JP3555645B2 - アクリロキシ基又はメタクリロキシ基含有クロロシランの製造方法 - Google Patents

アクリロキシ基又はメタクリロキシ基含有クロロシランの製造方法 Download PDF

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Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、シランカップリング剤やケイ素含有ポリマーを得るための重合性モノマーなどとして産業上広く用いられているアクリロキシ基又はメタクリロキシ基含有アルコキシシランの原料となるアクリロキシ基又はメタクリロキシ基含有クロロシランの製造方法に関する。
【0002】
【従来の技術及び発明が解決しようとする課題】
下記一般式(I)で示されるアクリロキシ基又はメタクリロキシ基含有クロロシランは、重合性官能基のアクリロキシ基又はメタクリロキシ基を構造中に有することを特徴とし、シランカップリング剤やケイ素含有ポリマーを得るための重合性モノマーなどとして産業上広く用いられているアクリロキシ基又はメタクリロキシ基含有アルコキシシランの原料として有用である。
【0003】
【化3】
Figure 0003555645
(式中、Rは水素原子又はメチル基、Rは炭素数1〜6の1価炭化水素基を示し、nは1〜3の整数である。)
【0004】
しかしながら、上記アクリロキシ基又はメタクリロキシ基含有クロロシランは、その特徴である重合性官能基をもつが故に、その製造過程において、熱により非常に自己重合し易く、それが多くの問題を引き起こす。例えば、工業的規模で反応、合成する際に、高温条件に長時間晒されるため、その工程熱によって重合反応を自発的に発生させ、反応装置内でゲル化したり、配管を閉塞させたりして、製造プロセスに多大な損害と、その補修に人手と手間の非常にかかる作業を生じさせている。こうしたことから、アクリロキシ基又はメタクリロキシ基含有クロロシランに関して、自発的な重合反応が起こらない製造方法の開発は、工業的規模での製造を容易にする上で極めて重要であり、急がれている。
【0005】
従来、上記式(I)のクロロシランは、一般的には、下記一般式(II)
HSiCl 3−n (II)
(式中、R及びnは上記と同じ意味を示す。)
で示されるヒドロクロロシラン及びアリルアクリレート又はアリルメタクリレートとを、白金族触媒の存在下で、ヒドロシリル化反応せしめることにより合成されるが、これまでにこの製造方法における自発的な重合反応を防止する試みはいろいろと提案されてはいたものの、概して効果が不十分であったり、種々の問題を含んでいたりと十分に満足のいく解決手段は知られていなかった。
【0006】
即ち、重合反応防止技術の一つとして、ハイドロキノンやハイドロキノンモノメチルエーテルといったフェノール性化合物を添加することが知られているが、この方法では、それらの化合物が徐々にクロロシランと反応して系内で消失してしまうため重合禁止効果が乏しかった。また、キノン系のベンゾキノン、2,5−t−ブチルベンゾキノンやキノンジオキシム類などを添加することも知られているが、これらの化合物は、刺激性が強くて取り扱い性に問題があったり、高度の着色性を有していたりと問題があった。
【0007】
また、特公平6−51707号公報、特許第2539505号公報などで一般的に知られるフェノチアジンの添加では重合禁止効果が不十分であった。
【0008】
更に、種々のヒンダードフェノール系化合物の添加も知られているが、これまでに提案されたもの(2,2’−メチレンビス(4−メチル−6−t−ブチルフェノール)、2,2’−メチレンビス(4−エチル−6−t−ブチルフェノール)、4,4’−ブチリデンビス(6−t−ブチル−m−クレゾール)、1,3,5−トリメチル−2,4,6−トリス(3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシベンジル)ベンゼン、トリス(3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシベンジル)イソシアヌレイトなど)では、概して重合禁止効果が不十分であった。また、ある程度自己重合防止には有効ではあるものの、沸点が目的物と殆んど同じであるために蒸留時に同伴して製品中に混入することから、近年種々の不具合を引き起こすことが判明し、問題視されているものもある。例えば、2,6−ジ−t−ブチル−4−メチルフェノールは、空気中の窒素酸化物の影響で、下記式に示すように、黄変着色性を引き起こす物質(キノンメチド、スチルベンキノンなど)に変化することが近年判明し、重合禁止剤として使用するには問題を有している(K.S.Smeltz,Textile Chem,Color.,15,〔4〕,52(1983)や八児真一;Plastics Age Encyclopedia,進歩編,1995,p131−138(1994)及び木村健治;JETI,Vol.44,No.5,p92−97(1996)など)。更に、最終目的物を重合性モノマーとして利用する用途には、重合禁止剤が混入していれば重合反応を阻害して目的の操作に支障が生じるし、これを回避しようと添加量を制限すれば、重合禁止効果は不十分なものとなる。なお、更には反応系内で2,6−ジ−t−ブチル−4−メチルフェノールや上記の黄変着色性を引き起こす物質に転換するようなものもあり、具体的にはビス(3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシベンジル)スルフィドや特開平5−186478号公報における2,6−ジ−t−ブチル−4−ジメチルアミノメチレンフェノール、特開平7−25907号公報における2,6−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシメチルフェノール及び4,4’−メチレンビス(2,6−ジ−t−ブチルフェノール)などが挙げられ、これらは添加後の経時的変化により、上記した黄変着色性を引き起こす物質である2,6−ジ−t−ブチル−4−メチルフェノールやキノンメチドやスチルベンキノンに変換してしまうことが確認されており、重合禁止剤として使用することには問題を有している。
【0009】
【化4】
Figure 0003555645
【0010】
一方、特開平4−356442号公報、特開平4−128294号公報で知られる2−t−ブチル−6−(3−t−ブチル−2−ヒドロキシ−5−メチルベンジル)−4−メチルフェニルアクリレートのようなアクリル酸エステルでは、ヒドロシリル化反応に添加すると、同化合物が有するアクリル基にヒドロクロロシランが付加してしまい、重合禁止効果が損なわれるため不適である。
【0011】
また、特許第2539505号公報、特開平4−128293号公報のように、付加反応時に酸素を吹き込む手段も知られているが、その重合禁止効果は不十分であるし、酸素濃度のコントロールが難しい(酸素濃度が多いと逆にラジカル重合性を助長する)。更に、特公平3−12075号公報、特開平5−301881号公報で知られるアセチルアセトンやベンゾイルアセトンもその重合禁止効果は不十分である。
【0012】
特公平7−316164号公報、特開平5−271248号公報で知られる塩化第一銅、塩化第二銅、酸化第一銅、酸化第二銅、硫酸銅などの無機銅化合物及び従来から知られているジメチルジチオカルバミン酸銅などの銅錯体は、白金族触媒の存在下のヒドロシリル化反応を阻害し、目的物の生成を妨害するため使用できない。
【0013】
また、リン含有化合物系(特開平4−117389号公報などに記載のP(C,P(OC,O=P(Cなど)、イオウ含有化合物系(特開平4−117390号公報などに記載のブチルスルフィド、2,4−ビス〔(オクチルチオ)メチル〕−o−クレゾール、テトラメチルチウラムジスルフィドなど)の重合禁止剤も概して同様にヒドロシリル化反応を妨害するため使用できない。更にまた、アミン含有化合物系や一部のイオウ含有化合物系の重合禁止剤では製品の着臭や着色の品質的な問題を引き起こすおそれがある。
【0014】
なお、アクリロキシ基又はメタクリロキシ基含有アルコキシシランを製造する方法の別法として、アクリロキシ基又はメタクリロキシ基含有クロロシランを経ずに、下記一般式(III)
HSi(OR 3−m (III)
(式中、R、Rは炭素数1〜6の1価炭化水素基を示し、mは1〜3の整数である。)
で示されるヒドロアルコキシシランとアリルアクリレート又はアリルメタクリレートとを、白金族触媒及び各種重合禁止剤の存在下で、ヒドロシリル化反応せしめる方法が、特開昭63−188689号公報、特公平3−12075号公報などで提案されているが、同方法には付加異性体や種々の副生物が生成するといった問題や最終目的物の加水分解性挙動が不安定であるなどの品質的な問題があり、十分にその解決がなされておらず、未だ工業的製法として確立していないのが現状である。また、ハロプロピルシラン化合物とアクリル酸又はメタクリル酸のアルカリ金属塩とを相関移動触媒の存在下で反応せしめて合成する方法も知られているが、単位容積当たりの収量が低いことと副生物である大量の塩の除去に非常に手間がかかるなどの問題がある。このため、未だ当業界では、アクリロキシ基又はメタクリロキシ基含有アルコキシシランを得る方法としては、前記した一般式(II)で示されるヒドロクロロシランとアリルアクリレート又はアリルメタクリレートとを、白金族触媒の存在下でヒドロシリル化反応せしめることにより製造される一般式(I)で示されるアクリロキシ基又はメタクリロキシ基含有クロロシランを原料とし、次いで連続式で、又は塩酸キャッチャーとしての塩基存在下に回分式でアルコールと反応させる製造方法が主流であり、従ってその原料である前記化合物(I)を製造する際における自発的な自己重合の問題を十分に回避でき、かつ最終目的物に品質的な問題を与えることのない解決手段の提案は当業界では非常に切望されていた。
【0015】
本発明は、このような従来技術に伴う問題点を解決しようとするものであり、自発的な自己重合の問題を十分に回避でき、かつ最終目的物に品質的な問題を与えることのない上記式(I)で示されるアクリロキシ基又はメタクリロキシ基含有クロロシランの製造方法を提供することを目的とする。
【0016】
【課題を解決するための手段及び発明の実施の形態】
本発明者らは、前記の課題を解決するため鋭意検討を行った結果、新規な重合禁止剤として化学式(1)の2,2−チオ−ジエチレン−ビス〔3−(3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオネート〕を存在させた条件で、一般式(II)で示されるヒドロクロロシランとアリルアクリレート又はアリルメタクリレートとを、白金族触媒の存在下でヒドロシリル化反応せしめて、一般式(I)で示されるアクリロキシ基又はメタクリロキシ基含有クロロシランを製造すると、驚くべきことに従来公知の重合禁止剤に比べ、ヒドロシリル化反応を何ら阻害することなく、非常に卓越した重合禁止効果を発揮して、かつ最終目的のアクリロキシ基又はメタクリロキシ基含有アルコキシシランに何ら品質的な問題を与えないという有効性を見出し、本発明をなすに至った。
【0017】
従って、本発明は、下記一般式(II)
HSiCl 3−n (II)
(式中、Rは炭素数1〜6の1価炭化水素基を示し、nは1〜3の整数である。)
で示されるヒドロクロロシランとアリルアクリレート又はアリルメタクリレートとを、白金族触媒及び下記化学式(1)で示される2,2−チオ−ジエチレン−ビス〔3−(3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオネート〕の存在下でヒドロシリル化反応せしめることを特徴とする下記一般式(I)で示されるアクリロキシ基又はメタクリロキシ基含有クロロシランの製造方法を提供する。
【0018】
【化5】
Figure 0003555645
(式中、Rは水素原子又はメチル基を示し、R及びnは上記と同じ意味を示す。)
【0019】
以下、本発明につき更に詳しく説明する。 本発明の上記一般式(I)で示されるアクリロキシ基又はメタクリロキシ基含有クロロシランの製造方法は、下記一般式(II)
HSiCl 3−n (II)
で示されるヒドロクロロシランとアリルアクリレート又はアリルメタクリレートとをヒドロシリル化反応させるものである。
【0020】
ここで、式(II)において、Rは炭素数1〜6の1価炭化水素基であり、メチル基、エチル基、プロピル基、ブチル基、ペンチル基、ヘキシル基等のアルキル基などが挙げられ、特にはメチル基が好ましい。なお、nは1、2又は3であり、ヒドロクロロシランとして具体的には、トリクロロシラン、メチルジクロロシラン、ジメチルクロロシランなどが例示される。
【0021】
また、このようなヒドロクロロシランとアリルアクリレート又はアリルメタクリレートとをヒドロシリル化反応させて得られるアクリロキシ基又はメタクリロキシ基含有クロロシランは、一般式(I)で示されるものであるが、具体的には3−メタクリロキシプロピルトリクロロシラン、3−メタクリロキシプロピルメチルジクロロシラン、3−メタクリロキシプロピルジメチルクロロシラン、3−アクリロキシプロピルトリクロロシラン、3−アクリロキシプロピルメチルジクロロシラン、3−アクリロキシプロピルジメチルクロロシラン等が例示できる。
【0022】
なお、本発明に係わるアクリロキシ基又はメタクリロキシ基含有クロロシランの製造方法では、ヒドロクロロシランとアリルアクリレート又はアリルメタクリレートとは、モル比で0.5〜2.0、好ましくは0.8〜1.2の量比で用いられる。
【0023】
本発明において、上記ヒドロクロロシランとアリルアクリレート又はアリルメタクリレートとのヒドロシリル化反応は、白金族触媒及び上記化学式(1)の重合禁止剤の存在下に行う。
【0024】
この場合、本発明では、白金族触媒として、ヒドロシリル化反応に従来公知のものはいずれを用いてもかまわないが、具体的には下記のものを例示できる。即ち、塩化白金酸、塩化白金酸六水和物、Speierの白金触媒(即ち、塩化白金酸のアルコール溶液)、Karstedtの白金触媒(即ち、塩化白金酸とsym−ジビニルテトラメチルジシロキサンとの錯体)、塩化白金酸のTHF溶液、担持された白金触媒(白金活性炭、白金アルミナなど)、ジクロロ(1,5−シクロオクタジエン)白金(II)、ジクロロジエチレン白金(II)、ジクロロビス(アセトニトリル)白金(II)、ジカルボニルジクロロ白金(II)、酸化白金などを用いることができる。
【0025】
このような白金族触媒は、白金族金属としてアリルアクリレート又はアリルメタクリレート1モルに対して通常1×10−7〜1×10−3モル、好ましくは1×10−6〜1×10−4モルの量で用いられる。
【0026】
一方、本発明の製造方法に重合禁止剤として添加する化学式(1)の2,2−チオ−ジエチレン−ビス〔3−(3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオネート〕は、工業的入手が容易で、安価であり、取り扱いも安全に行える化合物である。この化学式(1)の2,2−チオ−ジエチレン−ビス〔3−(3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオネート〕の添加量は製造される一般式(I)で示されるアクリロキシ基又はメタクリロキシ基含有クロロシラン1モルに対して0.01〜10重量%、好ましくは0.1〜1重量%の量で用いられる。
【0027】
本発明では、反応溶媒は用いても用いなくてもよいが、反応溶媒を用いる場合、反応溶媒としてはベンゼン、トルエン、キシレン、メシチレン、テトラリンなどの芳香族化合物、ヘキサン、イソオクタン、デカン、ヘプタンなどの脂肪族化合物、THFなどのエーテル化合物を例示することができる。
【0028】
また、本発明では新規な重合禁止剤として添加する化学式(1)の2,2−チオ−ジエチレン−ビス〔3−(3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオネート〕の他にも、ヒドロシリル化反応を阻害せず、かつ最終目的物のアクリロキシ基又はメタクリロキシ基含有アルコキシシランに品質的な問題を与えないならば、従来公知の重合禁止剤を共に存在させてもかまわない。
【0029】
具体的には、ハイドロキノン、ハイドロキノンモノメチルエーテルなどのフェノール性化合物、2,2’−メチレンビス(4−メチル−6−t−ブチルフェノール)、2,2’−メチレンビス(4−エチル−6−t−ブチルフェノール)、4,4’−ブチリデンビス(6−t−ブチル−m−クレゾール)、1,3,5−トリメチル−2,4,6−トリス(3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシベンジル)ベンゼン、トリス(3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシベンジル)イソシアヌレイトなどのヒンダードフェノール系化合物などが挙げられる。これらの添加量には特に制限はなく、一般式(I)で示される化合物に対して重量基準で1ppm〜10重量%の範囲で1種を単独で又は2種以上を組み合わせて添加することができる。
【0030】
本発明においてヒドロシリル化反応の反応温度は20〜150℃、好ましくは40〜120℃である。また、圧力には制限はなく、常圧でも加圧でもかまわない。雰囲気は、窒素雰囲気であっても、酸素(空気)を吹き込んだ条件であってもかまわない。
【0031】
本発明では、ヒドロシリル化反応を実施する態様には特に制限はなく、バッチ反応として、半連続反応として、あるいは連続反応として行うことができる。また、本発明では、反応原料、白金族触媒、重合禁止剤の添加順序には特に制限はなく、アリルアクリレート又はアリルメタクリレートとヒドロクロロシランとを同時に白金族触媒及び重合禁止剤の中に導入する方法でもかまわないが、バッチ法により合成される場合には、より好ましくは重合禁止剤→反応原料(アリルアクリレート又はアリルメタクリレート)→白金族触媒→反応原料(ヒドロクロロシラン)の順序に添加することが推奨される。
【0032】
本発明の製造方法に使用する新規な重合禁止剤である化学式(1)の2,2−チオ−ジエチレン−ビス〔3−(3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオネート〕の重合禁止効果がどのように発現されるかについては、特定の理論にしばられたくはないが、ラジカル捕捉能を有するフェノール性水酸基(ラジカル連鎖反応の停止)と過酸化物分解効果を有するS原子(ラジカル発生の抑制)とを同一構造に有しているために、それらが予想し得ない相乗効果を発揮して卓越した重合禁止効果を生み出しているものと思われる。しかも、一般的には白金族触媒の存在下におけるヒドロシリル化反応を阻害するS原子を分子内に含んでいるにも拘らず、反応阻害を全く起こさない特徴も有しているが、これはこの化合物のとり得る化学構造に特徴的に備わっている性質であると思われる。このため、数ある重合禁止剤の中でも選択的に化学式(1)の2,2−チオ−ジエチレン−ビス〔3−(3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオネート〕が望ましい性質(卓越した重合禁止能と非反応阻害性を併せ持つこと)を有することになるものと考えられる。
【0033】
本発明で得られた一般式(I)で示される化合物は、次いで連続式で、または塩酸キャッチャーとしての塩基存在下に回分式でアルコールと反応させることにより、アクリロキシ基又はメタクリロキシ基含有アルコキシシランに転化され、更に蒸留精製することにより、最終目的物のアクリロキシ基又はメタクリロキシ基含有アルコキシシランに供される。なお、アルコールとの反応や蒸留精製の際には、更に化学式(1)の2,2−チオ−ジエチレン−ビス〔3−(3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオネート〕を添加してもよく、添加量は特に制限があるわけではないが、製造される一般式(I)で示されるアクリロキシ基又はメタクリロキシ基含有クロロシランの1モル当たり0.01〜10重量%、好ましくは0.1〜1重量%の量で添加すればよい。また、最終目的物のアクリロキシ基又はメタクリロキシ基含有アルコキシシランに品質的な問題を与えないならば、更に従来公知の重合禁止剤を任意に選択して上記工程に同時に添加してもよい。具体的には上記したフェノール性化合物やヒンダードフェノール系化合物、フェノチアジン、塩化第一銅、塩化第二銅、酸化第一銅、酸化第二銅、硫酸銅、ジメチルジチオカルバミン酸銅などの銅化合物やリンもしくは選択されたイオウ含有化合物などが挙げられる。
【0034】
【発明の効果】
本発明によれば、一般式(II)で示されるヒドロクロロシランとアリルアクリレート又はアリルメタクリレートとを、白金族触媒の存在下でヒドロシリル化反応せしめて、一般式(I)で示されるアクリロキシ基又はメタクリロキシ基含有クロロシランを製造する際に、新規な重合禁止剤として化学式(1)の2,2−チオ−ジエチレン−ビス〔3−(3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオネート〕を存在させると、ヒドロシリル化反応を何ら阻害することなく、非常に卓越した重合禁止効果を発揮して、自発的な自己重合反応を十分に防止でき、かつ最終目的のアクリロキシ基又はメタクリロキシ基含有アルコキシシランに何ら品質的な問題が生じないという効果が得られる。
【0035】
【実施例】
以下、実施例、比較例及び参考例を示し、本発明を具体的に説明するが、本発明は下記の実施例に制限されるものではない。
【0036】
〔実施例1〕
滴下漏斗、ジムロート式水冷凝縮器、撹拌機、温度計を備えた300mlの四つ口フラスコを十分窒素置換した。次いで、アリルメタクリレート126.2g(1mol)、塩化白金(VI)酸の2−エチルヘキサノール溶液0.1g(Pt10−5molを含む)及び2,2−チオ−ジエチレン−ビス〔3−(3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオネート〕0.79g(対3−メタクリロキシプロピルトリクロロシラン1mol(261.7g)当たり0.3重量%に相当)を仕込み、凝縮器の通気口に窒素通気をしつつ、110℃までフラスコの内容物を加熱した。次いで、トリクロロシラン135.5g(1mol)を液中にフィードした。滴下開始後直ちに鋭敏な発熱が観察され、ヒドロシリル化反応がスムースに開始したことが確認された。その後、反応温度を100〜110℃に維持するように滴下速度や熱媒による調整をしながら、3〜4時間かけて全量を滴下した。滴下終了後、混合物を100〜110℃で3時間熟成した。その後、室温まで冷却し、ガスクロマトグラフィーで組成を調べると、3−メタクリロキシプロピルトリクロロシランが収率96.5%で得られていることがわかった。また、目的物近傍には重合禁止剤に係わる不純物は検出されなかった。
【0037】
この混合物10gを十分窒素置換された20mlのネジ口の試験管に入れ、再度窒素置換した後封入し、150℃のオイルバス中に放置したが、20時間経過しても粘性は認められなかった。
【0038】
〔実施例2〕
塩化白金(VI)酸の2−エチルヘキサノール溶液の量を0.05g(Pt5×10−6molを含む)とした以外は実施例1と同様に反応を行った。その後、室温まで冷却し、ガスクロマトグラフィーで組成を調べると、3−メタクリロキシプロピルトリクロロシランが収率96.4%で得られていることがわかった。また、目的物近傍には重合禁止剤に係わる不純物は検出されなかった。
【0039】
この混合物10gを十分窒素置換された20mlのネジ口の試験管に入れ、再度窒素置換した後封入し、150℃のオイルバス中に放置したが、20時間経過しても粘性は認められなかった。
【0040】
〔実施例3〕
2,2−チオ−ジエチレン−ビス〔3−(3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオネート〕の添加量を0.52g(対3−メタクリロキシプロピルトリクロロシラン1mol(261.7g)当たり0.2重量%に相当)とした以外は実施例2と同様に反応を行った。その後、室温まで冷却し、ガスクロマトグラフィーで組成を調べると、3−メタクリロキシプロピルトリクロロシランが収率96.5%で得られていることがわかった。また、目的物近傍には重合禁止剤に係わる不純物は検出されなかった。
【0041】
この混合物10gを十分窒素置換された20mlのネジ口の試験管に入れ、再度窒素置換した後封入し、150℃のオイルバス中に放置したが、20時間経過しても粘性は認められなかった。
【0042】
〔実施例4〕
2,2−チオ−ジエチレン−ビス〔3−(3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオネート〕の添加量を1.58g(対3−メタクリロキシプロピルトリクロロシラン1mol(261.7g)当たり0.6重量%に相当)とした以外は実施例2と同様に反応を行った。その後、室温まで冷却し、ガスクロマトグラフィーで組成を調べると、3−メタクリロキシプロピルトリクロロシランが収率96.6%で得られていることがわかった。また、目的物近傍には重合禁止剤に係わる不純物は検出されなかった。
【0043】
この混合物10gを十分窒素置換された20mlのネジ口の試験管に入れ、再度窒素置換した後封入し、150℃のオイルバス中に放置したが、20時間経過しても粘性は認められなかった。
【0044】
〔比較例1〕
2,2−チオ−ジエチレン−ビス〔3−(3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオネート〕の代わりに、3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシ−ベンジルフォスフォネート−ジエチルエステルを使用した以外は実施例2と同様の操作を行った。しかし、滴下を開始しても発熱は観察されず、トリクロロシランが50g滴下された時点で、あまりに還流が激しくなりすぎたためにそれ以上滴下するのを止めて冷却し、内容物の組成をガスクロマトグラフィーで調べると、ヒドロシリル化反応は全く起こっておらず、原料が回収されたのみであった。
【0045】
〔比較例2〕
比較例1の3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシ−ベンジルフォスフォネート−ジエチルエステルを、下記に示すAO−23(旭電化工業(株)の商品名)に代えた以外は同様の方法を実施したが、滴下を開始しても発熱は観察されず、トリクロロシランの還流が激しくなった時点で滴下するのを止めて冷却し、内容物の組成をガスクロマトグラフィーで調べると、ヒドロシリル化反応は全く起こっておらず、原料が回収されたのみであった。
【0046】
【化6】
Figure 0003555645
【0047】
〔比較例3〕
比較例1の3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシ−ベンジルフォスフォネート−ジエチルエステルを、下記に示すHP−10(旭電化工業(株)の商品名)に代えた以外は同様の方法を実施したが、滴下を開始しても発熱は観察されず、トリクロロシランの還流が激しくなった時点で滴下するのを止めて冷却し、内容物の組成をガスクロマトグラフィーで調べると、ヒドロシリル化反応は全く起こっておらず、原料が回収されたのみであった。
【0048】
【化7】
Figure 0003555645
【0049】
〔比較例4〕
比較例1の3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシ−ベンジルフォスフォネート−ジエチルエステルを、ビス(3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシベンジル)スルフィドに代えた以外は同様の方法を実施した。しかし、滴下を開始しても鋭敏な発熱は観察されず、トリクロロシランの滴下が進むにつれて還流が激しくなり、5〜6時間かけて滴下終了した後、混合物を90〜100℃(還流するため、これ以上温度を上げられなかった)で更に6時間熟成しても、内容物中にトリクロロシランが残存しており、3−メタクリロキシプロピルトリクロロシランは80%程度生成しているにすぎなかった。
【0050】
〔比較例5〕
比較例1の3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシ−ベンジルフォスフォネート−ジエチルエステルを、2,4−ビス−(n−オクチルチオ)−6−(4−ヒドロキシ−3,5−ジ−t−ブチルアニリノ)−1,3,5−トリアジンに代えた以外は同様の方法を実施した。しかし、滴下を開始しても発熱は観察されず、トリクロロシランが30g滴下された時点で、あまりに還流が激しくなりすぎたためにそれ以上滴下するのを止めて冷却し、内容物の組成をガスクロマトグラフィーで調べると、3−メタクリロキシプロピルトリクロロシランはわずかに数%生成しているにすぎず、ヒドロシリル化反応は中途で失活しており、殆んど原料が回収されたのみであった。
【0051】
〔実施例5〕
滴下漏斗、ジムロート式水冷凝縮器、撹拌機、温度計を備えた5000mlの四つ口フラスコを十分窒素置換した。次いで、アリルメタクリレート1891.5g(15mol)、塩化白金(VI)酸の2−エチルヘキサノール溶液1.47g(Pt10×10−6molを含む)及び2,2−チオ−ジエチレン−ビス〔3−(3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオネート〕11.8g(対3−メタクリロキシプロピルトリクロロシラン1mol(261.7g)当たり0.3重量%に相当)を仕込み、凝縮器の通気口に窒素通気をしつつ、100℃までフラスコの内容物を加熱した。次いで、トリクロロシラン2031.0gを液中にフィードした。滴下開始後直ちに鋭敏な発熱が観察され、ヒドロシリル化反応がスムースに開始したことが確認された。その後、反応温度を90〜100℃に維持するように滴下速度や熱媒による調整をしながら、5〜6時間かけて全量を滴下した。滴下終了後、混合物を90〜100℃で1時間熟成した。その後、室温まで冷却し、ガスクロマトグラフィーで組成を調べると、3−メタクリロキシプロピルトリクロロシランが収率95.6%で得られていることがわかった。また、目的物近傍には重合禁止剤に係わる不純物は検出されなかった。
【0052】
この混合物10gを十分窒素置換された20mlのネジ口の試験管に入れ、再度窒素置換した後封入し、150℃のオイルバス中に放置したが、20時間経過しても粘性は認められなかった。
【0053】
〔参考例1〕
2,2−チオ−ジエチレン−ビス〔3−(3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオネート〕を添加しない以外は実施例5と同様に反応を行った。ところが、滴下終了後、混合物を80〜90℃で2時間熟成したところ、増粘してしまった。
【0054】
この増粘した混合物10gを十分窒素置換された20mlのネジ口の試験管に入れ、再度窒素置換した後封入し、150℃のオイルバス中に放置したところ、30分以内に固いゲル状になった。
【0055】
〔比較例6〕
2,2−チオ−ジエチレン−ビス〔3−(3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオネート〕11.8g(対3−メタクリロキシプロピルトリクロロシラン1mol(261.7g)当たり0.3重量%に相当)の代わりに2,2’−メチレン−ビス−(4−エチル−6−t−ブチルフェノール)19.6g(対3−メタクリロキシプロピルトリクロロシラン1mol(261.7g)当たり0.5重量%に相当)を使用した以外は実施例5と同様に反応を行った。ところが、滴下終了後、混合物を90〜100℃で3時間熟成したところ、増粘してしまった。
【0056】
この増粘した混合物10gを十分窒素置換された20mlのネジ口の試験管に入れ、再度窒素置換した後封入し、150℃のオイルバス中に放置したところ、2時間で固いゲル状になった。
【0057】
〔比較例7〕
2,2−チオ−ジエチレン−ビス〔3−(3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオネート〕11.8g(対3−メタクリロキシプロピルトリクロロシラン1mol(261.7g)当たり0.3重量%に相当)の代わりに2,2’−メチレン−ビス−(4−メチル−6−t−ブチルフェノール)19.6g(対3−メタクリロキシプロピルトリクロロシラン1mol(261.7g)当たり0.5重量%に相当)を使用した以外は実施例5と同様に反応を行った。ところが、滴下終了後、混合物を90〜100℃で熟成していたところ、2時間程度で内容物が増粘し、遂にはゲル化に至った。
【0058】
〔比較例8〕
2,2−チオ−ジエチレン−ビス〔3−(3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオネート〕11.8g(対3−メタクリロキシプロピルトリクロロシラン1mol(261.7g)当たり0.3重量%に相当)の代わりに2,6−ジ−t−ブチル−4−メチルフェノール0.39g(対3−メタクリロキシプロピルトリクロロシラン1mol(261.7g)当たり0.01重量%に相当)を使用した以外は実施例5と同様に反応を行った。その後、室温まで冷却し、ガスクロマトグラフィーで組成を調べると、3−メタクリロキシプロピルトリクロロシランが収率95.3%で得られていることがわかった。
【0059】
この混合物10gを十分窒素置換された20mlのネジ口の試験管に入れ、再度窒素置換した後封入し、150℃のオイルバス中に放置したところ、2時間で固いゲル状になった。
【0060】
〔比較例9〕
2,2−チオ−ジエチレン−ビス〔3−(3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオネート〕11.8g(対3−メタクリロキシプロピルトリクロロシラン1mol(261.7g)当たり0.3重量%に相当)の代わりに2,6−ジ−t−ブチル−4−メチルフェノール0.39g(対3−メタクリロキシプロピルトリクロロシラン1mol(261.7g)当たり0.01重量%に相当)及び2,2’−メチレン−ビス−(4−エチル−6−t−ブチルフェノール)19.6g(対3−メタクリロキシプロピルトリクロロシラン1mol(261.7g)当たり0.5重量%に相当)を使用した以外は実施例5と同様に反応を行った。その後、室温まで冷却し、ガスクロマトグラフィーで組成を調べると、3−メタクリロキシプロピルトリクロロシランが収率95.4%で得られていることがわかった。
【0061】
この混合物10gを十分窒素置換された20mlのネジ口の試験管に入れ、再度窒素置換した後封入し、150℃のオイルバス中に放置したところ、2〜3時間で固いゲル状になった。
【0062】
〔比較例10〕
反応時系内に、極細ガラス管を通して乾燥空気を37.5ml/minでバブリングしたこと以外は比較例9と同様に反応を行った。その後、室温まで冷却し、ガスクロマトグラフィーで組成を調べると、3−メタクリロキシプロピルトリクロロシランが収率95.4%で得られていることがわかった。
【0063】
この混合物10gを十分窒素置換された20mlのネジ口の試験管に入れ、再度窒素置換した後封入し、150℃のオイルバス中に放置したところ、4〜5時間で固いゲル状になった。
【0064】
〔比較例11〕
2,6−ジ−t−ブチル−4−メチルフェノール0.39g(対3−メタクリロキシプロピルトリクロロシラン1mol(261.7g)当たり0.01重量%に相当)及び2,2’−メチレン−ビス−(4−エチル−6−t−ブチルフェノール)19.6g(対3−メタクリロキシプロピルトリクロロシラン1mol(261.7g)当たり0.5重量%に相当)の代わりに2,6−ジ−t−ブチル−4−メチルフェノール1.96g(対3−メタクリロキシプロピルトリクロロシラン1mol(261.7g)当たり0.05重量%に相当)及び2,2’−メチレン−ビス−(4−エチル−6−t−ブチルフェノール)3.93g(対3−メタクリロキシプロピルトリクロロシラン1mol(261.7g)当たり0.1重量%に相当)を使用した以外は比較例10と同様に反応を行った。その後、室温まで冷却し、ガスクロマトグラフィーで組成を調べると、3−メタクリロキシプロピルトリクロロシランが収率95.6%で得られていることがわかった。
【0065】
この混合物10gを十分窒素置換された20mlのネジ口の試験管に入れ、再度窒素置換した後封入し、150℃のオイルバス中に放置したが、5時間で固いゲル状になった。
【0066】
〔比較例12〕
2,2−チオ−ジエチレン−ビス〔3−(3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオネート〕の代わりにフェノチアジンを使用した以外は実施例5と同様に反応を行った。その後、室温まで冷却し、ガスクロマトグラフィーで組成を調べると、3−メタクリロキシプロピルトリクロロシランが収率95.4%で得られていることがわかった。
【0067】
この混合物10gを十分窒素置換された20mlのネジ口の試験管に入れ、再度窒素置換した後封入し、150℃のオイルバス中に放置したところ、5〜6時間で固いゲル状になった。
【0068】
〔比較例13〕
2,2−チオ−ジエチレン−ビス〔3−(3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオネート〕0.79g(対3−メタクリロキシプロピルトリクロロシラン1mol(261.7g)当たり0.3重量%に相当)の代わりにハイドロキノンモノメチルエーテル0.26g(対3−メタクリロキシプロピルトリクロロシラン1mol(261.7g)当たり0.1重量%に相当)を使用し、更に反応溶媒としてトルエン112.2gを用いた以外は実施例1と同様に反応を行った。ところが、滴下終了後、混合物を100〜110℃で熟成していたところ、1時間ほど経過した時点で内容物が増粘したため、熟成を中止して、冷却した。
【0069】
〔比較例14〕
2,2−チオ−ジエチレン−ビス〔3−(3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオネート〕0.79g(対3−メタクリロキシプロピルトリクロロシラン1mol(261.7g)当たり0.3重量%に相当)の代わりに2,2’−メチレン−ビス−(4−エチル−6−t−ブチルフェノール)0.26g(対3−メタクリロキシプロピルトリクロロシラン1mol(261.7g)当たり0.1重量%に相当)及び1,3,5−トリメチル−2,4,6−トリス(3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシベンジル)ベンゼン0.26g(対3−メタクリロキシプロピルトリクロロシラン1mol(261.7g)当たり0.1重量%に相当)を使用した以外は実施例1と同様に反応を行った。ところが、滴下終了後、混合物を100〜110℃で3時間熟成し、これを室温まで冷却し放置しておいたところ、数日後に内容物が増粘してしまった。
【0070】
〔実施例6〕
滴下漏斗、ジムロート式水冷凝縮器、撹拌機、温度計を備えた5000mlの四つ口フラスコを十分窒素置換した。次いで、アリルメタクリレート1891.5g(15mol)、塩化白金(VI)酸の2−エチルヘキサノール溶液0.74g(Pt5×10−6molを含む)及び2,2−チオ−ジエチレン−ビス〔3−(3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオネート〕11.8g(対3−メタクリロキシプロピルトリクロロシラン1mol(261.7g)当たり0.3重量%に相当)を仕込み、凝縮器の通気口に窒素通気をしつつ、100℃までフラスコの内容物を加熱した。次いで、トリクロロシラン2031.0g(15mol)を液中にフィードした。滴下開始後直ちに鋭敏な発熱が観察され、ヒドロシリル化反応がスムースに開始したことが確認された。その後、反応温度を100〜110℃に維持するように滴下速度や熱媒による調整をしながら、5〜6時間かけて全量を滴下した。滴下終了後、混合物を100〜110℃で1〜2時間熟成した。その後、室温まで冷却し、ガスクロマトグラフィーで組成を調べると、3−メタクリロキシプロピルトリクロロシランが収率96.2%で得られていることがわかった。また、目的物近傍には重合禁止剤に係わる不純物は検出されなかった。
【0071】
この混合物10gを十分窒素置換された20mlのネジ口の試験管に入れ、再度窒素置換した後封入し、150℃のオイルバス中に放置したが、20時間経過しても粘性は認められなかった。
【0072】
〔実施例7〕
滴下漏斗、ジムロート式水冷凝縮器、撹拌機、温度計を備えた300mlの四つ口フラスコを十分窒素置換した。次いで、アリルアクリレート112.2g(1mol)、塩化白金(VI)酸の2−エチルヘキサノール溶液0.1g(Pt10−5molを含む)及び2,2−チオ−ジエチレン−ビス〔3−(3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオネート〕0.74g(対3−アクリロキシプロピルトリクロロシラン1mol(247.7g)当たり0.3重量%に相当)を仕込み、凝縮器の通気口に窒素通気をしつつ、80℃までフラスコの内容物を加熱した。次いで、トリクロロシラン135.5g(1mol)を液中にフィードした。滴下開始後直ちに発熱が観察され、ヒドロシリル化反応が開始したことが確認された。その後、反応温度を80〜90℃に維持するように滴下速度や熱媒による調整をしながら、3〜4時間かけて全量を滴下した。滴下終了後、混合物を80〜90℃で3時間熟成した。その後、室温まで冷却し、ガスクロマトグラフィーで組成を調べると、3−アクリロキシプロピルトリクロロシランが収率83.5%で得られていることがわかった。また、目的物近傍には重合禁止剤に係わる不純物は検出されなかった。
【0073】
この混合物10gを十分窒素置換された20mlのネジ口の試験管に入れ、再度窒素置換した後封入し、150℃のオイルバス中に放置したが、15時間経過しても粘性は認められなかった。
【0074】
〔実施例8〕
滴下漏斗、ジムロート式水冷凝縮器、撹拌機、温度計を備えた300mlの四つ口フラスコを十分窒素置換した。次いで、アリルメタクリレート126.2g(1mol)、sym−ジビニルテトラメチルジシロキサンと塩化白金酸の錯体キシレン溶液0.1g(Pt10−5molを含む)及び2,2−チオ−ジエチレン−ビス〔3−(3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオネート〕0.79g(対3−メタクリロキシプロピルトリクロロシラン1mol(261.7g)当たり0.3重量%に相当)を仕込み、凝縮器の通気口に窒素通気をしつつ、110℃までフラスコの内容物を加熱した。次いで、トリクロロシラン135.5g(1mol)を液中にフィードした。滴下開始後直ちに鋭敏な発熱が観察され、ヒドロシリル化反応がスムースに開始したことが確認された。その後、反応温度を100〜110℃に維持するように滴下速度や熱媒による調整をしながら、4時間かけて全量を滴下した。滴下終了後、混合物を100〜110℃で2〜3時間熟成した。その後、室温まで冷却し、ガスクロマトグラフィーで組成を調べると、3−メタクリロキシプロピルトリクロロシランが収率96.4%で得られていることがわかった。また、目的物近傍には重合禁止剤に係わる不純物は検出されなかった。
【0075】
この混合物10gを十分窒素置換された20mlのネジ口の試験管に入れ、再度窒素置換した後封入し、150℃のオイルバス中に放置したが、20時間経過しても粘性は認められなかった。
【0076】
〔比較例15〕
滴下漏斗、ジムロート式水冷凝縮器、撹拌機、温度計を備えた300mlの四つ口フラスコを十分窒素置換した。次いで、アリルメタクリレート126.2g(1mol)、塩化白金(VI)酸の2−エチルヘキサノール溶液0.05g(Pt5×10−6molを含む)及び塩化第二銅0.79g(対3−メタクリロキシプロピルトリクロロシラン1mol(261.7g)当たり0.3重量%に相当)を仕込み、凝縮器の通気口に窒素通気をしつつ、110℃までフラスコの内容物を加熱した。次いで、トリクロロシラン135.5g(1mol)を液中にフィードした。ところが、滴下を開始しても発熱は観察されず、トリクロロシランが40g滴下された時点で、あまりに還流が激しくなりすぎたためにそれ以上滴下するのを止めて冷却し、内容物の組成をガスクロマトグラフィーで調べると、ヒドロシリル化反応は全く起こっておらず、原料が回収されたのみであった。
【0077】
〔参考例2〕
3−メタクリロキシプロピルトリクロロシランに、下記の重合禁止剤を5重量%添加し、3日間放置後内容物の組成(目的物近傍に着目)をガスクロマトグラフィーで調べた。
(重合禁止剤)
No.1:2,2−チオ−ジエチレン−ビス〔3−(3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオネート〕
No.2:AO−23
No.3:ビス(3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシベンジル)スルフィド
No.4:2,6−ジ−t−ブチル−4−メチルフェノール
No.5:ジ−t−ブチル−4−ジメチルアミノメチレンフェノール
No.6:2,6−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシメチルフェノール
(結果)
No.1:目的物近傍には重合禁止剤に由来する不純物は検出されなかった。
No.2:目的物近傍に多数の不純物が検出された。
No.3:目的物近傍にキノンメチドが検出された。
No.4:目的物近傍に2,6−ジ−t−ブチル−4−メチルフェノールそのものが検出された。
No.5:目的物近傍にジ−t−ブチル−4−ジメチルアミノメチレンフェノールそのもの及びキノンメチドが検出された。
No.6:目的物近傍にキノンメチド及び2,6−ジ−t−ブチル−4−メチルフェノールが検出された。
【0078】
〔参考例3〕
実施例2と同様の方法(2,2−チオ−ジエチレン−ビス〔3−(3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオネート〕を対3−メタクリロキシプロピルトリクロロシラン1mol(261.7g)当たり0.3重量%に相当する量を使用)を行うことにより得られた粗3−メタクリロキシプロピルトリクロロシランを用いて、既知の常法によりメタノールと連続的に反応させて3−メタクリロキシプロピルトリメトキシシランを合成した。次いで、この粗製物にハイドロキノンモノメチルエーテルを粗製物重量当たり0.1重量%及びジメチルチルジチオカルバミン酸銅を粗製物重量当たり0.3重量%添加し、蒸留精製することにより精3−メタクリロキシプロピルトリメトキシシランを得た。次いで、このものの組成(目的物近傍に着目)をガスクロマトグラフィーで調べた。その結果、目的物近傍には重合禁止剤に由来する不純物は検出されなかった。また、着色はなく無色透明であり、異臭もなかった。

Claims (2)

  1. 下記一般式(II)
    HSiCl 3−n (II)
    (式中、Rは炭素数1〜6の1価炭化水素基を示し、nは1〜3の整数である。)
    で示されるヒドロクロロシランとアリルアクリレート又はアリルメタクリレートとを、白金族触媒及び下記化学式(1)
    Figure 0003555645
    で示される2,2−チオ−ジエチレン−ビス〔3−(3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオネート〕の存在下でヒドロシリル化反応せしめることを特徴とする下記一般式(I)
    Figure 0003555645
    (式中、Rは水素原子又はメチル基を示し、R及びnは上記と同じ意味を示す。)
    で示されるアクリロキシ基又はメタクリロキシ基含有クロロシランの製造方法。
  2. がメチル基である請求項1記載の製造方法。
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