JP2005240106A - 耐高温腐食性材料およびその製造方法 - Google Patents
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Abstract
【課題】ボンドコート層を設けることなく、ゴミまたは廃棄物焼却処理により発生する燃焼ガス、および焼却灰などの高温かつ腐食性ガス雰囲気の使用環境下においてもコーティング層の剥離が生じない耐高温腐食性材料およびその製造方法を提供する。
【解決手段】耐高温腐食性材料は、金属材料により構成される基材と、溶射法によって、この基材の表面に積層されたコーティング層とを有する。コーティング層は、基材を構成する金属材料の組成と、この組成に更に加えられたSiとを含有する溶射原料を用いて形成されたものである。基材がステンレス鋼である場合、溶射原料は、基材に含まれるSiの含有量を除いて、更に加えられたSiの含有量が35質量%以下であることが好ましい。
【選択図】図3
【解決手段】耐高温腐食性材料は、金属材料により構成される基材と、溶射法によって、この基材の表面に積層されたコーティング層とを有する。コーティング層は、基材を構成する金属材料の組成と、この組成に更に加えられたSiとを含有する溶射原料を用いて形成されたものである。基材がステンレス鋼である場合、溶射原料は、基材に含まれるSiの含有量を除いて、更に加えられたSiの含有量が35質量%以下であることが好ましい。
【選択図】図3
Description
本発明は、動力炉またはゴミ焼却処理施設などにおける高温空気加熱器、蒸気発生器および熱交換器などの伝熱管、または火格子に用いられる耐高温腐食性材料およびその製造方法に関するものである。
現在、ゴミ焼却処理システム、または産業廃棄物焼却処理システムにおいて、ゴミまたは廃棄物の焼却処理で発生する高温の燃焼ガスの熱エネルギを回収して有効利用するために高温空気加熱器が設けられている。
この高温空気加熱器を構成する高温空気加熱器管は、高温の燃焼ガスに含まれる腐食性が高い塩素もしくは塩化水素などの腐食性ガスに直接曝されて腐食されるか、または焼却灰が付着し、この焼却灰が溶けた溶融塩により腐食される。このため、高温空気加熱器管は、図5に示すような耐高温腐食性材料により構成される。
図5は、従来の耐高温腐食性材料を示す模式的断面図である。
この高温空気加熱器を構成する高温空気加熱器管は、高温の燃焼ガスに含まれる腐食性が高い塩素もしくは塩化水素などの腐食性ガスに直接曝されて腐食されるか、または焼却灰が付着し、この焼却灰が溶けた溶融塩により腐食される。このため、高温空気加熱器管は、図5に示すような耐高温腐食性材料により構成される。
図5は、従来の耐高温腐食性材料を示す模式的断面図である。
図5に示すように、高温空気加熱器管に用いられる耐高温腐食性材料100は、基材102の表面にボンドコート層104を介してコーティング層106が形成されたものである。このコーティング層104には、耐高温酸化性および耐高温腐食性の双方に極めて優れた特性を有するSiが用いられている。
しかしながら、Siを、ステンレス鋼で構成された基材のコーティング層に用いた場合、Siは線膨張係数が、約4×10−6(1/K)であり、基材のステンレス鋼は、線膨張係数が約18×10−6(1/K)である。このように、Siとステンレス鋼とは熱膨張差が大きいため、基材表面上に形成されたSiのコーティング層は高温で剥離してしまう。
このように基材とコーティング層との熱膨張差が大きい場合には、基材とコーティング層との中間の線膨張係数を有する組成のボンドコート層を形成することが有効であり、剥離を防止する方法が種々提案されている(例えば、特許文献1参照)。
このように基材とコーティング層との熱膨張差が大きい場合には、基材とコーティング層との中間の線膨張係数を有する組成のボンドコート層を形成することが有効であり、剥離を防止する方法が種々提案されている(例えば、特許文献1参照)。
特許文献1に開示されたガスタービン部材は、金属基材と、この金属基材上に遮熱コーティング層とを備えるものである。この遮熱コーティング層は、ボンドコート層およびトップコート層を備えるものである。特許文献1のガスタービン部材においては、金属基材と、ZrO2−Y2O3系の組成を有する遮熱コーティング層との間に、NiCrAlY系合金からなるボンドコート層が形成されている。ボンドコート層をこのような組成にすることにより遮熱コーティング層の接着性を向上させることができる。
しかしながら、特許文献1に開示されたように、遮熱コーティング層の剥離を防止するためには、熱膨張差は吸収するボンドコート層を形成する必要がある。このように、遮熱コーティング層を形成するためには、ボンドコート層が必須であるため、製造工程が煩雑になるという問題点がある。
また、耐高温腐食性材料において、ボンドコート層を設けることなく、ゴミまたは廃棄物焼却処理により発生する燃焼ガス、および焼却灰などの高温かつ腐食性ガス雰囲気の使用環境下においても剥離が生じないコーティング層が望まれている。
また、耐高温腐食性材料において、ボンドコート層を設けることなく、ゴミまたは廃棄物焼却処理により発生する燃焼ガス、および焼却灰などの高温かつ腐食性ガス雰囲気の使用環境下においても剥離が生じないコーティング層が望まれている。
本発明の目的は、前記従来技術に基づく問題点を解消し、ボンドコート層を設けることなく、ゴミまたは廃棄物焼却処理により発生する燃焼ガス、および焼却灰などの高温かつ腐食性ガス雰囲気の使用環境下においてもコーティング層の剥離が生じない耐高温腐食性材料およびその製造方法を提供することにある。
上記目的を達成するために、本発明の第1の態様は、金属材料により構成される基材と、溶射法によって前記基材の表面に積層されたコーティング層とを有し、前記コーティング層は、前記基材を構成する前記金属材料の組成と、前記組成に更に加えられたSiとを含有する溶射原料を用いて形成されたものであることを特徴とする耐高温腐食性材料を提供するものである。
本発明においては、前記コーティング層は、前記基材がステンレス鋼である場合、前記基材に含まれるSiの含有量を除く、更に加えられた前記Siの含有量が35質量%以下である溶射原料を用いて形成されたものであることが好ましい。
また、本発明の第2の態様は、金属材料により構成される基材の表面に、溶射法によって前記基材を構成する前記金属材料の組成と、前記組成に更に加えられたSiとを含有する溶射原料を用いてコーティング層を積層することを特徴とする耐高温腐食性材料の製造方法を提供するものである。
本発明においては、前記溶射原料は、前記基材がステンレス鋼である場合、前記基材に含まれるSiの含有量を除く、更に加えられた前記Siの含有量が35質量%以下であることが好ましい。
本発明の耐高温腐食性材料によれば、金属材料により構成される基材の表面にコーティング層を、基材を構成する金属材料の組成と、この組成に更に加えられたSiとを含有する溶射原料を用いて溶射法によって積層されたものとすることにより、環境温度が、例えば、800℃であっても、コーティング層の剥離を防止することができる。また、コーティング層は、Siを含有するので耐食性にも優れる。このため、本発明の耐高温腐食性材料は、例えば、高温空気加熱器管に好適に利用することができる。
また、本発明の耐高温腐食性材料の製造方法によれば、溶射法によって基材を構成する金属材料の組成と、この組成に更に加えられたSiとを含有する溶射原料を用いて、金属材料により構成される基材の表面にコーティング層を積層することにより、環境温度が、例えば、800℃であっても、コーティング層の剥離を防止することができる。また、コーティング層は、Siを含有するので耐食性にも優れる。このため、本発明の耐高温腐食性材料は、例えば、高温空気加熱器管に好適に利用することができる。
以下に、添付の図面に示す好適実施形態に基づいて、本発明の耐高温腐食性材料およびその製造方法を詳細に説明する。
本発明の発明者は、鋭意実験研究の結果、耐高温腐食性材料について、基材を構成する金属材料の組成と、この組成に更に加えられたSiとを含有する溶射原料を用いて、溶射によりコーティング層を基材表面に積層することにより、ボンドコート層を設けることなく、環境温度が、800℃であってもコーティング層の剥離を防止できることを見出した。本発明の耐高温腐食性材料は、この知見に基づいてなされたものである。
本発明の発明者は、鋭意実験研究の結果、耐高温腐食性材料について、基材を構成する金属材料の組成と、この組成に更に加えられたSiとを含有する溶射原料を用いて、溶射によりコーティング層を基材表面に積層することにより、ボンドコート層を設けることなく、環境温度が、800℃であってもコーティング層の剥離を防止できることを見出した。本発明の耐高温腐食性材料は、この知見に基づいてなされたものである。
以下、本発明の耐高温腐食性材料について、例えば、図1に示すゴミ焼却処理システム10の高温空気加熱器20の外管32(図2参照)に適用したものを例にして説明する。
図1は、ゴミ焼却処理システムの要部を示す模式図である。
図1は、ゴミ焼却処理システムの要部を示す模式図である。
図1は、ゴミ焼却処理システム10の一部を示すものであり、燃焼溶融炉12に高温空気加熱器20が接続され、この高温空気加熱器20に過熱器22が接続されている。
燃焼焼却炉12は、前段に設けられた熱分解ドラム(図示せず)から排出された熱分解ガスと、熱分解カーボンとを、例えば、1300℃で溶融するものである。この燃焼焼却炉12内で発生した燃焼ガスGは、高温空気加熱器20に供給される。
この燃焼焼却炉12には、熱分解ガスが供給される配管部14と、熱分解カーボンが供給される配管部16とが設けられている。
燃焼焼却炉12は、前段に設けられた熱分解ドラム(図示せず)から排出された熱分解ガスと、熱分解カーボンとを、例えば、1300℃で溶融するものである。この燃焼焼却炉12内で発生した燃焼ガスGは、高温空気加熱器20に供給される。
この燃焼焼却炉12には、熱分解ガスが供給される配管部14と、熱分解カーボンが供給される配管部16とが設けられている。
高温空気加熱器20は、燃焼溶融炉12で発生した高温の燃焼ガスGと熱交換することにより熱エネルギを回収するものであり、更に後段の過熱器22に排ガスgを供給する。
この過熱器22に供給される排ガスgは、高温空気加熱器20に供給される燃焼ガスGよりも温度が低い。
この過熱器22に供給される排ガスgは、高温空気加熱器20に供給される燃焼ガスGよりも温度が低い。
また、過熱器22は、高温空気加熱器20から供給された排ガスgから更に熱エネルギを回収するものである。この過熱器22は、排ガスgを用いて蒸気を発生させる。過熱器22によって発生された蒸気は、例えば、蒸気タービンを有する発電機(図示せず)による発電に利用される。
図2は、本発明の実施形態に係る耐高温腐食性材料を用いた高温空気加熱器を示す模式的断面図である。
図2に示すように、高温空気加熱器20は、複数の高温空気加熱器管30を有し、各高温空気加熱器管30は、外管32と内管38とからなる同軸2重円管構造を有する。外管32の内部32aに内管38が外管32と同軸に隙間39をあけて配置されている。外管32は、底部が半円状に形成されている。内管38は、底部38aが開口している。これにより、高温空気加熱器管30内部で気体が移動できる。また、外管32は、基材34と、この基材34の表面に積層されたコーティング層36とを有する。
図2に示すように、高温空気加熱器20は、複数の高温空気加熱器管30を有し、各高温空気加熱器管30は、外管32と内管38とからなる同軸2重円管構造を有する。外管32の内部32aに内管38が外管32と同軸に隙間39をあけて配置されている。外管32は、底部が半円状に形成されている。内管38は、底部38aが開口している。これにより、高温空気加熱器管30内部で気体が移動できる。また、外管32は、基材34と、この基材34の表面に積層されたコーティング層36とを有する。
図2に示すように、高温空気加熱器20においては、高温空気加熱器管30が燃焼ガスGに曝されると、内管38内の低温空気Lが燃焼ガスGの熱エネルギにより加熱され、高温空気Hとなる。この高温空気Hが外管32と内管38との隙間39を流れ、外部に、高温空気Hとして熱エネルギが取り出される。
例えば、燃焼溶融炉内の温度が1300℃、低温空気Lの温度が270℃のとき、外部に取り出される高温空気Hの温度は550℃である。
例えば、燃焼溶融炉内の温度が1300℃、低温空気Lの温度が270℃のとき、外部に取り出される高温空気Hの温度は550℃である。
次に、本実施形態の耐高温腐食性材料の構成について説明する。
図3は、本発明の実施形態に係る耐高温腐食性材料の構成を示す模式的断面図である。
図3は、本発明の実施形態に係る耐高温腐食性材料の構成を示す模式的断面図である。
図3に示すように、本実施形態の耐高温腐食性材料が適用された外管32は、基材34と、この基材34の表面に積層されたコーティング層36とを有する。
基材34は、金属材料により構成されるものであり、例えば、JIS SUS310Sが挙げられる。なお、基材24は、燃焼ガスなど、使用環境温度に対して耐熱性を有するものであれば、金属材料は、特に限定されるものではない。
コーティング層36は、耐高温腐食性を付与するために基材34の表面に積層されたものであり、溶射により形成された溶射膜である。一般的に、耐高温腐食性材料においては、図5に示すように、基材102の表面に、コーティング層106の耐剥離性を向上させるためのボンドコート層104を形成し、このボンドコート層104の表面にコーティング層106を形成する。しかしながら、本発明のコーティング層36は、ボンドコート層を設けることなく、基材34表面に積層されたものである。
コーティング層36は、基材34を構成する金属材料の組成と、この組成に更に加えられたSiとを含有する溶射原料を用いて、溶射により作製されたものである。
本発明においては、例えば、基材34が、JIS SUS310S材である場合、JIS SUS310Sの粉末と、Siの粉末とを混合した混合粉末を溶射原料として用いる。
なお、本発明の溶射原料において、例えば、基材の組成にSiが存在する場合、更に加えられたSiの含有量とは、基材に含まれるSiの含有量を除くものである。すなわち、溶射原料におけるSiの含有量とは、更に加えられたSiの添加量だけである。以下、特に断りがない限り、溶射原料におけるSiの含有量とは、更に加えられたSiの添加量のことをいう。また、溶射原料におけるSiの含有量を、単にSiの含有量ともいう。
コーティング層36は、基材34を構成する金属材料の組成と、この組成に更に加えられたSiとを含有する溶射原料を用いて、溶射により作製されたものである。
本発明においては、例えば、基材34が、JIS SUS310S材である場合、JIS SUS310Sの粉末と、Siの粉末とを混合した混合粉末を溶射原料として用いる。
なお、本発明の溶射原料において、例えば、基材の組成にSiが存在する場合、更に加えられたSiの含有量とは、基材に含まれるSiの含有量を除くものである。すなわち、溶射原料におけるSiの含有量とは、更に加えられたSiの添加量だけである。以下、特に断りがない限り、溶射原料におけるSiの含有量とは、更に加えられたSiの添加量のことをいう。また、溶射原料におけるSiの含有量を、単にSiの含有量ともいう。
また、基材がステンレス鋼である場合、本発明のコーティング層の溶射原料におけるSiの含有量(基材34のSiの含有量を除く)は、35質量%以下であることが好ましい。Siの含有量が35質量%を超えると、耐剥離性が低下するので、好ましくない。
さらに、基材がステンレス鋼である場合、本発明のコーティング層の溶射原料におけるSiの含有量(基材34のSiの含有量を除く)は、15質量%以上であることが更に好ましい。Siの含有量が、15質量%未満では、十分な耐食性を得ることができない虞がある。
よって、基材がステンレス鋼である場合、Siの含有量が15〜35質量%では、耐剥離性および耐食性が共に優れる。このように、コーティング層の溶射原料におけるSiの含有量(基材34のSiの含有量を除く)は、15〜35質量%が更に一層好ましい含有量である。
さらに、基材がステンレス鋼である場合、本発明のコーティング層の溶射原料におけるSiの含有量(基材34のSiの含有量を除く)は、15質量%以上であることが更に好ましい。Siの含有量が、15質量%未満では、十分な耐食性を得ることができない虞がある。
よって、基材がステンレス鋼である場合、Siの含有量が15〜35質量%では、耐剥離性および耐食性が共に優れる。このように、コーティング層の溶射原料におけるSiの含有量(基材34のSiの含有量を除く)は、15〜35質量%が更に一層好ましい含有量である。
本実施形態においては、金属材料により構成される基材の表面に、コーティング層を、基材を構成する金属材料の組成と、この組成に更に加えられたSiとを含有する溶射原料を用いて溶射法により積層されたものとすることにより、基材とコーティング層との熱膨張係数の差が小さくなる。このため、ボンドコート層を設けることなく、環境温度が800℃に達しても、剥離しない耐剥離性が優れたコーティング層を得ることができる。
さらに、本発明におけるコーティング層は、Siを含有するので、耐高温性および耐食性も優れる。この場合、溶射原料において、基材34のSiの含有量を除く、更に加えられたSiの含有量を15〜35質量%とすることにより、更に一層耐剥離性および耐腐食性が優れたものとなる。
さらに、本発明におけるコーティング層は、Siを含有するので、耐高温性および耐食性も優れる。この場合、溶射原料において、基材34のSiの含有量を除く、更に加えられたSiの含有量を15〜35質量%とすることにより、更に一層耐剥離性および耐腐食性が優れたものとなる。
次に、本実施形態の耐高温腐食性材料の製造方法について、基材34がJIS SUS310S材である場合を例にして説明する。
本発明においては、溶射原料には、基材34を構成する金属材料の組成と、この組成に更に加えられたSiとを含有するものを用いる。溶射原料において、基材34のSiの含有量を除く、更に加えられたSiの含有量は35質量%以下であることが好ましい。また、基材34のSiの含有量を除く、更に加えられたSiの含有量は15〜35質量%であることが更に好ましい。
本実施形態においては、基材34が、JIS SUS310S材であるので、JIS SUS310Sの粉末とSiの粉末とを混合した混合粉末を溶射原料として用いる。
本実施形態においては、基材34が、JIS SUS310S材であるので、JIS SUS310Sの粉末とSiの粉末とを混合した混合粉末を溶射原料として用いる。
この溶射原料を用いて、例えば、大気圧プラズマ溶射法により、基材34の表面にコーティング層36を積層する。
このように、本実施形態の製造方法においては、コーティング層36の溶射原料を、基材34を構成する金属材料の組成と、この組成に更に加えられたSiとを含有するものとすることにより、基材34とコーティング層36との熱膨張係数の差が小さくなる。このため、ボンドコート層を設けることなく、温度が800℃程度の環境下でも剥離しない耐剥離性が優れたコーティング層36を基材34の表面に積層することができる。
このように、本実施形態の製造方法においては、コーティング層36の溶射原料を、基材34を構成する金属材料の組成と、この組成に更に加えられたSiとを含有するものとすることにより、基材34とコーティング層36との熱膨張係数の差が小さくなる。このため、ボンドコート層を設けることなく、温度が800℃程度の環境下でも剥離しない耐剥離性が優れたコーティング層36を基材34の表面に積層することができる。
なお、本実施形態においては、コーティング層36は、溶射法により形成されるため、数%の気孔が存在する。
このため、本発明の耐高温腐食性材料をゴミ焼却処理施設などに適用した場合、燃焼ガスに腐食性が高い塩素ガスもしくは塩化水素ガスなどの腐食性ガス、または焼却灰が溶けた溶融塩が気孔からコーティング層に浸入し最終的には、基材24が腐食されてしまうことがある。そこで、外管32を、例えば、以下に示す封孔処理により、気孔を封孔剤により封孔することが好ましい。これにより、更に一層耐食性が向上する。
このため、本発明の耐高温腐食性材料をゴミ焼却処理施設などに適用した場合、燃焼ガスに腐食性が高い塩素ガスもしくは塩化水素ガスなどの腐食性ガス、または焼却灰が溶けた溶融塩が気孔からコーティング層に浸入し最終的には、基材24が腐食されてしまうことがある。そこで、外管32を、例えば、以下に示す封孔処理により、気孔を封孔剤により封孔することが好ましい。これにより、更に一層耐食性が向上する。
この場合、封孔剤は、耐熱性および耐食性を有する無機ガラスからなるものとする。この封孔剤としては、例えば、ホウケイ酸ガラスおよびバリウムホウケイ酸ガラスが挙げられる。なお、封孔剤は、特に限定されるものではなく、燃焼ガスに曝された場合でも、腐食されず、さらには溶融しない無機ガラスであればよい。
無機ガラスは、軟化点の温度が高く、作業点の温度が低いことが好ましい。これにより、耐食性を維持しつつ、気孔を封孔処理する温度を下げることができる。
無機ガラスは、軟化点の温度が高く、作業点の温度が低いことが好ましい。これにより、耐食性を維持しつつ、気孔を封孔処理する温度を下げることができる。
以下、封孔処理について説明する。
先ず、無機ガラスを含有する有機スラリを作製し、この有機スラリをコーティング層36の表面に塗布し、有機スラリ層を形成する。
次に、例えば、大気雰囲気において、1000℃の温度で1時間保持する。
これにより、有機スラリ層が溶融し、無機ガラスが気孔に含浸し、気孔が封孔される。よって、燃焼ガスに含まれる腐食性が高いガスまたは溶融塩がコーティング層36に浸入することを防止できる。
先ず、無機ガラスを含有する有機スラリを作製し、この有機スラリをコーティング層36の表面に塗布し、有機スラリ層を形成する。
次に、例えば、大気雰囲気において、1000℃の温度で1時間保持する。
これにより、有機スラリ層が溶融し、無機ガラスが気孔に含浸し、気孔が封孔される。よって、燃焼ガスに含まれる腐食性が高いガスまたは溶融塩がコーティング層36に浸入することを防止できる。
本実施形態においては、溶射法は、特に限定されるものではない。例えば、大気圧プラズマ溶射法以外にも、減圧プラズマ溶射法、アーク溶射法、線爆溶射法、フレーム溶射法、および高速フレーム(HVOF)溶射法が適宜選択可能である。
また、本実施形態においては、基材の形状は、特に限定されるものではなく、筒、容器、板、または棒、およびこれらを組み合わせたものであってもよい。
また、本実施形態においては、基材の形状は、特に限定されるものではなく、筒、容器、板、または棒、およびこれらを組み合わせたものであってもよい。
本発明は、基本的に以上のようなものである。以上、本発明の耐高温腐食性材料およびその製造方法について、過熱管に適用した例について、詳細に説明したが、本発明は上記実施形態に限定されず、本発明の主旨を逸脱しない範囲において、種々の改良または変更をしてもよいのはもちろんである。例えば、本発明の耐高温腐食性材料は、火格子に適用することもできる。
以下、本発明の耐高温腐食性材料の実施例について、本発明の範囲から外れる比較例と比較して具体的に説明する。
本実施例においては、図3に示す層構造を有するものを、以下に示す製造条件で、下記表1に示すように溶射原料の組成を種々変えて、コーティング層を積層し、実施例1、実施例2および比較例1〜比較例3を得た。これらの実施例1、実施例2および比較例1〜比較例3について、剥離試験および耐食試験を行った。この結果を下記表1に示す。
本実施例においては、図3に示す層構造を有するものを、以下に示す製造条件で、下記表1に示すように溶射原料の組成を種々変えて、コーティング層を積層し、実施例1、実施例2および比較例1〜比較例3を得た。これらの実施例1、実施例2および比較例1〜比較例3について、剥離試験および耐食試験を行った。この結果を下記表1に示す。
本実施例においては、基材にJIS SUS310Sの板材を用いた。この基材の寸法は、50mm(縦)×100mm(横)×5mm(厚さ)である。
コーティング層については、JIS SUS310Sの粉末と、Siの粉末とを下記表1に示す比率で混合して得られた各溶射原料粉末を用いて、大気圧プラズマ溶射法により、膜厚が180μmのコーティング層を作製した。
このときの成膜条件としては、プラズマガスにArガスおよびHeガスを用いた。Arガスの流量は、50リットル/分であり、Heガスの流量は、15リットル/分である。大気圧プラズマ装置への印加電圧を40Vとし、印加電流を750Aとした。
なお、大気圧プラズマ装置は、制御部にプラズマダイン社製 3600を用い、溶射ガンにプラズマダイン社製 SG100を用いた。
このときの成膜条件としては、プラズマガスにArガスおよびHeガスを用いた。Arガスの流量は、50リットル/分であり、Heガスの流量は、15リットル/分である。大気圧プラズマ装置への印加電圧を40Vとし、印加電流を750Aとした。
なお、大気圧プラズマ装置は、制御部にプラズマダイン社製 3600を用い、溶射ガンにプラズマダイン社製 SG100を用いた。
剥離試験は、実施例1、実施例2および比較例1〜比較例3について、下記表1に示すように、700℃〜1000℃の温度範囲で、大気雰囲気中に1時間保持し、その後、室温まで冷却して行った。剥離試験の評価は、目視により剥離したか否かを判定した。ここで、剥離したとは、コーティング層がスケール状になった状態のことをいう。
下記表1に示す「○」は、コーティング層が剥離していないことを示し、「×」は、コーティング層が剥離したことを示す。
下記表1に示す「○」は、コーティング層が剥離していないことを示し、「×」は、コーティング層が剥離したことを示す。
次に、腐食試験について説明する。
腐食試験は、先ず、実施例1、実施例2および比較例1〜比較例3から、それぞれ10mm×10mm四方に切り出し、試験片を得た。
次に、各試験片の質量を測定した。
次に、各試験片のコーティング層の表面に、NaCl-KCl-Na2SO4−K2SO4の混合試薬を40mg/cm2塗布した。この状態の各試験片を750℃の温度で、72時間、N2(bal.)−20体積%H2O−14体積%CO2−5体積%O2−0.1体積%HClの雰囲気に曝した。
腐食試験は、先ず、実施例1、実施例2および比較例1〜比較例3から、それぞれ10mm×10mm四方に切り出し、試験片を得た。
次に、各試験片の質量を測定した。
次に、各試験片のコーティング層の表面に、NaCl-KCl-Na2SO4−K2SO4の混合試薬を40mg/cm2塗布した。この状態の各試験片を750℃の温度で、72時間、N2(bal.)−20体積%H2O−14体積%CO2−5体積%O2−0.1体積%HClの雰囲気に曝した。
次に、各試験片を3%過マンガン酸カリウム+5%水酸化ナトリウムの水溶液、および5%クエン酸アンモニウム水溶液中で、交互に煮沸してスケールを除去した。
次に、各試験片の質量を測定し、混合試薬塗布面積あたりの質量減少を算出した。温度が750℃における耐食性試験の結果を図4に示す。
図4は、縦軸に腐食減量をとり、横軸にSUS310の含有量をとって、耐食性のSUS310の含有量の依存性を示すグラフである。
次に、各試験片の質量を測定し、混合試薬塗布面積あたりの質量減少を算出した。温度が750℃における耐食性試験の結果を図4に示す。
図4は、縦軸に腐食減量をとり、横軸にSUS310の含有量をとって、耐食性のSUS310の含有量の依存性を示すグラフである。
上記表1に示すように、実施例1は、700℃〜1000℃の温度範囲において剥離が生じなかった。また、実施例2は、1000℃で剥離が生じたものの、十分な耐剥離性を有するものであった。このように、Siの含有量が35質量%以下では、耐剥離性が優れていた。
一方、比較例1〜比較例3は、700℃〜1000℃の温度範囲において剥離が生じた。このように、Siの含有量が35質量%を超えると、耐剥離性が劣っていた。
このように、SUS310(基材)に含まれるSiの含有量を除く、Siの含有量は35質量%以下であることが好ましい。
このように、SUS310(基材)に含まれるSiの含有量を除く、Siの含有量は35質量%以下であることが好ましい。
また、図4に示すように、溶射原料におけるSUS310の含有量が85質量%を超えると、耐食性が低下した。このように、溶射原料におけるSUS310の含有量は、耐食性の観点からは85質量%以下にすることが更に好ましい。すなわち、SUS310(基材)に含まれるSiの含有量を除く、Siの含有量は15質量%以上であることが更に好ましい。このように、Siの含有量が15〜35質量%では、耐剥離性および耐食性が共に優れる。
10 ゴミ焼却処理システム
12 燃焼溶融炉
20 高温空気加熱器
22 過熱器
30 高温空気加熱器管
32 外管
34 基材
36 コーティング層
38 内管
39 隙間
G 燃焼ガス
12 燃焼溶融炉
20 高温空気加熱器
22 過熱器
30 高温空気加熱器管
32 外管
34 基材
36 コーティング層
38 内管
39 隙間
G 燃焼ガス
Claims (4)
- 金属材料により構成される基材と、溶射法によって前記基材の表面に積層されたコーティング層とを有し、
前記コーティング層は、前記基材を構成する前記金属材料の組成と、前記組成に更に加えられたSiとを含有する溶射原料を用いて形成されたものであることを特徴とする耐高温腐食性材料。 - 前記コーティング層は、前記基材がステンレス鋼である場合、前記基材に含まれるSiの含有量を除く、更に加えられた前記Siの含有量が35質量%以下である溶射原料を用いて形成されたものである請求項1に記載の耐高温腐食性材料。
- 金属材料により構成される基材の表面に、溶射法によって前記基材を構成する前記金属材料の組成と、前記組成に更に加えられたSiとを含有する溶射原料を用いてコーティング層を積層することを特徴とする耐高温腐食性材料の製造方法。
- 前記溶射原料は、前記基材がステンレス鋼である場合、前記基材に含まれるSiの含有量を除く、更に加えられた前記Siの含有量が35質量%以下である請求項3に記載の耐高温腐食性材料の製造方法。
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Application Number | Priority Date | Filing Date | Title |
---|---|---|---|
JP2004051799A JP2005240106A (ja) | 2004-02-26 | 2004-02-26 | 耐高温腐食性材料およびその製造方法 |
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Cited By (1)
Publication number | Priority date | Publication date | Assignee | Title |
---|---|---|---|---|
CN102862999A (zh) * | 2012-09-14 | 2013-01-09 | 苏州市中衡压力容器制造有限公司 | 用于酸浸法从粉煤灰中提取氧化铝的结晶浓缩装置 |
-
2004
- 2004-02-26 JP JP2004051799A patent/JP2005240106A/ja active Pending
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