JP2006029065A - 海洋鋼構造物 - Google Patents
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Abstract
【課題】電気防食を行う海洋構造物において、海中部で必要な電流に足りなくなったり、犠牲陽極を用いた場合に陽極の寿命が設計よりも短くなったりすることを防止すること。
【解決手段】海洋鋼構造物の平均干潮面以下の海中部を対象とした防食電流値に、平均干潮面から朔望平均満潮面の範囲の対象面積に海中部と同じ電流密度を乗じ、これに係数1.0〜2.0を乗じて得られる電流値を加えた電流値によって海洋鋼構造物の電気防食を行う。
【選択図】図5
【解決手段】海洋鋼構造物の平均干潮面以下の海中部を対象とした防食電流値に、平均干潮面から朔望平均満潮面の範囲の対象面積に海中部と同じ電流密度を乗じ、これに係数1.0〜2.0を乗じて得られる電流値を加えた電流値によって海洋鋼構造物の電気防食を行う。
【選択図】図5
Description
本発明は、電気防食を施した海洋鋼構造物に関するものである。
最近、LCC(ライフサイクルコスト)の観点から100年というような超長期にわたる耐食性を有し、維持管理が容易な防食方法が求められるようになって来ている。そして、海洋という厳しい腐食環境にさらされる港湾・海洋鋼構造物を守るために、これまで各種の防食方法が提案されている。
そのような防食方法の一つとして耐食性金属ライニングがある。耐食性金属ライニングは、他の有機・無機ライニングに比べて機械的強度が大きく、耐摩耗性に優れ、ほとんどメンテナンスフリーで長期の防食が確保できる長所がある。また、塗装や電気防食などとも併用できるので、合理的に組合せて使用できる便利な方法でもある。
また、鋼材を使用した海洋鋼構造物については電気防食が行われている。この電気防食は通常平均干潮面以下とされており、平均干潮面以下の海中部と海底土中部を対象としている。特許文献1〜4には、電気防食によって海洋構造物を防食する方法が記載されている。
海洋鋼構造物としては、海洋リグやジャケット、桟橋、係留設備(ドルフィン)等がある。この海洋鋼構造物の置かれた環境は、海底土中部、海中部、干満帯、飛沫帯、海上大気部に分類されるが、その中でも飛沫帯、干満帯は厳しい腐食環境にあるため、前記した耐食性金属ライニングを行うことがある。耐食性金属ライニングは、耐食性金属を普通鋼の表面に巻き付けて防食する方法であるが、他の工法に比べて、機械的強度が大きく、耐衝撃性、耐摩耗性に優れ、巻き付ける金属の耐食性が良ければほとんどメンテナンスフリーで長期の防食が確保できる長所がある。また、金属ライニングには腐食や磨耗しろに相当する鋼板を巻いて溶接する鋼板巻きが適用されることがある。
そして、最も腐食の激しい飛沫・干満帯に耐海水ステンレス鋼をライニングし、海中部や海底土中部の炭素鋼へ電気防食を適用した場合には、飛沫・干満帯から海中・海底土中部まで安価でかつ比較的容易な維持管理で長期耐久性が期待できる。特に、耐海水ステンレス鋼は、海中部の炭素鋼に対してカソードとして作用するため異種金属接触腐食の恐れがあるものの、この異種金属接触腐食の防止にも電気防食は効果がある。しかし、従来の炭素鋼の防食電流に加えて、異種金属接触腐食の防止や潮位変化に伴う電流密度の変化を考慮した電気防食設計が必要となるが、電流密度変化のメカニズムや防食電流密度について詳細に調査されていないため、平均干潮面より上は電気防食設計上の盲点となっている。
電気防食には、アルミニウム合金や亜鉛などの犠牲陽極を、防食対象の海水に触れる部位に溶接等により電気的に接続して犠牲陽極と鋼材間の電位差により発生する電流を、防食電流として鋼材を防食状態に保つ流電陽極法と、不溶性電極を海中に浸し、外部電源を介して防食対象鋼材と電気的に接続して、鋼材が防食電位に保たれるように外部電源により強制的に電流を流す外部電源法がある。
上記したように、従来の電気防食は平均干潮面以下の海中部および海底土中部を対象としていた。しかし、金属ライニングを行った場合、塗装は行われない。これは、塗装や有機ライニングは金属ライニングと比較して耐久性が低く、また耐衝撃性も低いためである。この場合、金属は裸であるため海中部を対象に流した電流の一部が干満帯に流れる。このため、海中部で必要な電流に足りなくなったり、犠牲陽極を用いた場合には陽極の寿命が設計寿命よりも短くなったりするという問題があった。
炭素鋼は−770mV vs.SCE(飽和カロメル電極)以下にすれば防食することができ、この電位を防食電位と言うが、この電位より卑であれば炭素鋼は腐食しない。そして、電位を−770mVvs.SCE以下にするためには電流を流入させなければならない。建設省土木研究所等の共同研究報告書第58号には平均干潮面以下の海中部を防食するのに必要な電流密度が記載されており、これを表1に示す。
海洋中で電気防食をした場合、鋼材表面に炭酸カルシウムや水酸化マグネシウムが経時的に析出し、小さな電流でも防食電位以下になることが知られている。
浸漬直後は、鋼材の表面が活性であるため、定常電流よりも多くの電流が必要である。一般的な寒中の初期の防食電流密度は100mA/m2以上の電流密度が必要である。定常後の電流を分けて設計する場合がある。内湾性の一般海域では定常時に50mA/m2の電流密度が必要であり、外洋性の一般海域では内湾性の一般海域の電流密度に1〜1.5を乗じた値が必要な電流として示されている。
浸漬直後は、鋼材の表面が活性であるため、定常電流よりも多くの電流が必要である。一般的な寒中の初期の防食電流密度は100mA/m2以上の電流密度が必要である。定常後の電流を分けて設計する場合がある。内湾性の一般海域では定常時に50mA/m2の電流密度が必要であり、外洋性の一般海域では内湾性の一般海域の電流密度に1〜1.5を乗じた値が必要な電流として示されている。
また、汚染海域について内湾性の一般海域の電流密度に1.2〜1.5の値を乗じた値が示されており、更に潮流がある環境では、流速1m/sで定常時に80mA/m2、2m/sで定常時に115mA/m2、3m/sで定常時に135mA/m2が必要であることが示されている。
しかしながら、この値も一定ではなく、各地域で異なり、海中部の防食に必要な電流密度は潮流や汚染、温度等の影響を受けるため地域によって異なり、その値は約36〜133mA/m2と幅がある。
しかしながら、この値も一定ではなく、各地域で異なり、海中部の防食に必要な電流密度は潮流や汚染、温度等の影響を受けるため地域によって異なり、その値は約36〜133mA/m2と幅がある。
平均干潮面より上は電気防食の効果が小さいため、電気防食の対象としないものの、建設省土木研究所等の共同研究報告書第58号には海水中で腐食しない金属を干満帯に適用した場合の平均干潮面から満潮面までに流れる電流が示されている。この報告書には平均干潮面から平均満潮面まで直線的に電流は減少することが示されている。
電気防食に必要な電流は、対象とする面積にそれぞれの個所に応じた防食電流密度を乗じて算出することができる。この防食電流をアノード1個当たりの出力で除することで必要なアノードの個数を算出する。
対象面積とは、図1に示すように、例えば従来技術では海中部Am2、海底土中部Bm2である。Aに海中部の防食電流密度、Bに海底土中部の防食電流密度を乗じた値を加えた値が平均干潮面以下の防食に必要な電流密度である。
対象面積とは、図1に示すように、例えば従来技術では海中部Am2、海底土中部Bm2である。Aに海中部の防食電流密度、Bに海底土中部の防食電流密度を乗じた値を加えた値が平均干潮面以下の防食に必要な電流密度である。
従来技術においては、平均干潮面から平均満潮面まで直線的に流入電流が減少すると仮定して電気防食設計を行っていた。しかしながら、干満帯は、乾湿が繰り返されるため干満帯の中でも部分毎に電流密度が異なり流入電流を正確に見積ることが困難であった。
そこで、本発明は、海中部で必要な電流に足りなくなったり、犠牲陽極を用いた場合に陽極の寿命が設計よりも短くなったりするのを防止することを目的とする。
そこで、本発明は、海中部で必要な電流に足りなくなったり、犠牲陽極を用いた場合に陽極の寿命が設計よりも短くなったりするのを防止することを目的とする。
本発明者は、流入電流に見合う電流を予め多く流すことによって、海中部において必要な電流を確保することができ、かつ、犠牲陽極を用いた場合には陽極の寿命が設計よりも短くなるのを防止することができることを見いだして本発明を完成したものであり、本発明は次に示す構成を有するものである。
(1)海中部及び干満帯に炭素鋼を使用した海洋鋼構造物であって、該構造物の平均干潮面以下の海中部を対象とした防食電流値に、平均干潮面から朔望平均満潮面の範囲の対象面積に海中部と同じ電流密度を乗じ、これに係数1.0〜2.0を乗じて得られる電流値を加えた電流値によって電気防食を行ったことを特徴とする海洋鋼構造物。
(2)海中部及び干満帯に炭素鋼を使用し、この干満帯に有機ライニング又は塗装を行った海洋鋼構造物であって、該構造物の平均干潮面以下の海中部を対象とした防食電流値に、平均干潮面から朔望平均満潮面の範囲の対象面積に海中部と同じ電流密度を乗じ、これに係数1.0〜2.0を乗じ、更に欠陥率を乗じて得られる電流値を加えた電流値によって電気防食を行ったことを特徴とする海洋鋼構造物。
(3)海洋構造物の少なくとも干満帯にステンレス鋼、モネル、キュプロニッケル、ニッケル基合金の少なくとも一つを適用し、該構造物の平均干潮面以下の海中部を対象とした防食電流値に、平均干潮面から朔望平均満潮面の範囲の対象面積に海中部と同じ電流密度を乗じて得られる電流値を加えた電流値によって電気防食を行ったことを特徴とする海洋鋼構造物。
(4)海洋構造物の少なくとも干満帯にステンレス鋼、モネル、キュプロニッケル、ニッケル基合金の少なくとも一つを適用し、この一部に有機ライニング又は塗装による被覆を行った海洋鋼構造物であって、該構造物の平均干潮面以下の海中部を対象とした防食電流値に、平均干潮面から朔望平均満潮面の範囲の被覆された面積に海中部と同じ電流密度を乗じ更に欠陥率を乗じて得られる電流値と、平均干潮面から朔望平均満潮面の範囲の未被覆部の面積に海中部と同じ電流密度を乗じて得られる電流値とを加えた電流値によって電気防食を行ったことを特徴とする海洋鋼構造物。
(1)海中部及び干満帯に炭素鋼を使用した海洋鋼構造物であって、該構造物の平均干潮面以下の海中部を対象とした防食電流値に、平均干潮面から朔望平均満潮面の範囲の対象面積に海中部と同じ電流密度を乗じ、これに係数1.0〜2.0を乗じて得られる電流値を加えた電流値によって電気防食を行ったことを特徴とする海洋鋼構造物。
(2)海中部及び干満帯に炭素鋼を使用し、この干満帯に有機ライニング又は塗装を行った海洋鋼構造物であって、該構造物の平均干潮面以下の海中部を対象とした防食電流値に、平均干潮面から朔望平均満潮面の範囲の対象面積に海中部と同じ電流密度を乗じ、これに係数1.0〜2.0を乗じ、更に欠陥率を乗じて得られる電流値を加えた電流値によって電気防食を行ったことを特徴とする海洋鋼構造物。
(3)海洋構造物の少なくとも干満帯にステンレス鋼、モネル、キュプロニッケル、ニッケル基合金の少なくとも一つを適用し、該構造物の平均干潮面以下の海中部を対象とした防食電流値に、平均干潮面から朔望平均満潮面の範囲の対象面積に海中部と同じ電流密度を乗じて得られる電流値を加えた電流値によって電気防食を行ったことを特徴とする海洋鋼構造物。
(4)海洋構造物の少なくとも干満帯にステンレス鋼、モネル、キュプロニッケル、ニッケル基合金の少なくとも一つを適用し、この一部に有機ライニング又は塗装による被覆を行った海洋鋼構造物であって、該構造物の平均干潮面以下の海中部を対象とした防食電流値に、平均干潮面から朔望平均満潮面の範囲の被覆された面積に海中部と同じ電流密度を乗じ更に欠陥率を乗じて得られる電流値と、平均干潮面から朔望平均満潮面の範囲の未被覆部の面積に海中部と同じ電流密度を乗じて得られる電流値とを加えた電流値によって電気防食を行ったことを特徴とする海洋鋼構造物。
本発明の海洋構造物が採用している防食方法は、簡便な方法を用いることにより、海中部で必要な電流に足りなくなったり、犠牲陽極を用いた場合に陽極の寿命が設計よりも短くなったりすることを防止することができるので、本発明の海洋構造物は超長期にわたって耐食性を有し、かつ、維持管理が容易であるという効果を奏する。
一般に流電陽極としては、Mg、Zn、Alから成る合金が使われる。しかし、海洋中では、単位重量当たりの有効発生電流量の多いアルミニウム合金が主として用いられている。流電陽極方式の場合、施工が容易で比較的短期間で施工が可能である。しかし、防食期間が長期にわたる場合、施工費は外部電源方式と比較して流電陽極方式の方が高くなる傾向にある。
外部電源方式で用いられる陽極材料としては、珪素鋳鉄や磁性酸化鉄(Fe3O4)、鋳鉄、炭素鋼、鉛、鉛合金、銀、銀合金、白金、白金メッキチタン、黒鉛などがある。
外部電源方式では電位管理が容易に行えるため、構造物の一部を外部電源方式、残りを流電陽極方式とすることも可能である。
外部電源方式では電位管理が容易に行えるため、構造物の一部を外部電源方式、残りを流電陽極方式とすることも可能である。
外部電源を用いた場合、照合電極により電位をフィードバック信号とし、制御装置により陽極から出る電流出力の制御を行う。なお、この電流制御は経年的な被覆の剥離による防食電流の増加や、溶存酸素の増加や水温上昇に伴う防食電流の急激な変化にも対応できる。
本願発明は海洋構造物の干満帯の材料として炭素鋼又は有機ライニング又は塗装を行った炭素鋼を用いる場合及び平均干潮面から朔望平均満潮面までの材料として耐食性金属であるステンレス鋼、モネル、キュプロニッケル、ニッケル基合金の少なくとも一つを適用する場合を包含する。
前記「適用する」とは、耐食性金属そのもの、炭素鋼の表面に耐食性金属をライニングしたもの、又は、耐食性金属と炭素鋼とのクラッド材を構造材料として用いることを意味する。
前記「適用する」とは、耐食性金属そのもの、炭素鋼の表面に耐食性金属をライニングしたもの、又は、耐食性金属と炭素鋼とのクラッド材を構造材料として用いることを意味する。
干満帯の材料として炭素鋼を用いる場合には、防食電流を確保するために、構造物の平均干潮面以下の海中部を対象とした防食電流値に、平均干潮面から朔望平均満潮面の範囲の対象面積に海中部と同じ電流密度を乗じ、これに係数1.0〜2.0を乗じて得られる電流値を加えた電流値によって電気防食を行う。
干満帯の材料として有機ライニング又は塗装を行った炭素鋼を用いる場合には、構造物の平均干潮面以下の海中部を対象とした防食電流値に、平均干潮面から朔望平均満潮面の範囲の対象面積に海中部と同じ電流密度を乗じ、これに係数1.0〜2.0を乗じ、更に欠陥率を乗じて得られる電流値を加えた電流値によって電気防食を行う。
欠陥率とは、炭素鋼に防食塗装が施されている場合、被覆が施されていない部分や、流木等の浮遊物との接触による損傷や紫外線等による経年劣化によって被覆が剥がれて炭素鋼が裸で剥き出しになっている部分があるが、このような炭素鋼が裸で剥き出しになっている部分の面積率を言う。
表1に示した建設省土木研究所の共同報告書第58号では、約2年間の暴露試験を行い,欠陥率(露出率)を0.1〜0.25としている。
欠陥率とは、炭素鋼に防食塗装が施されている場合、被覆が施されていない部分や、流木等の浮遊物との接触による損傷や紫外線等による経年劣化によって被覆が剥がれて炭素鋼が裸で剥き出しになっている部分があるが、このような炭素鋼が裸で剥き出しになっている部分の面積率を言う。
表1に示した建設省土木研究所の共同報告書第58号では、約2年間の暴露試験を行い,欠陥率(露出率)を0.1〜0.25としている。
また、海洋構造物の少なくとも平均干潮面から朔望平均満潮面までの帯域にステンレス鋼、モネル、キュプロニッケル、ニッケル基合金の少なくとも一つを適用する場合には、該構造物の平均干潮面以下の海中部を対象とした防食電流値に、平均干潮面から朔望平均満潮面の範囲の対象面積に海中部と同じ電流密度を乗じて得られる電流値を加えた電流値によって電気防食を行う。
海洋構造物の少なくとも干満帯にステンレス鋼、モネル、キュプロニッケル、ニッケル基合金の少なくとも一つを適用し、この一部に有機ライニング又は塗装による被覆を行った場合には、該構造物の平均干潮面以下の海中部を対象とした防食電流値に、平均干潮面から朔望平均満潮面の範囲の被覆された面積に海中部と同じ電流密度を乗じ更に欠陥率を乗じて得られる電流値と、平均干潮面から朔望平均満潮面の範囲の未被覆部の面積に海中部と同じ電流密度を乗じて得られる電流値とを加えた電流値によって電気防食を行う。
海洋環境において用いられるステンレス鋼として、SUS304、SUS304L、SUS316L、SUS316L、SUS317、SUS317L、SUS329J4LやSUS836L、UNS S31254、JSL310MoCuなどのステンレスが市販されている。この中でSUS329L4L、SUS836L、UNS S31254、JSL310MoCuは耐海水ステンレスである。
潮位変化や溶存酸素、海流等が電流密度の分布に与える影響を調査するため実海洋での暴露試験を行った。試験体に用いた鋼材の化学成分を表2に示す。
試験体Aとして、200×200mm、厚さ6mmのステンレス鋼試験片を海中部から飛沫帯にかけて17枚、海中部に炭素鋼3枚を図2のように並べたものを用いた。耐海水ステンレス鋼としてSUS836Lを用い、炭素鋼としてはSS400を用いた。
また、試験体Bとして20枚全て炭素鋼を使用したものを用いた。更に、表3に示すように鋼種を組合せたものを試験体C〜Gとした。
試験体Aとして、200×200mm、厚さ6mmのステンレス鋼試験片を海中部から飛沫帯にかけて17枚、海中部に炭素鋼3枚を図2のように並べたものを用いた。耐海水ステンレス鋼としてSUS836Lを用い、炭素鋼としてはSS400を用いた。
また、試験体Bとして20枚全て炭素鋼を使用したものを用いた。更に、表3に示すように鋼種を組合せたものを試験体C〜Gとした。
各試験体について下記の試験を行った。
試験体の最下部にアルミニウム陽極(日本防蝕工業(株)製:アラノード、上面70mm、下面101mm、高さ57.5mm、長さ125mm、約1.6kg)を絶縁して取り付けた。ステンレス鋼、炭素鋼共にプラスチック製パネルに一枚ずつ絶縁して嵌め込み、周囲をシリコンシーラント(信越化学(株)製)で約10mm幅でシールした。ステンレス鋼および炭素鋼の裏面に被覆リード線を繋ぎ、プラスチック製パネル裏面の穴からリード線を通した。リード線を1Ωのシャント抵抗を介してアノードと短絡し、抵抗にかかる電圧を1時間毎に自動計測しデータロガーに記録した。電圧から各試験片に流入する電流を計算した。試験体は5ヶ月後に回収して外観観察を行い、除錆した後、重量減少量を計測し腐食速度を計算した。
試験体の最下部にアルミニウム陽極(日本防蝕工業(株)製:アラノード、上面70mm、下面101mm、高さ57.5mm、長さ125mm、約1.6kg)を絶縁して取り付けた。ステンレス鋼、炭素鋼共にプラスチック製パネルに一枚ずつ絶縁して嵌め込み、周囲をシリコンシーラント(信越化学(株)製)で約10mm幅でシールした。ステンレス鋼および炭素鋼の裏面に被覆リード線を繋ぎ、プラスチック製パネル裏面の穴からリード線を通した。リード線を1Ωのシャント抵抗を介してアノードと短絡し、抵抗にかかる電圧を1時間毎に自動計測しデータロガーに記録した。電圧から各試験片に流入する電流を計算した。試験体は5ヶ月後に回収して外観観察を行い、除錆した後、重量減少量を計測し腐食速度を計算した。
暴露は三重県津市のJFEエンジニアリング(株)津製作所の岸壁にて約5ヶ月間行った。試験期間中にAg/AgCl電極を用いて電位計測を行った。溶存酸素の計測には、(株)堀場製作所製D−25を用いた。潮汐変化の計算は「潮時表WSIO21」を用いた。潮位は東京湾平均海面(Tkyo Peil:TP)を基準として示す。津沖の平均潮位は130cmであり、測定期間に干満帯はおよそ−10cm〜240cmの範囲であった。
[評価結果]
干満帯の試験体の面積は0.357m2であり、従来設計での海中部の粒電流密度は50mA/m2であった。
図4に約3ヶ月間の平均電流密度を示す。炭素鋼の平均電流密度は最大165mA/m2であり、ステンレス鋼の平均電流密度は40〜70mA/m2であった。
電位は、全ての試験体で試験開始直後はアノードに近い部分で約−830mV(vs.Ag/AgCl),最も遠い部分でも約−810mVであり,防食電位(770mV)以下であった。また、浸漬15日後,全ての試験体の電位はほぼ−1000〜−1050mVとなり,電位はほぼ同じであり、以降電位は−1000〜−1050mVの範囲であった。
干満帯の試験体の面積は0.357m2であり、従来設計での海中部の粒電流密度は50mA/m2であった。
図4に約3ヶ月間の平均電流密度を示す。炭素鋼の平均電流密度は最大165mA/m2であり、ステンレス鋼の平均電流密度は40〜70mA/m2であった。
電位は、全ての試験体で試験開始直後はアノードに近い部分で約−830mV(vs.Ag/AgCl),最も遠い部分でも約−810mVであり,防食電位(770mV)以下であった。また、浸漬15日後,全ての試験体の電位はほぼ−1000〜−1050mVとなり,電位はほぼ同じであり、以降電位は−1000〜−1050mVの範囲であった。
[従来技術との比較]
従来設計での平均電流は次のように求められる。すなわち、干満帯の試験体の面積を0.357m2、海中部の流入電流密度を50mA/m2とし、これと同じ電流密度が干満帯にも流入すると、電流は17.8mAとなる。そして、従来法では、干潮面(没水率100%)から満潮面(没水率0%)との間で直線的に没水率が減少すると考えると、干満帯に流入する電流は9mAとすることができる。
従来設計での平均電流と、実施例(試験体A)及び比較例(試験体B)について測定した平均電流を比較したものを図5に示す。
従来設計での平均電流は9.0mAであり(直線で囲まれた面積)、耐海水ステンレス鋼(SUS836L)を用いた場合の平均電流は17.0mAであった。また、炭素鋼では28.8mAであった。
試験体A〜Gについて計測した流入電流の値を表4に示す。
従来設計での平均電流は次のように求められる。すなわち、干満帯の試験体の面積を0.357m2、海中部の流入電流密度を50mA/m2とし、これと同じ電流密度が干満帯にも流入すると、電流は17.8mAとなる。そして、従来法では、干潮面(没水率100%)から満潮面(没水率0%)との間で直線的に没水率が減少すると考えると、干満帯に流入する電流は9mAとすることができる。
従来設計での平均電流と、実施例(試験体A)及び比較例(試験体B)について測定した平均電流を比較したものを図5に示す。
従来設計での平均電流は9.0mAであり(直線で囲まれた面積)、耐海水ステンレス鋼(SUS836L)を用いた場合の平均電流は17.0mAであった。また、炭素鋼では28.8mAであった。
試験体A〜Gについて計測した流入電流の値を表4に示す。
耐海水ステンレス鋼を用いた場合の平均電流は17.0mA/m2となり、平均干潮面から朔望平均満潮面まで海中部と同じ50mA/m2を用いて設計すると18mA/m2となり平均干潮面から朔望平均満潮面まで50mA/m2を用いて設計した値とほぼ同じであった。また錆の還元に相当する分だけ多く電流を消費する炭素鋼はこの値に係数1.0〜2.0を乗じた値の間であった。
上記のように、従来設計では電流が不足していたが、本願発明によれば電流が不足することはなく、良好な防食が可能となる。
上記試験においては、試験片の作製上の問題から、試験体A、C〜Gの干満帯部分にステンレス鋼そのものを用いたが、干満帯部分の材料として、炭素鋼に耐食性金属(ステンレス鋼、モネル、キュプロニッケル、ニッケル基合金等)のライニングを施したもの、又は、炭素鋼と耐食性金属とのクラッド鋼を用いた場合おいてもステンレス鋼を用いた場合と同様の効果が得られることは明らかである。
また、試験体Bにおいて得られた効果は、干満帯部分の材料として有機ライニング又は塗装を施した炭素鋼を用いた場合においても得られることは明らかである。
上記試験においては、試験片の作製上の問題から、試験体A、C〜Gの干満帯部分にステンレス鋼そのものを用いたが、干満帯部分の材料として、炭素鋼に耐食性金属(ステンレス鋼、モネル、キュプロニッケル、ニッケル基合金等)のライニングを施したもの、又は、炭素鋼と耐食性金属とのクラッド鋼を用いた場合おいてもステンレス鋼を用いた場合と同様の効果が得られることは明らかである。
また、試験体Bにおいて得られた効果は、干満帯部分の材料として有機ライニング又は塗装を施した炭素鋼を用いた場合においても得られることは明らかである。
本発明の海洋鋼構造物は、耐食性を有し、かつ、維持管理が容易であるので、海洋リグやジャケット、桟橋、係留設備(ドルフィン)等の長期にわたって耐食性が要求される海洋構造物として用いることができる。
Claims (4)
- 海中部及び干満帯に炭素鋼を使用した海洋鋼構造物であって、該構造物の平均干潮面以下の海中部を対象とした防食電流値に、平均干潮面から朔望平均満潮面の範囲の対象面積に海中部と同じ電流密度を乗じ、これに係数1.0〜2.0を乗じて得られる電流値を加えた電流値によって電気防食を行ったことを特徴とする海洋鋼構造物。
- 海中部及び干満帯に炭素鋼を使用し、この干満帯に有機ライニング又は塗装を行った海洋鋼構造物であって、該構造物の平均干潮面以下の海中部を対象とした防食電流値に、平均干潮面から朔望平均満潮面の範囲の対象面積に海中部と同じ電流密度を乗じ、これに係数1.0〜2.0を乗じ、更に欠陥率を乗じて得られる電流値を加えた電流値によって電気防食を行ったことを特徴とする海洋鋼構造物。
- 海洋構造物の少なくとも干満帯にステンレス鋼、モネル、キュプロニッケル、ニッケル基合金の少なくとも一つを適用し、該構造物の平均干潮面以下の海中部を対象とした防食電流値に、平均干潮面から朔望平均満潮面の範囲の対象面積に海中部と同じ電流密度を乗じて得られる電流値を加えた電流値によって電気防食を行ったことを特徴とする海洋鋼構造物。
- 海洋構造物の少なくとも干満帯にステンレス鋼、モネル、キュプロニッケル、ニッケル基合金の少なくとも一つを適用し、この一部に有機ライニング又は塗装による被覆を行った海洋鋼構造物であって、該構造物の平均干潮面以下の海中部を対象とした防食電流値に、平均干潮面から朔望平均満潮面の範囲の被覆された面積に海中部と同じ電流密度を乗じ更に欠陥率を乗じて得られる電流値と、平均干潮面から朔望平均満潮面の範囲の未被覆部の面積に海中部と同じ電流密度を乗じて得られる電流値とを加えた電流値によって電気防食を行ったことを特徴とする海洋鋼構造物。
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