JP3544825B2 - 抗菌性アクリル繊維及びその製造方法 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は衣料、インテリア及び資材用途等として用いることのできる抗菌性アクリル繊維及びその製造方法に関する。
【0002】
【従来の技術】
抗菌性繊維は、雑菌の増殖を抑制し、不快な異臭の発生を防止する目的で近年広く使用されており、衣料用、幼児、老人向け繊維製品として、また最近では健康と快適を強く求める消費者ニーズを受け、一般消費者向け製品として市中に広く流通している。
【0003】
このような抗菌性繊維には、種々の抗菌剤が用いられており、繊維製品への抗菌剤の複合処理方法も様々である。例えば、抗菌剤としては、銀−ゼオライト系を代表とする無機金属系物質を用いる技術(特開平5−272008号公報等)、銅化合物又は銅や亜鉛などの金属微粉末を繊維中に添加する方法(特開昭55−115440号公報等)、4級アンモニウム塩を誘導体を用いる方法(特開昭59−130371号公報)、トリクロロカルバニリド等のハロジアリル尿素化合物を用いる方法(特開平2−259169号公報)、その他の化合物としてサイアベンダゾール系化合物(特開昭61−616号公報)、フェノール系化合物(特開昭60−252713号公報等)、脂肪酸エステル系化合物を用いる方法(特開昭63−6173号公報等)などが知られている。
【0004】
しかしながら、銀、銅化合物を複合化した繊維は、晒し処理を行うと銀、銅化合物が変性し抗菌性が失われるという問題がある。
【0005】
こうした背景のもと、最近天然抗菌剤の機能性付与剤が注目されている。
例えば、青森ヒバや台湾ヒノキから抽出されるヒノキチオールは抗菌、防カビ性、防虫等の機能を持ち、甲殻類等から得られる天然多糖類キチンの脱アセチル化物であるキトサンは抗菌防臭、MRSA等に対する増殖抑制効果、高保湿性、アトピー性皮膚炎の予防、改善その他多くの機能を有すると言われ、繊維に付与して衣類に使用すると快適な感触が得られるという事例が知られている。
【0006】
キトサンをアクリル繊維に付与する方法としては、接着剤を用いる方法、キトサン微粉末を紡糸原液に練り込む方法、キトサンの酸性溶液で処理する方法等が知られている。しかしながら、キトサンを接着剤を用いて繊維に付与しようとするとキトサンの凝集作用で接着剤が凝集硬化してしまったり、またキトサン本来の機能を発現させようとすると接着剤の量が限定されることにより洗濯耐久性に劣る。また、キトサンを微粉末に粉砕してアクリロニトリル系重合体溶液に均一分散し公知の方法で紡糸しようとしても紡糸口金の紡糸孔に詰まる等の理由により生産性よく紡糸することは困難である。
【0007】
さらにアクリル繊維をキトサン酸性溶液に浸漬し、引き続いてアルカリ浴で中和して繊維表面に析出させる方法で得られたキトサン付与アクリル繊維の抗菌性能は、染色、柔軟処理等の後加工や洗濯により容易に失われる。
【0008】
【発明が解決しようとする課題】
そこで、本発明は、抗菌繊維製品に求められる、多くの細菌に対して効果があり、繊維の染色、晒し、柔軟処理等の後加工や洗濯、アイロン等の繊維製品が使用環境で受ける様々な処理による抗菌防臭性低下を回避し、かつ生産から廃棄まで含めた全過程で有害な物質を生じない抗菌アクリル繊維及びその製造方法を提供することを課題とする。
【0009】
【課題を解決するための手段】
本発明は、キトサン含有量が0.05〜2重量%、第四級アンモニウム塩含有量がキトサン含有量を上回り、3重量%以下の範囲にあることを特徴とする抗菌性アクリル繊維を第一の要旨とする。
【0010】
また、アクリロニトリル系重合体を溶剤に溶解した重合体溶液を、湿式紡糸し乾燥緻密化する以前の糸条を、キトサンと第四級アンモニウム塩の混合溶液に浸漬するか、キトサンと第四級アンモニウム塩溶液に順次浸漬し、その後乾燥緻密化することを特徴とする抗菌性アクリル繊維の製造方法を第二の要旨とする。
【0011】
【発明の実施の形態】
本発明において、アクリロニトリル系重合体とは、アクリロニトリル単位を50重量%以上含有し、これと共重合可能な不飽和単量体単位とからなるビニル重合体である。アクリロニトリル系重合体中のアクリロニトリル単位の量が50重量%未満の場合は、アクリル繊維の特徴である染色鮮明性、発色性が悪化するとともに、熱特性をはじめとする他の物性も低下する。
【0012】
アクリロニトリルと共重合可能な不飽和単量体としては、アクリル酸、メタクリル酸、又はこれらのアルキルエステル類、酢酸ビニル、アクリルアミド、塩化ビニル、塩化ビニリデン、さらに目的によってはビニルベンゼンスルホン酸ソーダ、メタリルスルホン酸ソーダ、アリルスルホン酸ソーダ、アクリルアミドメチルプロパンスルホン酸ソーダ、ソディウムパラスルホフェニールメタリルエーテル等のイオン性不飽和単量体を用いることができる。
【0013】
本発明に用いるキトサンは、例えばカニ、エビ等の甲殻類の外骨格を形成するキチン質から炭酸カルシウム、タンパク質を除去して得られるキチンを濃アルカリと加熱して脱アセチル化した塩基性多糖類である。
【0014】
本発明の抗菌性アクリル繊維のキトサン含有量としては、後述の測定方法で測定した含有量で0.05〜2重量%の範囲であることが、抗菌防臭性と染色性、柔軟性の両立の点から必要である。キトサン含有量が0.05重量%未満の場合、十分な柔軟性と抗菌性が発現しないし、2重量%を超える場合は染色性の低下、あるいは紡績工程でのキトサン脱落による操業性の悪化が発生する。特にアクリル繊維の長所である発色鮮明性を維持するためには、キトサン含有量が0.05重量%〜1重量%の範囲が特に好ましい。
【0015】
本発明において、キトサン含有量と称するのは実施例のところに述べた方法により測定したのもである。
【0016】
本発明の抗菌性アクリル繊維はキトサンとともに第四級アンモニウム塩を繊維に含有していることが必要である。驚くべきことに、この構成によりキトサンを含有することによって得られる柔軟性が恒久的なものとなる。第四級アンモニウム塩の含有量は、キトサン含有量を上回り、3重量%以下であることが必要である。第四級アンモニウム塩の含有量がキトサン含有量未満では、柔軟性が低くなると共に、キトサンと第四級アンモニウム塩の混合溶液に浸漬する製造工程時においてはキトサンの分散安定化、乾燥緻密化時の繊維の膠着抑制等の効果が低くなる。又、3重量%を超えると、染色性の低下、あるいは紡績工程での第四級アンモニウム塩の脱落による操業性悪化の原因となる。
【0017】
キトサンと第四級アンモニウム塩の併用は、キトサンと第四級アンモニウム塩の混合溶液に浸漬する製造工程においては、キトサンの安定分散化を維持し、さらに乾燥緻密化工程で繊維の膠着防止が可能となる利点も有する。
【0018】
特に、キトサンによる抗菌性能を染色、晒し等の後加工時、あるいは洗濯処理時においても維持し、製造工程でキトサンの安定分散化を容易にするためには、一般式が
【0019】
[R1R2(CH3)2N]+X-
(但し、R1、R2は炭素数8〜18の同一又は異なるアルキル基、X-はハロゲンイオン、有機酸アニオン又はオキソ酸イオンを示す。)の第四級アンモニウム塩の使用が好ましい。ここで有機酸アニオンはカルボキシレート、スルホネート、サルフェート、ホスフェート及びホスホネートの群から選ばれる1種以上のものであり、特にカルボキシレートとサルフェートが好ましい。有機酸アニオンを用いると、他のアニオンを用いた場合に繊維上に付着したハロゲンイオンやオキソ酸イオンによって引き起こされる紡績工程等の後工程での発錆の問題を抑制できる点で有利である。
【0020】
このような第四級アンモニウム塩としては、塩化ジデシルジメチルアンモニウム、塩化ジヒドロキシエチルデシルエチルアンモニウム、N−ヒドロキシエチルN,N−ジメチルN−ステアリルアミドエチルアンモニウムエチルスルホネート、ジデシルジメチルアンモニウムアジペート、ジデシルジメチルアンモニウムグルコネート等が好ましく用いられる。
【0021】
本発明の抗菌性アクリル繊維は、沸水中30分処理により工程油剤を除去しても低い繊維−繊維間の静摩擦係数を維持している。このことは染色工程、繊維製品となった後の洗濯を経ても低い繊維−繊維間の静摩擦係数、すなわち柔軟性が維持されることを意味し、最終繊維製品中にて本発明の繊維を70重量%以上使用する場合は、アクリル繊維製品の最終仕上げ工程時に通常使用する柔軟剤量を低くすることが可能となる。
【0022】
本発明の抗菌性アクリル繊維を紡績糸、布帛、不織布等の繊維複合体として用いる場合、抗菌性能と柔軟性を得るためには、本発明の抗菌性アクリル繊維が70重量%以上混合し、抗菌性のみを得るためには20重量%以上混合されていることが好ましい。本発明の抗菌性アクリル繊維と混合する繊維としては、使用目的に合わせて選択すればよく特に限定しないが、通常のアクリル繊維、綿、レーヨン、ウール、麻、絹、ポリエステル等公知の繊維が挙げられる。
【0023】
次に本発明の抗菌性アクリル繊維の製造方法について説明する。
上記のアクリロニトリル系重合体を溶解し、紡糸する溶剤としては、上記重合体が紡糸可能な濃度に溶解すればよく特に限定しないが、ジメチルアセトアミド、ジメチルホルムアミド、ジメチルスルホキシド等の有機溶剤、硝酸、ロダン塩ソーダ、塩化亜鉛等の無機物の濃厚水溶液が挙げられる。後述する乾燥緻密化前のアクリル繊維糸条のミクロボイド形成の点からジメチルアセトアミド、ジメチルホルムアミド、ジメチルスルホキシド等の有機溶剤が好適に用いられる。
【0024】
本発明においては、乾燥緻密化する前の凝固糸、洗浄糸、延伸糸と呼ばれる段階のアクリル繊維に、キトサンが酸の存在下に塩を形成し溶解する性質を用いて、キトサンとともに第四級アンモニウム塩を付与することが、後加工、洗濯等の使用環境でのキトサン脱落、キトサンの抗菌防臭性能の失活を抑制する上で必要である。本発明のアクリル繊維に付与されたキトサン、第四級アンモニウム塩の多くは、乾燥緻密化以前のアクリル繊維糸条に存在するミクロボイドや繊維組織中の比較的ルーズな部分に取り込まれ析出することにより脱落、失活が抑制され、抗菌防臭性が持続するものと推定される。
【0025】
乾燥緻密化以前のアクリル繊維糸条をキトサンと第四級アンモニウム塩の混合溶液に浸漬する方法は、工程を簡略化し、キトサン溶液の安定性の点で有利で、キトサン溶液と第四級アンモニウム塩溶液に順次浸漬する方法は工程管理を容易にすると同時に、キトサンの繊維中への含浸程度を独立して制御できるという点で有利である。
【0026】
第四級アンモニウム塩溶液の槽は、アクリル繊維の工程油剤処理槽と独立に設けることもできるし、工程油剤処理槽と兼ねても良い。第四級アンモニウム塩溶液に工程油剤を添加し、乾燥緻密化前のアクリル繊維糸条を処理することには、恒久的な柔軟性がさらに顕著となるので好ましい。
【0027】
キトサンを酸性水溶液に溶解するときの濃度としては、5重量%以下が容易に溶解できるので好ましい。酸の種類は特に限定しないが、塩酸、酢酸、乳酸、蟻酸等が好適に使用可能である。また、酸の濃度は、紡糸工程の腐食の問題からキトサンが溶解する範囲で低い程好ましい。
【0028】
本発明では第四級アンモニウム塩のほかにカチオン系又はノニオン系界面活性剤を併用することができる。
【0029】
【実施例】
以下の実施例により、本発明を更に具体的に説明する。なお、実施例において「重量%」は単に「%」と表示した。
(キトサン含有量の測定法)
1)秤量したアクリル繊維0.2gに70%塩化亜鉛溶液10mlを添加し、繊維を溶解した。
2)ジメチルアセトアミド2mlを添加して1時間放置した。
【0030】
3)エーリッヒ試薬(p−ジメチルアミノベンズアルデヒドの1%エタノール溶液)1mlを添加した。
4)2時間後に波長435nmで3)の溶液の吸光度を測定した。
5)検量線からキトサン濃度を求め、アクリル繊維含有量に換算した。
【0031】
(第四級アンモニウム塩含有量の測定法)
アクリル繊維をDMSO−d6中に4%となるように溶解し、1H−NMRを測定し、アクリロニトリル系重合体由来のピークと第四級アンモニウム塩由来のピークの面積比から繊維中の含有量を求めた。
【0032】
(重合体の還元粘度)
アクリニトリル系重合体の還元粘度ηredは、アクリニトリル系重合体をジメチルホルムアミドに0.5%となるよう溶解した重合体溶液の粘度を25℃においてキャノンフェンスケ粘度計を用いて測定した。
【0033】
(抗菌性能測定)
繊維製品衛生加工協議会で定めた菌数測定法により、黄色ブドウ状球菌による菌数増減値差を求めた。菌数増減値差1.6以上を抗菌性有効の基準とした。尚、洗濯方法は同協議会で定めた方法に従った。
【0034】
(繊維−繊維間の静摩擦係数)
レーダー法繊維摩擦係数測定機(興亜商会製)を使用して繊維−繊維間の静摩擦係数を測定した。
【0035】
(実施例1)
水系懸濁重合法により還元粘度1.96のアクリロニトリル系重合体(アクリロニトリル/酢酸ビニル=93/7重量比)を得た。これをジメチルアセトアミドに共重合体濃度が25%となるように溶解し紡糸原液とした。
【0036】
この紡糸原液を40℃、30%ジメチルアセトアミド水溶液を満たした紡糸浴中に湿式紡糸し、沸水中で溶剤を洗浄しながら5倍延伸を施した後、引き続き、キトサン(共和テクノス株式会社フローナックC)0.1%、酢酸0.05%、界面活性剤としてポリオキシエチレン(重合度200)0.3%、第四級アンモニウム塩として塩化ジデシルジメチルアンモニウム0.35%を分散した工程油剤を付与する油浴中に導き、繊維重量に対する付着水分量が100%となるように脱水した。その後、150℃の熱ローラーで乾燥緻密化を行った。
【0037】
さらに2.5kg/cm2の加圧スチームの中で緩和処理を行い、単繊維繊度3デニールのキトサン処理アクリル繊維を得た。本繊維中の付着キトサン量と第四級アンモニウム塩量を前記の方法で測定したところ0.08%と0.33%であった。また、油浴槽でのキトサンの分離、乾燥緻密化工程での繊維の膠着は認められなかった。
【0038】
この繊維を浴比1:50の沸水中で30分処理、水洗、風乾後の繊維−繊維間の静摩擦係数を測定したところ0.285であった。
【0039】
またこの繊維を51mm長にカットし、紡績糸を作製した。この紡績糸50g、染料(保土ヶ谷化学株式会社カチロンblue KGLH)0.25g、酢酸1g、酢酸ナトリウム0.25gを純水1000g中に添加し100℃まで昇温し、その温度℃で30分保持した後、水洗、脱水、乾燥した。染色後の紡績糸に対し肉眼判定で発色鮮明性を評価すると同時に、洗濯前、洗濯10回後の抗菌性を評価した。結果は表1のとおりであった。
【0040】
(実施例2〜4、比較例1〜3)
実施例1において、油浴槽中のキトサン濃度、酢酸濃度、界面活性剤濃度、キトサン酸性水溶液浸漬後の付着水分率を段階的に変更し、キトサン含有量、塩化ジデシルジメチルアンモニウム含有量の異なるアクリル繊維を得た。いずれも、油浴槽でのキトサンの分離、乾燥緻密化工程での繊維の膠着は認められなかった。実施例1と同様に操作して、繊維−繊維間の静摩擦係数、抗菌性を評価した結果、表1のとおりであった。
キトサン含有量2.4%、塩化ジデシルジメチルアンモニウム含有量2.88%原綿(比較例2)とキトサン含有量0.4%、塩化ジデシルジメチルアンモニウム含有量3.25%原綿(比較例3)は紡糸乾燥ローラーと、紡績工程へのキトサン(比較例2)あるいは塩化ジデシルジメチルアンモニウム(比較例3)付着が大であり、紡績糸を得ることは出来なかった。
【0041】
(比較例4)
界面活性剤としてポリオキシエチレン濃度0.2%、塩化ジメチルジデシルアンモニウム濃度0.2%のみからなりキトサンを含まない油浴槽で処理するほかは実施例1と同様に操作して、単繊維繊度3デニールのアクリル繊維を得た。実施例1と同様に測定した繊維−繊維間の静摩擦係数は0.455であった。
【0042】
この繊維を実施例と同様な操作を行って染色した紡績糸とした後、染色後洗濯前、洗濯10回後の抗菌性を評価した結果、表1に示した通り抗菌性は発現しなかった。
【0043】
(実施例5)
実施例1で得られたアクリル繊維30%と綿70%を混合して紡績糸を作製した。実施例1と同じ条件でカチオン染色した後、洗濯前、洗濯10回後の抗菌性を評価したところそれぞれ2.8と1.9であった。
【0044】
(実施例6)
油浴中の第四級アンモニウム塩と界面活性剤を塩化ジヒドロキシエチルデシルエチルアンモニウムの濃度0.3%、ポリオキシエチレン(重合度200)の濃度0.3%とした以外は実施例1と同様にしてアクリル繊維を得た。キトサン含有量は0.09%、塩化ジヒドロキシエチルデシルエチルアンモニウムの含有量は0.29%であった。また繊維−繊維間の静摩擦係数は0.320、抗菌性は洗濯前2.8、洗濯10回後は2.2であった。
【0045】
(実施例7)
油浴中の第四級アンモニウム塩と界面活性剤をN−ヒドロキシエチルN,N−ジメチルN−ステアリルアミドエチルアンモニウムエチルスルホネートの濃度0.4%、エチレンオキサイドプロピレンオキサイドブロックポリエーテル(エチレンオキサイド/プロピレンオキサイド=40/60、分子量5000)の濃度0.2%とした以外は実施例1と同様にしてアクリル繊維を得た。原綿中のキトサン含有量は0.09%、N−ヒドロキシエチルN、N−ジメチルN−ステアリルアミドエチルアンモニウムエチルスルホネートの含有量は0.38%であった。また繊維−繊維間の静摩擦係数は0.290、抗菌性は洗濯前2.6、洗濯10回後は2.0であった。
【0046】
(実施例8)
油浴中のキトサン(共和テクノス株式会社フローナックC)濃度0.1%、酢酸濃度0.05%、塩化ジデシルジメチルアンモニウム濃度0.35%に設定し、また工程油剤処理槽中のエチレンオキサイドプロピレンオキサイドブロックポリエーテル(エチレンオキサイド/プロピレンオキサイド=40/60、分子量5000)の濃度を0.2%した以外は実施例1と同様にして、アクリル繊維を得た。キトサン含有量は0.09%、塩化ジデシルジメチルアンモニウム付着量は0.32%であった。また、繊維−繊維間の静摩擦係数は0.295、抗菌性は洗濯前5.0、洗濯10回後4.8であった。
【0047】
(比較例5)
油浴中の界面活性剤をポリオキシエチレン(重合度200)の濃度0.5%とし、第四級アンモニウム塩を添加しない他は実施例1と同様にしてアクリル繊維を得た。キトサン含有量は0.09%であった。しかし繊維−繊維間の静摩擦係数は0.410であり、原綿の膠着が多く紡績糸を得ることはできなかった。
【0048】
(実施例11)
実施例1の「キトサン(共和テクノス株式会社フローナックC)0.1%、酢酸0.05%、界面活性剤としてポリオキシエチレン(重合度200)0.3%、第四級アンモニウム塩として塩化ジデシルジメチルアンモニウム0.35%を分散した工程油剤を付与する油浴中に導」く代わりに、「キトサン(共和テクノス株式会社フローナックC)0.1%、酢酸0.05%の浸漬漕に導入した後、界面活性剤としてポリオキシエチレン(重合度200)0.3%、第四級アンモニウム塩として塩化ジデシルジメチルアンモニウム0.35%を分散した工程油剤を付与する油浴中に導」き、アクリル繊維を得た。実施例1と同様にして、繊維−繊維間の静摩擦係数、抗菌性を評価した結果、表1のとおりであった。
【0049】
(実施例12〜14、比較例6、7)
実施例11においてキトサン溶液漕のキトサン濃度及び油浴槽中の塩化ジデシルジメチルアンモニウムの濃度段階的に変更し、キトサンと塩化ジデシルジメチルアンモニウムを含有するアクリル繊維を得た。実施例1と同様にして、繊維−繊維間の静摩擦係数、抗菌性を評価した結果、表1のとおりであった。
キトサン含有量2.48%、塩化ジデシルジメチルアンモニウム含有量2.96%の原綿(比較例6)は紡糸乾燥ローラーと、紡績工程へのキトサン付着が大であり紡績糸を得ることはできなかった。
【0050】
(比較例8)
キトサン溶液漕を介さず、界面活性剤としてポリオキシエチレン濃度0.2%、塩化ジデシルジメチルアンモニウム濃度0.2%とからなる油浴槽で処理する他は実施例11と同様に操作して、単繊維繊度3デニールのアクリル繊維を得た。実施例1と同様にして、測定した繊維−繊維間の静摩擦係数は0.446であった。
【0051】
この繊維を実施例1と同様に操作して、染色した紡績糸とした後、洗濯前、洗濯10回後の抗菌性を評価した結果、表1のとおり抗菌性は発現しなかった。
【0052】
(実施例15)
実施例11で得られたアクリル繊維30%と綿70%を混合して紡績糸を作製した。実施例1と同じ条件でカチオン染色した後、洗濯前、洗濯10回後の抗菌性を評価したところ、それぞれ3.1、2.4であった。
【0053】
(実施例16)
実施例11において、油浴中の第四級アンモニウム塩と界面活性剤を塩化ジヒドロキシエチルデシルエチルアンモニウム濃度0.3%、ポリオキシエチレン(重合度200)濃度0.3%とした以外は実施例11と同様にしてアクリル繊維を得た。原綿中のキトサン含有量は0.1%、塩化ジヒドロキシエチルデシルエチルアンモニウム含有量は0.29%であった。また繊維−繊維間の静摩擦係数は0.334、抗菌性は洗濯前4.26、洗濯10回後は3.5であった。
【0054】
(実施例17)
実施例11において、油浴中の第四級アンモニウム塩と界面活性剤をN−ヒドロキシエチルN,N−ジメチルN−ステアリルアミドエチルアンモニウムエチルスルホネートの濃度0.4%、エチレンオキサイドプロピレンオキサイドブロックポリエーテル(エチレンオキサイド/プロピレンオキサイド=40/60、分子量5000)の濃度0.2%とした以外は実施例11と同様にしてアクリル繊維を得た。原綿中のキトサン含有量は0.1%、N−ヒドロキシエチルN、N−ジメチルN−ステアリルアミドエチルアンモニウムエチルスルホネートの含有量は0.40%であった。また繊維−繊維間の静摩擦係数は0.298、抗菌性は洗濯前3.2、洗濯10回後は2.3であった。
【0055】
(実施例18)
実施例11において、油浴中のキトサン(共和テクノス株式会社フローナックC)濃度を0.1%、酢酸濃度を0.05%、塩化ジデシルジメチルアンモニウム濃度を0.35%にそれぞれ設定し、また工程油剤処理漕中のエチレンオキサイドプロピレンオキサイドブロックポリエーテル(エチレンオキサイド/プロピレンオキサイド=40/60、分子量5000)の濃度を0.2%とした以外は実施例11と同様にして、アクリル繊維を得た。キトサン含有量は0.1%、塩化ジヒドロキシエチルデシルエチルアンモニウム含有量は0.32%であった。また繊維−繊維間の静摩擦係数は0.295、抗菌性は洗濯前5.0、洗濯10回後は4.8であった。
【0056】
(比較例9)
実施例11において、油浴中の界面活性剤をポリオキシエチレン(重合度200)の濃度0.5%とし、第四級アンモニウム塩を添加しない他は実施例11と同様にしてアクリル繊維を得た。キトサン含有量は0.09%であった。しかし繊維−繊維間の静摩擦係数は0.410であり、原綿の膠着が多く紡績糸を得ることはできなかった。
【0057】
(実施例19)
実施例11において、油浴中の第四級アンモニウム塩をジデシルジメチルアンモニウムアジペート濃度0.4%とした以外は実施例11と同様にしてアクリル繊維を得た。キトサン含有量は0.1%、ジデシルジメチルアンモニウムアジペート含有量は0.39%であった。また繊維−繊維間の静摩擦係数は0.287、抗菌性は洗濯前4.8、洗濯10回後4.4であった。
【0058】
(実施例20)
実施例11において、油浴中の第四級アンモニウム塩をジデシルジメチルアンモニウムグルコネート濃度0.5%とした以外は実施例11と同様にしてアクリル繊維を得た。キトサン含有量は0.1%、ジデシルジメチルアンモニウムグルコネート含有量は0.47%であった。また繊維−繊維間の静摩擦係数は0.269、抗菌性は洗濯前5.2、洗濯10回後4.5であった。
【0059】
【表1】
【0060】
【発明の効果】
本発明によれば、繊維の染色、晒等の後加工や洗濯、アイロンなど繊維製品が使用環境でうける処理に対して抗菌性能が低下しないアクリル繊維が得られる。また、柔軟性を有するため、最終繊維製品中に本発明の繊維を70%以上使用する場合は、最終仕上げ工程で使用する柔軟処理剤の使用量を大幅に減少することができる。また、本発明の製造方法によれば、前記の繊維を効率よく製造することができる。
Claims (6)
- キトサン含有量が0.05〜2重量%、第四級アンモニウム塩含有量がキトサン含有量を上回り、3重量%以下の範囲にあることを特徴とする抗菌性アクリル繊維。
- 第四級アンモニウム塩が一般式、
[R1R2(CH3)2N]+X-
(但し、R1、R2は炭素数8〜18の同一又は異なるアルキル基、X-はハロゲンイオン、有機酸アニオン又はオキソ酸イオンを示す。)
である請求項1記載の抗菌性アクリル繊維。 - X-がカルボキシレート、スルホネート、サルフェート、ホスフェート及びホスフォネートからなる群から選ばれる1種以上の有機酸アニオンである請求項2記載の抗菌性アクリル繊維。
- アクリロニトリル系重合体を溶剤に溶解した重合体溶液を、湿式紡糸し乾燥緻密化する以前の糸条を、キトサンと第四級アンモニウム塩の混合溶液に浸漬するか、キトサンと第四級アンモニウム塩溶液に順次浸漬し、その後乾燥緻密化することを特徴とする抗菌性アクリル繊維の製造方法。
- 第四級アンモニウム塩が一般式、
[R1R2(CH3)2N]+X-
(但し、R1、R2は炭素数8〜18の同一又は異なるアルキル基、X-はハロゲンイオン、有機酸アニオン又はオキソ酸イオンを示す。)
である請求項4記載の抗菌性アクリル繊維の製造方法。 - キトサンと第四級アンモニウム塩との混合溶液中もしくは第四級アンモニウム塩溶液中に工程油剤を含有する請求項4又は5記載の抗菌性アクリル繊維の製造方法。
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