JP3090187B2 - 防汚用常温亜鉛溶射被覆および該溶射被覆の防汚管理方法 - Google Patents

防汚用常温亜鉛溶射被覆および該溶射被覆の防汚管理方法

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JP3090187B2 JP08137432A JP13743296A JP3090187B2 JP 3090187 B2 JP3090187 B2 JP 3090187B2 JP 08137432 A JP08137432 A JP 08137432A JP 13743296 A JP13743296 A JP 13743296A JP 3090187 B2 JP3090187 B2 JP 3090187B2
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Description

【発明の詳細な説明】
【0001】
【発明の属する技術分野】本発明は、海水と接触する構
造物(干満帯を含む)の界面に付着する海生生物の着生
抑制あるいは防止に関する。詳しくは、海洋または港湾
鉄鋼構造物(施設)の海水と接する該構造物(干満帯を
含む)の表面に防汚性金属からなる被覆を施して海生生
物の付着抑制あるいは防止するための防汚用常温亜鉛溶
射被覆および該溶射被覆の防汚管理方法に関する。
【0002】
【従来の技術】海水と接する鉄鋼構造物(施設)は、海
水腐食と海生生物の付着によるトラブルに悩まされ、そ
れが対策に多大の人的あるいは物的資質が投じられてい
る。しかし、該構造物の腐食防止対策は、耐食材料、塗
装、ライニングもしくは電気防食といった防食技術の進
歩により、今日ほぼ満足し得るレベルにある。
【0003】一方、海生生物付着防止(以下、防汚とい
う)技術も種々研究が進められ既に実用化されているも
のも多い。例えば、塩素や次亜塩素酸塩の生成・投入、
銅・錫等の毒物含有防汚塗料の塗布、銅や銅合金等の防
汚金属の被覆あるいは海水電解による塩素イオンや銅イ
オンの生成、無毒性イオン生成金属(主として鉄鋼)の
陽極活性溶解等による方法が提案されている。
【0004】これらの防汚方法は、いずれも一長一短が
あり対象構造物によって適材・適用を考慮しなくてはな
らない。コスト、寿命・メンテナンスあるいは環境二次
汚染が大きな課題である。例えば、塩素や銅等の毒性イ
オンの生成は、濃度管理に心労が絶えず、環境条件や海
生生物の生態に応じて適正な濃度に保持しなくてはなら
ず、少なくては効果が薄く、多ければ環境汚染が避けら
れない。桟橋・岸壁・橋脚杭といった大型固定構造物は
取換えや補修が容易でないためメンテナンスやコストが
大きな課題である。
【0005】防汚対策は、対象構造物の界面に該海生生
物が付着するのを抑制あるいは防止することにあるか
ら、海水中の該海生生物(有用海生生物も含まれる)を
死滅させる必要はない。すなわち、対象構造物を囲む海
水中に毒性イオンを海生生物が忌避あるいは死滅させる
に必要な濃度に維持させることは得策ではない。多くの
海生生物は、成長過程で幼生期に環境内の固体表面に着
地しない限り成育することができず、自然に枯死する。
【0006】言い換えると、該対象構造物の界面に海生
生物が忌避する環境を構成すれば良いことになる。該対
象構造物の界面から離れた海水環境、すなわち、該対象
構造物の遠隔環境にまで海生生物が忌避する環境をつく
る必要はない。該対象構造物の表面に防汚塗料や有毒イ
オンを溶出する防汚性金属で被覆するのがその例であ
る。
【0007】海生生物が着生し、成育する対象構造物
(主として鉄鋼製)の海水と接する面に防汚効果を有す
る材料で被覆することで海生生物に対する忌避環境が構
成される。該防汚材料の自然腐食(溶解)あるいは電圧
付加して陽極溶解させることによって該構造物の界面は
防汚イオンで覆われるので、海生生物に対して忌避雰囲
気ができる。
【0008】防汚イオンを生成する金属としては、銅お
よび銅合金が代表的であり、対象構造物の海水と接触す
る界面に、板状、シート状、塗料あるいは溶射等で被覆
する。
【0009】特開昭57−77290号公報には、船舶
や海洋構造物の外面に銅合金製の防汚金属を取付ける方
法が記載されている。特開昭59−9181号公報は銅
合金製防汚タイルを構造体に取付けるに当たって、該構
造体の異種金属接触腐食を抑制するため流電陽極による
電気防食との併用で防食と防汚の効果を挙げる手段を開
示している。また旧くは、特公昭41−5193号公報
に海水を導入する暗渠または開渠の内壁面に銅陽極およ
び陰極を設け、外部直流電源に接続して通電し、海水中
に銅イオンを溶出させ海水生物の付着を防止する方法が
開示されている。特公昭45−923号公報には、海水
導入管の内面に一対の銅極を設け、交流または極性が転
換する直流電圧を供給する方法が示されている。これら
後者の二方法は、毒性イオンの環境中への放出であり、
環境中に過剰の銅イオンの供給になり易い。
【0010】銅を防汚顔料とした防汚塗料も船体外板に
広く使用されているが、寿命や塗装作業の点から固定海
洋構造物への適用はほとんど無い。
【0011】銅あるいは銅合金からなる防汚金属板の対
象構造物への被覆や防汚塗料を塗布する方法以外の手段
としては、特開昭57−11194号公報に片面に銅メ
ッキしたプラスチックを該構造体面に貼着する方法が、
特開昭62−42081号公報には構成構造物の表面を
絶縁物で被覆し、その表面に銅または銅合金の溶射を行
なう方法が開示されている。銅または銅合金の溶射被覆
を用いた防汚については、特公昭48−39343号公
報、特開昭56−51583号公報、特開昭59−14
5074号公報、特開昭60−88706号公報あるい
は特開平2−274861号公報等に開示されている。
【0012】銅や銅合金から溶出する銅イオンは、防汚
効果として優れているが、毒性が強くそれゆえに有用海
生生物までも排除してしまう。言換えれば、過剰の溶出
は二次環境汚染の恐れがある。船舶や大海原の構造物に
対してはともかくも、港湾や沿岸固定構造物あるいは施
設への適用は、溶出の抑制を図ったとしても長期的には
高濃度、蓄積に伴う二次環境汚染の因になり兼ねない。
また、溶出した銅イオンは還元され易く、該構造物や施
設等を構成する鉄鋼の表面に析出して異種金属の接触に
よる腐食の要因になる。また、銅の表面には酸化物や水
酸化物等からなる複雑な化合物が徐々に形成され、時間
の経過と共に銅の表面を覆い、それが銅の溶出を抑え防
汚効果の低下をもたらす。従って、銅の表面を時々ブラ
シングや他の手段を用いて表面活性化を図る必要があ
る。通常海水中での銅の自然溶出量は、0.03mm/
y(260g/m2 ・y)である。60〜80g/m2
・y(約0.01mm/y)以上の溶出量があれば銅の
表面は海生生物の付着が抑制される。銅の表面が化合物
で覆われると溶出量は40g/m2 ・y以下になり海生
生物が付着しやすくなる。活性状態では、防汚に過剰な
溶出となり、不活性状態では不十分な溶出になり兼ねな
い。
【0013】
【発明が解決しようとする課題】本発明は、海水と接す
る鉄鋼構造物や施設(干満帯を含む)の表面を防汚金属
で覆い、該被覆金属体の表面に海生生物の付着を抑制あ
るいは防止する方法において、銅または銅合金に代わる
防汚金属で該対象への防汚効果を高める防汚用常温亜鉛
溶射被覆と該溶射被覆の防汚管理方法を提供することを
目的とする。
【0014】
【課題を解決するための手段】本発明の目的達成は、次
に示す防汚用常温亜鉛溶射被覆と該溶射被覆の防汚管理
方法で解決される。
【0015】すなわち、本発明は、海水と接する鉄鋼構
造物や施設(干満帯を含む)に、常温溶射法で溶射被覆
を施して該溶射被覆面に海生生物の着生を抑制あるいは
防止するに当たって、該溶射に使用する溶射材が純度9
9.99重量%以上の高純度亜鉛または該高純度亜鉛に
0.5重量%以下のアルミニウムを添加した合金である
ことを特徴とする防汚用常温亜鉛溶射被覆にある。
【0016】また、本発明は、防汚用常温亜鉛溶射被覆
の溶出量を調整するため、単位表面積の少なくとも被溶
射面が絶縁性である板材に、該溶射と同様の常温溶射亜
鉛被覆を施したプローブを製作し、該プローブと該溶射
被覆した鉄鋼構造物あるいは施設とをアンメータを介し
て電気的に接続し、該プローブと該溶射被覆した鉄鋼構
造物あるいは施設との間に流れる電流をキャッチし、同
一海水環境に別途設置した電流自動調整直流電源と補正
電極を用いて、該溶射被覆した鉄鋼構造物あるいは施設
からの流出電流(溶出イオン)を所定の範囲に維持する
ことにより、該溶射被覆した鉄鋼構造物あるいは施設か
らの防汚用亜鉛イオンの流出を適正な範囲に保持するこ
とを特徴とする防汚用常温亜鉛溶射被覆の防汚管理方法
にある。
【0017】
【発明の実施の形態】以下、本発明を詳細に説明する。
本発明は、海水と接する鉄鋼構造物(干満帯を含む)の
壁面に防汚性金属を被覆して海生生物の付着を抑制する
技術に関する。
【0018】防汚性金属として広く使用されている銅ま
たは銅合金に代えて、亜鉛または亜鉛合金を使用する。
亜鉛の防汚性は旧くから知られているが、銅や銅合金ほ
ど使用されていない。
【0019】銅や銅合金に比して防汚効果に乏しく、適
用濃度が高い。それだけ毒性が銅よりも低い。亜鉛は活
性な金属であるから溶出し易くイオン化し易い。中性
(pH6.5〜8.2)の海水中では0.6〜7ppm
の溶解度を有する。銅は0.06〜0.6ppmであ
る。一方海生生物が忌避または死滅する濃度は、銅で
0.01〜0.03ppmといわれている。
【0020】亜鉛による怨嫌度はおよそ0.5ppmと
いわれている。流動し、膨大な量の海水である海洋環境
でかかる濃度に保持することは、実用上不可能である。
また、溶出亜鉛は、銅以上に海水中の溶存酸素によって
酸化されて酸化物あるいはオキシ塩化物に変じ不溶性と
なり防汚効果を減ずる。
【0021】防汚金属の海水との界面を考慮すると、溶
出イオンは防汚金属の海水との極界面では常にイオン化
が進み活性化されているので、海生生物が忌避する環境
が存在することになる。
【0022】防汚金属被覆の防汚効果は、被覆金属が海
水中で常に活性を保持し、寿命の長いことが肝要であ
る。また、防汚金属被覆材の形状・大きさ、取付け・補
修・取換え等施工の容易さが実用化の鍵となる。例え
ば、桟橋・岸壁といった護岸施設あるいは海洋大型構造
物と言った半永久的な大型固定構造物等への適用に当た
っては大きな要素である。
【0023】鉄鋼構造物が被汚染対象物である場合に
は、防汚被覆金属の種類は自ずから限定される。白金、
チタン、触媒被覆バルブ金属あるいはカーボン系のいわ
ゆる不溶性材料は、海水電解による塩素および次亜塩素
酸の生成用電極であるから本発明の目的達成に該当しな
い。銅および銅合金は防汚金属として優れた特性を有し
ているが、鉄鋼構造物と完全に絶縁しないと異種金属と
の接触による鉄鋼の異常腐食が避けられず、また銅の溶
出が抑制されて防汚効果の低下になりかねない。板状、
塗料、溶射あるいはメッキ複合材と言った形状で使用さ
れるが、銅の溶解速度が0.01mm/yを下回らない
限り防汚効果が期待される。銅の海水中での自然腐食速
度はおよそ0.03mm/yである。自然状態では過剰
の溶出である。しかし、海水中の溶存酸素や海水成分と
の反応で不溶性の化合物を形成し、それが銅の溶出を抑
制し、その結果海生生物の養生を導く。銅表面の活性化
を維持するためにブラシングあるいは電解反応(酸化ま
たは還元)を利用して定期・不定期に表面の清浄化を図
らねばならない。
【0024】防汚性を有し、活性な実用的金属としては
亜鉛がある。亜鉛は従来から鉄鋼の防食に広く使われて
いる。トタンとして親しまれている屋根、フェンスおよ
び金網等に用いられている。亜鉛の活性を利用したもの
に乾電池の陰極、海水中の鉄鋼構造物の電気防食用流電
陽極等が良く知られている。銅に比して亜鉛が防汚金属
として積極的に使用された例は少ない。活性であるがゆ
えに、溶出速度が亜鉛金属中の不純物、特に鉄、銅等の
重金属に左右され消耗速度が不安定になり易い。海水中
の自然腐食速度は、約0.05mm/yであるが、不純
物やその含有量あるいは環境条件(溶存酸素、溶存塩類
の種類と量あるいは海水のpH)によって大きく変動す
る。加えて、亜鉛よりも電位的に貴な成分の存在や接触
によって局所的に溶出速度に差異を生じ不均一溶解を呈
する。純度99.99重量%以上の亜鉛の侵食度が0.
052mm/yに対して、不純物として鉄、銅、鉛等を
含む純度99.9重量%未満の亜鉛では0.022mm
/yの値が得られている。前者が均一溶解で部分的にゲ
ル状の白色生成物が見られるのに対して、後者は灰黒色
で固くて脆い生成物で覆われ局部溶解が著しい。不溶解
部分が生ずると、その部分からは防汚イオンが流出しな
いので海生生物の着生が始まる。亜鉛は活性であるがゆ
えに、溶解性状は内的・外的要因の影響を受けやすく不
均一溶解が避けられない。
【0025】亜鉛の海水中における侵食度0.05mm
/yでは、該亜鉛の表面に海生生物の付着を抑制できる
が十分ではない。亜鉛の全面が防汚に必要な均一溶解を
達成させるためには0.1mm/y以上の侵食度が必要
である。海水に浸漬当初は0.1mm/y以上の侵食度
を示すが、不均一溶解による不溶解部の残存や局部溶解
で性能が不安定となり0.05mm/y以下の侵食度と
なって均一な溶出が望めず、板状亜鉛を防汚金属として
使用された例は知見していない。塗料の顔料としての亜
鉛末の利用、溶融メッキ、電気メッキ、溶射等は鉄鋼の
腐食抑制が主眼であって防汚目的は殆どない。短期的
(およそ1年ぐらい)には結果として海生生物の付着を
抑制した例はある。特公昭48−39343号公報に、
亜鉛または亜鉛合金で被覆(火炎溶射を含む)した船体
外板の水中生物汚損防止と防食(陰極防食)が開示され
ている。停泊中は亜鉛を積極的にアノード溶解し、航行
中は亜鉛の溶出を抑制させている。また、特開平2−2
74861号公報には、コンクリート表面に鉛、亜鉛ま
たは銅の1種または2種以上を混合し、ガス燃焼炎また
はプラズマジェット炎で溶射皮膜を行ない、海藻や貝類
の着床を抑制することが開示されている。
【0026】従来から行なわれている溶射方法(ガス
炎、アーク炎)は一回の被覆厚さが、数十μmであり、
多層重ね被覆は層間剥離の恐れがあるため数回塗りが一
般的である。従って、溶射皮膜の仕上げ厚さは100〜
150μm以下が普通であり、溶射皮膜のままで使用す
ることは殆どなく、重防食(過酷環境中での腐食対策)
用の下地として用いられている。200μm以上は特殊
な例である。溶射皮膜は気孔率が10%以上の多孔性の
膜であり、酸化物の巻き込みが避けられない。気孔は上
層皮膜(例えば塗装)との密着力向上としての投錨効果
を発揮するが、溶融した金属を圧縮空気と一緒に被投射
体に吹き付けるので、皮膜の酸化や酸化物の巻き込みは
避けられず、それが下層と上層との密着を害し層間剥離
の因となり、重ね溶射皮膜による膜厚増大は期待できな
い。
【0027】近年常温溶射法が、施工の容易性のみなら
ず、特殊な下地処理剤の開発によって素地との密着力の
強化や酸化物の巻き込みが少なく、膜厚の増大も可能と
なったことから注目されてきた。
【0028】常温溶射法については、特開昭56−15
0460号公報にも記載されており公知である。常温溶
射方法は、従来のアーク式溶射の圧縮空気の噴射機構を
変えたものである。
【0029】アーク式溶射では、2本の線材に電流を流
して発生するアークの熱により線材を溶融し、その後方
より圧縮空気を噴射していた。常温溶射は、圧縮空気が
アークの後方ではなく、アークを中心とする環状のノズ
ルより噴射されるので減圧噴射となり、低温(常温近
傍)での溶射ができる。従って、溶射皮膜の酸化や酸化
物の巻き込みを減ずることができる。気孔は微細であ
り、酸化物の含有量は数重量%で従来のアーク溶射膜の
1/5〜1/10である。
【0030】常温溶射法による溶射は、皮膜厚さの増大
を可能にし、防食寿命の延長が可能になった。防食を目
的とした塗装下地用亜鉛、アルミニウム、銅もしくはそ
れらの合金の低温溶射被覆方法については、特公平2−
56424号公報および特公平3−28507号公報に
開示されている。溶射膜と基材との密着性向上を図るた
め、セラミックス微粒子と特殊エポキシ樹脂からなる粗
面形成剤を予め基材表面に塗布した後、低温溶射を行な
っている。
【0031】気孔が微細で、酸化物の生成や巻き込みが
少なく、更に溶射皮膜の厚さを高めることが可能な常温
溶射法を用いて、海生生物の付着が主要因で取換、修理
や点検が1年以内の頻度で行なわれる鉄鋼製機械施設
(例えばスクリーン)に高純度亜鉛あるいは該亜鉛に少
量のアルミニウムを含有した亜鉛合金からなる防汚金属
を、常温溶射することによって施設の防汚効果を高め、
少なくとも2ケ年以上に亘って点検頻度の減少、該施設
の稼働寿命の延長が可能になった。溶射金属の亜鉛純度
や合金種を限定して常温溶射することによって溶射皮膜
の不均一溶解抑制と固着性溶解生成物の形成を減ずるこ
とができる。
【0032】中性の水中において、腐食反応で生じたZ
nイオンはOHイオンと反応してアモルファスの水酸化
亜鉛[Zn(OH)2 ]を形成する。腐食反応の進行に
よってアモルファスのZn(OH)2 は、活性状態のZ
nOに変化する。このZnOはn型半導体であり、カソ
ード(酸素還元)反応を抑制しない。また素地との密着
性に乏しく保護作用を有しない。同時にアモルファスZ
n(OH)2 は、ゲル状で電導度を有し素地の溶解を殆
ど抑制しない。しかし、次第に変態しβ−Zn(OH)
2 に変ずる。β−Zn(OH)2 は結晶質で、緻密で素
地との密着性に優れ、皮膜は電導性に乏しくカソード反
応を抑制するので保護皮膜となり素地の溶出を抑える。
【0033】海水中では塩素イオンの影響が無視できな
い。保護的な生成物を破壊するので、素地の溶解作用を
促進する。しかし、海水中に長く放置しておくとZn
O、Zn(OH)2 、ZnCl2 およびH2 Oが複雑に
反応して、塩基性塩化亜鉛[あるいはオキシ塩化亜鉛]
4Zn(OH)2 、ZnCl2 、6Zn(OH)2 、Z
nCl2 [あるいは4ZnO・ZnCl2 ・4H2 O、
6ZnO・ZnCl2 ・6H2 O]を生成する。塩基性
塩化亜鉛のZnCl2 は、Zn(OH)2 のOH基がC
lに置換されたものであり、Zn(OH)2 と類似の性
質を持つ。塩素イオンの存在下では、この塩基性塩化亜
鉛[あるいはオキシ塩化亜鉛]は緻密で素地との密着性
に優れ、かつ電導性に乏しく素地の溶出に対して保護作
用を持つ。さらに、海水中では、海水成分であるマグネ
シウムやカルシウムイオンが溶出亜鉛あるいは塩基性塩
化亜鉛と結合して複雑な複塩を形成して強固な不溶性の
化合物となる。
【0034】本発明の技術的効果は、防汚金属(Zn)
の均一溶解に基づく該金属表面への海生生物の着生抑制
あるいは防止することにある。すなわち溶解反応の進行
で生成する上述のオキシ塩化物の形成を抑制または阻止
することが必要である。対象環境が海水であり、一過性
であるため、環境条件を一定に保持することは事実上不
可能である。被覆防汚金属の品位と被覆施工面からの被
覆の品質向上ならびに防汚金属の溶出量の調整手段によ
って対応する他はない。
【0035】天然海水中のClイオン濃度では、亜鉛の
安定生成物は、塩基性塩化亜鉛[オキシ塩化亜鉛]であ
る。塩基性塩化亜鉛[オキシ塩化亜鉛]は、緻密で、不
溶性で非電導性である。しかも素地との密着性も良い。
亜鉛の表面に耐食性の皮膜を形成することになり、亜鉛
の溶解(溶出)を抑制する。防汚を目的とする場合には
常に亜鉛が一定量溶出(活性溶解)していることが必要
であるから、塩基性塩化亜鉛[オキシ塩化亜鉛]の形成
は好ましくない。天然の海水中では、不純な亜鉛や酸化
物のような非金属介在物の多い亜鉛被覆ほど塩基性塩化
亜鉛[オキシ塩化亜鉛]が形成しやすい。
【0036】本発明は、かかる観点から鋭意検討した結
果、99.99重量%以上の亜鉛または該亜鉛に0.3
重量%前後のアルミニウムを添加した合金からなる溶射
材を用いて、常温溶射法で形成した溶射亜鉛皮膜が、従
来から行なわれている亜鉛被覆、すなわち溶融亜鉛メッ
キ、フレーム溶射、アーク溶射、亜鉛末塗料と比較して
溶解性、防汚性において優れた性能を有することを見出
したものである。溶射被覆材として少量のアルミニウム
を添加した高純度亜鉛基合金線を使用した常温溶射被覆
は、溶解面が一段と均一で溶解生成物は少なく、あって
もアルミニウムの影響でゲル状の生成物であるため素地
との密着性に乏しく、素地の溶解性に悪影響は見られな
い。アルミニウムの添加量は0.01重量%でも良い
が、この程度の添加は溶解性よりも鋳造性や線材加工性
の改善が主である。溶解性の改善には0.03重量%以
上が優れている。一方、亜鉛中のアルミニウムの溶解度
は250℃で0.5重量%である。均一溶解させるには
異相の組織を有する合金では期待できない。単相合金が
よい。常温での亜鉛に対するアルミニウムの溶解度は
0.1重量%以下である。また、陰極防食用亜鉛合金陽
極のアルミニウムの適正添加量は0.1〜0.7重量%
である。本発明の目的に適したアルミニウムの上限添加
量は0.5重量%である。溶射用亜鉛合金線として数重
量%から10数重量%のアルミニウムを添加したものが
使用されているが、耐食性と重防食用下地であって本発
明での均一溶解性と防汚を目的とした溶射材では見聞し
ていない。好ましい添加範囲は0.1〜0.3重量%で
ある。
【0037】被覆材や被覆方法で亜鉛溶射被覆による防
汚効果の向上を図ったとしても、海水環境からの影響は
無視できない。対象施設の設置場所、環境海水の水温・
潮流あるいは潮の干満等の不可避な要因が存在する。変
動する環境要因を抑制することは容易なことでない。何
らかの手段を講じて所定の溶射被覆の溶出を確保する必
要がある。
【0038】対象となる鉄鋼施設は、独立した施設は殆
ど無く近接構造物と直接あるいは間接に繋がっている。
亜鉛被覆した該鉄鋼施設は、海水中に浸漬した場合、近
接構造物との間で異種金属の接触によるガルバニック電
池を構成する。本発明の常温溶射亜鉛被覆施設において
も同様である。ガルバニック電池内を流れる電流、すな
わち亜鉛の溶出量に相当するが、その大きさは、亜鉛と
鉄鋼あるいは隣接構造物の電位の差に比例する。亜鉛皮
膜からの流出電流をコントロールすれば良い。しかし、
現実には亜鉛と電気的に接続している鉄鋼あるいは隣接
構造物は、亜鉛からの流出電流で陰分極して亜鉛の電位
に近づき、一方亜鉛は陽分極して電位は貴化するが、そ
の程度は該陰分極に比して極めて小さい。両者の電位は
近接し、亜鉛の電位により近くなり電位差は小さくな
る。流出電流の変動に対して被覆亜鉛の電位や電位差の
変動は小さく、このことは電位や電位差で溶出電流を調
整することは困難であることを示している。亜鉛からの
流出電流が減少すると不均一溶解を生じ、該亜鉛面に不
溶解部分ができる要因となる。該不溶解部分には、溶出
したZnイオンと海水との反応で塩基性塩化亜鉛[オキ
シ塩化亜鉛]を生成し、海生生物が着生可能な環境が形
成される。
【0039】常に亜鉛から所定の流出電流があるように
すれば良いが、流出電流の検知や管理も容易ではない。
潮の干満、流速、水温等で大きく変動する。
【0040】それ故に、少なくとも絶縁性の単位表面積
を有し、防汚対象鉄鋼施設に施したと同様の常温亜鉛溶
射皮膜処理したプローブを作製し、該対象鉄鋼施設とア
ンメータを介して接続し同一海水環境中に設置する。該
プローブと該対象鉄鋼施設間に流れる電流をキャッチ
し、別途設置した自動電流調節直流電源と電極を用い
て、該対象鉄鋼施設からの流出電流が所定の範囲に保持
されるように自動調整する。防汚亜鉛イオンは、電流値
が定まればほぼ一定の量が流出するので、防汚に適正な
範囲にZnイオン量を調整することができる。亜鉛の溶
出量は流出電流量に比例するので、それによって溶射亜
鉛皮膜の寿命も容易に推定できる。
【0041】
【実施例】以下、実施例等に基づき本発明を具体的に説
明する。試験例1 :海水中での亜鉛の材質と溶解性状 4種類の純度の異なる亜鉛および3種類の亜鉛−アルミ
ニウム合金の海水中での溶解性状を調査した。片面露出
面積が100cm2 (両面で200cm2 )の試験片を
天然の海水を張った2000リットル容量のFRP槽に
浸漬して自然腐食試験を行なった。海水は100リット
ル/hでポンプ循環を行なった。テスト期間は約7カ月
である。表1にテスト材質、侵食度および表面状況を示
す。
【0042】
【表1】
【0043】純度99.99重量%以上の亜鉛または該
亜鉛に0.2重量%程度のアルミニウムを添加した合金
は溶解面が均一であり溶解を妨げる固着性の生成物も少
なく、あっても軟弱でゲル状のため素地の溶解を阻害し
ない。特に0.2重量%アルミニウム含有亜鉛合金は銀
白色の溶解面を呈し、生成物の付着も極めて少ない。純
度99.99重量%未満の亜鉛は、特に鉄の含有量が増
加すると凹凸の激しい溶解面を呈し、生成物も灰色ある
いは灰黒色で固着性であり素地の溶解を阻止している。
【0044】試験例2:純亜鉛および0.2重量%Al
含有亜鉛の陽分極特性 試験例1のデータに基づいて、純亜鉛板、常温純亜鉛溶
射板および0.2重量%Al含有亜鉛線材を用いた常温
溶射板の天然海水中での定電位陽分極特性を調べた。溶
射用基板はSS400鋼材で、特殊下地粗面形成剤(ブ
ラスノン:大日本塗料[株]の商品名)を塗布した後、
常温溶射で被覆した。膜厚は400μm以上である。
【0045】定電位陽分極特性試験の結果を図1に示
す。測定環境は天然海水中、20℃(静止)、掃引速度
20mV/minである。
【0046】図1中の太実線は純亜鉛板(亜鉛純度9
9.99%)の分極特性を示す。細実線は純亜鉛線を用
いた常温亜鉛溶射被覆板で、破線は0.2重量%Al含
有亜鉛合金線で常温溶射した試片での分極特性である。
各試料とも海水浸漬24h後に測定した。
【0047】いずれも純亜鉛をベースにした陽極である
から、開路電位が変わらなければ陽分極曲線は類似して
いる。開路電位の違いは陽極素材の活性状態の差にある
ものと推察される。純亜鉛板<常温亜鉛溶射被覆板<
0.2重量%Al含有亜鉛常温溶射被覆板の順で活性で
あることを示している。
【0048】陽極電位の立上がりは、純亜鉛板<常温亜
鉛溶射被覆板<0.2重量%Al含有亜鉛常温溶射被覆
板の順で高電流密度側に移動している。すなわち、純亜
鉛板で10mA/m2 (0.01A/m2 )、常温純亜
鉛溶射被覆板20〜30mA/m2 (0.02〜0.0
3A/m2 )および0.2重量%Al含有亜鉛常温溶射
被覆板50〜60mA/m2 (0.05〜0.06A/
2 )を示している。これは横軸(X軸)の陽極電流密
度の表面積が見掛け(試験片の寸度から算出した)の値
であることから実質面積が溶射被覆板のほうが大きいこ
とを示唆している。
【0049】溶射被覆板は、被覆材が同材であれば純亜
鉛板等の板材等の形あるものに比して活性であり、電位
の立上がりが高電流密度側に移る。少量のアルミニウム
を添加した亜鉛合金による常温溶射被覆板はこの傾向が
より顕著である。
【0050】また、いずれの陽極材も数千mA/m2
(数A/m2 )までの電位上昇は100〜150mV
(0.1〜0.15V)で、電流の変化に対して電位の
変動が小さく、溶出電流のコントロールは電位で行なう
ことは容易でないことを示している。
【0051】実用試験例1:実用海水中での亜鉛および
亜鉛被覆材と海生生物の付着状況調査 純亜鉛板、低純度亜鉛板、溶融亜鉛メッキ鋼板、純亜鉛
線を用いた通常のアーク溶射鋼板、同亜鉛線を用いた常
温溶射鋼板および0.2重量%Al含有亜鉛線による常
温溶射鋼板について実海水に浸漬し、各板表面への海生
物の付着状況を調べた。
【0052】各試料は、亜鉛板以外は200W×300
L×4.5mmTのSS400鋼板が素板である。2種
類の亜鉛板は200W×300L×3.2mmTであ
る。自然浸漬が主体であるが、2種類の亜鉛板、純亜鉛
常温溶射板および0.2重量%Al含有亜鉛常温溶射板
の4試料は、別途定電流自動調整直流電源と補助陰極を
介して50mA/m2 の陽極電流密度で通電する試料を
付け加えた。溶射皮膜は400μm以上であるから上記
の電流では少なくとも2年の寿命はある。テストは海生
物が活動し始める3月下旬から休息する11月までの8
か月間試験を行なった。試験結果の概要を表2に示す。
【0053】
【表2】
【0054】50mA/m2 の陽極電流密度で通電した
4種類の試料は、低純度亜鉛板を除きいずれも不通電試
料よりも溶解面や海生物の付着状況は一段と改良され
る。しかし、低純度亜鉛板の溶解面は黒色、固着性が顕
著となり、該部分は不溶解(電流の流出が抑制される)
を呈し、灰色の溶解生成物が蓄積し、その部分を中心に
海生生物が着生・成長している。付加電流は局部に集中
し深い孔食溶解面であった。
【0055】鉄、銅あるいは鉛等の不純物の含有量を限
定した99.99%以上の高純度亜鉛または少量のアル
ミニウムを含有した高純度亜鉛合金を用いた常温溶射鋼
板は、溶解が均一で防汚効果があり、さらに陽極溶解を
付加することによってさらに溶解性や防汚性が向上する
ことが判明した。
【0056】実施例1:実用スクリーンに常温溶射を適
用した実例 上述の試験および実用試験の結果に基づいて、実施海水
取水路の一次バーススクーリンに0.2重量%Al含有
高純度亜鉛合金からなる線材を溶射材として、常温溶射
で被覆した。
【0057】溶射は、スクリーン(格子状の鋼材からな
る)をサンダーケレン後、粗面形成剤(大日本塗料製、
商品名ブラスノン)を20μmの厚さに塗布し、その上
に0.2重量%Al含有亜鉛合金線材を用いて常温溶射
で500μmの厚さに被覆した。スクリーンは幅約6.
1m×高さ約5.1mである。
【0058】さらに、該スクリーンとは別個に、該スク
リーンと同材質の一定面積を有する同一仕様の常温溶射
被覆したモニター用プローブを、該水路の上流側と下流
側に一つずつ該スクリーンと海水中で短絡しないように
設置した。ただし、該プローブは素地をプラスト仕上げ
してエポキシ絶縁塗料を塗布後、粗面形成剤塗布と常温
溶射被覆を行なった。
【0059】該スクリーンおよび該プローブに取付けた
絶縁被覆導線をそれぞれ別個に導線管を通して直流電源
装置まで配線し、該直流電源装置内で両者の導線は電流
計を介してボンドした。
【0060】図2は、本発明を実地取水路の一次スクリ
ーンに適用した装置の配置を示す斜視図である。同図に
おいて、1は海水導入取水路、2は一次バースクリー
ン、3はモニター用プローブ、4は矢板、5:コンクリ
ート護岸、51は取水路側壁、6は補助電極、61はP
VC製鞘管、7は導線、8は導線用配管(集中導線
管)、9は直流電源装置をそれぞれ示す。
【0061】一次バーススクリーンは、取水路支柱、各
種のスクリーン、ポンプ、コンクリート中の鉄筋あるい
は護岸矢板等と電気的に繋がっている。該スクリーンの
外面は亜鉛溶射被覆がされているが、接触している他の
構造物との面積比は、極めて小さい。従って、該スクリ
ーンからの流出電流(被覆亜鉛の溶出に相当する)が大
きくなる。
【0062】プローブと該スクリーン間に流れる電流
は、電流密度で400〜500mA/m2 (侵食度で
0.45〜0.75mm/y)の流出電流を検出した。
防汚を目的とした亜鉛の侵食度は0.1mm/y(50
mA/m2 )以上である。上記の検出電流は過剰の溶出
であり、防汚効果において有効であっても常温溶射亜鉛
被覆厚さ500μmの寿命は1ケ年に満たない。
【0063】該スクリーンの亜鉛溶射被覆の侵食度を
0.1mm/y(50mA/m2 )強程度に抑制するた
め、該スクリーンを含む海水環境内に補助電極を設置
し、該スクリーンと接続している矢板やコンクリート中
の鉄筋に外部直流電源装置から陰極電流を供給した。こ
れによって流出電流の要因である該スクリーンと接続し
ている他の構造体との電位差は小さくなり、該スクリー
ンの亜鉛溶射被覆の侵食度を0.1mm/y(50mA
/m2 )程度に抑制できた。
【0064】補助電極には棒状の1重量%Ag含有Pb
を用いた。該補助電極は該スクリーンから約4m離れた
該取水路コンクリート壁面に、孔開き硬質塩化ビニル
(PVC)製鞘管内に挿入してUバンドとアンカーボル
トを用いて固定した。
【0065】直流電源は、自動電流調整型の電源装置で
ある。流出電流は該電源装置でほぼ一定に保持されるの
で、該スクリーンの常温溶射亜鉛被覆からの溶出電流、
すなわち亜鉛溶出量は防汚に有効な範囲に保持され、か
つ溶解が均一な溶射線材で被覆されているので該被覆の
寿命も容易に推察できる。
【0066】本一次バースクリーンに本発明の常温溶射
亜鉛合金被覆と該被覆の防汚管理方法を約6か月間適用
した結果、海生生物の付着は実質的に無視でき、溶射被
覆は予想通り均一溶解で固着性生成物は見られなかっ
た。該溶射被覆の寿命は、少なくとも3年以上あると確
認できた。
【0067】
【発明の効果】以上説明したように、溶射用亜鉛の材質
を選定し、特殊な下地粗面形成剤を塗布して常温溶射法
で溶射皮膜(300〜800μmの厚膜が可能)を形成
した対象鉄鋼施設は、同溶射材で常温溶射を施したプロ
ーブとアンメータを介して接続して海水環境に浸漬し、
溶射被覆した対象鉄鋼施設からの流出電流を所定の範囲
に保持する自動電流調節直流電源と補助電極からなる装
置を具備させることによって、環境要件に因く亜鉛被覆
の不均一溶解は均質溶射膜面と相俟って全面から均一な
流出電流が保持されるので大幅に減少する。従って、設
定電流に対応する溶出電流(イオン化電流)は、溶射膜
面から均一に放出されるので、従来の単に亜鉛を被覆し
たのみの鋼材(例えば溶融亜鉛メッキ等)に比して優れ
た海生生物着生抑制あるいは防止が可能となった。
【図面の簡単な説明】
【図1】 純亜鉛板、純亜鉛常温溶射被覆鋼板および
0.2重量%Al亜鉛合金常温溶射被覆鋼板の海水中に
おける陽分極特性(定電位法)を示すグラフ。
【図2】 本発明の常温亜鉛合金溶射被覆を海水取水路
の一次バースクリーンに施し、該溶射被覆の防汚管理を
行なう装置の配置を示す斜視図。
【符号の説明】
1:海水導入取水路、2:一次バースクリーン、3:モ
ニター用プローブ、4:矢板、5:コンクリート護岸、
51:取水路側壁、6:補助電極、61:PVC製鞘
管、7:導線、8:導線用配管(集中導線管)、9:直
流電源装置。
───────────────────────────────────────────────────── フロントページの続き (72)発明者 臼井 英智 埼玉県上尾市井戸木2−43−2 ベルデ イー上尾106号 (72)発明者 中沢 真吉 千葉県市原市五井海岸1番地 東京電力 株式会社五井火力発電所内 (72)発明者 伊藤 昭則 千葉県市原市五井海岸1番地 東京電力 株式会社五井火力発電所内 (72)発明者 永野 雅之 千葉県市原市五井海岸1番地 東京電力 株式会社五井火力発電所内 (56)参考文献 実開 平5−90066(JP,U) (58)調査した分野(Int.Cl.7,DB名) C23C 4/08 E02B 1/00

Claims (2)

    (57)【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】 海生生物の着生を抑制あるいは防止する
    ため海水と接する鉄鋼構造物や施設に施した防汚用常温
    亜鉛溶射被覆の海水への溶出量を調整する、防汚用常温
    亜鉛溶射被覆の防汚管理方法であって、 この方法は 、少なくとも被溶射面が絶縁性である板材
    に、該被覆と同様の常温溶射亜鉛被覆を施したプローブ
    を製作し、該プローブと該溶射被覆した鉄鋼構造物ある
    いは施設とをアンメータを介して電気的に接続し、該プ
    ローブと該溶射被覆した鉄鋼構造物あるいは施設との間
    に流れる電流をキャッチし、同一海水環境に別途設置し
    た電流自動調整直流電源と補正電極を用いて、該鉄鋼構
    造物あるいは施設の防汚用亜鉛被覆からの亜鉛イオンの
    流出量を上記検出した電流値に基づいて適正な範囲に保
    持することを特徴とする防汚用常温亜鉛溶射被覆の防汚
    管理方法。
  2. 【請求項2】 前記常温亜鉛溶射被覆の溶射に使用する
    溶射材が純度99.99重量%以上の高純度亜鉛に0.
    5重量%以下のアルミニウムを添加した合金であること
    を特徴とする請求項1に記載の方法。
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