JP3866911B2 - 防食溶射被覆部材およびその製造方法 - Google Patents

防食溶射被覆部材およびその製造方法 Download PDF

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Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、海水、塩分などに対して優れた耐食性を示すアルミニウム系の防食溶射被覆部材およびその製造方法に関するものである。
本発明の技術は、重工業地帯、田園地帯、都市などに建設される鋼構造物や産業機械用部材あるいはアルミニウムやその合金部材の耐食性を保障するための被覆としても利用できるものである。
【0002】
【従来の技術】
橋梁、建築用鉄骨、塔槽類などに用いられる鋼材の多くは、自然環境下において赤さびを発生して損耗する。特に、大気中に硫黄酸化物(SOx) や窒素酸化物(NOx) の含有量が多い重工業地帯に建設される鋼構造物は、酸性雨などによる腐食作用を強く受けるものであり、また海洋気象地域に構築されている鋼構造物は、海水や海塩粒子による腐食により著しく損耗することが知られている。
そのため、これらの鋼構造物には通常、何らかの防食表面処理を施して、腐食を抑制する工夫がされている。その代表的なものとして、塗装処理あるいは溶融亜鉛めっき処理や溶融アルミニウムめっき処理などがある。
その他の防食法としては、炭素鋼の表面に溶射法によって、電気化学的に卑な電位を示す亜鉛やアルミニウムまたはそれらの合金類の溶射皮膜を形成する方法もある。例えば、JIS H8300 (1999)亜鉛・アルミニウムおよびそれらの合金溶射として制定されている。
【0003】
こうした溶射による防食技術は、そもそもZn, Alおよびそれらの合金類の皮膜それ自身が優れた耐食性を発揮することと、たとえ皮膜の一部が損耗して基材が露出したとしても、残存する皮膜金属が電気化学的に鋼基材を保護する性質 (犠牲陽極作用) を有することを利用したものである。なお、これらの溶射皮膜の表面に対しては、さらに塗装を施して長期間にわたる耐久性を保持させる、いわゆる重防食処理を施す例が多い。
しかしながら、最近の鋼構造物については、新しく建築されるものに加え、既存の鋼構造物の保守点検にも莫大な人手と経費を必要とするようになっており、従来の上述した考え方による鋼構造物への防食技術だけでは対処できなくなっているのが実情である。
【0004】
【発明が解決しようとする課題】
鋼構造物に施されている塗装や、ZnやAlなどの金属溶射皮膜による従来防食技術は、ある程度の防食作用は認められるものの、周期的な塗り替えや、溶射皮膜の場合、多孔質であることから、再施工を行う必要がある他、次のような問題点もあった。
(1) 基材に対して電気化学的に卑な電位をもつZn, Alおよびそれらの合金などを用いた溶融皮膜は、犠牲陽極作用によって鋼構造物を保護する方法であり、鋼構造物基材の腐食をある程度抑制できるものの、一方でZn, Al金属皮膜の側から見れば、これらが早く損耗することを意味しており、再溶射を頻繁に行わねばならないという問題点があった。
(2) とくに溶射皮膜の場合、多孔質となるため、重工業が多いことに加え海岸線の長い我が国のよな地域では、SOx, NOxの腐食作用に加え、塩害の影響をうけやすく、そのために鋼構造物の腐食損耗速度が大きいという問題点があった。
【0005】
本発明の目的は、海水や塩分、さらにはNOx やSOx などの腐食性ガスに対する耐久性に優れた溶射被覆部材を提供することにある。
本発明の他の目的は、耐塩水特性等に優れた溶射被覆部材を安価にかつ確実に製造する方法を提案することにある。
【0006】
【課題を解決するための手段】
本発明は、上述した課題を次のような技術的手段の採用によって解決するものであり、とくに、Al, Al−Zn, Al−Mg合金のように、純AlもしくはAlを含む合金からなる溶射材料を、熱源温度の高い電気アーク溶射法によって、さらに溶融微粒子の飛行速度を制御 (抑制) することによって、溶射粒子の少なくともその一部をその溶射処理の過程で酸化させ、酸化物を多く含む粒子が分散した状態の溶射皮膜を形成する技術である。
【0007】
このようにして形成された溶射皮膜は次に示すような特徴を発揮する。
(1) 酸化された多くのAl酸化物溶射粒子を含むので、酸化物を含まない溶射皮膜に比較すると、耐食性に優れている。
(2) 酸化された多くのAl酸化物溶射粒子を含むので、酸化物含有量の少ない皮膜に比較すると、腐食電位が貴側にある。しかし、鋼鉄製基材に対しては卑な電位を示す性質は維持している。
(3) 上記の酸化物を多く含むAlもしくはAl合金溶射皮膜は、鋼鉄製基材を電気化学的に保護 (犠牲陽極作用) するが、従来技術による酸化物含有量の少ない溶射皮膜に比較すると、鋼鉄製基材との電位差が小さいので、犠牲陽極反応によって溶解する皮膜量が少なく、同一の膜厚であれば、保護作用を長期間にわたって維持する。
【0008】
このような知見の下に開発した本発明の要旨構成は次のとおりである。
(1) 鋼鉄製基材の表面に、1.2 〜3.0 wt%の酸素を含むアルミニウムもしくはアルミニウム合金溶射被膜が、40〜2000μm の厚さで被覆されていることを特徴とする防食溶射被覆部材である。
(2) 鋼鉄製基材の表面に、1.2 〜3.0 wt%の酸素を含むアルミニウムもしくはアルミニウム合金溶射被膜と、1.2 wt%未満の酸素を含むアルミニウムもしくはアルミニウム合金溶射被膜とが交互に積層被覆されていることを特徴とする防食溶射被覆部材である。
(3) 鋼鉄製基材の表面にアルミニウムもしくはアルミニウム合金の溶射材料の間に電気アークを発生させることにより、該溶射材料を溶融微粒化すると同時に、その溶融微粒子を、圧縮空気あるいは圧縮酸素によって60〜150 m/s の速度で飛行させることで少なくともその一部が酸化する雰囲気下で付着させ、AlO粒子を含む全酸素量が1.2 〜3.0 wt%であるアルミニウムもしくはアルミニウム合金溶射皮膜を40〜2000μm の厚さに形成することを特徴とする防食溶射被覆部材の製造方法である。
(4) なお、本発明において、上記アルミニウムもしくはアルミニウム合金溶射皮膜には、アルミニウム酸化物を含有すると共に、そのアルミニウム酸化物は溶射処理の過程で生成させたものであることが好ましい。
【0009】
【発明の実施の形態】
一般に、亜鉛やアルミニウムあるいはこれらの合金の溶射皮膜は、鋼構造部材の防食用表面処理被覆として使用されている。これらが防食被覆として用いられる理由は、これらの皮膜が次のような作用機構を有するからである。
その第一は、亜鉛やアルミニウムあるいはこれらの合金の溶射皮膜は、自然界の清浄な大気中では、その表面に緻密で耐食性に優れた塩基性炭酸塩の薄膜を形成して、溶射皮膜の損耗を防ぐ作用を有するからである。
その第二は、例えば溶射皮膜が局部的に損耗して鋼基材面が露出したり、皮膜の気孔部を通して雨水や海水が内部へ浸入した場合、電気化学的に卑な亜鉛やアルミニウムあるいはこれらの合金皮膜が犠牲陽極となって溶出し、鋼基材の腐食損耗を積極的に防ぐところにある。
【0010】
このような知見の下に開発した本発明の特徴を要約して説明すると、アルミニウムおよびアルミニウム合金 (アルミニウムを含むもの)の溶射皮膜中に、空気もしくは酸素雰囲気下の溶射熱源中で溶射粒子 (溶滴) を酸化して得られるAl酸化物微粒子を分散含有させることにより、アルミニウムおよびアルミニウム合金皮膜の電極電位を上げて (貴な方向へ移動) 、該溶射皮膜そのものの耐食性を向上させた点の構成にある。
このように、溶射粒子の表面の少なくとも一部が酸化性雰囲気中での溶射処理によって酸化した微粒子を含む該溶射皮膜中には、主としてAlOが生成しているが、この酸化物はそれ自体耐食性に優れているため、重工業地帯での腐食原因となっているNO, SOをはじめこれらの成分を含む (溶解した)酸性雨に対しても強い耐食性を発揮する。
【0011】
一方で、AlOの微粒子を分散含有する溶射皮膜が、もし何らかの原因で、鋼基材に達する損傷を受けた場合や、皮膜の気孔部を通して海水などが浸入してきたときには、該溶射皮膜中の金属Alが犠牲陽極作用によって鋼基材を防食する作用を発揮する。
【0012】
ただ、本発明に係る溶射皮膜については、マトリックスであるAl、Al合金中にAlO等のアルミニウム酸化物の微粒子を分散含有しているため、純Alと比較すると、貴な電位を示すため、鋼基材との電位差は必然的に小さくなる。しかし、鋼基材より卑であるから、犠牲陽極作用は十分に発揮できる状態にある。
例えば、5wt% NaCl 水溶液中で銀/塩化銀電極を参照電極としてそれぞれの腐食電位を測定すると、次の通りである。
(1) Al溶射皮膜=−0.7V
(2) Al溶射皮膜 (AlOを多量に含む本発明皮膜) −0.65V
(3) 鋼基材 −4.5V
【0013】
この測定結果から明らかなように、従来技術の場合、鋼基材とAl溶射皮膜との間には、2.5Vの電位差があるので、Al溶射皮膜がアノードとなって、鋼基材を防食する。一方、本発明に係る上記溶射皮膜も、鋼基材とAlO酸化物微粒子入りAl溶射皮膜との間には2.0Vの電位差があるので、十分な防食作用を発揮する。この点、本発明に係る溶射皮膜を使用すると、上記従来溶射皮膜に比較して電位差が小さい値を示すので、むしろアノードとしての溶出速度が小さくなり、鋼基材を長期間にわたって安定して防食することができるようになる。
【0014】
要するに、本発明の考え方の一端は、鋼基材表面に被覆する溶射皮膜について、それが基材の電位に比較して卑であることが必要な条件となるものの、両者の電位差を必要最小限にとどめることで、その分だけ長期間にわたって安定した防食作用を発揮するように工夫することにある。
【0015】
次に、本発明において、溶射皮膜中にAlO等の酸化物微粒子を分散含有させる方法としては、次に示すような手段を採用することが好ましい。それは、AlまたはAl合金の溶射材料を用いて、この材料が溶射熱源中を飛行する際に、AlO酸化物が多く含まれるような溶射条件を採用することによって成膜することである。この点について、一般に、AlO微粒子を予め添加した溶射材料をつくり、この材料を溶射して成膜する方法もあるが、本発明は、前者の、いわゆる溶射処理中にAlO等の酸化物微粒子を生成させる方法を採用する。
その理由は、AlまたはAl合金溶射材料は市販されているため、入手が容易であるうえ、安価だからである。
以下、その本発明に適合する溶射処理の方法について説明する。
【0016】
プラズマ溶射法と言われる溶射法は、理論的には数万度に達する熱源をもっているが、この方式で溶射しても、Al皮膜中に含まれる酸化物含有量はせいぜい0.5 〜0.8 wt%程度である。
発明者らは、この原因について研究した。その結果、溶射用として市販されている装置が発生するプラズマジェットの温度は、5000〜7000℃の高温環境にあるが、プラズマジェットの速度が非常に大きいため (通常350 〜700m/s) ため、溶射粒子が空気と接触する時間が極めて短く、そのために酸化物を生成するに十分な時間が与えられていないのである。
そのうえ、プラズマジェット中には多数の電子が存在しているため、還元環境も構成されており、酸化が抑制される傾向にある。
【0017】
これに対し、可燃性ガスの燃料エネルギーを熱源とするフレーム溶射法では、フレームの速度は遅くなるが熱源温度が低くなるため (1800〜2200℃) 酸化物含有量の少ない溶射皮膜となり、本発明が求めているような溶射皮膜とはならないのが普通である。
【0018】
そこで、本発明では、熱源温度は高くする一方で、その中を飛行して鋼基材の表面に衝突する溶射粒子の飛行速度を遅くすることにより、この飛行期間中に粒子の酸化が容易に進行する条件を検討した。
具体的には、溶射材料を線状とし、この2本の線状溶射材料間に直流を印加してアークを発生させ、そのアーク熱によって材料を溶融させる。ここで、溶融した材料は微粒子 (溶滴) となるので、これを圧縮空気または圧縮酸素等からなる酸化性雰囲気に保持したまま鋼基材表面に吹き付け、溶射皮膜を形成するのである。
【0019】
本発明は、このような溶射方法 (一般に、アーク溶射法と呼ばれている方法)について、直流電圧30V 以上を印加し、粒子の飛行速度を60〜160m/sに制御することによって、酸化物の含有量が高い溶射皮膜を形成する方法である。
なお、近年の溶射技術は、高速フレーム溶射法に代表されるように、熱源や溶射粒子の飛行速度を高温・高速化することによって、粒子の基材表面への衝突エネルギーを増大させ、それによって緻密で密着力の強い溶射皮膜とする傾向にあるが、これに対して本発明に係る溶射方法は、溶射粒子の飛行速度をむしろ遅くすることが特徴となっている。
【0020】
本発明において重要なことは、上述したように、特定雰囲気中での溶射材料の溶融粒子の飛行速度を制御することである。即ち、その速度が60m/s よりも遅くなると、粒子の酸化反応はよく進むものの、皮膜になったときの、粒子間結合力が弱く、しかも鋼鉄製基材との密着力が低下するので好ましくない。一方、粒子の飛行速度が160m/sを超えると、溶射皮膜は緻密となり、粒子間結合力や基材との密着性は向上するが、酸化物含有量が少なくなるので、本発明で求めるような皮膜にはならない。
【0021】
上述したような方法の実施によって形成される本発明に係る溶射皮膜中は、AlO等の酸化物特徴粒子 (0.01〜0.1 μm程度) が含まれることになるが、その含有量は、全酸素量に換算して1.2 〜3.0 wt%の範囲がよい。この理由は、全酸素量が1.2 wt%未満の溶射皮膜では、従来の皮膜に比較して貴な電位を示すものの、その差が僅かであるため (0.01〜0.02V)、本発明の機能を十分に発揮することができないからであり、一方、全酸素量が3.0 wt%以上の溶射皮膜を形成させることは、上述したアーク溶射法の下では困難を伴う。
【0022】
なお、溶射皮膜中の酸素は、金属Al溶射材料を用いた場合は、AlO、Zn−Al合金の場合はZnO 、AlO、Al−Mg合金の場合はAlO、MgO 、Al−Si合金ではAlOとSiOなどが主成分であるが、防食技術上酸化物を区別する必要がないため、本発明では全酸素含有量として表示することとした。
また、本発明に係る溶射皮膜は、鋼鉄製基材の表面に対し、40〜2000μmの厚さ、特に80〜300 μm厚さに施工することが好ましい。それは、40μm以下の厚さでは、均等で緻密を皮膜が得られにくいうえ、腐食損耗による寿命が短くなり、一方、その厚さを2000μm以上にしても、効果が飽和する一方でコスト高となるからである。
【0023】
さて、本発明に係る酸素含有量の多い溶射皮膜は、鋼鉄製基材の表面に直接施工することを原則とするが、全酸素含有量の異なるAl、Al−Zn、Al−Mg合金、Al−Si合金などの溶射皮膜を、二層以上に亘って積層することもできる。
【0024】
さらに、本発明では、電気アーク溶射する際に、2本の線状溶射材料を用いて直流を通電する。このとき、一方の線をAl、他の線をZnのように異質な溶射材料を用いて形成される溶射皮膜についても、Al−Zn合金または不完全な合金の集合体から構成されるが、このような溶射皮膜であっても、全酸素量が1.2 〜3.0 wt%の範囲であれば、本発明に適合する溶射皮膜としての特性を発揮することができる。
【0025】
【実施例】
この実施例は、溶射条件を調整することによって、皮膜中の酸素含有量として、1.2 〜2.5 wt%を含む本発明に適合する溶射皮膜を、SS400 基材 (幅50mm×長さ100mm ×厚さ5mm) の表面に、250 μmの厚さに形成した後、JIS Z 2371制定の塩水噴霧試験を連続5000時間実施して、その耐食性を調査した結果の説明である。
比較例の溶射皮膜として、無処理のままのSS400 基材の例、および同じ溶射材料を用いて通常の条件、すなわち溶射皮膜中の全酸素含有量が 0.5〜1.0 wt%となる溶射条件で成膜した溶射皮膜を250 μmの厚さに形成した例について、塩水噴霧試験を行った。
表1は、これらの結果をまとめたものである。比較例である無処理のSS400 基材は、24時間の塩水噴霧試験によって全面赤さびが発生したが、その他の比較例の皮膜は、白さびの発生は認められるものの赤さびは見られず優れた耐食性を発揮した。これに対し本発明の皮膜 (No. 1,2,3)も、酸化物を多量に含んでいるが5000時間の塩水噴霧試験によっても、赤さびの発生は認められず、JIS H8661 −(1999)制定の耐食性試験では従来の方法で形成された溶射皮膜と同等の耐食性を有し、両者間に差は認められなかった。
【0026】
【表1】
Figure 0003866911
【0027】
実施例2
この実施例では、実施例1の要領で作製した溶射皮膜試験片を用いて、3wt%NaCl、30℃、空気飽和の条件の食塩水溶液を満たした容量1リットルのビーカ中に90日間浸漬し、水溶液中の溶出したAl量を化学分析法によって求めるとともに試験片の表面の変化を観察した。
表2はこれらの結果をまとめたものである。この結果から明らかなように、3wt%NaCl水溶液中に90日間 (2160h)浸漬しても、何れも白さびの発生は認められるものの、赤さびの発生は全く見られず、優れた耐食性を発揮していることがわかった。
ただ、食塩水溶液中へのAl溶出量には明瞭な差が見られ、比較例の皮膜が90〜110g/mであったのに対し、本発明適合例は、8〜15g/mの範囲にとどまっており、非常に溶出しにくいことが判明した。
すなわち、本発明適合例はSS400 基材を防食しつつ、溶出はするものの、その量が非常に少ないため、比較例よりも長期間にわたって防食作用を維持することができると推定される。
【0028】
【表2】
Figure 0003866911
【0029】
実施例3
この実施例では、全酸素含有量の異なる複数層からなるアルミニウム、アルミニウム合金溶射皮膜を積層したSS400 試験片を用いて、JIS Z 2371規定の塩水噴霧試験を5000時間連続して実施し皮膜の外観変化を調査した。
供試溶射皮膜試験片(皮膜厚さアンダーコート100 μm/トップコート100 μm) は以下のものを用いた。
▲1▼アンダーコートAl (酸素含有量2.3 %) /トップコートAl(酸素含有量0.6%)
▲2▼アンダーコートAl−5Mg (酸素含有量2.2 %) /トップコートAl−5Mg(酸素含有量0.7 %)
▲3▼アンダーコートAl (酸素含有量2.3 %) /トップコートAl−5Mg(酸素含有量2.2 %)
上記の5000時間経過後の溶射皮膜の表面は、何れも白さびの発生は認められるものの赤さびは全く見られず、酸素含有量の異なる複数種の溶射皮膜を積層した場合も、耐食性には全く影響を与えないことが判明した。
【0030】
【発明の効果】
以上説明したように、本発明によれば、アルミニウム、アルミニウム−亜鉛合金、アルミニウム−マグネシウム合金溶射皮膜中に、全酸素量にして1.2 wt%〜3.0 wt%に当る酸化物微粒子を含有させることで皮膜が鋼鉄製基材に対して卑な電位を示すように調整してある。従って、該基材が電気化学的に効果的に保護されるとともに、皮膜それ自体も耐食性を発揮して食塩水溶液中への溶出量が非常に少なくなり、それ故に基材の腐食を長期間にわたって防止することができる。その結果として、本発明に適合する溶射皮膜を施工した鋼鉄製基材は、メンテナンスフリーの期間を延長することができ、ひいては設備、補修費の節減に寄与するところが大きいと言える。

Claims (4)

  1. 鋼鉄製基材の表面に、1.2 〜3.0 wt%の酸素を含むアルミニウムもしくはアルミニウム合金溶射被膜が、40〜2000μm の厚さで被覆されていることを特徴とする防食溶射被覆部材。
  2. 鋼鉄製基材の表面に、1.2 〜3.0 wt%の酸素を含むアルミニウムもしくはアルミニウム合金溶射被膜と、1.2 wt%未満の酸素を含むアルミニウムもしくはアルミニウム合金溶射被膜とが交互に積層被覆されていることを特徴とする防食溶射被覆部材。
  3. 上記アルミニウムもしくはアルミニウム合金溶射皮膜には、アルミニウム酸化物を含有すると共に、そのアルミニウム酸化物は溶射処理の過程で生成させたものであることを特徴とする、請求項1または2に記載の防食溶射被覆部材。
  4. 鋼鉄製基材の表面にアルミニウムもしくはアルミニウム合金の溶射材料の間に電気アークを発生させることにより、該溶射材料を溶融微粒化すると同時に、その溶融微粒子を、圧縮空気あるいは圧縮酸素によって60〜150m/s の速度で飛行させることで少なくともその一部が酸化する雰囲気下で付着させ、AlO粒子を含む全酸素量が1.2 〜3.0 wt%であるアルミニウムもしくはアルミニウム合金溶射皮膜を40〜2000μm の厚さに形成することを特徴とする防食溶射被覆部材の製造方法。
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