JP3188666B2 - 耐高温溶射被覆部材およびその製造方法 - Google Patents

耐高温溶射被覆部材およびその製造方法

Info

Publication number
JP3188666B2
JP3188666B2 JP31061297A JP31061297A JP3188666B2 JP 3188666 B2 JP3188666 B2 JP 3188666B2 JP 31061297 A JP31061297 A JP 31061297A JP 31061297 A JP31061297 A JP 31061297A JP 3188666 B2 JP3188666 B2 JP 3188666B2
Authority
JP
Japan
Prior art keywords
coating
alloy
sprayed
overcoat
spraying
Prior art date
Legal status (The legal status is an assumption and is not a legal conclusion. Google has not performed a legal analysis and makes no representation as to the accuracy of the status listed.)
Expired - Fee Related
Application number
JP31061297A
Other languages
English (en)
Other versions
JPH11140616A (ja
Inventor
良夫 原田
法行 三船
Current Assignee (The listed assignees may be inaccurate. Google has not performed a legal analysis and makes no representation or warranty as to the accuracy of the list.)
Tocalo Co Ltd
Original Assignee
Tocalo Co Ltd
Priority date (The priority date is an assumption and is not a legal conclusion. Google has not performed a legal analysis and makes no representation as to the accuracy of the date listed.)
Filing date
Publication date
Application filed by Tocalo Co Ltd filed Critical Tocalo Co Ltd
Priority to JP31061297A priority Critical patent/JP3188666B2/ja
Publication of JPH11140616A publication Critical patent/JPH11140616A/ja
Application granted granted Critical
Publication of JP3188666B2 publication Critical patent/JP3188666B2/ja
Anticipated expiration legal-status Critical
Expired - Fee Related legal-status Critical Current

Links

Landscapes

  • Coating By Spraying Or Casting (AREA)

Description

【発明の詳細な説明】
【0001】
【発明の属する技術分野】本発明は、ボイラ、ガスター
ビン、ジェットエンジンおよびディーゼルエンジンなど
の高温被曝部用部材として好適に用いられる溶射被覆部
材とその製造方法に関するものである。本発明の溶射被
覆部材は、高炉、熱処理炉、ロケット、スペースシャト
ル、ガスエンジンなどの耐熱部材としても適合するもの
である。
【0002】
【従来の技術】ディーゼル、ボイラ、ガスタービンおよ
びジェットエンジンなどの原動機関では、熱効率の向上
を目的として精力的な開発研究が進められていることは
周知のとおりである。しかし、熱効率の向上は同時に、
構成部材に対する過酷な熱負荷の増大を強いる結果とも
なっている。従って、これらの原動機関の高温部に使用
される金属材料としては、使用環境下で高い機械的強度
を有すると共に、耐高温酸化性および耐高温腐食性に優
れることが要求される。特にV、NaおよびSなどの不純
物を含む燃料を使用する場合には、これらの不純物元素
が高温状態で金属材料を激しく腐食損耗させるので、か
ような環境においても長時間安定した状態を維持するこ
とが必要である。
【0003】このような要求に応えるため、従来からC
r,Ni,Mo,Co,W,Ta,AlおよびTiなどの非鉄金属元
素を主成分とする、いわゆる超合金と呼ばれる耐熱合金
類が多数開発されてきた。しかし、これらの超合金類
は、高温強度が最優先されるため、強度の向上に役立た
ない金属元素の添加は必然的にその割合が低く抑えられ
る傾向にある。このような強度の向上に役立たない金属
元素の代表は、Cr, Al, Si等であるが、一方でこれらの
元素は耐酸化性、耐高温腐食性には優れていることか
ら、上記のような高温強度を優先した超合金は、耐酸化
性や耐高温腐食性には乏しいのが一般的である。
【0004】このような背景の下で、高温環境下で使用
する超合金部材に対しては、予めCrやAl、Siなどの金属
あるいは合金をその表面に溶射法や拡散浸透法などによ
って被覆し、超合金の化学的損傷に対する抵抗力の低下
を補償している。しかし、溶射法では、溶射材料の種類
は任意に選択できる利点はあるものの、大気中で処理し
た皮膜は、多孔質で耐食性および密着性に乏しいという
欠点がある。この点、近年、実質的に空気(酸素)を含
まない低圧のアルゴンガス雰囲気中でプラズマ溶射を行
う方法(減圧プラズマ溶射法)が開発され、大気溶射皮
膜が有する欠点は大幅に改善されてきたが、昨今の高温
被曝環境条件下では、かような皮膜でももはや十分とは
言えなくなってきた。
【0005】また、従来の拡散浸透法は、Cr、Alおよび
Siなどをそれぞれ単独で処理する場合は比較的容易であ
るが、耐酸化性および耐高温腐食性が十分とは言い難
く、しかもこの処理法では1000℃前後の高温状態で処理
する必要があることから、超合金母材の機械的性質が低
下するという欠点がある。
【0006】このような状況に対し、特開昭55−104471
号公報では、耐酸化性金属であるNi−Cr合金を溶射した
後、AlやCr等の拡散浸透処理を行う方法を提案してい
る。しかしながら、この方法は、溶射皮膜の密着性や緻
密性の向上には見るべきものがあるけれども、拡散浸透
法に特有の、高温下での処理が避けられないため、やは
り母材の機械的性質の低下は免れ得ないという問題があ
る。
【0007】一方、この種の高温環境下で使用する溶射
材料そのものの開発も活発に行われている。その代表的
なものがMCrAlX(ここで、MはNi,Co,Feまたはこれ
らの複数金属、Xは Y,Hf,Ta, Cs,Pt, Ce,Zr, La,
Si, Thなどの元素)で示される耐熱合金材料である。こ
のMCrAlX合金を減圧プラズマ溶射することによって、
極めて高度な耐酸化性および耐高温腐食性に富む皮膜の
形成が可能となり、高温部材の性能は一段と向上した。
【0008】さらに、この種のMCrAlX合金溶射皮膜を
形成した後、さらにCr、Al等の拡散浸透処理を行う方法
も提案されている(例えば、特公昭61-10034号公報)。
しかし、このような最新の溶射法や、溶射法と拡散浸透
処理との組み合わせによっても、今日の高温化されたガ
スタービン部材ではその耐久性が十分とは言えず、また
いかに優秀な溶射皮膜を用いても拡散浸透処理と組み合
わせる限り、母材の機械的性質の低下が免れ得ないとこ
ろに問題を残していた。
【0009】
【発明が解決しようとする課題】さて、この発明で解決
しようとする問題点は次の通りである。 (1) 市販されている各種組成のMCrAlX合金は、全て合
金化されており、その融点は非常に高い (1400℃前後)
のが一般的である。このため、大気中はもとより、実質
的に酸素を含まない減圧下のArガス中で溶射したとして
も、溶射状態でガスを巻き込んで皮膜中に気孔が発生す
る。そこで、この皮膜を真空中で1000〜1100℃に加熱
し、皮膜を構成する溶射粒子を相互に結合させて気孔率
を低下させると共に、母材金属中へも拡散させることに
よって、皮膜の密着性の向上を図るのが普通である。こ
のようにMCrAlX合金を減圧プラズマ溶射しても、なお
かつ高温の熱処理が必要になるため、これに伴う母材金
属の機械的性質の低下や経費の増大が大きな問題であ
る。
【0010】これらのMCrAlX合金は、真空溶解炉中で
溶解させて合金化させた後粉砕し、溶射粒子として製造
される。このため、その合金を構成する金属元素はすべ
て冶金反応によって合金化 (含金属間化合物) 状態にあ
るので、融点の低いAl (660℃) −ただし、このAlは完
全に固溶して合金化Alと化している−を含みながらも、
合金全体としての融点は1400℃前後となっているもので
ある。このため、MCrAlX合金を減圧プラズマ溶射後、
900〜1000℃程度の温度に加熱しても、皮膜を構成する
MCrAlX合金粒子の相互結合反応や母材合金との接合反
応は緩慢であり、また不十分である。それ故、従来技術
については、真空中にて1100℃前後の高温での熱処理が
不可欠であり、多大のエネルギーおよび労力の消費と共
に、母材合金の機械的性質の低下を余儀なくされていた
のである。
【0011】一方、これらのMCrAlX合金の耐高温酸化
性は、高温環境に曝露された際、合金中に含まれている
AlおよびCrがそれぞれAl2O3 , Cr2O3 の酸化物となって
外表面を被覆することによって生じるものであるが、Cr
2O3 は1000℃以上の高温では蒸気圧の高いCrO3となって
揮散する。従って、このような高温条件下では、むしろ
化学的に安定なAl2O3 の方が耐酸化性が良好である。そ
のAl2O3 を生成するためのAlは、MCrAlX合金 (先行特
許に開示されているAl:最高29wt%を含有する) 中に多
量に含まれているので、耐高温酸化性の点から見れば、
ほぼ満足すべき状態にあるものと考えられる。しかしな
がら、Alを多く含むMCrAlX合金を用いて形成した溶射
皮膜というのは、Al系金属間化合物を多量に含むため、
硬くかつ脆く、使用環境で僅かな機械的, 熱的衝撃を受
けると容易に破壊される問題点があった。
【0012】また、金属基材の表面に、アンダーコート
であるMCrAlX合金溶射皮膜の外表面に、Al, もしくは
Crを拡散浸透させて耐高温酸化性を付与する従来技術も
あり、この従来技術は一般に次のような工程;即ち、 MCrAlX合金溶射後、Cr, Al拡散浸透処理(900〜1100
℃、5 〜10h 加熱) 、 ついで、母材 (Ni基合金) の溶体化処理 (1050〜1150
℃、1 〜8h) 、 その後、母材の時効処理(750〜900 ℃、1 〜10h)、 で処理されるものである。しかし、この技術の場合、溶
射皮膜をCr, Al拡散浸透処理することから、溶射皮膜自
体の緻密性や密着性は向上するものの、その後 900〜11
00℃に加熱するため、母材の機械的強度が低下し、その
ために上掲の, の熱処理が必要となり、余計なエネ
ルギーと労力を使わなければならない。
【0013】従来のMCrAlX合金溶射皮膜が抱えている
上述した各種の問題を解決するため、発明者の一人は、
さきに、特開平6−306567号公報や特開平 6−322507号
公報に開示されているような、MCrAlX合金と遊離状態
の金属Alからなる溶射皮膜の外表面に、Al2O3 濃度の高
いMCrAlX合金皮膜をつくる技術を提案した。しかし、
この技術については、一応所期の目的は達成している
が、溶射皮膜を構成するMCrAlX合金粒子の相互結合力
を高めるとともに、高温の燃焼ガスに被曝された際に一
段と濃度が高く、かつ緻密で耐高温酸化性に優れたAl2O
3 層を形成するためには、なお一層改善の余地があっ
た。
【0014】そこで本発明の目的は、緻密で密着性の良
い複合溶射皮膜で被覆された耐高温用部材を提供するこ
とにある。本発明の他の目的は、母材の機械的強度が高
い耐高温溶射被覆部材とそれの有利な製造方法を提案す
ることにある。本発明のさらに他の目的は、安価で製作
の容易な耐高温溶射被覆部材とそれの有利な製造方法を
提案することにある。本発明のさらに他の目的は、緻密
で密着性の良い複合溶射皮膜で被覆された耐高温用部材
の製造方法を提案することにある。
【0015】
【課題を解決するための手段】発明者らは、前記の問題
を解決するため鋭意研究を重ねた結果、所期の目的を達
成するためには、基材の表面に、溶射熱源中で生成する
酸化物含有量の少ないMCrAlX合金溶射皮膜を形成した
後、その上に溶射熱源中で生成する酸化物の少ないAl溶
射皮膜もしくは酸化物の少ないAlとMCrAlX合金の混合
溶射皮膜を形成することが極めて有効であるとの知見を
得た。すなわち、この発明の構成は概略次の通りであ
る。
【0016】このような知見の下に開発した本発明は、
金属基材の表面に、アンダーコートとして、酸素含有量
が0.2wt%以下の範囲内で酸素を含み、金属間化合物の
形態で含有するAl含有量が2〜18wt%で、Cr含有量が5〜
15wt%の範囲内にある、MCrAlX(ただし、MとしてCo
≦70wt%、Ni≦75wt%およびFe≦70wt%のうちから選んだ1
種または2種以上を含み、かつXとして、Y、Hf、Ta、C
s、Ce、la、Th、W、SiおよびPtのうちから選んだ1種ま
たは2種以上を含む) 合金溶射皮膜が形成され、その上
にオーバーコートとして、実質的に酸素を含まない雰囲
気中で溶射積層したAl溶射皮膜が形成されていることを
特徴とする耐高温溶射被覆部材である。
【0017】本発明においては、上記オーバーコートの
Al溶射皮膜は、0.2 wt%以下の範囲内で酸素を含み、Al
もしくは遊離金属Alを50wt%以上、100 wt%未満を含む
アンダーコート用合金粉末を積層溶射して形成したもの
であることが好ましく、また、Al溶射皮膜からなるオー
バーコートの上に、さらに大気中での溶射処理によって
形成された酸化物系セラミックス溶射皮膜を有すること
が好ましく、そして、オーバーコートの表面が、大気
中、不活性ガス中又は真空中での、700 〜1200℃, 0.5
〜20時間の熱処理によって形成されるMCrAlX合金成分
の酸化層もしくは気孔率が1.0 %以下の皮膜にすること
が好ましい実施の態様である。
【0018】また、本発明は、金属基材の表面に、高速
フレーム溶射法もしくは雰囲気制御可能な溶射法によっ
て、金属間化合物としてのAl含有量が2〜18wt%で、Cr
含有量が5〜15wt%の範囲内にある、MCrAlX(ただし、
MとしてCo≦70wt%、Ni≦75wt%およびFe≦70wt%のうち
から選んだ1種または2種以上を含み、かつXとして、
Y、Hf、Ta、Cs、Ce、la、Th、W、SiおよびPtのうちから
選んだ1種または2種以上を含む) 粉末を用いて、0.2
wt%以下の範囲の酸素を含むように制御され、かつ厚さ
が50〜700μmになるように溶射されたアンダーコートを
施工し、その上にAlもしくは遊離金属Alを50〜100 wt%
未満の範囲で含む前記MCrAlX合金粉末を用いて0.2wt
%以下の範囲内で酸素を含むように制御され、かつ厚さ
が10〜200μmになるように溶射されたオーバーコートを
施工することを特徴とする耐高温溶射被覆部材の製造方
法を提案する。
【0019】本発明の製造方法においては、上記オーバ
ーコート溶射皮膜の上に、さらに大気中で酸化物系セラ
ミックス粉末を50〜500 μm 厚さに溶射して積層させる
ことが好ましく、また、オーバーコートを施工後、さら
に、大気中, 不活性ガス中または真空中で 700〜1200
℃, 0.5 時間〜20時間の熱処理を施すことが好ましい。
【0020】
【発明の実施の形態】以下、本発明の構成, 作用につい
て説明する。本発明で使用するMCrAlX合金には、次に
示すような特性がある。すなわち、上記MCrAlX合金
は、酸素との化学的親和力の強い金属元素から構成され
ているため、これを合金化するには真空溶解炉を用いる
のが一般的である。この真空溶解炉で溶解されたMCrAl
X合金は、溶融状態において相互に冶金反応を起こし、
多くの合金や金属間化合物 (例えば、NiAl, Ni3Al, Co3
Ti, Ti3Al, FeAl, TiAl3)をつくることから、たとえこ
れを粉砕して溶射粉末にしたとしても、その物理化学的
性質は合金や金属間化合物としての性質を示す。このた
め、MCrAlX合金中に融点の低いAl成分が含まれている
としても、その融点は合金としての融点 (1400℃前後)
を示す。従って、この合金を溶射した後、溶射皮膜を加
熱処理によって緻密化する場合、少なくとも1100℃前後
の温度に加熱する必要があることから、基材の劣化を招
く他、この加熱処理によってもなお十分な粒子結合度は
得られないのが実情である。
【0021】一方、酸素との化学的親和力の強い金属元
素によって構成されているMCrAlX合金は、溶射熱源に
よって加熱, 溶融された際、すべての合金成分が酸化
し、これらの酸化物は加熱された合金粒子と空気との接
触面、すなわち粒子の外表面に酸化膜となって存在する
こととなる。このような酸化膜を形成した合金粒子が堆
積した溶射皮膜は、多孔質であるうえ、これを熱処理し
ても酸化膜が障壁となって合金粒子が相互に冶金結合し
ないため、密着性が悪く、MCrAlX合金が保有する優れ
た耐高温酸化性を発揮させることができない。
【0022】そこで、これを解決するためには、実質的
に酸素を含まない低圧のアルゴンガス雰囲気中でプラズ
マ溶射する方式 (以下、「減圧プラズマ溶射法」とい
う) が有効であり、この溶射法であれば溶射雰囲気中で
酸化するMCrAlX合金粒子の防止と酸化による溶射皮膜
の特性低下は解消できる。
【0023】しかし、かかる減圧プラズマ溶射法を行う
には、容積の大きい真空容器およびこれに付属する真空
ポンプ, 集塵装置などの高価な機器類を必要とするう
え、真空容器内への被処理体の取付け、取り外しに伴う
真空脱気およびアルゴンガスによる雰囲気圧の調整など
に長時間を要する。従って、作業性が悪く、装置の減価
償却費を含めると処理コストは大幅に増大する欠点があ
る。
【0024】そこで本発明では、上記減圧プラズマ溶射
法に代替する技術的手段として、次のような方法を提案
する。 (1) 溶射雰囲気中に混入する酸素によるMCrAlX合金溶
射粒子の酸化を極力抑制する。例えば、溶射皮膜中に含
有する酸素を、本発明の効果を害しない程度、即ち 0.2
wt%程度に抑制する。この酸素含有量を 0.2wt%を上限
とする理由は、これ以上の酸素含有量では、皮膜の気孔
率が高いうえ、熱処理を施しても酸化膜が障害となって
皮膜が緻密化されず、また優れた耐高温酸化性を発揮す
るのに必要な緻密で密着性のよいAl2O3 の生成が十分で
ないからである。
【0025】(2) MCrAlX合金中に低融点(660℃) の金
属Alを添加し、この複合合金粒子をなるべく溶射熱源ガ
スおよび溶射雰囲気を構成する空気などによって酸化さ
れないように皮膜を形成することによって、低融点のAl
の反応性を利用して高融点MCrAlX合金粒子相互の冶金
的結合力を促進させ、緻密で密着性の良い溶射皮膜とす
る。
【0026】(3) (1) 項または(2) 項のMCrAlX合金溶
射皮膜上に、なるべく溶射環境中で酸化しないように、
金属Alもしくは所定量の金属Alを含む前記MCrAlX合金
の溶射皮膜をオーバーコートとして施工することによ
り、低融点Alの冶金反応による溶射皮膜の緻密化と密着
性の向上を図る。このことにより、かかる溶射皮膜を高
温の大気中や燃焼ガス中で使用した場合、外気と接触す
る最表層部に緻密なAl2O3膜が多量に生成するように
し、このことによって良好な耐高温酸化性を発揮させ
る。
【0027】(4) (2) 項または(3) 項によって成膜した
複合 (2層) 溶射皮膜は、この状態でも直ちに使用可能
であるが、MCrAlX合金中に添加されている金属Alもし
くは遊離金属Alの冶金反応 (MCrAlX合金粒子との結合
力の促進, MCrAlX合金粒子の表面に生成している酸化
物の除去など) を完結させるための熱処理を、大気中、
不活性ガス雰囲気中もしくは真空中で 700〜1200℃, 0.
5 〜20時間実施する。
【0028】(5) 前記(2) (3) (4) 実施後のオーバーコ
ート溶射皮膜の上に、耐熱性を有する酸化物系セラミッ
クス、例えば、Y2O3, CaO , MgO , CeO2などの酸化物を
1種以上含むZrO2を大気プラズマ溶射する。このことに
よって、両皮膜の界面においては、良好なAl2O3 /ZrO2
結合層が生成するため、長時間にわたって安定した熱遮
蔽特性を発揮することとなる。
【0029】(6) 本発明を実施するために重要な役割を
果たす溶射法、すなわち、溶射粒子がなるべく酸化しな
いような溶射法と溶射環境として次に示すものが好適で
ある。 減圧プラズマ溶射法を使用する。 大気中の溶射法に属し、燃料の加圧燃焼フレームを
熱源とする高速フレーム溶射法を採用することによっ
て、溶射粒子の加熱上昇温度を最小限に抑え、また、溶
射粒子の飛行速度を最大限に利用して溶射粒子の加熱時
間を短くするなどの作用機構によって、溶射粒子の酸化
を抑制する。この方法によれば、溶射粒子の加熱不足に
伴う未溶融粒子の増加は、大きな飛行速度を与えること
によって、被処理体に対し強い衝突力をもって偏平化す
るとともに、MCrAlX合金粒子に混合している低融点の
遊離金属Alの溶融現象と発熱を伴う冶金反応によって補
うことが可能である (例えば、AlとNiが反応してNiAl金
属間化合物を生成させる場合には、118Kj/mol の生成熱
が発生する) 。
【0030】かかる冶金反応を起こさせるために、上記
高速フレーム溶射法の下で求められる、粒子飛行速度は
250 m/sec 以上の速さにすることが必要である。
【0031】図1は、炭化水素を燃料とする高速フレー
ム溶射法によってMCrAlX合金 (32wt%Ni−21wt%Cr−
8 wt%Al−0.5 wt%Y −残wt%Co) と、これに遊離金属
Alを90wt%混合造粒したMCrAlX合金をそれぞれ溶射材
料として、その飛行速度を変化させながらSUS 304 基材
上に成膜した皮膜中の酸素量を測定した結果を示したも
のである。なお、成膜に当たっては、溶射熱源中を飛行
する合金粒子の速度をレーザストロボ装置で測定し、ま
た皮膜中に含まれる酸素量は、試料をインパルス炉で溶
融し、発生するガス中の酸素化合物量を赤外線吸収法に
よって測定した。
【0032】この結果から明らかなように、遊離金属Al
を添加したMCrAlX合金皮膜中の酸素量は、飛行速度の
遅い条件では比較例の合金皮膜より多いが、飛行速度が
上昇して加熱時間が短くなった場合、合金粒子で形成さ
れた皮膜では、酸素含有量が急激に低下し、酸素との化
学的親和力の強い遊離金属Alを添加していてもその影響
はほとんど認められなくなる。即ち、溶射皮膜中の酸素
量が 0.2wt%以下になるようにするためには、飛行速度
を 250 m/s 以上の速さに制御することが必要であるこ
とがわかる。好ましくは 300 m/s 以上がよい。
【0033】また、図2は、16wt%Cr−6 wt%Al−0.8
wt%Y −残wt%Ni組成のMCrAlX合金溶射皮膜の断面を
画像解析装置を用いて気孔率を測定したものである。溶
射皮膜の気孔率は、合金粒子の飛行速度が大きいほど低
下するが、比較例の合金粒子で気孔率1%以下の皮膜を
得るには、飛行速度250m/s 以上が必要である。これに
対し、本発明の金属Alを含むMCrAlX合金では、220m/
s の速度で気孔率1%の皮膜が得られている。これは低
融点の遊離金属Alの溶融現象によってMCrAlX合金粒子
が相互に結合して気孔を消滅する作用を示した結果であ
ると考えられる。
【0034】以上述べた遊離金属Alを混合したMCrAlX
合金溶射材料に代えて、金属Alのみを溶射しても緻密な
皮膜が得られる。ただし、金属Alを溶射する場合には、
アンダーコートとして減圧プラズマ溶射法もしくは高速
フレーム溶射法によって、MCrAlX合金皮膜を形成した
後、その上に金属Alを溶射施工する。金属Alの溶射は、
減圧プラズマ溶射法を最適とするが、大気中でレーザ,
爆発エネルギー, 電気アークや可燃性ガスの燃焼フレー
ムなどを熱源とする溶射法でも適用できる。ただし、大
気中で溶射した場合には、溶射材料が酸化され易いの
で、成膜後、乾燥状態を維持し、必ず熱処理 (700 〜12
00℃, 0.5h〜20h)を施すことによって、一層良好な耐高
温用溶射皮膜を有する部材が得られる。
【0035】図3は、本発明の方法によって得られる複
合溶射皮膜つき部材の断面構造を示したものである。図
3(a) は、金属基材上に減圧プラズマ溶射法または高速
フレーム溶射法によってMCrAlX合金のアンダーコート
を施工後、その上にさらに、遊離金属Alを含むMCrAlX
合金をアンダーコートと同じ溶射法によって成膜したも
の。図3(b) は、金属基材上に減圧プラズマ溶射法また
は高速フレーム溶射法によってMCrAlX合金を施工後、
その上に金属Alを減圧プラズマ溶射法または大気中で電
気アーク溶射法、高速フレーム溶射法などによって成膜
したもの。図3(c) は、(a) または(b) の溶射皮膜上
に、大気プラズマ溶射法によって、耐熱性を有する酸化
物系セラミックスを形成させたものである。ここで、1
は金属基材、2は遊離金属Alを含まないMCrAlX合金溶
射皮膜、3は遊離金属Alを含むMCrAlX合金溶射皮膜、
4は金属Al溶射皮膜、5は耐熱性を有する酸化物系セラ
ミック溶射皮膜である。
【0036】以上説明したように、本発明は、アンダー
コートであるMCrAlX合金溶射皮膜およびこの上に施工
したオーバーコートである遊離金属Alを所定量混合した
MCrAlX合金溶射皮膜もしくは金属Alの溶射皮膜とも、
溶射熱源中では酸素含有量が0.2wt%を上限としてなる
べく酸化しないように施工することが重要である。
【0037】このように、本発明では、図1および図2
に示す結果から、アンダーコート,オーバーコートとも
その中に含まれる酸素含有量 (溶射熱源中で空気などに
よって酸化される量) を0超〜0.2 wt%以下に限定し
た。その理由は、0.2 wt%以上では皮膜を構成する溶射
粒子の表面に生成する酸化膜の存在によって多孔質とな
るとともに、MCrAlX合金中に遊離金属Alを含ませてい
ても発熱を伴う冶金反応が弱く、たとえ後熱処理を施し
ても皮膜の緻密化が促進されず、本発明の目的を達成す
ることができなくなるからである。この意味において、
本発明は、溶射施工の難易を考慮して、上記酸素含有量
は完全に無くすよりもむしろ、0.2 wt%を上限として含
有するように溶射する高速フレーム溶射法を適用するこ
とが、経済的にもまた技術的にもより有利な方法と言え
る。
【0038】次に、本発明の目的に使用する好適なMCr
AlX合金溶射材料の化学組成は、以下に示す通りであ
る。 (%は重量%を示す) M成分:Ni (≦75%) 、Co (≦70%) 、Fe (≦70%) Cr成分: (5 〜15%) Al成分: (2 〜18%) X成分:Y(0 〜5 %) 、Hf(0〜10%) 、Ta(1〜20%) 、
Cs(0〜0.1 %) 、Ce(0〜0.25%) 、La(0〜10%) 、Th(0
〜3 %) 、W (0〜5.5 %) 、Si(0〜20%) 、Pt(0〜3
%) なお、アンダーコートであるMCrAlX合金溶射皮膜の上
に形成したり、MCrAlX合金溶射材料中に混合して用い
る金属Alの純度は、JIS H 2102制定の3種以上(99%以
上) であれば使用可能である。
【0039】以上の説明から明らかなとおり、本発明
は、アンダーコート中のAl含有量を抑制して、硬く脆い
というこの皮膜の特有の欠点を解消する一方で、Al2O3
不足による耐熱効果の不足を、オーバーコートの方でAl
リッチな溶射皮膜を形成することで補完することを特徴
とする。
【0040】即ち、本発明で使用するMCrAlX合金溶射
皮膜中の金属間化合物としてのAl含有量は、先に示した
先行特許が提案している1〜29wt%に比較すると、上限
を18wt%に抑えている点が特徴である。即ち、アンダー
コートとして形成するMCrAlX合金中のAl含有量が18wt
%より多い場合には、その上にオーバーコートとして形
成する金属Alもしくは遊離金属Alを含むMCrAlX合金溶
射皮膜中のAl成分による冶金反応により、非常に脆いAl
を主成分とする金属間化合物を多量に生成して、僅かな
熱衝撃や機械的衝撃によって、アンダーコート割れや剥
離を生じる欠点がある。なお、好ましくは、2〜18wt
%、さらにより好ましくは6〜13wt%の範囲がよい。
【0041】この点、オーバーコート中にAlおよびAlの
金属間化合物を多量に含ませていても、この層はアンダ
ーコートとは異なり、溶射皮膜全体の機械的強度を担当
する役割を果たさず、もっぱら良好な耐酸化性を発揮さ
せるための皮膜であるから、緻密で密着性に優れたAl2O
3 の生成用として機能させれば足り、実用上の問題は生
じない。
【0042】以上の理由から本発明では、MCrAlX合金
を施工して得られるアンダーコート(金属間化合物とし
て含まれるAl含有量 2〜18wt%) は、その厚さを50〜70
0 μm とし、金属Alまたは遊離金属Alを50〜100 wt%未
満含むMCrAlX合金 (アンダーコートと同組成) を施工
して得られるトップコートの厚さを10〜200 μm の範囲
として、アンダーコートよりはるかに薄くする。上記の
ように限定した理由は、アンダーコートの厚さが50μm
より薄いと高温状態で使用する場合に寿命が短く、700
μm より厚くすると成膜操作に長時間を要し、経済的で
ない。また、トップコートを10μm より薄くするには成
膜時に膜厚が不均等になり易く、また200 μm 以上厚く
すると膜質が脆化する欠点がある。
【0043】また、オーバーコート上に施工するとーと
しての酸化物系セラミックス溶射皮膜の厚さは、50〜50
0 μm の範囲が好適である。このように限定した理由
は、その厚さが50μm より薄いと熱遮蔽効果に乏しく、
一方、 500μm より厚い場合には酸化物系セラミックス
層の形成に長時間を要するうえ、酸化物粒子の相互結合
力が低下し、層間に微細な割れの発生や局部剥離の頻度
が高くなるので避けるべきである。
【0044】
【実施例】実施例1 この実施例では、アンダーコートとして施工するMCrAl
X合金中の金属間化合物としてのAl含有量と、この溶射
皮膜の上にオーバーコートとして形成するAl溶射皮膜中
における最表層部の高濃度Al構成層 (Al溶射皮膜) の熱
的および機械的安定性について調査した。すなわち、ア
ンダーコート中のMCrAlX合金中に含まれるAl量が多く
なると、必然的にAl−Co系、Al−Ni系金属間化合物の含
有量が増加するため、耐高温酸化性は向上するものの、
非常に脆くなり、皮膜に加熱と冷却が繰返されたり機械
的な衝撃が加えられると亀裂が発生したり、局部的に剥
離することによって皮膜の寿命が短くなることが予想さ
れる。
【0045】そこで、この実施例では、Al含有量が2〜
29wt%の範囲で変化させたMCrAlX合金を用いて、SUS
304 鋼 (寸法:幅50×長100 ×厚6mm) の片面に、減圧
プラズマ溶射法によつて200 μm 厚に成膜し、さらにそ
の上に同じ溶射法によって金属Alを30μm 厚に施工した
溶射皮膜試験片を製作した。このようにして製作した試
験片を1000℃に加熱した電気炉中に15分間保持した後、
25℃の水中に投入する操作を10回繰り返す熱衝撃試験を
行った。また、機械的衝撃としては、粒径45±10μm の
Al2O3 粒子を5 kgf/cm2 の圧縮空気をもって 500mm離れ
た溶射皮膜に対し 300g 噴射する方法を用いて評価し
た。 (ブラスト衝撃試験)
【0046】表1は、これらの結果を要約したものであ
る。表1に示すように、アンダーコート用のMCrAlX合
金中のAl含有量が18wt%以下では、熱衝撃およびブラス
ト衝撃試験にも比較的よく耐え、トップコートの剥離や
損耗は少ないことがわかった。これに対し、MCrAlX合
金中のAl含有量が20wt%以上のアンダーコートについて
は、その最表層部にAlを施工しても熱衝撃試験によって
微細な割れおよび微小な皮膜剥離が発生し、また、ブラ
スト衝撃試験ではこれらの皮膜の損傷状態が一層明瞭に
認められた。以上の結果から、本発明の対象となるMCr
AlX合金中のAl含有量は18wt%以下に抑制することが必
要であることが判明した。
【0047】
【表1】
【0048】実施例2 この実施例では、アンダーコートとして形成したMCrAl
X合金溶射皮膜中の金属間化合物としてのAl含有量と、
その上にオーバーコートとして施工するAl溶射皮膜のM
CrAlX合金中に含有する遊離金属Al量について、実施例
1と同じ条件で溶射皮膜を形成し、熱衝撃試験と機械的
衝撃試験を行って、これらの皮膜の性能を評価した。表
2は、この結果を示したものである。ここでもアンダー
コート用のMCrAlX合金中のAl含有量が18wt%以下であ
れば、熱衝撃およびブラスト衝撃試験にも比較的よく耐
え、トップコートの剥離や損耗が少ないことがわかっ
た。また、オーバーコートについても、その中に含有さ
せる遊離金属Alは50〜100 wt%未満の範囲で良好な結果
を示した。
【0049】
【表2】
【0050】実施例3 実施例1および実施例2の結果から、本発明のアンダー
コートとして使用できるMCrAlX合金中の金属間化合物
としてのAl含有量は2〜18wt%の範囲にあることが必要
であるので、以下の実施例では表3に示すような成分組
成を有するMCrAlX合金溶射材料を用いた。すなわち、
AはNiを含まないMCrAlX合金、BはCoを含まないMCr
AlX合金、CはNiとCoを含むMCrAlX合金、DはNiとCo
を含み、さらにX成分としてY とTaを含むMCrAlX合金
である。
【0051】溶射皮膜試験片は、表3に示す4種類のM
CrAlX合金を減圧プラズマ溶射法によって、Ni基合金基
材 (8.2 wt%Cr−10wt%Co−10wt%W -3wt%Ta-5.5wt%
Al−1.5 wt%Hf− 1.0wt%Ti−残wt%Ni) 上に300 μm
厚に成膜した後、さらに同じ雰囲気中で金属Alを50μm
厚に施工した。これらの溶射皮膜の断面構造はさきに図
1(a)に示したものと同一である。ここで、得られたMCr
AlX合金溶射皮膜の一部を真空炉中にて1080℃×1hの熱
処理を行ったものと、溶射のままの皮膜 (熱処理を行わ
ない皮膜) の2種類について、それぞれの皮膜断面につ
いて画像解析装置を用いて皮膜の気孔率を測定した。
【0052】表4は、この結果をまとめたものである。
すなわち、Al溶射皮膜 (オーバーコート) を被覆せずし
かも熱処理を行わないMCrAlX合金溶射皮膜 (No.5)
は、溶射状態のままで 0.5〜1.2 %の気孔率を示すが、
これを1080℃×1hの熱処理を施すことによって気孔率
は 0.3〜0.5 %に低下している。これに対し、Al溶射皮
膜を表層部分に有するもの (No.1〜4)は、熱処理を行わ
なくても 0.3〜0.4 %程度の低気孔率を示し、熱処理を
施すとさらに 0.1〜0.2 %に低下した。この結果から明
らかなように、MCrAlX合金溶射皮膜の外表面にAl溶射
皮膜を形成スることによって、皮膜の気孔率は一段と低
下し、燃焼ガス成分や空気の皮膜内部への侵入を防ぎ、
溶射皮膜の耐高温酸化性を向上させ得ることがうかがえ
る。
【0053】なお、本発明のように、アンダーコート上
にオーバーコートとしてAl溶射皮膜を形成した場合に
は、その直下のMCrAlX合金溶射皮膜 (アンダーコー
ト) の気孔率が幾分減少する傾向が認められるが、この
ことは、加熱溶融状態のAlとMCrAlX合金の発熱を伴う
冶金反応の影響によって、MCrAlX合金溶射皮膜の緻密
化が促進された結果と考えられる。
【0054】
【表3】
【0055】
【表4】
【0056】実施例4 この実施例では、オーバーコートとしてAl溶射皮膜を有
し、アンダーコートとしてMCrAlX合金溶射皮膜を有す
る部材の高温耐食性を調査した。Co基合金 (29wt%Cr−
10wt%Ni-7.5wt%W −残wt%Co) を幅30mm×長さ50mm×
厚3mmの寸法に仕上げて試験片基材とし、その片面に表
3に示した組成を有するMCrAlX合金を減圧プラズマ溶
射法によって300 μm 厚にアンダーコートを形成し、そ
の上にオーバーコートとしてAlを同じ雰囲気中で30μm
厚に施工したものを溶射試験片とした。高温腐食試験
は、試験片の表面積に90wt%Na2SO4−10wt%NaCl混合薬
剤を1cm 2 当たり25mgを塗布し、その後、1000℃に保持
した電気炉中に4hr 放置し、その後、溶射皮膜の断面を
切断、光学顕微鏡により腐食薬剤成分の侵入深さを測定
することによって、耐高温腐食性を評価した。なお、比
較試験は、MCrAlX合金溶射皮膜のみのものを準備し、
同じ高温腐食試験を行った。表5は、この結果をまとめ
たものである。この結果から明らかなように、オーバー
コートであるAl溶射皮膜を設けない溶射皮膜 (No. 5 〜
8 ) を有する比較例の部材では、28〜70μm に達する腐
食薬剤の内部侵入が認められたが、本発明に適合する溶
射皮膜を有する部材 (No. 1 〜4 ) では10〜25μm の範
囲にとどまっており、Al溶射皮膜の存在によって腐食成
分の内部侵入が防止されていることが確認された。
【0057】
【表5】
【0058】実施例5 この実施例では、溶射材料として表3に記載のAとC合
金を用い、高速フレーム溶射法によって、溶射粒子の飛
行速度を 250m/sec の条件で、Ni基合金 (10wt%Co−10
wt%W −5.5 wt%Al−3.0 wt%Ta−1.0 wt%Ti−0.6 wt
%Mo−8.2 wt%Cr−0.16wt%C−残りwt%Ni) を幅30mm
×長さ50mm×厚さ5mm寸法の基材の片面に、250 μm 厚
にアンダーコートを形成した後、その上に下記のオーバ
ーコートを30μm 厚に施工し、さらにこれらの溶射皮膜
つき試験片を真空炉中で1100℃×1hの熱処理を行った。 (1) 電気アーク溶射法によるAl溶射皮膜であるオーバー
コートを形成、(2) 金属Alを90wt%含むMCrAlX合金
(C合金) を減圧プラズマ溶射法によりオーバーコート
を形成、(3) さらに、一部の溶射皮膜試験片について
は、大気プラズマ溶射法によって24wt%MgO −76wt%Zr
O2酸化物セラミックスを、250 μm 厚に施工して熱遮蔽
皮膜を形成した試験片を製作した。以上の試験片につい
ては、実施例2で行った皮膜の気孔率測定および実施例
1の熱衝撃試験を行って評価したが、比較例として、オ
ーバーコートの施工を省略した溶射皮膜を供試した。
【0059】表6は、これらの試験結果を示したもの
で、比較例の皮膜 (No.9〜12) では、熱処理後でも0.8
〜2.8 %の気孔率が認められるとともに、315 〜320 回
の熱衝撃によってMgO −ZrO2酸化物セラミックス溶射皮
膜が剥離した。これに対し、AlもしくはAlを含むMCrAl
X合金をオーバーコートとして形成した本発明例 (No.1
〜8)では、気孔率が0.1 〜0.3 %の範囲にあり、また、
熱衝撃試験においても 400〜480 回の加熱−冷却の繰返
しに耐えることが判明した。これらの原因は、トップコ
ートの存在によって皮膜の緻密化が促進されるととも
に、酸化物セラミックスとの接合力に優れたAl2O3 が均
等に生成したためと考えられる。
【0060】
【表6】
【0061】実施例6 本実施例では、実施例2の要領で溶射皮膜を形成するに
際し、オーバーコートとしてのAl溶射に代えて、遊離金
属Alを80wt%を含むMCrAlX合金を減圧プラズマ溶射法
によって50μm 厚に施工し、その後1080℃×1hの熱処理
と熱処理を行なわない皮膜の2種類について、それぞれ
の皮膜の気孔率を測定した。
【0062】表7は、この結果を要約したものである。
この結果から明らかなように、比較例の皮膜 (No.5〜8)
の気孔率は、溶射状態のままで0.5 〜1.2 %、熱処理後
0.3〜0.7 %であるのに対し、本発明の皮膜 (No.1〜4)
では、溶射状態のままでも0.3 〜0.7 %、熱処理を行う
とさらに 0.1〜0.22%と緻密になることがわかる。この
ように、オーバーコートを構成するMCrAlX合金に遊離
金属Alを添加しても、皮膜を緻密化することが確認され
た。
【0063】
【表7】
【0064】
【発明の効果】以上説明したように、アンダーコートと
して金属間化合物としてのAl含有量が2〜18wt%のMCr
AlX合金溶射皮膜施工後、その上にこの皮膜中の酸素含
有量が0.2 wt%以下の範囲内に含まれるような溶射条件
でAlまたは遊離金属Alを50〜100 wt%未満を含むMCrAl
X合金のいずれかをオーバーコートとして形成した皮膜
は、緻密で基材との密着性に優れるとともに、良好な高
温耐酸化性を示す。しかも、トップコートとして酸化物
系セラミックスを最表層として溶射施工する場合も、こ
のセラミックスとオーバーコート (アンダーコートを含
む) と優れた結合性能を発揮する。したがって、従来技
術のMCrAlX合金溶射皮膜形成後、Al拡散処理を行う方
法に比較すると、Al拡散処理の実施による基材の機械的
性能の劣化がないことは勿論のこと、溶射以外の処理プ
ロセスを省略することができるので、製造コストの大幅
な低減と、製造時間の短縮が可能となる。
【図面の簡単な説明】
【図1】高速フレーム溶射法によって、MCrAlX合金と
遊離金属Alを含むMCrAlX合金を溶射材料として成膜し
た場合の溶射粒子の飛行速度と皮膜中の酸素量の関係を
示したものである。
【図2】高速フレーム溶射法によって、MCrAlX合金と
遊離金属Alを含むMCrAlX合金を溶射材料として成膜し
た場合の溶射粒子の飛行速度と皮膜の気孔率との関係を
示したものである。
【図3】本発明の耐高温酸化皮膜の断面構造例を示した
ものである。
【符号の説明】
1 耐熱性金属基材 2 遊離金属Alを含まないMCrAlX合金溶射皮膜 3 遊離金属Alを含むMCrAlX合金溶射皮膜 4 金属Al溶射皮膜 5 耐熱性を有する酸化物系セラミックス溶射皮膜
───────────────────────────────────────────────────── フロントページの続き (58)調査した分野(Int.Cl.7,DB名) C23C 4/00

Claims (7)

    (57)【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】 金属基材の表面に、アンダーコートとし
    て、0.2 wt%以下の範囲内で酸素を含み、金属間化合物
    の形態で含有するAl含有量が 2〜18wt%で、Cr含有量が
    5〜15wt%の範囲内にある、MCrAlX(ただし、Mとして
    Co≦70wt%、Ni≦75wt%およびFe≦70wt%のうちから選ん
    1種または2種以上を含み、かつXとして、Y、Hf、T
    a、Cs、Ce、la、Th、W、SiおよびPtのうちから選んだ1
    種または2種以上を含む) 合金溶射皮膜が形成され、そ
    の上にオーバーコートとして、実質的に酸素を含まない
    雰囲気中で溶射積層したAl溶射皮膜が形成されているこ
    とを特徴とする耐高温溶射被覆部材。
  2. 【請求項2】 上記オーバーコートのAl溶射皮膜は、Al
    もしくは遊離金属Alを50wt%以上 100wt%未満を含むア
    ンダーコート用合金粉末のいずれかを、0.2wt%以下の
    範囲内で酸素を含むように積層溶射して形成したもので
    あることを特徴とする請求項1に記載した耐高温溶射被
    覆部材。
  3. 【請求項3】 Al溶射皮膜からなるオーバーコートの上
    に、さらに大気中での溶射処理によって形成された酸化
    物系セラミックス溶射皮膜を有することを特徴とする請
    求項1または2に記載した耐高温溶射被覆部材。
  4. 【請求項4】 オーバーコートを、大気中、不活性ガス
    中又は真空中での、700 〜1200℃, 0.5 〜20時間の熱処
    理によって形成されるMCrAlX合金の酸化膜もしくは気
    孔率が1.0 %以下である被膜にすることを特徴とする請
    求項1〜3のいずれか1項に記載した耐高温溶射被覆部
    材。
  5. 【請求項5】 金属基材の表面に、高速フレーム溶射法
    もしくは雰囲気制御可能な溶射法によって、金属間化合
    物としてのAl含有量が2〜18wt%で、Cr含有量が5〜15w
    t%の範囲内のMCrAlX合金(ただし、MとしてCo≦70wt
    %、Ni≦75wt%およびFe≦70wt%のうちから選んだ1種また
    2種以上を含み、かつXとして、Y、Hf、Ta、Cs、Ce、
    la、Th、W、SiおよびPtのうちから選んだ1種または2
    種以上を含む)粉末を用いて酸素含有量が0.2wt%以下
    の範囲内で含むように制御され、かつ厚さが50〜700μm
    になるように溶射されたアンダーコートを施工し、その
    上にAlもしくは遊離金属Alを50wt%以上 100wt%未満の
    範囲で含む前記MCrAlX合金粉末のいずれかを用いて、
    0.2wt%以下の範囲内で酸素を含むように制御されかつ
    厚さが10〜200μm、皮膜の気孔率が1%以下になるよう
    に溶射されたオーバーコートを施工することを特徴とす
    る耐高温溶射被覆部材の製造方法。
  6. 【請求項6】 上記オーバーコート溶射皮膜の上に、さ
    らに大気中で酸化物系セラミックス粉末を50〜500 μm
    厚さに溶射して積層させることを特徴とする請求項5に
    記載した製造方法。
  7. 【請求項7】 オーバーコートを施工後、さらに、大気
    中, 不活性ガス中または真空中で 700〜1200℃, 0.5 時
    間〜20時間の熱処理を施すことを特徴とする請求項5ま
    たは6に記載した製造方法。
JP31061297A 1997-11-12 1997-11-12 耐高温溶射被覆部材およびその製造方法 Expired - Fee Related JP3188666B2 (ja)

Priority Applications (1)

Application Number Priority Date Filing Date Title
JP31061297A JP3188666B2 (ja) 1997-11-12 1997-11-12 耐高温溶射被覆部材およびその製造方法

Applications Claiming Priority (1)

Application Number Priority Date Filing Date Title
JP31061297A JP3188666B2 (ja) 1997-11-12 1997-11-12 耐高温溶射被覆部材およびその製造方法

Publications (2)

Publication Number Publication Date
JPH11140616A JPH11140616A (ja) 1999-05-25
JP3188666B2 true JP3188666B2 (ja) 2001-07-16

Family

ID=18007365

Family Applications (1)

Application Number Title Priority Date Filing Date
JP31061297A Expired - Fee Related JP3188666B2 (ja) 1997-11-12 1997-11-12 耐高温溶射被覆部材およびその製造方法

Country Status (1)

Country Link
JP (1) JP3188666B2 (ja)

Cited By (1)

* Cited by examiner, † Cited by third party
Publication number Priority date Publication date Assignee Title
KR20200011748A (ko) * 2018-07-25 2020-02-04 안동대학교 산학협력단 내열성, 내마모성 및 내부식성이 우수한 용사분말, 이를 이용하여 용사피막을 형성하는 방법 및 용사피막이 형성된 그레이트바

Families Citing this family (4)

* Cited by examiner, † Cited by third party
Publication number Priority date Publication date Assignee Title
JP3866911B2 (ja) * 2000-09-05 2007-01-10 トーカロ株式会社 防食溶射被覆部材およびその製造方法
KR100702257B1 (ko) 2006-03-02 2007-04-03 허민 스크루 펌프의 회전날개 제조방법
CN104032252B (zh) * 2014-06-12 2016-05-25 沈阳大学 一种Al85Ni10La5非晶合金涂层的制备方法
CN104357757B (zh) * 2014-10-21 2016-09-07 大丰市南亚阀门有限公司 一种青铜阀门耐摩擦合金涂层及其涂覆工艺

Cited By (2)

* Cited by examiner, † Cited by third party
Publication number Priority date Publication date Assignee Title
KR20200011748A (ko) * 2018-07-25 2020-02-04 안동대학교 산학협력단 내열성, 내마모성 및 내부식성이 우수한 용사분말, 이를 이용하여 용사피막을 형성하는 방법 및 용사피막이 형성된 그레이트바
KR102106486B1 (ko) 2018-07-25 2020-05-07 안동대학교 산학협력단 내열성, 내마모성 및 내부식성이 우수한 용사분말, 이를 이용하여 용사피막을 형성하는 방법 및 용사피막이 형성된 그레이트바

Also Published As

Publication number Publication date
JPH11140616A (ja) 1999-05-25

Similar Documents

Publication Publication Date Title
JP2991991B2 (ja) 耐高温環境用溶射被覆部材およびその製造方法
US4198442A (en) Method for producing elevated temperature corrosion resistant articles
EP1076727B1 (en) Multilayer bond coat for a thermal barrier coating system and process therefor
US6372299B1 (en) Method for improving the oxidation-resistance of metal substrates coated with thermal barrier coatings
US20060093736A1 (en) Aluminum articles with wear-resistant coatings and methods for applying the coatings onto the articles
US4446199A (en) Overlay metallic-cermet alloy coating systems
JP2991990B2 (ja) 耐高温環境用溶射被覆部材およびその製造方法
JP3865705B2 (ja) 耐食性および耐熱性に優れる熱遮蔽皮膜被覆材並びにその製造方法
US4451496A (en) Coating with overlay metallic-cermet alloy systems
US3957454A (en) Coated article
JP3530768B2 (ja) 熱遮蔽皮膜の形成方法
JP3188666B2 (ja) 耐高温溶射被覆部材およびその製造方法
US3953193A (en) Coating powder mixture
JP2983454B2 (ja) 耐高温用溶射被覆部材及びその製造方法
JP3597709B2 (ja) 耐高温溶射被覆部材
JP2005343107A (ja) 耐食性および耐熱性に優れる熱遮蔽皮膜被覆部材とその製造方法
JP4313459B2 (ja) 高温被曝部材およびその製造方法
JP3917568B2 (ja) 耐熱・耐酸化性溶射皮膜被覆部材およびその製造方法
JP3332847B2 (ja) 耐熱部材および耐熱部材の製造方法
JP2930497B2 (ja) 高温耐食性合金溶射皮膜の形成方法
JP3874406B2 (ja) 高温強度部材への保護皮膜形成方法
JPH0874505A (ja) 遮熱コーティング部材およびその製造法
JP3917564B2 (ja) 耐熱・耐酸化性溶射皮膜被覆部材およびその製造方法
JP2003514985A (ja) 層を有する構成部材並びにかゝる層の製造方法

Legal Events

Date Code Title Description
A01 Written decision to grant a patent or to grant a registration (utility model)

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A01

Effective date: 20010417

R250 Receipt of annual fees

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: R250

R250 Receipt of annual fees

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: R250

R250 Receipt of annual fees

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: R250

R250 Receipt of annual fees

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: R250

FPAY Renewal fee payment (event date is renewal date of database)

Free format text: PAYMENT UNTIL: 20080511

Year of fee payment: 7

FPAY Renewal fee payment (event date is renewal date of database)

Free format text: PAYMENT UNTIL: 20090511

Year of fee payment: 8

FPAY Renewal fee payment (event date is renewal date of database)

Free format text: PAYMENT UNTIL: 20090511

Year of fee payment: 8

FPAY Renewal fee payment (event date is renewal date of database)

Free format text: PAYMENT UNTIL: 20100511

Year of fee payment: 9

FPAY Renewal fee payment (event date is renewal date of database)

Free format text: PAYMENT UNTIL: 20100511

Year of fee payment: 9

FPAY Renewal fee payment (event date is renewal date of database)

Free format text: PAYMENT UNTIL: 20110511

Year of fee payment: 10

FPAY Renewal fee payment (event date is renewal date of database)

Free format text: PAYMENT UNTIL: 20110511

Year of fee payment: 10

FPAY Renewal fee payment (event date is renewal date of database)

Free format text: PAYMENT UNTIL: 20120511

Year of fee payment: 11

FPAY Renewal fee payment (event date is renewal date of database)

Free format text: PAYMENT UNTIL: 20130511

Year of fee payment: 12

FPAY Renewal fee payment (event date is renewal date of database)

Free format text: PAYMENT UNTIL: 20130511

Year of fee payment: 12

FPAY Renewal fee payment (event date is renewal date of database)

Free format text: PAYMENT UNTIL: 20140511

Year of fee payment: 13

R250 Receipt of annual fees

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: R250

LAPS Cancellation because of no payment of annual fees