JP2008174787A - 溶射皮膜形成方法 - Google Patents

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Abstract

【課題】溶射前処理として、粗面化処理と予熱処理とを同時に行うこととし、この場合において、基材表面に赤さびを発生させることなく、しかも溶射皮膜は密着性に優れ、さらに現地加工ができる上、加工処理(工期)の短縮とコスト低下を実現できる新規な溶射皮膜形成の方法を提案することにある。
【解決手段】被処理基材の表面を、熱ブラスト加工を行うことによって予熱すると同時に粗面化し、次いでその被処理基材の表面に、酸化物系セラミックを溶射して酸化物系セラミック溶射皮膜を形成する溶射皮膜形成方法。
【選択図】図1

Description

本発明は、溶射皮膜形成方法に関し、特に現行の溶射施工の前処理作業として、それぞれ独立した工程として実施されている、(1)被処理基材表面の清浄化を兼ねたブラスト加工による粗面化処理と、(2)被処理基材の予熱処理とを、溶射ガンによって一括して同時に行うようにしたことを特徴とする技術を提案する。
溶射法は、金属(以下、「合金」を含めて金属という)、セラミックス、サーメットなどの溶射粉末材料を、可燃性ガスの燃焼フレームあるいはAr、He、Hなどのプラズマフレーム中に供給して、これらを軟化もしくは溶融した状態にして被処理基材の表面に高速で吹き付けることにより、その表面に溶射皮膜を形成する表面処理技術である。
この他、溶射材料として金属線を用いる場合には、2本の線に直流や交流の電気を流しながら局部的な接触によってアークを発生させ、このアークを熱源として線材の溶融を導いて同様に高速で吹き付けることにより、皮膜化する電気アーク溶射法も知られている。
したがって、溶射法は、熱源中で軟化したり溶融する材料であれば、前記粉末材料に限らず、例えば、ガラスやプラスチック類などでも溶射できる。しかも、溶射法によって形成される皮膜については、豊富な種類の溶射材料の性質を反映して、多種多様な特性を発揮させることができる。このため、溶射皮膜は、製鉄、製紙、航空・宇宙、船舶・艦艇、自動車、火力・原子力発電、石油精製・石油化学、ガスタービン・ジェットエンジンなどの要求性能が全く異なる産業分野において、広く採用されている。
このような特徴を有する溶射法について、日本工業規格では、溶射用語(JIS H8200)を含め15件(2006年現在)の規格が制定され、溶射皮膜(製品)の品質、溶射作業標準、溶射皮膜の試験方法などについて、統一された方法が定められている。
さて、現在の溶射法の一般的な工程は、(1)被処理基材(以下、単に「基材」ともいう)の表面の脱脂、脱スケール(清浄化処理)、(2)ブラスト加工による基材表面の粗面化処理(清浄化を含めることもある)、(3)アンダーコートの溶射施工、(4)トップコートの溶射施工の順序に従って行われるのが普通である。ただし、使用目的や溶射材料によっては、上記(3)工程のみで施工を終了することもある。また、(2)と(3)の中間に、前記基材を予熱する工程を設けることもある。
上記処理工程のうち、ブラスト加工による粗面化処理の工程は、古くから亜鉛溶射作業標準(JIS H9300)、アルミニウム溶射作業標準(JIS H9302)などに、必須の前処理工程として明記され、さらに、International Standard ISO 2063、Metallic and Other Inorganic Coating −Thermal Spraying −Zinc、aluminium and Their Alloys(金属および他の無機質皮膜−溶射−亜鉛、アルミニウムおよびそれらの合金)においても、溶射前の前処理として、ブラスト加工が必須のものとされており、この加工が省略されることはない。さらに、セラミック作業標準(JIS H9302)においても、このブラスト加工による粗面化は必須の前処理工程として、圧縮空気による研削材粒子の吹き付けが規定されている。
このように、溶射施工の前処理として、ブラスト加工による粗面化処理を必須の工程としている理由は、次のとおりである。一般に、基材と溶射材料との関係は、金属を溶射する場合、溶射熱源中では溶融状態になっていても、被溶射体表面に吹き付けられると急速に冷却されるため、該溶射金属粒子は基材と合金化反応をすることなく、単に基材表面に機械的に接触し堆積した状態になっているにすぎない。このため、基材表面は、油分や錆などの接触障害となる異物を除き、基材表面に清浄な面を露出させるため、そして、溶射粒子と被処理基材表面との接触面積を大きくして、いわゆる溶射粒子の投錨効果によって、溶射皮膜全体の密着強さを高めるために、粗面化処理をしている。
また、従来、ブラスト加工による粗面化処理後の基材に対しては、その後、ブラスト加工工程とは別に独立した工程として予熱が施されることがある。しかし、この基材の予熱処理については、明確ではなく、いずれにしても、ブラスト加工とは関係なく実施しているのが実情である。
ただし、被処理基材が酸化物や非酸化物系のセラミック焼結体や炭素系基材の場合には、特許文献1〜4に記載のように、基材の予熱は必須の工程とされている。その理由は、これらの非金属質被処理基材は、高温に加熱しても、金属のように酸化スケールを発生して溶射皮膜との密着性を阻害したり変形しないためと考えられる。なお、この場合において、予熱する理由は、明らかにされていないが、溶射粒子の急冷凝固を防ぎ、溶射粒子と基材表面が広い面積にわたって接触し、大きな投錨効果を発揮するため有利であると考えられるからである。
特開平02−238855号公報 特開平02−117064号公報 特開平06−184721号公報 特開2003−226953号公報
溶射処理、とくに鋼製基材などへの溶射前処理として実施されるブラスト加工による粗面化処理には、次のような問題点がある。
(1)Al粒子などの研削材による基材表面へのブラスト加工は、粗化面が化学的に活性な状態になるため、大気中に放置しただけでも、赤さびが発生しやすい状態になる。
(2)温度の低い環境で炭化水素ガスの燃焼フレームを用いて溶射する場合、基材に燃焼ガスが触れただけでも(未溶射状態)、燃焼ガス中に含まれている水蒸気が、該基材の粗化面に小さな水滴となって凝縮し、その結果、化学的に活性なブラスト加工面は、短時間のうちに赤さびが発生する。
(3)ブラスト加工によって粗化した面は、上述したように赤さびが発生することによって、溶射された粒子と活性化面との間で十分な接触が保てなくなり、溶射皮膜の密着性が著しく低下する。
(4)粗化面によって赤さびが発生した被処理基材は、溶射皮膜の実用環境中(例えば、屋外の大気中)で、該基材の腐食反応が促進される結果、溶射皮膜の剥離や消耗が速くなる。
(5)燃焼ガス中に含まれる水蒸気のブラスト加工面への凝縮を防止するには、基材を予熱して、水露点以上の温度にすれば解決すると考えられるが、実際にはブラスト加工後に予熱すると、基材表面の化学的活性度が上がるため、却って酸化スケール(基材成分の酸化物)が発生しやすくなる。従って、粗面化された基材の表面に溶射した皮膜の密着性が必然的に低下する。
(6)被処理基材をブラスト加工した後に予熱する場合、とくに基材が大きいとき、別に予熱炉が必要になる。このことは、プラント・装置類が据え付けられた現地において皮膜の形成工事(現地溶射)を実施することができなくなる。
(7)一方、被処理基材を予熱した後にブラスト加工する方法もあるが、従来の圧縮空気によるブラスト加工では折角、予熱した基材が空気によって冷却されて、その効果を消失したり、粗化面のコントロールが難しく、被処理基材への溶射の施工が困難となる。
(8)ブラスト加工による粗面化処理と、基材を予熱する工程を、それぞれ独立して実施すると、被処理基材の大きさにもよるが、溶射施工するまでに長時間を要し、生産コストの増大を招く。
(9)従来のように、研削材粒子を飛行させるための加速駆動源として圧縮空気を用いる方法は、たしかに、基材の表面を、粗面化できるものの、表面温度が殆ど上昇しない(予熱できない)。むしろ、高圧の空気の膨張現象によって、被処理基材の表面は冷却される傾向にある。かかる低温の被処理表面に、高速フレーム溶射法によって溶射皮膜を形成しようとすると、燃焼フレームに含まれる水蒸気の凝縮とともに、溶射粒子も急冷されて小さく粉状化したり、球状化するため、密着性に乏しい溶射皮膜が形成されることとなる。
そこで、本発明の目的は、溶射前処理として、粗面化処理と予熱処理とを同時に行うこととし、この場合において、基材表面に赤さびを発生させることなく、しかも溶射皮膜は密着性に優れ、さらに現地加工ができる上、加工処理(工期)の短縮とコスト低下を実現できる新規な溶射皮膜形成の方法を提案することにある。
従来技術が抱えている上述した課題を解決して上記目的を実現するため、本発明では、次に示すような技術手段を採用する。
(1)基材表面の粗面化処理に当たっては、研削材粒子を搬送するための加速駆動源として、従来の圧縮空気に代えて、溶射熱源としても使用する可燃性ガスの燃焼フレームを用いる。このような方法の採用によって、被処理基材の表面は、燃焼フレームの作用によって加熱され昇温する(予熱される)ため、たとえ燃焼フレーム中に多量の水蒸気が含まれていても、水滴として凝縮するようなことがない。一方で、無機質の非金属系研削材粒子を用いることによって、基材表面が粗面化されるので、予熱処理とブラスト加工による粗面化処理とが単一の工程で一挙に達成できる。
(2)即ち、本発明は、被処理基材の表面を熱ブラスト加工によって、予熱と粗面化とが同時に施工され、このような処理を終えたその被処理基材の表面に、酸化物系セラミックを溶射して、酸化物系セラミック溶射皮膜を形成する処理を行うことを特徴とする溶射皮膜形成方法である。
(3)本発明において、前記熱ブラスト加工は、研削材粒子の加速駆動源として、高速フレーム溶射用溶射ガンの燃焼フレームを用いることにより、該基材の表面を予熱すると同時に粗面化する処理であること、また、前記熱ブラスト加工は、該処理基材の表面をRa:2.0〜5.0μm程度に粗面化する処理であること、セラミックの溶射皮膜は、プラズマ溶射法によって形成すること、および被処理基材の表面は、前記熱ブラスト加工によって、70〜550℃の温度に予熱されていることが望ましい。それは、このような処理によって、被処理基材の表面に水滴の凝縮がなくなるばかりか、次工程においてこの表面に付着する溶射粒子が球形とならず薄く偏平したディスク状を呈し、また成膜用粒子の付着効率が高くなり、緻密で密着性に優れた溶射皮膜が形成されるからである。
(4)また、本発明において、可燃性ガスの燃焼フレームを加速駆動源として用いる研削材は、燃焼フレームによって加熱されても高い硬度を維持できような、融点や軟化点の高い酸化物、炭化物、硼化物および窒化物のうちから選ばれるいずれか1種または2種以上の混合体または複合体であり、粒子径が5〜80μmの大きさのものを用いることが好ましい。
(5)また、本発明において、研削材粒子の加速駆動源および被処理基材の予熱に用いられる高速フレーム溶射用溶射ガンの燃焼フレームは、水素、気体または液体の炭化水素化合物のうちから選ばれるいずれか1種または2種以上の可燃性ガスを燃焼させることによって得られるものであることが好ましい。
本発明によれば、熱ブラスト加工を採用することによって、上述した作用効果の他、さらに、次のような効果が得られる。
(1)被処理基材表面の予熱と粗面化とが同時に行われるため、油脂類等については高温の燃焼フレームで燃焼除去できると同時に鉄さび類もブラスト加工によって除去でき、被処理面の清浄化と活性化とが同時に達成でき、ひていは溶射施工に要する総作業時間を短縮できる。
(2)被処理基材の大きさに関係なく、例えば、屋外に建設されている大型鋼構造物に対しても適用することが可能であり、溶射施工分野の拡大が期待できる。
(3)高速フレーム溶射ガンの燃焼フレームを研削材粒子の加速駆動源として用いると、単一の溶射ガンによって、被処理体の予熱処理および粗面化処理ができるので、溶射設備が簡素化し、設備費の低減、現地工事が簡便にできるようになる。
(4)燃焼フレームで被処理基材の表面の予熱と、予熱された研削材粒子を該基材表面に吹き付けながらトラバースするので、基材の表面は局所的に過熱されることなく、また、かかる予熱面を有する基材面では、次工程となる溶射粒子の付着効率が高くなり、しかも緻密で密着性にも優れた溶射皮膜が得られる。
(5)高速フレーム溶射ガンの燃焼フレームを研削材粒子の加速駆動源として、被処理基材の表面をブラスト加工すると同時に加熱するので、基材に直接、成膜が困難な酸化物系セラミックのような高融点材料の成膜も可能となり、溶射皮膜被覆製品の適用分野の拡大が期待できる。
ここでは、JIS H9300、JIS H9301およびISO2063などに規定され、また一般に広く採用されている溶射前処理について、これらの技術的課題とその原因を解説した後、本発明の前処理方法の詳細を説明する。
(1)現行の溶射前処理工程の概要
a.図1は、溶射作業に関するJIS、ISOなどの規定されている溶射処理の工程を示す。その特徴は、溶射施工の前に、まず、被処理基材の表面に、油脂、鉄さび、酸化スケールなどが付着している場合には、それぞれ脱脂、酸洗、ときにはサンドブラスト処理などによって、異物を除去する。これらの異物の除去を目的とする処理を、清浄化処理と呼んでおり、必須工程の一つである。
b.次いで、清浄化された基材表面に対し、SiC粒子やAl粒子などの硬質研削材粒子を圧縮空気を駆動源としてブラスト加工を行い、粗面化状態にする。上記のような処理によって粗面化された基材表面は、後工程の溶射時において、溶融状態の微粒子が吹き付けられた際、粒子の凝固過程において粗面化された形状に沿って、物理的によく噛み合い、溶射皮膜の密着力を上げるのに有効に作用する。
なお、溶射前処理であるブラスト加工によって形成される基材表面の粗さは、Ra:2〜8μm程度である。また、この処理は、室温(屋外で行う場合は気温)で行われるため、基材表面温度は一般に低く、特に冬期では5℃前後となることもある。
(2)現行の溶射処理工程
この工程は、ブラスト加工による粗面化処理を終えた基材表面に対して、溶射皮膜を施工する段階である。溶射法には多くの種類があるが、溶射粒子の加熱源別に分類すると、電気エネルギーと可燃ガスの燃焼エネルギーを用いるものに分類できる。
a.電気エネルギーを熱源する溶射法
この方式に属する代表的な溶射法は、プラズマ溶射法と電気アーク溶射法である。プラズマ溶射法では、プラズマの発生源として、Ar、Heなどの不活性ガスを利用するため、熱源となるプラズマ・ジェット中の環境には、水蒸気は存在しない。ただし、ArなどにHガスを混入させて、プラズマ・ジェットの熱量を増大させる場合は、大気中で溶射すると、空気中の酸素と反応して、水蒸気が含まれることがある。
一方、電気アーク溶射法では、帯電させた成膜材料の金属線を接触させることによって発生するアーク熱を利用して、金属線を溶融し、この溶融金属を圧縮空気によって吹き飛ばすことにより、皮膜を形成させるため、水蒸気の存在は、圧縮空気中に含まれている水分のみとなる。
このように、電気エネルギーを利用した溶射法では、溶射熱源中に水蒸気が含まれることは、後述の溶射法に比較して少ない。
b.可燃性ガスの燃焼エネルギーを熱源とする溶射法
この熱源を利用する溶射法は、溶射材料の形態を取り入れて、粉末式フレーム溶射法、溶線式フレーム溶射法、溶棒式フレーム溶射法などがある。熱源として用いる可燃性ガスの種類は、Hガスをはじめ、炭素と水素を主成分とするアセチレン、エチレン、プロパン、ときには液体燃料の灯油などの炭化水素ガス(含液体)である。
これらの可燃性ガスを酸素または空気を用いた加圧燃焼フレームの運動エネルギーを利用して、溶射溶融粒子を加速させ、基材表面に吹き付けて、皮膜を形成させる方法である。
この方式による溶射法では、成膜用溶融粒子を含む燃焼ガスが、常温域でブラスト加工された基材の表面に接触することとなる。しかも、溶融粒子が基材の表面に吹き付けられると、そのままの位置を維持するが、燃焼ガスは、基材表面に沿って広範囲に拡散移動することとなる。
c.このとき、基材の温度が水露点以下の場合には、燃焼ガス中の水蒸気が水滴となって、拡散移動部に凝縮する。水の凝縮部では、空気中の酸素も加わり、基材からの赤さびが発生する。ブラスト加工面は、化学的に活性化されているため、非ブラスト加工面に比較すると、赤さびの発生は早い。燃焼ガスが基材表面に接触して移動する速度は、溶射粒子の成膜速度に比較して、はるかに速いため、大きな面積を有する溶射処理基材では、赤さびの発生面に溶射皮膜が形成されることとなる。かかる皮膜は、基材との密着力が弱いため、剥離することが多く、また使用環境中で赤さびと基材界面における腐食が発生するため、皮膜寿命が短くなる欠点がある。
なお、溶射熱源として用いる可燃性ガスの燃焼ガス中に含まれる水蒸気量は概略、次の通りであり、水素含有量の多い可燃性ガスほど、多量の水蒸気が発生する。
(アセチレン)+1/2O → HO+2CO
(プロパン)+5O → 4HO+3CO
(灯油) +yO →10HO+mCO
(n=20の場合)
(3)現行の溶射処理の課題
以上の現行の溶射工程、特にブラスト加工後、溶射皮膜を施工する際、基材の表面温度が、水露点以下の場合に発生するブラスト加工面の赤さびは、基材温度を水露点以上に維持すれば、赤さびの発生を防止することが可能である。しかし、被処理体が屋外に建設されている大型の鉄構、塔槽、橋梁類は、水露点以上に加熱すること自体が困難であるうえ、冬期の大型鋼構造物は、たとえ加熱したとしても、直ぐに冷却されるので、事実上加熱の効果の効果を挙げることはできない。
一方、屋内で溶射加工する場合でも、大型のロール類(例えば、製鉄用各種ロール類では直径300〜800mm×長さ3000〜6000mm、製紙用各種ロール類では直径1000〜3500mm×3000〜5000mm)に対して、全体を水露点以上に加熱するには、電熱線ヒーターを用いると、数時間以上を要する。このため、折角ブラスト加工して清浄化した基材表面では、加熱によって酸化スケールが生成するため、溶射皮膜の密着性低下の原因となる。
また、加熱によって生成する酸化スケールや水露点によって発生する基材表面の赤さびなどは、再度ブラスト加工すれば除去可能であるが、二度のブラスト加工の実施は生産時間の延長に伴う生産コストの上昇を招く欠点があり、さらに現行のブラスト加工処理と基材の加熱工程を逆にしても、両処理工程間の移動に時間を要するうえ、加熱された基材を温度の低い圧縮空気を用いてブラスト加工すると、空気の膨張現象によって、空気の温度は低下する傾向にあるため、この空気に触れる基材は再び低くなる。
以上の説明のように、圧縮空気を用いてブラスト加工された低温の基材表面に、溶射粒子を噴射すると、溶融状態の粒子は急冷され、球状や細粉状態となって基材表面に付着する。しかし、これらの付着した粒子類は、基材との接触面積が少なく、また、粗面化された基材表面との噛み合いが少ないため、この上に積層される溶射皮膜は、密着性に乏しいものとなり、容易に剥離する。
(4)本発明の溶射前処理方法
本発明では、現行の溶射前処理工程のもつ上記課題を解決するため、次のような手段を採用する。
a.被処理基材の表面を、溶射ガンの燃焼フレーム中で加熱しつつこの燃焼フレームを研削材の加速駆動源として利用するブラスト加工する処理(このような処理を「熱ブラスト加工処理」という)を同時に行う。
かかる熱ブラスト加工の処理は、高速フレーム溶射装置や粉末式フレーム溶射装置を用い、溶射材料粉末に代えて、Alなどの研削材用粒子を用い、溶射皮膜の施工と同じ要領で、基材の表面を燃焼フレームによって加熱しつつ、Al粒子(研削材)を吹き付ける。従って、このような前処理方法を採用すると、基材の温度が水露点以下で、基材面に水滴が凝縮して赤さびが発生しつつある環境であったとしても、同時にAl粒子が吹き付けられるため、赤さびが順次に除去されることとなる。
なお、このような熱ブラスト加工の処理では、該被処理基材の表面温度は、次第に上昇して、常に水露点以上に維持されるので、水蒸気からの水の凝縮現象がなくなり、実質的にAl粒子による粗面化のみが行われることとなる。
このような熱ブラスト加工によって粗面化した基材表面は、常に、水露点以上の温度に加熱されているので、そのままの状態で各種のフレーム溶射法やまたHを含むプラズマ溶射法を適用しても、溶射熱源からの水蒸気の凝縮が生じることはなく、良好な溶射皮膜の施工を行うことができる。
なお、可燃性燃料の燃焼フレームを用いる前記熱ブラスト加工の処理を行うには、溶射熱源と異なる下記条件を守る必要がある。
a.燃焼フレームの温度が、研削材粒子の融点より低いことである。例えば、研削材としてAl粒子を用いる場合、Alの融点2050℃より低くすることが望ましい。
b.燃焼ガスの温度が高い場合には、粒子経の大きいAlを用いることで、燃焼フレーム中で軟化したり、溶融したりせず、硬い固体としての状態を維持させるようにする。例えば、Al粒子の場合、5μm以上の粒径にする。それは、粒径が5μm以下では、基材表面に吹き付けられた際、その一部が基材表面に付着してしまい、溶射皮膜中に混在するからである。
c.一方、燃焼フレーム温度は、Alの融点以下であればよいが、融点より300℃程度高くても、燃焼フレーム中を飛行するAl粒子の速度が大きければ、その分、燃焼フレームによる加熱時間が短くなるため、十分に加熱されず、硬い固体粒子の状態を維持して熱ブラスト加工の効果を発揮する。
(5)本発明の溶射前処理方法の溶射皮膜に対する作用機構
燃焼フレームを駆動源として、Al粒子などの研削材を用いて熱ブラスト加工すると、基材表面に燃焼ガス中の水蒸気が凝縮付着することを防止できるだけでなく、次工程で形成される溶射皮膜の気孔率を低下させると共に、基材との皮膜密着性および溶射粉末材料の成膜率(基材表面への付着率)著しく向上させる効果がある。
基材の表面が、水露点以下の温度では、水滴の付着状態はもとより、水滴がない条件下でも、溶射熱源によって、溶融した成膜用粒子が衝突付着すると、急冷され一瞬のうちに球状や微細な粉末状となる。そのため、こうして生成した溶射粒子は、基材表面との接触面積が小さく、基材との接合力も著しく弱い状態で堆積している。したがって、このような粒子の上に、さらに多数の粒子が積層して溶射皮膜を形成したとしても、基材表面との相互結合力が小さい(球状や微細粒子の上に積層された皮膜の密着力は、しばしば容易に剥離する)こととなる。
これに対して、本発明のように、熱ブラスト加工によって該被処理基材の表面温度が水露点以上の温度に加熱されていると、このような基材に吹き付けられた溶射粒子は、金属質はもとより、セラミック質であっても、急冷されることなくなり、ディスク状(薄い円板状のスプラット形)となって、基材表面に堆積していくので、互いの接触面積が相対的に大きくなり、とくにディスク状に潰れた状態の溶射粒子の上に積層する粒子もまた同じようなディスク状(スプラット形)を呈するため、溶射皮膜全体が緻密で、基材との密着性の高いものとなる(図2参照)。
図3は、表面温度の異なる炭素鋼基材の表面に、燃焼フレーム溶射法によって吹き付けたY・ZrOセラミック粒子の外観状態を示したものである。
図示に明らかなように、従来のように圧縮空気を用いて低温の基材表面に吹きつけて生成させた粒子は、微小な球状を呈しているのに対し、本発明方法に従い燃焼フレームを用いることにより、温度の高い状態の基材表面に生成させた粒子(スプラット)は大きなディスク状を示し、図2の概念図に示したとおり、基材との接触面積が大きくなっている。
因みに、JIS H8666規定の溶射皮膜の密着強さ試験方法によって、Y、ZrO皮膜の密着強さを測定した結果、球状スプラットの皮(圧縮空気によるもの)膜は1〜3MPa、ディスク状スプラット皮膜(燃焼フレームによるもの)では、18〜20MPaであった。溶射皮膜は、このようなスプラット形状を有する溶射粒子上に、引き続き溶射粒子を堆積させることによって、皮膜を形成するプロセスを辿るのが一般的であるが、その皮膜の密着性に大きな影響を与えるのが、溶射工程の最初に付着したスプラットの形状であることがうかがえる。
なお、ディスク状の粒子(スプラット)の形状が得られる基材温度は、溶射粒子の融点・粘度などの物性値も関係するので、一概には決定できないが、金属粒子では基材温度が70〜350℃の範囲がよく、酸化物系セラミックでは100〜550℃が好適である。
ただし、炭素鋼基材を大気中で350℃以上に加熱すると、表面に薄い酸化スケールが生成し始めるが、本発明では、燃焼フレームによってこの温度に加熱しつつ、Al粒子の研削材粒子を吹き付けて、常に酸化スケールを除去しているため、この酸化スケールが溶射皮膜の密着性に悪影響を与えるようなことはない。
本発明の熱ブラスト加工によって、被処理基材の表面は、平均粒度Ra:2.0〜5.0μm程度に粗化されるが、この粗化の程度は、研削材の粒子径、燃焼フレームの温度、飛行粒子の速度制御によって変わるものの、2.0μm未満では粗化の効果が薄く、一方、5.0μm超では、基材表面の粗さが過大となって、後工程で行う溶射皮膜の組織が乱れ緻密性が低下する。
(6)本発明の前処理法を用いた溶射皮膜形成法
以下、燃焼フレームを用いた本発明に係る熱ブラスト加工による前処理工程と、その後に実施する酸化物系セラミックをプラズマ溶射して溶射皮膜の形成を行う方法について説明する。
本発明では、粉末式高速フレーム溶射ガンを、熱ブラスト加工処理時にのみ用いるようにした方法である。
(7)高速フレーム溶射ガンを用いた本発明方法の実施形態
図4は、粉末式高速フレーム溶射ガンの概要を示したものである。
先ず、この溶射ガンに、燃料ガス供給口1から燃料ガスを供給し、そして、酸素ガス供給口2からは酸素ガスとを供給して燃焼室3で完全燃焼させ、溶射ガンの銃身5から高速の燃料フレーム4を発生させて被処理基材を予熱できる状態とする。その後、溶射ガン本体の後部の吹付け粉体供給口6から研削材を溶射ガンへ供給する。溶射ガンの中へ入った研削材粒子は、銃身5部で燃焼ガスに加熱されつつ燃焼フレーム4の流れに乗って、溶射ガンの出口から、高温の燃焼フレーム4とともに基材表面に向かって噴射され、研削材は基材表面の粗化に、一方、燃焼フレームは基材の予熱に使用される。
一般に、溶射ガン中に供給された研削材は、融点の高い金属酸化物(Al)を用いるとともに、比較的粒径の大きい粒子(10〜50μm)を用いる上、溶射ガン中で加熱される時間が短い(通常1/100〜1/1000秒)ため、溶融することなく、硬さを維持したまま、基材表面へ吹き付けられ、ブラスト加工作用を発揮する。この間、基材表面は、フレームによって加熱されているので、水露点温度より高くなるとともに、さらに高温化する傾向にあるため、燃焼ガス中の水蒸気が基材表面に凝縮付着することはない。
次に、前記高速フレーム溶射用溶射ガンに代えて、プラズマ溶射ガンを用い、この溶射ガン中に、溶射粉末材料(酸化物系セラミック)を導入する。溶射材料は、プラズマ熱源によって溶融して、マッハ1〜2程の高速のプラズマジェットに乗って、強い運動エネルギーを有した状態で、基材表面に衝突するので、上述したディスク状のプラットとなって順次に堆積し、緻密で密着力の高い溶射皮膜を形成することができる。
以上、単一の溶射ガンを用いて、燃焼フレームによる予熱とブラスト加工を同時に行う熱ブラスト加工処理し、次いでプラズマ溶射法による溶射皮膜形成工程を施工する例について述べたが、次のような方法によっても、本発明方法を適用することができる。
a.燃焼フレームによる熱ブラスト加工処理後、大気、減圧プラズマ溶射法によって、酸化物系セラミック溶射皮膜を形成する。
b.燃焼フレームによる熱ブラスト加工処理後、溶棒式フレーム溶射法を用いて、酸化物系セラミック溶射皮膜を形成する。
c.燃焼フレームによる熱ブラスト加工処理後、同一の高速フレーム溶射ガンを用いて金属質の溶射皮膜を形成し、これをアンダーコートとして、その上にプラズマ溶射法によって、酸化物系セラミックをトップコートとして施工する。
(8)本発明で用いる熱ブラスト加工用被処理基材、研削材、溶射材料
本発明で用いる熱ブラスト加工用の研削材は、酸化物系セラミックの粒子が最適であるが、炭化物、硼化物、珪化物などの硬質粒子であれば使用することができるので、酸化物粒子のみに限定するものでない。具体的には、次のような硬質粒子を用いることができる。
(i)酸化物系:TiO、SiO、Al、Cr、ZrO、Y、MgO
(ii)炭化物系:TiC、WC、TaC、BC、SiC、HfC、ZrC、VC、Cr
(iii)硼化物系:TiB、ZrB、HfB、VB、TaB、NbB、W、CrB
(iv)窒化物系:TiN、TaN、AiN、BN、Si、HfN、NbN
上記研削材の粒度は、粒径5〜80μmの範囲のものもよく、特に10〜50μmのものが好適である。粒径が5μm以下では、粗面化が十分でないうえ、微細な粒子は、粗面化面に残留、付着しやすく、後工程の溶射皮膜施工時の障害となるからである。
一方、粒径が80μm以上の研削材では、処理面が粗くなり過ぎ、溶射皮膜を構成する粒子が乱れやすく、欠陥の多い皮膜となるからである。
本発明方法に用いて有効な被処理基材は、金属質材料の他、酸化物系セラミック焼結体をはじめ、炭化物、窒化物、炭素などの非酸化物系の焼結体に対しても、適用が可能である。金属質基材として、次の材料が本発明の効果を有効に発揮する。即ち、鋳鉄、鋳鋼、炭素鋼、低合金鋼、合金鋼、AlおよびAl合金、TiおよびTi合金、ステンレス鋼、Ni基合金類、Co基合金類などである。
溶射すべき酸化物系セラミックとしては、下記の如きものが好適に用いられる。
a.TiO、SiO、Al、Al−TiO
b.Cr、Al−MgO、Y
c.CeC、Y―ZrO、MgO・ZrO
(実施例1)
この実施例では、本発明に係わる燃焼フレームによる熱ブラスト加工処理後の基材表面に対して、酸化物系セラミック皮膜を直接形成し、その皮膜の密着強さを熱衝撃試験によって調査した。
(1)基材質の種類と寸法
a)Al(JIS H4000、No.1075)
b)SUS304鋼
寸法:幅50mm×長さ100mm×厚さ5mm
(2)溶射皮膜用材料
a)8YZ(8mass%Y−92mass%ZrO
b)Al
c)Y
(3)処理方法
高速フレーム溶射ガンの燃焼フレームを用いて、基材表面をブラスト加工処理した後、加熱によって高温状態になっている基材表面に対し、今度はプラズマ溶射法によって、前記酸化物系セラミックを150μmの厚さの溶射皮膜を形成した。
(4)熱衝撃試験方法
JIS H8666規定の加熱はく離試験方法によって、酸化物系セラミック溶射皮膜の密着性を調査した。具体的な条件は、次の通りである。
溶射皮膜試験片を電気炉中で700℃×15分間加熱した後、23℃の水中へ投入することによって、溶射皮膜に大きな熱衝撃を与えた、この加熱・冷却の操作を1サイクルとして、皮膜が剥離する回数を求めた。
試験結果を表1に一括して示した。この結果から明らかなように、圧縮空気によるブラスト加工処理面に形成された溶射皮膜(No.10〜15)は、1〜4回の熱衝撃試験によって、皮膜のみが基材から剥離し、密着性に乏しいことが認められる。
これに対して、燃焼フレームによって熱ブラスト加工処理した基材面に形成した皮膜(No.1〜9)は、8回〜10回以上の性能を示し、特に8YZ、Y皮膜(No.1、4、6、7、9)は、Al皮膜と同等以上に高い耐熱衝撃性を有し、また基材温度が高いほど皮膜の耐剥離性が向上することが判明した。
Figure 2008174787
(実施例2)
この実施例では、実施例1で作製した溶射試験片を用いて、JIS H8666セラミック溶射皮膜試験方法規定の皮膜の密着強さ測定方法によって、皮膜の密着強さを測定した。
表2は、この結果を示したものである。この結果から明らかなように、比較例の圧縮空気によってブラスト加工処理した基材面に形成された皮膜は、7〜17MPaの範囲にあったが、燃焼フレームによってブラスト加工した基材表面の皮膜は、14〜41MPaの密着強さを示し、前者に比べて2〜2.5倍の強度の向上が認められた。
また、この実施例においても、基材面温度が高いほど、その表面に形成される皮膜の密着性が、より高くなる傾向が明確に認められた。
Figure 2008174787
(実施例3)
この実施例では、基材表面温度と、溶射粉末材料の付着率との関係を求める試験を行った。
即ち、この試験はSUS304試験片を用い、その表面を圧縮空気または燃焼フレームによって、それぞれブラスト加工処理を行い、その溶射直前の基材表面温度と溶射材料の付着率を実験によって求めた。
(1)溶射材料(数字はmass%を示す。)
8Y−92ZrO(8YZ)
(2)溶射方法
8Y−92ZrO(8YZ)溶射皮膜の形成には、高速フレーム溶射ガンのフレームによるブラスト加工処理後、基材が冷却しないうちに、プラズマ溶射法によって皮膜を形成し、溶射直前の基材表面温度で、付着率を整理した。
(3)溶射材料の付着率の計算
溶射材料の付着率(A)は、試験片に対して噴射した溶射材料の重量(W)、溶射によって試験片表面に皮膜として形成された溶射材料の重量(W)から、次の式によって求めた。

Figure 2008174787
なお、試験片は、1温度条件当たり、3枚を供試してその平均値を求めた。その結果を、表3に要約した。この結果から明らかなように、基材表面温度が高いほど付着率は高くなっており、溶射効率の点でも燃焼フレームによって粗面化と予熱処理を一括して実施する熱ブラスト加工処理の優位性が認められた。
Figure 2008174787
(実施例4)
この実施例では、本発明に方法に従う、熱ブラスト加工処理を施した基材表面の温度と、その表面に形成した酸化物系セラミック溶射皮膜の緻密性の関係を調査した。
(1)試験片の概要
a)基材:SS400鋼 寸法:幅50mm×長さ100mm×厚さ3.2mm
b)ブラスト加工方法:
本発明例:高速フレーム溶射ガンの燃焼ガスフレームを用いて、SiC研削粒子(粒径10μm〜50μm)を基材表面に吹き付けつつ基材を予熱した。
比較例:圧縮空気を用いて、SiC粒子を基材表面に吹き付け、粗面化のみを行った。
c)溶射皮膜材料:8%Y・92%ZrO(mass%)
d)皮膜厚さ:120μm
e)溶射法:高速フレーム溶射法
(2)有孔度試験方法
溶射皮膜の有孔度は、JIS H8666セラミック溶射皮膜試験方法に規定されているフェロキシル試験方法を適用し、皮膜に気孔が存在すると、基材から溶出した鉄イオンと薬液が反応して、鮮やかな青色斑点が発生する現象を利用したものである。
試験結果を表4に要約した。この結果から明らかなように、圧縮空気によるブラスト加工を施した基材表面に形成した比較例の溶射皮膜(No.1、2)は、1cm当たりの青色斑点が7.15〜8.09個と非常に多く、有孔度が多数存在していることが確認された。
これに対して、本発明に従う熱ブラスト加工処理を施した基材表面に形成した溶射皮膜(No.3〜6)の青色斑点は、1.21〜2.33個/cm程度にとどまり、非常に緻密な状態になっていることがうかがえる。この原因は、熱ブラスト加工によって、基材の表面温度が上昇し、その表面に吹き付けられた溶射粒子がよく偏平したディスク状を呈することによって、気孔の少ない皮膜を形成した結果によるものと考えられる。
一方、酸化物系セラミック溶射皮膜の気孔率についても、気孔率は全体に高くなっているものの、予熱温度の高い基材表面に形成される皮膜ほど緻密となり、気孔率が低下していることが確認された。
Figure 2008174787
本発明の技術が利用できる分野は、現在、溶射法によって皮膜の形成が行われる工業製品すべてに適用が可能である。具体例として次のようなものがある。例えば、耐熱、耐食、耐磨耗性を目的とした下記皮膜被覆用部材・部品がある。
a.製鉄プラント用:熱処理用ロール、ブライトルロール、酸洗用ロール、搬送用ロールなど
b.製紙用:各種カレンダー用ロール、脱水用ロール、乾燥用ロール、搬送用ロールなど
c.プラスチック製品加工用:各種搬送用ロール、フィルム製造用治工具、射出成型部品など
d.火力発電プラント用:ボイラ用鋼管、燃焼用部品、ガスタービン用燃焼器、動力静翼な

e.電子工業用:耐ハロゲン腐食用部品、電気絶縁用部品、パーティクル堆積再飛散防止部品、
f.一般工業用:各種液体、空気、ガス搬送用ポンプ類
一般的な溶射処理工程を示す略線図である。 溶射法および成膜機構の概念図である。 表面温度の異なる被処理基材の表面に、Y・ZrOの溶射粒子を付着させた状態の粒子の外観状況を示す写真である。 高速フレーム溶射ガンの概要を示す略線図である。
符号の説明
1 燃料ガス供給口
2 酸素ガス供給口
3 燃焼室
4 燃焼フレーム
5 銃身
6 吹付け粉体供給口

Claims (7)

  1. 被処理基材の表面を、熱ブラスト加工を行うことによって予熱すると同時に粗面化し、次いで、その被処理基材の表面に、酸化物系セラミックを溶射して酸化物系セラミック溶射皮膜を形成することを特徴とする溶射皮膜形成方法。
  2. 前記熱ブラスト加工は、研削材粒子の加速駆動源として、高速フレーム溶射用溶射ガンの燃焼フレームを用いることにより、該基材の表面を予熱すると同時に粗面化する処理であることを特徴とする請求項1に記載の溶射皮膜形成方法。
  3. 前記熱ブラスト加工は、該処理基材の表面をRa:2.0〜5.0μm程度に粗面化する処理であることを特徴とする請求項1または2に記載の溶射皮膜形成方法。
  4. 酸化物系セラミックの溶射皮膜は、プラズマ溶射法によって形成することを特徴とする請求項1〜3のいずれかに1項に記載の溶射皮膜形成方法。
  5. 被処理基材の表面は、前記熱ブラスト加工によって、70〜550℃の温度に予熱されることを特徴とする請求項1〜4のいずれか1項に記載の溶射皮膜形成方法。
  6. 前記研削材は、酸化物、炭化物、硼化物および窒化物のうちから選ばれるいずれか1種または2種以上の混合体または複合体であり、粒子径が5〜80μmの大きさであることを特徴とする請求項1〜5のいずれか1項に記載の溶射皮膜形成方法。
  7. 前記高速フレーム溶射用溶射ガスの燃焼フレームは、水素、気体または液体の炭化水素化合物のうちから選ばれるいずれか1種または2種以上の可燃性ガスを燃焼させることによって得られるものであることを特徴とする請求項1〜6のいずれか1項に記載の溶射皮膜形成方法。
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