JP4554762B2 - 耐高温酸化性に優れたラジアントチューブおよび製造方法 - Google Patents

耐高温酸化性に優れたラジアントチューブおよび製造方法 Download PDF

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Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、鋼材等を被処理材とする熱処理炉内に配設されるラジアントチューブの改良に係り、チューブ本体及びその内部構造部材であるバーナー等の高温被曝部表面に、耐熱性,密着性の高い溶射皮膜を設けて高温燃焼火炎,燃焼ガスによる酸化損耗や変形等を効果的に抑制防止し得るようにしたものである。
【0002】
【従来の技術】
鋼板,鋼管等の鋼材を被処理材とする熱処理炉に配設されるラジアントチューブは、その管路の端部に装着されたバーナからの燃焼火炎,燃焼ガスにより、約900〜1100℃に加熱されて赤熱状態となり、輻射熱を放出して炉内の被熱処理鋼材を所定温度に加熱する。ラジアントチューブおよびバーナーの材種として、Cr−Ni系耐熱鋳鋼(JIS
G5122 SCH 12, SCH 15,SCH 22,SCH 24等)からなる鋳鋼品が使用されている。
【0003】
ラジアントチューブはバーナで強熱され、熱応力による変形を不可避的に生じる。また燃焼ガスに含まれる高温の水蒸気,二酸化炭素等により、チューブ内面に酸化スケールを生成し、その剥離と生成が繰り返されることにより、肉厚は経時的に減少(酸化減肉)する。変形・酸化減肉は、燃焼火炎で直接熱せられる領域に生じ易く、酸化スケールの剥離・堆積が局所的に生じることによりチューブの偏熱・熱応力が増大することにより、チューブの変形が加速される。バーナーの燃焼用空気ノズルも、熱影響,酸化消耗による変形を生じ易く、その変形はチューブの局部加熱と酸化消耗現象を更に助長する原因となる。
【0004】
その改善策として、チューブ材料の高級化、特にCo,W,Nb等の多量添加により、耐高温酸化性,高温強度を高めることが試みられている。合金元素の多量添加は、高温強度を高め、実作業環境での変形による操業上の障害を抑制するのに有効ではあるが、材料費が高価となり、また耐高温酸化性についてはコスト増加に見合う程の効果は得られない。別法として、チューブ表面にクロム酸等を含む処理液を塗布・焼き付けすることによりCr膜を形成し、またはCo,Ni主成分とする合金の溶射皮膜を形成することにより、高温燃焼火炎からチューブを保護することが提案されている(特開平6-280043号公報、特開平6-281119号公報)。この溶射処理は耐熱性,耐酸化性の改善効果を奏するが、高温燃焼火炎の被曝部に対する耐高温酸化性については更に改良すべき余地がある。
【0005】
【発明が解決しようとする課題】
本発明者等は、特開平11-351518号公報において、Alまたは0.5〜15mass%のSiを含むAl−Si合金を高温被曝部に溶射施工することにより耐高温酸化性を改良したラジアントチューブを提供した。この溶射皮膜は、表面に緻密で熱的安定性の高いAl膜を生成し、高温燃焼雰囲気からチューブ基材への酸素透過を遮断し、基材の酸化消耗・変形を抑制防止する。
本発明は、この溶射皮膜の高温特性を維持しつつ、溶射皮膜とチューブ基材との界面の密着性を高めることにより、溶射皮膜の被覆保護機能を更に安定化することを目的としてなされたものである。
【0006】
【課題を解決するための手段】
本発明ラジアントチューブは、管端部にバーナーを備えたラジアントチューブのチューブ本体及び/又はバーナーの高温被曝部表面に、3〜35mass%のAlを含有するNi−Al合金からなる溶射皮膜をアンダーコートとして形成している
【0007】
本発明は、上記Ni−Al合金(Al含有量3〜35mass%)の溶射皮膜をアンダーコートとし、これに下記(a)(b)(c)から選ばれる金属からなる溶射皮膜をトップコートとして形成した多層の被覆保護構造が与えられる。トップコートは、(a)〜(c)のいずれか1種の溶射皮膜として、または2種以上の各金属からなる複数の溶射皮膜として形成される。
(a)Al
(b)0.5〜15mass%のSiを含有するAl−Si合金
(c)MCrAlX合金
但し、MCrAlX合金における、Cr含有量は5〜10mass%、Al含有量は1〜29mass%であり、MおよびXは次のように規定される。
【0008】
M:75mass%以下のNi,
70mass%以下のCo,
30mass%以下のFe
から選ばれる1種もしくは2種以上の元素。
【0009】
X:5mass%以下のY,
10mass%以下のHf,
1〜20mass%のTa,
0.1〜14mass%のSi,
0.1mass%以下のB,
0.25mass%以下のC,
10mass%以下のMn,
3mass%以下のZr,
5.5mass%以下のW,
5mass%以下のCs,
5mass%以下のCe,
5mass%以下のLa,
20mass%以下のPt
から選ばれる1種もしくは2種以上の元素。
【0010】
本発明のラジアントチューブ(チューブ本体およびバーナー等の付属部品を含む総称である)の表面に溶射施工されるNi−Al合金(Al含有量3〜35mass%)の皮膜は、加熱環境(実機使用に先立つ加熱処理又は実機使用環境)において、その合金中のAlがチューブ基材に拡散し、界面にAl−Fe金属間化合物層(Al−Fe,Al−Fe,Al−Fe等)を生成する。これにより溶射皮膜とチューブ基材との界面の冶金的結合が形成され、チューブ基材に対する保護膜としての機能の安定性が与えられる。
また、上記Ni−Al合金の溶射皮膜は、その膜面に緻密かつ熱的安定性の高いAl膜を生成することにより、チューブ基材への酸素の侵入を阻止し、酸化消耗,変形を抑制防止する。
【0011】
他方、上記Ni−Al合金の溶射皮膜をアンダーコートとし、これにトップコート(Al,Al−Si合金,MCrAlX合金の溶射皮膜)を形成した複層被覆構造の場合は、トップコートの溶射皮膜表面に、Al等の緻密かつ熱的安定性の高い酸化皮膜が生成することにより、チューブ基材に対する酸素侵入の阻止機能が一そう強化され、チューブ基材の酸化消耗、変形の抑制防止効果が増強される。
【0012】
更に、複層被覆構造におけるアンダーコート(Ni−Al合金溶射皮膜)は、前記のようにチューブ基材との界面に冶金学的結合を形成して溶射皮膜の密着性を強化する役割を有するのみならず、実機使用におけるトップコートの材質劣化(合金組成の変化,緻密性の低下)を抑制防止し、トップコートの機能を安定に保持せしめる働きを有する。
【0013】
すなわち、アンダーコートとしてのNi−Al合金溶射皮膜が存在しない場合は、実機での高温環境において、トップコートに含有されているAlがチューブ基材に過度に拡散移行することにより、トップコートの組成変化および緻密性の低下(皮膜の空洞化)をきたし、かつAlの拡散移行に伴ってチューブ基材界面のAl−Fe金属間化合物層が不必要に増加する。トップコートの変質(合金組成の変化,緻密性の低下)は、そのチューブ保護機能の劣化となり、Al−Fe金属間化合物(硬質脆性、かつ金属材に比し熱膨張率が小さい)の層厚増加は、界面の亀裂・剥離を助長する原因となる。アンダーコート(Ni−Al合金溶射皮膜)は、トップコートからのAl拡散を効果的に遅延させ、被覆保護膜としての溶射皮膜の機能を長期間に亘って安定化する。
【0014】
【発明の実施の形態】
Ni−Al合金のAl含有量は、3〜35mass%の範囲に規定される。3mass%以上とするのは、それに満たないとチューブ基材との密着性が不足するからであり、35mass%を上限とするのは、それを越えて増量する利益はなく、むしろ高温環境において、チューブ基材との界面のAl−Fe合金層が過度に生成する(界面の亀裂・剥離が助長される原因となる)からである。より好ましくは5〜20mass%である。
【0015】
上記Ni−Al合金溶射皮膜は、高温環境において緻密なAl膜を生成し、良好な耐熱性,耐酸化性を有するので、この合金だけを溶射施工した単層被覆構造とした場合にも、チューブ基材を高温酸化雰囲気から遮断し酸化損耗を抑制防止する保護膜として機能する
【0016】
本発明の複層被覆構造におけるアンダーコート(Ni−Al合金溶射皮膜)の膜厚は、30〜200μmの範囲とするのが適当である。30μmに満たない膜厚でも、チューブ基材との密着力は確保されるが、30μm以上の膜厚を与えることにより、バリアー層としての機能(トップコート成分の内部拡散阻止)が確保される。増厚と共にその効果を増すが、200μmを越える厚さとする利益はなく、コストの無駄である。
【0017】
複層被覆構造におけるトップコートは、Al,Al−Si合金,MCrAlX合金のいずれか1種の金属の溶射皮膜として、または2種以上の複数の溶射皮膜として形成される。
Alからなる溶射皮膜は、緻密で熱的安定性の高いAlを生成し、チューブ基材を酸化損耗から保護する。Alは99mass%以上の純度を有するもの(JISH4040合金番号1070,1050,1100,1200等に相応)が好ましい。これより低い純度では、混在する不純物によりトップコートとしての被覆保護効果が低下する。
【0018】
Al−Si合金は、緻密かつ耐熱性に優れたAlおよびSiOを生成し、チューブ基材を酸化損耗から保護する。Si含有量は0.5〜15mass%の範囲が適当である。Si含有量を0.5mass%以上とするのは、これに満たないと、良質のSiOの生成が不十分であり、15mass%を上限とするのは、これを越えると皮膜が脆弱となり、いずれも場合もトップコートとして所期の機能を十分に発現することができなくなるからである。この合金に付随する不純分は、前記Alと同じ理由により1mass%以下であることが望ましい。
【0019】
MCrAlX合金は、Al,Cr,等の緻密かつ耐熱性の高い酸化物を生成し、チューブ基材を酸化損耗から保護する。この溶射皮膜は、M元素(Ni,Co,Feの1種又は2種以上)の含有効果として、Ni−Al系,Co−Al系等の硬い金属間化合物を生成し、燃焼ガス中に含まれる微細なカーボン粒子などによるエロージョンに対して良好な抵抗性を示す。また、X(Y,Hf,Ta,Si,B,C,Mn,Zr,W,Cs,Ce,La,Ptの1種又は2種以上)の含有効果として、表面に生成するSiOの密着力及び機械的強度の向上等の膜質改善効果が得られる。
【0020】
トップコートの溶射膜厚は、耐久性を十分ならしめるために100μm以上であるのが好ましい。増厚に伴って耐久性は向上するが、800μmを越える厚さとする利益はなく、それ以上の増厚は経済性を損なう。複数種の溶射皮膜(Al溶射皮膜,Al−Si合金溶射皮膜,MCrAlX合金溶射皮膜の2種ないし3種)を重て形成する場合のトップコート膜厚は、その合計層厚が100〜800μmとなるように調整すればよい。
【0021】
ラジアントチューブ(チューブ本体およびバーナー等の付属部品)の材種は、従来より使用されている耐熱合金(JISG5122)、ステンレス鋼(SUS321等)が適宜使用される。チューブ基材への溶射施工に際しては、溶射技術の常法に従って、溶射皮膜の密着性を高めるための粗面化及び表面の付着異物を除去し清浄化するための予備処理としてブラスト処理が適宜実施される。
溶射施工は、溶射材料に応じた適宜の溶射法を用いて行なわれる。例えば、Ni−Al合金の溶射にはアーク溶射、Al、Al−Si合金の溶射には、アーク溶射,フレーム溶射等、またMCrAlX合金の溶射にはプラズマ溶射等が好ましく適用される。
【0022】
溶射施工された皮膜は、そのままでは比較的多孔質である。この膜質を緻密化することは、溶射皮膜の保護機能を高めるのに有効である。緻密化処理は、Alの融点(660℃)以上の温度域(約700〜850℃)に適当時間(約0.5〜10Hr)保持する加熱処理により達成される。なお、加熱処理は、ラジアントチューブの実機据付け前に実施する必要は必ずしもない。熱処理炉の運転立上げ時の常温から加熱昇温される過程で、上記と同じ加熱効果を得ることもできるからである。
【0023】
上記加熱処理を施される溶射皮膜、予めその表面を耐熱性樹脂塗膜で気密に被覆しておくのが好ましい。耐熱性樹脂塗膜により溶射皮膜の気孔内への空気侵入とそれによる品質劣化を回避しつつ溶射皮膜の緻密化を達成することができるからである。耐熱性樹脂塗膜は、加熱処理(溶射皮膜の緻密化処理)における一時的なバリアー層として機能するものであればよい(熱処理後の塗膜の残存は不要である)。好ましい塗料として、珪素系樹脂塗料、瀝青質系樹脂塗料が挙げられる。これにAl粉末を適量(約0.5〜10mass%)添加した塗料を使用する場合は、Alが熱処理過程で溶融して溶射皮膜と融合し、溶射皮膜の耐高温酸化性を強化する。塗膜の形成はスプレー塗布,浸漬法等により行なわれる。膜厚は5〜150μm程度であればよい。
【0024】
図1および図2はラジアントチューブを模式的に示している。図1は、直管部(11)(12)(13)(14) と曲管(21)(22)(23) とが溶接により交互に連結されたW字型の管路を有し、図2は直管(11)(12)と曲管(21)が連結されたU字型管路を有する例であり、管路の一端側にバーナー(B)を備えている。図のバーナー(B)は、外側の管を燃焼用空気ノズルとし、内側の管から燃料を噴射する二重管構造であるが、燃焼用空気ノズルとして複数本の細管を燃料噴射管と平行に配置される場合もある。溶射施工はバーナーの直接的な強熱作用を受ける領域等の高温被曝部に行なう。例えば、バーナーが設置される管端部の直管(11)等として溶射施工された管体、燃焼用空気ノズルとしてその外周面に溶射施工されたもの等が使用される。溶射施工領域はこれに限定されず、実機使用条件に応じて適宜選定される。
【0025】
【実施例】
[Ni-Al合金等の溶射皮膜の耐熱特性の評価]
本発明におけるアンダーコート材であるNi−Al合金の溶射皮膜の耐熱特性を他種材のそれと対比し評価した。
(1)供試材の調製
(i)高温酸化試験用供試材:ステンレス鋼(SUS321)の丸棒状試験片(直径15mm×長さ50mm)の全面をアルミナ粒子でブラスト処理し、アーク溶射法でNi−Al合金の溶射皮膜を形成したのち、皮膜表面に樹脂塗膜を塗布する。
(ii)熱衝撃試験用供試材:耐熱鋼(0.3 C-23.0Cr-13.0Ni-0.8Nb-Fe,mass%)の板状試験片(幅50mm×長さ50mm×厚さ5mm)の片側表面をアルミナ粒子でブラスト処理し、アーク溶射法でNi−Al合金の溶射皮膜を形成したのち、皮膜表面に樹脂塗膜を塗布する。
【0026】
(2)高温酸化試験
供試材を1050℃の酸化雰囲気炉中に600Hr保持し、試験後の「酸化増量」および「拡散層深さ」を測定する。
(3)熱衝撃試験
供試材を電気炉(大気雰囲気)で加熱(950℃×30min)した後、炉外に取出し水中に投入する加熱/冷却を1サイクルとし、30サイクル反復実施する。試験後、溶射皮膜の亀裂・剥離の発生状況、および試験後の皮膜内部の性状を光学顕微鏡で観察する。
【0027】
表1に、各供試材の溶射皮膜構成および試験結果を示す。
表中、「発明例」は本発明の複層被覆構造におけるアンダーコートとなるNi−Al合金の溶射皮膜の例であり、「比較例」は本発明のアンダーコートの規定から外れた溶射皮膜の例である。
「高温酸化試験結果」欄の「酸化増量」は供試材の試験後の重量増加量、「拡散層深さ」は試験後のAl−Fe合金層の層厚を示している。なお、比較例No.11はNi−Al合金溶射皮膜のAl含有量が不足し、No. 12は過剰のAlを含有している例、No.13およびNo.14は従来の代表的な耐熱性溶射材料を使用した例である。
【0028】
【表1】
Figure 0004554762
【0029】
この結果から明らかなように、比較例No.13,No.14(従来材溶射施工)は、基材への拡散層深さは小さいものの、酸化増量が多いほか、皮膜が剥離し、微細な亀裂が多数発生している。また、比較例No.11(Ni−Al合金溶射)は、Al含有量の不足のため、皮膜が剥離すると共に、大きな亀裂が発生し、No.12(Ni−Al合金溶射)は、皮膜の剥離・亀裂は認められないが、Al含有量が過剰のため、拡散層の成長が顕著である。
これに対し、発明例では、酸化増量、拡散層深さともに比較的小さく、皮膜の剥離、亀裂の発生は全く認められず、健全な皮膜性状を維持している。
【0030】
[実施例](複層被覆保護構造)
(A)耐高温酸化性の評価
(1)供試材の調製
ステンレス鋼(SUS321)の丸棒状試験片(直径15mm×長さ50mm)の全面をアルミナ粒子でブラスト処理したうえ、アンダーコート(Ni-Al合金)及びトップコート(Al,Al-Si合金, MCrAlX合金)を溶射施工し、その後トップコート表面に珪素系耐熱樹脂塗料を塗布して供試材を得る。なお、トップコートは一層施工と複数層施工の2通りとした。アンダーコートのNi-Al合金はアーク溶射、トップコートのAlはアーク溶射、Al-Si合金および MCrAlX合金はプラズマ溶射により施工した。比較例として、アンダーコートの溶射施工を省略した点を除いて上記と同一条件による供試材を用意した。
【0031】
(2)高温酸化試験
各供試材を、1050℃の酸化雰囲気炉中に600Hr保持し、試験後の「酸化増量」および「拡散層深さ」を測定する。
表2および表3に、各供試材の溶射皮膜構造および高温酸化性試験結果を示す。 表中の「酸化増量」は供試材の試験後の重量増加量、「拡散層深さ」は試験後のAl−Fe合金層の層厚である。
【0032】
【表2】
Figure 0004554762
【0033】
【表3】
Figure 0004554762
【0034】
表2および表3に記載した発明例と比較例とを対比すると、発明例の酸化増量は比較例のそれに比し少量であり、特に拡散層の深さの増加は、比較例より著しく微量である。この相違は、アンダーコート(Ni−Al合金溶射皮膜)の有無による。発明例の上記物性の改善効果は、アンダーコート(Ni−Al合金溶射皮膜)がバリアー層として働き、トップコートから基材へのAlの拡散浸透が抑制防止されることにより得られる。
【0035】
また、光学顕微鏡観察によれば、比較例は溶射皮膜(特にトップコート)の空洞化現象(Alの拡散消失による)が認められるのに対し、発明例には殆どなく健全な緻密性を保持している。この相違もアンダーコート(Ni−Al合金皮膜)の有無に基づくものであり、このことは下記の「熱衝撃試験」に示すように、溶射皮膜の密着性に顕著な相違をもたらす。
【0036】
(B)耐熱衝撃性の評価
(1)供試材の調製
耐熱鋼基材(0.3
C-23.0Cr-13.0Ni-0.8Nb-Fe,mass%)から切出した板状試験片(幅50mm×長さ50mm×厚さ5,mm)の片側表面をアルミナ粒子でブラスト処理したうえ、アンダーコート(Ni-Al合金)及びトップコート(Al,Al-Si合金,MCrAlX合金)を溶射施工し、更にトップコートの表面に珪素系耐熱樹脂塗料を塗布して供試材を得る。
【0037】
比較例として、アンダーコートの溶射施工を省略し、トップコートとして、(イ)発明例のトップコートと同一材種の溶射皮膜、(ロ)耐熱性溶射材料である80%Ni−20%Cr合金(mass%)から溶射皮膜、(ハ)耐熱性溶射材料である9%Ni−18%Cr−Fe合金(mass%)から溶射皮膜を400μm厚に施工したものを用意した。
【0038】
(2)熱衝撃試験
電気炉(大気雰囲気)中で950℃×30minの加熱を行なった後、炉外に取出し水中に投入する加熱/冷却の操作を1サイクルとして、30サイクル反復実施する。加熱/冷却の反復過程における溶射皮膜の亀裂・剥離の発生状況、および試験後の皮膜内部(Al-Fe金属間化合物層)の性状を光学顕微鏡により観察した。
表4および表5に、各供試材の溶射皮膜構造および熱衝撃試験結果を示す。
【0039】
【表4】
Figure 0004554762
【0040】
【表5】
Figure 0004554762
発明例と比較例とを対比すると、比較例No.71〜73(表4)及び比較例No.91〜93(表5)は、溶射皮膜の剥離はないものの、皮膜の内部(Al-Fe金属間化合物層)に微細亀裂が多数発生している。この亀裂発生はアンダーコート(Ni-Al合金皮膜)がないために、トップコートから基材内部に対するAlの選択的な拡散浸透を生じ、Al−Fe金属間化合物(硬耐熱鋼基材に比し熱膨張率が小さい)の成長に起因して、基材との間に大きな熱応力ガ発生したことによると考えられる。これらの試験片は全て熱変形していたことから、内部亀裂の発生に熱応力も大きな影響を与えていると考えられる。
【0041】
従来の耐熱性溶射材を用いた比較例No.74および75(表4)は、加熱/急冷6サイクル目で既に皮膜の一部に剥離をきたし、試験終了時点では皮膜の大部分が剥離している。また皮膜内部に多数に微細亀裂が多数発生している。この皮膜剥離と内部亀裂の多数発生は、溶射皮膜自体の基材に対する密着性、耐高温酸化性に欠けることによる。
【0042】
他方、発明例はいずれも皮膜の剥離がなく、内部亀裂の発生はNo.61(表4)において1個所認められたのみであり、良好な密着性を有している。これは、トップコートの溶射皮膜が耐高温酸化性に優れていると共に、アンダーコートが存在することによるバリアー効果(トップコートから基材へのAlの選択的拡散浸透の抑制効果)に依存するものである。
【0043】
【発明の効果】
本発明のラジアントチューブを構成するチューブ本体およびバーナー等の付属部品は、溶射皮膜による被覆保護効果として、高温酸化雰囲気に対する卓抜した酸化抵抗性を有する。その溶射皮膜はチューブ基材に強固に密着結合しており、熱衝撃等を受けても容易に剥離することがない。本発明のラジアントチューブは、長期に亙って安定に使用することができ、そのメンテナンスの軽減,熱処理炉の操炉効率の改善、被加熱処理材の加熱品質の向上、生産性向上等に大きな寄与をなすものである。
【図面の簡単な説明】
【図1】ラジアントチューブを示す断面図である。
【図2】ラジアントチューブを示す断面図である。
【符号の説明】
11〜14: 直管
21〜23: 曲管
A:燃焼用空気ノズル
B:バーナ

Claims (3)

  1. 管端部にバーナーを備えたラジアントチューブのチューブ本体及び/又はバーナーの高温被曝部表面に、
    アンダーコートとして3〜35mass%のAlを含有するNi−Al合金からなる溶射皮膜を形成し、
    これにトップコートとして、下記(a)(b)(c)のいずれか1種の金属からなる溶射皮膜または2種以上の金属からなる複数の溶射皮膜を形成してなる耐高温酸化性に優れたラジアントチューブ。
    (a)Al
    (b)0.5〜15mass%のSiを含有するAl−Si合金
    (c)MCrAlX合金
    但し、MCrAlX合金における、Cr含有量は5〜10mass%、Al含有量は1〜29mass%であり、MおよびXは下記の元素を表している。
    M:75mass%以下のNi,70mass%以下のCo,30mass%以下のFeから選ばれる1種もしくは2種以上の元素、
    X:5mass%以下のY,10mass%以下のHf,1〜20mass%のTa,0.1〜14mass%のSi,0.1mass%以下のB,0.25mass%以下のC,10mass%以下のMn,3mass%以下のZr,5.5mass%以下のW,5mass%以下のCs,5mass%以下のCe,5mass%以下のLa,20mass%以下のPtから選ばれる1種もしくは2種以上の元素。
  2. アンダーコートの溶射皮膜厚さは30〜200μm、トップコートの溶射皮膜厚さ(複数種の溶射皮膜からなる場合は合計膜厚)は100〜800μmである請求項1に記載の耐高温酸化性に優れたラジアントチューブ。
  3. アンダーコート及びトップコートを溶射施工した後、溶射皮膜の表面を、珪素系または瀝青質系樹脂塗膜で気密に被覆したうえ、300〜800℃の温度域で加熱処理することにより溶射皮膜を緻密化する請求項1又は請求項2に記載の耐高温酸化性に優れたラジアントチューブの製造方法。
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