
て蒸留精製を行なったところ、15kPaに減圧し、塔
頂温度30〜69℃でアリルメタクリレートを主成分と
する低沸成分を留去した直後、蒸留塔2の内部に増殖重
合物が発生し、蒸留塔を閉塞したため蒸留操作が不能と
なった。
【0032】(比較例2)3−メタクリロキシプロピル
ジメチルクロロシランに対し重量比2%のN−ニトロソ
フェニルヒドロキシルアミンアルミニウム塩と、重量比
1%の2,6ージーt−ブチルー4ーメチルフェノール
を溶解させた液の代わりに、3−メタクリロキシプロピ
ルジメチルクロロシランに対し重量比2%の2,6ージ
ーt−ブチルー4ーメチルフェノールを溶解させた液
を、蒸留塔2の塔頂部から添加し、蒸留釜1内のアクリ
ルシラン溶液に配合されているフェノチアジン0.5g
の代わりに2,6ージーt−ブチルー4ージメチルアミ
ノメチルフェノール0.66gを配合した以外は、実施
例1に準拠して蒸留精製を行なったところ、15kPa
に減圧し、塔頂温度30〜69℃でアリルメタクリレー
トを主成分とする低沸成分を留去していた間に、蒸留塔
2の内部に増殖重合物が発生し、蒸留塔を閉塞したため
蒸留操作が不能となった。
【0033】(比較例3)3−メタクリロキシプロピル
ジメチルクロロシランに対し重量比2%のN−ニトロソ
フェニルヒドロキシルアミンアルミニウム塩と、重量比
1%の2,6ージーt−ブチルー4ーメチルフェノール
を溶解させた液の代わりに、3−メタクリロキシプロピ
ルジメチルクロロシランに対し重量比2%のフェノチア
ジンを溶解させた液を、蒸留塔2の塔頂部から添加し、
蒸留釜1内のアクリルシラン溶液に配合されているフェ
ノチアジン0.5gの代わりに2,6ージーt−ブチル
ー4ージメチルアミノメチルフェノール0.66gを配
合した以外は、実施例1に準拠して蒸留精製を行なった
ところ、15kPaに減圧し、塔頂温度30〜69℃で
アリルメタクリレートを主成分とする低沸成分を留去し
ている間に、蒸留塔2の内部に増殖重合物が発生し、蒸
留塔を閉塞したため蒸留操作が不能となった。
【0034】(比較例4)3−メタクリロキシプロピル
ジメチルクロロシランに対し重量比2%のN−ニトロソ
フェニルヒドロキシルアミンアルミニウム塩と、重量比
1%の2,6ージーt−ブチルー4ーメチルフェノール
を溶解させた液の代わりに、鉱油(綜研化学株式会社製
商品:NeoSK−OIL330)に対し重量比2%の
N−ニトロソフェニルヒドロキシルアミンアルミニウム
塩を溶解させた液を、蒸留塔2の塔頂部から添加した以
外は、実施例1に準拠して蒸留精製を行なった。該蒸留
精製を繰り返し3回行なったところ、蒸留釜2内部のア
クリルシラン溶液には、粘度が上昇する重合は観察され
ず、増殖重合物の生成も見られなかった。しかし、3回
の蒸留精製終了後、蒸留塔2の内部を点検したところ、
均一重合物の発生がみられた。
【0035】
【発明の効果】実施各例および比較各例から明らかなよ
うに、ヒンダートフェノール化合物および/またはアミ
ン化合物と、ジアルキルジチオカルバミン酸銅および/
またはN−ニトロソフェニルヒドロキシルアミン塩との
存在下、ヒンダートフェノール化合物および/またはア
ミン化合物と、N−ニトロソフェニルヒドロキシルアミ
ン塩とを含む混合液を蒸留塔の上部から供給しながら蒸
留精製を行うと、工業的なスケールでアクリルシランの
蒸留精製を実施しても、蒸留釜内部ならびに蒸留塔内部
で発生し易いアクリルシランの自発重合を極めて効果的
に抑制でき、かつ、繰り返し蒸留を行なってもアクリル
シランの自発重合を抑制できることが判った。
【図面の簡単な説明】
【図1】蒸留装置のフローシートの図
【符号の説明】
1.蒸留釜 2.蒸留塔 3.塔頂フィード液タンク 4.凝縮器 5.留出液タンク 6.減圧ポンプ 7.ジャッケット 8.流量調節弁

Claims (4)

    【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】式(I)で表されるアクリルシランを蒸留
    により精製するに当たり、これをヒンダートフェノール
    化合物および/またはアミン化合物と、ジアルキルジチ
    オカルバミン酸銅および/またはN−ニトロソフェニル
    ヒドロキシルアミン塩との存在下、ヒンダートフェノー
    ル化合物および/またはアミン化合物と、N−ニトロソ
    フェニルヒドロキシルアミン塩とを含む混合液を蒸留塔
    の上部から供給しながら行うことを特徴とするアクリル
    シランの蒸留方法。 CH2=CR1COO(X)mSiR2 n3 3ーn …(I) [式中、R1は水素、炭素数が1〜8のアルキル基また
    は炭素数が6〜10のアリール基であり、XはCH2
    2OもしくはCH2またはこれらの2個の基の組み合わ
    せであり、mは1〜12であり、R2は加水分解性基で
    あり、R3は炭素数が1〜12のアルキル基、アルケニ
    ル基またはアリール基であり、nは1〜3である。]
  2. 【請求項2】N−ニトロソフェニルヒドロキシルアミン
    塩が、式(II) (R4N(NO)O)pq …(II) [式中、R4は炭素数が6〜10のアリール基であり、
    pは1〜4であり、qは1〜4であり、Yは陽イオン原
    子または分子である。]により表される化合物である請
    求項1記載のアクリルシランの蒸留方法。
  3. 【請求項3】ジアルキルジチオカルバミン酸銅が、式
    (III) (R5 2NC(=S)S)2Cu …(III) [式中、R5は炭素数が1〜5のアルキル基である。]
    により表される化合物である請求項1または請求項2に
    記載のアクリルシランの蒸留方法。
  4. 【請求項4】ヒンダートフェノール化合物が、芳香族環
    の水酸基の近傍に立体障害を与える置換基を少なくとも
    1個以上有するものである請求項1ないし請求項3のい
    ずれか1項に記載のアクリルシランの蒸留方法。
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