JP3530768B2 - 熱遮蔽皮膜の形成方法 - Google Patents
熱遮蔽皮膜の形成方法Info
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Description
ェットエンジンなどの高温被曝部材に適した熱遮蔽皮膜
の形成方法に関するものである。本発明の技術は、ボイ
ラ、ディーゼル、高炉、熱処理炉などに配設されている
各種の高温被曝部材ならびにその製造技術に対しても適
用することができる。
びジェットエンジンなどの原動機関では、熱効率の向上
を目的として精力的な開発研究が進められていることは
周知のとおりである。しかし、熱効率の向上は同時に、
構成部材に対する過酷な熱負荷の増大を強いる結果とも
なっている。従って、これらの原動機関の高温部に使用
される金属材料としては、使用環境下で高い機械的強度
を有すると共に、耐高温酸化性および耐高温腐食性に優
れることが要求される。このような要求に応えるため、
従来からCr, Ni, Mo, Co, W,Ta, AlおよびTiなどの非
鉄金属元素を主成分とする、いわゆる超合金と呼ばれる
耐熱合金類が多数開発されてきた。しかし、これらの超
合金類は、高温強度が最優先されるため、強度の向上に
役立たない金属元素の添加は必然的にその割合が低く抑
えられる傾向にある。このような強度の向上に役立たな
い金属元素の代表は、Cr, Al, Si等であるが、一方でこ
れらの元素は、耐酸化性、耐高温腐食性には優れている
ことから、上記のような高温強度を優先した超合金は、
耐酸化性や耐高温腐食性には乏しいのが一般的である。
する超合金部材に対しては、予めCrやAl, Siなどの金属
あるいは合金をその表面に溶射法や拡散浸透法などによ
って被覆し、超合金の化学的損傷に対する抵抗力の低下
を補償している。
合金類を容易に皮膜化する溶射法が普及し、これと並行
して優れた耐酸化性を発揮するMCrAlX合金 (ここで、
Mは、Ni, CoおよびFeから選ばれるいずれか1種以上の
金属。Xは、Y, Hf, Ta, Cs, Pt, Ce, Zr, La, Siおよ
びThから選ばれるいずれか1種以上の金属) で示される
溶射材料の開発によって、溶射法の優位性がさらに高め
られている。このMCrAlX合金材料に関する先行技術と
して、例えば、特開昭59−118847号公報や特開昭60−14
1842号公報に開示の技術がある。
分野に、高温被曝部材に施工して用いる熱遮蔽皮膜 (Th
ermal Barrier Coating, NASA Technical Memorandum:
NASA−TM−X3425:以下、単に「TBC」と略記する)
がある。この皮膜は、アンダーコートとしてMCrAlX合
金の皮膜を形成し、トップコートとして耐熱性に優れる
とともに熱伝導率の小さいZrO2系セラミックスの皮膜を
重畳被覆してなるものである。
ミックス皮膜の組合せに係る上記TBCは、ガスタービ
ンの高温被曝部材のみならず、遠心鋳造用モールド (例
えば、特開昭64−870503号公報) や溶融板ガラスの搬送
用ロールの耐熱性皮膜 (例えば特開平 4−460622号公
報) などの耐熱性皮膜としても利用されている。しか
し、このようなMCrAlX合金とZrO2系セラミックスを組
み合わせたTBCにおいても、昨今の高温化されたガス
タービンの運転環境下でしばしば両皮膜の境界からトッ
プコートのみが剥離し、熱遮蔽作用が喪失するという問
題があった。
てのMCrAlX合金皮膜に対し、Al被覆層を酸化させたAl
2O3 層を設けて、その耐酸化力を向上させることによっ
て、トップコートの剥離を防ぐ技術 (特開昭62−211387
号公報) や、トップコートのZrO2中にCaO , SiO2を添加
して微細な割れを発生させることによって熱応力を分散
させ、このことによってトップコートの剥離を防ぐ方法
(例えば、特開平 4−36454 号公報) も提案されてい
る。しかし、これらの対策技術は、いずれもその出願当
時のガスタービンの使用温度域 (1100〜1300℃) におい
ては、その目的は十分に達成されていたが、昨今のとく
に稼働温度が1500℃を超えるような使用環境に対しては
不十分であった。
1500℃を超えるような高温の環境で使用される熱遮蔽皮
膜(TBC)について、とくにZrO2系セラミックストッ
プコートが早期に破壊されたり、局部的に剥離してその
熱遮蔽機能が喪失するという従来技術が抱える課題を解
決するものである。 (1) TBCは、通常、MCrAlX合金からなるアンダーコ
ートとZrO2系セラミックスからなるトップコートから構
成され、トップコートは種として輻射熱による部材の高
温化を防ぐ役割を果たしている。しかし、このトップコ
ートは、急激な温度変化を受けると、しばしばトップコ
ートのみがアンダーコートとの界面から剥離するため、
TBCとしての機能を喪失する。 (2) 急激な温度変化を受けたTBCでは、金属質のアン
ダーコートとセラミックス質のトップコートが保有する
それぞれの物質固有の熱的特性の差(熱応力)が、極端
な形で両コートの界面に集中して発生して、皮膜界面か
らの剥離が起こる。 (3) 現在の技術により形成されているトップコートは、
(2) 項のような機構で発生する熱応力と輻射による熱伝
導率を低下させるため、多孔質な状態が最良とされてい
るが (例えば、日本溶射協会編、溶射技術ハンドブック
新技術開発センター出版、1998年5月30日 505頁) 、
昨今の高温化されたガスタービンの運転環境下では、多
孔質なトップコートは多数の横方向の割れが発生し (ア
ンダーコート面と並行な水平方向の割れ) 、アンダーコ
ートとの界面はもとより、トップコートの中でも横方向
(水平方向) の割れの発生とその成長が激しくなり、T
BCとしての機能が著しく低下するという問題がある。 (4) 現行技術による多孔質なトップコートは、現在のガ
スタービンの運転温度では比較的良好なTBC特性を示
すが、さらに一段と高いレベルの温度域になると、焼結
収縮現象が顕著となって収縮応力が発生し、トップコー
トの横方向に対しても多数の割れが発生して成長し、ト
ップコートの剥離原因となっている。
に高温の環境で使用されても皮膜の剥離が起こらず、長
期に亘る連続的な使用ができる熱遮蔽皮膜を確実に形成
するための方法を提案するところにある。
めに鋭意研究した結果、本発明らは、ZrO2系セラミック
ス溶射皮膜からなるトップコートに加わる熱衝撃や、高
温焼結に伴う横方向割れの発生によって起こる皮膜の剥
離等と、TBCとしての機能の低下を防止するため、次
のような技術手段を採用する。 (1) 耐熱合金などの基材表面に、まずMCrAlX合金材料
を溶射してアンダーコートを施工し、そしてその上に、
ZrO2系セラミックスを溶射してトップコートを施工して
緻密な熱遮蔽皮膜を形成する。 (2) このとき、緻密な熱遮蔽皮膜形成手段の一つとし
て、アンダーコート溶射皮膜表面のみならず既に溶射し
終えたトップコートのZrO2系セラミックス粒子表面を、
プラズマフレームと溶射施工部の距離を近づけて触れる
ようにすることなどの手段を使って、それらの表面 (ア
ンダーコートおよびトップコートのZrO2系セラミックス
粒子表面) を高温状態に維持するという条件下で溶射作
業を終える。このようにして、熱遮蔽皮膜(TBC)の
形成が終わるまで、アンダーコート等の表面を高温に保
持して形成した緻密質トップコートは、溶射終了に伴う
冷却過程などにおける急激な温度変化、とくに急冷処理
されると、溶射時に蓄積された応力によって、皮膜に縦
割れが発生する。 (3) 上述した緻密なトップコートを形成する他の手段と
しては、減圧下においてプラズマ溶射法を適用すること
によってZrO2系セラミックス層を形成する方法が効果的
である。即ち、この方法は、減圧下雰囲気で行うのでプ
ラズマフレームが長くのび、その上速くなるという特徴
がある。さらに、こうした減圧下の溶射では、プラズマ
フレームの最高温度が約4000℃と低くなる。従って、こ
のような条件下でトップコートを形成すると、フレーム
の先端が常に溶射施工部にほぼ接触することになり、そ
れ故に該アンダ−コ−トおよびトップコートは、常に高
温状態に維持されたままとなり、緻密な皮膜が生成する
とともに、施工直後の冷却時、または一旦徐冷したのち
実用環境下において再度加熱したり、さらに急冷する場
合等の温度変化時と、該トップコートには横割れでなく
縦割れが発生する。
と、溶射材料のZrO2の一部が酸素を喪失してZrO2-Xとな
る (このことは、外観変化によっても観察できる。例え
ば、ZrO2を大気中で溶射すると淡黄色となり、減圧下の
溶射では灰黒色となる) 。そこで、減圧下で形成した灰
黒色のトップコートは、燃焼ガス中や空気中の高温環境
に被曝させると、淡黄色のZrO2に戻るが、その際、体積
変化を伴うので、緻密な皮膜ではこれが縦割れを誘発す
ることとなる。
成するトップコートの施工は、従来の技術思想とは異な
り緻密な皮膜とすることにより、この皮膜に発生する熱
応力を利用した縦割れを発生させることによって、横割
れを防止するものである。
本発明は、金属製などの基材の表面に、耐熱合金材料を
溶射してアンダーコートを形成し、引き続きそのアンダ
ーコートの上にZrO2系セラミックス材料を溶射してト
ップコートを形成することにより熱遮蔽皮膜を形成する
に当たり、トップコートの溶射施工時に、前記アンダー
コートの表面および施工を終えたトップコートの前記Zr
O2系セラミックス粒子の表面を500〜900℃の温度に保
持して、気孔率2〜8%の緻密質トップコートを形成
し、その後トップコート施工後は、該トップコートの溶
射処理終了直後に急冷するか、一旦冷却した後に再度加
熱するか、その後さらに再急冷する操作のいずれかの方
法に従う温度変化を付与することによって、トップコー
トのみに縦割れを発生させるようにすることを特徴とす
る熱遮蔽皮膜の形成方法である。
よびトップコートの溶射に当たっては、大気プラズマ溶
射法、高速フレーム溶射法もしくは減圧プラズマ溶射法
のうちから選ばれるいずれかの溶射法を用いることが好
ましい。また、アンダーコート用の耐熱合金は、Cr、N
i、Co、AlおよびYのうちから選ばれる2種以上の金属
元素を含む合金を用い、また、トップコート用のZrO2系
セラミックス材料は、Y2O3、CaO、CeO2、MgOおよびSiO2
から選ばれる少なくとも1種の酸化物を5〜40wt%含有
することが好ましい。
膜形成方法について、工程順に説明する。 (1) アンダーコートの施工;基材としては、主としてNi
基合金や、Co基合金などの耐熱合金を用いることが望ま
しいが、もちろん他の金属材料でも使用できる。アンダ
ーコートの施工に当たっては、まず上記基材の表面を、
脱脂し、ブラスト処理などの方法によって清浄化するこ
とにより清浄粗面を形成する。その後、粗面化した基材
表面には、溶射法によって、Cr, Ni, Co, AlおよびYの
うちから選ばれる2種以上の金属元素を含む耐熱合金の
溶射皮膜を形成する。例えば、MCrAlX合金 (ここでM
は、Ni, Co, Feまたはこれらの複数金属、Xは、Y, H
f,Ta, Cs, Pt, Ce, Zr, La, Si, Thなどの元素) による
アンダーコートを施工することが望ましい。このアンダ
ーコートの役割りは、前記耐熱合金製基材との結合力の
向上を図るとともに、次工程のZrO2系酸化物セラミック
スのトップコートとも優れた密着力を得るために、必須
の工程である。このアンダーコートの厚さは、30〜500
μm の範囲がよく、30μm より薄い場合と均等な厚さが
維持できないうえ、多孔質となるので、十分な耐高温酸
化性を発揮することができない。また、300 μm より厚
くしても、アンダーコートとして格別良好な性能が得ら
れないので経済的でない。溶射法については、大気プラ
ズマ溶射法、減圧プラズマ溶射法、高速フレーム溶射
法、爆発溶射法のいずれの方法でもよく、特に限定する
ものではない。
プコート用材料としては、Y2O3, CaO , CeO2, MgO , Si
O2から選ばれる1種以上の酸化物を5〜40wt%含むZrO2
系セラミックスが用いられる。これらの材料をプラズマ
溶射することによって、50〜600 μm厚のトップコート
を施工する。ただし、本発明においては、このトップコ
ートを施工する際に、アンダーコートおよびトップコー
トの表面温度を 500〜900 ℃に加熱維持した状態で行う
ことが必須となる。このような温度条件で成膜した熱遮
蔽皮膜(TBC)トップコートは、従来の方法 (常温の
アンダーコートへの溶射) で得られるZrO2系セラミック
ス皮膜に比較すると非常に緻密となり、一見、TBC用
のトップコートとして不向きと思われるような断面状態
を呈する。しかし、このアンダーコートおよびトップコ
ートとして溶射したZrO2系セラミックス粒子の温度を上
記の範囲に維持するという条件下で溶射を続けると、ト
ップコート形成のために溶射されたZrO2系セラミックス
粒子は500 ℃以下には冷却されることなくそのまま高温
状態を維持することとなる。そして、このような状態で
50μm以上も厚く施工したトップコートの場合、溶射を
中止して常温に急冷されるとき、大きな縦割れが多数発
生する。本発明の熱遮蔽皮膜(TBC)のトップコート
は、このような現象を利用して形成したものである。
ーコートへの溶射施工) で得られるトップコートの場
合、耐熱衝撃性を向上させるため意識的に多孔質として
いたが、このような皮膜は確かに熱衝撃性に優れるもの
の、一旦亀裂が発生すると基材ならびにアンダーコート
面と平行に成長するため、トップコートのみが剥離して
その遮蔽機能を喪失するという欠点がある。
法の適用によって形成されるトップコートは、溶射後の
冷却時などの熱衝撃環境に置かれると割れを発生する
が、その割れは皮膜が緻密であるため、その成長方向の
大部分が縦方向になる。従って、その後に急激な温度変
化を受けても熱応力に起因して発生する剪断応力値が極
めて小さく皮膜剥離を招くようなことがない。
Cの断面ミクロ組織を示したものである。ここで、1は
基材、2はアンダーコート、3はトップコート、4は溶
射直後に発生した本発明の縦割れを示したものである。
図1(a) の従来技術によるTBCには、縦割れのない多
孔質なトップコートが形成されているが、このトップコ
ートは実用環境中で熱衝撃を受けると横割れが発生して
剥離する欠点がある。
コートを形成する方法としては、以下に示すような方法
が有効である。 アンダーコートを施工した被処理体を、Ar, Heなど
の不活性ガス雰囲気中で 500〜900 ℃に加熱した後、プ
ラズマ溶射してトップコートを施工する。 (具体的には
減圧プラズマ溶射の使用が好適である。) 大気中でトップコートを施工する場合、プラズマジ
ェットのフレームを被処理体の表面に接触させるように
してその表面を 500〜900 ℃に加熱しながら溶射する
と、アンダーコート等を高温に保持したままの溶射が可
能になり、緻密で縦割れの発生したトップコートが得ら
れる。
は、2〜8%の範囲がよく、2%より緻密なトップコー
トは溶射法では得られ難く、8%より多い気孔率では割
れが横方向に成長するので適当でない。
の範囲がよく、50μmより薄いときは明瞭な縦割れの発
生が認められないうえ、熱遮蔽効果も乏しい欠点があ
る。一方、600 μmより厚くしてもトップコートとして
の作用機構が格別向上することが認められないので、経
済的に得策でない。
MCrAlX合金のアンダーコートとZrO2系セラミックスの
トップコートは全く異質で熱膨張係数や熱伝導率が異な
るため、急激な温度変化を受けると両コート間に主とし
て熱膨張係数の相違に起因する剪断応力が発生する。こ
の剪断応力が両コートの結合力より大きくなるとき、ト
ップコートが剥離するものと考えられる。しかし、トッ
プコートに縦割れが存在すると、剪断応力は分散された
り解放されるので、両コートの結合力より大きくはなら
ず、急激な温度変化を受けても剥離することなく、長期
間にわたって輻射熱を遮蔽する作用を維持することがで
きる。
トは、1000〜1200℃程度のガスタービン環境では比較的
良好なTBC特性を示すが、1300℃以上の高温環境下で
は焼結収縮現象を起こして冷却過程で多数の横方向の割
れを発生する特徴があり、やがてトップコートの剥離原
因となる。これに対し、本発明のトップコートの縦割れ
は、比較的太いため高温収縮によって結合することがな
く、収縮による応力の発生も受けないため、トップコー
トに負荷される熱応力に対しては大きな抵抗力を発揮す
る。
験片 (幅50mm×長さ 100mm×厚3mm) の片面を脱脂し、
ブラスト処理した後、大気プラズマ溶射法によって、17
wt%Cr-6.0wt%Al-0.5wt%Y−残りwt%Niのアンダーコ
ートを 100μm厚に施工し、さらにその上に、各種のZr
O2系セラミックスのトップコートを大気溶射法および減
圧プラズマ溶射法によって 300μm厚に施工した。本発
明の溶射皮膜を形成するに当たり、特にトップコートの
施工時にはアンダーコートの表面もしくはアンダーコー
トの表面にトップコートの一部として堆積するZrO2系セ
ラミックス粒子の温度が500〜900 ℃の間に保持される
ようにして成膜した。溶射後の皮膜は、その断面を光学
顕微鏡で観察して、トップコートに発生する縦割れの有
無および気孔率を調査する一方、さらに成膜試験片を 9
00℃×30min電気炉中で加熱後、これを25℃の水中へ投
入した後、皮膜の断面を検鏡し、トップコートの割れの
有無を調査した。なお、比較用の皮膜として、大気プラ
ズマ溶射法によって、本発明のアンダーコートとトップ
コートの溶射材料を用いて、それぞれ 100μm厚、300
μm厚に仕上げた。 (比較例の大気プラズマ溶射法で
は、アンダーコートの表面温度は25〜200 ℃の範囲であ
った。)
り、本発明の方法で形成された熱遮蔽皮膜 (No.1〜7)
は、大気プラズマ溶射法、減圧プラズマ溶射法とも、気
孔率は2〜8%の範囲にあって、非常に緻密である。そ
の上、溶射直後のトップコートにはすでに縦割れが発生
し、さらにその後、一旦徐冷したのち 900℃×20min の
加熱を行うことによって、縦割れの発生数が増加した。
ただ、No. 5 のトップコートのみ、溶射直後には縦割れ
の発生は認められなかったが、900 ℃×30min 加熱後、
25℃の水中へ投入して急冷すると多数の縦割れの発生が
認められた。これに対し、比較例の皮膜 (No. 8 〜12)
では、従来の知見通り極めて多孔質(8 〜19%) であ
り、この影響を受けて溶射直後はもとより 900℃×30mi
n 加熱後、水中へ投入しても割れの発生は認められなか
った。
膜した試験片を用いて、電気炉中で1000℃×15min の加
熱後、25℃の水中へ投入して急冷する操作を1サイクル
とし、累計20サイクルの熱衝撃試験を実施し、トップコ
ートの剥離の有無および皮膜断面の割れの発生状況を調
査した。表2は、以上の結果を要約したものである。こ
の結果から明らかなように、溶射直後からすでに縦割れ
が発生している本発明の皮膜 (No. 1〜7) は、20サイ
クルの熱衝撃試験においてもトップコートの剥離は認め
られなかった。これに対し、比較例の皮膜 (No. 8 〜1
2) は、8 〜12サイクル目に局部的なトップコートの剥
離が発生しはじめ、15サイクルでほぼ全面にわたってト
ップコートの剥離が認められるもの (No.12)があり、縦
割れを有する本発明の皮膜に比較すると耐熱衝撃性に乏
しいことが判明した。また、試験片上に残存していたト
ップコートの断面を検鏡すると、大きな横割れが認めら
れ、この横割れがトップコートの剥離を誘発したものと
考えられる。
wt%Cr-10 wt%Ni-7wt%Mo-3.5wt%Ta-0.6wt%C−残り
wt%Co) の試験片 (幅30mm×長さ100 mm×厚3mm) の片
面に、実施例1のアンダーコートを高速フレーム溶射法
によって 100μm厚に施工した後、その上に大気プラズ
マ溶射法によって 8wt%Y2O3・ZrO2のトップコートを 3
00μm厚に形成させたものを準備し、高温下の焼結反応
を調べた。本発明にかかる熱遮蔽皮膜つき試験片は、溶
射直後にすでにトップコートに縦割れが発生しているこ
とを確認した上で、1300〜1350℃の高温雰囲気中に24時
間放置した。その後、皮膜の断面を調査したところ、ト
ップコートの縦割れは多少幅が大きくなっていたが高温
焼結の傾向は認められなかった。これに対し、従来手段
の条件で形成させた多孔質 (気孔率12〜16%) なトップ
コートは、1300〜1350℃×10時間の加熱によって 0.3〜
0.5 %の焼結収縮現象とこれに伴う微細な縦割れと多数
の横割れが発生した。この横割れの成長がトップコート
の剥離原因となるものと考えられ、1300℃以上の高温状
態では従来の多孔質皮膜の優位性は低下し、トップコー
トの横割れの原因になり得ることが判明した。
用によって形成した熱遮蔽皮膜のZrO2系セラミックスか
らなるトップコートは、該皮膜形成後の冷却過程もしく
は実用環境中の温度変化によって、微細な縦割れを発生
させることができる。この縦割れを有するトップコート
を形成した熱遮蔽皮膜は、高温環境中に長期間暴露され
ても焼結反応によって再結合することなく、また、急激
な温度変化を受けてもアンダーコートとの間に大きな剪
断応力が発生しないため、熱的な環境変化に対し強い抵
抗力を発揮する。このため、本発明にかかる熱遮蔽皮膜
を形成した部材を、ガスタービン、ジェットエンジン等
の高温被曝部材として使用した場合、一層の高温化とそ
の連続運転の長期化が可能となり、熱エネルギーの有効
利用と消耗部材の減少化による経費の節減に大きく寄与
することができる。
る。
Claims (3)
- 【請求項1】 基材の表面に、耐熱合金材料を溶射して
アンダーコートを形成し、引き続きそのアンダーコート
の上にZrO2系セラミックス材料を溶射してトップコー
トを形成することにより熱遮蔽皮膜を形成するに当た
り、トップコートの溶射施工時に、前記アンダーコート
の表面および施工を終えたトップコートの前記ZrO2系
セラミックス粒子の表面を500〜900℃の温度に保持し
て、気孔率2〜8%の緻密質トップコートを形成し、そ
の後トップコート施工後は、該トップコートの溶射処理
終了直後に急冷するか、一旦冷却した後に再度加熱する
か、その後さらに再急冷する操作のいずれかの方法に従
う温度変化を付与することによって、トップコートのみ
に縦割れを発生させるようにすることを特徴とする熱遮
蔽皮膜の形成方法。 - 【請求項2】 アンダーコートおよびトップコートの溶
射に当たって、大気プラズマ溶射法、高速フレーム溶射
法もしくは減圧プラズマ溶射法のうちから選ばれるいず
れかの溶射法を用いる、ことを特徴とする請求項1に記
載の形成方法。 - 【請求項3】 アンダーコート用の耐熱合金は、Cr、N
i、Co、AlおよびYのうちから選ばれる2種以上の金属
元素を含む合金を用い、また、トップコート用のZrO2系
セラミックス材料は、Y2O3、CaO、CeO2、MgOおよびSiO2
から選ばれる少なくとも1種の酸化物を5〜40wt%含む
ものである請求項1に記載の形成方法。
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