JPH09273081A - 抗菌性アクリル繊維およびその製造方法 - Google Patents

抗菌性アクリル繊維およびその製造方法

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JPH09273081A
JPH09273081A JP24513696A JP24513696A JPH09273081A JP H09273081 A JPH09273081 A JP H09273081A JP 24513696 A JP24513696 A JP 24513696A JP 24513696 A JP24513696 A JP 24513696A JP H09273081 A JPH09273081 A JP H09273081A
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良浩 西原
Hiroshi Hosokawa
宏 細川
Seizo Oishi
清三 大石
Hiroaki Onishi
宏明 大西
Masako Kurokawa
昌子 黒川
Yasuyuki Fujii
泰行 藤井
Hajime Ito
元 伊藤
Naoto Osuga
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Abstract

(57)【要約】 【課題】 抗菌防臭繊維製品に求められる、あらゆる細
菌に対して効果があり、繊維の染色、さらし、柔軟処理
等の後加工や洗濯等の繊維製品が使用環境で受ける処理
により抗菌防臭性能が失活せず、生産から廃棄まで含め
た全過程で有害な物質を生じない抗菌性アクリル繊維と
その製造方法を提供とする。 【解決手段】 全キトサン含有量が0.1〜2.5重量
%、抽出可能なキトサン含有量が0.03重量以上であ
って、全キトサン含有量が抽出可能なキトサン含有量を
上回る抗菌性アクリル繊維およびアクリロニトリル系重
合体溶液を湿式紡糸した乾燥緻密化する以前の糸条をキ
トサン酸性水溶液に浸漬し、続いてアルカリ性水溶液に
より中和したのち、乾燥緻密化する抗菌性アクリル繊維
の製造方法である。

Description

【発明の詳細な説明】
【0001】
【発明の属する技術分野】本発明は人体、環境に悪影響
を与えることなく、衣料、装身具及び資材用途等として
用いることのできる抗菌性アクリル繊維およびその製造
方法に関する。
【0002】
【従来の技術】抗菌性繊維は、雑菌の増殖を抑制し、不
快な異臭の発生を防止する目的で近年広く使用されてお
り、医療用、幼児、老人向け繊維製品として、また最近
では健康と快適を強く求める消費者ニーズを受け、一般
消費者向け製品として市中に広く流通している。
【0003】このような抗菌性繊維には、種々の抗菌剤
が用いられており、繊維製品への抗菌剤の複合処理方法
も様々である。例えば、抗菌剤としては、銀−ゼオライ
ト系を代表とする無機金属系物質を用いる技術(特開平
5−272008号公報等)、銅化合物または銅や亜鉛
などの金属微粉末を繊維中に添加する方法(特開昭55
−115440号公報等)、4級アンモニウム塩誘導体
を用いる方法(特開昭59−130371号公報等)、
トリクロロカルバニリド等のハロジアリル尿素化合物を
用いる方法(特開平2−259169号公報)、その他
の化合物としてサイアベンダゾール系化合物(特開昭6
1−616号公報等)、フェノール系化合物(特開昭6
0−252713号公報等)、脂肪酸エステル系化合物
を用いる方法(特開昭63−6173号公報等)などが
知られている。
【0004】しかしながら、銀、銅化合物を複合化した
繊維は、晒し処理を行うと銀、銅化合物が化学分解し抗
菌性が失われるという問題がある。また、有機合成系化
合物を複合化した繊維は、後加工から廃棄まで含めた使
用環境の条件下で有害物質が生じる可能性を完全に否定
できないという問題点がある。
【0005】こうした背景のもと、最近天然物由来の機
能性付与剤が注目されている。例えば、ヒノキから抽出
されるヒノキチオールは抗菌、防カビ性、防虫等の機能
を持つといわれている。また、甲殻類から得られる天然
多糖類キチンの脱アセチル化物であるキトサンは、抗菌
防臭、MRSAに対する増殖抑制効果、高保湿性、アト
ピー性皮膚炎の予防、改善その他多くの機能を持ち、繊
維に付与して衣類に使用すると快適な感触が得られるこ
とが知られている。
【0006】しかしながら、銀、銅化合物を複合化した
繊維は、晒処理を行うと銀、銅化合物が化学変性し抗菌
性が失われるという問題がある。また、一部の有機合成
化合物を複合化した繊維は後加工から廃棄まで含めた使
用環境の条件下で有害物質が生じる可能性を完全に否定
できないという問題点がある。
【0007】こうした背景のもと、最近天然物由来の機
能性付与剤が注目されている。例えば、ヒノキから抽出
されるヒノキチオールは抗菌、防カビ性、防虫等の機能
を持ち、甲殻類から得られる天然多糖類キチンの脱アセ
チル化物であるキトサンは抗菌防臭、MRSAに対する
増殖抑制効果、高保湿性、アトピー性皮膚炎の予防、改
善その他多くの機能を持ち、繊維に付与して衣類に使用
すると快適な感触が得られることが知られている。
【0008】しかしながら、現在までのキトサン付与抗
菌繊維においては抗菌性と洗濯耐久性の点から考える
と、この2点を同時に完全に満たす抗菌繊維はいまだ開
発されていないのが現状である。その理由は現在のとこ
ろ定かではないが、抗菌性を発現するキトサンの繊維中
における存在状態にあると推定される。
【0009】すなわち抗菌性能を上げるために繊維表面
にのみキトサンが存在すると、洗濯などにより表面の抗
菌剤が脱落し、早期に抗菌性が失われてしまうという問
題があり、耐久性に劣る。
【0010】他方、洗濯耐久性を上げるために繊維断面
の内部にのみキトサンが存在すると、抗菌剤の表面露出
量が少ないため存在量の割に初期から十分な抗菌性能を
発現しないという問題点が生じる。このため、多量に抗
菌剤を付着することによって製造上コスト高、生産性低
下等の問題点が生じるのが現状である。
【0011】このような状況下において本発明者らは上
記の問題を解消し、優れた実用性能を有する抗菌、防臭
繊維を市場に提供すべく研究を行い、抗菌性能が高く、
さらに洗濯耐久性の高い抗菌性アクリル繊維およびその
製造方法を提供するに至った。
【0012】
【発明が解決しようとする課題】そこで、本発明は、抗
菌防臭繊維製品に求められる、あらゆる細菌に対して効
果があり、繊維の染色、さらし、柔軟処理等の後加工や
洗濯、アイロン等の繊維製品が使用環境で受ける処理に
より抗菌性能が失活せず、生産から廃棄まで含めた全過
程で有害な物質を生じない抗菌性アクリル繊維およびそ
の製造方法の提供を課題とする。
【0013】
【課題を解決するための手段】本発明の第1の要旨は、
全キトサン含有量が0.05〜2.5重量%、抽出可能
なキトサン含有量が0.03重量以上であって、全キト
サン含有量が抽出可能なキトサン含有量を上回る抗菌性
アクリル繊維であり、第2の要旨は、アクリロニトリル
系重合体溶液を湿式紡糸した乾燥緻密化する以前の糸条
をキトサン酸性水溶液に浸漬し、続いてアルカリ性水溶
液により中和したのち、乾燥緻密化する抗菌性アクリル
繊維の製造方法である。
【0014】
【発明の実施の形態】本発明の抗菌性アクリル繊維を構
成するアクリロニトリル系重合体は、公知のアクリル繊
維の製造に用いられるものであればなんら限定されるも
のではないが、好ましくはアクリロニトリルを50重量
%以上含有しこれと重合可能な不飽和単量体との共重合
体であることが望ましい。
【0015】本発明において、アクリロニトリル系重合
体とは、アクリロニトリルを50重量%以上含有し、こ
れと重合可能な不飽和単量体とからなるビニル重合体で
ある。アクリロニトリル系重合体中のアクリロニトリル
量が50重量%未満の場合は、アクリル繊維の特長であ
る染色鮮明性、発色性が悪化するとともに、熱特性をは
じめとする他の物性も低下する傾向にある。
【0016】アクリロニトリルと重合可能な不飽和単量
体としてはアクリル酸、メタクリル酸、または、これら
のアルキルエステル類、酢酸ビニル、アクリルアミド、
塩化ビニル、塩化ビニリデン、さらに目的によってはビ
ニルベンゼンスルホン酸ソーダ、メタリルスルホン酸ソ
ーダ、アクリルアミドメチルプロパンスルホン酸ソーダ
等のイオン性不飽和単量体を用いることができる。ま
た、アクリロニトリル単独重合体あるいはこれらの不飽
和単量体との共重合体は公知の重合法で合成することが
できる。
【0017】本発明に用いるキトサンはカニ、エビ等の
甲殻類の外骨格を形成するキチン質から炭酸カルシウ
ム、蛋白質を除去して得られるキチン類を濃アルカリと
加熱して脱アセチル化した塩基性多糖類である。
【0018】本発明において全キトサン含有量は、後述
する測定方法Aにより測定される、繊維中に存在する全
てのキトサン量であり、抽出可能なキトサン含有量は、
測定方法Bにより測定される、酸により容易に抽出し得
るキトサンの量のことをいう。これには繊維表面に存在
するもののアクリロニトリル系重合体との相互作用が弱
く緩やかに拘束されているものと考えられる。
【0019】初期抗菌性能はこの抽出可能なキトサンに
より発現すると推定される。他方、全キトサンのうち抽
出可能なキトサン以外のキトサンは容易に溶出しないた
めに洗濯でも容易に脱落しないが経時的に繊維表面に移
動し長期間にわたり抗菌性を発揮するものと思われる。
【0020】本発明の抗菌性アクリル繊維は、それに付
与されたキトサンがかかる2種類の状態で存在すること
により初期抗菌性と耐久性を同時に有する新規なアクリ
ル繊維となるのである。
【0021】ここで全キトサン含有量は、以下の測定方
法Aで測定する。 1)秤量したキトサン付与アクリル繊維0.2gに70
%塩化亜鉛溶液10mlを添加し、繊維およびキトサン
を溶解する。 2)ジメチルアセトアミド2mlを添加して1時間放置
する。 3)エーリッヒ試薬(p−ジメチルアミノベンズアルデ
ヒドの1%エタノール溶液)1mlを添加する。 4)2時間後に波長435nmで3)の溶液の吸光度を
測定する。 5)検量線からキトサン濃度を求め、アクリル繊維付与
量に換算する。
【0022】また、抽出可能なキトサン含有量は以下の
測定方法Bにより測定する。 1)秤量したキトサン付与アクリル繊維5gを6M塩酸
100mlに浸漬し、沸騰水中で8時間加熱する。 2)アクリル繊維を取り除き、得られたキトサン抽出塩
酸溶液25mlに蒸留水150mlを加えながら減圧下
で濃縮乾固する。 3)乾固物を10%酢酸溶液10mlに溶解し、これに
エーリッヒ試薬(p−ジメチルアミノベンズアルデヒド
の1%エタノール溶液)1mlを添加し5℃で12時間
静置する。 4)波長435nmで3)の溶液の吸光度を測定する。 5)検量線からキトサン濃度を求め、アクリル繊維付与
量に換算する。
【0023】本発明においては、全キトサン含有量が抽
出可能なキトサン含有量を上回ることにより、はじめて
優れた実用性を兼ね備えた抗菌性アクリル繊維を製造工
程上も問題なく工業的有利に製造することができる。
【0024】全キトサン含有量が0.05重量%未満で
は初期抗菌性能、耐久性ともに不十分である。一方、
2.5重量%を超えてそれ以上に増やしても性能の向上
を望めないだけでなく、繊維の染色性の低下、紡糸工
程、紡績工程へのキトサン脱落の増加などの問題が発生
するので好ましくない。抽出可能なキトサン含有量が
0.03重量%以下では初期性能が不足する。
【0025】全キトサン含有量と抽出可能なキトサン含
有量との差は0.03〜0.8重量%の範囲にあること
が好ましい。これが0.03重量%未満では、耐久性が
不足し、0.8重量%を超えると表面に露出するキトサ
ン量が少量となり初期抗菌性能が不十分となる傾向があ
る。
【0026】本発明が優れた抗菌性能と耐久性を発現す
るのは、キトサンの繊維中の存在箇所の違いによってキ
トサンの溶解性が異なり、表面付近のキトサンが高い抗
菌性能を発現し、かつ内部のキトサンが持続して抗菌性
能を示す相乗効果をもたらすものと推察される。
【0027】本発明の抗菌性アクリル繊維は、通常工程
油剤を除去するのに用いる洗浄条件(沸水中30分間洗
浄)経ても低い繊維−繊維間の静摩擦係数を維持してい
る。このことは染色工程、繊維製品となった後の洗濯を
経ても低い繊維−繊維間の静摩擦係数、すなわち柔軟性
が維持されることを意味し、最終繊維製品中にて本発明
の繊維を70重量%以上使用する場合は、アクリル繊維
製品の最終仕上げ工程時に通常使用する柔軟剤量を低く
することが可能となる。
【0028】本発明のアクリル繊維を紡績糸、布帛、不
織布等の繊維複合体としている場合、抗菌性能を得るた
めには、本発明のアクリル繊維が20%重量以上混合さ
れていることが望ましい。本発明のアクリル繊維と混合
する繊維としては、使用目的にあわせて選択すればよく
特に限定しないが、通常のアクリル繊維、綿、ウール、
麻、絹、ポリエステル等公知の繊維が挙げられる。
【0029】次に本発明の抗菌性アクリル繊維を有利に
製造する方法について述べる。本発明の製造方法におい
ては、キトサンが酸の存在下に塩を形成し溶解する性質
を用い、アクリル繊維にキトサンを付与する。
【0030】本発明の抗菌性アクリル繊維の製造方法に
おいては、湿式アクリル繊維製造工程中の乾燥緻密化す
る以前の糸条(凝固糸、洗浄糸、延伸糸)に対してキト
サン酸性水溶液を付与せしめ、必要に応じ中和処理を行
う方法を採用する。この様に乾燥緻密化する以前の糸条
にキトサンを付与せしめることにより、後加工、洗濯等
の使用環境でのキトサンの脱落、キトサンの抗菌性能の
失活を抑制できる。
【0031】ここで凝固糸とは、湿式アクリル繊維製造
工程中で紡浴に紡出されたばかりの糸条である。また、
洗浄糸とは凝固糸に含まれる溶剤を洗浄した糸条のこと
である。更に、延伸糸とは、溶剤を洗浄しながら延伸処
理、或いは溶剤を洗浄した後に延伸処理、また溶剤を含
んだまま延伸処理のいずれかの糸条である。
【0032】以上の乾燥緻密化前の糸条に対して、キト
サン酸性水溶液を付与する方法としては、同水溶液を凝
固槽、延伸槽、洗浄槽、油剤処理槽へ添加する方法、あ
るいは紡糸工程中に独立した処理槽を設ける方法等を選
択できる。
【0033】この時に使用するキトサン酸性水溶液中の
酸の種類は特に限定されないが、塩酸、酢酸、乳酸、蟻
酸等が好適に使用可能である。また、酸の濃度はキトサ
ンが溶解する範囲で低いほどアクリル繊維の着色が抑え
られ好ましく、具体的にはキトサンに対して2倍の濃度
から1/2の濃度(重量%)の範囲、より具体的には
2.5重量%以下の濃度が好ましい。
【0034】キトサン酸性水溶液中のキトサン濃度は、
0.03〜2.5重量%が繊維へのキトサン付与量と乾
燥緻密化以前のアクリル繊維糸条のミクロボイド内への
析出吸着の関係から好ましい。
【0035】必要に応じてキトサン酸性水溶液への浸漬
の後、過剰の酸をアルカリで中和処理するが、このと
き、中和処理する条件としては、中和槽のpHを10以
下に保つのが好ましい。pHが10を越えるとアクリル
繊維が着色する傾向があるためである。中和は水酸化ナ
トリウム、水酸化カリウム、炭酸ナトリウム、炭酸水素
ナトリウム等の水溶液によって行われるが、その方法
は、糸条に対してアルカリ性水溶液を吹き付ける、糸条
をアルカリ性水溶液の浴中に浸漬する等が挙げられるが
特に限定するものではない。
【0036】一方、油剤処理槽へキトサン酸性水溶液を
添加する場合は、油剤成分によりpH低下が抑制される
ので、アルカリによる中和処理は必要ない。
【0037】その他の方法、例えばキトサンを繊維表面
に塗布する後加工法では、全キトサン含有量aと抽出可
能なキトサン含有量bとの差が0となり染色、洗濯耐久
性が劣る。他方キトサン微粉末を紡糸原液に添加する方
法では、抽出可能なキトサン含有量bが0となり、初期
性能が不十分であると同時に、キトサン微粉末がノズル
につまりやすく紡糸性が悪化する傾向にあり好ましい方
法とはいえない。
【0038】上記アクリロニトリル重合体を溶解し、紡
糸する溶剤としては、上記重合体が紡糸可能な濃度に溶
解すればよく特に限定しないが、ジメチルアセトアミ
ド、ジメチルホルムアミド、ジメチルスルホキシド等の
有機溶剤、硝酸、ロダン酸ソーダ、塩化亜鉛等の無機物
の濃厚水溶液が挙げられる。後述する乾燥緻密化前のア
クリル繊維糸条のミクロボイドの形成の点からジメチル
アセトアミド、ジメチルホルムアミド、ジメチルスルホ
キシド等の有機溶剤が好適に用いられる。
【0039】乾燥緻密化する前のアクリル繊維糸条の表
面に空いたミクロボイドや不完全な繊維組織の程度を相
対的に表す指標として後述する測定方法で測定した膨潤
度があるが、この値が30〜200%の乾燥緻密化前ア
クリル繊維糸条に対してキトサン酸性水溶液を付与する
ことが好ましい。この値が30%未満の場合はキトサン
が脱落しやすく、また200%を越えるとキトサン酸付
与量の低下、キトサン酸性水溶液浴中への溶剤、洗浄水
等の持ち込みが多くなり好ましくない。
【0040】本発明のキトサン付与アクリル繊維を紡績
糸、布帛、不織布等の繊維複合体として用いる場合、抗
菌防臭性能を得るためには、キトサン付与アクリル繊維
が20重量%以上混合されていることが好ましい。キト
サン付与アクリル繊維と混合する繊維としては、使用目
的にあわせて選択すればよく特に限定しないが、通常の
アクリル繊維、綿、ウール、麻、絹、ポリエステル等公
知の繊維が挙げられる。
【0041】
【実施例】以下、実施例により本発明を具体的に説明す
る。 (乾燥緻密化前のアクリル繊維糸条の膨潤度の測定)紡
糸工程より採取した乾燥緻密化前のアクリル繊維糸条を
1000Gの加速度の下で10分間脱水した後の重量W
1,その後、110℃で3時間熱風乾燥した後の重量W2
から下式を用いて算出した。 (膨潤度)=[(W1−W2)/W2]×100 (%)
【0042】(重合体の還元粘度)還元粘度ηredは、
ジメチルホルムアミドを溶剤とした濃度0.5重量%の
重合体溶液の粘度を25℃においてキャノンフェンスケ
粘度計を用いて測定した。
【0043】(全キトサン含有量の測定 A法) 1)秤量したキトサン付与アクリル繊維0.2gに70
%塩化亜鉛溶液10mlを添加し、繊維およびキトサン
を溶解した。 2)ジメチルアセトアミド2mlを添加して1時間放置
した。 3)エーリッヒ試薬(p−ジメチルアミノベンズアルデ
ヒドの1%エタノール溶液)1mlを添加した。 4)2時間後に波長435nmで3)の溶液の吸光度を
測定した。 5) 検量線からキトサン濃度を求め、アクリル繊維付
与量に換算した。
【0044】(抽出可能なキトサン含有量の測定 B
法) 1)秤量したキトサン付与アクリル繊維5gを6M塩酸
100mlに浸漬し、沸騰水中で8時間加熱した。 2)アクリル繊維を取り除き、得られたキトサン抽出塩
酸溶液25mlに蒸留水150mlを加えながら減圧下
で濃縮乾固した。 3)乾固物を10%酢酸溶液10mlに溶解し、これに
エーリッヒ試薬(p−ジメチルアミノベンズアルデヒド
の1%エタノール溶液)1mlを添加し5℃で12時間
静置した。 4)波長435nmで3)の溶液の吸光度を測定した。 5)検量線からキトサン濃度を求め、アクリル繊維付与
量に換算した。
【0045】(抗菌性能測定)繊維製品衛生加工協議会
で定めた菌数測定法により黄色ブドウ状球菌による菌数
増減値差を求めた。菌数増減値差1.6以上を抗菌性有
効の基準とした。なお、洗濯方法は同協議会で定めた方
法に従った。
【0046】(繊維−繊維間の静摩擦係数)レーダー法
繊維摩擦係数測定機(興亜商会製)を使用して繊維ー繊
維間の静摩擦係数を測定した。
【0047】(実施例1〜7、比較例1、2)水系懸濁
重合法により還元粘度1.95のアクリロニトリル系共
重合体(アクリロニトリル/酢酸ビニル=93/7重量
比)を得た。これをジメチルアセトアミドに共重合体濃
度が25重量%となるように溶解し紡糸原液とした。こ
の紡糸原液を40℃、30重量%ジメチルアセトアミド
水溶液を満たした紡糸浴中に湿式紡糸し、沸水中で溶剤
を洗浄しながら5倍延伸を施した後の膨潤度80%の延
伸糸を引き続きキトサン(共和テクノス株式会社フロー
ナックC)0.1重量%酢酸0.1重量%水溶液を満た
した浴に導き、脱水した後、0.1重量%水酸化ナトリ
ウム水溶液中で中和(pH8.3)した。
【0048】その後、過剰の水酸化ナトリウムを洗浄、
油剤を付着せしめた後150℃の熱ローラーで乾燥緻密
化を行った。さらに2.5kg/cm2の加圧スチーム
中で緩和延伸処理を行い、単繊維繊度2デニールのアク
リル繊維を得た。このとき、脱水の際の繊維重量に対す
る付着水分量をかえて、表1に示したアクリル繊維とし
た。
【0049】この繊維を51mm長にカットし、紡績糸
を作製した。この紡績糸50g、染料(保土ヶ谷化学株
式会社カロチン blue KGLH)0.25g、酢
酸1g、酢酸ナトリウム0.25gを 純水1000g
中に添加し100℃まで昇温し、100℃で30分保持
した後、水洗、脱水、乾燥する、カチオン染色を行っ
た。染色後の紡績糸に対し洗濯前、洗濯10回後の抗菌
性を評価した。また、同上の紡績糸を定法に従って塩素
晒しした後、洗濯前、洗濯10回後の抗菌性を評価し合
わせて表1に示した。
【0050】(実施例8)キトサンの酢酸水溶液浴、水
酸化ナトリウム水溶液浴に通すかわりに、洗浄延伸した
繊維をキトサン濃度0.1重量%、酢酸濃度0.1重量
%となるようにキトサン酸性水溶液を添加した油浴処理
槽中のに通した後、油浴出の繊維の保有水分率が100
%となるよう脱水し、150℃の熱ローラーで乾燥を行
ったほかは、実施例1と同様に操作し、全キトサン含有
量1.0重量%、抽出可能なキトサン含有量0.05重
量%のアクリル繊維を得た。実施例1と同様にして紡績
糸を作製し抗菌性等を評価した。結果を表1に併せて示
した。 (比較例3)実施例1において、キトサンの酢酸水溶液
浴、水酸化ナトリウム水溶液浴に通さずに緩和熱処理前
の乾燥糸、単繊維繊度2dのアクリル繊維を得た。この
繊維にキトサン0.1重量%、酢酸0.1重量%水溶液
を塗布し、付着せしめた後、150℃のローラーで乾燥
を行い、キトサン付着量(A法)1.0重量%、(B
法)1.0重量%のアクリル系繊維を得た。実施例1と
同様にして紡績糸を作製し抗菌性等を評価した。結果を
表1に併せて示した。
【0051】
【表1】
【0052】(実施例9〜14、比較例4、5)実施例
2、3で得られた51mmにカットしたアクリル繊維を
アクリル原綿と混合して紡績糸を作製した。実施例1と
同じ条件でカチオン染色した後、洗濯前、洗濯10回後
の抗菌性を評価した。結果を表2に示した。
【0053】
【表2】
【0054】(実施例15〜17、比較例6)実施例2
で得られた51mm長にカットしたアクリル繊維を綿と
混合して紡績糸を作製した。実施例1と同じ条件でカチ
オン染色した後、洗濯前、洗濯10回後の抗菌性を評価
した。
【0055】
【表3】
【0056】(実施例17)共重合体濃度を20重量%
に変更し、紡糸浴中への吐出量を変更した他は、実施例
2と同様な操作を行い単繊維繊度0.9dのキトサン付
与アクリル繊維を得た。これを8mm長にカットした
後、同量の単繊維繊度0.5d繊維長6mmの通常の
(キトサンを付与していない)アクリル繊維と混合し、
定法により不織布を作製した。 実施例1と同じ条件で
カチオン染色した後、洗濯前、洗濯10回後の抗菌性を
評価したところ、洗濯前、洗濯10回後の菌数増減値差
は、それぞれ4.3、3.9であった。
【0057】(実施例18)紡糸孔の形を変更した他
は、実施例2と同様な操作を行い、キトサン付与量0.
06重量%、扁平率(繊維断面の縦横比)10、単線繊
度10dのキトサン付与アクリル繊維を得た。これを5
1mm長にカットした後、同量のパイル用の単繊維繊度
7d、繊維長51mmのアクリル繊維を混綿し、太さ1
0g/mのスライバーを作製した。このスライバーをス
ライバーニッティング機によりスライバーニッティング
に加工し、ポリッシャー処理を行い、目付700g/m
2、パイル長18mmのハイパイルを得た。定法でカチ
オン染料を用いたプリント染色を行い、抗菌性能を測定
したところ、菌数増減値差は、3.8であった。
【0058】
【発明の効果】本発明による抗菌性アクリル繊維は、抗
菌防臭繊維製品に求められる、あらゆる細菌に対して効
果があり、繊維の染色、さらし、柔軟処理等の後加工や
洗濯、アイロン等の繊維製品が使用環境で受ける処理に
より抗菌防臭性能が失活せず、生産から廃棄まで含めた
全過程で有害な物質を生じない。また、本発明の抗菌性
与アクリル繊維の製造方法は、上記の繊維を効率よく製
造することができる。
───────────────────────────────────────────────────── フロントページの続き (72)発明者 大西 宏明 広島県大竹市御幸町20番1号 三菱レイヨ ン株式会社大竹事業所内 (72)発明者 黒川 昌子 広島県大竹市御幸町20番1号 三菱レイヨ ン株式会社中央技術研究所内 (72)発明者 藤井 泰行 広島県大竹市御幸町20番1号 三菱レイヨ ン株式会社中央技術研究所内 (72)発明者 伊藤 元 広島県大竹市御幸町20番1号 三菱レイヨ ン株式会社中央技術研究所内 (72)発明者 大須賀 直人 広島県大竹市御幸町20番1号 三菱レイヨ ン株式会社中央技術研究所内

Claims (5)

    【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】 全キトサン含有量が0.05〜2.5重
    量%、抽出可能なキトサン含有量が0.03重量以上で
    あって、全キトサン含有量が抽出可能なキトサン含有量
    を上回る抗菌性アクリル繊維。
  2. 【請求項2】 全キトサン含有量と抽出可能なキトサン
    含有量との差が0.03〜0.8重量%である請求項1
    記載の抗菌性アクリル繊維。
  3. 【請求項3】 アクリロニトリル系重合体溶液を湿式紡
    糸した乾燥緻密化する以前の糸条をキトサン酸性水溶液
    に浸漬し、続いてアルカリ性水溶液により中和したの
    ち、乾燥緻密化する抗菌性アクリル繊維の製造方法。
  4. 【請求項4】 乾燥緻密化する以前の糸条の膨潤度が3
    0〜200%である請求項3記載の抗菌性アクリル繊維
    の製造方法。
  5. 【請求項5】 乾燥緻密化する以前の糸条をキトサン酸
    性水溶液に浸漬したのち、保水率50〜200%に絞る
    請求項3または4記載の抗菌性アクリル繊維の製造方
    法。
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