JPH09217163A - 自己補修作用を有するガラス質溶射材料被覆部材とその製造方法 - Google Patents

自己補修作用を有するガラス質溶射材料被覆部材とその製造方法

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JPH09217163A
JPH09217163A JP8026875A JP2687596A JPH09217163A JP H09217163 A JPH09217163 A JP H09217163A JP 8026875 A JP8026875 A JP 8026875A JP 2687596 A JP2687596 A JP 2687596A JP H09217163 A JPH09217163 A JP H09217163A
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貞人 重村
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Abstract

(57)【要約】 【課題】 塩化物腐食環境に強い溶射材料被覆部材を提
供すること、とくに、皮膜を複合化することで気孔の影
響を少なくすると同時に、ガラス材料を溶射して耐食性
のより一層の向上を図ること。 【解決手段】 鋼鉄製基材の表面に、少なくともトップ
コート溶射皮膜との境界部に酸化物を含有するアンダー
コート溶射皮膜を有し、このアンダーコート溶射皮膜上
には、金属,酸化物,硼化物,炭化物および炭化物サー
メットのうちから選ばれるいずれか1種以上とガラス材
料との混合物を溶射してなるガラス質混合溶射皮膜から
なるトップコートを形成した自己補修作用を有するガラ
ス質溶射材料被覆部材と、その製造方法。

Description

【発明の詳細な説明】
【0001】
【発明の属する技術分野】本発明は、自己補修作用を有
するガラス質溶射材料被覆部材とその製造方法に関し、
特に焼却処理によって腐食性の金属塩化物や塩化水素ガ
スを発生する都市ごみおよび工業廃棄物の焼却プラント
やその廃熱回収ボイラの構成部材として用いられるもの
であり、さらには焼却プラントの燃焼残渣物をはじめ、
工業用水,下水道処理プラントの汚泥の加熱減容化処理
プラントにも適用される溶射材料被覆部材である。
【0002】
【従来の技術】都市ごみの中には、一般家庭や料理店、
飲食店からの厨房残渣が多く、その中には食塩 (NaCl)
を含む調味料が多量に含まれている。また、包装紙や容
器類として使用されるプラスチックス (例えば、塩化ビ
ニル、塩化ビニリデンなど) もまた多く、その多くは塩
素化されているため、これらを焼却すると、極めて腐食
性の高い塩化水素ガスとなり、ときにはその一部が酸化
されて塩素ガスに変化している。従って、都市ごみ焼却
設備や廃熱回収ボイラなどに用いられている部材は著し
く腐食される。
【0003】また、この都市ごみ中には、アルミニウム
缶、亜鉛めっきや錫めっき製品をはじめ各種の使用済み
乾電池類などの金属製品も含まれており、これらが燃焼
ガス中でHCl やCl2 などと反応して低融点で腐食性の強
い塩化物 (例えば、AlCl3 ,ZnCl2, SnCl2など) を生成
し、同様に前記焼却設備や廃熱ボイラの伝熱管壁などに
付着してこれらを腐食する。
【0004】以上説明したように、ごみ焼却設備の耐熱
鋳鋼製の火格子をはじめ耐火れんが支持金具などは、一
般に甚だしく腐食損耗しており、短期日のうちにその機
能を喪失することになる。上記廃熱ボイラもまた、塩化
物を主成分とする燃焼残渣物が伝熱面に付着すると著し
く腐食されるため、長期間にわたって安定した運転がで
きなくなるという問題があった。しかも、かかる腐食の
反応は、高温になるほど顕著で、例えば、廃熱ボイラな
どは蒸気温度を330〜350℃程度に抑制して運転し
なければならず、都市ごみ燃焼を有効利用できないとい
う課題があった。
【0005】このような問題点に対し、従来、次のよう
な対策が講じられている。 (1) 火格子材料やボイラ伝熱管材料を改善して耐食性を
向上させる。 (2) ボイラ伝熱管、特に温度の高い過熱管などに耐食性
セラミックスを被覆する。 (3) ボイラ伝熱面に、Ni−Cr合金材料を溶射被覆する。 (4) 高温の都市ごみ燃焼排ガス中に水を散布して、その
温度を低下させ、腐食性を緩和する。 (5) 都市ごみを一般焼却材とプラスチックまたは金属な
どの不燃品などに分別して、なるべく腐食性の塩類や排
ガスを発生させないようにする。 (6) 都市ごみ中に、Ca化合物 (Ca(OH)2, CaCO3) を添加
して燃焼し、発生するHClガスをCaCl2 として固形化
し、その腐食性を緩和させる。
【0006】しかし、(1) の金属材料の耐食性向上策
は、高価なNi,Crなどの含有量の増加を招くため、経済
的でないばかりか、例えば、ボイラ伝熱管として各種の
ステンレス鋼管やNi−Cr合金管を使用したとしても、塩
化物や塩化水素ガスに対して十分な耐食性を期待するこ
とはできない。(2) のボイラ過熱管などにセラミックを
被覆するときには、ボイラの運転と停止に伴う熱衝撃に
よって、割れや局部的剥離が発生するため、十分な効果
を発揮することができない。(3) のボイラ伝熱管へのNi
−Cr合金の溶射施工は、腐食減肉した伝熱管への対症療
法としての価値はあるものの、廃熱ボイラ蒸気温度の高
温化対策としては十分でない。また、この溶射皮膜は、
気孔率が高く、そのために腐食性の金属塩化物や塩化水
素ガスに対する耐腐食性が十分でない。(4) の高温の都
市ごみ燃焼排ガス中への水の散布は、排ガスの保有する
熱エネルギーの損失を招くとともに、ボイラ出口に設け
られている集塵装置、脱硫、脱硝、脱塩装置および煙突
などに対する硫酸露点腐食または塩酸露点腐食を助長さ
せる原因となっている。(5) の都市ごみの分別処理は、
燃焼条件や燃焼排ガスの安定には寄与するものの、その
腐食性の軽減に対しては、抜本的対策とはなっていな
い。(6) の都市ごみ中にCa化合物を添加する方法は、一
時的には燃焼ガス中のHCl成分の減少に寄与するもの
の、反応生成物のCaCl2 はオーステナイト系ステンレス
鋼の応力腐食割れを誘発するおそれがあるほか、非常に
吸湿性が強いため、都市ごみ焼却プラントが運転停止し
た場合には、空気中の水分を吸湿して加水分解し、遊離
塩酸を生成する。このために、焼却プラントを停止した
後でも腐食が進行し、設備稼動率が低いという問題点が
ある。
【0007】
【発明が解決しようとする課題】本発明は、都市ごみ焼
却プラントや廃熱回収ボイラなどに用いられる部材の腐
食防止対策として適用されている従来技術の問題点を解
決できるガラス質溶射材料被覆部材を提案するものであ
る。 (1) 溶射皮膜は一般に、気孔が存在するため、都市ごみ
の燃焼によって発生する腐食性の高い金属塩化物, HCl
ガスあるいは Cl2ガスが、この気孔を通じて該皮膜内部
に侵入して基材に接触する。その結果、耐食性に優れた
溶射材料を被覆したとしても、前記気孔を通じて基材の
腐食が進行し、ひいては基材の表面から該溶射皮膜の剥
離が起こり、その耐用期間が比較的短いものとなる。 (2) 焼却プラントでは、燃焼可能な都市ごみ中に、飲料
用の金属製容器 (例えば、市販の缶コーヒー,缶ビール
空き缶) が混在しており、これらの金属材料が溶射皮膜
上に落下すると、該皮膜に亀裂や局部的剥離が発生す
る。また、焼却プラントの補修時などには、補修用の足
場や補修工具との接触によっても、溶射皮膜にしばしば
局部的な亀裂が発生する。ところが従来、このような損
傷を受けた溶射皮膜を、焼却プラントの運転中に補修す
ることは困難であり、現在のところ全く対策は行われて
いない。
【0008】すなわち、本発明の主たる目的は、塩化物
腐食環境に強い溶射材料被覆部材を提供することにあ
る。本発明の他の目的は、皮膜を複合化することで気孔
の影響を少なくすると同時に、ガラス材料を溶射して耐
食性のより一層の向上を図ることにある。本発明の他の
目的は、溶射皮膜 (基材−アンダーコート−トップコー
ト) 相互間の密着性の向上を図り、部材の耐用性を向上
させることにある。本発明の他の目的は、アンダーコー
ト中に酸化物を分散含有させるか、その表層部に酸化物
層を形成してトップコートとの密着性の向上を図ること
にある。本発明の他の目的は、トップコートの表層部
に、加熱による再溶融ガラス層を形成して耐食性のより
一層の向上を図ることにある。本発明の他の目的は、ト
ップコート中に、ガラス材料と金属や酸化物、炭化物等
との混合物にかかるガラス質混合溶射材料を溶射して、
このトップコート溶射皮膜に自己補修作用を付与し、部
材のメインテナンスコストを低下させることにある。本
発明のさらに他の目的は、トップコートのさらにその外
側,すなわち、最外層として純ガラス溶射層、もしく
はアルカリ金属の珪酸塩化合物や硼酸塩化合物あるい
はメチルシリケート,エチルシリケート,珪素質含有樹
脂,ジメチルシリコーン,テトラ・エトキシ・シラン,
テトラ・ブトキシ・シランなどの封孔のための前駆物質
である封孔材料を塗布・噴霧層 (この層は後で加熱され
ると、SiO2やB2O3を生成して封孔作用を生じるようにな
る) を形成して、耐食性と自己補修作用をより一層向上
させることにある。
【0009】
【課題を解決するための手段】上述した目的の実現に有
効な手段として、本発明では、 (1) 基材表面を、ブラスト処理して鉄さびなどの異物を
除去するとともに粗面化した後、その基材表面にアンダ
ーコートとして、Ni−Cr,Ni−Cr−Fe,Ni−Cr−Co,Ni
−Cr−Al−Feなどの金属材料あるいは Cr3C2, WC, TiC
などの炭化物サーメットとAl粉とからなる溶射材料を溶
射して、酸化物含有溶射皮膜を形成する。次いで、その
アンダーコート溶射皮膜上に、トップコートとして、前
記アンダーコート用溶射材料、例えば、Ni,Cr,Ni−Cr
合金等および炭化物サーメットをはじめ、酸化物,硼化
物,炭化物,炭化物サーメットから選ばれるいずれか1
種以上の粉末と、ガラス材料との混合粉末を溶射施工す
る。もちろん、このまま実用に供してもよいが、トップ
コート溶射皮膜を炭化水素の燃焼炎でガラス質材料の融
点以上に加熱して再溶融ガラス層を形成すると、気孔の
ないトップコートを得ることができること、 (2) 基材表面をブラスト処理した後、前記アンダーコー
ト溶射皮膜を施工し、その上のトップコート溶射皮膜の
形成に際し、ガラス材料の混合割合をアンダーコート側
ほどガラス材料が少なく、外面側ほど多く含まれるよう
に段階的に変化させた傾斜配合にかかる溶射材料を溶射
施工し、その後、そのトップコート溶射皮膜を加熱して
ガラス材料を溶融して最外層に再溶融ガラス層を形成さ
せること、 (3) 基材表面をブラスト処理後、前記(2) のトップコー
ト溶射皮膜、すなわち、耐食金属材料とガラス材料の混
合割合を、漸次的傾斜配合にかかる溶射材料を順次溶射
し、その後加熱してガラス質材料層を再溶融させること
で外表面に再溶融層を形成すること、を提案する。 (4) 前記(1),(2),(3) の複合溶射皮膜の上に、100 %ガ
ラスからなる純ガラス溶射層を形成した後、さらにこの
純ガラス層を加熱溶融して再溶融ガラス層としてもよ
い。 (5) 本発明においては、さらに、前記(1),(2),(3) の複
合溶射皮膜の上に、加熱されたときにSiO2,B2O3を生成
する前駆封孔材料の塗布もしくは噴霧した層を設けても
よい。
【0010】以上説明したように本発明は、溶射皮膜中
にガラス材料を混合することによって、加熱によりガラ
ス材料のみが容易に溶融軟化現象を示す。従って、都市
ごみ焼却プラントの運転時に発生する焼却熱を利用し
て、前記複合溶射皮膜を加熱すれば、該皮膜中に含まれ
る気孔や割れなどの欠陥部は、自己修復作用によって自
然に消滅させることが可能となる。
【0011】すなわち、本発明は、(1) 鋼鉄製基材の表
面に、アンダーコート溶射皮膜と、その上に被覆したト
ップコート溶射皮膜とからなる多層皮膜を形成してなる
部材において、前記アンダーコート溶射皮膜は、全体も
しくは少なくともトップコート溶射皮膜との境界部に酸
化物を含有しており、一方、前記トップコート溶射皮膜
は、金属,酸化物,硼化物,炭化物および炭化物サーメ
ットのうちから選ばれるいずれか1種以上とガラス材料
との混合物を溶射してなるガラス質混合溶射皮膜にて形
成したことを特徴とする自己補修作用を有するガラス質
溶射材料被覆部材、および(2) 鋼鉄製基材の表面に、ア
ンダーコート溶射皮膜と、その上に被覆したトップコー
ト溶射皮膜とからなる多層皮膜を形成してなる部材にお
いて、前記アンダーコート溶射皮膜は、全体もしくは少
なくともトップコート溶射皮膜との境界部に酸化物を含
有しており、一方、前記トップコート溶射皮膜は、金
属,酸化物,硼化物,炭化物および炭化物サーメットの
うちから選ばれるいずれか1種以上とガラス材料との混
合物を溶射してなるガラス質混合溶射皮膜にて形成し、
かつ該ガラス質混合溶射皮膜の表層部に再溶融ガラス層
を有することを特徴とする自己補修作用を有するガラス
質溶射材料被覆部材、である。ただし、上記アンダーコ
ート溶射皮膜は、Al2O3 を含有し、かつAlその他の金属
・合金または炭化物系サーメットのうちから選ばれる1
種以上の材料とを溶射した酸化物含有溶射皮膜であり、
その厚さが20〜500μm であることを特徴とする。
【0012】一方、前記トップコート溶射皮膜は、95
〜5 vol%の金属,酸化物,硼化物,炭化物および炭化
物サーメットのうちから選ばれるいずれか1種以上の粉
末と5〜95 vol%のガラス材料との混合粉末を溶射し
てなるガラス質溶射皮膜であり、その膜厚が10〜10
00μm であることを特徴とし、かつこのトップコート
溶射皮膜は、金属,酸化物,硼化物,炭化物および炭化
物サーメットのうちから選ばれるいずれか1種以上の粉
末とガラス材料との混合割合が、段階的もしくは漸次的
に変化する傾斜配合粉を溶射して形成されたものである
ことを特徴とするものである。
【0013】なお、上記傾斜配合粉を溶射して形成した
トップコート溶射皮膜は、外表面ほどガラス材料の配合
量が段階的もしくは漸次的に増加することを特徴とす
る。そして、再溶融層を含む上記トップコート溶射皮膜
のガラス材料は、SiO2,Na 2O, K2O, B2O3, Al2O3,li
2O, CaO, MgO, TiO2, ZnO, ZrO2, SnO, SrO, BaO, CoO
の中から選ばれるいずれか1種以上のガラス形成酸化物
を主成分として含み、かつそれの線膨張係数が4〜14×
10-16/℃,融点が 450〜750 ℃であることを特徴とす
る。
【0014】また、本発明にかかる部材は、上記各発明
のうちのトップコート溶射皮膜上に、さらに最外層とし
て、100%ガラス材料を溶射して形成される、純ガラ
ス溶射層もしくはアルカリ金属の珪酸塩化合物や硼酸塩
化合物などの前駆封孔材料の付着層を有することを特徴
とするガラス質溶射材料被覆部材である。
【0015】次に本発明は、上記部材を製造するための
方法を提案するものである。すなわち、本発明は、(1)
鋼鉄製基材の表面に、金属・合金もしくは炭化物系サー
メットのうちから選ばれる1種以上の材料を溶射してア
ンダーコート溶射皮膜を形成し、その上に金属,酸化
物,硼化物,炭化物および炭化物サーメットのうちから
選ばれる1種以上の粉末とガラス材料との混合物を溶射
してガラス質混合溶射皮膜を形成することを特徴とする
自己補修作用を有するガラス質溶射材料被覆部材の製造
方法、および(2) 鋼鉄製基材の表面に、金属・合金もし
くは炭化物系サーメットのうちから選ばれる1種以上の
材料を溶射してアンダーコート溶射皮膜を形成し、その
上に金属,酸化物,硼化物,炭化物および炭化物サーメ
ットのうちから選ばれる1種以上の粉末とガラス材料と
の混合物を溶射してガラス質混合溶射皮膜を形成し、次
いでガラス質混合溶射皮膜をガラス材料の融点以上の温
度に加熱して、前記ガラス材料を再溶融することによっ
て表層部に再溶融ガラス層を形成することを特徴とする
自己補修作用を有するガラス質溶射材料被覆部材の製造
方法、である。ただし、上記製造方法においては、トッ
プコートであるガラス質混合溶射皮膜の上に100 %ガラ
ス材料にかかる溶射材料を溶射して、最外表面に純ガラ
ス溶射層を被覆形成することが好ましい実施形態であ
る。
【0016】また、これらの方法においては、トップコ
ート溶射皮膜中の再溶融層を、都市ごみ焼却プラントの
燃焼熱を利用して形成することが好ましい実施の形態と
なる。なお、これらの方法において、アンダーコート溶
射皮膜の形成に当たっては、溶射材料として、Ni,Fe,
Fe−Cr,Fe−Ni−CrまたはNi−Crである金属・合金また
は炭化物サーメットの他に、Alを 0.1〜3wt%添加した
ものを用いることが好ましい。一方、トップコート溶射
皮膜の形成に当たっては、アンダーコート表面から外表
面に向けて、溶射材料中のガラス材料の配合量を段階的
もしくは漸次的に増加させた傾斜配合粉を溶射すること
が好ましい。
【0017】さらに本発明においては、都市ごみ焼却プ
ラント現地において、金属質溶射皮膜のアンダーコート
を施工した後、この上にガラス質の溶射皮膜を形成する
際、プラントの構造上、また基材質の関係上、アンダー
コートの保有熱のために該トップコートの施工が困難に
なる場合には、該トップコートの表面に単に前駆物質と
なる前記封孔材料を被成して、使用環境で発生する熱に
よってSiO2,B2O3を生成して表面の封孔ができるように
してもよい。すなわち、常温の金属質のテンダーコーム
溶射皮膜の上にガラス質トップコート溶射皮膜を施工し
ても、このトップコート溶射皮膜は多孔質となりやす
い。都市ごみ焼却プラントが運転されると、都市ごみの
燃焼ガス中に含まれている腐食性ガス (例えば、HCl, C
l2) がガラス質皮膜の気孔部から内部へ侵入することと
なる。その結果、プラントの温度が上昇してガラスの融
点以上となって、気孔部が閉鎖されたとしても、内部に
侵入した腐食成分によって金属質アンダーコート溶射皮
膜が腐食され、内部から皮膜が破壊されるおそれがあ
る。
【0018】そこで本発明では、アンダーコートを予熱
することなく、ガラス質もしくはガラス質材料を含むト
ップコート溶射皮膜を施工した場合、その上にSiO2およ
び/またはB2O3を含む封孔材料を塗布するものである。
この封孔材料の特徴は、ガラス質を構成する成分を含む
ところにある。ガラス質トップコート溶射皮膜の上に上
記封孔材料を塗布すると、気孔部に充填され、腐食性ガ
スの侵入を防ぐとともに、プラント運転によって使用環
境の温度が上昇すると、ガラス質材料と反応して融合化
し、その結果、ガラス質トップコート溶射皮膜の表層部
と一体化して完全な防食皮膜を形成することになる。こ
のような作用機構を有するSiO2系,B2O3系化合物とし
て、次のようなものがあり、使用に当たっては、水溶
液,スラリー,融体 (ゾル,ゲルなどの粘稠な状態) と
して、ガラス質トップコート溶射皮膜上に塗布もしくは
噴霧し、後加熱によって融合一体化する封孔材料の付着
層を予め形成しておくのである。
【0019】なお、上記封孔材料としては、次のような
ものが使用できる。 (1) 無機化合物として、アルカリ金属の珪酸塩化合物
(例えばNa2SiO3, K2SiO3など) 、アルカリ金属の硼酸塩
化合物 (例えばNa2B2O7, K2B2O7) (2) 有機化合物として、メチルシリケート,エチルシリ
ケート,珪素質含有樹脂,ジメチルシリコーン,テトラ
・エトキシ・シラン,テトラ・ブトキシ・シラン など、高温状態に加熱されたとき、最終的にはSiO2もし
くはB2O3となって、ガラス質成分と融合する化合物であ
れば、有機質,無機質何れであっても、また、これの化
合物を混合して封孔材料としても適用可能である。
【0020】
【発明の実施の形態】以下に、都市ごみ焼却プラント用
としてとりわけ好適な高耐食性溶射材料被覆部材につい
て説明する。本発明にかかる高耐食性溶射材料被覆部材
の断面構造を、図1(a) および図1(b) に示した。この
図において、1は、鋼鉄製基材、2は、金属・合金,酸
化物,炭化物サーメットなどの溶射粉末を溶射被覆して
なるアンダーコート溶射皮膜、2aは、酸化物層、3
は、上記溶射粉末とガラス材料との混合粉を溶射して形
成されるトップコート溶射皮膜、3aは、再溶融ガラス
層、4は、ガラス材料100%の最外層の純ガラス溶射
層である。以下、図1に示した溶射被覆部材についてさ
らに詳しく説明する。
【0021】(1) 図1(a) は、鋼鉄製基材1の表面を脱
脂し、ブラスト処理して粗面化した後、この基材1表面
に、金属もしくは炭化物サーメット溶射皮膜をアンダー
コートとして形成させる。そして、その上に、金属・合
金,酸化物,硼化物,炭化物,炭化物サーメットなどか
ら選ばれるいずれか1種以上の粉末とガラス材料を混合
した混合溶射材料を用い、複合型のトップコート溶射皮
膜を形成したものである。
【0022】ここで、前記アンダーコート溶射皮膜形成
の目的は、基材1との接合およびトップコート溶射皮膜
3との密着性向上を図るとともに、アンダーコート溶射
皮膜自体が耐熱性,耐食性に優れていることが必要であ
る。このため、アンダーコート用溶射材料としては、 金属系材料として、Cr,Ni,Fe,Mo,Coまたはこれ
らの合金とAl 炭化物サーメット系材料として、WC, Cr3C2, NbC,
TiC, WTiC, ZrC, TaC, HfC, MoC 等の炭化物に、上記
の金属もしくはそれらの合金およびAlを混合あるいは焼
結したものが好適に用いられる。
【0023】また、本発明においては、このアンダーコ
ート溶射皮膜については、とくにトップコートとの密着
性を向上させるために、該皮膜の全体もしくは少なくと
もトップコート溶射皮膜との境界部に酸化物を含有させ
るか、酸化物層とすることが望ましい。一般に、大気中
で形成された金属溶射皮膜は、溶射熱源中における高温
加熱と空気中の酸素との接触によって酸化物を生成する
ため、金属とその酸化物から構成されているのが普通で
ある。
【0024】かかる酸化物の存在は、ガラス質との密着
性向上に役立つが、実際の溶射処理の下で得られる酸化
物の生成だけでは十分でない。そこで本発明では、次の
ような手段を講じて、該アンダーコート溶射皮膜の少な
くともその上層部となるガラス質トップコート溶射皮膜
との接触界面部に、密着性を向上さすための酸化物層を
形成することにした。
【0025】こうした酸化物を皮膜中に高濃度で分散さ
せるか、少なくとも表層部に酸化物を積極的に生成させ
る方法として、本発明は次の手段を用いる。 (1) たとえば、Ni,Fe,Fe−Cr,Fe−Ni−Cr,Ni−Crな
どの金属およびその合金に、さらに酸素との親和力の高
いAlを 0.1〜3wt%添加した溶射金属材料を溶射する。
このAlを添加した溶射金属材料は、溶射熱源中におい
て、Ni,Fe,Crなどの金属よりAlが早く酸化して、溶射
皮膜を構成する粒子の表面に多くのAl2O3 を生成する。 (2) (1) 項の溶射金属材料の粉末中に、Al粉末を 0.1〜
3wt%添加した後、これらをよく混合し、溶射すること
によってもAl2O3 を含む溶射皮膜を形成させることがで
きる。 (3) 通常の方法によって金属溶射皮膜を形成した後、こ
れを電気炉中あるいは可燃性ガスの燃焼フレームによっ
て(200〜500 ℃) 加熱して、溶射皮膜の表面に酸化物を
厚く生成させる。この処理は、ガラス質の溶射皮膜を施
工する際の予備加熱 (予熱) として利用することができ
る。 (4) 炭化物サーメット、例えば、WC−Co,WC−Ni−Cr,
Cr3C2 −Ni−Crなどの溶射皮膜も、溶射熱源中で、金属
成分はもとより炭化物も酸化するので、ガラス質溶射皮
膜との密着性は良好である。ただし、必要に応じ、かか
る炭化物サーメット皮膜に対しても、200 〜500 ℃の加
熱、もしくはバインダーとして添加しているNi,Ni−C
r,Coなどの金属成分に対し、さらにAlを 0.1〜3wt%
添加しても、ガラス質皮膜との良好な密着性を得ること
ができる。
【0026】かかるアンダーコート溶射皮膜の皮膜厚さ
は、20〜500 μm とする。とくに50〜300 μm の範囲が
好適である。それは、この皮膜厚が20μm より薄い場合
はアンダーコートとしての作用が十分でなく、一方、50
0 μm より厚くしてもアンダーコートとしての作用の効
果が飽和し、経済的に不利である。また、必要に応じて
形成する表面酸化物層の厚みは、0.2 〜5μm 程度とす
ることが好ましい。
【0027】次に、上記アンダーコート溶射皮膜の上に
形成するトップコートとしてのガラス質混合溶射皮膜
は、本発明の最も特徴的な構成部分であり、次に示す溶
射材料粉末を単独もしくは2種以上をガラス材料 (独自
にガラスを形成するガラス形成酸化物) 粉末と混合状態
にして成膜したものである。 金属系材料として、Cr,Ni,Fe,Mo,CoまたはAl
と、これらの合金 炭化物系材料として、WC, Cr3C2, NbC,TiC, WTiC,
ZrC, TaC, HfCまたはMoC 等の炭化物、 酸化物系材料として、Al2O3, TiO2, MgO, ZrO2, Ta
2O5, Nb2O5またはSiO2などの酸化物、 硼化物系材料として、NiB2, CrB2, W2B5, TiB2, Zr
B2, NbB2またはTaB2などの硼化物
【0028】また、上記ガラス材料としては、Na2O, K2
O, BaO, B2O3, SiO2, MgO, CaO, PbO, LiO, SrO, SnO2
などのガラス形成酸化物を主成分として用いる。その
他、天然の長石,天然の珪石,ソーダ灰 (Na2CO3), 硼
砂(Na2B2O7) などを主原料とした、SiO2,Al2O3, B2O3,
CaF, Na2O, K2O などを主成分とし、微量成分としてCo
O, MnO2, NiO, TiO2, ZnO, CoOなどを添加したほうろう
材料も使用することができる。
【0029】これらのガラス材料は、線膨張係数が4〜
14×10-6/℃で、融点が 450℃〜750 ℃の範囲にあるも
のを用いることが望ましい。それは、線膨張係数が4×
10-6/℃より小さいと、焼却プラントの運転に伴う加熱
と停止による冷却の繰り返しを受けると破壊されること
が多く、一方14×10 -6/℃より大きいと製造そのものが
困難だからである。また、ガラス材料の融点が 450℃よ
り低いと、焼却プラントの運転時に流動落下するおそれ
があり、逆に融点が 750℃以上のガラス材料は、成分的
にSiO2量が多くなり、これにともなって線膨張係数が小
さくなり (4×10-6/℃以下となる) 、この点から本発
明用のガラス材料として不適なものとなる。
【0030】上記ガラス材料の線膨張係数と融点の調節
は、アルカリ金属成分 (Na2O, K2O)とSiO2含有量を変化
させることによって行うが、アルカリ金属成分を増加す
れば膨張力が大きくなるとともに融点が低下し、SiO2
分はその逆の物性を示す。
【0031】以上説明した金属・合金,酸化物,硼化
物,炭化物ならびに炭化物サーメットをはじめとするガ
ラス材料粉末の粒径は、5〜150 μm の範囲内のものを
使用することが望ましい。特に、10〜60μm のものが好
適である。その理由は、5μmより小さいと溶射熱源中
において過熱されて飛散する確率が高く、皮膜として付
着する確率 (歩留り) が小さくなる。一方、150 μm よ
り大きい粒径では、トップコートを構成する各種材料の
均等な分散が悪くなるうえ、融点の高い酸化物,硼化物
粉末は溶融し難くなり、ガラス材料との親和性が低下す
る原因となるからである。
【0032】かかる溶射材料粉末 (金属・合金,酸化
物,硼化物,炭化物ならびに炭化物サーメット) とガラ
ス材料との混合割合いは、前者を95〜5 vol%、ガラス
材料を5〜95 vol%にするのがよく、特にガラス材料の
皮膜厚さ方面での平均配合量が10〜30 vol%になるよう
に混合したものが好適である。それは、ガラス材料が5
vol%より少ないと自己補修作用 (詳細後述) が十分で
なく、一方95 vol%より多くても混合溶射皮膜としての
効果が飽和するからである。
【0033】上記トップコート溶射皮膜の厚さは10〜10
00μm がよく、その厚さが10μm より薄いとトップコー
トとしての機能が不十分となり、一方、1000μm より厚
い場合にはトップコートとしての機能は保持しているも
のの、成膜加工に長時間を要し、コストアップとなるの
で得策でない。
【0034】なお、アンダーコート溶射皮膜上に形成す
る該トップコート混合溶射皮膜については、その表面層
の部分を再加熱によって10〜300 μm 厚の再溶融ガラス
層を形成してもよく、またねこの皮膜のさらにその外側
に当たる部分に、最外層としてガラス材料 100%の溶射
皮膜を形成してもよい。このような多層構造の混合溶射
皮膜は、本発明の高耐食性溶射皮膜の性能を何ら損なう
ものではない。そればかりか、このような多層構造のも
のは、耐食性と自己補修作用がさらに向上する。
【0035】以上説明したようにして形成したトップコ
ート溶射皮膜は、これを可燃性ガス炎もしくは電気炉中
でガラス材料の融点以上に加熱すると、ガラス質のみを
軟化溶融させることができるが、この処理によって溶射
時に生成している気孔部が完全に消滅する。従って、本
発明にかかる溶射材料被覆部材を都市ごみ焼却プラント
などの部材として使用しても、腐食性の金属塩化物をは
じめガス状のHCl, Cl2などが該溶射皮膜中に侵入するこ
とがなくなる。
【0036】なお、本発明にかかるトップコートのガラ
ス質混合溶射皮膜の特徴の1つは、上記の加熱処理を施
さなくても、使用に当たっての都市ごみ焼却設備自身が
もつ操業時の燃焼エネルギーによっても、容易に溶射皮
膜の気孔閉塞作用,即ち、自己補修作用を示すことにあ
る。即ちこの作用は、例えば、都市ごみ焼却プラントの
廃熱回収用ボイラの腐食損耗部を、本発明にかかる溶射
被覆部材を溶射処理した場合、前記加熱処理工程を省略
して該都市ごみ焼却プラントの都市ごみ焼却設備の燃焼
エネルギーに被曝させることによっても代替 (自己補
修) できるものである。なお、都市ごみ焼却プラントの
運転中や停止時の保守点検時に、重量物の落下などによ
って溶射皮膜に亀裂が発生しても、再起動すると、都市
ごみの燃焼熱によってトップコート溶射皮膜中のガラス
質のみが溶融軟化して亀裂部を閉塞させる作用 (以下。
これを自己補修作用という) を発揮する。
【0037】本発明の特徴は、トップコート溶射皮膜の
構成にあることは上述したとおりである。とくに、材料
の配合をガラス材料だけでなく、金属や合金粉末等の混
合物としたことにある。この理由は、一般にガラスは酸
化物であるため、加熱・冷却を繰り返しても変質するこ
とがなく、その上皮膜に割れが発生しても軟化溶融して
亀裂部を補修することが可能である。しかも、このトッ
プコート溶射皮膜中に含まれている金属粉末が酸化する
ようなことがあっても、ガラス成分として含まれている
B2O3がフラックスとしての作用を示すため、金属粉末と
ガラスが分離するようなことはない。
【0038】一方において、このトップコート溶射皮膜
構成成分のうちの金属・合金や酸化物,硼化物,炭化
物,炭化物サーメットなどの粉末は、それ自体が皮膜を
形成するとともに、高温状態では軟化して耐エロージョ
ン性が低下するガラスの欠点を補う骨材としての作用を
担っており、これらの混合材料どうしが相いに欠点を補
完し合って機械的にも化学的にも強固な皮膜を形造って
いる。
【0039】(2) 図1(b) および(c) は、アンダーコー
ト溶射皮膜を図1(a) と同じ材料,同じ方法で施工した
後、その上に形成するトップコート溶射皮膜中の材料成
分の配合割合を段階的(b) または漸次的(c) に変化させ
たものである。すなわち、この皮膜中のアンダーコート
側には、金属や酸化物などの粉末材料を多くし、表面側
ほどガラス材料の割合を段階的に多くした傾斜配合例に
かかるものである。また、金属・合金,酸化物などの粉
末材料とガラス材料との配合割合を連続的に漸次変化さ
せる傾斜配合でもよい。そして、必要に応じ、最外層に
はガラス材料100 %からなる層を形成してもよい。この
ようにして得られた本発明のトップコート溶射皮膜の作
用機構は、上述した図1(a) の被覆と同様であり、自己
補修作用を有する。
【0040】なお、本発明の高耐食性溶射皮膜に使用す
る溶射法としては、アンダーコート用として、可燃性ガ
スを熱源とするフレーム溶射法、電気を熱源とするアー
ク溶射法、プラズマ溶射法、トップコート用として、上
記フレーム溶射法、プラズマ溶射法、ときには爆発溶射
法などが有効に用いられる。
【0041】
【実施例】
実施例1 この実施例では、腐食の発生原因となる溶射皮膜の貫通
気孔の有無を塩水噴霧試験によって確認した。 (1) 基材:炭素鋼(SS400) を幅50mm×長さ 100mm×厚さ
5mmに切断した後、Al2O 3 粉末を用いてその表面をブラ
スト処理した。 (2) 溶射材料 (本発明に従う溶射皮膜) アンダーコート溶射材料および溶射皮膜の厚さ 下記材料を用いプラズマ溶射法によって50μm 厚に施工
した。 a.80wt%Ni−19.5wt%Cr− 0.5wt%Al b.50wt%Ni−20wt%Cr−29.5wt%Fe− 0.5wt%Al c.73wt%Cr3C2 −20wt%Ni−6.5 wt%Cr− 0.5wt%Al トップコート溶射材料および溶射皮膜の厚さ 下記材料を用いプラズマ溶射法により 100μm 厚に施工
した。 a.(80wt%Ni−20wt%Cr)80vol%− (下記成分ガラス) 20
vol% b.(100wt%Al2O3) 80vol%− (下記成分ガラス) 20vol% c.(50wt%Ni-20wt%Cr-30wt%Fe)70vol% − (下記成分ガ
ラス)30vol% d.(73wt%Cr3C2-20wt%Ni-7wt%Cr)85vol%− (下記成分
ガラス)30vol% ガラス成分として、10wt%B2O3-25wt%Na2O-5wt%CaO-60wt
%SiO2 を用いた。 最外層に施工する純ガラス溶射層のガラス成分 上記トップコート皮膜に用いたガラス成分と同じものを
プラズマ溶射法により30μm 厚に施工した。 (3) 溶射皮膜の加熱処理 トップコート溶射皮膜形成後の加熱処理をして再溶融ガ
ラス層を形成するものについては 820℃×1時間の条件
で処理した。なお、比較例の溶射皮膜は、アンダーコー
ト材料として下記材料を用いるとともに、 d.88wt%WC−12wt%Co e.13wt%Cr−87wt%Fe 100 %Al2O3, 60wt%Al2O3 -40 wt%TiO2のトップコー
トプラズマ溶射皮膜を、アンダーコートについては50μ
m 、トップコートは100 μm 厚にそれぞれ成膜した。
【0042】(4) 評価試験方法 JIS Z 2371(1981)塩水噴霧試験方法により96時間試験を
行い、その後24時間放置した後の試験片の外観を目視観
察することによって、赤さびの発生状況を調査した。ま
た、必要に応じ試験片の表面をフェロキシル試験液 (赤
血塩10g/l,黄血塩10g/l, NaCl 60g/l)を含ませた濾紙を
密着させることによって青色斑点の発生を調査し、赤さ
びの発生を確認した。
【0043】(5) 試験結果 試験結果を表1にまとめて示した。この結果から明らか
なように、比較例の皮膜 (No.9〜13) はトップコート溶
射皮膜の有無にかかわらず皮膜表面に赤さびが発生し、
その面積は全体の38%〜100 %に達した。この赤さびの
発生原因は、溶射皮膜に存在する貫通気孔中に塩水が浸
入して、基材のSS400 を腐食し、溶出した鉄イオンが赤
さびとなって皮膜表面に析出したものである。トップコ
ート溶射皮膜として、Al2O3(No.10),Al2O3-TiO2(No.1
3) を施工した場合も、これらの酸化物セラミックス溶
射皮膜中には貫通気孔が存在するため、赤さびの発生面
積は多少減少するものの防食皮膜としての機能は認めら
れなかった。これに対し、本発明のガラス質トップコー
ト混合溶射被覆部材を有するものは、溶射時にガラス材
料が完全溶融するため貫通気孔が消滅し、赤さびの発生
は認められない。特に最表層部に100 %ガラス膜を形成
したもの (No.2, 4, 3, 8)およびこれを820 ℃×1 時間
の条件で完全に溶融したものは、試験前と全く変化が見
られなかった。ただ、100 %ガラス膜を形成しても加熱
処理を施さない皮膜 (No.7) では微小斑点状の赤さびが
3点発生しているのが確認された。しかし、その程度は
極めて軽微であった。
【0044】
【表1】
【0045】実施例2 本実施例では、溶射皮膜に衝撃を与えて微細な亀裂を発
生させた後、これを加熱することによって亀裂を修復す
る作用について確認試験を行った。 (1) 基材: 実施例1に同じ (2) 溶射材料 アンダーコート溶射材料および溶射皮膜厚さ 下記材料を用いプラズマ溶射法によって50μm 厚に施工
した後、420 ℃に加熱して該アンダーコート溶射皮膜表
面に酸化物層の形成を促しつつ予熱し、引き続きトップ
コート材料を溶射した。 a.80wt%Ni−20wt%Cr b.73wt%Cr3C2 −20wt%Ni−7wt%Cr トップコート溶射材料および溶射皮膜厚さ a.(80wt%Ni−20wt%Cr)80vol%− (下記成分ガラス) 20
vol% b.(100%Al2O3) 85vol%− (下記成分ガラス) 15vol% c.(100%NiB) 85vol%− (下記成分ガラス)15vol% ガラス成分として、11wt%B2O3-14wt%Li2O-3wt%Al2O3-2w
t%SrO-70wt%SiO2 最外層に施工する場合のガラス成分 上記ガラス成分をプラズマ溶射法により30μm 厚に施工
した。なお、比較例の溶射皮膜として、表1のNo.10(ア
ンダーコート80wt%Ni −20wt%Cr ,トップコート100%Al
2O3)、No.13(アンダーコート13wt%Cr −87wt%Fe ,トッ
プコート60wt%Al2O3−40wt%TiO2)に加え、トップコート
として88wt% WC−12wt% Coおよび73wt%Cr3C2−20wt% Ni
−7wt%Crも供試した。 溶射皮膜の加熱処理条件: 実施例1に同じ
【0046】(3) 評価試験方法 全試験片をJIS H 8663(1961)アルミニウム溶射製品試験
方法に規定されている落下球試験法 (直径40mmの鋼球を
1mの高さから45°に傾斜させた試験片上に落下させ
る) によって、予め溶射皮膜に亀裂を発生させた後、82
0 ℃×1時間加熱した。その後、実施例1と同条件の塩
水噴霧試験を行い赤さびの発生状況を調査した。
【0047】(4) 試験結果 表2に試験結果を要約した。この結果から明らかなよう
に、比較例の溶射皮膜(No.7〜10) は、鋼球の落下によ
る溶射皮膜の亀裂発生に加え、塩水噴霧試験によっても
多量の赤さびの発生が認められた。これらの溶射皮膜は
気孔を含むうえ、鋼球の落下によってトップコートに、
目視によっても判別可能な割れが多数観察されており、
これらの割れは加熱処理を行っても融合することがない
ため、塩水の内部浸入が容易であり、基材との腐食反応
の結果、多量の赤さびの発生を促したものと考えられ
る。これに対し、本発明の皮膜は、鋼球の落下衝突によ
って、比較例の溶射皮膜と同様に割れは発生するもの
の、加熱処理によってトップコート中に含まれているガ
ラス質および最表層として形成したガラス層は完全に融
合して、塩水の内部浸入を防ぐため、塩水噴霧試験によ
っても赤さびの発生は認められなかった。すなわち、本
発明の溶射皮膜は、機械的衝撃を受けて割れを発生して
も、皮膜中に含まれているガラス質の融点以上の温度に
加熱される環境下では、割れ発生部を自らが補修する機
能を発揮するのである。
【0048】
【表2】
【0049】実施例3 本実施例では、都市ごみ燃焼雰囲気下における耐食性を
調査した。 (1) 基材: ボイラ用低合金鋼(STBA24)を用いて幅50mm
×長さ50mm×厚さ3mmに切断加工したものを試験片基材
とした。 (2) 溶射材料 アンダーコート溶射材料および溶射皮膜厚さ 下記材料を用いてプラズマ溶射法によって50μm 厚に施
工した。 a.50wt%Ni−49.5wt%Cr−0.5 wt%Al トップコート溶射材料および溶射皮膜厚さ,溶射皮
膜構造 アンダーコートに下記材料を用いてプラズマ溶射法によ
って200 μm 厚に施工した。 a.50wt%Ni−50wt%Cr/ガラス質=80/20 b.100 %CrB2/ガラス質=80/20 c.100 %Al2O3 /ガラス質=80/20 上記材料に混合するガラス成分として27wt%B2O3-18wt%L
iO2-4wt%SrO-3wt%CaO-2wt%Al2O3-2wt%TiO2-2wt%ZnO-2wt
%ZrO2-2wt%SnO2-2.5wt%BaO- 残りwt%SiO2 なお、本実施例では、50wt%Ni−50wt%Crとガラス粉末
の混合割合を段階的に変化したトップコートを構成した
構造のものも供試した。 50wt%Ni−50wt%Cr/ガラス質=95/5 50μm 50wt%Ni−50wt%Cr/ガラス質=80/20 50μm 50wt%Ni−50wt%Cr/ガラス質=50/50 50μm 50wt%Ni−50wt%Cr/ガラス質=20/80 50μm 溶射皮膜の加熱処理条件: 実施例1に同じ なお、比較例として、トップコートにガラス成分を含ま
ない皮膜および溶射皮膜を形成しないボイラ用低合金鋼
を用いた。
【0050】(3) 評価試験方法 都市ごみ焼却灰を模擬した下記組成の薬品を腐食媒体と
して試験片の表面に20mg/cm2の割合で塗布し、焼却炉の
燃焼ガスを模擬した雰囲気中で高温腐食試験を行い、試
験片表面の外観変化と重量変化を調査することによって
耐食性を評価した。 腐食媒体:65wt%PbCl2+25wt%KCl+8wt%PbSO4 +2w
t%K2SO4 腐食温度および時間: 550℃×20時間 腐食雰囲気:1000ppmHCl+50ppmSO2+残り空気
【0051】(4) 試験結果 試験結果を表3に取りまとめて示した。この結果から、
比較例の無処理試験片(No.12) では極めて激しい腐食損
傷を受け、また、ガラス成分を含まない溶射皮膜 (No.
9, 10, 11) でも比較的強く腐食され、とくにCrB2, Al2
O3 などのトップコートでは局部的な剥離も認められ
た。これに対し本発明にかかる溶射皮膜 (No.1〜8)で
は、ガラス成分の存在によって、腐食媒体及び雰囲気中
の腐食性ガスの作用が弱くなり、外観変化が少ないう
え、腐食量も比較例の50%前後にとどまっており、都市
ごみ燃焼ガス中で優れた耐食性を発揮することが確認さ
れた。
【0052】
【表3】
【0053】実施例4 本実施例では、鉄鋼基材に金属系のアンダーコート溶射
皮膜を施工した後、その上にガラス材料を溶射する際の
アンダーコート溶射皮膜の酸化物 (酸化皮膜)存在の有
無とガラス質溶射皮膜の密着性について調査した。 (1) 基材:炭素鋼(SS400) を幅50×長さ100 ×厚さ5 mm
に切断した後、Al2O3 粉末を用いてその表面をブラスト
処理した。 (2) 溶射材料 アンダーコート溶射材料 a.80wt%Ni−20wt%Cr b.80wt%Ni−19.5wt%Cr− 0.5wt%Al c.73wt%Cr3C2 −20wt%Ni−7 wt%Cr d.73wt%Cr3C2 −20wt%Ni−6.5 wt%Cr− 0.5wt%Al アンダーコートはプラズマ溶射によつて100 μm 厚に施
工した後、400 ℃に加熱して該アンダーコート溶射皮膜
表面に酸化物層の形成を促しつつ予熱し、引き続きトッ
プコート溶射皮膜表面にガラス材料を50μm 厚にブラズ
マ溶射して純ガラス溶射層を形成した。 トップコート溶射材料 a.10wt%B2O3−25wt%Na2O−5wt%CaO −60wt%SiO2 加熱処理 トップコート施工後、電気炉中で 820℃×1 時間の熱処
理を施した。なお、比較例として、次のアンダーコート
溶射皮膜をプラズマ溶射法によって100 μm 厚に施した
ものを用いた。 a.80wt%Ni−20wt%Cr b.60wt%Ni−20wt%Cr−15wt%Co−5wt%Mo トップコート溶射上へのガラス材料溶射時は、常温 (加
熱せず) 、純ガラス溶射層の成膜後は 820℃×1時間の
熱処理を実施。
【0054】(3) 評価試験方法 150 ℃に維持した電気炉中に10分間静置した後、これ
を炉外に取り出し、常温(15℃) の圧縮空気を10分間吹
きつける操作を1サイクルとし、全試験片に対し20サイ
クル繰り返した。その後、試験片の表面を目視観察する
ことによってアンダーコートとガラス質トップコートの
密着性を調査した。
【0055】(4) 試験結果 試験結果を表4に示した。この結果から明らかなよう
に、比較例の溶射皮膜 (No.8, 9)は微細な割れが発生す
るとともに、トップコート溶射皮膜のみが処理面積の50
〜100 %にわたって剥離した。これに対し、本発明に従
う溶射皮膜 (No.1〜7 )は、トップコートのガラス質皮
膜に微細な割れが発生するもののアンダーコートとの密
着性が良好なため剥離面積は8%以下にとどまった。こ
の効果は、アンダーコート溶射皮膜を加熱することによ
る酸化皮膜の生成およびAl成分の添加によるAl2O3 の優
先的生成に起因するものと考えられる。
【0056】
【表4】
【0057】実施例5 本実施例では、金属質アンダーコート溶射皮膜を予熱す
ることなく、その上にガラス質トップコート溶射皮膜を
形成した場合の封孔材料層の効果について実験した。 (1) 基材:実施例1の炭素鋼を使用 (2) 溶射材料 (本発明に従う溶射材料) アンダーコート溶射材料および溶射皮膜の厚さ ・80wt%Ni−19wt%Cr−0.5 wt%Si−0.5 wt%Al溶射材
料を用いて、プラズマ溶射法によって50μm厚に施工し
た。 トップコート溶射材料および溶射皮膜の厚さ a.(80wt%Ni−20wt%Cr) 80 vol%− (10wt%B2O3−25
wt%Na2O−5 wt%CaO −60wt%SiO2) 20 vol% b.10wt%B2O3−25wt%Na2O−5wt%CaO −60wt%SiO2 上記組成のトップコート溶射材料を用いてプラズマ溶射
法によって 100μm厚に施工するに際し、すべてアンダ
ーコートの予熱は省略した。 (3) 溶射皮膜の加熱処理 前掲の如く施工した溶射皮膜を下記のような処理を施し
た。 a.820 ℃×1時間の加熱処理を施したもの b.加熱処理を行わず、本発明の前記封孔材料 (Na2SiO
2 の40wt%水溶液を塗布した後、200 ℃×1時間乾燥)
したもの c.(b) の処理を行った後、820 ℃×1時間の加熱処理
を施したもの (4) 比較例の皮膜として a.80wt%Ni−20wt%Crのアンダーコートとして50μm
厚に施工したもの b.80wt%Ni−20wt%Crのアンダーコートを50μm厚に
施工後、その上に8wt%Y2O3−92wt%ZrO2を 100μm厚
に、それぞれプラズマ溶射法によって施工したものを供
試した。 (5) 評価試験方法:実施例1と同じ塩水噴霧試験を行う
ことによって溶射皮膜の貫通孔の有無を調査した。
【0058】(6) 試験結果 試験結果を表5に示した。この結果から明らかなよう
に、比較例の金属質溶射皮膜のみ (No.7) では全面にわ
たって赤さびが発生し、また、トップコートとして8wt
%Y2O3−92wt%ZrO2皮膜 (No.8) を施工したものでも、
試験片面積の58%が赤さびに覆われていた。これに対
し、本発明の複合溶射皮膜 (No.1〜6)は、一般に良好な
耐食性を示した。特にガラス質トップコート溶射皮膜を
加熱したもの(No.1, 3, 5, 6)は、全く赤さびの発生は
認められなかった。ただ、前記封孔材料を被成し、ガラ
ス質トップコート溶射皮膜を加熱をしないもの (No.2,
5)には1〜2個所小さな赤さびの発生が見られただけで
あり、前記封孔材料層の存在によって、アンダーコート
溶射皮膜の気孔が充填され、腐食成分の侵入を防いでい
るのが確認された。これらの結果から、金属質アンダー
コート溶射皮膜を予熱せずに、その上にガラス質トップ
コート溶射皮膜を施工しても、予め封孔材料を被成して
おけば、使用に当たって腐食ガスの侵入を防ぎ、次第に
温度が上昇してガラスの融点以上になると、トップコー
ト溶射皮膜と封孔材料とが融合一体化して、自己補修作
用を示す溶射皮膜となることがわかる。なお、封孔材料
として、Na2SiO3 に代えて、Na2SiO3 に10wt%NaB2O7
添加したものを用いてもNa2SiO3 と同様な封孔効果が得
られた。
【0059】
【表5】
【0060】
【発明の効果】以上説明したように、Al他の金属・合
金,あるいは炭化物サーメットをアンダーコートとして
溶射被覆した後、その上に金属・合金,炭化物サーメッ
ト,酸化物,硼化物などとガラス材料とを混合したガラ
ス質混合溶射材料によってトップコートを施工し、さら
に必要に応じて表層部に100 %ガラス層を設けた本発明
に従う溶射皮膜は、いかなる場合であれ熱が付加された
場合には、常に溶射皮膜中の気孔が消滅する結果、極め
て優れた耐食性を発揮する。特に、本発明に特有のガラ
ス成分を含むトップコート溶射皮膜は、何らかの原因で
機械的衝撃を受け、割れが発生した場合でも、ガラスの
融点以上に加熱すると自然に融合して補修する作用を保
有しているので、都市ごみ焼却プラントに適用しても、
従来技術で形成される溶射皮膜の寿命以上の高耐食性の
発揮が期待される。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明にかかるガラス質の高耐食性溶射被覆部
材の断面を示す略線図である。
【符号の説明】
1 基材 2 アンダーコート溶射皮膜 2a 酸化物層 3 ガラス質トップコート溶射皮膜 3a 再溶融ガラス層 4 純ガラス溶射層

Claims (17)

    【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】 鋼鉄製基材の表面に、アンダーコート溶
    射皮膜と、その上に被覆したトップコート溶射皮膜とか
    らなる多層皮膜を形成してなる部材において、前記アン
    ダーコート溶射皮膜は、全体もしくは少なくともトップ
    コート溶射皮膜との境界部に酸化物を含有しており、一
    方、前記トップコート溶射皮膜は、金属,酸化物,硼化
    物,炭化物および炭化物サーメットのうちから選ばれる
    いずれか1種以上とガラス材料との混合物を溶射してな
    るガラス質混合溶射皮膜にて形成したことを特徴とする
    自己補修作用を有するガラス質溶射材料被覆部材。
  2. 【請求項2】 鋼鉄製基材の表面に、アンダーコート溶
    射皮膜と、その上に被覆したトップコート溶射皮膜とか
    らなる多層皮膜を形成してなる部材において、前記アン
    ダーコート溶射皮膜は、全体もしくは少なくともトップ
    コート溶射皮膜との境界部に酸化物を含有しており、一
    方、前記トップコート溶射皮膜は、金属,酸化物,硼化
    物,炭化物および炭化物サーメットのうちから選ばれる
    いずれか1種以上とガラス材料との混合物を溶射してな
    るガラス質混合溶射皮膜にて形成し、かつ該ガラス質混
    合溶射皮膜の表層部に再溶融ガラス層を有することを特
    徴とする自己補修作用を有するガラス質溶射材料被覆部
    材。
  3. 【請求項3】 上記アンダーコート溶射皮膜は、全体も
    しくは少なくともトップコート溶射皮膜との境界部にAl
    2O3 を含有することを特徴とする請求項1または2に記
    載のガラス質溶射材料被覆部材。
  4. 【請求項4】 上記アンダーコート溶射皮膜は、Alとそ
    の他の金属・合金または炭化物系サーメットのうちから
    選ばれる1種以上の材料とを溶射した酸化物含有溶射皮
    膜であり、その厚さが20〜500μm であることを特
    徴とする請求項1,2または3に記載のガラス質溶射材
    料被覆部材。
  5. 【請求項5】 前記トップコート溶射皮膜は、95〜5
    vol%の金属,酸化物,硼化物,炭化物および炭化物サ
    ーメットのうちから選ばれるいずれか1種以上の粉末と
    5〜95 vol%のガラス材料との混合粉末を溶射してな
    るガラス質溶射皮膜であり、その膜厚が10〜1000
    μm であることを特徴とする請求項1または2に記載の
    ガラス質溶射材料被覆部材。
  6. 【請求項6】 上記トップコート溶射皮膜は、金属,酸
    化物,硼化物,炭化物および炭化物サーメットのうちか
    ら選ばれるいずれか1種以上の粉末とガラス材料との混
    合割合が、段階的もしくは漸次的に変化する傾斜配合粉
    を溶射して形成されたものであることを特徴とする請求
    項1,2または5に記載のガラス質溶射材料被覆部材。
  7. 【請求項7】 上記傾斜配合粉を溶射して形成したトッ
    プコート溶射皮膜は、外表面ほどガラス材料の配合量が
    段階的にもしくは漸次的に増加することを特徴とする請
    求項1,2,5または6に記載のガラス質溶射材料被覆
    部材。
  8. 【請求項8】 再溶融層を含む上記トップコート溶射皮
    膜のガラス材料が、SiO2,Na2O, K2O, B2O3, Al2O3, li
    2O, CaO, MgO, TiO2, ZnO, ZrO2, SnO, SrO,BaO, CoOの
    中から選ばれるいずれか1種以上のガラス形成酸化物を
    主成分として含み、かつそれの線膨張係数が4〜14×10
    -16/℃,融点が 450〜750 ℃であることを特徴とする請
    求項1,2,5または6に記載のガラス質溶射材料被覆
    部材。
  9. 【請求項9】 請求項1〜8のいずれか1項に記載のト
    ップコート溶射皮膜上に、最外層としてさらに、100
    %ガラス材料を溶射して形成される,純ガラス溶射層を
    有することを特徴とするガラス質溶射材料被覆部材。
  10. 【請求項10】 請求項1〜8のいずれか1項に記載の
    トップコート溶射皮膜上に、最外層としてさらに加熱に
    よってSiO2やB2O3を生成する封孔材料の塗布・噴霧層を
    有することを特徴とするガラス質溶射材料被覆部材。
  11. 【請求項11】 鋼鉄製基材の表面に、金属・合金もし
    くは炭化物系サーメットのうちから選ばれる1種以上の
    材料を溶射してアンダーコート溶射皮膜を形成し、その
    上に金属,酸化物,硼化物,炭化物および炭化物サーメ
    ットのうちから選ばれる1種以上の粉末とガラス材料と
    の混合物を溶射してガラス質混合溶射皮膜を形成するこ
    とを特徴とする自己補修作用を有するガラス質溶射材料
    被覆部材の製造方法。
  12. 【請求項12】 鋼鉄製基材の表面に、金属・合金もし
    くは炭化物系サーメットのうちから選ばれる1種以上の
    材料を溶射してアンダーコート溶射皮膜を形成し、その
    上に金属,酸化物,硼化物,炭化物および炭化物サーメ
    ットのうちから選ばれる1種以上の粉末とガラス材料と
    の混合物を溶射してガラス質混合溶射皮膜を形成し、次
    いでガラス質混合溶射皮膜をガラス材料の融点以上の温
    度に加熱して、前記ガラス材料を再溶融することによっ
    て表層部に再溶融ガラス層を形成することを特徴とする
    自己補修作用を有するガラス質溶射材料被覆部材の製造
    方法。
  13. 【請求項13】 トップコートであるガラス質混合溶射
    皮膜の上にさらに、100 %ガラス材料にかかる溶射材料
    を溶射して、最外表面に純ガラス溶射層を被覆形成する
    ことを特徴とする請求項11または12に記載の製造方
    法。
  14. 【請求項14】 トップコートであるガラス質混合溶射
    皮膜の上にさらに、加熱されるとSiO2やB2O3を生成する
    封孔材料を塗布もしくは噴霧することを特徴とする請求
    項11または12に記載の製造方法。
  15. 【請求項15】 トップコート溶射皮膜中の再溶融層
    を、都市ごみ焼却プラントの燃焼熱を利用して形成する
    ことを特徴とする請求項11または12に記載の製造方
    法。
  16. 【請求項16】 アンダーコート溶射皮膜の形成に当た
    り、溶射材料として、Ni,Fe,Fe−Cr,Fe−Ni−Crまた
    はNi−Crである金属・合金または炭化物サーメットの他
    に、Alを 0.1〜3wt%添加したものを用いることを特徴
    とする請求項11,12,13または14に記載の製造
    方法。
  17. 【請求項17】 トップコート溶射皮膜の形成に当た
    り、アンダーコート表面から外表面に向けて、溶射材料
    中のガラス材料の配合量を段階的もしくは漸次的に増加
    させた傾斜配合粉を溶射することを特徴とする請求項1
    1,12,13,14または15に記載の製造方法。
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