JPH0967661A - 耐高温用溶射被覆部材及びその製造方法 - Google Patents

耐高温用溶射被覆部材及びその製造方法

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JPH0967661A
JPH0967661A JP7245212A JP24521295A JPH0967661A JP H0967661 A JPH0967661 A JP H0967661A JP 7245212 A JP7245212 A JP 7245212A JP 24521295 A JP24521295 A JP 24521295A JP H0967661 A JPH0967661 A JP H0967661A
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良夫 原田
Junichi Takeuchi
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Abstract

(57)【要約】 【課題】高価な減圧プラズマ溶射装置を不要とし、従来
の溶射法では得られなかった緻密で密着性に優れた被覆
層を得ると共に、耐酸化性、耐エロージョン性、耐摩耗
性に優れたMCrAl合金被覆層を形成できる。 【解決手段】基材表面にCo,Ni,Cr,Alのうち
少なくとも2種を含む合金材料またはこれにY,Hf,
Ta,Ce,Si,Bなどを少なくとも1種を添加した
合金材料を溶射粉末材料として用い、これを大気溶射法
によって溶射熱源中を250m/s以上の飛行速度で施工し、
気孔率を1%以下、酸素含有量を0.2WT%以下の被覆層を
多層積層する。

Description

【発明の詳細な説明】
【0001】
【発明の属する技術分野】本発明は、ガスタービン、ジ
ェットエンジンなどの高温被曝部材に適用する耐高温酸
化性、耐エロージョン性及び耐摩耗性に優れた耐高温用
溶射被覆部材及びその製造方法に関するものである。
【0002】
【従来の技術】ガスタービン、ジェットエンジン、ボイ
ラ、ディゼルエンジンなどの原動機関では、熱効率の向
上を目的として精力的な開発研究が行われていることは
周知の通りである。
【0003】しかし、熱効率の向上は同時にそれらの構
造部材に対する過酷な熱負荷の増大を強いる結果となっ
ている。したがって、これらの原動機関の高温部で使用
される金属材料は使用環境中で優れた耐高温酸化性とと
もに高い機械的強度を有することが要求される。
【0004】特に、バナジューム(V)、ナトリューム
(Na)、硫黄(S)などの腐食性の不純物成分を含む
燃料を使用している場合には、これらの腐食性化合物が
高温環境下で激しく金属材料を腐食損耗させるので、こ
のような環境においても長時間安定した状態を維持する
ことが必要である。
【0005】このような要求に対応するため、従来から
Ni,Cr,Mo,Co,W,Ta,Nb,Tiなどの
非鉄金属元素を主成分とする、いわゆる超合金と呼ばれ
る耐熱合金が多数開発されてきた。
【0006】しかしながら、これらの超合金類も高温強
度を優先することが前提となっいるため、強度の向上に
役立たない金属元素の添加は必然的に低く抑えられる傾
向にある。
【0007】強度の向上に役立たない金属元素の代表と
しては、Al,Cr,Siなどであり、これらの元素は
耐酸化性に乏しいのが普通である。
【0008】以上のような状況に鑑み、高温環境化で使
用される超合金部材に対して、予めAl,Cr,Siな
どの金属元素を多量に含む金属、合金を拡散浸透法や溶
射法によって、部材表面を被覆する方法が運用され、超
合金の化学的損傷に対する抵抗力の低下を補う方法が広
く採用されている。
【0009】例えば耐酸化性金属の拡散浸透処理法で
は、特許第600,213 号、特許第829,784 号で代表される
ように超合金部材の表面にCr濃度の高い拡散層を形成
させる技術が提案されている。
【0010】しかし、昨今のガスタービン、ジェットエ
ンジンの運転温度は、これらの特許が提案している年代
に比較すると甚だしく高くなっているので、Cr単独の
拡散層の形成だけでは耐酸化性が不十分である上、拡散
浸透処理法では1000℃前後の高温化で処理が行われるた
め、処理後の超合金部材の機械的強度が低下する欠点が
ある。また、このような高温の拡散処理を燃焼器の内筒
のような薄い超合金板で作られた部材にて行うと、大き
な熱変形を発生させるため適用できないという問題があ
る。
【0011】一方、溶射法によれば、被覆用金属、合金
材料の種類は任意に選択できる利点はあるものの、大気
中で施工した被覆、例えば高温の熱源を有するプラズマ
溶射法で処理した場合は、多孔質で超合金との密着性に
乏しい欠点があった。この点に関しては、近年実質的に
空気を含まない低圧のArガス雰囲気中でプラズマ溶射
する方法(一般的には減圧プラズマ溶射法と呼ばれてい
る)が開発され、大気溶射被覆が保有する欠点は大幅に
改善されてきた。特に高温環境下で使用する溶射材料と
してMCrAlXで示される耐熱合金材料が開発されて
以来、減圧プラズマ溶射法に適した合金材料として広く
採用されている。
【0012】ここで、前記MCrAlX合金に対し、M
はNi,Co,Feあるいは複数金属元素、XはY,H
f,Se,La,Tbなどの活性元素を示すものであ
り、合金を構成する元素が非常に化学的活性が強く、酸
化され易いため、通常の大気溶射では酸化物を多く含
み、比較的多項質な被膜しか形成されない傾向がある。
【0013】このため、MCrAlX合金材料は、実質
的に空気を含まない減圧Arガス雰囲気中で成膜させる
減圧プラズマ溶射法によって緻密で密着性に富み、極め
て高い耐酸化性に優れた被膜として高温部材に加工さ
れ、現在に至っている。
【0014】さらに、MCrAlX合金については、使
用目的に応じた種々の組成のものが多数提案されてい
る。
【0015】これらの合金に関する先行技術としては、
例えば特開昭56-108850 号公報、特開昭57-177952 号公
報、特開昭58-37145号公報、特開昭59-89745号公報、特
開昭59-118847 号公報、特開昭60-141842 号公報などが
あり、これらの公報提案されているMCrAlX合金の
化学成分は概ね次の通りである。
【0016】 (M成分)Ni:0〜75wt% Co:0〜70wt% Fe:0〜30wt% Cr:5〜70wt% Al:1〜29wt% (X成分) Y:0〜5wt% Hf:0〜10wt% (その他)Ta:1〜20wt% Si:0.1 〜14wt% B:0〜0.1wt% C:0〜0.25wt% Mn:0〜10wt% Zr:0〜3wt% W:0〜0.5wt% Pt:0〜20wt% 以上のような多種類のMCrAlX合金の開発と減圧プ
ラズマ溶射の進歩によって、耐酸化性能は大幅に改善さ
れているが、最近のガスタービン、ジェットエンジンの
高温化に伴って発生頻度が高くなっている燃焼ガス中に
含まれている微細な固形粒子(未燃炭素、燃料および空
気中に含まれている固形粒子など)によるエロージョン
損傷に弱いという欠点がある。
【0017】また、燃焼器内筒のように大型の部材は減
圧プラズマ溶射装置に収容できないため、止むなく大気
溶射によってMCrAlX合金を溶射しているのが現状
であり、早急な対策の確立が望まれている。
【0018】
【発明が解決しようとする課題】ところが、従来の溶射
法によるガスタービン、ジェットエンジンなどの高温部
材に形成されているMCrAlX合金の被覆層では、次
のような問題点を抱えている。 (1)大気溶射で形成されたMCrAlX合金被覆層
は、酸化物を多く含むため、合金粒子の相互結合力が弱
く、かつ気孔が多く、基材との密着性に乏しい欠点があ
る。 (2)(1)の諸性状によって、被覆層の耐酸化性およ
び機械的性質が劣化するため、高温部材の保護機能が低
くなる問題がある。 (3)減圧プラズマ溶射で形成されたMCrAlX合金
被覆層は、酸化物の含有量が少なく、合金粒子の相互結
合力が強く、緻密で基材との密着性にも優れているが、
減圧容器が小さいため、大型の高温部材に適用できず、
もっぱら動翼、静翼などの小型部材に適用されているに
過ぎない。 (4)減圧プラズマ溶射で形成されたMCrAlX合金
被覆層は、優れた耐酸化性を有しているものの、一般に
脆弱であるため機械的性質、特に耐エロージョン性、耐
摩耗性に弱い欠点がある。 (5)現在常用されている減圧プラズマ溶射装置は高価
であるうえ、減圧容器の操作(真空ポンプの稼働による
排気と一定気圧の調整)に長時間を要し、また部材の施
工がバッチ式であるため、生産性及び経済性に劣る欠点
がある。等の問題があった。
【0019】本発明はこのような事情に鑑みてなされた
もので、大気中でMCrAl合金被覆を形成するに際
し、熱源中を通過する合金粒子を高速度で飛行させて強
い衝突エネルギを有した状態で基材の表面を被覆させる
ことにより、高価な減圧プラズマ溶射装置を不要とし、
従来の溶射法では得られなかった緻密で密着性に優れた
被覆層を得ると共に、耐酸化性、耐エロージョン性、耐
摩耗性に優れたMCrAl合金被覆層を経済的に形成で
きる耐高温溶射被覆部材及びその製造方法を提供するこ
とを目的とする。
【0020】
【課題を解決するための手段】本発明では、上記の目的
を達成するため、次のような手段を講じている。
【0021】請求項1に対応する発明は、基材表面にC
o,Ni,Cr,Alのうち少なくとも2種を含む合金
材料またはこれにY,Hf,Ta,Ce,Si,Bなど
を少なくとも1種を添加した合金材料を溶射粉末材料と
して用い、これを大気溶射法によって溶射熱源中を250m
/s以上の飛行速度で施工し、気孔率を1%以下、酸素含
有量を0.2WT%以下の被覆層を多層積層したことである。
【0022】請求項2に対応する発明は、基材表面にC
o,Ni,Cr,Alのうち少なくとも2種を含む合金
材料またはこれにY,Hf,Ta,Ce,Si,Bなど
を少なくとも1種を添加した合金材料を溶射粉末材料と
して用い、傾斜組成化した被覆層を形成したことであ
る。
【0023】請求項3に対応する発明は、基材表面にC
o,Ni,Cr,Alのうち少なくとも2種を含む合金
材料またはこれにY,Hf,Ta,Ce,Si,Bなど
を少なくとも1種を添加した合金材料を用いて溶射施工
するに際し、溶射熱源中を飛行する合金材料粒子の速度
を250m/s以上にすることによって、被覆層の気孔率を1
%以下、被覆層に含まれる酸素量を0.2WT%以下に維持し
て、緻密で密着性がよく、しかも微細で硬質のNiA
l,CoAlを主成分とする金属間化合物を析出させる
ことである。
【0024】請求項4に対応する発明は、基材表面にC
o,Ni,Cr,Alのうち少なくとも2種を含む合金
材料またはこれにY,Hf,Ta,Ce,Si,Bなど
を少なくとも1種を添加した合金材料を用いて溶射施工
するに際し、合金材料粒子を250m/s以上の速度で溶射熱
源中を飛行させ、被覆層の気孔率を1%以下、被覆層に
含まれる酸素量を0.2WT%以下の被覆層を形成した後、10
00〜1200℃×1〜10hの溶体化処理、700 〜1000℃×1
〜30hの時効処理の何ずれかまたはその両者の熱処理条
件を組合せた後、熱処理を行うことによって、緻密で密
着性がよく、しかも微細で硬質のNiAl,CoAlを
主成分とする金属間化合物を析出させることである。
【0025】請求項5に対応する発明は、基材表面にC
o,Ni,Cr,Alのうち少なくとも2種を含む合金
材料またはこれにY,Hf,Ta,Ce,Si,Bなど
を少なくとも1種を添加した合金材料を用いて溶射施工
するに際し、合金材料粒子を250m/s以上の速度で溶射熱
源中を飛行させ、被覆層の気孔率を1%以下、被覆層に
含まれる酸素量を0.2WT%以下の被覆層を形成した後、そ
のままの状態、もしくは液体化処理、時効処理を行った
被覆層中にNiAl,CoAlを主成分とする金属間化
合物の析出面積が全体の35〜80% の範囲にあり、かつ該
金属間化合物の10〜50% 独立析出させることである。
【0026】請求項6に対応する発明は、基材表面にC
o,Ni,Cr,Alのうち少なくとも2種を含む合金
材料またはこれにY,Hf,Ta,Ce,Si,Bなど
を少なくとも1種を添加した合金材料を用いて溶射施工
するに際し、合金材料粒子を250m/s以上の速度で溶射熱
源中を飛行させ、被覆層の気孔率を1%以下、被覆層に
含まれる酸素量を0.2WT%以下の被覆層を形成した後、ア
ルミナイズまたはクロマイズ処理を施すことである。
【0027】請求項7に対応する発明は、基材表面にC
o,Ni,Cr,Alのうち少なくとも2種を含む合金
材料またはこれにY,Hf,Ta,Ce,Si,Bなど
を少なくとも1種を添加した合金材料を溶射粉末材料と
して用い、これを大気溶射法によって溶射熱源中を250m
/s以上の飛行速度で施工し、気孔率を1%以下、酸素含
有量を0.2WT%以下の被覆層を形成した後、溶体化処理、
時効処理などの後熱処理を施すことによって、緻密で密
着性に富み、且つ被覆層中に微細で硬質なNiAl,C
oAlを主成分とする金属間化合物の面積が全体の35〜
85% 、そのうち独立して析出している該金属間化合物数
が全体の10〜50% の範囲とすることである。
【0028】請求項8に対応する発明は、請求項7に対
応する発明において、気孔率が1%以下、酸素含有量が
0.2wt%になるように粒径が20〜45μm のものを50% 以上
としたことである。
【0029】請求項9に対応する発明は、請求項7に対
応する発明において、気孔率が1%以下、酸素含有量が
0.2wt%になるように溶射距離が150 〜450mm としたこと
である。
【0030】請求項10に対応する発明は、基材表面に
Co,Ni,Cr,Alのうち少なくとも2種を含む合
金材料またはこれにY,Hf,Ta,Ce,Si,Bな
どを少なくとも1種を添加した合金材料を溶射粉末材料
として用い、これを大気溶射法によって溶射熱源中を25
0m/s以上の飛行速度で施工し、気孔率を1%以下、酸素
含有量を0.2WT%以下の多層積層の被覆層を形成した後、
溶体化処理、時効処理などの後熱処理を施すことによっ
て、緻密で密着性に富み、且つ被覆層中に微細で硬質な
NiAl,CoAlを主成分とする金属間化合物の面積
が全体の35〜85% 、そのうち独立して析出している該金
属間化合物数が全体の10〜50% の範囲としたことであ
る。
【0031】上記のような手段を講じた耐高温溶射被覆
部材及びその製造方法によれば、次のような作用効果を
得ることができる。 (a)大気中でMCrAlX合金被覆を形成するに際
し、熱源中を通過する合金粒子を高速度で飛行させて強
い衝突エネルギを有した状態で基材の表面を被覆させる
ために、大気中で溶射しても合金粒子と空気との接触時
間が短くなって被覆層の気孔率が低下するとともに酸化
物の生産量が少なくなり、減圧プラズマ溶射によって形
成させたMCrAlX被覆層の耐酸化性に匹敵するよう
にすることができる。 (b)MCrAlX合金粒子の衝突エネルギが高いた
め、合金粒子の変形、偏平度が大きくなり(加工度が大
きい)、基材との密着性が向上すると共に、合金粒子に
発生する残留応力が圧縮側に変化するので、一層密着力
の強い被覆層を形成することができる。 (c)上記(a),(b)の作用機構を受けたMCrA
lX被覆層を溶体化処理→時効処理、もしくは時効処理
条件下で長時間にわたって保持するため、被覆層中に微
細で鋭角を有し、かつ独立形態のNiAl,CoAlを
主成分とする金属間化合物を析出することができる。
【0032】したがって、本発明によって製造される溶
射被覆部材は、大型の被処理体の処理が可能となる上、
効果な減圧プラズマ溶射装置が不要となり、さらに従来
の溶射法では得られなかった優れた耐酸化性と耐エロー
ジョン性(耐摩耗性)を兼ね備えたMCrAlX合金被
覆層を経済的に形成することができる。
【0033】
【発明の実施の形態】以下本発明の実施の形態を図面を
参照して説明する。
【0034】図1は本発明による炭化水素/酸素の燃焼
エネルギを熱源とするフレーム溶射法によってMCrA
lX合金粒子の飛行速度を100 〜440m/sに変化させて得
られた被覆層中の酸素量を測定し、溶射熱源中を飛行す
るMCrAlX合金粒子の速度を250m/s以上、被覆層に
含まれる酸素量を0.2wt%以下とすることによって合金粒
子の酸化反応速度を抑制し、緻密で密着性に富み、その
上耐酸化性と耐エロージョン、耐摩耗性に優れた被覆層
を形成することを示す図である。
【0035】この時、溶射熱源中を飛行する合金粒子の
速度は、レーザストロボ装置で測定し、または被覆層中
の酸素量は試料をインパルス炉で溶融し、発生ガス中の
酸素化合物を赤外線吸収法によって測定することによっ
て算出した。
【0036】図1から明らかなように、MCrAlX合
金粒子の飛行速度を250m/s以上にすると、形成された被
覆層中の酸素量は低下することが分かる。
【0037】一方、同じMCrAlX合金粒子を用いて
大気プラズマ溶射法及び減圧プラズマ溶射法によって得
られた被覆層中の酸素量を測定したところ、前者は1.03
wt%、後者は0.8wt%wであったので、高速の飛行粒子で
得られるMCrAlX合金被覆層中の酸素含有量は減圧
プラズマ溶射法によって形成される被覆層に匹敵するほ
ど少ないことが確認される。
【0038】本発明によるMCrAlX合金被覆層の作
用について説明する。
【0039】MCrAlX合金はその化学成分から分か
るように酸素との化学的親和力の強い金属元素から構成
されているため、これを従来の溶射法例えば炭化水素/
酸素の燃焼炎を熱源とするフレーム溶射法あるいはA
r,He,H2 ,N2 などの作動ガスを用いる大気プラ
ズマ溶射法によって被覆層を形成させると被覆層中には
多量の酸化物を含む合金粒子が存在することとなる。こ
のため、被覆層は多孔質となる上、合金粒子の相互結合
力が弱く、基材との密着性に乏しいものとなるので、ガ
スタービン、ジェットエンジンの動、静翼のような高度
な耐酸化性と密着性が要求される被覆形成用としては大
気溶射法はほとんど採用されず、もっぱら減圧プラズマ
溶射法が適用されている。
【0040】しかし、減圧プラズマ溶射装置は高価であ
る上、被溶射体を収納する減圧容器の寸法が比較的小さ
いため、タービン動静翼のような小部材に対する溶射加
工はできても燃焼器内筒や同尾筒のような大型部材に対
しては適用できない。また、現在一般的に行なわれてい
る減圧プラズマ溶射によるMCrAlX合金被覆層は耐
酸化性に優れていても、耐エロージョン性、耐摩耗性に
乏しい欠点があり、高価な減圧プラズマ溶射装置の使用
に伴う成膜費用のコストアップと共に解決すべき課題と
なっている。
【0041】そこで、被溶射体の大きさに制約されず、
成膜処理コストが低く、減圧プラズマ溶射被覆層と同等
の耐酸化性を有する上、従来の溶射被覆法では得られな
い耐エロージョン性と同等の耐酸化性を兼備したMCr
AlX被覆層を得るため、敢て大気溶射を採用すること
とし、目的を達成するため諸種の溶射条件について詳細
な検討を行なった。
【0042】その結果、溶射熱源中を飛行するMCrA
lX合金粒子の速度を250m/s以上にすることによって合
金粒子の酸化反応速度を抑制し、緻密で密着性に富み、
その上耐酸化性と耐エロージョン、耐摩耗性に優れた被
覆層を形成した。
【0043】高速のMCrAlX合金飛行粒子の溶射被
膜形成に及ぼす作用を列挙すると概略次の通りである。 (1)一般に溶射熱源中の合金粒子の酸化反応は、表面
から酸素が内部へまたは合金中の金属元素が外方へそれ
ぞれ拡散することによって行なわれるが、その速度は時
間(t)の1/2 乗で表示される。いわゆる放物線則に準
檬している。 (2)これに対し、合金粒子の被溶射体表面への衝突エ
ネルギは、合金粒子の飛行速度(V)の2乗に比較する
ので、僅かな飛行速度の上昇によって大きな衝突エネル
ギが得られる。 (3)上記(1)と(2)の現象を勘案すると、合金粒
子の飛行速度を上げると、合金の酸化速度が小さくなる
一方、高い衝突エネルギが得られるので、酸化物生成量
の少ない緻密で密着性のよい被覆層が形成できる。 (4)溶射熱源中を高速度で飛行する合金粒子は、受熱
時間の短縮によって温度上昇は低下することとなるが、
これには合金粒子径を調整することで対処する一方、高
速度で衝突するエネルギの一部は、合金粒子の発熱エネ
ルギに転換されるので、実際の溶射作業にはこれらの現
象を考慮した合金粒子径を採用することで対処すること
とした。 (5)高い衝突エネルギで形成されたMCrAlX合金
溶射被覆層を構成する合金粒子は図2(a)に示すよう
に強い圧縮応力を帯びている。このためあたかもショッ
トピーニングした状態となり、曲げや熱衝撃に対しても
強い抵抗力を持つようになる。
【0044】これに対して減圧プラズマ溶射法や大気プ
ラズマ溶射法、さらには溶射熱源中を飛行する合金粒子
の速度が遅い場合には図2(b)に示すように合金粒子
はそれぞれ引張応力を残留することになり、被覆層に残
留応力に起因する亀裂が発生したり、被溶射体から剥離
し易くなる。
【0045】なお、図2(a),(b)の下部には溶射
被覆層の残留応力の相異による被溶射体の変形状態を示
してある。図2(a),(b)において、11は被覆層
を構成する粒子、12は被溶射体、13は残留応力の方
向を示す矢印、14は被溶射被覆層を示している。 (6)高い衝突エネルギで形成された溶射被覆層は大き
な塑性変形を受けているため、成膜後溶体化処理(1000
〜1200℃×0.5 〜10h )→時効処理(700 〜1000℃×0.
5 〜10h )を行なったり、または溶体化処理を行なわず
とも時効処理条件下で長時間維持すると被覆層中に硬質
で微細なNiAl,CoAlなどの金属間化合物が均等
分散状に析出する。この金属間化合物の存在によって被
覆層の耐エロージョン性、耐摩耗性は一層向上すること
になる。
【0046】図3は本発明の溶射合金粒子の飛行速度と
被覆層の断面における気孔率の関係を示したもので、溶
射熱源中を飛行するMCrAlX合金粒子の速度を250m
/s以上、気孔率を1%以下としたことを示す図である。
図3から明らかなように合金粒子の飛行速度が大なるほ
ど強い衝撃力によって合金粒子が堆積し、気孔率の小さ
い被覆層が形成されることが分かる。なお、被覆層の気
孔率は被覆層の断面を研磨した後、400 倍の光学顕微鏡
で撮影した写真を画像解析装置によって測定したもので
ある。同時に測定した大気プラズマ溶射法による被覆層
の気孔率は3.05% 、減圧プラズマ溶射法で得られた被覆
層は0.52% であったので、気孔率についても減圧プラズ
マで溶射法に匹敵することが確認できた。
【0047】図4(a)は本発明の溶射法によって得ら
れたMCrAlX合金被覆層の断面写真を示し、NiA
l,CoAl合金被膜層の析出面積が全体の35〜80%の
範囲にあるミクロ組織を有するMCrAlX合金被覆層
であることを示す図である。溶射では、大気溶射により
MCrAlX合金溶射粒子を用い、本発明の溶射熱源
(フレーム)中の飛行速度280m/sにて製作した被覆層で
ある。
【0048】図4(b)(c)は比較例として大気プラ
ズマ溶射法、減圧プラズマ溶射法によって得られた被覆
層を1050℃×3hの液体化処理、その後 850℃×30h の時
効処理を施した後、走査電子顕微鏡で被覆層の断面を観
察し、金属間化合物の析出状態を観察したものである。
【0049】この結果から明らかなように析出している
金属間化合物の形態に大きな変化が認められる。図4
(a)に示す合金溶射粒子の飛行速度が280m/sの被覆層
に析出する金属間化合物は一般に微細で鋭角を有し、し
かも独立した粒子が多く、全体にほぼ均等に分散した状
態を呈している。
【0050】図4(b)に示す減圧プラズマ溶射法によ
って得られた被覆層の金属間化合物は、微細な析出物が
相互に結合し、全体として網目状となっいる特徴があ
る。
【0051】図4(c)に示す大気プラズマ溶射法によ
って形成された被覆層の金属間化合物は、大小さまざま
な化合物が種々析出する一方、それぞれの化合物が円形
状を呈している特徴がある。
【0052】以上のように通常行なわれいる大気及び減
圧プラズマ溶射法によって得られる被覆層と、本発明の
溶射合金粒子の高速飛行によって高い衝突エネルギで形
成される被覆層の金属間化合物の析出物は、その大き
さ、形状、分布などに大きな相違が認められ、これらの
相違が被覆の機械的性質の差異となって現れるものであ
る。
【0053】本発明の優れた耐酸化性、耐エロージョン
性及び耐摩耗性を発揮するMCrAlX合金溶射被覆層
は、図4(a)に示したようにNiAl,CoAlを主
成分とする金属間化合物の析出面積が全体の35〜80% の
範囲にあるミクロ組織を有するものがよく、金属間化合
物の析出面積が35% より少ない場合は耐酸化性に優れて
いるものの耐エロージョン性や耐摩耗性に乏しく、また
80% より大きな析出面積では被覆層が脆弱となる欠点が
ある。
【0054】さらに、析出している金属間化合物が均等
に分布し、そのうえ析出物の10〜50% が独立して存在し
ていることが重要である。
【0055】なお、金属間化合物の種類はCoを含まな
いMCrAlX合金の場合は、NiAl、Niを含まな
いMCrAlX合金ではCoAl、CoとNiを含むM
CrAlX合金ではNiAl,CoAlの両者が析出す
ることとなる。
【0056】以上説明したように本発明の被覆層を形成
させるには、大気プラズマ溶射法や減圧プラズマ溶射法
では困難であるほか、炭化水素/酸素(空気)、水素/
酸素などの可燃性燃料の燃焼炎であっても、溶射合金粒
子の飛行速度が250m/s以下の場合には形成することがで
きない。したがって、一般に高速フレーム法と呼ばれる
溶射法が適しており、この方法であれば、溶射ガンに供
給する可燃性ガスあるいは液体燃料の圧力を上昇して燃
焼すれば、比較的容易に達成できる。
【0057】本発明の被覆層を形成するには、溶射合金
粒子の飛行速度を250m/s以上にする必要があるが、この
飛行速度を得るには溶射ガンと被溶射体との距離を150
〜450mm にするのがよい。150mm より短ければ、溶射合
金粒子を十分に加速できない上加速時間も短くなるた
め、合金粒子の溶融が不十分となり緻密な被覆層が得ら
れない。また、450mm より長い距離とは、溶射合金粒子
の酸化が進むため被覆層は酸素を含み、合金粒子の相互
結合力が弱くなる上、多孔質となるので不適である。
【0058】本発明で使用できるMCrAlX合金粒子
の化学成分は、市販のものであれば何ずれの合金でも使
用可能である。
【0059】 主成分として Ni:0〜75wt%、 CO:0〜70wt% Fe:0〜30wt%、 Cr:5〜70wt% Al:1〜29wt% X成分として Y:0〜5wt%、 Hf:0〜10wt% Ta:1〜20wt%、 Si:0.1 〜14wt% B:1〜0.1 wt%、 C:0〜0.25wt% Mn:0〜10wt%、 Zr:0〜3wt% W:0〜5.5 wt% Pt:0〜30wt% などが使用できる。
【0060】また、これらの合金粒子径は5〜70μm 程
度の範囲のものがよく、特に20〜45μm のものが好適に
使用できる。粒子径が5μm より小さい場合には溶射熱
源中でヒューム化するとともに質量が小さいため、強い
衝突エネルギが得られず緻密な被覆層は得られない。ま
た、70μm より大きな粒子径では熱源中で十分軟化する
ことができず、緻密な被覆層を形成することは困難であ
る。
【0061】
【実施例】次に本発明の第1の実施例を述べる。
【0062】Ni合金(15.3wt% Cr-7wt% Fe-2.5wt
% Ti-2.0wt% Mn-10wt%Co- 残Ni)を幅30mm、長
さ50mm、厚さ5mmの板状試験片に加工し、その全面に下
記MCrAlX合金を 200μm になるように溶射成膜し
た。 (1)溶射材料 (A)76.5wt% Ni-17wt%Cr-67wt%Al-0.57wt%Y (2)溶射法と溶射合金粒子の飛行速度 白灯油を燃料とし、これを酸素によって燃焼させる高速
フレーム溶射法を用い、溶射装置への燃料供給量を調整
することによって、燃焼フレームとその中を飛行する合
金粒子の速度を90〜400m/sの範囲に変化させて被覆層を
形成させた。
【0063】また、従来の比較用被覆層として、10〜15
0hpa(ヘクトパスカル)に調整したガス雰囲気化で同じ
溶射材料によって 200μm 厚の被覆層を形成させた。 (3)被覆層の熱処理条件と高温酸化試験条件 試験片表面に形成した被覆層は、真空炉中で1120℃×2h
→ 850℃×25h の熱処理を行なった後、1050℃×1000h
の大気中酸化試験を行なって試験前後における重量測定
差から耐高温酸性を評価した。 (4)評価結果 図5はこの評価結果を要約して示したものである。この
結果から明らかなように同じ溶射材料で形成した被覆層
でも、合金粒子の飛行速度が小さい場合(No.5、6、
7)は一般に酸化増量が少なく、減圧プラズマ溶射によ
る被覆層(No.4)に匹敵する耐酸化性を有している。
【0064】次に本発明の第2の実施例を述べる。
【0065】本実施例では、本発明のMCrAlX合金
溶射被覆をガスタービン用燃焼器内筒や尾筒などに施工
されている熱遮蔽被覆(Thermal Barrier Coating )の
アンダーコーティングに適用した場合の効果について実
験した。被溶射体材料としてNi基合金(22.0wt% Cr
-18.5wt%Fe-1.5wt% Co- 0.6wt%W- 残Ni)を幅50
mm、長さ100mm 、厚さ3mmの板状試験片に加工し、その
片面にアンダーコートとして以下に示すMCrAlX合
金 200μm 、その上に 8wt% Y203-92wt% Zr02を 200
μm 厚に成膜したものを製作した。 (1)溶射材料 (イ)10wt% Ni-56.5wt%Co-25.0wt%Cr- 3.0wt%A
l-5.0wt% Ta-0.5wt% Y(アンダーコート材料) (ロ)8wt%Y203-92wt% Zr02(トップコート材料) (2)溶射法と溶射合金粒子の飛行速度 第1の実施例と同じである。 (3)被覆層の熱処理条件と熱衝撃試験条件 燃焼器内筒も尾筒などへの適用を考慮して本実施例で
は、すべて熱処理を行なわず成膜後すぐに、1100℃×15
min 、加熱→ 150℃×5min空気冷却の繰返しによる熱衝
撃試験を行い、主としてトップコートの外観変化からア
ンダーコートの性能を比較検討した。 (4)評価結果 図6はこの評価結果を要約して示したものである。この
結果から明らかなように比較例の合金粒子の飛行速度の
小さい条件で形成した被膜層(No.1、2、3)は何ず
れも熱衝撃回数120 回以下の繰返しでトップコートのY
203 ・Zr02が剥離した。特にNo.1被覆層は28回の繰
返しですでにトップコートに部分的剥離が発生した。こ
れに対して大きい飛行速度で成膜した被覆層(No.5、
6、7)は350 回以上の熱衝撃の繰返しに耐え、特にN
o.7は600 回の繰返しに対してもトップコートは健全
な状態を維持しており、減圧プラズマ溶射被覆層(No.
4)を浚駕する性能を発揮した。
【0066】以上の結果及び第1の実施例の結果を総合
すると、耐酸化性に優れたMCrAlX合金被覆層は、
熱遮蔽被覆用アンダーコートとしても卓越した性能を発
揮することが分かる。
【0067】次に本発明の第3の実施例を述べる。
【0068】本実施例では、本発明のMCrAlX合金
被覆の耐エロージョン性について実験した。Ni基合金
(15.3wt% Cr-7.0wt% Fe-2.0wt% Mo- 10.0wt% C
o-残Ni)を幅50mm、長さ60mm、厚さ5mmの板状試験
片に加工し、その片面に下記MCrAlX合金を 300μ
m になるように溶射成膜した。 (1)溶射材料 (A)76.5wt% Ni-17.0wt%Cr-6.0wt% Al-0.5wt%
Y (B)10wt% Ni-56.5wt%Co-25.0wt%Cr- 3.0wt%A
l-5.0wt% Ta-0.5wt% Y (2)溶射法と溶射合金粒子の飛行速度 第1の実施例と同じ方法を用い、比較例の合金粒子の飛
行速度を100 〜120m/s、本発明の被膜は350 〜400m/sで
成膜させた。 (3)被覆層の熱処理条件 (A)溶射被覆の状態(熱処理を行わず) (B)1140℃×2h (C)1140℃×2h→ 840℃×27h (D) 900℃×200h (4)耐エロージョン試験方法 日本工業規格JISR6111(人造研削材)WA#60A1203研削材
を用い、ブラスト角度30°、ブラスト圧力5kgf/cm2
の条件で供試被覆層に直接15秒間吹付け、試験前後の
重量差から耐エロージョン性を評価した。なお、ブラス
ト噴射ノズルと被覆層の距離は95mmと一定にした。 (5)評価結果 図7はこの評価結果を要約して示したものである。この
結果から明らかなように、比較例の合金粒子の飛行速度
の小さい条件で形成した被膜層は、熱処理の有無にかか
わらず、比較的摩耗量が多い。これに対し本発明の合金
粒子の飛行速度の大きい条件で得られた被覆層は熱処理
の有無にかかわらず、同条件の比較例の被覆層に比較
し、摩耗量が少なく耐エロージョン性に優れていること
が認められる。
【0069】次に本発明の第4の実施例を述べる。
【0070】本実施例では、本発明のMCrAlX合金
溶射被覆の耐摩耗性について実験した。Ni基合金(1
5.3wt% Cr-7.0wt% Fe-2.5wt% Ti- 2.0wt%Mo-1
0.0wt%Co- 残Ni)を幅50mm、長さ60mm、厚さ5mmの
板状試験片に加工し、その片面に下記MCrAlX合金
を 300μm になるように溶射成膜した。 (1)溶射材料 (A)62.6wt% Co-23.0wt%Cr-13.0wt%Al-0.6wt%
Y-0.5wt% Hf-0.3wt% Ce (B)10.2wt% Ni-50.5wt%Co-22.1wt%Cr- 11.0wt
% Al-0.8wt% Y-2.3wt% Si-2.0wt% W-1.1wt% B (2)溶射法と溶射合金粒子の飛行速度 第1の実施例と同じ方法を用い、比較例の合金粒子の飛
行速度を100 〜200m/s、本発明の350 〜400m/sの2条件
で成膜した。 (3)溶射被覆の状態(熱処理を行わず) (A)溶射被覆の状態(熱処理を行わず) (B)1140℃×2h (C)1140℃×2h→ 840℃×27h (D) 900℃×200h (4)摩耗試験方法 大越式摩耗試験機を用い、前記の各種MCrAlX合金
溶射被覆を形成した試験片を水平に設置し、その上に直
径30mm、溶射被覆との接触部の厚さ3mmのSiCペーパ
を巻き付けた円板を接触させ、その上に0.12kgf/mm2
圧力を負荷しつつ、1秒間0.6mの速度で回転させ、累計
回転速度が300mとなったとき、試験を中止して試験片の
重量変化を測定することによって判定した。図9は試験
片5−1と回転運動を行う鋼製円板52の接触状態を示
したものであり、本発明の被覆及び比較例の被覆は、試
験片の上部5−3に位置して、SiCペーパを直接接触
するようになっている。 (5)評価結果 図8は摩耗試験結果を取り纏めたものである。この結果
から明らかなように、比較例の被覆(No.1、2、3、
4、5、6、7、8)の摩耗量は比較的大きく優れた耐
酸化性を示す減圧プラズマ溶射被覆層でも、耐摩耗性に
乏しいことが分かる。これに対し微細で硬質な金属間化
合物を多数析出した本発明の被覆層は、無処理のままで
も、また各種熱処理を施したものでも、すべて同条件の
比較例の被覆層に比べて摩耗量が少なく、耐摩耗性に優
れていることが分かる。
【0071】
【発明の効果】以上詳述したように本発明によれば、M
CrAlX合金溶射粒子を250m/s以上の速度で溶射熱源
中を飛行させて成膜した被覆層は緻密で密着性に優れて
いる上そのままの状態でまた溶体化処理、時効処理など
の熱処理を行っても、微細で硬質なNiAl、CoAl
を主成分とする金属間化合物を多数析出するため、耐酸
化性及び耐エロージョン性、耐摩耗性に優れた耐熱被覆
層になる。このため、被溶射体の大きさの制約を受け
ず、燃焼器内筒や尾筒のような大型部材に対しても、大
気溶射によって優れた耐熱被覆層を形成させることがで
きる。
【0072】また、本発明では従来の減圧溶射プラズマ
溶射設備が高価な上、被溶射体の大きさに制約されてい
たのに比較すれば、遥かに経済的であり、また生産性の
向上にも貢献することが期待できる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の実施の形態として、熱源中の溶射合金
粒子の飛行速度と得られた被覆層中の酸素含有量との関
係を示す図。
【図2】(a)は同実施の形態において、熱源中を高速
で飛行した合金粒子によって形成された被覆層中の残留
応力の方向と被処理体の変形状態(圧縮応力の発生)を
模式的に示した断面図、(b)は従来の熱源中を低速で
飛行した合金粒子によって形成された被覆層中の残留応
力の方向と被処理体の変形状態(引張り応力の発生)を
模式的に示した断面図。
【図3】同実施の形態において、溶射合金粒子の熱源中
の溶射合金粒子の飛行速度を得られた被覆層の気孔率と
の関係を示す図。
【図4】(a)は同実施の形態において、高速フレーム
溶射法によって、溶射合金粒子の速度280m/sで得られた
被覆層の断面組織を示す走査電子顕微鏡による写真、
(b)は従来の減圧プラズマ溶射法によって得られた被
覆層の断面組織を示す走査電子顕微鏡による写真、
(c)は従来の大気プラズマ溶射法によって得られた被
覆層の比較断面組織を示す走査電子顕微鏡による写真。
【図5】本発明の実施の形態による第1の実施例の評価
結果を示す図。
【図6】本発明の実施の形態による第2の実施例の評価
結果を示す図。
【図7】本発明の実施の形態による第3の実施例の評価
結果を示す図。
【図8】本発明の実施の形態による第4の実施例の評価
結果を示す図。
【図9】第4の実施例において、MCrAlX合金溶射
被覆層の摩耗試験状態を示した断面図。
【符号の説明】
1……析出した金属間化合物、2……マトリックス、1
1……被覆層を構成する合金粒子、12……被処理体、
13……残留応力の方向を示す矢印、14……溶射被覆
層、5−1……試験片、5−2……鋼製円板、53……
溶射被覆層、W……荷重。
───────────────────────────────────────────────────── フロントページの続き (72)発明者 高橋 雅士 神奈川県横浜市鶴見区末広町2丁目4番地 株式会社東芝京浜事業所内 (72)発明者 伊藤 義康 神奈川県横浜市鶴見区末広町2丁目4番地 株式会社東芝京浜事業所内 (72)発明者 原田 良夫 兵庫県神戸市東灘区深江北町4丁目13番4 号 トーカロ株式会社内 (72)発明者 竹内 純一 兵庫県神戸市東灘区深江北町4丁目13番4 号 トーカロ株式会社内

Claims (10)

    【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】 基材表面にCo,Ni,Cr,Alのう
    ち少なくとも2種を含む合金材料またはこれにY,H
    f,Ta,Ce,Si,Bなどを少なくとも1種を添加
    した合金材料を溶射粉末材料として用い、これを大気溶
    射法によって溶射熱源中を250m/s以上の飛行速度で施工
    し、気孔率を1%以下、酸素含有量を0.2WT%以下の被覆
    層を多層積層したことを特徴とする耐高温用溶射被覆部
    材。
  2. 【請求項2】 基材表面にCo,Ni,Cr,Alのう
    ち少なくとも2種を含む合金材料またはこれにY,H
    f,Ta,Ce,Si,Bなどを少なくとも1種を添加
    した合金材料を溶射粉末材料として用い、傾斜組成化し
    た被覆層を形成したことを特徴とする耐高温用溶射被覆
    部材。
  3. 【請求項3】 基材表面にCo,Ni,Cr,Alのう
    ち少なくとも2種を含む合金材料またはこれにY,H
    f,Ta,Ce,Si,Bなどを少なくとも1種を添加
    した合金材料を用いて溶射施工するに際し、溶射熱源中
    を飛行する合金材料粒子の速度を250m/s以上にすること
    によって、被覆層の気孔率を1%以下、被覆層に含まれ
    る酸素量を0.2WT%以下に維持して、緻密で密着性がよ
    く、しかも微細で硬質のNiAl,CoAlを主成分と
    する金属間化合物を析出させたことを特徴とする耐高温
    用溶射被覆部材の製造方法。
  4. 【請求項4】 基材表面にCo,Ni,Cr,Alのう
    ち少なくとも2種を含む合金材料またはこれにY,H
    f,Ta,Ce,Si,Bなどを少なくとも1種を添加
    した合金材料を用いて溶射施工するに際し、合金材料粒
    子を250m/s以上の速度で溶射熱源中を飛行させ、被覆層
    の気孔率を1%以下、被覆層に含まれる酸素量を0.2WT%
    以下の被覆層を形成した後、1000〜1200℃×1〜10hの
    溶体化処理、700 〜1000℃×1〜30hの時効処理の何ず
    れかまたはその両者の熱処理条件を組合せた後、熱処理
    を行うことによって、緻密で密着性がよく、しかも微細
    で硬質のNiAl,CoAlを主成分とする金属間化合
    物を析出させたことを特徴とする耐高温用溶射被覆部材
    の製造方法。
  5. 【請求項5】 基材表面にCo,Ni,Cr,Alのう
    ち少なくとも2種を含む合金材料またはこれにY,H
    f,Ta,Ce,Si,Bなどを少なくとも1種を添加
    した合金材料を用いて溶射施工するに際し、合金材料粒
    子を250m/s以上の速度で溶射熱源中を飛行させ、被覆層
    の気孔率を1%以下、被覆層に含まれる酸素量を0.2WT%
    以下の被覆層を形成した後、そのままの状態、もしくは
    液体化処理、時効処理を行った被覆層中にNiAl,C
    oAlを主成分とする金属間化合物の析出面積が全体の
    35〜80% の範囲にあり、かつ該金属間化合物の10〜50%
    独立析出させたことを特徴とする耐高温用溶射被覆部材
    の製造方法。
  6. 【請求項6】 基材表面にCo,Ni,Cr,Alのう
    ち少なくとも2種を含む合金材料またはこれにY,H
    f,Ta,Ce,Si,Bなどを少なくとも1種を添加
    した合金材料を用いて溶射施工するに際し、合金材料粒
    子を250m/s以上の速度で溶射熱源中を飛行させ、被覆層
    の気孔率を1%以下、被覆層に含まれる酸素量を0.2WT%
    以下の被覆層を形成した後、アルミナイズまたはクロマ
    イズ処理を施すことを特徴とする耐高温用溶射被覆部材
    の製造方法。
  7. 【請求項7】 基材表面にCo,Ni,Cr,Alのう
    ち少なくとも2種を含む合金材料またはこれにY,H
    f,Ta,Ce,Si,Bなどを少なくとも1種を添加
    した合金材料を溶射粉末材料として用い、これを大気溶
    射法によって溶射熱源中を250m/s以上の飛行速度で施工
    し、気孔率を1%以下、酸素含有量を0.2WT%以下の被覆
    層を形成した後、溶体化処理、時効処理などの後熱処理
    を施すことによって、緻密で密着性に富み、且つ被覆層
    中に微細で硬質なNiAl,CoAlを主成分とする金
    属間化合物の面積が全体の35〜85% 、そのうち独立して
    析出している該金属間化合物数が全体の10〜50% の範囲
    としたことを特徴とする耐高温用溶射被覆部材の製造方
    法。
  8. 【請求項8】 気孔率が1%以下、酸素含有量が0.2wt%
    になるように粒径が20〜45μm のものを50% 以上とした
    ことを特徴とする請求項7記載の耐高温用溶射被覆部材
    の製造方法。
  9. 【請求項9】 気孔率が1%以下、酸素含有量が0.2wt%
    になるように溶射距離が150 〜450mm としたことを特徴
    とする請求項7記載の耐高温用溶射被覆部材の製造方
    法。
  10. 【請求項10】 基材表面にCo,Ni,Cr,Alの
    うち少なくとも2種を含む合金材料またはこれにY,H
    f,Ta,Ce,Si,Bなどを少なくとも1種を添加
    した合金材料を溶射粉末材料として用い、これを大気溶
    射法によって溶射熱源中を250m/s以上の飛行速度で施工
    し、気孔率を1%以下、酸素含有量を0.2WT%以下の多層
    積層の被覆層を形成した後、溶体化処理、時効処理など
    の後熱処理を施すことによって、緻密で密着性に富み、
    且つ被覆層中に微細で硬質なNiAl,CoAlを主成
    分とする金属間化合物の面積が全体の35〜85% 、そのう
    ち独立して析出している該金属間化合物数が全体の10〜
    50% の範囲としたことを特徴とする耐高温用溶射被覆部
    材の製造方法。
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