JP4475998B2 - 耐食性積層構造皮膜の形成方法および耐食性積層構造皮膜 - Google Patents

耐食性積層構造皮膜の形成方法および耐食性積層構造皮膜 Download PDF

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Description

本発明は、例えば、高温腐食環境下にある廃棄物発電設備の蒸気管、スーパーヒーターチューブなどの高温腐食に対して優れた高温耐食性を有する耐食性積層構造皮膜の形成方法および耐食性積層構造皮膜に関する。
産業廃棄物や生活ごみ等の廃棄物の処理は、焼却処理による減容化技術とともに、エネルギーの安定供給の観点から、その燃焼エネルギーを有効に活用する廃棄物発電等の技術が益々重要となってきている。現在、二酸化炭素の削減や廃棄物処理問題の対策として最も期待されているのが廃棄物発電であり、通常の発電所並である発電効率が30%以上の高効率発電が望まれている。
廃棄物発電設備において燃料として使用される廃棄物には、木材、紙、プラスチックなどの可燃物の他、さまざまな物質が不均一に混在している。そのため、廃棄物焼却炉の燃焼ガス中には、一般の化石燃料(重油、石炭など)の燃焼ガスに比べてHClなどの腐食性成分および燃焼飛灰(ダスト)を多く含んでいる。これらの腐食性成分やダストが高温になることにより、ボイラチューブなどの基材が腐食することを避けるため、現状の廃棄物発電は、蒸気温度が300℃以下に設定されており、発電効率も5〜15%程度と低くなっている。
近年、廃棄物発電設備では、発電効率の向上を目的として高温高圧化が進められているが、ボイラチューブや基材の高温腐食環境が苛酷化するため、その腐食劣化が問題となっている。
発電効率の向上という目標の実現には、ボイラの蒸気温度を高めることが必須の条件である。このため、高温の廃棄物燃焼ガス中の塩素系ガスやアルカリ溶融塩による激しい腐食に耐える材料の研究開発が行われ、Ni基合金(Alloy625)等の優れた高温耐食合金チューブが開発されている。しかし、これらの合金は枯渇資源を大量に使用し、非常に高価であることから、発電コストの観点からより安価な高温耐食材料が求められている。
特許文献1には、Ni等をベースとする耐熱合金基材の表面にZrO2を溶射する方法、また、基材と表層の間に傾斜機能材料(FGM:Functionally Graded Materials)からなる中間層を設けて熱応力を緩和する方法が記載されている。
このような溶射作業を行うために、各種のプラズマ装置が用いられている。図7は、従来の高出力プラズマアーク溶射装置の要部の断面図である。同図に示すように、従来の高出力プラズマアーク溶射装置は、円筒状のトーチ本体51の基端側に、主として,N2,Ar,H2等のガスが供給流路51aから供給されるチャンバ51bを形成し、このチャンバ51bの中に陰極の電極52を組み込んでいる。そして、チャンバ51bと同軸として陽極53をトーチ本体51内に配置し、トーチ本体51の末端側であって陽極53の終端から少し離れた位置に溶射材料の供給管54を備えている。陽極53は、陰極から遠ざかるにしたがい縮小する形状に形成されている。
このようなプラズマアーク溶射装置では、供給流路51aをチャンバ51bの内周面の接線方向にガスを供給することによって、ガスは、チャンバ51bから陽極53内の流路にかけて図中の実線で示すようにスパイラルの旋回流れとなる。
そして、電極52と陽極53との間に100V〜500Vの直流電圧を印加して高電圧の高周波を重畳すると、スパーク電流が流れ、プラズマガスを媒体として直流電流による安定したプラズマアーク55が発生する。このプラズマアーク55は、チャンバ51bから陽極53内を抜けるガス流が旋回流となっていることから、図中の実線で示すように流路断面の中心に収束する。
したがって、プラズマアーク55は高速のプラズマガス流による旋回流れの中心に沿って安定した収束流となり、陽極53の終端までの途中でアークが着地することなく、内部流路53aを介して陽極53の終端を出て外まで誘導される。
このように、チャンバ51bに供給されたガスは、プラズマガスとして陽極53を出た直後まで効率良く加熱され、高熱容量のプラズマフレーム56となって噴射される。そして、供給管54から溶射材料粉末57を添加することによって、高速プラズマ流により溶融され、プラズマフレーム56を介して被溶射体の表面に付着して溶射皮膜となる。溶射材料粉末57としては、NiおよびCrを主体とする材料が用いられている。
特開平5−279832号公報(段落番号0003、図1)
しかしながら、特許文献1に記載されたような方法で形成された皮膜は、廃棄物発電の炉内において、燃焼灰と腐食性ガスが複雑に絡み合った過酷な環境下に暴露されると、Cl(クロル)やS(サルファ)を多く含む腐食性ガスが皮膜内の気孔に侵入し、Ni層とZrO2層の界面を経時的に腐食するという問題がある。皮膜内の気孔は、下地のNi層やZrO2を従来のプラズマ溶射装置で溶射した場合に、下地のNi層やZrO2の層に形成されるもので、通常数%程度の気孔が存在する。
そこで本発明が解決しようとする課題は、皮膜形成面の高温耐食、耐摩耗性を飛躍的に改善できる耐食性積層構造皮膜の形成方法および耐食性積層構造皮膜を提供することにある。
前記課題を解決するため、本発明の耐食性積層構造皮膜の形成方法は、高出力プラズマアーク溶射装置により、基材の表面に自溶性合金からなる下地層を形成し、この下地層の上に安定化ZrO2または部分安定化ZrO2を主体としたセラミックからなる表層を形成する耐食性積層構造皮膜の形成方法であって、前記下地層に加熱溶融処理を施すことを特徴とする。
自溶性合金は、Ni系のNi基、Ni−Cr基等の合金、あるいはCo系のCo基、Co−Cr基等の合金に、それぞれBとSiを1%から数%添加したもので、耐磨耗性、耐食性、耐高温酸化性などにすぐれている。下地層の溶射後に、加熱溶融処理(フュージング)を施すことによって、緻密で基材との密着力の高い皮膜を作ることができる。BとSiを添加することによって合金の融点を下げフュージングを容易にすると同時に、皮膜中の酸化物を除去するフラックス成分として働く。フュージング後の皮膜に形成されたホウ化物は硬度が高く、耐磨耗性の向上に寄与する。また,溶融処理により皮膜が緻密化するので、耐腐食性も高く防食用途にも適している。
フュージングは、下地層を形成した後に行うが、表層を形成する前または表層を形成した後のいずれに行ってもよい。
本発明方法によって形成された皮膜は、自溶性合金からなる下地層の上にセラミックからなる表層が形成されているので、燃焼灰はセラミック皮膜の上に積層することになり、基材の溶融塩腐食が防止される。特に、自溶性合金からなる溶射皮膜が形成されているので、下地層および基材の界面の気孔が小さくなって、腐食が防止され、腐食の進行による表層の割れや脱落が防止される。
ここで、高出力プラズマアーク溶射装置とは、ガスの旋回流を用いて高い電圧(100V以上)を発生させる溶射装置で、プラズマフレームの吹出速度が1000m/s以上であるプラズマ溶射装置のことをいう。
前記加熱溶融処理を、前記下地層および前記表層を形成した後に、900℃〜1250℃の範囲で高周波加熱を行うと、基材の表面付近に高密度のうず電流が発生し、そのジュール熱で基材および下地層が直接加熱されるので、自溶性合金を均一に加熱することができる。セラミックからなる表層はこの温度範囲では溶融しないが、下地層は溶融され、凝固した後に気孔率の少ない、緻密な下地層が形成される。下地層が凝固するときには、基材と下地層との界面、および下地層と表層との界面が緊密に密着する。また、この加熱の段階で下地層にホウ化物が形成され、耐食性がより向上する。
加熱温度を900℃以上1250℃以下としたのは、加熱温度が900℃未満では、下地層が溶融せずに気孔が残ってしまい、耐食性が低い状態のままになってしまうからであり、加熱温度が1250℃を超えると、下地層が組成変化してしまい、また表層の皮膜が割れて劣化することがあるからである。加熱温度範囲を900℃〜1250℃とすることにより、耐食性を向上させるとともに下地層の組成変化と表層の割れを防止することができる。
前記加熱溶融処理を、前記下地層を形成した後であって、前記表層を形成する前に、前記下地層の表面を900℃〜1250℃の範囲で高周波加熱することにより行うと、下地層が溶融されて表面が滑らかになる状態を目視できるので、未処理範囲が発生することを防止でき、また、表層の割れを考慮せずに作業を行うことができるので、作業性が向上する。
前記加熱溶融処理を行った後であって、前記表層を形成する前に、前記下地層の表面にブラスト処理を行うと、表層の密着性が向上する。下地層に加熱溶融処理を行うと、溶射されて積層した粒子の表面が溶融、凝固することにより滑らかに形成されるので、ブラスト処理を行うことにより表面に粗面を形成し、その上面に溶射されるセラミックからなる表層の密着性がよくなる。
本発明の耐食性積層構造皮膜は、基材の表面に自溶性合金からなる下地層と、安定化ZrO2または部分安定化ZrO2を主体としたセラミックからなる表層とを有する耐食性積層構造皮膜が形成され、前記基材と前記下地層との界面および前記下地層と前記表層との界面が、前記下地層の溶融と凝固の過程を経て緊密に密着していることを特徴とする。
高出力プラズマアーク溶射装置により、基材の表面に自溶性合金からなる下地層を形成し、この下地層の上に安定化ZrO2または部分安定化ZrO2を主体としたセラミックからなる表層を形成し、前記下地層および前記表層を形成した後に、900℃〜1250℃の範囲で高周波加熱することにより加熱溶融処理を行うと、自溶性合金からなる下地層が表層を介して溶融温度まで加熱され、下地層がいったん溶融し、その後凝固することによって、下地層の気孔がほとんどなくなり、基材と下地層との界面および下地層と表層との界面が緊密に密着する。また、下地層にホウ化物が形成されるので、皮膜は優れた高温耐食性を発揮する。
本発明の他の耐食性積層構造皮膜は、基材の表面に、自溶性合金からなる下地層と、安定化ZrO2または部分安定化ZrO2を主体としたセラミックからなる表層とを有する耐食性積層構造皮膜が形成され、前記基材と前記下地層との界面が、前記下地層の溶融と凝固の過程を経て緊密に密着され、前記下地層と前記表層との界面が、粗面に形成されていることを特徴とする。
高出力プラズマアーク溶射装置により、基材の表面に自溶性合金からなる下地層を形成し、900℃〜1250℃の範囲で高周波加熱することにより加熱溶融処理を行い、下地層の表面にブラスト処理を行ってから、下地層の上に安定化ZrO2または部分安定化ZrO2を主体としたセラミックからなる表層を形成すると、下地層が溶融し凝固することにより基材と下地層との界面および下地層と表層との界面が緊密に密着するとともに下地層の表面が平滑に形成されてしまうので、この下地層の表面にブラスト処理を行ってから表層を形成すると、界面が粗面に形成され、密着性がよくなる。
前記下地層の気孔率は、1%以下であることが好ましい。下地層の上に表層を形成した後に加熱処理を行うことにより、下地層内の気孔が小さくなる。気孔率を1%以下としたのは、気孔率がこれより大きくなると耐食性が低下するからである。例えば、灰塗布法による耐食性試験において、500℃以上の雰囲気中で50時間以上経過したときに、気孔率が1%より大きいときは腐食の進行が著しいことから、実使用面で問題があると判断される。
気孔率を1%以下にすることにより、気孔に腐食性ガスが侵入することが防止され、耐食性を向上させることができる。
(1)本発明に係る耐食性積層構造皮膜は、高出力プラズマアーク溶射装置により基材の表面に自溶性合金からなる下地層が形成され、この下地層の上に安定化ZrO2または部分安定化ZrO2を主体としたセラミックからなる表層が形成され、下地層には加熱溶融処理が施されているので、皮膜形成面の高温耐食性および耐摩耗性が飛躍的に改善される。この耐食性積層構造皮膜を形成した基材を、廃棄物発電設備などの高温腐食環境下で使用したときに、燃焼灰などが下地層に接触することが防止され、また、運転停止時における露点腐食に対しても優れた耐食性を発揮することができる。これにより、ボイラの蒸気温度500℃以上で、発電効率30%以上の向上を果たすことができる。
(2)加熱溶融処理を、前記下地層および前記表層を形成した後に行うと、基材の表面付近に高密度のうず電流が発生し、そのジュール熱で基材および下地層が直接加熱されるので、自溶性合金を均一に加熱することができ、下地層全体を均一に溶融して凝固させることができる。
(3)加熱温度を900℃〜1250℃とすることにより、確実に溶融を行って耐食性を向上させるとともに、過熱による下地層の組成変化と表層の割れを防止することができる。
(4)加熱溶融処理を、表層を形成する前に行うと、下地層が溶融されて表面が滑らかになる状態を目視できるので、未処理範囲が発生することを防止して、全体を均一に溶融することができる。また、表層の割れを考慮せずに作業を行うことができるので、作業性が向上する。
(5)表層を形成する前に、下地層の表面にブラスト処理を行うと、加熱溶融処理により平滑化された下地層に粗面を形成するので、表層の密着性が向上し、皮膜の信頼性が向上する。
(6)本発明の耐食性積層構造皮膜は、基材と下地層との界面および下地層と表層との界面が、前記下地層の溶融と凝固の過程を経て緊密に密着しているので、耐食性が向上する。
(7)本発明の他の耐食性積層構造皮膜は、基材と下地層との界面が、下地層の溶融と凝固の過程を経て緊密に密着され、下地層と表層との界面が、粗面に形成されているので、基材と下地層、また、下地層と表層との界面の密着性がそれぞれ向上し、耐食性が向上する。
(8)下地層の気孔率を1%以下に形成すると、気孔に腐食性ガスが侵入することが防止され、耐食性をさらに向上させることができる。
以下、本発明の実施の形態について説明する。
(第1の実施の形態)
図1は本発明の第1の実施の形態の耐食性積層構造皮膜の形成方法に用いる高出力プラズマアーク溶射装置の要部の断面図である。
図1に示すように、第1の実施の形態の耐食性積層構造皮膜の形成方法に用いる高出力プラズマアーク溶射装置は、従来の高出力プラズマ装置と同様に、円筒状のトーチ本体1の基端側に、主としてN2,Ar,H2等のガスが供給流路1aから供給されるチャンバ1bを形成し、このチャンバ1bの中に陰極2を組み込んでいる。そして、チャンバ1bと同軸として陽極3をトーチ本体1内に配置し、トーチ本体1の末端側であって陽極3の終端から少し離れた位置に溶射材料の供給管4を備えている。陽極3は、陰極から遠ざかるにしたがい縮小する形状に形成されている。この高出力プラズマ装置は、従来の高出力プラズマ装置と同様に動作し、プラズマガスは、内部流路3aを通過しながらプラズマアーク5により加速され、陽極3の終端を出て高熱容量のプラズマフレーム6となって噴射される。
本実施の形態の高出力プラズマアーク溶射装置においては、供給管4から供給される溶射材料粉末7として、BおよびSiを含むNi系自溶性合金材料が用いられている。
次に、耐食性積層構造皮膜の形成手順について説明する。
(下地層形成工程)
図2は、耐食性積層構造皮膜の断面図である。図2に示すように、本発明の下地層14として用いられるNi系自溶性合金は、Niを主体としてBとSiとを1%〜数%含んでおり、他にCo、Al、Y、Mo、Fe、W、Nb、Ta等を含む耐熱合金である。
本工程では、Ni系自溶性合金の粉末を、高出力プラズマアーク溶射装置の供給管4に供給し、これを吹出口から噴出されるプラズマフレーム6とともに基材15の表面に噴出し、下地層14を形成する。下地層14の厚みは50μm〜500μm程度に形成することができる。
(表層形成工程)
下地層14の上には、表層16を形成する。表層16を形成する安定化ZrO2または部分安定化ZrO2を主体としたセラミック粉末は、ZrO2を主成分としてY23、MgO、CaO、SiO2から選ばれた1種以上の安定化材を含む材料である。
本工程では、下地層14の上に安定化ZrO2または部分安定化ZrO2を主体としたセラミック粉末を、高出力プラズマアーク溶射装置の供給管4に供給し、これを吹出口から噴出されるプラズマフレーム6とともに基材15の下地層14の表面に噴出し、表層16を形成する。表層16の厚みは50μm〜500μm程度に形成することができる。
(加熱工程)
表層形成工程の後に、表層16および下地層14を、高周波加熱を用いて900℃〜1250℃に加熱し、0.1秒〜30分間保持する加熱処理を行う。この加熱処理は、下地層14および表層16の材料に応じて、最適な加熱温度と保持時間がある。たとえば、Ni自溶性合金を用いた場合には、加熱温度1080℃で保持時間10秒以上となるようにするとよい。
加熱処理によって、下地層14および表層16からなる皮膜が下地層14の溶融温度まで加熱され、下地層14がいったん溶融し、その後凝固することによって、基材15と下地層14との界面17および下地層14と表層16との界面18が緊密に密着し、耐熱性および密着性が向上する。特に、下地層をNi系自溶性合金にしているので、下地層14の気孔率を、1%以下(ほとんど0%)にすることができる。そのため、腐食成分であるCl(クロル)、S(サルファ)は下地層へ侵入することができず、その下の基材15への侵入をほぼ完全に防止することができるので、耐食性が向上する。
図3Aおよび図3Bは腐食成分であるCl(クロル)、S(サルファ)の侵入の様子を示した模式図であって、図3Aは上記加熱処理を行わずに溶射のみを行った場合を示し、図3Bは上記加熱処理を行った場合を示している。図3Aに示すように、溶射のみの場合、腐食成分であるCl、Sは表層16aから下地層14aへ侵入し、基材15aに到達することにより、基材15aを腐食させる。一方、図3Bに示すように、上記加熱処理を行った場合、腐食成分であるCl、Sは表層16と下地層14の界面18で下地層14へ侵入することができず、その下の基材15への侵入がほぼ完全に防止される。
図4Aおよび図4Bは上記加熱処理による下地層の変化を示した断面写真を示す図であって、図4Aは上記加熱処理を行わずに溶射のみを行った場合を示し、図4Bは上記加熱処理(1000℃、30秒)を行った場合を示している。図4Aに示すように、溶射のみの場合、下地層14aの中に完全には溶融しきれていない溶射材料粉末7の粒21が含まれている。また、この下地層14aには、不定形な気孔22が含まれているので、腐食成分であるCl、Sは、この不定形な気孔22を通じて下地層14aへ侵入する。一方、図4Bに示すように、上記加熱処理を行った場合、溶射材料粉末7は完全に溶融し、その後凝固しているため、この溶射材料粉末7は現れていない。また、下地層14の気孔23は限りなく小さい球状の独立気孔となるので、腐食成分であるCl、Sは下地層14へ侵入することができない。
また、一般的な金属皮膜の加熱処理を行うときは、通常、金属皮膜の表面にフラックスなどの酸化防止剤を塗布し、乾燥してから加熱処理を行うのであるが、本発明の耐食性積層構造皮膜は、下地層14の上層にセラミック層である表層16が形成されているので、酸化防止剤を塗布しなくても、金属皮膜である下地層14が酸化されることはほとんどない。
本実施の形態に係る耐食性積層構造皮膜は、最適な加熱温度に達しただけで高温耐食性の向上が認められるので、この加熱温度での保持時間は0.1秒以上あればよい。加熱保持時間は長いほど気孔率は限りなく0%に近くなり、耐食性能の向上が認められるが、保持時間が長過ぎると基材の酸化や鋭敏化などの影響がでるので、保持時間の上限は30分が適当である。
(第2の実施の形態)
第2の実施の形態の耐食性積層構造皮膜の形成方法は、第1の実施の形態の耐食性積層構造皮膜を形成するときに行った加熱工程を、表層を形成する前に行ったもので、他の手順や条件は同じである。
下地層を直接再溶融すると、表層の表面が滑らかに形成されるので、処理の前後の状態を目視で確認することができる。
(第3の実施の形態)
第3の実施の形態の耐食性積層構造皮膜の形成方法は、第2の実施の形態の耐食性積層構造皮膜の形成方法の加熱工程の後、下地層の表面にブラスト処理を行ったものである。
下地層にブラスト処理を行うことによって下地層に粗面が形成され、表層の密着性がよくなる。
(高温腐食試験)
本発明の耐食性積層構造皮膜の耐食性を確認するために高温腐食試験を行った。
表1は高温腐食試験条件である。また、図5は高温腐食試験結果を示すグラフである。
表1に示す溶融塩を用いて、腐食温度550℃、650℃、750℃の各温度において腐食時間50時間の灰塗布法による高温腐食試験を行った。試験は、大気中における溶融塩腐食で行った。本発明の試験片は、高出力プラズマアーク溶射装置を使用して形成した皮膜、およびこの皮膜を1080℃に加熱し、30秒保持した後放冷した皮膜を用いた。比較試験片は、皮膜のないSUS304基材およびインコネル625基材を用いた。溶射で用いた材料は、基材にSUS304、下地層に自溶性合金(膜厚:150μm)、表層にジルコニア/イットリア(ZrO2/8%Y23 膜厚:200μm)を用いた。
図5からわかるように、本発明品(1,2)は、腐食温度550℃、650℃、750℃において、皮膜の腐食減量及び皮膜の剥離、割れなどが認められず、優れた高温耐食性を示した。比較としたSUS304基材およびインコネル625基材は、いずれの腐食条件においても腐食減量を示し、基材断面のミクロ観察により粒界腐食を起こしているのが確認された。なお、この試験で本発明品がプラスの腐食量を示しているのは、試験後に試験片の水洗を行った後に、皮膜内に侵入した溶融灰が一部残留していたためである。
(湿式腐食試験)
廃棄物発電所の運転停止時における炉内結露による腐食の発生を想定して、結露に対する耐食性を確認するために湿式腐食試験行った。
表2は湿式腐食試験条件であり、図6は湿式腐食試験結果を示すグラフである。
本発明品(1,2)の試験片は、表層にジルコニア/8%イットリア皮膜、下地層にNi自溶性合金皮膜、基材にSS400を用いた円筒状のもので、表層の外側全体を所定厚みの樹脂で覆い、樹脂の一方の側面を直径15mmだけ切除して基材の直径より小さい窓部を形成し、表面を外部に露出させたものである。比較品(3)の試験片は単層の皮膜のみ、(4)は基材のみである。
これらの試験片を用いて、1Nの硫酸60℃で500mlの中に浸漬し、経時的な重量変化を測定した。
図6からわかるように、SS400基材よりもその上に単層の皮膜がある方が、また単層皮膜よりもその上にジルコニア皮膜がある二層構造皮膜の方が、さらに二層構造皮膜よりも加熱処理(1100℃、30S)を行った二層構造皮膜が良好な湿式腐食性能の結果を示した。
本発明の耐食性積層構造皮膜の形成方法および耐食性積層構造皮膜は、高温腐食環境下にある廃棄物発電設備の蒸気管、スーパーヒーターチューブなどの高温腐食に対して優れた高温耐食性を有する皮膜とその形成方法として有用である。また、各種ボイラ、ガスタービン、加熱炉などの、断熱皮膜、耐食性積層構造皮膜を必要とする分野の基材の表面処理技術として好適である。
本発明の第1の実施の形態の耐食性積層構造皮膜の形成に用いる高出力プラズマアーク溶射装置の要部の断面図である。 耐食性積層構造皮膜の断面図である。 加熱処理を行わずに溶射のみを行った場合の腐食成分の侵入の様子を示す模式図である。 加熱処理を行った場合の腐食成分の侵入が防止される様子を示す模式図である。 加熱処理を行わずに溶射のみを行った場合の下地層の断面写真を示す図である。 加熱処理を行った場合の下地層の断面写真を示す図である。 高温腐食試験結果を示すグラフである。 湿式腐食試験結果を示すグラフである。 従来の外部ポート型の高出力プラズマアーク溶射装置の要部の断面図である。
符号の説明
1 トーチ本体
1a 供給流路
1b チャンバ
2 陰極
3 陽極
3a 内部流路
4 供給管
5 プラズマアーク
6 プラズマフレーム
7 溶射材料粉末
14 下地層
15 基材
16 表層
17 界面
18 界面

Claims (3)

  1. 高出力プラズマアーク溶射装置により、基材の表面に自溶性合金からなる下地層を形成し、この下地層の上に安定化ZrO2または部分安定化ZrO2を主体としたセラミックからなる表層を形成する耐食性積層構造皮膜の形成方法であって、
    前記下地層を形成した後であって、前記表層を形成する前に、前記下地層の表面を900℃〜1250℃の範囲で高周波加熱することにより、前記下地層に加熱溶融処理を施し、
    前記加熱溶融処理を行った後であって、前記表層を形成する前に、前記下地層の表面にブラスト処理を行う
    ことを特徴とする耐食性積層構造皮膜の形成方法。
  2. 基材の表面に、自溶性合金からなる下地層と、安定化ZrO2または部分安定化ZrO2を主体としたセラミックからなる表層とを有する耐食性積層構造皮膜が形成され、前記基材と前記下地層との界面が、前記下地層の溶融と凝固の過程を経て緊密に密着され、前記下地層と前記表層との界面が、粗面に形成されていることを特徴とする耐食性積層構造皮膜。
  3. 前記下地層の気孔率が1%以下であることを特徴とする請求項記載の耐食性積層構造皮膜。
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