JP3917568B2 - 耐熱・耐酸化性溶射皮膜被覆部材およびその製造方法 - Google Patents

耐熱・耐酸化性溶射皮膜被覆部材およびその製造方法 Download PDF

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Description

本発明は、ガラス質状酸化クロム含有耐熱・耐酸化性溶射皮膜にて被覆された耐熱・耐酸化性溶射皮膜被覆部材およびそれの製造方法に関するものである。
近年、ガスタービンの熱効率向上のために作動ガス温度の高温化を目指した研究が盛んに行なわれている。その結果、現在では、タービン入口の温度が1500℃を超えるまでに高温化が進んでいる。
このような作動ガス温度の高温化は、高温の燃焼ガスに直接曝されるタービン翼部材の材料開発と翼の冷却技術の進歩によるところが大きく、現在でも重要な研究課題となっている。とくに、タービン動翼は、運転時の遠心力によるクリープ変形や起動、停止に伴う熱疲労、機械的振動による高サイクル疲労さらには燃焼ガスや燃焼用空気中に含まれる海塩粒子、硫黄およびバナジウムなどの不純物による腐食作用を受けるため、タービン動翼部材の材料開発は重要である。
一方、タービン静翼は、前記タービン動翼の前面に配設され、燃焼ガスの案内弁的な働きをしているものである。そのため、タービン静翼は、動翼に比較して一段と高い温度に曝される環境下にあり、動翼と同じように高い熱応力や熱衝撃の他、高温酸化や高温腐食を受けやすい状態にある。そのため、これらのタービン動静翼には、高温強度特性に優れたNi基合金やCo基合金が使用されており、これらの合金は、現在の高温化されたガスタービンにおいては、構成材料の中で重要な地位を占めている。
しかしながら、これらのNi基合金やCo基合金の類は、高温における強度を重視して開発されているため、強度向上への寄与が小さいAlやCr,Siなどの耐高温酸化特性の改善に有効な金属成分の含有量が低く抑えされており、そのため現在の使用温度が高温化したガスタービンの構成材料としては、耐酸化性とくに耐高温酸化特性が十分ではないという問題がある。そのため、タービン動静翼の表面に耐高温酸化性に優れた皮膜を形成させることで、耐高温酸化性を改善する方法が従来から検討されており、現在までに、多数の皮膜形成技術や、そのためのコーティング材(皮膜材料)に関する技術が提案されている。
例えば、特許文献1および特許文献2には、タービン動静翼の表面に、Cr拡散浸透法を用いて高Cr濃度層を形成し、耐高温酸化特性を向上させる技術が開示されている。しかし、これらの技術は、ガスタービンの運転温度が低い場合には有効であるが、現在のような1500℃以上の運転環境下で使用する場合には、翼表面に形成されたCr層が蒸気圧の高いCrO3となって揮散してしまい、優れた耐高温酸化性は期待できない。
この問題を解決するものとして、ガスタービンの動静翼および燃焼器内筒(尾筒含む)などの高温部に、電子ビーム蒸着法や溶射法によって、MCrAlX合金と呼ばれる耐高温酸化特性に優れる皮膜を被覆する技術が開発されている。ここで、MCrAlX合金におけるMは、Ni,CoあるいはFeの単独あるいはこれら複数の元素からなる合金であり、Xは、Y,Hf,Se,Ce,La,Th,Pt,BおよびSiなどの元素を示す。この技術は、現在の高温化したガスタービンはもとより、ジェットエンジン部材等にも幅広く利用されている。
このMCrAlX合金については、使用目的に応じて種々の化学組成のものが多数提案されている(例えば、特許文献3〜7参照。)。それらのMCrAlX合金の化学組成は、概ね次のような範囲内にあるものである。
(M成分)Ni:0〜75 mass%、Co:0〜75 mass%、Fe:0〜30 mass%、Cr:5〜70 mass%、Al:1〜29 mass%
(X成分)Y:0〜5mass%、Hf:0〜10 mass%、Ta:1〜20 mass%、Si:0.1〜14 mass%、B:0〜0.1 mass%、C:0〜0.25 mass%、Mn:0〜10 mass%、Zr:0〜3 mass%、W:0〜0.5 mass%、Pt:0〜20 mass%
一方、溶射による耐熱性溶射皮膜の形成技術の他に、クロム酸水溶液を主成分とする薬剤を用いて、鋼鉄製基材の表面に、直接微細なCr23集合体の皮膜を形成させる技術が特許文献8〜11に開示されている。さらにこの技術を、各種の方法によって得た皮膜に適用し、改善する技術が開発されている。例えば、特許文献12〜16には、溶射されたセラミックス層や金属被覆層ならびに電気めっきにより形成された硬質めっき皮膜に、クロム酸を主成分とする薬剤(無水クロム酸水溶液)を利用したクロメート処理を適用し、皮膜に存在する気孔や亀裂等の欠陥部を充填・封孔処理し、これらの欠陥に起因する弊害を防止する技術が提案されている。
特許第600213号公報 特許第829784号公報 特開昭59−001654号公報 特開昭59−006352号公報 特開昭59−089745号公報 特開昭59−118847号公報 特開昭60−141842号公報 特開昭59−009171号公報 特開昭61−052374号公報 特開昭63−126682号公報 特開昭63−317680号公報 特開昭59−205480号公報 特開昭61−194187号公報 特開昭63−000487号公報 実開平03−063565号公報 特開平10−018052号公報
ところで、上述したMCrAlX合金は、粉末状態にされ、大気プラズマ溶射法、減圧プラズマ溶射法、高速フレーム溶射法および爆発溶射法などによって基材の表面に被覆される。しかし、現在、市販されている溶射用のMCrAlX合金粉末には、次のような問題がある。
(1) 市販されているMCrAlX合金粉末は、吸湿しやすく、その吸湿した合金粉末は、流動性が悪く、溶射ガンへの供給が不正確かつ不安定となるため、溶射皮膜を均等な厚さに形成することができなくなる。
(2) MCrAlX合金粉末は、吸湿状態が長期に及ぶと、合金成分として含まれるCo,Cr,Al,Niなどが水酸化物や酸化物に変化し、合金としての特性を消失する。
(3) 上記MCrAlX合金の吸湿性に起因した弊害を防止するためには、乾燥保管設備の増強や保管管理方式の導入などが必要とされ、生産コストの上昇を招く。
(4) また、市販のMCrAlX合金粉末は、その粒度分布が粒径1〜150μmの広範囲に拡がっている。この状態の合金粉末を溶射すると、大きな粒径の粉末は溶射熱源によって完全に溶融することなく溶射され、皮膜内に未溶融粒子となって分散する。そのため、皮膜を構成する合金粒子間の相互結合力が低下するほか、金属製基材との密着力の低下の原因ともなる。
(5) 一方、微粒のMCrAlX合金粉末は、溶射熱源によって短時間で溶融し、酸化される結果、熱源中で全てが酸化物となる。この酸化物は、黒色系の微粉末となって溶射皮膜中に分散し、皮膜を構成する合金粒子間の相互結合力を弱くするとともに、金属製基材との密着性を低下させる。
(6) さらに、合金粒子が酸化した黒色の微粒酸化物は、煤のように密着性がない状態で溶射した皮膜表面に薄く付着するため、皮膜の商品価値を低下させる他、この溶射皮膜をアンダーコートとし、さらにこの上にトップコート(例えば、ZrO2系セラミックス皮膜)を積層する場合には、両層間の密着力を低下させてトップコートの剥離を促進する。
(7) さらに上記合金粉末の溶射中に発生する黒色の微粒酸化物は、いわゆるヒューム状となって溶射作業環境を汚染するため、安全衛生上も好ましくない。
本発明の目的は、市販の溶射用MCrAlX合金粉末が抱えている上記問題点、すなわち、粉体であるが故の吸湿性の増加、これに伴う粉体流動性や溶射効率の低下ならびに粉体の吸湿水分による変質などの問題点のないガラス質状耐熱・耐酸化性複合溶射材料を用いることにより、優れた耐熱性と耐高温酸化特性を有する溶射皮膜被覆部材を得ること、および、そうした部材の有利な製造方法を提案することにある。
発明者らは、上述した従来のMCrAlX合金を用いる溶射技術は、その大部分が、MCrAlX合金成分それ自体の成分組成の調整や、溶射法などの工夫などに重点が置かれていたことから生じる上述した問題点を解決するためには、むしろ、溶射材料である合金粉末の性状に着目した開発を行うべきではないかという視点で鋭意研究を行った。その結果、溶射材料となる耐熱合金粉末の表面に、化学的処理によりガラス質状酸化クロムの膜を予め形成しておき、このような処理を施した粉末を溶射材料とすることにより、上記問題点が解決できることを見出し、本発明を完成させた。
上記知見に基づき開発された本発明は、金属製基材を溶射皮膜にて被覆してなる部材において、前記基材が、耐熱合金粉末の表面にリン酸とクロム酸との混合水溶液を付着させたのち加熱処理するリン酸クロム酸処理によって生成した、酸化クロム粒子をリン酸由来のガラス状バインダーによって結合したガラス質状酸化クロム膜を被覆してなるガラス質状耐熱・耐酸化性複合溶射材料を溶射することによって得られるガラス質状酸化クロム含有耐熱・耐酸化性溶射皮膜にて被覆されていることを特徴とする耐熱・耐酸化性溶射皮膜被覆部材である。
本発明において、上記ガラス質状酸化クロム含有耐熱・耐酸化性溶射皮膜は、MCrAlX(ただし、MはCo,NiおよびFeのうちから選ばれる1種または2種以上、XはY,Hf,Ta,Cs,Ce,La,Th,W,Si,Pt,MnおよびBのうちから選ばれる1種または2種以上)で表される平均粒径が5〜100μmの耐熱合金粉末の表面が0.1〜10μm厚のガラス質状酸化クロム膜にて被覆されたものからなるガラス質状耐熱・耐酸化性複合溶射材料を、溶融もしくは半溶融状態で基材表面に溶射して堆積させてなる、ガラス質状Cr23セラミックスとMCrAlX合金とが混在した層からなるものであることが好ましい。
本発明において、上記ガラス質状酸化クロム含有耐熱・耐酸化性溶射皮膜の表面には、酸化アルミニウムを主成分とする保護性酸化膜が形成されていることが好ましい。
本発明において、上記ガラス質状酸化クロム含有耐熱・耐酸化性溶射皮膜をアンダーコートとし、そのアンダーコートの上にトップコートとして、酸化物セラミックス溶射皮膜が形成されてなることが好ましい。
本発明はまた、耐熱合金基材の表面に、アンダーコートとして、上記ガラス質状酸化クロム含有耐熱・耐酸化性溶射皮膜が形成され、そのアンダーコートの上に中間層として、MCrAlX(ただし、MはCo,NiおよびFeのうちから選ばれる1種または2種以上、XはY,Hf,Ta,Cs,Ce,La,Th,W,Si,Pt,MnおよびBのうちから選ばれる1種または2種以上)で表される耐熱合金粉末の表面にガラス質状酸化クロムの膜を設けてなるガラス質状耐熱・耐酸化性複合溶射材料とZrO2系酸化物セラミックスとの混合粉末を溶射してなる中間層溶射皮膜が形成され、さらにその中間層溶射皮膜の上にトップコートとして、ZrO2系酸化物セラミックス溶射皮膜が形成されていることを特徴とする耐熱・耐酸化性溶射皮膜被覆部材である。
本発明において、上記中間層溶射皮膜が、トップコート側ほどZrO2系酸化物セラミックスの含有量を多くした傾斜配合層からなることが好ましい。
本発明において、上記耐熱合金基材の表面に、耐熱合金の耐熱性溶射皮膜が形成され、そのアンダーコートの上にトップコートとして、上記ガラス質状酸化クロム含有耐熱・耐酸化性溶射皮膜が形成されていることが好ましい。
本発明において、上記耐熱合金基材の表面に、耐熱合金の耐熱性溶射皮膜が形成され、そのアンダーコートの上に中間層として、上記ガラス質状酸化クロム含有耐熱・耐酸化性溶射皮膜が形成され、さらにその中間層の上にトップコートとして、ZrO2系酸化物セラミックス溶射皮膜が形成されていることが好ましい。
また、本発明は、金属製基材の表面に、耐熱合金粉末の表面にリン酸とクロム酸との混合水溶液を付着させたのち加熱処理するリン酸クロム酸処理によって生成した、酸化クロム粒子をリン酸由来のガラス状バインダーによって結合したガラス質状酸化クロム膜を被覆してなるガラス質状耐熱・耐酸化性複合溶射材料を溶射することによって、ガラス質状酸化クロム含有耐熱・耐酸化性溶射皮膜を形成することを特徴とする耐熱・耐酸化性溶射皮膜被覆部材の製造方法である。
本発明方法において、上記耐熱・耐酸化性溶射材料は、MCrAlX(ただし、MはCo,NiおよびFeのうちから選ばれる1種または2種以上、XはY,Hf,Ta,Cs,Ce,La,Th,W,Si,Pt,MnおよびBのうちから選ばれる1種または2種以上)で表される平均粒径が5〜100μmの耐熱合金粉末の表面が0.1〜10μm厚のガラス質状酸化クロム膜にて被覆されたものであることが好ましい。
本発明方法において、上記金属製基材の表面に、ガラス質状酸化クロム含有耐熱・耐酸化性溶射皮膜を形成した後、970〜1500Kで1〜30Hr加熱することにより、該溶射皮膜の表面に酸化アルミニウムを主成分とする保護性酸化膜を生成させることが好ましい。
本発明方法において、上記ガラス質状酸化クロム含有耐熱・耐酸化性溶射皮膜を形成した後、その上に、酸化物セラミックスを溶射して酸化物セラミックス溶射皮膜を形成することが好ましい。
本発明方法はまた、耐熱合金基材の表面に、アンダーコートとして、上記ガラス質状酸化クロム含有耐熱・耐酸化性溶射皮膜を形成し、そのアンダーコートの上に中間層として、MCrAlX(ただし、MはCo,NiおよびFeのうちから選ばれる1種または2種以上、XはY,Hf,Ta,Cs,Ce,La,Th,W,Si,Pt,MnおよびBのうちから選ばれる1種または2種以上)で表される耐熱合金粉末の表面にガラス質状酸化クロムの膜を有するガラス質状耐熱・耐酸化性複合溶射材料とZrO2系酸化物セラミックスとの混合粉末を溶射して中間層溶射皮膜を形成し、さらにその中間層溶射皮膜の上にトップコートとして、ZrO2系酸化物セラミックスを溶射してZrO2系酸化物セラミックス溶射皮膜を形成することを特徴とする耐熱・耐酸化性溶射皮膜被覆部材の製造方法である。
本発明方法において、上記中間層溶射皮膜を、トップコート側ほどZrO2系酸化物セラミックスの含有量を多くした傾斜配合層とすることが好ましい。
本発明方法においては、上記耐熱合金基材の表面に、アンダーコートとして、耐熱合金粉末を溶射して耐熱性溶射皮膜を形成し、その後、そのアンダーコートの上に、上記ガラス質状耐熱・耐酸化性複合溶射材料を溶射してガラス質状酸化クロム含有耐熱・耐酸化性溶射皮膜を形成することが好ましい。
本発明方法において、上記ガラス質状酸化クロム含有耐熱・耐酸化性溶射皮膜の上にはさらに、トップコートとして、ZrO2系酸化物セラミックスを溶射してZrO2系酸化物セラミックス溶射皮膜を形成することが好ましい。
本発明によれば、耐高温・耐酸化性の溶射皮膜の形成材料として、MCrAlX合金粉末の表面に化学的処理によってガラス質状Cr23膜を形成してなるガラス質状耐熱・耐酸化性複合溶射材料を用いることにより、吸湿に伴う変質や流動性の低下を防止することができ、また溶射ガンへの供給が円滑となり、安定した品質の皮膜を確保することができる。また、化学的処理により合金粉末の表面に被覆されたガラス質状Cr23膜は、溶射熱源によって合金粉末とともに溶融・軟化して溶射皮膜の一部を構成し、酸化物セラミックス成分としての機能を発揮し、高温度下において、基材へのMCrAlX合金成分の過度な熱拡散を抑制する一方、皮膜表面では、優れた保護性を有するAl23の生成を促して、耐高温酸化特性を向上すると共に、トップコートとして形成する酸化物セラミックスの結合性の向上にも効果を発揮する。以上の作用効果によって、ガスタービン等の高温被曝用部材に対する溶射加工作業、皮膜品質、皮膜性質などを、溶射粉末材料の段階において改善することが可能となる。
本発明において、溶射材料の原料として用いる耐熱合金、例えばMCrAlX合金は、上述した(0008段落)のような既知のものを用いることができる。一般に、金属や合金を溶射材料用原料として調整すべく粉末化するには、それらを不活性ガス雰囲気中で溶融した後、その溶融金属をノズルの先端から噴出させると同時に、その溶湯に不活性ガスのジェット流を強く吹き付けることによって粉砕して微粒化させ、それを回収する方法(ガスアトマイズ法、噴霧法などと呼ばれている)などが採用されており、MCrAlX合金の粉末も同様の方法によって製造されている。この粉末はその後、真空中もしくは不活性ガス雰囲気中で、900〜1500K×1〜30時間の熱処理を施すこともある。
このようにして得られたMCrAlX合金粉末は、その形状が球状を呈している。そして、この粉末は、不活性ガス雰囲気中で製造、熱処理されるため、酸化物量は比較的少なく、発明者らの調査によると、酸素含有量は0.03〜0.05mass%程度である。しかし、得られる粉末の粒径は、150μm程度の大きいものから1μm程度の小さなものまで混在している。そのため、通常は、篩を用いて分級処理し、平均粒径が5〜100μm程度となるような処理を経た上で、溶射材料としている。しかし、実際の市販品では、1μm程度またはそれ以下の微細な粒子も混在しているので、これらも本発明では利用できる。
本発明における特徴的な構成の1つは、上記のような粒径分布を有する耐熱合金粉末、たとえばMCrAlX合金粉末に対して化学的処理を施すことによって、該粉末粒子の表面に、予め薄いガラス質状酸化クロムの膜を生成被覆してなる、即ち、耐熱・耐酸化性の複合溶射材料を、被膜形成材料として用いるところにある。その化学処理とは、まず、MCrAlX合金粉末を、リン酸(H3PO4)と無水クロム酸(CrO3)との混合水溶液(以下、「リン酸クロム酸混合水溶液」と略記する)中に数分間浸漬した後、これを引き上げて余分な水溶液を除去し、室温〜400Kで乾燥し、その後さらに、電気炉中で500〜800K×0.5〜5時間の加熱処理を行う。この加熱処理によって、前記MCrAlX合金粉末は、その表面に付着していたリン酸クロム酸混合水溶液が、以下に説明するような化学反応を起こすことによって、ガラス質状の薄いCr23膜で被覆されることになる。
まず、リン酸クロム酸混合水溶液中の無水クロム酸は、加熱処理によって、下式のように酸化クロムを生成する。このリン酸クロム酸水溶液から生成したCr23膜は、0.01μm程度以下の超微細粒子の集合体であるため、MCrAlX合金粒子の表面を緻密に被覆することができる。
CrO3→1/2Cr23+3/4O2
一方、リン酸は、加熱処理によって脱水するとともに、クロム酸の分解によって生成する0.01μm以下の微細なCr23粒子群を相互に結合すると共に、MCrAlX合金粒子に対してもバインダー作用の強いガラス状物質となる。
リン酸と無水クロム酸との混合割合は、下記の組成が好適であり、リン酸の含有量が多くなるとガラス質状が多くなり、逆に、CrO3が多くなると、ガラス質状が少ないCr23膜となる。
CrO3:20〜40wt%
2PO4:10〜50wt%
2O:20〜40wt%
なお、上記のリン酸クロム酸混合水溶液は、無水クロム酸に代えて、クロム酸アンモニウム((NH4)2CrO4)、重クロム酸アンモニウム((NH4)2Cr27)を使用することができる。これらを用いた場合の加熱処理反応は次のとおりである。
(NH4)2CrO4→1/2Cr23+2NH3+H2O+3/4O2
(NH4)2Cr27→Cr23+2NH3+H2O+3/2O2
また、リン酸に代えて、無水リン酸(P25)、縮合リン酸、重合リン酸なども使用することができる。
本発明では、MCrAlX合金粉末に対するCr23膜の上述した化学的生成処理を、便宜上「リン酸クロム酸処理」と呼ぶこととする。なお、1回のリン酸クロム酸処理で生成するCr23膜の厚さは、リン酸クロム酸水溶液の濃度によっても変化するが、30 mass%のCrO3水溶液を例にとると、1回の処理では0.05〜0.10μm程度である。このリン酸クロム酸処理によって生成したCr23膜は、水に不溶性であるため、再びリン酸クロム酸水溶液に浸漬しても溶出することがない。そのため、このリン酸クロム酸処理を繰り返すことによって、ガラス質状のCr23膜を厚く生成させることができる。
リン酸クロム酸水溶液中に浸漬後、引上げたMCrAlX合金粉末には、余分なリン酸クロム酸水溶液が付着している場合があるが、このような場合には遠心分離器を利用することによって、余分な水溶液を除くことができる。さらに本発明においては、リン酸クロム酸水溶液への浸漬法に代えて、MCrAlX合金粉末に対してリン酸クロム酸水溶液を噴霧する方法を用いても、粉末の表面にガラス質状のCr23膜を形成することが可能である。
本発明において、MCrAlX合金粉末の表面を覆うガラス質状のCr23膜の好適な厚さは、0.1〜10μmの範囲である。0.1μmより薄い場合は、本発明が目的とする充分な耐高温酸化特性を得ることができず、一方、10μmより厚くしても格別な効果が得られずに、生産コストの増加を来すだけなので好ましくない。
ところで、粒径50μmのMCrAlX合金粉末を用いて、リン酸クロム酸処理によって、その表面に0.1μm厚のCr23膜(除くリン酸)を被覆すると、合金粉末中に含まれるCr23量は約1.2vol%程度となる。このCr23量から換算される酸素含有量は約0.26mass%程度であり、無処理のMCrAlX合金粉末を、大気中でプラズマ溶射して得た皮膜中の酸素含有量の2%前後と比較して少ない。また、同じ粒径のMCrAlX合金粒子に、10μm厚のCr23膜を被覆した場合には、Cr23は63.5 vol%の含有量となるので、リン酸クロム酸処理後の合金粉末は、むしろ酸化物系サーメット粉末と言えるものとなる。さらに、MCrAlX合金粉末の粒径が5μmで、この表面に10μm厚のCr23膜を被覆した場合には、粉末の大部分がCr23となり、MCrAlX合金の含有量は0.8 vol%でしかない。この場合には、酸化物系セラミックス粉末と呼ぶ方が適当かも知れない。
上述したように、本発明において溶射材料として用いるリン酸クロム酸処理を施したMCrAlX合金粉末の組成は、原料となるMCrAlX合金粉末の粒径と被成するガラス質状Cr23膜の厚さによって、合金成分と酸化物(Cr23)成分の割合が大きく変化するが、いずれの合金粉末も、本発明の目的に対しては好適に用いることができる。そこで、溶射皮膜の用途により溶射皮膜中のCr23量を調整したい場合には、表面に被覆するガラス質状Cr23膜厚を適宜選択すればよいことになる。
なお、本発明のリン酸クロム酸処理が好適に施工できるMCrAlX合金粉末の化学成分は以下のとおりである。
(M成分) Ni:0〜75 mass%、Co:0〜75 mass%、Fe:0〜30 mass%、Cr:5〜70 mass%、Al:1〜29 mass%
(X成分) Y:0〜5mass%、Hf:0〜10 mass%、Ta:1〜20 mass%、Si:0.1〜14 mass%、B:0〜0.1 mass%、C:0〜0.25 mass%、Mn:0〜10 mass%、Zr:0〜3mass%、W:0〜0.5 mass%、Pt:0〜20 mass%
リン酸クロム酸処理したMCrAlX合金粉末の表面には、緻密な状態でガラス質状のCr23膜が被覆されているため、合金粉末が直接外気と接触することはない。しかも、このガラス質状Cr23膜は、水溶液の状態を出発点としているが、加熱焼成工程を経ているため、0.01μm以下の微細なCr23粒子群がガラス状のバインダーによって強固に結合されて、緻密な状態で粉末の表面全体を被覆している。そのため、大気中の水分(湿度)を吸着することがなく、物理化学的に非常に安定した状態にある。すなわち、市販の無処理のMCrAlX合金粉末は、酸化され易いCo,Ni,Cr,Al,Yなどの金属から構成されているため、室内に放置された状態では空気中の水分を吸着して金属成分が酸化、変質するとともに合金粉末の流動性を悪くするので、常に乾燥状態にして保管する必要があるが、リン酸クロム酸処理した合金粉末ではその必要性がない。また、リン酸クロム酸処理した合金粉末は、流動性がよいため、溶射ガンへの供給においても、常に一定条件を長期間にわたって維持することができるので、均等な厚さの溶射皮膜の形成が可能となる。
リン酸クロム酸処理を施したMCrAlX合金粉末からなるガラス質状耐熱・耐酸化性複合溶射材料を溶射して溶射皮膜を形成する方法としては、減圧プラズマ溶射法、大気プラズマ溶射法、高速フレーム溶射法および爆発溶射法など、いずれの溶射法を用いても良好な皮膜を得ることができるので、溶射法はとくに限定されるものではない。
なお、溶射する上記ガラス質状耐熱・耐酸化性複合溶射材料は、これを単独で溶射材して所望の溶射皮膜を形成することを基本とするが、無処理のMCrAlX合金粉末や酸化物系セラミックス粉末と混合して用いてもよい。また、上記のガラス質状酸化クロム含有耐熱・耐酸化性溶射皮膜は、無処理のMCrAlX合金粉末を溶射してなる耐熱性溶射皮膜や酸化物系セラミックス粉末を溶射してなる酸化物系セラミックス溶射皮膜と積層し、多層状溶射皮膜としてもよく、さらに、リン酸クロム酸処理したガラス質状耐熱・耐酸化性複合溶射材料と、無処理のMCrAlX合金粉末や他のZrO2系酸化物セラミックスとの混合粉末を溶射して得られる皮膜とを積層して複合化してもよい。
次に、リン酸クロム酸処理を施したMCrAlX合金粉末を溶射して得られる本発明に係る溶射皮膜について、図1の断面構造に基づいて、具体的に説明する。図1(a)は、金属製基材、例えば耐熱合金基材1の表面に、リン酸クロム酸処理したMCrAlX合金粉末を溶射してガラス質状酸化クロム含有耐熱・耐酸化性溶射皮膜2を形成してなる溶射皮膜被覆部材の一例を示す断面図である。このような構造を有する溶射皮膜では、次のような作用効果が期待できる。
リン酸クロム酸処理されたMCrAlX合金粉末からなるガラス質状耐熱・耐酸化性複合溶射材料は、溶射熱源中を飛行する途中で、溶融状態となって基材表面に衝突して付着する。このとき、球形の粒子は偏平に押し潰され、前記複合溶射材料粉末の表面に被覆されているガラス質状のCr23膜は破壊されて、内部のMCrAlX合金が露出した状態となる。その結果、ガラス質状Cr23セラミックスとMCrAlX合金とが分散状態に混在したガラス質状酸化クロム含有耐熱・耐酸化性溶射皮膜が形成される。この時、MCrAlX合金粉末の表面を被覆しているガラス質状Cr23膜が厚ければ厚いほど、前記ガラス質状酸化クロム含有耐熱・耐酸化性溶射皮膜中ならびにその表面におけるガラス質状Cr23の割合が多くなる。この溶射皮膜中ならびにその表面に存在するガラス質状Cr23は化学的に安定であるため、かかる溶射皮膜で被覆された部材を化石燃料の燃焼ガス中で使用する場合などにおいては、特に優れた耐熱・耐高温酸化性、耐食性を発揮する。
さらに、前記ガラス質状酸化クロム含有耐熱・耐酸化性溶射皮膜中に含まれるCr23は、高温状態に曝されると、このCr23と接触しているMCrAlX合金粉末中のAlと反応し、下記式のように、金属の酸化物生成自由エネルギー差を駆動力とする作用によって、Cr23とMCrAlX合金粉末粒子との界面(MCrAlX合金粉末粒子表面)に保護性(耐酸化性)に優れるAl23膜を積極的に生成する。さらに、ここで生成したCrは、燃焼ガスによって再び酸化されて、Cr23となる。このような反応によって、MCrAlX合金粉末自体の耐高温環境性も向上することになる。
Cr23 + 2Al → Al23 + 2Cr
なお、本発明では、上記の現象に着目し、耐熱合金基材の表面にリン酸クロム酸処理したMCrAlX合金粉末からなる耐熱・耐酸化性複合材料を溶射した部材を、970〜1500Kで1〜30Hr加熱することにより、図1(b)に示すように、前記溶射皮膜の表面に酸化アルミニウムを主成分とする保護性酸化膜3を積極的に生成させるようにしてもよい。
一方、本発明に係るガラス質状酸化クロム含有耐熱・耐酸化性溶射皮膜は、耐熱合金基材との界面においても、ガラス質状Cr23セラミックスとMCrAlX合金が混在しているため、MCrAlX合金粉末のみを溶射して形成された耐熱性溶射皮膜と比較すると、MCrAlX合金と基材とが直接接触する面積が減少する。そのため、基材とMCrAlX合金成分が相互に熱拡散するような高温環境下においては、基材の機械的特性の低下を抑制すという効果をもたらす。とくに、近年におけるガスタービンの運転温度の高温化により、タービン翼材の使用温度が上昇しているような場合においては、タービン翼の表面に形成されているMCrAlX合金等からなる皮膜中のAlなどの成分が基材中に熱拡散し、脆弱なAlの金属間化合物を生成して、基材の機械的性質を低下させる現象が問題となっている。
この点、本発明において用いるリン酸クロム酸処理したガラス質状耐熱・耐酸化性複合溶射材料を溶射して得られるガラス質状酸化クロム含有耐熱・耐酸化性溶射皮膜は、上述したようにMCrAlX合金/基材間の接触面積が少ないので、基材の劣化を抑制するのに非常に有利である。
図1(a)のようなリン酸クロム酸処理したMCrAlX合金の単層皮膜からなる溶射皮膜構造の場合には、溶射皮膜の厚さは30〜800μmの範囲で形成することが好ましい。膜厚が30μm未満では、皮膜が薄すぎて上記効果を期待できず、一方、800μmを超えて皮膜を形成しても上記効果が飽和するほか、皮膜を構成する溶射粒子の相互結合力が低下して局部的に皮膜が破壊するという問題があるからである。
図1(c)は、耐熱合金基材1の表面に、リン酸クロム酸処理したMCrAlX合金粉末からなるガラス質状耐熱・耐酸化性複合溶射材料を溶射して形成したガラス質状酸化クロム含有耐熱・耐酸化性溶射皮膜2を、アンダーコートとして形成し、その上にトップコートとして、ZrO2系などの耐熱性を有する酸化物セラミックス溶射皮膜4を形成した例を示す断面図である。リン酸クロム酸処理したMCrAlX合金からなるガラス質状耐熱・耐酸化性複合溶射材料を溶射してなるガラス質状酸化クロム含有耐熱・耐酸化性溶射皮膜2上に、ZrO2系の酸化物セラミックス溶射皮膜4を形成しても、この両者の密着力が害されることはない。このような酸化物セラミックス溶射皮膜は、一般に耐熱性には優れているものの、多孔質であるため、燃焼ガス中の腐食性成分(例えば、H2O,SO2,SO3,NOx,HClなど)が気孔を通して内部へ侵入し、下層のMCrAlX合金を腐食し、最終的には酸化物セラミックスの剥離を引き起こす原因となることが多い。しかし、本発明において形成するガラス質状酸化クロム含有耐熱・耐酸化性溶射皮膜は、その皮膜中に耐食性に優れたCr23が存在しているため、燃焼ガスによる腐食損傷を最小限に抑制することが可能であり、またCr23と接触しているMCrAlX合金粉末の表面には優れた保護性を有するAl23膜が生成しているので、この溶射皮膜もまた燃焼ガスによる腐食損傷防止に寄与する。
なお、図1(c)に示した、トップコートとしてのZrO2系酸化物セラミックス4に代えて、図1(d)のように、無処理のMCrAlX合金皮膜5を形成してもよい。リン酸クロム酸処理したMCrAlX合金粉末からなるガラス質状耐熱・耐酸化性複合溶射材料と無処理のMCrAlX合金粉末溶射材料はいずれも、溶射熱源中で溶融状態(ガラス質状Cr23膜も含めて)となるため、良好な密着性を得ることができる。なお、この両皮膜は、いずれを上下に配置してもよいが、この点については後述する。
図1(c)あるいは図1(d)のような積層溶射皮膜の場合における各溶射皮膜の厚さは、リン酸クロム酸処理したMCrAlX合金を溶射したガラス質状酸化クロム含有耐熱・耐酸化性溶射皮膜からなるアンダーコートは30〜800μm、その上に形成されるZrO2系などの酸化物セラミックス溶射皮膜等のトップコートは100〜800μmの範囲で形成することが好ましい。アンダーコートの膜厚が規制される理由は、図1(a)と同じである。一方、トップコートの膜厚は、100μm未満では、耐熱性や熱遮蔽効果が小さく、逆に、800μmを超えると、皮膜自体の機械的強度が低下するという問題があるからである。
図1(e)は、耐熱合金基材1の表面に、リン酸クロム酸処理したMCrAlX合金粉末を溶射して形成されたガラス質状酸化クロム含有耐熱・耐酸化性溶射皮膜からなる溶射皮膜2をアンダーコートと、その上に中間層として、リン酸クロム酸処理したMCrAlX合金とZrO2系酸化物セラミックスとの混合粉末からなる溶射材料を溶射して中間層溶射皮膜6を形成し、さらにその上にトップコートとして、ZrO2系酸化物セラミックスからなる耐熱性の酸化物セラミックス溶射皮膜4を形成した例を示す断面図である。さらに、図1(f)のように、図1(e)の中間層溶射皮膜を、リン酸クロム酸処理したMCrAlX合金とZrO2系酸化物セラミックスとの配合を、アンダーコート側ほどリン酸クロム酸処理したMCrAlX合金の量を多くし、逆に、トップコート側ほどZrO2系酸化物セラミックスの量を多くした傾斜配分層7として形成してもよい。
図1(e)や図1(f)のような構造の溶射皮膜は、この溶射皮膜を構成するうちの耐熱合金の溶射皮膜と酸化物セラミックスの溶射皮膜という物性の著しく異なる皮膜間における、例えば熱膨張差に起因した熱応力の発生とその集中による剥離という問題を、両者の配合比を傾斜的に変化させることによって応力緩和し、解決しようとするものである。
しかし、このような中間層溶射皮膜6,7は、高温状態に曝されたとき、溶射皮膜中に含まれる合金の耐熱性、耐酸化性が十分でなければ、その機能を発揮することができない。この点、本発明で用いるリン酸クロム酸処理したMCrAlX合金粉末からなるガラス質状耐熱・耐酸化性複合溶射材料は、無処理の同組成のMCrAlX合金粉末に比較して、はるかに良好な耐熱・耐酸化性を備えているため、中間層としての機能を長期間にわたって発揮させることができる。
図1(e)あるいは図1(f)のような構造を有する溶射皮膜の場合、各溶射皮膜の厚さは、リン酸クロム酸処理したMCrAlX合金からなるアンダーコートは30〜200μm、その上に形成される中間層は30〜200μm、さらにその上に形成されるZrO2系酸化物セラミックスからなるトップコートは30〜800μmの範囲であることが好ましい。ベースコートの膜厚を規制する理由は、下限値は、図1(a),(c)と同じであるが、上限値は皮膜の機械的強度の点から200μmとすることが好ましい。中間層の膜厚は、30μm未満では、中間層としての機能を発揮できず、逆に、200μmを超えると皮膜の機械的強度が低下するという問題があるからである。さらに、トップコートの膜厚は、30μm未満では耐熱性や熱遮蔽特性が小さいからであり、逆に、800μmを超えると皮膜の機械的強度が低下するからである。
次に、本発明で形成する溶射皮膜の構造は、図1に示した例に限られるものではなく、基材表面のどこかに、上述したリン酸クロム酸処理したMCrAlX合金粉末からなるガラス質状耐熱・耐酸化性複合溶射材料を溶射してガラス質状酸化クロム含有耐熱・耐酸化性溶射皮膜2が形成されている構造であればよい。例えば、図2(a)に示したように、耐熱金属器材の表面にまず、アンダーコートとし、未処理のMCrAlX合金粉末を溶射して耐熱性溶射皮膜5を形成し、その上に、リン酸クロム酸処理したMCrAlX合金粉末からなるガラス質状耐熱・耐酸化性複合溶射材料を溶射してガラス質状酸化クロム含有耐熱・耐酸化性溶射皮膜2を形成したものでもよい。さらに、図2(b)のように、上記アンダーコートの上に中間層として、ガラス質状酸化クロム含有耐熱・耐酸化性溶射皮膜2を形成し、さらにその中間層の上にトップコートとして、ZrO2系酸化物セラミックスの溶射皮膜4を積層してもよく、その組み合わせは自由である。
また、本発明の図1に示したような構造を有する各種溶射皮膜は、成膜のままでも十分に使用することができるが、必要に応じて、1273〜1473K×1〜10hrの液体化処理あるいは973〜1273K×1〜30hrの時効処理の何れか、またはその両者を組合せた熱処理を行うことによって、溶射皮膜を構成する合金粒子の相互結合力を強化し、被溶射体の金属基材との密着性を向上させることができる。また、酸化アルミニウムを主成分とする保護性酸化膜を生成させたり、さらに、溶射皮膜の緻密化および溶射時に発生した残留応力の除去などを行うことができる。
市販の各種MCrAlX合金粉末に対してリン酸クロム酸処理を施し、溶射熱源に代えて、電気炉を用いた大気雰囲気中での加熱実験を行い、耐熱性・耐高温酸化特性の評価を行った。電気炉を用いた理由は、溶射熱源による加熱では、合金粉末が飛散して、加熱後の合金粉末の採取が困難だからである。表1は、供試した合金粉末の化学成分を示したもので、いずれも溶射用材料として市販されているものである。これらを化学成分から分類すると、Niを含まない合金(A)、Coを含まない合金(B,C,D,E)およびNi,Coを含む合金(F,G)に大別され、さらにG合金には、他の合金に含まれていないTaが5mass%含まれている。全ての合金に含まれている共通成分は、Al,CrおよびYであるが、Yはすべて1mass%以下の含有量である。また、これらの合金粉末の粒度を調査したところ、平均粒径は10〜30μmであるが、最大直径は50μmで、10μm以下の小粒径のものもが多く、1μm以下の粒径も含まれていた。
Figure 0003917568
リン酸クロム酸処理は、上記の合金粉末を、H2PO4 40mass%、CrO3 30mass%、残りH2Oのリン酸クロム酸水溶液に浸漬した後引き上げ、余分な水溶液をよく除いた後、380Kで30分間乾燥し、さらに、この合金粉末を750Kで30分間焼成する処理を一工程とし、この処理工程を3回繰返して行った。加熱実験は、電気炉を用い、大気中で、1423Kで9時間加熱した後、この合金粉末を合成樹脂に埋め込み、これをエメリー紙を用いて研磨して粉末の断面を露出させ、この断面を走査型電子顕微鏡(SEM)によって観察して合金粉末の耐熱性を調べた。なお、比較例としてリン酸クロム酸処理をしない無処理のMCrAlX合金粉末も同じ条件で加熱実験に供した。
表2は、上記実験の結果を要約したもので、比較例のMCrAlX合金粉末(No.8〜14)では、粒径の小さい粉末はすべて完全に酸化され、合金の状態を維持していたのは、大粒径のものだけであった。これに対して、リン酸クロム酸処理を施した本発明の合金粉末(No.1〜7)は、小さな粒径の粉末でも酸化されることなく、原形を維持しており、優れた耐高温酸化性を示すことが確認された。
Figure 0003917568
図3は、上記加熱試験前後におけるMCrAlX合金粉末の断面写真の代表例を示したものである。図3(a)は、加熱試験前の合金粉末の断面を走査型電子顕微鏡(SEM)で観察したもので、大小すべての粒子の断面に白色部(合金粉末粒子P1)が確認できる。図3(b)は、リン酸クロム酸処理をしていないMCrAlX合金粉末を高温酸化試験した後の写真であり、白色部は未酸化の合金粉末粒子P1、暗色部は完全に酸化された合金粉末粒子P2を示しており、かなりの粉末が完全に酸化されていることがわかる。一方、図3(c)は、リン酸クロム酸処理したMCrAlX合金粉末の断面であり、小粒径の粉末でも酸化されずに健全な状態を維持している。以上の結果から、市販のMCrAlX合金粉末は、早期に酸化消耗するが、これにリン酸クロム酸処理を施こすことで、酸化消耗速度を著しく遅らせることができることがわかる。
実験室内に、リン酸クロム酸処理したMCrAlX合金粉末と、処理していないMCrAlX合金粉末とを、10日間放置して溶射材料とし、これらを大気プラズマ溶射法によって、SUS304ステンレス鋼板(寸法300mm×300mm×3.2mmt)の表面に、目標膜厚50μmの皮膜を形成した後、鋼板を切断して溶射皮膜の厚さ分布を光学顕微鏡を用いて測定した。この試験には、表1に記載したA合金、G合金の合金粉末を用い、またリン酸クロム酸処理条件は、実施例1と同条件とした。なお、比較例としてリン酸クロム酸無処理の同じ合金を用いた調査を行った。
表3は、上記観察結果を示したものであり、本発明に従いリン酸クロム酸処理を施こしたMCrAlX合金粉末は、室内に放置されても水分の吸着がないため、溶射ガンへの流動が平滑で、均等な膜厚が形成されていた。これに対し、比較例の無処理の合金粉末は、水分の吸着が大きく、溶射ガンへの供給が不安定であるため、最高膜厚はリン酸クロム酸処理品とほぼ同等であったが、最小膜厚が小さく不均一な皮膜であることが確認された。
Figure 0003917568
Ni基合金の基材(外径15mmφ×長さ50mmの丸棒)の表面に、リン酸クロム酸処理を5回繰返したMCrAlX合金粉末(ガラス質状ガラス質状耐熱・耐酸化性複合溶射材料)と無処理のMCrAlX合金粉末(耐熱性溶射材料)を溶射材料とし、減圧プラズマ溶射法によって100μm厚の溶射皮膜を形成した。その後、溶射した試験片を、電気炉中でアルゴンガスを流しつつ、1373K×8hrの加熱処理を行った。この加熱後の試験片を切断し、光学顕微鏡およびX線マイクロアナライザーを用いて、その断面における合金皮膜成分のNi基合金基材中への拡散状況を観察した。なお、この実験に供した合金粉末は、表1記載のA,C,E,FおよびGの5種類であり、またNi基合金基材の化学成分は、15.3mass%Cr‐7mass%Fe‐2.5mass%Ti‐2mass%Mo‐10mass%Co‐残Niであった。
表4は、上記加熱実験による溶射皮膜成分がNi基合金基材中へ拡散した深さを測定した結果をまとめたものである。この結果から明らかなように、比較例である無処理のMCrAlX合金の溶射皮膜を形成した試験片(No.32,34,36,38,40)の拡散層厚さは87〜95μmに達しており、非常に拡散しやすいことがわかる。これに対して、リン酸クロム酸処理を施こしたMCrAlX合金粉末を溶射してなるガラス質状酸化クロム含有耐熱・耐酸化性溶射皮膜を形成した基材(No.31,33,35,37,39)では31〜42μmに止まっており、リン酸クロム酸処理により被成したCr23膜の存在によって、皮膜成分の拡散を防ぎ、基材の機械的性質の低下を抑制できることがうかがえる。
Figure 0003917568
実施例3で基材として使用したNi基合金の試験片(寸法50mm×50mm×5mmt)の全面に、大気プラズマ溶射法と高速フレーム溶射法を用いて、表1に記載のC、D合金粉末を原料として300μm厚の溶射皮膜を形成した。なお上記合金粉末には、溶射に先立って、リン酸クロム酸処理を3回繰り返したものを用いた。また、比較例として、無処理のMCrAlX合金の他、耐高温酸化用の溶射用粉末材料として広く使用されている50mass%Ni‐50mass%Cr,80mass%Ni‐20mass%Crを用い、上記と同条件で溶射皮膜を形成した。成膜後の試験片は、電気炉中において、大気中で1473K×500時間の加熱酸化試験を行い、試験前後の試験片の重量変化(減少)から、皮膜の耐熱性・耐高温酸化性を評価した。なお、上記重量の減少は、加熱による酸化によって皮膜の表面に生成した酸化膜が試験中に脱落することによって発生するもので、酸化膜が緻密で良好な耐酸化性を示すものほど脱落量が少なく、重量減少が少ない。
表5は、上記の実験結果をまとめたものである。この結果から、無処理のMCrAlX合金粉末を溶射してなる皮膜(No.43,44,47,48)の重量変化は180〜280mgの重量減少であるのに対し、リン酸クロム酸処理したMCrAlX合金粉末を溶射してなる皮膜(No.41,42,45,46)の重量変化は75〜95mgの重量減少にとどまっており、リン酸クロム酸処理した合金粉末を溶射材料として溶射したガラス質状酸化クロム含有耐熱・耐酸化性溶射皮膜は、耐高温酸化性に優れていることが確認された。また、他の比較例の皮膜(No.49〜52)の重量変化は、2010〜2250mgの大きな重量減少を示し、試験を行った皮膜中で最も耐高温酸化性能に劣っていた。
Figure 0003917568
リン酸クロム酸処理したMCrAlX合金を溶射してなるガラス質状酸化クロム含有耐熱・耐酸化性溶射皮膜をアンダーコートとし、そのアンダーコートの上にZrO2系酸化物セラミックスのトップコートを積層させた熱遮蔽皮膜の耐高温酸化特性と熱衝撃特性について調査した。アンダーコートは、溶射材料として、表1記載のA合金にリン酸クロム酸処理を3回施したMCrAlX合金を用い、8.11mass%Co‐15.8mass%Cr‐3.45mass%Al‐3.60mass%Ti‐1.78mass%Mo‐2.46mass%W‐1.92mass%Ta‐残りNiの成分組成を有するNi基合金の試験片(寸法:50mm×500mm×3.2mmt)の片面に減圧プラズマ溶射法により、150μm厚の皮膜を形成した。さらに、上記アンダーコートの上に、大気プラズマ溶射法によって、8mass%Y23−ZrO2セラミックスのトップコートを300μm厚に積層させた。また、比較例として、アンダーコートの溶射材料に、無処理のMCrAlX合金を用い、他は上記と同じ条件としたものを作製した。
耐高温酸化特性と熱衝撃特性の試験は、大気雰囲気の電気炉中で1423K×200時間の加熱を行った後、試験片を切断して、その断面(主としてアンダーコートとトップコートの界面近傍)を走査型電子顕微鏡により観察し、アンダーコート表面におけるMCrAlX合金元素の酸化挙動を調べた。また、熱衝撃試験は、1423K×200時間加熱後の試験片を一旦室温(290K)まで放冷した後、1270K×15分間の加熱とその後室温まで放冷する加熱冷却処理を10回繰返し、トップコートの剥離状況を目視観察することによって行った。
表6は、上記の試験結果を示したものである。この結果から、比較例である無処理のMCrAlX合金を溶射してなる溶射皮膜をアンダーコートとしたもの(No.62)では、長時間の加熱によって、合金成分のCo,Cr,Ni,Alなどの金属元素の酸化物が皮膜表面に生成して厚い複合酸化物層を形成しており、しかもこの層は緻密性にも欠ける傾向が認められた。これに対し、発明例であるリン酸クロム酸処理したMCrAlX合金を溶射してなるアンダーコート層の表面(No.61)では、Al23を主成分とする緻密で薄くかつ保護性にも優れている酸化物層が生成しており、耐高温酸化特性が優れていることがわかった。一方、熱衝撃試験の結果は、比較例の皮膜では、トップコートに多数の亀裂が発生し、全面積の約10%に当る皮膜が脱落した。これに対して、発明例であるリン酸クロム酸処理したMCrAlX合金粉末を用いた試験片では、トップコートに亀裂の発生は無く、また皮膜の脱落も認められず、健全な状態を維持していた。
Figure 0003917568
実施例4で用いたものと同じ基材試験片の全面に、3回のリン酸クロム酸処理を施こしたMCrAlX合金粉末を溶射してなるガラス質状酸化クロム含有耐熱・耐酸化性溶射皮膜をアンダーコートとして形成し、そのアンダーコートの上に、3回のリン酸クロム酸処理を施こしたMCrAlX合金とZrO2系酸化物セラミックスとの混合粉末を溶射材料とし、その両成分の配合を表7に示したように、基材側ほどMCrAlX合金粉末の量を多く、表面側ほどZrO2系酸化物セラミックス粉末の量を多くなるよう傾斜配分した溶射材料を溶射して中間層を設け、さらにその中間層の上に、ZrO2系酸化物セラミックス(8mass%Y23‐残部ZrO2)溶射皮膜をトップコートとして積層した構造の熱遮蔽溶射皮膜を形成した後、この試験片に対して、1473K×500hの高温酸化試験を行い、耐酸化性を評価した。試験に用いたMCrAlX合金粉末には、表1記載のA合金を用い、溶射法は、アンダーコートには高速フレーム溶射法、中間層およびトップコートには大気プラズマ溶射法を用いた。また、比較のため、無処理のA合金も用いて同様の溶射皮膜を形成し、耐高温酸化性を調査した。なお、アンダーコート、中間層、トップコートの各溶射膜の膜厚は表7の通りであった。
Figure 0003917568
高温酸化試験後、各試験片を切断し、皮膜の断面を観察した。結果を表8に示したが、無処理のA合金を用いた比較例の皮膜では、グラインダ砥石で切断する際、既に局部的にトップコートの剥離が認められるとともに、光学顕微鏡による観察の結果では、中間層のA合金粒子の大部分が完全に粒子の中心部まで酸化されていた。このため中間層を構成するZrO2系粒子の一部も脱落していた。これに対して、リン酸クロム酸処理したA合金を用いた本発明の中間層では、その殆どのMCrAlX合金粉末が酸化されることなく健全な状態で残存しており、またZrO2粒子の脱落も認められなかった。なお、リン酸クロム酸処理したA合金粒子を走査電子顕微鏡で詳細に調査すると、合金粒子の外周部にはAl23層が形成されており、このAl23層が、耐高温酸化特性の維持に効果を発揮していることが判明した。
Figure 0003917568
本発明の耐熱・耐酸化性溶射皮膜被覆部材に関する技術は、ガスタービン用部材や、ボイラなどの燃焼炉、焼却炉、熱処理炉、分解炉などの分野に用いられる部材に適用でき、金属、合金粉末の溶射皮膜被覆部材のみならず、金属成分を含むサーメット粉末材料を溶射被覆した部材にも好適に利用できる。
本発明の耐熱・耐酸化性に優れた溶射皮膜の断面構造を模式的に示した図である。 本発明の耐熱・耐酸化性に優れた溶射皮膜の断面構造を模式的に示した図である。 高温酸化試験前後のMCrAlX合金粉末の断面を走査型電子顕微鏡で観察した写真であり、(a)は、高温酸化試験前の無処理のMCrAlX合金粒子、(b)は、高温酸化試験後の無処理のMCrAlX合金粒子、(c)は、高温酸化試験後のリン酸クロム酸処理したMCrAlX合金粒子のものである。
符号の説明
1 金属製基材
2 リン酸クロム酸処理したMCrAlX合金粉末(ガラス質状耐熱・耐酸化性複合溶射材料)を溶射したガラス質状酸化クロム含有耐熱・耐酸化性溶射皮膜
3 酸化アルミニウムを主成分とする保護性酸化膜
4 ZrO2系酸化物セラミックス溶射皮膜
5 無処理のMCrAlX合金からなる耐熱性溶射皮膜
6 ガラス質状耐熱・耐酸化性複合溶射材料とZrO2系酸化物セラミックスとの混合粉末を溶射した混合溶射皮膜
7 ガラス質状耐熱・耐酸化性複合溶射材料とZrO2系酸化物セラミックスとの混合量が傾斜配分された混合溶射皮膜
P1 合金粒子または未酸化合金粒子
P2 高温酸化された合金粒子

Claims (16)

  1. 金属製基材を溶射皮膜にて被覆してなる部材において、前記基材が、耐熱合金粉末の表面に、リン酸とクロム酸との混合水溶液を付着させたのち加熱処理するリン酸クロム酸処理によって生成した、酸化クロム粒子をリン酸由来のガラス状バインダーによって結合したガラス質状酸化クロム膜を被覆してなるガラス質状耐熱・耐酸化性複合溶射材料を溶射することによって得られるガラス質状酸化クロム含有耐熱・耐酸化性溶射皮膜にて、被覆されていることを特徴とする耐熱・耐酸化性溶射皮膜被覆部材。
  2. 上記ガラス質状酸化クロム含有耐熱・耐酸化性溶射皮膜は、MCrAlX(ただし、MはCo,NiおよびFeのうちから選ばれる1種または2種以上、XはY,Hf,Ta,Cs,Ce,La,Th,W,Si,Pt,MnおよびBのうちから選ばれる1種または2種以上)で表される平均粒径が5〜100μmの耐熱合金粉末の表面が0.1〜10μm厚のガラス質状酸化クロム膜にて被覆されたものからなるガラス質状耐熱・耐酸化性複合溶射材料を、溶融もしくは半溶融状態で基材表面に溶射して堆積させてなる、ガラス質状CrセラミックスとMCrAlX合金とが混在した層からなるものであることを特徴とする請求項1に記載の耐熱・耐酸化性溶射皮膜被覆部材。
  3. 上記ガラス質状酸化クロム含有耐熱・耐酸化性溶射皮膜の表面には、酸化アルミニウムを主成分とする保護性酸化膜が形成されていることを特徴とする請求項1または2に記載の耐熱・耐酸化性溶射皮膜被覆部材。
  4. 上記ガラス質状酸化クロム含有耐熱・耐酸化性溶射皮膜をアンダーコートとし、そのアンダーコートの上にトップコートとして、酸化物セラミックス溶射皮膜が形成されてなることを特徴とする請求項1または2に記載の耐熱・耐酸化性溶射皮膜被覆部材。
  5. 耐熱合金基材の表面に、アンダーコートとして、請求項1または2に記載のガラス質状酸化クロム含有耐熱・耐酸化性溶射皮膜が形成され、そのアンダーコートの上に中間層として、MCrAlX(ただし、MはCo,NiおよびFeのうちから選ばれる1種または2種以上、XはY,Hf,Ta,Cs,Ce,La,Th,W,Si,Pt,MnおよびBのうちから選ばれる1種または2種以上)で表される耐熱合金粉末の表面にガラス質状酸化クロム膜を設けてなるガラス質状耐熱・耐酸化性複合溶射材料とZrO系酸化物セラミックスとの混合粉末を溶射してなる中間層溶射皮膜が形成され、さらにその中間層溶射皮膜の上にトップコートとして、ZrO系酸化物セラミックス溶射皮膜が形成されていることを特徴とする耐熱・耐酸化性溶射皮膜被覆部材。
  6. 上記中間層溶射皮膜が、トップコート側ほどZrO系酸化物セラミックスの含有量を多くした傾斜配合層からなることを特徴とする請求項5に記載の耐熱・耐酸化性溶射皮膜被覆部材。
  7. 耐熱合金基材の表面に、耐熱合金の耐熱性溶射皮膜が形成され、そのアンダーコートの上にトップコートとして、請求項1または2に記載のガラス質状酸化クロム含有耐熱・耐酸化性溶射皮膜が形成されていることを特徴とする耐熱・耐酸化性溶射皮膜被覆部材。
  8. 上記耐熱合金基材の表面に、耐熱合金の耐熱性溶射皮膜が形成され、そのアンダーコートの上に中間層として、請求項1または2に記載のガラス質状酸化クロム含有耐熱・耐酸化性溶射皮膜が形成され、さらにその中間層の上にトップコートとして、ZrO系酸化物セラミックス溶射皮膜が形成されていることを特徴とする耐熱・耐酸化性溶射皮膜被覆部材。
  9. 金属製基材の表面に、耐熱合金粉末の表面にリン酸とクロム酸との混合水溶液を付着させたのち加熱処理するリン酸クロム酸処理によって生成した、酸化クロム粒子をリン酸由来のガラス状バインダーによって結合したガラス質状酸化クロム膜を被覆してなるガラス質状耐熱・耐酸化性複合溶射材料を溶射することによって、ガラス質状酸化クロム含有耐熱・耐酸化性溶射皮膜を形成することを特徴とする耐熱・耐酸化性溶射皮膜被覆部材の製造方法。
  10. 上記耐熱・耐酸化性溶射材料は、MCrAlX(ただし、MはCo,NiおよびFeのうちから選ばれる1種または2種以上、XはY,Hf,Ta,Cs,Ce,La,Th,W,Si,Pt,MnおよびBのうちから選ばれる1種または2種以上)で表される平均粒径が5〜100μmの耐熱合金粉末の表面が0.1〜10μm厚のガラス質状酸化クロム膜にて被覆されたものであることを特徴とする請求項9に記載の耐熱・耐酸化性溶射皮膜被覆部材の製造方法。
  11. 金属製基材の表面にガラス質状酸化クロム含有耐熱・耐酸化性溶射皮膜を形成した後、970〜1500Kで1〜30Hr加熱することにより、該溶射皮膜の表面に酸化アルミニウムを主成分とする保護性酸化膜を生成させることを特徴とする請求項9または10に記載の耐熱・耐酸化性溶射皮膜被覆部材の製造方法。
  12. 上記ガラス質状酸化クロム含有耐熱・耐酸化性溶射皮膜を形成した後、その上に、酸化物セラミックスを溶射して酸化物セラミックス溶射皮膜を形成することを特徴とする請求項9または10に記載の耐熱・耐酸化性溶射皮膜被覆部材の製造方法。
  13. 耐熱合金基材の表面に、アンダーコートとして、請求項9または10に記載のガラス質状酸化クロム含有耐熱・耐酸化性溶射皮膜を形成し、そのアンダーコートの上に中間層として、MCrAlX(ただし、MはCo,NiおよびFeのうちから選ばれる1種または2種以上、XはY,Hf,Ta,Cs,Ce,La,Th,W,Si,Pt,MnおよびBのうちから選ばれる1種または2種以上)で表される耐熱合金粉末の表面にガラス質状酸化クロム膜を有するガラス質状耐熱・耐酸化性複合溶射材料とZrO系酸化物セラミックスとの混合粉末を溶射して中間層溶射皮膜を形成し、さらにその中間層溶射皮膜の上にトップコートとして、ZrO系酸化物セラミックスを溶射してZrO系酸化物セラミックス溶射皮膜を形成することを特徴とする耐熱・耐酸化性溶射皮膜被覆部材の製造方法。
  14. 上記中間層溶射皮膜を、トップコート側ほどZrO系酸化物セラミックスの含有量を多くした傾斜配合層とすることを特徴とする請求項13に記載の耐熱・耐酸化性溶射皮膜被覆部材の製造方法
  15. 耐熱合金基材の表面に、アンダーコートとして、耐熱合金粉末を溶射して耐熱性溶射皮膜を形成し、その後、そのアンダーコートの上に、請求項9または10に記載のガラス質状耐熱・耐酸化性複合溶射材料を溶射してガラス質状酸化クロム含有耐熱・耐酸化性溶射皮膜を形成することを特徴とする耐熱・耐酸化性溶射皮膜被覆部材の製造方法。
  16. 上記ガラス質状酸化クロム含有耐熱・耐酸化性溶射皮膜の上にさらにトップコートとして、ZrO系酸化物セラミックスを溶射してZrO系酸化物セラミックス溶射皮膜を形成することを特徴とする請求項15に記載の耐熱・耐酸化性溶射皮膜被覆部材の製造方法。
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