JP2977188B2 - アクリルシランの蒸留方法 - Google Patents

アクリルシランの蒸留方法

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Description

【発明の詳細な説明】
【0001】
【発明の属する技術分野】メタクリルオキシ基またはア
クリルオキシ基を有するクロロシランまたはアセトキシ
シラン(以下、アクリルシランと言う。)を工業的規模
で蒸留精製する際に生じるアクリルシランの自発重合を
効果的に抑制するための蒸留方法に関する。
【0002】
【従来の技術】アクリルシランは、シランカップリング
剤、シランカップリング剤の原料、ポリシロキサンの原
料、ポリシロキサンの製造時における末端停止剤、各種
基材の表面処理剤、各種樹脂の変性材料など、幅広い用
途に有効である。一般に、このような有用性の高いアク
リルシランは、不飽和部位をもつアクリル酸エステルま
たはメタクリル酸エステルとヒドロシラン化合物とを白
金などの遷移金属触媒の存在下でヒドロシリル化反応を
行い、さらに該反応液を減圧下で蒸留精製することによ
って得られる。
【0003】この様な製造例は、特公平6ー51707
号公報にも開示されており、該公報には、アリルメタク
リレートとメチルジクロロシランとを白金触媒の存在下
で反応させた後、減圧下で蒸留を行ない、3−メタクリ
ロキシプロピルジメチルクロロシランを製造する方法が
記載されている。
【0004】しかし、アクリルシランは、その高い重合
性のために、各種の機能性材料などを製造するための原
料となりうる反面、アクリルシランの合成反応工程、蒸
留精製工程、貯蔵工程、運搬工程において、熱的に自発
重合しやすいという欠点を有している。このため、アク
リルシランの合成反応工程および合成反応後の蒸留精製
工程において、室温以上の加熱を余儀なくされる場合
は、いかにアクリルシランの自発重合を防止するかが最
も重要となる。通常、このようなアクリルシランの自発
重合を防止するために、アクリルシランの原料もしくは
反応液(以下、アクリルシラン溶液と言う。)に、重合
禁止剤が加えられており、ヒドロキノンやメトキノンと
いったフェノール系の重合禁止剤が好んで使用されてい
る。
【0005】しかしながら、フェノール系重合禁止剤
は、珪素原子に塩素原子が結合しているアクリルシラン
(以下、クロロシランと言う。)と縮合反応をおこし、
重合禁止能がなくなるという欠点を持っている。このこ
とは、特公平6−51707号公報やEfimovらの
論文(Zh.Obsch.Khim.(1991)61(10)2244
-53)にも記載されている。
【0006】通常、使用する重合禁止剤を選定する場
合、該重合禁止剤の性能は、メタクリル酸エステルやア
クリル酸エステルを用い、該エステルを自発重合が起こ
る温度にまで加熱した時、加えられている該重合禁止剤
によって、該エステルの自発重合がどの程度抑えられて
いるかを調べることによって判断している。普通、この
ような試験は、ビーカースケールのテーブルテストによ
って行われ、この方法の結果より、2、6−ジ−t−ブ
チル−4−メチルフェノールに代表されるヒンダートフ
ェノール類や、N,N’−ジフェニル−p−フェニレン
ジアミンあるいはフェノチアジンに代表されるアミン類
が、アクリルシラン用の重合禁止剤として極めて有効で
あることが知られている。しかし、該ヒンダートフェノ
ール類や該アミン類には、テーブルテストでは効果的で
あるが、工業的規模にまでスケールアップすると、アク
リルシランの自発重合を充分に抑制できなくなるという
欠点を有していた。
【0007】本発明者らは、上記問題点について、鋭意
検討を重ねた結果、アクリルシランの自発重合形態に
は、均一重合と増殖重合の二種類があることに気が付い
た。均一重合は、アクリルシランの重合に伴い、溶液粘
度が徐々に上昇しプリン状に固化するものであり、一
方、増殖重合は、フリーラジカル重合における異常反応
で、溶液中にポップコーンのような形状をした不溶性の
ポリマ−が生成し、これが次第に生長、膨張する形態を
有するものである。アクリルシランが増殖重合を起こし
た場合、重合物の体積がモノマーの2倍以上となるの
で、反応装置や配管などの閉塞を起こすばかりでなく、
装置の破壊など重大な事故につながる。
【0008】理由は明かではないが、テーブルテストで
は、均一重合の依存性が極めて高く、増殖重合が観測さ
れにくい。前記にように、テーブルテストで、重合禁止
剤の性能を検討したとしても、均一重合に対しての効果
が把握できるに過ぎず、その結果に基づいてスケールア
ップを行っても、増殖重合を抑制できないのである。従
って、工業的規模にまでスケールアップする場合は、均
一重合と増殖重合を共に防止できる重合禁止剤と該禁止
剤を用いた製造方法を確立する必要がある。
【0009】また、一般的に蒸留精製に使用する装置
は、合成反応工程で得られたアクリルシラン溶液を加熱
減圧して気化させる蒸留釜と気化されたアクリルシラン
を蒸留する蒸留塔とで構成されているため、重合禁止剤
を蒸留釜内に配合しても、蒸留釜内部のアクリルシラン
溶液の自発重合を抑制するには効果があるかもしれない
が、蒸留塔内部を通過するアクリルシラン蒸気もしくは
液滴(以下、アクリルシラン蒸気という。)の自発重合
を抑制する効果はない。これは、アクリルシラン溶液に
添加されている重合禁止剤が、蒸留釜で気化されないた
め、蒸留塔内部に重合禁止剤が存在しないからである。
【0010】蒸留塔内部の自発重合を抑制する方法とし
ては、アクリルシランと同等もしくはそれより若干低い
沸点を有する重合禁止剤を用いるという方法がある。し
かし、この方法は、蒸留後の製品に多量の重合禁止剤が
混入し、製品の品質を低下させるという問題やアクリル
シランの沸点に合わせて重合禁止剤の種類を適宜選択し
なければならないという欠点を有していた。また、酸素
や笑気ガスを使用する方法もあるが、酸素や笑気ガスだ
けでは充分に自発重合を防止することができないのが現
状であった。
【0011】
【発明が解決しようとする課題】本発明者らは、上記問
題点について、鋭意検討を重ねた結果、特定構造を有す
るアクリルシランは、ヒンダートフェノール化合物もし
くはアミン化合物の少なくともいずれか一方と、N−ニ
トロソフェニルヒドロキシルアミン塩との存在下で、蒸
留塔の上部からN−ニトロソフェニルヒドロキシルアミ
ン塩混合液を供給しながら蒸留精製すると、蒸留精製時
にアクリルシランの自発重合を効果的に抑制することが
できることを見い出し、本発明を完成した。
【0012】
【課題を解決するための手段】本発明は下記の(1)な
いし(3)の構成を有している。 (1)一般式(I)で表されるアクリルシランの蒸留精
製を、ヒンダートフェノール化合物もしくはN,N’−
ジフェニル−p−フェニレンジアミンまたは/およびフ
ェノチアジンであるアミン化合物の少なくともいずれか
一方と、ジアルキルジチオカルバミン酸銅との存在下、
N−ニトロソフェニルヒドロキシルアミン塩混合液を蒸
留塔の上部から供給しながら行うことを特徴とするアク
リルシランの蒸留方法。 CH2=CR1COO(X)mSiR2 n3 3-n …(I) [式中、R1は水素、炭素数が1〜8のアルキル基また
は炭素数が6〜10のアリール基であり、XはCH2
2OもしくはCH2またはこれらの2個の基の組み合わ
せであり、mは1〜12であり、R2は加水分解性基で
あり、R3は炭素数が1〜12のアルキル基、アルケニ
ル基またはアリール基であり、nは1〜3である。] (2)N−ニトロソフェニルヒドロキシルアミン塩が、
一般式(II) (R4N(NO)O)pq …(II) [式中、R4は炭素数が6〜10のアリール基であり、
pは1〜4であり、qは1〜4であり、Yは陽イオン原
子または分子である。]により表される化合物である前
記第(1)項記載のアクリルシランの蒸留方法。 (3)ジアルキルジチオカルバミン酸銅が、一般式(I
II) (R5 2NC(=S)S)2Cu …(III) [式中、R5は炭素数が1〜5のアルキル基である。]
により表される化合物である前記第(1)項または前記
第(2)項に記載のアクリルシランの蒸留方法。 (4)ヒンダートフェノール化合物が、芳香族環の水酸
基の近傍に立体障害を与える置換基を、少なくとも1個
以上結合している化合物である前記第(1)項ないし前
記第(3)項のいずれかに記載のアクリルシランの蒸留
方法。
【0013】以下、本発明を詳細に説明する。本発明
は、特定構造を有するアクリルシランの蒸留精製を、ヒ
ンダートフェノール化合物もしくはN,N’−ジフェニ
ル−p−フェニレンジアミンまたは/およびフェノチア
ジンであるアミン化合物(以下の記述における「アミン
化合物」は、具体的な言及がない場合には「N,N’−
ジフェニル−p−フェニレンジアミンまたは/およびフ
ェノチアジンであるアミン化合物」を意味する。)の少
なくともいずれか一方と、ジアルキルジチオカルバミン
酸銅との存在下、N−ニトロソフェニルヒドロキシルア
ミン塩混合液を蒸留塔の上部から供給しながら行う蒸留
方法である。
【0014】本発明の蒸留方法は、一般式(I)で示さ
れるアクリルシランの自発重合を抑制するのに効果的で
ある。該アクリルシランは、有用性が高い反面、自発重
合を起こし易いものである。 CH2=CR1COO(X)mSiR2 n3 3ーn …(I) [式中、R1は水素、炭素数が1〜8のアルキル基また
は炭素数が6〜10のアリール基であり、XはCH2
2OもしくはCH2またはこれらの2個の基の組み合わ
せであり、mは1〜12であり、R2は加水分解性基で
あり、R3は炭素数が1〜12のアルキル基、アルケニ
ル基またはアリール基であり、nは1〜3である。]
【0015】本発明は、中でも、一般式(I)のR
2が、−OC(=O)R5[式中、R5は炭素数が1〜8
のアルキル基、炭素数が1〜8のアルケニル基、炭素数
が1〜8のアルキニル基または炭素数が6〜10のアリ
ール基である。]、好ましくは、−OC(=O)CR6
=CH2[式中、R6は炭素数が1〜2のアルキル基また
は水素である。]もしくはハロゲン元素、特に好ましく
は、−OC(=O)CH3もしくは塩素原子の構造を有
するものに有効である。
【0016】具体的には、3−メタクリロキシプロピル
トリクロロシラン、3−メタクリロキシプロピルメチル
ジクロロシラン、3−メタクリロキシプロピルジメチル
クロロシラン、3−アクリロキシプロピルトリクロロシ
ラン、3−アクリロキシプロピルメチルジクロロシラ
ン、3−アクリロキシプロピルジメチルクロロシラン、
3−メタクリロキシプロピルジメチルアセトキシシラ
ン、3−メタクリロキシプロピルジメチルメタクリロキ
シシラン、3−アクリロキシプロピルジメチルアセトキ
シシラン、3−アクリロキシプロピルジメチルアクリロ
キシシラン等を例示することができる。
【0017】本発明は、ヒンダートフェノール化合物も
しくはアミン化合物の少なくともいずれか一方と、ジア
ルキルジチオカルバミン酸銅との存在下で行われる。本
発明に用いるヒンダートフェノール化合物としては、具
体的に、2,6ージーt−ブチルー4ーメチルフェノー
ル、2,6ージーt−ブチルー4ージメチルアミノメチ
ルフェノール等を例示することができる。また、本発明
に用いるアミン化合物としては、具体的に、N,N’−
ジフェニル−p−フェニレンジアミン、フェノチアジン
等を例示することができる。
【0018】本発明に使用するヒンダートフェノール化
合物およびアミン化合物の使用量は、アクリルシランに
対し、1〜100000ppm(重量換算)が好まし
く、10〜5000ppm(重量換算)がより好まし
い。本発明では、ヒンダートフェノール化合物もしくは
アミン化合物をそれぞれ単独で用いても、少なくとも1
種以上のヒンダートフェノール化合物と1種以上のアミ
ン化合物とを組み合わせて用いてもよい。
【0019】具体的な使用方法としては、アクリルシラ
ンの合成反応工程の直前に添加する方法、アクリルシラ
ンの原料に予め混合しておく方法、蒸留精製工程直前
に、反応混合物の中に添加する方法等を例示することが
できる。ただし、ヒンダートフェノール化合物およびア
ミン化合物は、均一重合抑制には優れた効果を有する
が、増殖重合抑制には効果がないので、必ずジアルキル
ジチオカルバミン酸銅と併用しなければならない。
【0020】本発明に使用するジアルキルジチオカルバ
ミン酸銅は、下記一般式(III)の化合物を単独で用い
ても、複数組み合わせて用いてもどちらでもよい。具体
的な使用方法としては、アクリルシランの合成反応工程
の直前に添加する方法、アクリルシランの原料に予め混
合しておく方法、蒸留精製工程直前に、反応混合物の中
に添加する方法等を例示することができる。 (R5 2NC(=S)S)2Cu …(III) [式中、R5は炭素数が1〜5のアルキル基である。] 具体的には、ジメチルジチオカルバミン酸銅、ジエチル
ジチオカルバミン酸銅、ジ−n−プロピルジチオカルバ
ミン酸銅、ジイソプロピルジチオカルバミン酸銅、ジ−
n−ブチルジチオカルバミン酸銅等を例示することがで
きる。
【0021】本発明に使用するジアルキルジチオカルバ
ミン酸銅の使用量は、アクリルシランに対し、1〜10
0000ppm(重量換算)が好ましく、10〜500
0ppm(重量換算)がより好ましい。本発明に使用す
るジアルキルジチオカルバミン酸銅は、上記一般式(II
I)の化合物を単独で用いても、複数組み合わせて用い
てもどちらでもよい。具体的な使用方法としては、アク
リルシランの合成反応工程の直前に添加する方法、アク
リルシランの原料に予め混合しておく方法、蒸留精製工
程直前に、反応混合物の中に添加する方法等を例示する
ことができる。ただし、ジアルキルジチオカルバミン酸
銅は、増殖重合抑制には優れた効果を有するが、均一重
合抑制には効果がないので、必ずヒンダートフェノール
化合物およびアミン化合物の少なくともいずれか一方と
併用しなければならない。
【0022】本発明では、N−ニトロソフェニルヒドロ
キシルアミン塩混合液を蒸留塔の上部から供給しながら
蒸留精製をおこなう。N−ニトロソフェニルヒドロキシ
ルアミン塩が分散もしくは溶解された混合液を、蒸留塔
上部から継続的に供給することによって、蒸留塔内部の
アクリルシラン蒸気の自発重合を効果的に抑制すること
ができる。該混合液の供給方法には、特に限定はなく、
滴下法または噴霧法のいずれの方法を使用しても差し支
えない。N−ニトロソフェニルヒドロキシルアミン塩
は、蒸留精製されたアクリルシラン溶液に極めて混入し
難いので、製品の品質を悪化させることがない。
【0023】該混合液に使用するN−ニトロソフェニル
ヒドロキシルアミン塩は、下記一般式(II)の化合物で
示すことができる。 (R4N(NO)O)pq …(II) [式中、R4は炭素数が6〜10のアリ−ル基であり、
pが1〜4であり、qが1〜4であり、Yが陽イオン原
子または分子である。] 具体的には、N−ニトロソフェニルヒドロキシルアミン
アンモニウム塩、N−ニトロソフェニルヒドロキシルア
ミンナトリウム塩、N−ニトロソフェニルヒドロキシル
アミンカリウム塩、N−ニトロソフェニルヒドロキシル
アミンアルミニウム塩を例示することができる。これら
は、単独で用いても、複数組み合わせて用いてもどちら
でもよい。
【0024】N−ニトロソフェニルヒドロキシルアミン
塩の蒸留塔上部への供給量は、蒸留塔の形状に依存する
が、1時間あたりアクリルシランに対し、0.1〜10
000ppm(重量換算)であることが適当であり、特
に1〜100ppm(重量換算)であることが好まし
い。
【0025】また、該混合液として、N−ニトロソフェ
ニルヒドロキシルアミン塩を分散もしくは溶解させる液
体は、特に限定しないが、アクリルシランや重合禁止剤
と反応せず、かつ蒸留精製したアクリルシランに混入し
ないものが好ましく、特に蒸留精製するアクリルシラン
そのものやアクリルシランより沸点の高い液体が好まし
い。
【0026】また、本発明の蒸留方法において、分子状
酸素を不活性ガスで希釈したガスや空気を装置内部に導
入しても良い。
【0027】本発明において使用し得る蒸留装置の一例
を、添付図面を参照しながら説明する。本発明の蒸留方
法は、図1に示される蒸留装置を用いて行うのが最も好
ましいが、本発明の技術思想を逸脱しない限り、該蒸留
装置に限定する必要はない。合成反応によって得られた
アクリルシラン溶液を蒸留釜1に投入し、加熱減圧する
ことによって、アクリルシランを気化させる。減圧は、
減圧ポンプ6によって行い、加熱は、蒸留釜1の周りに
設置してあるジャッケット7に熱媒を循環させることに
よって行う。気化されたアクリルシランは、蒸留塔2に
導かれ、蒸留塔2を上昇してゆき、蒸留塔2の上部から
排出され、凝集器4に導かれる。一方、塔頂フィード液
タンク3には、N−ニトロソフェニルヒドロキシルアミ
ン塩混合液を投入しておき、流量調節弁8により流量を
調節しながら、該混合液を蒸留塔2の内部に供給する。
凝集器4により、アクリルシランは液化された後、留出
液タンク5に溜められる。場合によっては、蒸留塔2の
上部に導かれ、再度蒸留精製が行われる。
【0028】
【実施例】以下、本発明を実施例、比較例および参考例
を用いて詳細を説明する。なお、本実施例は本発明をな
んら限定するものではない。
【0029】(実施例1)アリルメタクリレートとジメ
チルクロロシランから白金触媒存在下で3−メタクリロ
キシプロピルジメチルクロロシランを主成分とするアク
リルシラン溶液を既知の方法により合成した。このアク
リルシラン溶液5kgにフェノチアジン0.5gとジメ
チルジチオカルバミン酸銅0.5gとを配合し、蒸留釜
1に投入し、加熱減圧をおこなった。まず、装置内部を
30kPaに減圧し、蒸留塔2の塔頂温度60〜85℃
で、アリルメタクリレートを主成分とする低沸成分を留
去した後、15kPaに減圧し、塔頂温度69〜75℃
で3−メタクリロキシプロピルジメチルクロロシランの
留分を得た。その間、ヘリパックが充填された内径約5
0cmの蒸留塔2の塔頂部から、N−ニトロソフェニル
ヒドロキシルアミンアルミニウム塩を3−メタクリロキ
シプロピルジメチルクロロシランに重量比2%となるよ
うに溶解させた液を供給した。該蒸留精製の際、蒸留釜
2内部のアクリルシラン溶液には、粘度が上昇する重合
は観察されず、増殖重合物の生成も見られなかった。ま
た、蒸留終了後、蒸留塔2の内部を点検したが、均一重
合物や増殖重合物の生成はみられなかった。
【0030】(実施例2)N−ニトロソフェニルヒドロ
キシルアミンアルミニウム塩を3−メタクリロキシプロ
ピルジメチルクロロシランに重量比2%となるように溶
解させた混合液の代わりに、N−ニトロソフェニルヒド
ロキシルアミンアルミニウム塩を鉱油(綜研化学株式会
社製商品:NeoSK−OIL330)に重量比2%と
なるように溶解させた混合液を、蒸留塔2の塔頂部から
添加すること以外は、実施例1に準拠して蒸留を行なっ
た。該蒸留精製の際、蒸留釜2内部のアクリルシラン溶
液には、粘度が上昇する重合は観察されず、増殖重合物
の生成も見られなかった。また、蒸留終了後、蒸留塔2
の内部を点検したが、均一重合物や増殖重合物の生成は
みられなかった。
【0031】(実施例3)アリルメタクリレートとジメ
チルクロロシランから白金触媒存在下で3−メタクリロ
キシプロピルジメチルクロロシランを主成分とするアク
リルシラン溶液を既知の方法により合成した。このアク
リルシラン溶液2.5kgにフェノチアジン0.25
g、2,6ージーt−ブチルー4ーメチルアミノメチル
フェノール2.5gおよびジメチルジチオカルバミン酸
銅0.25gとを配合し、蒸留釜1に投入し、加熱減圧
をおこなった。まず、装置内部を30kPaに減圧し、
蒸留塔2の塔頂温度60〜85℃で、アリルメタクリレ
ートを主成分とする低沸成分を留去した後、15kPa
に減圧し、塔頂温度69〜75℃で3−メタクリロキシ
プロピルジメチルクロロシランの留分を得た。その間、
ヘリパックが充填された内径約50cmの蒸留塔2の塔
頂部から、N−ニトロソフェニルヒドロキシルアミンア
ルミニウム塩を3−メタクリロキシプロピルジメチルク
ロロシランに重量比2%となるように溶解させた液を供
給した。該蒸留精製を連続して5回繰り返し実施した
が、該蒸留精製の際、蒸留釜2内部のアクリルシラン溶
液には、粘度が上昇する重合は観察されず、増殖重合物
の生成も見られなかった。また、蒸留終了後、蒸留塔2
の内部を点検したが、均一重合物や増殖重合物の生成は
みられなかった。
【0032】(比較例1)N−ニトロソフェニルヒドロ
キシルアミンアルミニウム塩を3−メタクリロキシプロ
ピルジメチルクロロシランに重量比2%となるように溶
解させた混合液を供給しない以外は、実施例1に準拠し
て蒸留を行なった。15kPaに減圧し、塔頂温度30
〜69℃でアリルメタクリレートを主成分とする低沸成
分を留去した後、蒸留塔2の内部に増殖重合物が生成、
蒸留塔を閉塞したため蒸留操作が不能となった。
【0033】(比較例2)N−ニトロソフェニルヒドロ
キシルアミンアルミニウム塩を3−メタクリロキシプロ
ピルジメチルクロロシランに重量比2%となるように溶
解させた混合液の代わりに、2,6ージーt−ブチルー
4ーメチルフェノールを3−メタクリロキシプロピルジ
メチルクロロシランに重量比2%となるように溶解させ
た混合液を、蒸留塔2の塔頂部から添加し、蒸留釜1内
のアクリルシラン溶液に配合しているフェノチアジンの
かわりに2,6ージーt−ブチルー4ージメチルアミノ
メチルフェノール0.66gを配合すること以外は、実
施例1に準拠して蒸留を行なった。15kPaに減圧
し、塔頂温度30〜69℃でアリルメタクリレートを主
成分とする低沸成分を留去している間に、蒸留塔2の内
部に増殖重合物が生成、蒸留塔を閉塞したため蒸留操作
が不能となった。
【0034】(比較例3)N−ニトロソフェニルヒドロ
キシルアミンアルミニウム塩を3−メタクリロキシプロ
ピルジメチルクロロシランに重量比2%となるように溶
解させた混合液の代わりに、フェノチアジンを3−メタ
クリロキシプロピルジメチルクロロシランに重量比2%
で溶解させた混合液を、蒸留塔2の塔頂部から添加し、
蒸留釜1内のアクリルシラン溶液に配合しているフェノ
チアジンのかわりに2,6ージーt−ブチルー4ージメ
チルアミノメチルフェノール0.66gを配合すること
以外は、実施例1に準拠して蒸留を行なった。15kP
aに減圧し、塔頂温度30〜69℃でアリルメタクリレ
ートを主成分とする低沸成分を留去している間に、蒸留
塔2の内部に増殖重合物が生成、蒸留塔を閉塞したため
蒸留操作が不能となった。
【0035】
【発明の効果】実施例および比較例から明らかなよう
に、ヒンダートフェノール化合物もしくはアミン化合物
の少なくともいずれか一方と、ジメチルジチオカルバミ
ン酸銅との存在下、N−ニトロソフェニルヒドロキシル
アミン塩混合液を蒸留塔の上部から供給すると、工業的
なスケールでアクリルシランの蒸留精製を実施しても、
蒸留釜内部ならびに蒸留塔内部で発生し易いアクリルシ
ランの自発重合を極めて効果的に抑制できることが判
る。また、N−ニトロソフェニルヒドロキシルアミン塩
混合液は、蒸留精製されたアクリルシランすなわち製品
にほとんど混入しないため、製品の品質は極めて良い。
【図面の簡単な説明】
【図1】蒸留装置のフローシートの図
【符号の説明】
1.蒸留釜 2.蒸留塔 3.塔頂フィード液タンク 4.凝縮器 5.留出液タンク 6.減圧ポンプ 7.ジャッケット 8.流量調節弁
フロントページの続き (58)調査した分野(Int.Cl.6,DB名) C07F 7/00 - 7/21 CA(STN) REGISTRY(STN) WPI(DIALOG)

Claims (4)

    (57)【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】 一般式(I)で表されるアクリルシラン
    の蒸留精製を、ヒンダートフェノール化合物もしくは
    N,N’−ジフェニル−p−フェニレンジアミンまたは
    /およびフェノチアジンであるアミン化合物の少なくと
    もいずれか一方と、ジアルキルジチオカルバミン酸銅と
    の存在下、N−ニトロソフェニルヒドロキシルアミン塩
    混合液を蒸留塔の上部から供給しながら行うことを特徴
    とするアクリルシランの蒸留方法。 CH2=CR1COO(X)mSiR2 n3 3-n …(I) [式中、R1は水素、炭素数が1〜8のアルキル基また
    は炭素数が6〜10のアリール基であり、XはCH2
    2OもしくはCH2またはこれらの2個の基の組み合わ
    せであり、mは1〜12であり、R2は加水分解性基で
    あり、R3は炭素数が1〜12のアルキル基、アルケニ
    ル基またはアリール基であり、nは1〜3である。]
  2. 【請求項2】N−ニトロソフェニルヒドロキシルアミン
    塩が、一般式(II) (R4N(NO)O)pq …(II) [式中、R4は炭素数が6〜10のアリール基であり、
    pは1〜4であり、qは1〜4であり、Yは陽イオン原
    子または分子である。]により表される化合物であるこ
    とを特徴とする請求項1記載のアクリルシランの蒸留方
    法。
  3. 【請求項3】ジアルキルジチオカルバミン酸銅が、一般
    式(III) (R5 2NC(=S)S)2Cu …(III) [式中、R5は炭素数が1〜5のアルキル基である。]
    により表される化合物であることを特徴とする請求項1
    または請求項2に記載のアクリルシランの蒸留方法。
  4. 【請求項4】ヒンダートフェノール化合物が、芳香族環
    の水酸基の近傍に立体障害を与える置換基を、少なくと
    も1個以上結合している化合物であることを特徴とする
    請求項1ないし請求項3のいずれかに記載のアクリルシ
    ランの蒸留方法。
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