JPH09260744A - 磁気抵抗効果素子およびそれを用いた磁気ヘッド - Google Patents

磁気抵抗効果素子およびそれを用いた磁気ヘッド

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JPH09260744A
JPH09260744A JP8069992A JP6999296A JPH09260744A JP H09260744 A JPH09260744 A JP H09260744A JP 8069992 A JP8069992 A JP 8069992A JP 6999296 A JP6999296 A JP 6999296A JP H09260744 A JPH09260744 A JP H09260744A
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magnetic
magnetization
magnetic field
layer
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JP8069992A
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English (en)
Inventor
Keiya Nakabayashi
敬哉 中林
Tomohisa Komoda
智久 薦田
Kazuhiro Uneyama
和弘 釆山
Toru Kira
徹 吉良
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Sharp Corp
Original Assignee
Sharp Corp
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Abstract

(57)【要約】 【課題】 信頼性が高く、弱い外部磁場に対しても大き
な磁気抵抗効果をもつ高感度の磁気抵抗効果素子、およ
びそれを用いた情報読み出し性能の高い磁気ヘッドを実
現する。 【解決手段】 磁気抵抗効果素子は、第1および第2非
磁性層24・25によって分離された第1ないし第3磁
性層21〜23を備え、第1磁性層21の膜厚が第2磁
性層22の膜厚よりも厚く、各磁性層の磁化容易軸は互
いに平行に設定されている。第2磁性層22と第1磁性
層21とは強い反強磁性結合、第2磁性層22と第3磁
性層23とは非常に弱い強磁性結合をなし、各磁性層の
磁化容易軸と略直交する方向に磁場を印加すれば、磁場
の変化に対して第1ないし第3磁性層21〜23の磁化
が全て回転し、第2磁性層22と第3磁性層23との磁
化の向きのなす角度による磁気抵抗効果を示す。

Description

【発明の詳細な説明】
【0001】
【発明の属する技術分野】本発明は、高い磁気抵抗効果
をもつ多層磁性膜を用いた磁気抵抗効果素子およびそれ
を用いた磁気ヘッドに関するものである。
【0002】
【従来の技術】磁気ディスク装置や磁気テープ装置等の
磁気記録再生装置では、記録密度の向上に伴い、磁気記
録媒体に記録されている情報の読み出し性能の向上が求
められている。そこで、磁界の変化に応じて電気抵抗が
変わる磁気抵抗効果を利用した磁気抵抗効果素子を具備
した再生用磁気ヘッドが注目を集めている。現在、使用
されている磁気抵抗効果素子は、一般に異方性磁気抵抗
効果と呼ばれる現象を利用しており、素子材料としてパ
ーマロイ(商品名、ウェスタンエレクトリック社)を用
いた場合で磁気抵抗変化率は約3%であるが、記録密度
のさらなる向上を実現するためには、これを上回る磁気
抵抗変化率をもつ新しい材料の開発が要求されている。
【0003】近年、上述の異方性磁気抵抗効果とは異な
る原理で磁気抵抗効果を示す巨大磁気抵抗効果とよばれ
る現象が見いだされ、注目されている。これは、図11
に示すように、たとえばFeのような薄い磁性層311
とCrのような非磁性層312とを交互に堆積した積層
構造としたもので、隣接する磁性層311・311同士
は強い反強磁性結合をしていて、無磁場では互いの磁化
は反平行な状態になり、外部磁場を印加すると磁化は磁
場の方向に揃い平行となる。磁気抵抗は隣接する2つの
磁性層311・311の磁化方向のなす角の余弦に比例
するため、この場合、磁気抵抗は無磁場で最大、外部磁
場を印加して磁化を平行にすることにより最小になる。
【0004】また、その他の巨大磁気抵抗効果を示す素
子としては、たとえば特開平4−358310号公報等
に開示され、図12に概略的な断面構造を示すスピンバ
ルブ型磁気抵抗効果素子がある。この素子では、非磁性
層315を介して磁性層である固定層314と自由層3
16とが積層されている。上記固定層314に隣接し
て、マンガン鉄(FeMn)などの反強磁性層313が
配置されており、当該固定層314には交換相互作用に
よる交換バイアスが印加され、その磁化は一方向に固定
される。また、自由層16の磁化方向は、外部磁場がゼ
ロのとき固定層314の磁化方向に対して90°の方向
を向くように成膜されており、外部磁場を変化させるこ
とによって自由層316の磁化方向を自由に変化させる
ことができる。
【0005】したがって、上記の素子に対して外部磁場
を固定層314の磁化の方向に印加したときには2つの
磁性層314・316の磁化は平行に、一方、外部磁場
を固定層314の磁化と逆方向に印加したときには2つ
の磁性層314・316の磁化は反平行となり、積層構
造型磁気抵抗効果膜と同様に2層の磁化のなす角の余弦
に依存した磁気抵抗効果を得ることができる。
【0006】
【発明が解決しようとする課題】ところが、図11に示
すような積層構造型の巨大磁気抵抗効果膜は、磁性層3
11・311間の結合が強すぎるため、大きな磁気抵抗
変化率を得るためには、kOeオーダーの非常に大きな
磁場を印加しなければならず、磁気ヘッドなどに用いる
には動作磁場範囲における磁気抵抗変化率は小さく、十
分な感度(磁界の変化に対する磁気抵抗の変化率)が得
られないという問題がある。
【0007】一方、図12に示すようなスピンバルブ型
磁気抵抗効果素子では、2つの磁性層314・316の
間には反強磁性結合を用いないので磁性層の層厚を厚く
することが可能なため、外部磁場に対して大きな抵抗変
化の感度を得ることができる。しかしながら、スピンバ
ルブ型磁気抵抗効果素子では、反強磁性層313を用い
ており、その材料であるFeMnに耐食性がなく、当該
素子を磁気ヘッドに用いる場合、その製造過程あるいは
その使用の際に、腐食等の問題が生じ易く、信頼性をい
かに高めるかという課題がある。また、FeMnは作成
条件の微妙な変化に対して特性が非常に変化しやすく、
FeMn膜の特性をコントロールすることが困難であ
り、磁気ヘッドにした場合もその特性にばらつきが生じ
易い。
【0008】本発明は、上記に鑑みてなされたものであ
り、その目的は、反強磁性層を用いない高感度の磁気抵
抗効果素子と、それを用いた磁気ヘッドとを提供するこ
とである。
【0009】
【課題を解決するための手段】請求項1の発明に係る磁
気抵抗効果素子は、上記の課題を解決するために、非磁
性層によって分離された、少なくとも第1ないし第3磁
性層を含み、第1ないし第3磁性層の磁化容易軸は互い
に平行に設定されており、第2磁性層の膜厚より第1磁
性層の膜厚の方が厚く設定されており、第2磁性層の第
1磁性層に対する結合は、第1磁性層と第2磁性層との
磁化方向が動作磁場範囲において常に反平行となるよう
な強い反強磁性型であり、第3磁性層の第2磁性層に対
する結合は、磁場が略ゼロのときは第3磁性層の磁化が
第2磁性層の磁化方向に揃う一方、磁場が印加されたと
きは第3磁性層の磁化方向が第2磁性層の磁化方向に依
らず常に磁場方向に回転するような非常に弱い強磁性型
であり、磁場の変化に対して第1ないし第3磁性層の磁
化が全て回転し、第2磁性層と第3磁性層との磁化の向
きのなす角度による磁気抵抗効果をもつことを特徴とし
ている。
【0010】上記の構成によれば、無磁場の場合は、第
1磁性層の磁化と第2磁性層の磁化とは、強い反強磁性
結合のため反平行に、また、第3磁性層の磁化は、第2
磁性層との非常に弱い強磁性結合により第2磁性層の磁
化と平行になり、この場合の磁気抵抗は最小になる(図
2の(a)参照)。
【0011】そして、上記の磁気抵抗効果素子に、第1
ないし第3磁性層の磁化容易軸と垂直な方向の外部磁場
を印加すると、第1磁性層の磁化と第3磁性層の磁化と
が何れも外部磁場の方向に回転し、第2磁性層の磁化は
第1磁性層との強い反強磁性結合のため第1磁性層と反
平行になるため結果的に磁場と反対方向に回転する(図
2の(b)および(c)参照)。
【0012】すなわち、この磁気抵抗効果素子は、第1
磁性層の膜厚の方が第2磁性層の膜厚よりも厚く設定さ
れているので、これら2層の見かけ(正味)の磁場を考
えた場合に第1磁性層の磁化の方が支配的となり、これ
ら2層の磁化が反平行な状態を保ちつつ第1磁性層の磁
化が外部磁場の方向に回転するのである。また、このと
き、第2磁性層と第3磁性層との結合が弱いため、第3
磁性層の磁化も外部磁場の方向に回転するのである。こ
のため、第2磁性層と第3磁性層の磁化の向きに角度が
生じ、磁気抵抗効果が現れる。
【0013】このように動作する本発明の磁気抵抗効果
素子は、従来の積層型のように強い反強磁性型結合を切
り離すための大きな磁場を必要とせず、低磁場でも磁気
抵抗効果が得られ、非常に高い感度(磁場の変化に対す
る磁気抵抗の変化率)を示す。特に、磁場の変化に応じ
て、非磁性層を挟む第2および第3磁性層の磁化が同時
に逆回転するため、磁場変化に対する当該両磁性層の磁
化のなす角の変化が大きく、したがって感度が大きくな
る。
【0014】また、本発明の磁気抵抗効果素子は、従来
のスピンバルブ型のように反強磁性層を用いていないの
で、膜の耐食性が悪いとか特性がばらつき易いという従
来の問題も生じない。
【0015】請求項2の発明に係る磁気抵抗効果素子
は、上記請求項1の発明の構成において、上記第2磁性
層に対する第1磁性層の膜厚比が3以上であることを特
徴としている。
【0016】このように、第1磁性層の膜厚を第2磁性
層の膜厚の3倍以上に設定することによって、第1磁性
層と第2磁性層との磁化方向が動作磁場範囲において常
に反平行を保ちながら、第1磁性層が磁場方向に、第2
磁性層が磁場と反対方向に回転することができ、安定し
た動作が可能となる。
【0017】請求項3の発明に係る磁気抵抗効果素子
は、上記請求項1または2の発明の構成において、上記
第3磁性層の膜厚が40Å以上であることを特徴として
いる。
【0018】このように第3磁性層の膜厚を設定するこ
とによって、磁場が印加されたときに第3磁性層の磁化
方向が第2磁性層の磁化方向に依らず常に磁場方向に回
転するようになり、安定した動作が可能となる。
【0019】請求項4の発明に係る磁気抵抗効果素子
は、上記の課題を解決するために、非磁性層によって分
離された、少なくとも第1ないし第3磁性層を含み、第
1および第2磁性層の磁化容易軸は平行であり、第3磁
性層の磁化容易軸は第1および第2磁性層の磁化容易軸
と直交する方向に設定されており、第2磁性層の膜厚よ
り第1磁性層の膜厚の方が厚く設定されており、第2磁
性層の第1磁性層に対する結合は、第1磁性層と第2磁
性層との磁化方向が動作磁場範囲において常に反平行と
なるような強い反強磁性型であり、第3磁性層の第2磁
性層に対する結合は、磁場の強さが第1レベル以下のと
きに第3磁性層の磁化が第2磁性層の磁化に揃い、磁場
の強さが第1レベルより大きい第2レベル以上のときに
第3磁性層の磁化が第2磁性層の磁化方向に依らず磁場
方向に揃い、磁場の強さが第1レベルから第2レベルの
範囲で第3磁性層の磁化が回転するような弱い強磁性型
であり、磁場の強さが第1レベルから第2レベルの範囲
で、第2磁性層と第3磁性層との磁化の向きのなす角度
による磁気抵抗効果をもつことを特徴としている。
【0020】上記の構成によれば、第1磁性層の膜厚の
方が第2磁性層の膜厚よりも厚く設定されているので、
当該両磁性層の見かけ(正味)の磁場を考えた場合に第
1磁性層の磁化の方が支配的となり、第1および第2磁
性層の磁化容易軸と平行に外部磁場を印加した場合に、
第1磁性層の磁化が外部磁場方向に固定されると共に、
第2磁性層の磁化が第1磁性層の磁化との強い反強磁性
結合のため外部磁場と反対方向に固定される。
【0021】一方、第3磁性層の磁化は、外部磁場が第
1レベル以下のときには第2磁性層の磁化との弱い強磁
性結合のために、第2磁性層の磁化に揃う、すなわち外
部磁場とは反対の方向を向き、この場合の磁気抵抗は最
小になる(図5の(a)参照)。また、第2磁性層との
間の結合が弱いため第3磁性層の磁化は、外部磁場を第
2レベル以上とすると完全に外部磁場の方向を向き、第
2磁性層の磁化とは反平行となり、この場合の磁気抵抗
は最大になる(図5の(c)参照)。そして、第3磁性
層の磁化は、磁場の強さが第1レベルから第2レベルの
範囲で外部磁場の強さに応じて回転する。
【0022】このようにして、本発明の磁気抵抗効果素
子では、第2磁性層の磁化は外部磁場と反対方向に固定
される一方、第3磁性層の磁化は外部磁場に対して回転
し、あたかもスピンバルブ膜のような動作によって磁気
抵抗効果が生ずる。
【0023】このように動作する本発明の磁気抵抗効果
素子は、従来の積層型のように強い反強磁性型結合を切
り離すための大きな磁場を必要とせず、低磁場でも磁気
抵抗効果が得られ、非常に高い感度を示す。また、本発
明の磁気抵抗効果素子は、従来のスピンバルブ型のよう
に反強磁性層を用いていないので、膜の耐食性が悪いと
か特性がばらつき易いという従来の問題も生じない。
【0024】請求項5の発明に係る磁気抵抗効果素子
は、上記請求項4の発明の構成において、上記第2磁性
層に対する第1磁性層の膜厚比が5以上であることを特
徴としている。
【0025】このように、第1磁性層の膜厚を第2磁性
層の膜厚の5倍以上に設定することによって、第3磁性
層が磁場に応答して回転する動作磁場範囲において、第
1磁性層と第2磁性層との磁化方向を常に反平行に保っ
たまま第1磁性層の磁化を磁場方向に固定することがで
き、動作磁場範囲内で磁気抵抗効果曲線にヒステリシス
を生じることはなく、安定した動作が可能となる。
【0026】請求項6の発明に係る磁気抵抗効果素子
は、上記の課題を解決するために、非磁性層によって分
離された、少なくとも第1ないし第3磁性層を含み、第
1および第2磁性層の磁化容易軸は平行であり、第3磁
性層の磁化容易軸は第1および第2磁性層の磁化容易軸
と直交する方向に設定されており、第1磁性層と第2磁
性層との膜厚は略同じに設定されており、第2磁性層の
第1磁性層に対する結合は、第1磁性層と第2磁性層と
の磁化方向が動作磁場範囲において常に反平行となるよ
うな強い反強磁性型であり、第3磁性層の第2磁性層に
対する結合は非結合であり、動作磁場範囲においては、
磁場の変化に対して第3磁性層の磁化のみが回転し、第
2磁性層と第3磁性層との磁化の向きのなす角度による
磁気抵抗効果をもつことを特徴としている。
【0027】上記の構成によれば、無磁場のとき、第1
磁性層の磁化が磁化容易方向を向くと共に、第2磁性層
の磁化は第1磁性層の磁化との強い反強磁性結合のため
第1磁性層の磁化と反平行になる。また、第3磁性層の
磁化は第2磁性層の磁化と直交する。
【0028】また、磁場を第1および第2磁性層の磁化
容易軸と平行に印加すると、第3磁性層と第2磁性層と
が非結合のため第3磁性層の磁化は磁場方向に自由に回
転する。一方、第1および第2磁性層の膜厚が略同じに
設定されているため、当該両磁性層の見かけ(正味の)
の磁化は略ゼロであり、外部磁場には応答しない。この
ようにして、第2磁性層の磁化は固定される一方、第3
磁性層の磁化が磁場に対して回転し、あたかもスピンバ
ルブ膜のような動作によって磁気抵抗効果が生じる。
【0029】このように動作する本発明の磁気抵抗効果
素子は、従来の積層型のように強い反強磁性型結合を切
り離すための大きな磁場を必要とせず、低磁場でも磁気
抵抗効果が得られ、非常に高い感度を示す。また、本発
明の磁気抵抗効果素子は、従来のスピンバルブ型のよう
に反強磁性層を用いていないので、膜の耐食性が悪いと
か特性がばらつき易いという従来の問題も生じない。
【0030】請求項7の発明に係る磁気抵抗効果素子
は、上記の課題を解決するために、非磁性層によって分
離された、少なくとも第1ないし第3磁性層を含み、第
1および第2磁性層の磁化容易軸は平行に設定され、第
3磁性層の磁化容易軸は磁場が略ゼロのとき又は第1お
よび第2磁性層の磁化容易軸方向に所定の強さの第1磁
場を印加したときに第3磁性層の磁化が第2磁性層の磁
化方向と略直交する基準状態になるように設定されてお
り、第2磁性層の第1磁性層に対する結合は、第1磁性
層と第2磁性層との磁化方向が動作磁場範囲において常
に反平行となるような強い反強磁性型であり、第3磁性
層の第2磁性層に対する結合は、上記の基準状態におい
て第2磁場が印加されたときに、第3磁性層の磁化方向
が第2磁性層の磁化方向に依らず常に第2磁場方向に回
転するような非常に弱い強磁性型であり、第1および第
2磁性層の磁化容易軸方向に上記第2磁場を印加した場
合に、第3磁性層の磁化方向に依らず第1および第2磁
性層の磁化が当該磁化容易軸方向に固定されるように、
第1磁性層と第2磁性層との膜厚は略同じで且つ第1磁
性層の層厚の方がより厚く設定されており、動作磁場範
囲においては、第2磁場の変化に対して第3磁性層の磁
化のみが回転し、第2磁性層と第3磁性層との磁化の向
きのなす角度による磁気抵抗効果をもつことを特徴とし
ている。
【0031】上記の構成によれば、第1ないし第3磁性
層の磁化容易軸を上記のように設定しているので、第2
磁性層と第3磁性層との間に結合が存在しても、磁場が
略ゼロのとき又は第1および第2磁性層の磁化容易軸方
向に所定の強さの第1磁場(バイアス磁場)を印加した
ときに、第3磁性層の磁化が第2磁性層の磁化方向と略
直交する基準状態になる。
【0032】また、上記の基準状態において第1および
第2磁性層の磁化容易軸方向に第2磁場(検出対象の磁
場)を印加した場合に、第3磁性層の磁化方向に依らず
第1および第2磁性層の磁化が当該磁化容易軸方向に固
定される、すなわち、第3磁性層の磁化方向が変化して
も第1および第2磁性層の磁化の向きが変化しないよう
に、第1磁性層と第2磁性層との膜厚は略同じで且つ第
1磁性層の層厚の方がより厚く設定されているので、上
記の請求項6の発明に係る磁気抵抗効果素子と同様の動
作を行う。
【0033】尚、上記請求項6の発明に係る磁気抵抗効
果素子は、第2磁性層と第3磁性層とを非結合とする必
要があり、その分成膜条件が厳しいが、本発明では第2
磁性層と第3磁性層とを非結合としていないので、素子
の製作はより簡単である。
【0034】請求項8の発明に係る磁気抵抗効果素子
は、上記請求項7の発明の構成において、上記第2磁性
層に対する第1磁性層の膜厚比が1よりも大きく1.6
以下であることを特徴としている。
【0035】このように第2磁性層に対する第1磁性層
の膜厚比を設定することによって、磁場印加時に第1お
よび第2磁性層の磁化を上記のように固定できると共
に、これら2層の見かけの磁化がゼロに近づくので、第
1磁性層の磁化と第2磁性層の磁化とが互いの反平行状
態を保ちつつ反転するような外部磁場を大きくすること
ができ、安定した動作が可能となる。
【0036】請求項9の発明に係る磁気抵抗効果素子
は、上記請求項7または8の発明の構成において、上記
第3磁性層の膜厚が100Å以上であることを特徴とし
ている。
【0037】このように第3磁性層の膜厚を設定するこ
とによって、第3磁性層と第2磁性層との間の結合の影
響を十分に小さくすることができ、低磁場での動作が可
能となって感度が高くなる。
【0038】請求項10の発明に係る磁気ヘッドは、上
記請求項1、2、3、4、5、6、7、8、または9の
発明に係る磁気抵抗効果素子と、磁気抵抗効果素子に電
流を流す通電手段と、磁気記録媒体に記録された磁気的
な情報に応じた磁場の大きさに対応して変化する当該磁
気抵抗効果素子の磁気抵抗を検出する検出手段とを備え
ていることを特徴としている。
【0039】このように、請求項1ないし9の何れか1
つの磁気抵抗効果素子を磁気ヘッドに適用し、当該素子
に電流を流して磁気記録媒体の情報(その磁束変化)を
電気抵抗の変化として検出すれば、情報読み出し性能の
向上を図ることができ、高密度記録が行われた磁気記録
媒体の再生が可能となる。
【0040】請求項11の発明に係る磁気ヘッドは、請
求項1、2、3、4、5、7、8、または9に記載の磁
気抵抗効果素子と、磁気抵抗効果素子に電流を流す通電
手段と、磁気記録媒体に記録された磁気的な情報に応じ
た磁場の大きさに対応して変化する磁気抵抗効果素子の
磁気抵抗を検出する検出手段と、磁気抵抗効果素子の動
作磁場範囲をシフトさせるバイアス磁場を磁気抵抗効果
素子に印加するバイアス磁場印加手段とを備えているこ
とを特徴としている。
【0041】このように、請求項1〜5、7〜9の何れ
か1つの磁気抵抗効果素子を磁気ヘッドに適用した場合
に、磁気抵抗効果素子の動作磁場範囲をシフトさせるバ
イアス磁場印加手段をさらに具備すれば、磁気記録媒体
から受ける検出対象の磁場が略ゼロのときの感度を最大
とすることができ、より高感度の磁気ヘッドが実現でき
る。
【0042】
【発明の実施の形態】
〔実施の形態1〕本発明の実施の一形態について図1な
いし図3に基づいて説明すれば、以下の通りである。
【0043】本実施形態に係る磁気抵抗効果膜の構成を
図1に示す。この磁気抵抗効果膜は、図示しない基板上
に第3磁性層23、第2非磁性層25、第2磁性層2
2、第1非磁性層24、および第1磁性層21をこの順
に積層した構成である。
【0044】上記の磁気抵抗効果膜の外部磁場に対する
第1ないし第3磁性層21〜23の磁化の方向を計算機
シミュレーションによって求めた。尚、この計算機シミ
ュレーションは、磁気抵抗効果膜のもつ異方性エネル
ギ、ゼーマンエネルギ、および磁性層間の結合エネルギ
の和が極小となる各磁性層21〜23の磁化の方向を計
算することによって行った。また、シミュレーションに
よって得られた2磁性層22と第3磁性層23との磁化
の方向に基づいて、磁気抵抗効果曲線を作成した。
【0045】このシミュレーションでは、第1磁性層2
1の膜厚を100Åに固定し、第2磁性層22の膜厚を
10Å〜50Å、第3磁性層23の膜厚を10Å〜30
0Åの範囲で変化させた。また、第1ないし第3磁性層
21〜23の磁化容易軸は互いに平行であり、外部磁場
に対して直交するように設定した。また、第1磁性層2
1、第2磁性層22および第3磁性層23の各磁性層の
材質としてCoを、第1非磁性層24および第2非磁性
層25の材質としてCuを仮定した。
【0046】第1ないし第3磁性層21〜23をCoと
した本シミュレーションに用いた計算パラメータを表1
に示す。
【0047】
【表1】
【0048】ここで、一例として、第1磁性層21の膜
厚が100Å、第2磁性層22の膜厚が10Å、第3磁
性層23の膜厚が90Åのときの計算結果を図2および
図3に示し、これらの図面を参照して本実施形態の磁気
抵抗効果膜の動作を説明する。
【0049】図2は外部磁場の強さを変化させたときの
第1ないし第3磁性層21〜23の磁化方向の変化を示
したものである。
【0050】この磁気抵抗効果膜は、無磁場(外部磁場
が略0Oe)の場合は、図2の(a)に示すように、第
1磁性層21の磁化31と第2磁性層22の磁化32と
は、強い反強磁性結合のため反平行になっている。ま
た、第3磁性層23の磁化33は、第2磁性層22の磁
化32との弱い強磁性結合により第2磁性層22の磁化
32と平行になっているので、この場合の電気抵抗は最
小になる。
【0051】上記のような磁化状態を示す磁気抵抗効果
膜に、第1ないし第3磁性層21〜22の磁化容易軸と
垂直な方向の外部磁場を印加すると、図2の(b)に示
すように、第1磁性層21の磁化31は外部磁場の方向
に回転を始める。すなわち、この磁気抵抗効果膜は、第
1磁性層21の膜厚(100Å)の方が第2磁性層22
の膜厚(10Å)よりも厚く設定されているので、両磁
性層121・122の見かけ(正味)の磁場を考えた場
合に第1磁性層21の磁化31の方が支配的となり、第
1磁性層21の磁化31が外部磁場の方向に回転する。
また、第2磁性層22の磁化32は第1磁性層21の磁
化31と反平行になるため外部磁場と反対の方向に回転
する。
【0052】また、このとき、第2磁性層22と第3磁
性層23との結合が弱いため、第3磁性層23の磁化3
3も外部磁場の方向に回転する。
【0053】このようにして、第2磁性層22の磁化3
2と第3磁性層23の磁化33とのなす角度が変わり、
磁気抵抗効果が生じる。尚、図2の(b)は、磁気抵抗
効果膜に1 2 0 Oeの外部磁場を印加することによっ
て、第2磁性層22の磁化32と第3磁性層23の磁化
33とのなす角度が90度となる場合を示している。
【0054】さらに外部磁場を大きく(ここでは、1 7
0 Oeに)すると、図2の(c)に示すように、第1磁
性層21の磁化31と第3磁性層23の磁化33は完全
に外部磁場の方向に揃い、また、第2磁性層22の磁化
32は第1磁性層21の磁化31と反平行になるため外
部磁場と逆方向に向くため、第2磁性層22の磁化32
と第3磁性層23の磁化33とは反平行になり、この場
合の電気抵抗は最大になる。
【0055】勿論、外部磁場の印加方向を180度逆に
した場合も、上記と同様に各磁性層21〜23の磁化3
1〜33が回転し、同様の磁気抵抗効果が得られる。
【0056】図3は、上記のように外部磁場を変化させ
たときの、第2磁性層22の磁化32と第3磁性層23
の磁化33とのなす角(Θ2 −Θ3 )の余弦を計算した
結果であり、磁気抵抗効果曲線に相当する。
【0057】次に、第1磁性層21の膜厚を100Åに
固定した上で、第2磁性層22と第3磁性層23の膜厚
を変化させ、上述のような磁気抵抗効果膜の動作に必要
な外部磁場の強さ(各磁性層21〜23が図2の(c)
の磁化状態になるときの外部磁場の強さ)を上記と同様
の計算機シミュレーションによって求めた。その計算結
果を表2に示す。
【0058】
【表2】
【0059】上表2に示されているように、第2磁性層
22の膜厚が10Åで第3磁性層の膜厚が10Åのとき
は、図2のような動作をしない。これは、第3磁性層2
3が薄すぎて第2磁性層22の磁化32と第3磁性層2
3の磁化33との結合を切るための第3磁性層23のゼ
ーマンエネルギが不足し、第3磁性層23の磁化33が
第2磁性層22の磁化32と同じ方向に動いてしまうた
めである。尚、表2には計算結果の一部だけしか示して
いないが、第3磁性層23の膜厚が40Åよりも薄い場
合は、上記と同様の理由で図2のような正常な動作をし
ない又は動作が不安定となる。
【0060】このため、第2磁性層22の磁化32が外
部磁場に対して反対の方向に回転したときでも、第3磁
性層23の磁化33が弱い強磁性結合によって第2磁性
層22の磁化32と同じ方向に回転しないようにするた
めには、第3磁性層23の膜厚を40Å以上に設定する
ことが望ましい。そして、第3磁性層23の膜厚を厚く
するほど、動作に必要な外部磁場の強さHS が小さくな
り、磁気抵抗効果膜の感度が向上する。
【0061】また、上表2に示されているように、第2
磁性層22の厚さが40Åおよび50Åのときも、図2
のような正常な動作をしない。これは、第2磁性層22
のゼーマンエネルギが大きすぎて第1磁性層21との反
強磁性結合を断ち切ってしまい、第1磁性層21の磁化
31と第2磁性層22の磁化32とが動作磁場全域にお
いて反平行状態とならないためである。
【0062】このため、外部磁場に対して第1磁性層2
1の磁化31が応答したとき、それに対して第2磁性層
22の磁化32が反平行になるためには、第1磁性層2
1の膜厚d1 と第2磁性層22の膜厚d2 との比(d1
/d2 )を3以上に設定することが望ましい。尚、第1
磁性層21と第2磁性層22との膜厚比をさらに大きく
した場合も、第1磁性層21の磁化31が外部磁場の方
向に、第2磁性層22の磁化32がその反対方向に回転
し、図2のような正常な動作を示す。
【0063】ところで、磁性層間の結合エネルギは、磁
性層に挟まれる非磁性層の膜厚を変えることによりコン
トロールすることができる。本実施形態のシミュレーシ
ョンでは、何れもCoからなる第1磁性層21と第2磁
性層22との結合エネルギは、Coどうしの反強磁性結
合が最も強くなる値を用いたが、強い反強磁性結合を生
じさせるための非磁性層の膜厚条件は8Å〜13Åまた
は20Å〜25Åであるため、第1非磁性層24はこの
範囲の厚さに設定する必要がある。
【0064】ここまでは、第1ないし第3磁性層21〜
23の材質としてCoを仮定してシミュレーションを行
ったが、Coのかわりに、Ni−Co系合金、Ni−F
e−Co系合金、Ni−Fe合金を用いても同様に磁気
抵抗効果を得ることができる。
【0065】第1ないし第3磁性層21〜23にCo、
Ni−Co合金、或いはNi−Fe−Co合金を用いた
ほうが、磁気抵抗変化率が大きくなる傾向があるが、こ
れらの材料は軟磁気特性がNi−Fe合金ほどよくない
ため、大きな磁気抵抗変化率を得るためには大きな磁場
が必要になり、感度としてはあまり大きくない。
【0066】そこで、第1ないし第3磁性層21〜23
の材質としてNi−Fe合金を仮定して、上記と同様の
シミュレーションを行った。この場合の磁性層の膜厚条
件は、第1磁性層21の膜厚100Å、第2磁性層22
の膜厚10Å、第3磁性層23の膜厚90Åである。第
1ないし第3磁性層21〜23にNi−20at%Fe
合金を用いた場合の計算パラメータを表3に示す。
【0067】
【表3】
【0068】上記の磁気抵抗効果膜を用いた磁気抵抗効
果素子は、図2と同様に磁化が変化し、約19 Oeの印
加磁場で図2の(c)の磁化状態となって磁気抵抗が最
大となり、非常に高い感度を示す。
【0069】以上のように、本実施形態の磁気抵抗効果
素子は、第1および第2非磁性層24・25によって分
離された第1ないし第3磁性層21〜23を備え、各磁
性層の磁化容易軸は互いに平行に設定されている。ま
た、第2磁性層22の第1磁性層21に対する結合は、
第1磁性層21と第2磁性層22との磁化方向が動作磁
場範囲において常に反平行となるような強い反強磁性型
であり、第3磁性層23の第2磁性層22に対する結合
は、外部磁場が略ゼロのときは第3磁性層23の磁化3
3が第2磁性層22の磁化方向に揃う一方、外部磁場が
印加されたときは第3磁性層23の磁化方向が第2磁性
層22の磁化方向に依らず常に磁場方向に回転するよう
な非常に弱い強磁性型である。また、第1磁性層21と
第2磁性層22との磁化が反平行状態を保ちつつ第1磁
性層21の磁化31が外部磁場方向に回転するように、
第1磁性層21の膜厚が第2磁性層22の膜厚よりも厚
く設定されている。そして、外部磁場の変化に対して第
1ないし第3磁性層21〜23の磁化31〜33が全て
回転し、第2磁性層22と第3磁性層23との磁化の向
きのなす角度による磁気抵抗効果を示す。
【0070】上記の構成の磁気抵抗効果素子は、従来の
積層型のように強い反強磁性型結合を切り離すための大
きな磁場(kOeオーダー)を必要としない。上記の磁
気抵抗効果素子を、第1ないし第3磁性層21〜23の
磁化容易軸と外部磁場方向とが略直交するように配すれ
ば、上述の図2の動作によって低磁場でも磁気抵抗効果
が得られ、非常に高い感度(磁界の変化に対する磁気抵
抗の変化率)を示す。特に、従来のスピンバルブ型のよ
うに非磁性層を挟む磁性層のうち片方の磁化が固定され
ているわけでなく、外部磁場の変化に応じて第2非磁性
層25を挟む2つの磁性層22・23の磁化とも回転す
るため、外部磁場の変化に対する2つの磁性層22・2
3の磁化32・33のなす角の変化が大きく、したがっ
て感度が大きくなるという特徴をもつ。
【0071】本実施形態の磁気抵抗効果素子の場合、図
3に示すようにゼロ磁場付近で磁気抵抗変化の勾配が低
いため、ゼロ磁場付近では最大の感度が得られない。そ
のため、動作中は外部磁場方向に所定のバイアス磁場を
印加して、磁気抵抗変化の勾配の高い領域を動作磁場範
囲に移動させることが好ましい。本実施形態では第1な
いし第3磁性層21〜23の材質としてNi−Feを用
いた場合、8 Oe程度のバイアス磁場を印加することに
よって、ゼロ磁場近傍での(検出対象の磁場が略ゼロの
ときの)感度を最大にすることができる。
【0072】上記のバイアス法としては、シャントバイ
アス方式、ソフトバイアス方式、相互バイアス方式、永
久磁石方式、電流による誘導磁場による方式等があり、
どの方式を用いても同様の効果が得られる。
【0073】本実施形態の磁気抵抗効果素子を、磁気デ
ィスク装置や磁気テープ装置等の磁気記録再生装置の再
生用磁気ヘッドに適用すれば、高密度記録が行われた磁
気記録媒体に対する情報読み出し性能の向上を図ること
ができる。この磁気ヘッドは、磁気的に情報を記録して
いる磁気記録媒体に対して相対的に移動し、磁気記録媒
体から受ける磁場の大きさを上述の磁気抵抗効果によっ
て検出するものであり、本実施形態の磁気抵抗効果素子
をヘッドの先端部に有すると共に、当該磁気抵抗効果素
子に電流を流す通電手段(電源と導電ラインと電極端子
からなる)と、磁気記録媒体の磁場の大きさに対応して
変化する素子の電気抵抗(磁気抵抗)を検出する検出手
段とを備えている。また、磁気ヘッドは、必要に応じて
検出対象の磁場方向に上記のバイアス磁場を印加するバ
イアス磁場印加手段も備えている。
【0074】〔実施の形態2〕本発明のその他の実施の
一形態について図4ないし図7に基づいて説明すれば、
以下の通りである。
【0075】本実施形態に係る磁気抵抗効果膜の構成を
図4に示す。この磁気抵抗効果膜は、図示しない基板上
に第3磁性層123、第2非磁性層125、第2磁性層
122、第1非磁性層124、および第1磁性層121
をこの順に積層した構成である。
【0076】上記の磁気抵抗効果膜の外部磁場に対する
第1ないし第3磁性層121〜123の磁化の方向を、
前述の実施の形態1と同様に計算機シミュレーションに
よって求めた。
【0077】このシミュレーションでは、第2磁性層1
22の膜厚を50Å、第3磁性層123の膜厚を50Å
に固定し、第1磁性層121の膜厚を200Å〜300
Åの範囲で変化させた。また、第1磁性層121および
第2磁性層122の磁化容易軸は外部磁場と平行な方
向、第3磁性層123の磁化容易軸は外部磁場と直交す
る方向に設定している。また、第1磁性層121および
第2磁性層122の材質としてCoを、第3磁性層12
3の材質としてNi−20at%Fe合金を、そして、
第1非磁性層124および第2非磁性層125の材質と
してCuを仮定した。
【0078】本シミュレーションに用いた計算パラメー
タを表4に示す。
【0079】
【表4】
【0080】ここで、一例として、第1磁性層121の
膜厚が300Å、第2磁性層122の膜厚が50Å、第
3磁性層123の膜厚が50Åのときの計算結果を図5
および図6に示し、これらの図面を参照して本実施形態
の磁気抵抗効果膜の動作を説明する。
【0081】図5は外部磁場の強さを変化させたときの
第1ないし第3磁性層121〜123の磁化方向の変化
を示したものである。
【0082】この磁気抵抗効果膜は、第1磁性層121
の膜厚(300Å)の方が第2磁性層122の膜厚(5
0Å)よりも厚く設定されているので、両磁性層121
・122の見かけ(正味)の磁場を考えた場合に第1磁
性層121の磁化131の方が支配的となり、図5の
(a)ないし(c)に示すように、外部磁場が約70 O
e以上のとき第1磁性層121の磁化131が外部磁場
方向に固定され、第2磁性層122の磁化132は第1
磁性層121の磁化131との強い反強磁性結合のため
外部磁場と反対方向に固定される。
【0083】一方、第3磁性層123の磁化133は、
図5の(a)に示すように、外部磁場が約70 Oe(第
1レベル)以下のときには第2磁性層122の磁化13
2との弱い強磁性結合のために、第2磁性層122の磁
化132に揃う、すなわち外部磁場とは反対の方向を向
く。したがって、この場合の磁気抵抗効果膜の電気抵抗
は最小になる。
【0084】また、外部磁場を約85 Oeとすると、図
5の(b)に示すように、第3磁性層123の磁化13
3は、第2磁性層122と第3磁性層123との間の弱
い強磁性結合エネルギーと外部磁場の強さとがつり合っ
てこれらが相殺され、磁化容易軸方向すなわち外部磁場
に対して垂直の方向を向く。
【0085】また、外部磁場を約 100 Oe(第2レベ
ル)以上とすると、図5の(c)に示すように、第3磁
性層123の磁化133は、完全に外部磁場の方向を向
き、第2磁性層122の磁化132とは反平行となる。
したがって、この場合の磁気抵抗効果膜の電気抵抗は最
大になる。
【0086】このようにして、本実施形態の磁気抵抗効
果膜では、第2磁性層122の磁化132は外部磁場と
反対方向に固定される一方、第3磁性層123の磁化1
33が外部磁場に対して回転し、あたかもスピンバルブ
膜のような動作によって磁気抵抗効果が生ずる。
【0087】図6は、上記のように外部磁場を変化させ
たときの、第2磁性層122の磁化132と第3磁性層
123の磁化133とのなす角の余弦(Θ2 −Θ3 )を
計算した結果であり、磁気抵抗効果曲線に相当する。同
図に示すように、動作範囲においてヒステリシスのない
磁気抵抗効果曲線が得られている。
【0088】上記の磁気抵抗効果膜を用いた磁気抵抗効
果素子は、約30 Oeの外部磁場の変化で磁気抵抗変化
を最大とすることができ、高い感度を有する。
【0089】以上のように、本実施形態の磁気抵抗効果
素子は、第1および第2非磁性層124・125によっ
て分離された第1ないし第3磁性層121〜123を備
え、第1および第2磁性層121・122の磁化容易軸
は平行、第3磁性層123の磁化容易軸は第1および第
2磁性層121・122の磁化容易軸と直交する方向に
設定されている。また、第2磁性層122の第1磁性層
121に対する結合は、第1磁性層121と第2磁性層
122との磁化方向が動作磁場範囲において常に反平行
となるような強い反強磁性型であり、第3磁性層123
の第2磁性層122に対する結合は、外部磁場の強さが
第1レベル(上記の例では約70 Oe)以下のときに第
3磁性層123の磁化133が第2磁性層122の磁化
132に揃い、外部磁場の強さが第1レベルより大きい
第2レベル(上記の例では約 100 Oe)以上のときに
第3磁性層123の磁化133が第2磁性層122の磁
化方向に依らず外部磁場方向に揃い、外部磁場の強さが
第1レベルから第2レベルの範囲で第3磁性層123の
磁化133が回転するような弱い強磁性型である。ま
た、第1磁性層121の磁化131を外部磁場方向に、
第2磁性層122の磁化132を外部磁場と反対方向に
固定するために、第1磁性層121の膜厚が第2磁性層
122の膜厚よりも厚く設定されている。そして、外部
磁場の強さが第1レベルから第2レベルの範囲で、第2
磁性層122と第3磁性層123との磁化の向きのなす
角度による磁気抵抗効果を示す。
【0090】上記の構成の磁気抵抗効果素子を、第1お
よび第2磁性層121・122の磁化容易軸と外部磁場
の方向とが略一致するように配すれば、上述の図5に示
した動作によって低磁場でも磁気抵抗効果が得られ、非
常に高い感度を示す。また、上記の磁気抵抗効果素子
は、従来のスピンバルブ膜のように反強磁性層を用いて
非磁性層を挟む2つの磁性層のうちの1つの磁化を固定
するわけではなく、外部磁場によって第1磁性層121
および第2磁性層122の磁化を固定することができる
ため、反強磁性膜の耐食性が悪いとか特性がばらつき易
いという従来の問題が生じない。
【0091】ここで、第1磁性層121の膜厚条件を2
00Åとした場合を考える。この場合は、第1磁性層1
21の膜厚(200Å)と第2磁性層122の膜厚(5
0Å)との差が上記よりも小さくなるため、第1磁性層
121の磁化131を外部磁場の方向に、第2磁性層1
22の磁化132を外部磁場と反対方向に固定するため
には、85 Oe以上の外部磁場が必要であるという結果
となった。このため、外部磁場の動作範囲70 〜 100
Oeのうち、70 〜85 Oeの磁場範囲では第2磁性層
122の磁化132の方向は2通り有り得るため、図7
に示すように磁気抵抗効果曲線にはヒステリシスを生じ
ることになる。
【0092】このように、第1磁性層121と第2磁性
層122との膜厚差が小さ過ぎると、これら2層の見か
けの(正味の)磁化が小さくなるため、第1磁性層12
1の磁化131を固定するためにはより大きな磁場を必
要とし、第3磁性層123の磁化133が回転する動作
磁場範囲の一部においてヒステリシスを生じ、当該ヒス
テリシス部分では動作が不安定となる。
【0093】そこで、第3磁性層123の動作磁場範囲
において、外部磁場に対して第1磁性層121の磁化1
31が外部磁場の方向に固定され、第2磁性層122の
磁化132が第1磁性層121の磁化131との強い反
強磁性結合によって外部磁場と反対の方向に固定される
ためには、第1磁性層121の膜厚d11と第2磁性層1
22の膜厚d12との比(d11/d12)を5以上に設定す
る必要がある。尚、第1磁性層121と第2磁性層12
2との膜厚比をさらに大きくした場合も、第1磁性層1
21の磁化131が外部磁場の方向に、第2磁性層12
2の磁化132が外部磁場と反対方向に固定され易くな
り、図5および図6に示すような正常な動作がなされ
る。
【0094】但し、上記の膜厚比(d11/d12)を5よ
りも小さく設定して上記のようなヒステリシスを生じる
場合でも、ヒステリシスを示さない磁場範囲(図7にお
ける85 〜 100 Oe)を動作範囲とすることは可能で
ある。
【0095】ところで、磁性層間の結合エネルギは、磁
性層に挟まれる非磁性層の層厚を変えることによりコン
トロールすることができる。本実施形態のシミュレーシ
ョンでは、何れもCoからなる第1磁性層121と第2
磁性層122の結合エネルギは、Co同士の反強磁性結
合が最も強くなる値を用いたが、強い反強磁性結合を生
じさせるための非磁性層の膜厚条件は8Å〜13Åまた
は20Å〜25Åであるため、第1非磁性層124はこ
の範囲の厚さに設定する必要がある。
【0096】また、本実施形態では、第1磁性層121
および第2磁性層122にCoを、第3磁性層123に
Ni−Fe合金を仮定してシミュレーションを行った
が、第1ないし第3磁性層121〜123を全てCoと
する、または全てNi−Fe合金とすることも可能であ
る。また、Ni−Co系合金、Ni−Fe−Co系合金
などその他の磁性材料を用いても同様の効果がある。
【0097】但し、第3磁性層123にNi−Fe合金
などの軟磁気特性に優れている磁性材料以外の材料を用
いると、軟磁気特性が悪いため、大きな磁気抵抗変化率
を得るためには大きな磁場が必要になり感度は増加しな
い。また、第1磁性層121および第2磁性層122に
は軟磁気特性は必要なく、強い反強磁性結合が要求され
るため、Coのように強い反強磁性結合が得られる材料
が好ましい。
【0098】また、本実施形態の磁気抵抗効果膜の場
合、ゼロ磁場付近では磁気抵抗効果が得られず動作範囲
が約70 〜 100 Oeであること、および外部磁場によ
って第1磁性層121の磁化131を外部磁場方向に固
定すると共に第2磁性層122の磁化132を外部磁場
と反対方向に固定する必要があることから、動作中は外
部磁場方向に予め所定のバイアス磁場を印加して動作範
囲をゼロ磁場近傍(検出対象の磁場がゼロ付近)に移動
させると共に、第1磁性層121の磁化131および第
2磁性層122の磁化132をバイアス磁場方向に固定
する必要がある。
【0099】最適なバイアス磁場の強さは、検出対象の
磁場が略ゼロのとき、図5の(b)に示すように第3磁
性層123の磁化133を第2磁性層122の磁化13
2に対して垂直に向かせるような強さである。本実施形
態の磁気抵抗効果膜の場合、85 Oe程度のバイアス磁
場を印加することにより、ゼロ磁場近傍での(検出対象
の磁場が略ゼロのときの)感度を最大にすることができ
る。
【0100】上記のバイアス法としては、シャントバイ
アス方式、ソフトバイアス方式、相互バイアス方式、永
久磁石方式、電流による誘導磁場による方式等があり、
どの方式を用いても同様の効果が得られる。
【0101】本実施形態の磁気抵抗効果素子を、磁気デ
ィスク装置や磁気テープ装置等の磁気記録再生装置の再
生用磁気ヘッドに適用すれば、高密度記録が行われた磁
気記録媒体に対する情報読み出し性能の向上を図ること
ができる。この磁気ヘッドは、磁気的に情報を記録して
いる磁気記録媒体に対して相対的に移動し、磁気記録媒
体から受ける磁場の大きさを上述の磁気抵抗効果によっ
て検出するものであり、本実施形態の磁気抵抗効果素子
をヘッドの先端部に有すると共に、当該磁気抵抗効果素
子に電流を流す通電手段(電源と導電ラインと電極端子
からなる)と、磁気記録媒体の磁場の大きさに対応して
変化する素子の電気抵抗(磁気抵抗)を検出する検出手
段と、第1および第2磁性層121・122の磁化容易
軸方向に上記のような所定のバイアス磁場を印加するバ
イアス磁場印加手段とを備えている。
【0102】〔実施の形態3〕本発明のその他の実施の
一形態について図9ないし図10に基づいて説明すれ
ば、以下の通りである。
【0103】本実施形態に係る磁気抵抗効果膜の構成を
図9に示す。この磁気抵抗効果膜は、図示しない基板上
に第3磁性層223、第2非磁性層225、第2磁性層
222、第1非磁性層224、および第1磁性層221
をこの順に積層した構成である。
【0104】上記の磁気抵抗効果膜の外部磁場に対する
第1ないし第3磁性層221〜223の磁化の方向を、
前述の実施の形態1・2と同様に計算機シミュレーショ
ンによって求めた。
【0105】このシミュレーションでは、第1磁性層2
21の膜厚を45Å〜230Å、第2磁性層222の膜
厚を50Å〜100Å、第3磁性層223の膜厚を50
Å〜200Åの範囲でそれぞれ変化させた。
【0106】また、第1磁性層221および第2磁性層
222の磁化容易軸は、外部磁場と平行または反平行な
方向に、第3磁性層223の磁化容易軸は、外部磁場が
略ゼロのとき第3磁性層223の磁化231が第2磁性
層222の磁化232と直交する状態(基準状態)にな
るように設定されている。
【0107】また、第1磁性層221および第2磁性層
222の材質としてCoを、第3磁性層223の材質と
してNi−20at%Fe合金を、第1非磁性層224
および第2非磁性層225の材質としてCuを仮定し
た。
【0108】本シミュレーションに用いた計算パラメー
タを表5に示す。
【0109】
【表5】
【0110】ここで、一例として、第1磁性層221の
膜厚が55Å、第2磁性層222の膜厚が50Å、第3
磁性層223の膜厚が50Å、第2磁性層222と第3
磁性層223との間の結合定数が0erg/cm2 のと
きの計算結果を図9および図10に示し、これらの図面
を参照して本実施形態の磁気抵抗効果膜の動作を説明す
る。
【0111】尚、上述のように第3磁性層223の磁化
容易軸は外部磁場が略ゼロのとき第3磁性層223の磁
化231が第2磁性層222の磁化232と直交するよ
う設定するが、ここでは第2磁性層222と第3磁性層
223とが非結合なので、第3磁性層223の磁化容易
軸と第1および第2磁性層221・222の磁化容易軸
とを直交する方向に設定すればよい。
【0112】図9は外部磁場の強さを変化させたときの
第1ないし第3磁性層221〜223の磁化方向の変化
を示したものである。
【0113】この磁気抵抗効果膜は、図9の(b)に示
すように、無磁場のとき第1磁性層221の磁化231
が磁化容易方向を向くと共に、第2磁性層222の磁化
232は第1磁性層221の磁化231との強い反強磁
性結合のため第1磁性層221の磁化231と反平行に
なる。また、この場合、第3磁性層223の磁化233
は、無磁場で第2磁性層222の磁化232と直交する
ようにその磁化容易軸が設定されているため、第2磁性
層222の磁化232と直交する(基準状態)。
【0114】また、外部磁場(ここでは約5Oe)を第
1磁性層221の磁化231と同じ方向に印加すると、
図9の(c)に示すように、第3磁性層223の磁化2
33は、第2磁性層222の磁化232との結合が略ゼ
ロであるため自由に回転する。一方、第1磁性層221
の磁化231および第2磁性層222の磁化232は、
当該両磁性層221・222の層厚がほぼ等しい(第1
磁性層221の膜厚d21=55Å、第2磁性層222の
膜厚d22=50Å)ため、当該両磁性層221・222
の見かけ(正味の)の磁化は略ゼロであり、5Oe程度
の小さい外部磁場には応答しない。このようにして、第
2磁性層222の磁化232は固定される一方、第3磁
性層223の磁化233が外部磁場に対して回転し、ス
ピンバルブ膜のような動作によって磁気抵抗効果が生ず
る。
【0115】また、上記とは反対方向に外部磁場(ここ
では約−5Oe)を印加した場合は、図9の(a)に示
すように、第1磁性層221の磁化231および第2磁
性層222の磁化232は外部磁場には応答せず、当該
第2磁性層222の磁化232が固定される一方、第3
磁性層223の磁化233が外部磁場に対して回転し、
磁気抵抗効果が生ずる。
【0116】図10は、上記のように外部磁場を変化さ
せたときの、第2磁性層222の磁化232と第3磁性
層223の磁化233とのなす角(Θ2 −Θ3 )の余弦
を計算した結果であり、磁気抵抗効果曲線に相当する。
【0117】上記の磁気抵抗効果膜を用いた磁気抵抗効
果素子は、10 Oe程度の外部磁場の変化で磁気抵抗変
化率が最大になり、高い感度を示す。
【0118】以上のように、上記の磁気抵抗効果素子
は、第1および第2非磁性層224・225によって分
離された第1ないし第3磁性層221〜223を備え、
第2磁性層222の第1磁性層221に対する結合は、
第1磁性層221と第2磁性層222との磁化方向が動
作磁場範囲において常に反平行となるような強い反強磁
性型であり、上記第3磁性層223の第2磁性層222
に対する結合は非結合である。そして、第1および第2
磁性層221・222の磁化容易軸は平行、第3磁性層
223の磁化容易軸は第1および第2磁性層221・2
22の磁化容易軸と直交する方向に設定されており、ま
た、見かけの磁化を略ゼロにして外部磁場に応答しない
ようにするため第1および第2磁性層221・222の
膜厚は略同じ(第1および第2磁性層221・222の
何れの膜厚が若干大きくてもよい)に設定されている。
そして、動作磁場範囲においては、外部磁場の変化に対
して第3磁性層223の磁化233のみが回転し、第2
磁性層222と第3磁性層223との磁化の向きのなす
角度による磁気抵抗効果を示す。
【0119】上記の構成の磁気抵抗効果素子を、第1お
よび第2磁性層221・222の磁化容易軸と外部磁場
の方向とが略一致するように配すれば、上述の図9の
(a)〜(c)の動作によって低磁場でも磁気抵抗効果
が得られ、非常に高い感度を示す。
【0120】また、上記の磁気抵抗効果素子は、第1磁
性層221と第2磁性層222との膜厚を略等しくして
反強磁性結合させておくことによって、第2磁性層22
2を固定(両磁性層221・222の見かけの磁化を略
ゼロとして外部磁場に対して両磁性層221・222の
磁化231・232が応答しないようにした上で、両磁
性層221・222の磁化231・232を互いに反平
行に向かせて固定)している。このため、上記の磁気抵
抗効果素子は、従来のスピンバルブ膜のように反強磁性
層を用いて非磁性層を挟む2つの磁性層のうちの1つの
磁化を固定するわけではないので、反強磁性膜の耐食性
が悪いとか特性のばらつきが生じ易いといった従来の問
題が生じない。
【0121】ところで、図9の(c)とは反対方向に、
あるレベルより小さい外部磁場を印加した場合は、図9
の(a)に示した動作をするが、外部磁場があるレベル
(ここでは− 260 Oe)以上(例えば− 300 Oe)
になると、図9の(d)に示すように、第1磁性層22
1の磁化231と第2磁性層222の磁化232は、互
いの反平行状態を保ちつつ反転する。
【0122】もし第1磁性層221と第2磁性層222
との見かけの磁化が完全にゼロであれば、外部磁場によ
って磁化231・232の反転が生じることはないが、
当該両磁性層221・222の見かけの磁化が完全にゼ
ロでなければ、見かけの磁化に応じたレベル以上の外部
磁場によって上述のような磁化反転が生じる。尚、両磁
性層221・222の見かけの磁化がゼロに近いほど、
磁化反転を生じさせるためにはより大きな外部磁場が必
要になる。
【0123】上記のように第1および第2磁性層221
・222の磁化231・232の反転が生ずると、+ 2
60 Oe以上の外部磁場を印加して、再び、磁化231
・232を反転させ、もとに戻してやる必要があるた
め、磁気抵抗効果素子を磁気ヘッドなどに利用する場合
は、絶対値が 260 Oe以上の磁場が印加されないよう
にするか、もし上記のような磁化反転が生じても初期化
できる構成にすることが望ましい。
【0124】ここまでは、第2磁性層222と第3磁性
層223の間の結合がない場合について説明したが、両
磁性層222・223間に非常に弱い強磁性結合(結合
定数+0.016erg/cm2 )が残っている場合に
ついて考える。
【0125】上述のように、第3磁性層223の磁化容
易軸は外部磁場が略ゼロのとき第3磁性層223の磁化
231が第2磁性層222の磁化232と直交するよう
設定するのであるが、ここでは第2磁性層222と第3
磁性層223との間に非常に弱いながらも強磁性結合が
残っているので、第3磁性層223の磁化容易軸を第1
および第2磁性層221・222の磁化容易軸に対し
て、結合定数に応じた分だけ傾けて設定すればよい。
【0126】上記の磁気抵抗効果膜において、第1ない
し第3磁性層221〜223の膜厚を変化させ、動作に
必要な外部磁場の強さ(各磁性層221〜223が図9
の(a)〜(c)に示す動作をするのに必要な外部磁場
の強さ)、および第1および第2磁性層221・222
の磁化231・232が互いの反平行状態を保ちつつ反
転する外部磁場の強さを、計算機シミュレーションによ
って求めた。その計算結果を表6に示す。
【0127】
【表6】
【0128】上表6に示されているように、第1磁性層
221の膜厚d21と第2磁性層222の膜厚d22とが何
れも50Åの場合は図9の(a)〜(c)のような正常
な動作をしない。これは、第2磁性層222と第3磁性
層223との間に弱い強磁性結合(結合定数+0.01
6erg/cm2 )が存在するため、第3磁性層223
の磁化233が外部磁場方向に回転するとき、それに引
っぱられて、第2磁性層222の磁化232および第1
磁性層221の磁化231が互いの反平行状態を保ちつ
つ反転してしまうためである。このように、第1磁性層
221の膜厚d21と第2磁性層222の膜厚d22とを等
しくしまうと動作不能となる。
【0129】また、第1磁性層221の膜厚d21が45
Åで第2磁性層222の膜厚d22がそれよりも厚い50
Åの場合も、図9の(a)〜(c)のような正常な動作
をしない。これは、第1磁性層221の膜厚d21が第2
磁性層222の膜厚d22よりも若干小さければ、両磁性
層221・222の見かけの磁化を考えた場合に第2磁
性層222の磁化が支配的となり、第1磁性層221の
磁化231ではなく第2磁性層222の磁化232の方
が外部磁場の方向に揃うようになり、第3磁性層223
の磁化233と第2磁性層222の磁化232とが何れ
も外部磁場の方向に揃ってしまうためである。
【0130】このため、第3磁性層223の磁化233
が外部磁場の方向に回転する場合でも、第3磁性層22
3の磁化233に引っぱられることなく第1および第2
磁性層221・222の磁化231・232が互いに反
平行状態を保ちつつこれらの磁化容易軸方向(すなわち
外部磁場と平行な方向)に固定されるように、第1磁性
層221の膜厚d21を第2磁性層222の膜厚d22より
も若干厚くしておく必要がある。これにより、図9の
(a)〜(c)のような正常な動作が可能となる。
【0131】また、第1磁性層221の磁化231と第
2磁性層222の磁化232とが互いの反平行状態を保
ちつつ反転するような外部磁場(Hsw)を大きくするた
めには、両磁性層221・222の見かけの磁化をゼロ
に近づける方がよいことから、第1磁性層221の膜厚
21と第2磁性層222の膜厚d22との比(d21
22)を1.6以下に設定することが望ましい。
【0132】また、第3磁性層223と第2磁性層22
2との間の弱い強磁性結合の影響をできるだけ小さくす
るためには、第3磁性層223の膜厚d23は100Å以
上にすることが望ましい。第3磁性層223と第2磁性
層222との強磁性結合の影響が小さくなるほど動作に
必要な磁場も小さくなり、磁気抵抗効果膜の感度が高く
なる。上表6に示されているように、第3磁性層223
の膜厚d23が100Å未満の場合は動作磁場は60 Oe
以上必要であり、一方、当該膜厚d23が100Å以上と
厚い場合は30 Oe以下の低磁場で動作し高い感度を示
す。また、第3磁性層223の膜厚d23をさらに厚くし
ても、動作磁場は小さくなる方向であり、磁気抵抗効果
膜は高い感度で正常な動作を示す。
【0133】ところで、磁性層間の結合エネルギは、磁
性層に挟まれる非磁性層の膜厚を変えることによりコン
トロールすることができる。本実施形態のシミュレーシ
ョンでは、何れもCoからなる第1磁性層221と第2
磁性層222との結合エネルギは、Coどうしの反強磁
性結合が最も強くなる値を用いたが、強い反強磁性結合
を生じさせるための非磁性層の膜厚条件は8Å〜13Å
または20Å〜25Åであるため、第1非磁性層24は
この範囲の厚さに設定する必要がある。
【0134】また、上記のように第2磁性層222の磁
化232と第3磁性層223の磁化233との間の結合
を完全にゼロにすることが難しく弱い強磁性結合が存在
した場合でも、上記のように第3磁性層223の磁気異
方性の向きを最適化(磁場が略ゼロのとき第3磁性層2
23の磁化容易軸が第3磁性層223の磁化233が第
2磁性層222の磁化方向と略直交する基準状態になる
ように、第3磁性層223の磁化容易軸を第1および第
2磁性層221・222の磁化容易軸に対して傾けて設
定)することによって、第2および第3磁性層222・
223間が非結合の場合と同様に、ゼロ磁場近傍での感
度が最大になる。
【0135】一方、上記のような第3磁性層223の磁
気異方性の向きの最適化を行わなかった場合や、その最
適化が十分でなかった場合には、無磁場付近で磁気抵抗
変化の勾配が低下することになる。この場合、第1磁性
層221および第2磁性層222の磁化容易軸の方向に
バイアス磁場を印加することによって、ゼロ磁場近傍で
(検出対象の磁場が略ゼロのときの)感度が最大になる
ようにすることができる。すなわち、第1および第2磁
性層221・222の磁化容易軸方向に所定の強さのバ
イアス磁場(第1磁場)を印加することによって、第3
磁性層223の磁化233が第2磁性層222の磁化方
向と略直交する基準状態(図9の(b))になるように
すればよい。したがって、第3磁性層の磁化容易軸は、
第1および第2磁性層221・222の磁化容易軸方向
に所定の強さのバイアス磁場を印加したときに第3磁性
層223の磁化233が第2磁性層222の磁化方向と
略直交する基準状態になるように設定されておればよ
い。
【0136】上記のバイアス法としては、シャントバイ
アス方式、ソフトバイアス方式、相互バイアス方式、永
久磁石方式、電流による誘導磁場による方式等があり、
どの方式を用いても同様の効果が得られる。
【0137】以上のように、上記の磁気抵抗効果素子
は、第1および第2非磁性層224・225によって分
離された第1ないし第3磁性層221〜223を備え、
第2磁性層222の第1磁性層221に対する結合は、
第1磁性層221と第2磁性層222との磁化方向が動
作磁場範囲において常に反平行となるような強い反強磁
性型であり、上記第3磁性層223の第2磁性層222
に対する結合は、検出対象の磁場(第2磁場)が印加さ
れたときに、第3磁性層223の磁化方向が第2磁性層
222の磁化方向に依らず常に検出対象の磁場方向に回
転するような非常に弱い強磁性型である。そして、第1
および第2磁性層221・222の磁化容易軸は平行、
第3磁性層223の磁化容易軸は無磁場のとき又は第1
および第2磁性層221・222の磁化容易軸方向に所
定の強さのバイアス磁場(第1磁場)を印加したときに
第3磁性層223の磁化233が第2磁性層222の磁
化方向と略直交する基準状態になるように設定されてい
る。また、第1および第2磁性層221・222の磁化
容易軸方向に検出対象の磁場を印加した場合に、第3磁
性層223の磁化方向に依らず第1および第2磁性層2
21・222の磁化231・232が当該磁化容易軸方
向に固定されるように、第1磁性層221と第2磁性層
222との膜厚は略同じで且つ第1磁性層221の層厚
の方がより厚く設定されている。そして、動作磁場範囲
においては、検出対象の磁場の変化に対して第3磁性層
223の磁化233のみが回転し、第2磁性層222と
第3磁性層223との磁化の向きのなす角度による磁気
抵抗効果を示す。
【0138】上記の構成の磁気抵抗効果素子を、第1お
よび第2磁性層221・222の磁化容易軸と外部磁場
の方向とが略一致するように配し、必要によって第1お
よび第2磁性層221・222の磁化容易軸方向にバイ
アス磁場を印加すれば、上述の図9の(a)〜(c)の
動作によって低磁場でも磁気抵抗効果が得られ、非常に
高い感度を示す。
【0139】また、本実施形態では、第1磁性層221
および第2磁性層222にCoを、第3磁性層223に
Ni−Fe合金を用いたが、第1ないし第3磁性層22
1〜223を全てCoとする、または全てNi−Fe合
金とすることも可能である。また、Ni−Co系合金、
Ni−Fe−Co系合金などその他の磁性材料を用いて
も同様の効果がある。
【0140】但し、第3磁性層223にNi−Fe合金
などの軟磁気特性に優れている磁性材料以外の材料を用
いると、軟磁気特性が悪いため、大きな磁気抵抗変化率
を得るためには大きな磁場が必要になり感度は増加しな
い。また、第1磁性層221および第2磁性層222に
は軟磁気特性は必要なく、強い反強磁性結合が要求され
るため、Coのように強い反強磁性結合が得られる材料
が好ましい。
【0141】本実施形態の磁気抵抗効果素子を、磁気デ
ィスク装置や磁気テープ装置等の磁気記録再生装置の再
生用磁気ヘッドに適用すれば、高密度記録が行われた磁
気記録媒体に対する情報読み出し性能の向上を図ること
ができる。この磁気ヘッドは、磁気的に情報を記録して
いる磁気記録媒体に対して相対的に移動し、磁気記録媒
体から受ける磁場の大きさを上述の磁気抵抗効果によっ
て検出するものであり、本実施形態の磁気抵抗効果素子
をヘッドの先端部に有すると共に、当該磁気抵抗効果素
子に電流を流す通電手段(電源と導電ラインと電極端子
からなる)と、磁気記録媒体の磁場の大きさに対応して
変化する素子の電気抵抗(磁気抵抗)を検出する検出手
段とを備えている。また、磁気ヘッドは、必要に応じて
検出対象の磁場と平行な方向(第1および第2磁性層2
21・222の磁化容易軸方向)に所定のバイアス磁場
を印加するバイアス磁場印加手段も備えている。
【0142】
【発明の効果】請求項1の発明に係る磁気抵抗効果素子
は、以上のように、非磁性層によって分離された、少な
くとも第1ないし第3磁性層を含み、第1ないし第3磁
性層の磁化容易軸は互いに平行に設定されており、第2
磁性層の膜厚より第1磁性層の膜厚の方が厚く設定され
ており、第2磁性層の第1磁性層に対する結合は、第1
磁性層と第2磁性層との磁化方向が動作磁場範囲におい
て常に反平行となるような強い反強磁性型であり、第3
磁性層の第2磁性層に対する結合は、磁場が略ゼロのと
きは第3磁性層の磁化が第2磁性層の磁化方向に揃う一
方、磁場が印加されたときは第3磁性層の磁化方向が第
2磁性層の磁化方向に依らず常に磁場方向に回転するよ
うな非常に弱い強磁性型であり、磁場の変化に対して第
1ないし第3磁性層の磁化が全て回転し、第2磁性層と
第3磁性層との磁化の向きのなす角度による磁気抵抗効
果をもつ構成である。
【0143】それゆえ、従来の積層型のように強い反強
磁性型結合を切り離すための大きな磁場を必要とせず、
低磁場でも磁気抵抗効果が得られ、また、磁気抵抗効果
素子を、第1ないし第3磁性層の磁化容易軸が外部磁場
に対して略垂直な方向に配すれば、磁場の変化に応じ
て、非磁性層を挟む第2および第3磁性層の磁化が同時
に逆回転するため、磁場変化に対する当該両磁性層の磁
化のなす角の変化が大きく、非常に高い感度を示すとい
う効果を奏する。また、本発明の磁気抵抗効果素子は、
従来のスピンバルブ型のように反強磁性層を用いていな
いので、膜の耐食性が悪いとか特性がばらつき易いとい
う従来の問題も生じない。
【0144】請求項2の発明に係る磁気抵抗効果素子
は、以上のように、上記請求項1の発明の構成におい
て、上記第2磁性層に対する第1磁性層の膜厚比が3以
上である構成となっている。
【0145】それゆえ、第1磁性層と第2磁性層との磁
化方向が動作磁場範囲において常に反平行となるように
することができ、信頼性の高い安定した動作が可能とな
るという効果を奏する。
【0146】請求項3の発明に係る磁気抵抗効果素子
は、以上のように、上記請求項1または2の発明の構成
において、上記第3磁性層の膜厚が40Å以上である構
成となっている。
【0147】それゆえ、磁場が印加されたときに第3磁
性層の磁化方向が第2磁性層の磁化方向に依らず常に磁
場方向に回転するようになり、信頼性の高い安定した動
作が可能となるという効果を奏する。
【0148】請求項4の発明に係る磁気抵抗効果素子
は、以上のように、非磁性層によって分離された、少な
くとも第1ないし第3磁性層を含み、第1および第2磁
性層の磁化容易軸は平行であり、第3磁性層の磁化容易
軸は第1および第2磁性層の磁化容易軸と直交する方向
に設定されており、第2磁性層の膜厚より第1磁性層の
膜厚の方が厚く設定されており、第2磁性層の第1磁性
層に対する結合は、第1磁性層と第2磁性層との磁化方
向が動作磁場範囲において常に反平行となるような強い
反強磁性型であり、第3磁性層の第2磁性層に対する結
合は、磁場の強さが第1レベル以下のときに第3磁性層
の磁化が第2磁性層の磁化に揃い、磁場の強さが第1レ
ベルより大きい第2レベル以上のときに第3磁性層の磁
化が第2磁性層の磁化方向に依らず磁場方向に揃い、磁
場の強さが第1レベルから第2レベルの範囲で第3磁性
層の磁化が回転するような弱い強磁性型であり、磁場の
強さが第1レベルから第2レベルの範囲で、第2磁性層
と第3磁性層との磁化の向きのなす角度による磁気抵抗
効果をもつ構成である。
【0149】それゆえ、従来の積層型のように強い反強
磁性型結合を切り離すための大きな磁場を必要とせず、
低磁場でも磁気抵抗効果が得られ、非常に高い感度を示
すという効果を奏する。また、本発明の磁気抵抗効果素
子は、従来のスピンバルブ型のように反強磁性層を用い
ていないので、膜の耐食性が悪いとか特性がばらつき易
いという従来の問題も生じない。
【0150】請求項5の発明に係る磁気抵抗効果素子
は、以上のように、上記請求項4の発明の構成におい
て、上記第2磁性層に対する第1磁性層の膜厚比が5以
上である構成となっている。
【0151】それゆえ、第3磁性層が磁場に応答して回
転する動作磁場範囲において、第1磁性層と第2磁性層
との磁化方向を常に反平行に保ったまま第1磁性層の磁
化を磁場方向に固定することができ、動作磁場範囲内で
磁気抵抗効果曲線にヒステリシスを生じることはなく、
信頼性の高い安定した動作が可能となるという効果を奏
する。
【0152】請求項6の発明に係る磁気抵抗効果素子
は、以上のように、非磁性層によって分離された、少な
くとも第1ないし第3磁性層を含み、第1および第2磁
性層の磁化容易軸は平行であり、第3磁性層の磁化容易
軸は第1および第2磁性層の磁化容易軸と直交する方向
に設定されており、第1磁性層と第2磁性層との膜厚は
略同じに設定されており、第2磁性層の第1磁性層に対
する結合は、第1磁性層と第2磁性層との磁化方向が動
作磁場範囲において常に反平行となるような強い反強磁
性型であり、第3磁性層の第2磁性層に対する結合は非
結合であり、動作磁場範囲においては、磁場の変化に対
して第3磁性層の磁化のみが回転し、第2磁性層と第3
磁性層との磁化の向きのなす角度による磁気抵抗効果を
もつ構成である。
【0153】それゆえ、従来の積層型のように強い反強
磁性型結合を切り離すための大きな磁場を必要とせず、
低磁場でも磁気抵抗効果が得られ、非常に高い感度を示
すという効果を奏する。また、本発明の磁気抵抗効果素
子は、従来のスピンバルブ型のように反強磁性層を用い
ていないので、膜の耐食性が悪いとか特性がばらつき易
いという従来の問題も生じない。
【0154】請求項7の発明に係る磁気抵抗効果素子
は、以上のように、非磁性層によって分離された、少な
くとも第1ないし第3磁性層を含み、第1および第2磁
性層の磁化容易軸は平行に設定され、第3磁性層の磁化
容易軸は磁場が略ゼロのとき又は第1および第2磁性層
の磁化容易軸方向に所定の強さの第1磁場を印加したと
きに第3磁性層の磁化が第2磁性層の磁化方向と略直交
する基準状態になるように設定されており、第2磁性層
の第1磁性層に対する結合は、第1磁性層と第2磁性層
との磁化方向が動作磁場範囲において常に反平行となる
ような強い反強磁性型であり、第3磁性層の第2磁性層
に対する結合は、上記の基準状態において第2磁場が印
加されたときに、第3磁性層の磁化方向が第2磁性層の
磁化方向に依らず常に第2磁場方向に回転するような非
常に弱い強磁性型であり、第1および第2磁性層の磁化
容易軸方向に上記第2磁場を印加した場合に、第3磁性
層の磁化方向に依らず第1および第2磁性層の磁化が当
該磁化容易軸方向に固定されるように、第1磁性層と第
2磁性層との膜厚は略同じで且つ第1磁性層の層厚の方
がより厚く設定されており、動作磁場範囲においては、
第2磁場の変化に対して第3磁性層の磁化のみが回転
し、第2磁性層と第3磁性層との磁化の向きのなす角度
による磁気抵抗効果をもつ構成である。
【0155】それゆえ、従来の積層型のように強い反強
磁性型結合を切り離すための大きな磁場を必要とせず、
低磁場でも磁気抵抗効果が得られ、非常に高い感度を示
すという効果を奏する。また、本発明の磁気抵抗効果素
子は、従来のスピンバルブ型のように反強磁性層を用い
ていないので、膜の耐食性が悪いとか特性がばらつき易
いという従来の問題も生じない。
【0156】また、本発明では第2磁性層と第3磁性層
とを非結合に設定する必要がないので、上記請求項6の
発明に係る磁気抵抗効果素子ほど成膜条件が厳しくな
く、素子の製作は請求項6の発明の素子より簡単であ
る。
【0157】請求項8の発明に係る磁気抵抗効果素子
は、以上のように、上記請求項7の発明の構成におい
て、上記第2磁性層に対する第1磁性層の膜厚比が1よ
りも大きく1.6以下である構成となっている。
【0158】それゆえ、第1磁性層の磁化と第2磁性層
の磁化とが互いの反平行状態を保ちつつ反転するような
外部磁場を大きくすることができ、信頼性の高い安定し
た動作が可能となるという効果を奏する。
【0159】請求項9の発明に係る磁気抵抗効果素子
は、以上のように、上記請求項7または8の発明の構成
において、上記第3磁性層の膜厚が100Å以上である
構成となっている。
【0160】それゆえ、第3磁性層と第2磁性層との間
の結合を十分に小さくすることができ、低磁場での動作
が可能となってより感度が高くなるという効果を奏す
る。
【0161】請求項10の発明に係る磁気ヘッドは、以
上のように、上記請求項1、2、3、4、5、6、7、
8、または9の発明に係る磁気抵抗効果素子と、磁気抵
抗効果素子に電流を流す通電手段と、磁気記録媒体に記
録された磁気的な情報に応じた磁場の大きさに対応して
変化する当該磁気抵抗効果素子の磁気抵抗を検出する検
出手段とを備えている構成である。
【0162】それゆえ、情報読み出し性能の向上を図る
ことができ、高密度記録が行われた磁気記録媒体の再生
が可能となるという効果を奏する。
【0163】請求項11の発明に係る磁気ヘッドは、以
上のように、請求項1、2、3、4、5、7、8、また
は9に記載の磁気抵抗効果素子と、磁気抵抗効果素子に
電流を流す通電手段と、磁気記録媒体に記録された磁気
的な情報に応じた磁場の大きさに対応して変化する磁気
抵抗効果素子の磁気抵抗を検出する検出手段と、磁気抵
抗効果素子の動作磁場範囲をシフトさせるバイアス磁場
を磁気抵抗効果素子に印加するバイアス磁場印加手段と
を備えている構成である。
【0164】それゆえ、磁気記録媒体から受ける検出対
象の磁場が略ゼロのときの感度を最大とすることがで
き、情報読み出し性能の向上を図ることができ、高密度
記録が行われた磁気記録媒体の再生が可能となるという
効果を奏する。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の実施の一形態を示すものであり、磁気
抵抗効果膜の概略的な構成を示す分解斜視図である。
【図2】図1の磁気抵抗効果膜の磁化過程を示す説明図
である。
【図3】図1の磁気抵抗効果膜の磁気抵抗効果曲線を示
すグラフである。
【図4】本発明のその他の実施の一形態を示すものであ
り、磁気抵抗効果膜の概略的な構成を示す分解斜視図で
ある。
【図5】図4の磁気抵抗効果膜の磁化過程を示す説明図
である。
【図6】図4の磁気抵抗効果膜のヒステリシスをもたな
い場合の磁気抵抗効果曲線を示すグラフである。
【図7】図4の磁気抵抗効果膜のヒステリシスをもつ場
合の磁気抵抗効果曲線を示すグラフである。
【図8】本発明のさらに他の実施の一形態を示すもので
あり、磁気抵抗効果膜の概略的な構成を示す分解斜視図
である。
【図9】図8の磁気抵抗効果膜の磁化過程を示す説明図
である。
【図10】図8の磁気抵抗効果膜の磁気抵抗効果曲線を
示すグラフである。
【図11】従来の積層構造型磁気抵抗効果膜の概略的な
構成を示す断面図である。
【図12】従来のスピンバルブ型磁気抵抗効果膜の概略
的な構成を示す分解斜視図である。
【符号の説明】
21 第1磁性層 22 第2磁性層 23 第3磁性層 24 第1非磁性層 25 第2非磁性層 31 第1磁性層の磁化 32 第2磁性層の磁化 33 第3磁性層の磁化 121 第1磁性層 122 第2磁性層 123 第3磁性層 124 第1非磁性層 125 第2非磁性層 131 第1磁性層の磁化 132 第2磁性層の磁化 133 第3磁性層の磁化 221 第1磁性層 222 第2磁性層 223 第3磁性層 224 第1非磁性層 225 第2非磁性層 231 第1磁性層の磁化 232 第2磁性層の磁化 233 第3磁性層の磁化
───────────────────────────────────────────────────── フロントページの続き (72)発明者 吉良 徹 大阪府大阪市阿倍野区長池町22番22号 シ ャープ株式会社内

Claims (11)

    【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】非磁性層によって分離された、少なくとも
    第1ないし第3磁性層を含み、 第1ないし第3磁性層の磁化容易軸は互いに平行に設定
    されており、 第2磁性層の膜厚より第1磁性層の膜厚の方が厚く設定
    されており、 第2磁性層の第1磁性層に対する結合は、第1磁性層と
    第2磁性層との磁化方向が動作磁場範囲において常に反
    平行となるような強い反強磁性型であり、 第3磁性層の第2磁性層に対する結合は、磁場が略ゼロ
    のときは第3磁性層の磁化が第2磁性層の磁化方向に揃
    う一方、磁場が印加されたときは第3磁性層の磁化方向
    が第2磁性層の磁化方向に依らず常に磁場方向に回転す
    るような非常に弱い強磁性型であり、 磁場の変化に対して第1ないし第3磁性層の磁化が全て
    回転し、第2磁性層と第3磁性層との磁化の向きのなす
    角度による磁気抵抗効果をもつことを特徴とする磁気抵
    抗効果素子。
  2. 【請求項2】上記第2磁性層に対する第1磁性層の膜厚
    比が3以上であることを特徴とする請求項1記載の磁気
    抵抗効果素子。
  3. 【請求項3】上記第3磁性層の膜厚が40Å以上である
    ことを特徴とする請求項1または2記載の磁気抵抗効果
    素子。
  4. 【請求項4】非磁性層によって分離された、少なくとも
    第1ないし第3磁性層を含み、 第1および第2磁性層の磁化容易軸は平行であり、第3
    磁性層の磁化容易軸は第1および第2磁性層の磁化容易
    軸と直交する方向に設定されており、 第2磁性層の膜厚より第1磁性層の膜厚の方が厚く設定
    されており、 第2磁性層の第1磁性層に対する結合は、第1磁性層と
    第2磁性層との磁化方向が動作磁場範囲において常に反
    平行となるような強い反強磁性型であり、 第3磁性層の第2磁性層に対する結合は、磁場の強さが
    第1レベル以下のときに第3磁性層の磁化が第2磁性層
    の磁化に揃い、磁場の強さが第1レベルより大きい第2
    レベル以上のときに第3磁性層の磁化が第2磁性層の磁
    化方向に依らず磁場方向に揃い、磁場の強さが第1レベ
    ルから第2レベルの範囲で第3磁性層の磁化が回転する
    ような弱い強磁性型であり、 磁場の強さが第1レベルから第2レベルの範囲で、第2
    磁性層と第3磁性層との磁化の向きのなす角度による磁
    気抵抗効果をもつことを特徴とする磁気抵抗効果素子。
  5. 【請求項5】上記第2磁性層に対する第1磁性層の膜厚
    比が5以上であることを特徴とする請求項4記載の磁気
    抵抗効果素子。
  6. 【請求項6】非磁性層によって分離された、少なくとも
    第1ないし第3磁性層を含み、 第1および第2磁性層の磁化容易軸は平行であり、第3
    磁性層の磁化容易軸は第1および第2磁性層の磁化容易
    軸と直交する方向に設定されており、 第1磁性層と第2磁性層との膜厚は略同じに設定されて
    おり、 第2磁性層の第1磁性層に対する結合は、第1磁性層と
    第2磁性層との磁化方向が動作磁場範囲において常に反
    平行となるような強い反強磁性型であり、 第3磁性層の第2磁性層に対する結合は非結合であり、 動作磁場範囲においては、磁場の変化に対して第3磁性
    層の磁化のみが回転し、第2磁性層と第3磁性層との磁
    化の向きのなす角度による磁気抵抗効果をもつことを特
    徴とする磁気抵抗効果素子。
  7. 【請求項7】非磁性層によって分離された、少なくとも
    第1ないし第3磁性層を含み、 第1および第2磁性層の磁化容易軸は平行に設定され、
    第3磁性層の磁化容易軸は磁場が略ゼロのとき又は第1
    および第2磁性層の磁化容易軸方向に所定の強さの第1
    磁場を印加したときに第3磁性層の磁化が第2磁性層の
    磁化方向と略直交する基準状態になるように設定されて
    おり、 第2磁性層の第1磁性層に対する結合は、第1磁性層と
    第2磁性層との磁化方向が動作磁場範囲において常に反
    平行となるような強い反強磁性型であり、 第3磁性層の第2磁性層に対する結合は、上記の基準状
    態において第2磁場が印加されたときに、第3磁性層の
    磁化方向が第2磁性層の磁化方向に依らず常に第2磁場
    方向に回転するような非常に弱い強磁性型であり、 第1および第2磁性層の磁化容易軸方向に上記第2磁場
    を印加した場合に、第3磁性層の磁化方向に依らず第1
    および第2磁性層の磁化が当該磁化容易軸方向に固定さ
    れるように、第1磁性層と第2磁性層との膜厚は略同じ
    で且つ第1磁性層の層厚の方がより厚く設定されてお
    り、 動作磁場範囲においては、第2磁場の変化に対して第3
    磁性層の磁化のみが回転し、第2磁性層と第3磁性層と
    の磁化の向きのなす角度による磁気抵抗効果をもつこと
    を特徴とする磁気抵抗効果素子。
  8. 【請求項8】上記第2磁性層に対する第1磁性層の膜厚
    比が1よりも大きく1.6以下であることを特徴とする
    請求項7記載の磁気抵抗効果素子。
  9. 【請求項9】上記第3磁性層の膜厚が100Å以上であ
    ることを特徴とする請求項7または8記載の磁気抵抗効
    果素子。
  10. 【請求項10】請求項1、2、3、4、5、6、7、
    8、または9に記載の磁気抵抗効果素子と、 磁気抵抗効果素子に電流を流す通電手段と、 磁気記録媒体に記録された磁気的な情報に応じた磁場の
    大きさに対応して変化する当該磁気抵抗効果素子の磁気
    抵抗を検出する検出手段とを備えていることを特徴とす
    る磁気ヘッド。
  11. 【請求項11】請求項1、2、3、4、5、7、8、ま
    たは9に記載の磁気抵抗効果素子と、 磁気抵抗効果素子に電流を流す通電手段と、 磁気記録媒体に記録された磁気的な情報に応じた磁場の
    大きさに対応して変化する磁気抵抗効果素子の磁気抵抗
    を検出する検出手段と、 磁気抵抗効果素子の動作磁場範囲をシフトさせるバイア
    ス磁場を磁気抵抗効果素子に印加するバイアス磁場印加
    手段とを備えたことを特徴とする磁気ヘッド。
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Cited By (5)

* Cited by examiner, † Cited by third party
Publication number Priority date Publication date Assignee Title
KR100379981B1 (ko) * 1999-12-06 2003-04-11 알프스 덴키 가부시키가이샤 스핀밸브형 자기저항효과 소자 및 그것을 구비한박막자기헤드와 그들의 제조방법
JP2011053199A (ja) * 2009-08-07 2011-03-17 Alps Electric Co Ltd 近接センサ及び磁気検出装置
JP2011095004A (ja) * 2009-10-27 2011-05-12 Alps Electric Co Ltd 磁気センサ
JP2011095003A (ja) * 2009-10-27 2011-05-12 Alps Electric Co Ltd 磁気センサ
JP5417325B2 (ja) * 2008-05-30 2014-02-12 アルプス電気株式会社 磁気センサ及び磁気エンコーダ

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