JPH09241351A - カプセル化エポキシ樹脂組成物、カプセル化エポキシ樹脂接着剤および螺着部品 - Google Patents

カプセル化エポキシ樹脂組成物、カプセル化エポキシ樹脂接着剤および螺着部品

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JPH09241351A
JPH09241351A JP8051830A JP5183096A JPH09241351A JP H09241351 A JPH09241351 A JP H09241351A JP 8051830 A JP8051830 A JP 8051830A JP 5183096 A JP5183096 A JP 5183096A JP H09241351 A JPH09241351 A JP H09241351A
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Abstract

(57)【要約】 【課題】 螺着部材の固着用接着剤の調製に適してお
り、接着剤層形成後から螺着操作までの保存安定性が改
良されて接着剤の白化が防止され、かつ固着トルクの低
下や保存中の硬化がない、カプセル化エポキシ樹脂組成
物を提供する。 【解決手段】 溶媒、該溶媒中に分散された、硬化性エ
ポキシ樹脂内包マイクロカプセル、および該溶媒中に分
散または溶解された、長鎖アルキル基を分子内に有する
水不溶性のイミダゾール化合物を含有する、該エポキシ
樹脂を硬化させる硬化成分、を含んでなるカプセル化エ
ポキシ樹脂組成物。

Description

【発明の詳細な説明】
【0001】
【発明の属する技術分野】本発明は、カプセル化エポキ
シ樹脂組成物、カプセル化エポキシ樹脂接着剤および螺
着部品に関し、さらに詳しくは、マイクロカプセルに内
包された硬化性エポキシ樹脂からなるカプセル化エポキ
シ樹脂と、そのエポキシ樹脂を硬化させる硬化成分とを
含み、マイクロカプセルが破壊されるとエポキシ樹脂と
硬化成分とが混合されて硬化反応によりエポキシ樹脂が
硬化するカプセル化エポキシ樹脂組成物に関する。この
組成物は、特に、その組成物がさらにバインダーを含有
する場合、ネジ、ボルト、ナット等の螺着部材の螺合面
(ねじ山)に塗布され、相手方螺着部材に螺着された螺
着部材の緩みを防止し、螺着部材どうしの密着性を高め
るために使用される、螺着部材の固着用のカプセル化エ
ポキシ接着剤として有用である。
【0002】
【従来の技術】
1.背景 ネジ、ボルト、ナット等の螺着部材の螺着後(たとえ
ば、ネジが、相手方螺着部材であるネジ穴にねじ込まれ
て取り付けられた後)の緩みの防止、螺着部材どうしの
密着性の向上(たとえば、ネジとネジ穴との隙間を無く
し密閉性を高める。)等を目的とする螺着部材の固着用
接着剤として、カプセル化エポキシ接着剤が用いられて
いる。
【0003】この様な「カプセル化エポキシ接着剤」
は、通常、(a)溶媒、(b)その溶媒中に分散され
た、硬化性エポキシ樹脂内包マイクロカプセル、および
(c)その溶媒中に分散または溶解された、エポキシ樹
脂硬化用成分を含んでなるカプセル化エポキシ樹脂組成
物と、(d)バインダー用ポリマーとの混合物からな
り、被着体表面(たとえば、螺着部材の螺合面)への塗
布等の適用過程と、その後の乾燥過程により接着剤層を
容易に形成できる材料である。この様なカプセル化エポ
キシ樹脂接着剤の例の1つは、3M社製「スコッチ−グ
リップ(商標)接着剤」である。
【0004】この様なカプセル化エポキシ樹脂接着剤
(以下、「カプセル化接着剤」と呼ぶこともある。)を
用いる固着方法を、図面を参照しながら簡単に説明す
る。通常、互いに螺着される2つの螺着部材2、5の少
なくとも1方の螺合面3に、カプセル化接着剤をほぼ均
一に塗布し、溶媒を除去して、硬化反応させることなく
固化させて接着剤層4を形成する。その後、螺着操作
(たとえば、ネジの回転。)を行い、2つの螺着部材間
に生じる剪断力により接着剤層4内のマイクロカプセル
の外殻を破壊し、硬化性エポキシ樹脂と硬化成分とを混
合させて硬化反応を惹起させ、エポキシ樹脂を硬化させ
て、螺着部材2、5を固着させる。
【0005】通常、接着剤層4は、螺着操作直前に形成
されることは少なく、予め接着剤層を備えた螺着部材
(螺着部品1)を用意し、一定期間保管したり、供給元
から需要先に輸送されることが多い。したがって、保管
または輸送の間の接着剤の保存安定性は重要な要求性能
の1つである。この様に、螺着部材の螺合面に予め設け
た乾燥塗膜として使用される接着剤は、プレコート型接
着剤と呼ばれている。
【0006】2.カプセル化エポキシ樹脂接着剤 上記の様なカプセル化接着剤を利用した螺着部材固着用
接着剤は、たとえば、以下の様な文献に開示されてい
る。 (1)米国特許3,642,937号 この米国特許は、カプセル化エポキシ樹脂組成物を使用
した螺着部材の緩み止め接着剤に関する先駆的な特許で
ある。この特許には、硬化剤として、常温硬化型の1,
3−(4−ジピペリジル)プロパン、ポリアミドおよびイ
ミダゾール類が開示されている。
【0007】(2)特開平5−140514号公報(対
応米国特許第5,283,266号) この公開公報には、溶媒として水を用いた水溶性または
水分散性の緩み止めカプセル化エポキシ樹脂接着剤組成
物が開示されている。硬化剤としては、水溶性アミンが
開示され、実施例では1,3−(4−ジピペリジル)プロ
パンが使用されている。
【0008】(3)特開平5−311140号公報 この公開公報には、バインダーとして自己乳化型エポキ
シ樹脂と過剰量の硬化剤とのアダクト化合物を用いた水
性カプセル化エポキシ樹脂組成物が開示され、このアダ
クト化合物は、螺着部品の締結後にエポキシ樹脂の硬化
剤としても作用することが記載されている。 (4)特開平6−6630号公報 この公開公報には、螺着面に形成された接着剤層と、そ
の接着剤層上に形成されたゾル状保護被膜とからなり、
保存安定性を向上させたプレコート型接着剤が記載され
ている。しかしながら、この様な多層構造は、塗布工程
の複雑化、加工費用の増大につながり、また、この公報
には、高温高湿下における保存安定性の改良については
示唆されていない。
【0009】
【発明が解決しようとする課題】ところが、上記従来の
カプセル化接着剤では、接着剤層形成後の保存安定性が
低く、高温高湿下や雨露に直接暴露される様な場所に置
かれると、接着剤の白化、固着トルク(螺着部材を螺着
した後の戻しトルク)の低下、および、保存中にカプセ
ル内に硬化成分(硬化剤)が浸透して硬化性エポキシ樹
脂が硬化して使用不能になること、等の問題点が生じて
いた。本発明の目的は、接着剤層形成後から螺着操作ま
での保存安定性が改良され、上記問題点を解決すること
ができる、螺着部材の固着用接着剤の調製に適したカプ
セル化エポキシ樹脂組成物を提供することである。
【0010】
【課題を解決するための手段】本発明によれば、上記課
題は、(a)溶媒、(b)該溶媒中に分散された、硬化
性エポキシ樹脂内包マイクロカプセル、および(c)該
溶媒中に分散または溶解された、長鎖アルキル基を分子
内に有する水不溶性のイミダゾール化合物を含有する、
該エポキシ樹脂を硬化させる硬化成分、を含んでなるカ
プセル化エポキシ樹脂組成物により解決される。
【0011】本発明によれば、硬化剤または硬化促進剤
として作用するイミダゾール化合物は、疎水性基である
長鎖アルキル基を分子内に有しているので、水に対する
溶解性が低い。それ故、カプセル化エポキシ樹脂接着剤
が螺着部材に塗布されて高温高湿雰囲気中や雨露に直接
さらされるような環境下に置かれても、イミダゾール化
合物が水に溶解することがないから、再析出による接着
剤の白化や、硬化剤の溶出によってエポキシ樹脂の硬化
が不十分になることによる最終固着トルクの低下を防止
することができる。また、本発明で使用するイミダゾー
ル化合物は、カプセルの外殻を通してカプセル内部に浸
透することがないので、カプセル内でのエポキシ樹脂の
早期硬化が防止できる。
【0012】
【発明の実施の形態】
1.硬化性エポキシ樹脂 「硬化性エポキシ樹脂」とは、(A)主剤であるエポキ
シ化合物を含むが、硬化成分を含まず、硬化の際に硬化
成分と混合して硬化させるとエポキシ硬化物を与える材
料、または、(B)エポキシ化合物とその硬化成分とを
含んでなり、それを硬化させるとエポキシ硬化物を与え
る材料、であると定義する。すなわち、「硬化性エポキ
シ樹脂」は、硬化成分により硬化され得るエポキシ化合
物を必ず含有する材料である。
【0013】通常、硬化成分(詳細は後述する。)とエ
ポキシ化合物との組み合わせに有効な潜在性が期待でき
なければ、エポキシ化合物と硬化成分とを別々に貯蔵
し、硬化直前にそれらを混合して、両者を反応させる。
すなわち、この様な場合は、エポキシ化合物を内包した
マイクロカプセル(詳細は後述する。)中には硬化成分
は含有されない。
【0014】一方、充分なポットライフを与える程度に
潜在性を有する硬化成分と、エポキシ化合物とを組み合
わせた場合は、同一のマイクロカプセルの中にそれら硬
化成分とエポキシ化合物とを、硬化性エポキシ樹脂とし
て内包させることができる。たとえば、エポキシ化合物
と硬化剤(第1の硬化成分)とからなる硬化性エポキシ
樹脂を含むマイクロカプセルが破壊された後に、カプセ
ル外に存在していた硬化促進剤(第2の硬化成分)と硬
化性エポキシ樹脂とを接触させることにより、硬化反応
を開始させることができる。
【0015】「エポキシ化合物」とは、1分子中に少な
くとも2個のエポキシ基を有する化合物であると定義さ
れ、単一の化合物からなる場合と、2種以上の化合物の
混合物である場合の両方を包含する。この様なエポキシ
化合物としては、通常の硬化型エポキシ樹脂の主剤とし
て知られるエポキシ化合物が使用できる。具体的には、
ビスフェノールAのジグリシジルエーテル等のビスフェ
ノールA型エポキシ、ビスフェノールFのジグリシジル
エーテル等のビスフェノールF型エポキシ、テトラグリ
シジルジアミノフェニルメタン、p−アミノフェノール
トリグリシジルエーテル等のグリシジルアミン型エポキ
シ、クレゾールノボラック型エポキシ、フェノールノボ
ラック型エポキシ、環式脂肪族型エポキシ、臭素化ビス
フェノールA型エポキシなどが挙げられる。また、これ
らのエポキシ化合物と組み合わせて、エポキシ樹脂の粘
度を調製する等の目的で、希釈剤を使用することができ
る。この様な希釈剤には、1分子中に少なくとも1個の
エポキシ基を有するエポキシモノマー(反応性希釈
剤)、キシレン樹脂等のエポキシ基を持たない化合物等
が使用できる。エポキシモノマーとしては、ブチルグリ
シジルエーテル、フェニルグリシジルエーテル、1,4
−ブタンジオールグリシジルエーテル、1,6−ヘキサ
ンジオールジグリシジルエーテル等が使用できる。
【0016】エポキシ化合物のエポキシ当量は、たとえ
ば硬化性エポキシ樹脂の粘度にも影響し、硬化性エポキ
シ樹脂として取り扱い性が良好な粘度範囲にするため
に、好適には150〜1,000の範囲である。
【0017】2.硬化成分 「硬化成分」とは、エポキシ化合物を硬化させる硬化剤
を必ず含み、硬化剤単独、および硬化剤と硬化促進剤と
の混合物を包含する。硬化剤は、通常の硬化型エポキシ
樹脂の硬化剤として知られるものが使用できる。具体的
には、イミダゾール、1,3−ビス−(4−ジピペリジ
ル)プロパン、1,6−ヘキサンジアミン、4,4−メチ
レンジアニリン、置換アルキレンジアミン等のアミン系
化合物、若しくは、これらアミン系化合物とエポキシ化
合物とを予め反応させた得たプレリアクト生成物が使用
できる。これらは、単独で、または2種以上からなる混
合物として使用できる。また、硬化剤の含有量は、その
官能基当量が、エポキシ化合物のエポキシ当量1に対し
て、通常0.2〜1.5の範囲となる様に選択される。
【0018】プレリアクト生成物(以下「プレリアク
ト」と呼称する場合がある。)は、エポキシ化合物のエ
ポキシ当量に対して過剰当量のアミン系化合物を反応さ
せ、未反応官能基を残した状態の生成物である。エポキ
シとアミンとの比は、たとえば、エポキシ1当量に対し
て、アミン1.2〜3.0当量である。プレリアクトは、
水溶性や結晶性が高く、それ単独では高湿度環境下で白
化現象、接着力の低下等の問題を引き起こすが、反応性
が比較的良好であり、コスト的にも有利である等の理由
からその使用が望ましいタイプのアミン系化合物(たと
えば、1,3−ビス−(4−ジピペリジル)プロパン等)
を、カプセル化エポキシ樹脂組成物の硬化剤として利用
するための有利な実施形態である。しかしながら、その
反面、アミン当量が高くなり易く、反応速度が低くなる
傾向がある。そこで、本発明のカプセル化エポキシ樹脂
組成物を接着剤用途に適用する場合など、反応速度を高
めることが好ましい場合は、この様な硬化剤と硬化促進
剤とからなる硬化成分を用いる。
【0019】硬化促進剤としては、たとえば、イミダゾ
ール、サリチル酸、無水安息香酸、三フッ化硼素または
そのアルキルアミン塩若しくはその酢酸コンプレックス
等が使用できる。これらは、単一の物質、または2種以
上からなる混合物が使用できる。硬化促進剤の含有量
は、硬化剤100重量部に対して、通常5〜80重量部
の範囲で使用する。
【0020】3.長鎖アルキル−イミダゾール化合物 本発明の組成物において、硬化成分は、硬化剤または硬
化促進剤として、長鎖アルキル基を分子内に有する水不
溶性のイミダゾール化合物(以下、「イミダゾール化合
物」と呼称する場合がある。)を含有する。「水不溶
性」とは、たとえば、100gの水と1gのイミダゾー
ル化合物とを混合し、攪拌した後、その混合液が白くに
ごることで確認できる。好ましくは、一定時間撹拌した
後の混合液の瀘過した液を、乾燥しても固形分が残らな
い程度の水不溶性を示す化合物である。また、長鎖アル
キル基が炭素数10以上のアルキル基である場合に、所
望の程度まで水不溶性が高められ、接着剤層形成後の保
存安定性を効果的に高めることができる。また、アルキ
ル基の炭素数が18を超えると、反応性が低下する傾向
がある。特に好ましいアルキル基の炭素数は、11〜1
7である。さらに、イミダゾール化合物の分子量が、1
50〜350の範囲である場合に、水不溶性と反応性の
バランスを良好にすることが容易である。
【0021】「長鎖アルキル基を分子内に有する」化合
物は、直鎖のまたは分岐を有するアルキル基、末端フェ
ニルアルキレン基、アルキルフェニレン基をを分子内に
有するものを包含する。しかしながら、水不溶性と反応
性のバランスを良好にするためには、ウンデシル、ヘプ
タデシル等の直鎖アルキル基を有する化合物が好適であ
る。
【0022】イミダゾール化合物の含有量は、硬化性エ
ポキシ樹脂の100重量部に対して、好適には1〜50
重量部の範囲、特に好適には3〜20重量部の範囲であ
る。イミダゾール化合物の含有量が少なすぎると反応速
度が低下し、カプセル化エポキシ樹脂組成物を接着剤と
して使用した時に、所定の接着力を得るまでの時間が長
くなるおそれがあり、反対に含有量が多すぎると、接着
力が低下する傾向がある。
【0023】4.カプセル化エポキシ樹脂 「カプセル化エポキシ樹脂」は、硬化反応を開始させた
い時に破壊可能なマイクロカプセル内に、硬化性エポキ
シ樹脂を含む材料、と定義する。マイクロカプセルは、
たとえば、架橋された樹脂を外殻(カプセル壁膜)に用
いて形成できる。外殻用樹脂が尿素樹脂である場合、架
橋された尿素樹脂が耐溶剤性、強度等にすぐれるので、
螺着部材の固着用接着剤の用途において、接着剤層形成
後から螺着操作までの保存安定性が効果的高められるこ
とから、この様な場合を、本発明の最良の実施形態の1
つとして挙げることができる。
【0024】尿素樹脂としては、尿素−ホルムアルデヒ
ド樹脂、尿素−アセトアルデヒド樹脂、尿素−プロピオ
ンアルデヒド樹脂、尿素−ブチルアルデヒド樹脂等が使
用できる。また、メラミン系化合物を含んでなるメラミ
ン−尿素樹脂(たとえば、尿素−ホルムアルデヒド−メ
ラミン樹脂)も使用できる。
【0025】上記の様なマイクロカプセルは、次の様に
して形成することができる。まず、ホルムアルデヒド、
トリエタノールアミン等の3官能アミン、および尿素を
含有する反応混合物を、攪拌しながら加熱して反応させ
る。その生成物を冷水で希釈し、尿素−ホルムアルデヒ
ド樹脂のプレポリマー溶液を得る。続いて、プレポリマ
ー溶液のpHを約7に、温度を約25℃に調整した後、
硬化性エポキシ樹脂を添加して反応溶液を調製する。続
いて、所定の攪拌回転数にて攪拌して溶液を均一にした
後、そのpHを酸性側にすることにより、高分子化反応
を開始させる。数時間から数十時間攪拌し続けた後、p
Hを約7に戻し(中和操作)、マイクロカプセルのスラ
リーを得る。最後に、そのスラリーから、濾過と水洗操
作により、目的の、硬化性エポキシ樹脂を内包したマイ
クロカプセル、すなわち、カプセル化エポキシ樹脂を得
ることができる。この様にして得られるマイクロカプセ
ルは、略球形の形状を有し、直径は通常5〜500μm
の範囲である。また、マイクロカプセル100重量部当
たりに含まれる硬化性エポキシ樹脂の量は、通常50〜
90重量部である。
【0026】5.カプセル化エポキシ樹脂組成物 カプセル化エポキシ樹脂組成物は、上記の様にして得ら
れるカプセル化エポキシ樹脂と、上記硬化成分と、溶媒
とを含有する。溶媒は、カプセル化エポキシ樹脂を、そ
の外殻を溶解させることなく分散可能であり、硬化成分
を分散または溶解可能である媒体である。また、カプセ
ル化エポキシ樹脂組成物を接着剤として使用する場合
は、組成物を被着体に塗布、乾燥させる必要があるの
で、溶媒は適切な揮発性を有するのが望ましい。この様
な溶媒としては、たとえば、トルエン、キシレン、n−
ブタノール、イソプロパノール、1,1,1−トリクロ
ロエタン等を挙げることができる。また、カプセル化エ
ポキシ樹脂組成物において、カプセル化エポキシ樹脂と
溶媒との混合比率は、カプセル化エポキシ樹脂100重
量部に対して、通常50〜300重量部の範囲である。
【0027】6.カプセル化エポキシ樹脂接着剤 上記カプセル化エポキシ樹脂組成物は、接着剤として使
用することができる。好適には、カプセル化エポキシ樹
脂組成物にバインダーを加えて、塗工性および塗膜形成
能を改善された接着剤、すなわち、本発明によるカプセ
ル化エポキシ樹脂接着剤として使用する。バインダーと
しては、ポリビニルブチラール、ポリ酢酸ビニル、ポリ
メタクリル酸メチル、ポリビニルアルコール、ポリスチ
レン、ポリウレタン、ブチルゴム、ポリアミド等のポリ
マーが使用できる。バインダーは、カプセル化エポキシ
樹脂組成物の溶剤中に分散または溶解される様に選択す
る。また、バインダーの含有量は、カプセル化エポキシ
樹脂(すなわち、硬化性エポキシ樹脂を内包したマイク
ロカプセル)100重量部に対して、通常、1〜50重
量部の範囲である。 カプセル化エポキシ樹脂接着剤には、上記構成成分の
他、本発明の効果を損なわない範囲において、充填剤、
増粘剤、顔料、分散剤、老化防止剤等の添加剤を含有さ
せることができる。
【0028】カプセル化エポキシ樹脂接着剤は、たとえ
ば次の様にして調製することができる。溶媒とバインダ
ーとからなる混合溶液を準備し、その溶液に硬化成分を
分散または溶解させて接着剤−前駆組成物を調製する。
前駆組成物には、必要に応じて上記の添加剤を加える。
この段階で、各成分の分散および溶解を均一にするため
に、充分な攪拌処理を施しておく。必要に応じて、攪拌
処理中に加熱することもできる。この様にして得られた
均一な接着剤−前駆組成物に、最後に、カプセル化エポ
キシ樹脂を加え、カプセルを破壊しない程度の攪拌操作
により、分散されたカプセル化エポキシ樹脂を含んでな
る、目的のカプセル化エポキシ樹脂接着剤を得る。
【0029】7.螺着部品とその固着方法 本発明のカプセル化エポキシ樹脂組成物は、例えば図1
に示すような螺着部材2の螺合面3に塗布されて接着剤
層4を形成し、螺着部材2の緩みを防止し、相手方螺着
部材5への固着を強固にするのに使用される。本発明の
カプセル化エポキシ樹脂接着剤により固着できる螺着部
材としては、ネジ、ボルト、ナット、ネジ穴等を挙げる
ことができる。
【0030】この様にして本発明のカプセル化エポキシ
樹脂接着剤を使用する場合、たとえば、次の様な方法が
好適である。まず、螺着部材2の螺合面3に、カプセル
化エポキシ樹脂接着剤を略均一に所定の乾燥厚みになる
様に塗布、乾燥させて接着剤層4を形成する。その後、
相手方螺着部材(図示せず)に対する螺着操作を、接着
剤層4がない場合と同様にして行う。この時、接着剤層
4は所定の乾燥厚みを有するので、螺着操作の間に、2
つの螺着部材の間の剪断力により、カプセル化エポキシ
樹脂の外殻が破壊され、硬化性エポキシ樹脂が流出し、
硬化成分とが接触し、混合される。螺着操作完了後、エ
ポキシ樹脂の硬化が完了するまでの間、そのまま室温に
て放置するか、若しくは加熱して硬化を完了させる。こ
の様にして螺着された螺着部材は、螺着部材にて接合さ
れた2つの物品に衝撃や振動が加わった場合に、その接
合が破壊されることを防ぐのに適する。すなわち、本発
明の別の実施形態は、この様な効果を奏する、接着剤層
4を螺合面3に有する螺着部材2を提供する。
【0031】接着剤は、刷毛、スプレー、ディッピング
等の塗布手段により塗布することができる。接着剤層4
の厚みは、螺着操作を困難にしない(たとえば、締め付
け抵抗が高くなることを意味する。)範囲で、かつ螺着
操作の間に、2つの螺着部材の間に有効な剪断力が発生
する範囲に選択される。目安としては、螺着部材が図示
の様なボルトの場合、ねじの谷を完全に覆う様にし、か
つねじ山の谷から測定した厚みが、ねじ山の最大高さの
2倍以下になる様にするのが好適である。
【0032】
【実施例】以下、実施例を示し、本発明をより具体的に
説明する。下記実施例において使用した主硬化剤として
のプレリアクトは、以下の手順で調製した:トルエン/
n−ブタノール混合溶媒(重量比2:1)200重量部
に、1,3−(4−ジピペリジル)プロパン(DIPIP。
アミン当量:105)105重量部を溶解し、90〜10
0℃に加熱する。この溶液に、標準型液状ビスフェノー
ルA型エポキシ樹脂(エポキシ当量190)95重量部
を数回に分けて添加する。添加終了後、上記温度で約1
時間、還流を行い、その後常温に戻す。これによってア
ミン当量400の1,3−(4−ジピペリジル)プロパン
−ビスフェノールAエポキシのプレリアクト溶液を得た
(50重量パーセント溶液)。以下、この溶液を硬化剤A
と称する。
【0033】また、下記実施例で使用したカプセル化エ
ポキシ樹脂は、以下の材料を使用して、上記「4.カプ
セル化エポキシ樹脂」に記載の方法により調製した: −ホルムアルデヒド(37重量%濃度のホルマリン、固
形分651重量部) −トリエタノールアミン(8.5重量部) −尿素(650重量部) −硬化性エポキシ樹脂(ユニオンカーバイド社製、ER
L−2795、2700重量部;ビスフェノールA型の
エポキシ化合物。) −希釈用の冷水(8000重量部)
【0034】尿素−ホルムアルデヒド樹脂のプレポリマ
ー溶液の反応は、70℃の温度にて、約2時間行った。
プレポリマー溶液のpH調節には、16mlの3N塩酸を
用いた。硬化性エポキシ樹脂を添加した後の反応溶液の
攪拌回転数は、約1,200rpmであった。反応は、pH
2.2(3N塩酸による)、反応溶液の温度40℃で1
昼夜行った。中和操作には27.5重量%の濃度の水酸
化ナトリウム水溶液を用いた。得られたカプセルは、平
均直径が約50μmの略球形の形状を有し、カプセル化
エポキシ樹脂100重量部当たりに含まれる硬化性エポ
キシ樹脂は約75重量部であった。
【0035】実施例1 トルエン/n−ブタノール混合溶媒(重量比2:1)5
0重量部にポリビニルブチラール(日本モンサント:商
品名Butvar B−76)4重量部を溶解し、次に、硬化
剤A20重量部を添加した。さらに、硬化促進剤とし
て、2−ウンデシルイミダゾール(四国化成工業製:C
11Z)2重量部、充填剤としてサイリシア350(富
士シリシア化学製多孔性合成シリカ)4重量部、および
青色顔料1重量部を添加して充分攪拌した。最後にカプ
セル化エポキシ樹脂40重量部を添加し、カプセルが破
壊されない程度に軽く分散して青色接着剤組成物を得
た。
【0036】実施例2 2−ウンデシルイミダゾールの代わりに2−ヘプタデシ
ルイミダゾール(四国化成工業製:C17Z)4重量部
を添加する以外は実施例1と同様にして、青色接着剤組
成物を得た。
【0037】実施例3 硬化剤Aを添加せず、2−ウンデシルイミダゾールを硬
化剤として計6重量部添加する以外は実施例1と同様に
して、青色接着剤組成物を得た。
【0038】比較例1 トルエン/n−ブタノール混合溶媒(重量比2:1)5
0重量部に、ポリビニルブチラール(日本モンサント:
商品名Butvar B−76)4重量部を溶解し、次に、硬
化剤として1,3−(4−ジピペリジル)プロパン10重
量部のみを添加した。硬化促進剤は使用しなかった。充
填剤としてサイリシア350(富士シリシア化学製)4重
量部、青色顔料1重量部を添加して充分攪拌した。最後
に、カプセル化エポキシ樹脂40重量部を添加し、カプ
セルが破壊されない程度に軽く分散して青色接着剤組成
物を得た。
【0039】比較例2 1,3−(4−ジピペリジル)プロパンの代わりに硬化剤
A77.2重量部を使用する以外は比較例1と同様の手
順にして接着剤組成物を得た。
【0040】比較例3 2−ウンデシルイミダゾールの代わりに2−エチル−4
−メチルイミダゾール(2E4MZ)1重量部を使用する
以外は実施例1と同様にして接着剤組成物を得た。
【0041】比較例4 2−ウンデシルイミダゾールの代わりに1−ベンジル−
2−メチルイミダゾール(1B2MZ)1.8重量部を使
用する以外は実施例1と同様にして接着剤組成物を得
た。
【0042】以上の実施例1〜3および比較例1〜4の
組成物の配合を表1に示す。
【表1】
【0043】次の表2に、各硬化剤および硬化促進剤の
水に対する溶解性を示す。
【表2】
【0044】実施例1〜3および比較例1〜4で得た接
着剤組成物それぞれを、クロメート処理したM8×1.
25(JIS B 0205規格による)(有効ねじ部
長さ=20mm)ボルト(各サンプルごとに15本)に
塗布し、65℃のオーブン中、30分間乾燥し、溶媒を
揮発させた。各5本のボルトを、恒温恒湿オーブン中、
65℃、80%RHで10日間または25日間、湿熱老
化した。老化終了後のボルト(各5本)を、外観を観察
した後に標準ナットを締め込んだ。また、残りの5本の
ボルトは、老化処理せずに、標準ナットに締め込んだ。
この時、各ナットの締め付け抵抗をトルク値として記録
した。この締め付け抵抗が高いと、実使用時に締め付け
装置や作業者に負担がかかってしまう。評価試験に使用
したM8サイズのボルト−ナットでは10kg・cm以下の
締め付け抵抗が望ましい。
【0045】ナットが接着剤塗布ボルトの座面に達した
ら、150kg・cmの締め付けトルクをかけ、室温で72
時間、接着剤を養生した。この後、戻しトルクをトルク
レンチで測定した。表3に実施例1〜3および比較例1
〜4の評価結果を示す。
【0046】
【表3】
【0047】上記試験において、比較例1の接着剤組成
物を用いた場合、締め付け抵抗は湿熱老化によって上昇
することはなかったが、1,3−(4−ジピペリジル)プ
ロパンの溶出による部分白化が認められた。また、戻し
トルクは、初期締め付けトルクより高かったが、60
℃、80%RHで25日間の湿熱老化後、戻しトルクの
著しい減少が見られた。
【0048】比較例2の接着剤組成物では、DIPIP
をプレリアクトしているため、白化現象は抑制され、ま
た戻しトルクの湿熱老化による低下も認められなかった
が、ナットの締め付け抵抗が、初期の段階で10kg・cm
以上と高く、実使用時の作業性の低下が予測される。比
較例3および4の接着剤組成物では、湿熱老化によって
マイクロカプセル内でエポキシ樹脂が硬化反応を起こし
てしまい、ナットの締め付け抵抗が100kg・cmを越え
て極端に上昇し、使用不可能であった。
【0049】これらの比較例の接着剤組成物に対し、実
施例1〜3の接着剤組成物では、湿熱老化後に白化現象
は起こらず、締め付け抵抗も安定で、72時間放置後の
戻しトルクも150kg・cm以上を発現しており、螺着部
材の緩み止めや密封が確実に達成されていた。以上のと
おり、本発明の接着剤組成物は螺着部材へ塗布乾燥後か
ら螺合締結までの保存安定性を向上させ、螺着部材が過
酷な環境下に放置されても締結後の緩み止めや密封を確
実に達成し得るものであった。
【0050】
【発明の効果】本発明のカプセル化エポキシ樹脂組成物
は、それを接着剤の材料として使用し、螺着部材を被着
体として使用した場合、その螺合面に塗布して接着剤層
を形成した後、高温高湿下や、雨露に直接暴露される様
な場所で保存した時の、(i)硬化成分の再析出による
白化現象による外観不良、並びに(ii)硬化成分がカプ
セルの外殻を通して内部に浸透し、螺着操作前に硬化性
エポキシ樹脂の硬化の進行による締め付け抵抗の上昇
(ボルトが締めにくくなる。)、および最終固着トルク
の低下(螺着完了後の緩み防止効果が低下すること)。
を防止できる。
【図面の簡単な説明】
【図1】 本発明の接着剤組成物により固着される螺着
部材の一例の部分断面正面図。
───────────────────────────────────────────────────── フロントページの続き (51)Int.Cl.6 識別記号 庁内整理番号 FI 技術表示箇所 C09J 163/00 JFM C09J 163/00 JFM JFP JFP // C09J 7/00 JHH 7/00 JHH

Claims (6)

    【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】 (a)溶媒、 (b)該溶媒中に分散された、硬化性エポキシ樹脂内包
    マイクロカプセル、および (c)該溶媒中に分散または溶解された、長鎖アルキル
    基を分子内に有する水不溶性のイミダゾール化合物を含
    有する、該エポキシ樹脂を硬化させる硬化成分、を含ん
    でなるカプセル化エポキシ樹脂組成物。
  2. 【請求項2】 前記長鎖アルキル基が、炭素数10〜1
    8のアルキル基である請求項1に記載のカプセル化エポ
    キシ樹脂組成物。
  3. 【請求項3】 前記マイクロカプセルの外殻が、尿素樹
    脂からなる請求項1または2のいずれかに記載のカプセ
    ル化エポキシ樹脂組成物。
  4. 【請求項4】 前記イミダゾール化合物の含有量が、前
    記硬化性エポキシ樹脂100重量部に対して、2〜50
    重量部の範囲である請求項1〜3のいずれかに記載のカ
    プセル化エポキシ樹脂組成物。
  5. 【請求項5】 請求項1の組成物と、前記溶媒中に分散
    または溶解されたバインダーとを含んでなるカプセル化
    エポキシ樹脂接着剤。
  6. 【請求項6】 螺着部材と、その螺合面に塗布された請
    求項5の接着剤から形成された接着剤層とからなる螺着
    部品。
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