JPH11140677A - 銅又は銅合金製金網の防汚及び局部腐食防止の方法及び装置 - Google Patents

銅又は銅合金製金網の防汚及び局部腐食防止の方法及び装置

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JPH11140677A
JPH11140677A JP9329672A JP32967297A JPH11140677A JP H11140677 A JPH11140677 A JP H11140677A JP 9329672 A JP9329672 A JP 9329672A JP 32967297 A JP32967297 A JP 32967297A JP H11140677 A JPH11140677 A JP H11140677A
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Kiyomi Saito
清美 斎藤
Tadahiko Oba
忠彦 大庭
Morihiko Kuwa
守彦 桑
Hidetomo Usui
英智 臼井
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Nakabohtec Corrosion Protecting Co Ltd
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Abstract

(57)【要約】 【課題】 銅又は銅合金製金網の防汚作用を保持させな
がら、該金網の局部的異常腐食を抑制する方法及び装置
を提供する。 【解決手段】 海水と接する銅又は銅合金製金網への海
生生物の付着を抑制し、かつ金網の列線交差部の隙間腐
食を抑制する方法及び装置であって、金網に連続して1
0〜100mA/m2 の陰極電流を流入させるか、又は
/及び金網の電位を自然電位よりも20〜150mV卑
に保持することを特徴とする銅又は銅合金製金網の防汚
及び局部腐食防止方法及び装置。

Description

【発明の詳細な説明】
【0001】
【発明の属する技術分野】本発明は、銅又は銅合金に対
する海水中に棲息する海生生物の付着抑制方法及び該金
属の局部異常腐食防止方法並びに両機能を有する装置に
関する。詳しくは、クラゲ侵入防止或いは養魚用生簀
(イケス)等に使用される銅又は銅合金製金網上に付着
する海生生物を効果的に抑制し、且つ該金網の局部溶解
を抑止する方法及び装置に関する。
【0002】
【従来の技術】海水に接して敷設或いは設置される構造
物や施設は、常に海水に曝されていることから、該構造
物や施設の供使寿命期間、安全にその機能を十分発揮さ
せるために保守管理上大きな技術的課題がある。該構造
物や施設(以下該構造物と称する)の腐食防止対策と海
水中に棲息する海生生物による汚損防止(防汚)対策で
ある。
【0003】腐食防止対策は、耐食性材料の開発、各種
の塗装、メッキ、化成処理、ライニング、溶射或いは電
気防食といった優れた防食手段が開発され、実用面でも
広く供使され、ほぼ満足できる状況にある。
【0004】海生生物による汚損防止(防汚とも言う)
対策も塩素系薬剤の投入、防汚塗料の塗布、防汚
金属の被覆(主として銅または銅合金)、海水電解に
よる塩素、次亜塩素酸イオンの生成及び銅の海水電解
による海水中への銅イオンの供給などが行われている。
これらの手段は需要者側の条件に合わせて単独使用或い
は併用されている。
【0005】いずれの防汚対策も有効な手段であるが、
対象構造物或いは環境条件によっては適正とは言えない
手段もある。例えば、塩素系薬剤の投入、海水電解によ
る塩素、次亜塩素酸イオンの生成或いは銅イオンの海水
中への供給は、防汚効果を高めるため過剰濃度になり易
く環境汚染の原因になり兼ねない。海水中に半永久的に
敷設される構造物にあっては防汚塗装やライニングは、
再加工が容易でなく適用が難しい。長期に亘って防汚効
果を維持させるために、防汚手段の寿命や維持管理の種
々の手間と調整に苦労が付き纏う。防汚に有効な最小濃
度に抑え、手段の長寿命化及び維持管理が容易な方策の
出現が望まれるところである。
【0006】銅による海生生物駆除は、水中に溶出した
銅イオンによる殺菌効果による。近年水中に棲息する生
物の駆除に銅を用いた技術の開発が文献に多数報告され
ている。例えば、特公昭41−5193号公報には、海
水を導入する暗渠または開渠の内壁面に銅陽極及び陰極
を設け、外部直流電源に接続し海水中に銅イオンを溶出
させ海生生物を死滅させる方法が開示されている。特公
昭43−6374号公報には、海水と接する機器設備を
陰極とし該海水環境中に別途銅又は銅合金陽極を設置し
て電解し、銅イオン含有海水で該機器設備を覆って海生
生物の付着を防止する方法が提示されている。また、特
公昭45−923号公報には、海水導入管の内面に一対
の銅電極を設け、交流または極性が転換する直流電圧を
供給して海生物の付着を抑制する方法が示されている。
特開昭52−140477号公報には、対象海中鋼構造
物の表面に絶縁性支持枠を介して銅、亜鉛等の貴金属イ
オンを生成する金属材料を設置し、該金属材料を直流電
源の正極に接続して、対象構造物を囲む海水環境に貴金
属イオンを供給する魚介類駆除用電極(陽極)が開示さ
れている。いずれも海水環境中に銅イオンを供給し、海
水中に棲息する海生生物の幼生の死滅を図っている。こ
れらの方法では、対象構造物とは別個に銅イオンを海水
中に溶出させる手段・装置が設置されている。
【0007】海水中に銅イオンを放出して海水中の生物
を駆除する方法では、銅の陽極電解で該イオンを連続的
に供給する必要がある。対象構造物や施設を取り囲む環
境海水中に所定量の該イオンを放出させる必要がある。
防汚に必要な銅イオン濃度は0.01ppm以上と言わ
れている。実用的には、0.1A/dm2 以上の陽極電
流密度で連続して溶出させている。言換えると、対象構
造物を取り囲む環境海水の容積によって、銅イオンの絶
対量は膨大な量になる。溶解速度で示すと少なくとも
0.05mm/y以上で溶解させなくてはらない。すな
わち、陽極電解によって銅イオンを海水中に含有させる
ことは、より過剰濃度になりやすく、系外に未反応のフ
リーの銅イオンを流出させることになる。
【0008】溶出した銅イオンが防汚に有効に作用する
のであるから、対象構造物の少なくとも海水と接する界
面を銅又は銅合金で横成し、防汚に必要な、すなわち、
海生生物の幼生が忌避する最小限の銅イオンの流出があ
れば、該構造物表面への海生生物の着生を抑制すること
ができる。
【0009】本発明の対象構造物は、クラゲ侵入防止金
網或いは魚介類の養殖用生簀等である。該構造物に使用
される金属製金網の海生生物汚損対策と該金網の局部的
異常腐食防止対策にある。金網材は、潮流や波浪に耐え
ることが重要であるから比重の軽い材料は不適当であ
る。アルミニウム、チタン、これらの金属を基とした合
金や樹脂製品がこれに当たる。鉄鋼、銅、銅合金及び鉛
からなる金網が広く採用されている。
【0010】これらの金網は共通の課題を抱えている。
それは海水腐食防止対策、生物汚損対策及びコストであ
る。鉄鋼金網は、コストは安いが腐食し易く、亜鉛被覆
や電気防食の適用で対応できるが、コスト高になり、寿
命に限界がある。加えて海生生物の付着を促進するた
め、金網を取水溝入口に取り付けた場合には取水量の減
少や、生簀内にあっては酸素欠乏や細菌の増殖を促し兼
ねない。鉛は、加工性や重量的には魅力あるものの単体
では破断し易くさらに腐食問題があり、ポリエチレン等
の樹脂被覆が行われている。樹脂被覆はコスト高に加え
て海生生物の付着を促進することになり、防汚塗料等の
何らかの汚損対策が必要となる。
【0011】銅或いは銅合金は、コストを除けば加工
性、耐食性及び防汚性の点で、他の材料に比して優れて
いるが、コストに見合う長寿命が望まれる。長期的に見
ると(少なくとも1年)潮流・波浪の繰返しによる加工
硬化による脆性破断、金網線材の列線交差部或いはノ一
ド部(節)に生ずる隙間腐食による破損、及び海水腐食
(これが銅イオンを生成し海生生物の着生を抑制する)
により、該銅或いは銅合金の表面に不溶性銅化合物(酸
化銅、水酸化銅、塩化銅からなるオキシ銅化合物)を形
成して銅の溶出を抑え、その結果該銅或いは銅合金金網
の表面に海生生物の着生を促進するなどの問題が起こっ
ている。
【0012】
【発明が解決しようとする課題】本発明者達は、上述の
海生生物付着防止(以下防汚と称する場合もある)手段
の中で、今日広く利用されている銅に注目し、銅又は銅
合金製金網の効果的な使用方法について鋭意検討を行っ
た。
【0013】銅は、古くからその殺菌性が知られ、動植
物に付着し、寄生して種々のトラブルを起こす微生物細
菌の駆除に広く用いられ、或いは薬用としても用いられ
ている。
【0014】海水中に棲息する海生生物の駆除について
は、19世紀の中期に木造船の外板に銅板を張付けて使
用された記録がある。海生生物駆除の基本的な狙いは、
対象構造物の機能を阻害しない範囲内で該構造物の表面
への海生生物の付着、成長及び繁殖を抑制することにあ
る。従って、該構造物を取り囲む海水環境全体を防汚環
境にする必要はない。無限量とも言われる海水環境に、
例えば0.0Xppmの低濃度の毒性イオンを存在させ
る事は絶対量としては大変な量を生成させることにな
る。ましてや、有用海生生物までも排除することになる
し、余剰の該毒性イオンは環境汚染の要因となり兼ねな
い。
【0015】これを防ぐには、該構造物を防汚効果を有
する材料、例えば銅或いは銅合金等で構成するか、被覆
することである。防汚材料で構成或いは被覆すること
は、長期的に見てその防汚効果の維持と海水による腐食
の問題が重要要素である。
【0016】防汚作用は、該防汚材料の自然溶解に因づ
く毒性イオン(環境全体を該毒性イオンで防汚すること
に比べて対象区域は限定され、且つ溶出量も少なくて済
む)の溶出にある。何らかの要因で溶出が抑制されると
防汚効果は低減する。防汚金属の溶解に伴って該金属の
表面が不溶性生成物で覆われ溶出が抑制されると、該皮
膜への海生生物の着生が始まる。防汚金属の自然溶解で
あるから、海水中に含まれる酸素との反応による酸化皮
膜の形成が避けられない。この酸化皮膜形成を阻止或い
は抑制する手段が必要がある。
【0017】一方、対象構造物表面を防汚金属で構成す
ることは、該構造物が鉄鋼材で防汚金属が銅または銅合
金である場合には、両者の金属的接触を絶縁しないと異
種金属接触腐食を生ずる。また、該構造物を防汚金属で
構成する事は機械的加工によって組立てられるので、加
工歪を該金属内に残すことになり、或いは設計・組立て
上、重なり部分が避けられない等が原因で局部的異常腐
食を生じやすい。本発明の対象は、銅または銅合金線材
を網加工した金網である。本来、銅または銅合金特に銅
−ニッケル或いはアルミ黄銅は、海水に対して耐食性を
有している金属である。しかし、線材加工、繰返し曲げ
・振動による残留歪の局部集中部分或いは列線交差部
(ノード)の隙間部分に局部侵食を生じ早期に取換えが
必要となる事がある。これを防止するため電気防食(陰
極防食)が行われている。しかし、前述の防汚効果の面
から見ると、電気防食は銅又は銅合金の溶出を抑制する
ので海生生物の着生を促すことになる。
【0018】本発明の目的は、電気防食法を利用して銅
又は銅合金製金網の防汚作用を保持させながら、該金網
の腐食、特に局部的異常腐食を抑制する方法及び装置を
提供することにある。つまり本発明の第1の目的は、防
汚金属である銅または銅合金の溶出を最小限にして該防
汚金属の表面に海生生物の付着を抑制する事にある。第
2の目的は、該防汚金属製金網の局部的異常腐食を同時
に抑制することにある。
【0019】
【課題を解決するための手段】上記目的は、下記の手段
によって達成することができる。すなわち本発明は、海
水と接する銅又は銅合金製金網への海生生物の付着を抑
制し、かつ該金網の列線交差部に生ずる隙間腐食を抑制
する方法であって、該金網に連続して10〜100mA
/m2 の微弱な陰極電流を流入させるか、又は/及び該
金網の電位を自然電位よりも20〜150mV卑に保持
することを特徴とする銅又は銅合金製金網の防汚及び局
部腐食防止方法にある。
【0020】更に本発明は、海水と接する銅又は銅合金
製金網への海生生物の付着を抑制し、かつ該金網の列線
交差部に生ずる隙間腐食を抑制する装置であって、陽極
又は流電陽極及び該金網からなる陰極が直流電源を介し
て又は介さずに接続され、該金網に連続して10〜10
0mA/m2 の微弱な陰極電流を流入させるか、又は/
及び該金網の電位を自然電位よりも20〜150mV卑
に保持することを特徴とする銅又は銅合金製金網の防汚
及び局部腐食防止装置にある。
【0021】前記銅又は銅合金は、純銅又は銅−ニッケ
ル合金若しくはアルミ黄銅であることが好ましい。ま
た、前記銅合金製金網の電位は自然電位よりも20〜1
00mV卑に保持することが好ましい。
【0022】直流電源と接続する陽極としては、通常不
溶性の白金被覆チタンや鉛−銀合金が用いられる。また
流電陽極としては、陰極よりも電位的に卑であるアルミ
ニウム若しくは亜鉛又はこれらの金属を基とする合金等
が用いられる。
【0023】銅及び銅合金は、本来海水に対して耐食性
を有する。海水中での銅の自然溶解量は、溶解速度で
0.03〜0.04mm/y(年)(260〜340g
/m2・y)である。キュプロニッケル(Cu/Ni=
9〜7/1〜3)やアルミ黄銅では、≦0.02mm/
yである。該銅又は銅合金表面に海生生物の付着を防ぐ
には0.007〜0.015mm/yの速度で銅が海水
中に溶出している必要がある事から、自然状態では防汚
に対して過剰溶出であり、余剰の溶出は不必要に海生生
物を駆除する事になる。
【0024】銅又は銅合金に陰極電流を供給して電気防
食すると銅の溶出を抑制できるが、溶出量を≦0.01
mm/yにすると該銅又は銅合金の表面に海生生物が付
着しやすくなる。自然腐食状況では、短期的(約半年
位)には上記の≧0.01mm/yの溶出量が確保され
るため防汚効果が期待されるが、時間の経過と共に該銅
又は銅合金の表面に不溶性の生成物が形成し、これは銅
の溶出を抑制する方向に作用するため海生生物が付着し
やすい環境となり、結果的に防汚効果の低下を招く。従
って、該銅又は銅合金の表面は何らかの手段で清浄活性
化を図らねばならない。
【0025】機械的研掃による金網の表面活性は、水中
作業のため作業効率が悪く、該金網を頻繁に清浄化する
事は容易ではない。機械的研掃は、該金網の列線交差部
(ノ一ド)に生ずる隙間腐食の防止対策にはならない。
一方陰極電流による電気防食は、腐食防止手段として有
効であっても、海生生物の駆除にはならない。よって、
海生生物が忌避する最小量の銅の溶出を確保し同時に隙
間腐食による異常腐食を抑止する方法が望まれる。
【0026】かかる課題を解決するのが本発明の目的で
ある。銅又は銅合金製金網の表面に連続して10〜10
0mA/m2 の微弱な陰極電流を供給して、該金網の電
位を自然電位よりも20〜150mV卑に保持すること
によって、該銅又は銅合金の溶出を防汚に必要な最小量
に抑制し、同時に該銅又は銅合金の表面に海生生物の付
着を抑制する事ができる。銅或いは銅合金の種類によっ
て自然溶解量や自然電位が異なるので保持電位は異な
る。これらの設定陰極電流密度及び電位は、銅の溶出を
完全に停止させる数値ではなく、防汚に必要な溶出を保
持し、かつ局部的腐食を抑制するための値である。
【0027】
【発明の実施の形態】本発明は、少なくとも海水に接す
る部位が銅又は銅合金で構成された銅又は銅合金製構造
物(金網)の海生生物汚損防止(防汚)を図りながら、
該金網の局部腐食を抑制する方法及び装置に関する。よ
り具体的には、本発明は、冷却用海水を取り入れる取水
溝入口に設置されるクラゲ侵入防止用或いは生簀用等の
銅又は銅合金製金網の防汚と局部腐食抑制手段にある。
【0028】銅及び銅合金は、本来海水に対して耐食性
を有する。海水中での銅の自然溶解量は、溶解速度で
0.03〜0.04mm/y(260〜340g/m2
・y)である。キュプロニッケル(Cu/Ni=9〜7
/1〜3)やアルミ黄銅では、≦0.02mm/yであ
る。該銅及び銅合金の表面に海生生物の付着を防ぐには
0.007〜0.015mm/yの速度で海水中に溶出
している必要がある。同一環境で銅の海水電解による海
水中に銅イオンを放出させる手段に比して銅の溶解流出
量は少ないとはいえ、自然状態では防汚に対して過剰溶
出であり、余剰の溶出は不必要に有用海生生物も駆除す
る事にもなる。
【0029】本発明の対象は、銅又は銅合金製の金網で
あり、該金網の防汚と局部腐食の抑制が解決課題であ
る。該金網に海生物が付着し繁殖するのを抑制すること
にあるが、海水中での自然溶解では前述のごとく過剰溶
出である。しかし、短期(約半年乃至1年位)では防汚
効果を発揮するが、時間の経過と共に不溶性の銅化合物
を形成し銅の溶出が阻止される。その結果、金網表面に
海生生物が着生する。銅−ニッケル合金(キュプロニッ
ケル)やアルミ黄銅は、耐海水性合金であるから純銅に
比して銅の自然溶出量が少なく(対海水性銅合金と言わ
れる所以である)、短期的(約半年位)には十分防汚効
果を有しているものの、純銅よりも表面に皮膜を形成し
易く銅イオンの溶出が阻害され海生生物の着生を加速す
る。
【0030】加えて、自然溶解による該銅又は銅合金表
面の防汚は、該銅又は銅合金が均一溶解するならば、コ
ストに見合う寿命や設計が可能であるが、表面皮膜の形
成等で均一溶解は現実に期待できない。金網にあって
は、線材加工や網加工による残留歪があり、海水中に設
置されると金網の列線交差部(ノード)に隙間腐食を生
じ局部腐食が避けられない。かかる異常腐食は早期に網
の破断に繋がる。この様な異常腐食を防止する事が均一
溶解の鍵である。その手段として電気防食法がある。該
金網に陰極電流を流すことによって腐食の要因である局
部電池を打消し防止する方法である。
【0031】銅又は銅合金に陰極電流を供給すると、銅
の溶出を抑制するので、該海水と接する界面は海生生物
が付着しやすい環境になる。これでは防汚の目的が達成
されない。該銅又は銅合金に表面から防汚に有効な最少
量の銅イオンの流出を図りながら該銅又は銅合金の局部
的異常腐食を抑制する方法が望まれる。
【0032】前述したごとく、銅の海水中での自然侵食
速度は、0.03〜0.04mm/yであり、キュプロ
ニッケル(Cu/Ni=9〜7/1〜3)やアルミ黄銅
では≦0.02mm/yである。該銅又は銅合金の表面
への海生生物の付着を防ぐには0.007〜0.015
mm/yの速度で銅イオンが海水中に溶出している必要
がある。半年或いは1年以内の短期間ならともかく、そ
れ以上となると該銅又は銅合金の表面に不溶性の酸化物
やオキシ水酸化物からなる化合物皮膜を形成し、銅イオ
ンの溶出を阻害し、海生生物の付着を促す。酸化物の形
成阻止や酸化物を除去する事が肝要である。酸化物であ
るから該銅又は銅合金の表面を還元性の状態に置けば良
い。これには該銅又は銅合金に陰極防食(電気防食)を
適用することによって達成されるし、金網の列線交差部
(ノード)の隙間に生ずる局部的異常腐食をも抑制す
る。
【0033】銅又は銅合金製防汚金属を陰極として間欠
的に陰極電流を流し、該防汚金属の活性を維持させる方
法が特開昭63−142109号公報に開示されてい
る。この技術は論理的には理解できるが、間欠通電の間
隔、時間及び電源調整装置などの管理が複雑であり、実
施に当たっては専門の技師を必要とする。間欠陰極通電
とはいえ100mA/m2 の陰極電流密度の繰り返し
は、通電時に銅の溶出をほぼ完全に抑制しており、却っ
て陰極通電中は海生生物の着生雰囲気を構成しているこ
とになる。不通電期間/陰極通電期間=0.2で、10
0mA/m2 の陰極電流密度の通電では海生生物の付着
が促進することを本発明者達の実用テストで確認してい
る。
【0034】本発明者達は、銅又は銅合金製金網につい
て防汚に必要な最小の銅の溶出速度(0.007〜0.
015mm/y)に保持するため、10〜100mA/
2未満の陰極電流密度で連続通電し、金網の電位を自
然電位よりも20〜150mV卑(完全防食電位よりも
貴な電位)にすることで、銅又は銅合金の防汚と異常腐
食抑制が達成されることを見出した。好ましい陰極電流
密度は、銅或いは銅合金の種類によって異なるが、純銅
で10〜100mA/m2 、キュウプロニッケルで20
〜40mA/m2 である。電位は銅金網で自然電位より
20〜150mV、キュウプロニッケル或いはアルミ黄
銅では20〜80mV卑に保持するのが好ましい。言換
えると、銅又は銅合金の防食電位である−350〜−4
00mV(塩化銀電極基準)よりも貴な電位に保持する
ことである。これらの電流値を越えたり設定電位が卑で
あると銅イオンの溶解速度は≦0.01mm/yとな
り、局部腐食を抑制するが海生生物が急速に付着する。
【0035】
【試験例】試験例 純銅及び90/10Cu−Ni合金の材質からなる金網
を天然の海水中に浸漬し、Pt被覆チタンメッシュを陽
極として直流電源を介して陰極電流を流し、陰極電流密
度と、該金網上への海生生物の付着量(防汚率)、金網
電位及び銅の溶解速度との関係を調査した。
【0036】いずれの金網も線形×目合=φ3.2×5
0mm、仕立面積100×100cmの菱型の金網であ
る。上記を純銅金網については10セット、銅合金金網
については9セット用意した。
【0037】該金網は陰極となっており、陰極防食を受
け銅の溶解が抑制されている。陰極電流密度は、通電電
流0の自然腐食を含めて、純銅金網では300mA/m
2 までの10段階、9/1Cu−Ni(キュウプロニッ
ケル)金網では100mA/m2 までの9段階に設定し
て定電流通電を行なった。テスト期間は、海生生物の生
態活動が春期から秋期に限られるため、初春に設置しお
よそ13カ月余り実施した。
【0038】図1に金網設置約7か月後の陰極電流密度
に対する金網電位と防汚率(海生生物未着生金網面積の
割合で示す。%値の高いほど防汚効果が大きい)の関係
を示す。陰極電流密度が0〜50mA/m2 での防汚率
は、純銅及び銅合金とも95%以上を示しほぼ完全に防
汚されている。純銅はさらに100mA/m2 でも高い
防汚効果が期待できる。いずれの金網も線表面に僅かに
珪藻類が着生している程度であった。しかし、100m
A/m2 を超えると数ヵ月で海生生物の着生が見られ、
ムラサキイガイとフジツボ類が密生し防汚効果は急速に
低下した。金網表面には、電流密度の低いほど緑青が多
く散見した。陰極電位で見ると通電電流が多くなる程徐
々に卑な電位を示しているが、9/1Cu−Ni合金で
陰極電流密度が50mA/m2 を超えると急速に卑化
し、銅の溶出が殆ど無くなりこの時点で防汚効果が失わ
れている事を示している。純銅は、合金に比して200
mA/m2 までは、電位の卑化が鈍く防汚効果の低下も
鈍い。
【0039】図2は金網設置13カ月後の陰極電流密度
に対する金網電位と防汚率の関係を示す。およそ半年を
過ぎた時点からいずれの金網にも海生生物の着生が散見
し始めた。13カ月後では純銅又は銅合金とも防汚率は
0〜15mA/m2 で50%以下、20mA/m2 を超
えると純銅、銅合金とも60%以上の防汚率を示してい
る。純銅で100mA/m2 の85%がピークである。
銅合金は40mA/m2 の90%がピークになってい
る。陰極電流を受けているため、図3に見られるように
銅の溶出は抑えられているにも拘らず防汚効果が高くな
っているのは、防汚に有効な銅の溶解速度≧0.01m
m/yを確保していることと陰極還元により溶解生成物
が固着性から軟弱なものへ変化しているためと推察され
る。陰極電流密度が純銅で100mA/m2 、銅合金で
40mA/m2 を超えると、金網の電位は防食電位であ
る−370〜−420mVに達して銅の溶解速度は≦
0.0lmm/yとなり防汚効果が急速に低下する。
【0040】このように陰極電流を連続的に負荷した金
網は、いずれも金網列線交差部の隙間腐食や線表面の局
部腐食が抑制され破断の傾向は見られなかった。特に陰
極電流密度が20mA/m2 以上では顕著な効果が見ら
れた。
【0041】これらの結果から、銅又は銅合金製金網の
防汚と局部腐食の抑制は、連続して10〜100mA/
2 の陰極電流を供給するか、陰極電位を自然電位より
も20〜150mV卑化させることによって達成される
ことがわかる。これらの値は金網の銅材質によって最良
条件は異なるが、共通に有効な条件範囲は、陰極電流密
度20〜40mA/m2 、陰極電位で自然電位よりも2
0〜80mVである。
【0042】
【発明の効果】銅又は銅合金製金網への海生生物付着防
止(防汚)と金網列線交差部を中心に起こる隙間腐食防
止とを同時に解決する手段について検討した。銅又は銅
合金に海水中で連続的に微弱な陰極電流を供給して、銅
又は銅合金の溶出速度を防汚に有効な最小限に抑えるこ
とにより、銅又は銅合金表面に着生する海生生物の付着
を抑制し、併せて銅又は銅合金の局部腐食を抑制し均一
溶解を促す。
【0043】これによって、高価な銅又は銅合金製金網
の供使寿命の延長が図れる。海生生物の着生も同時に抑
制されるので、海生生物除去作業頻度を大幅に減ずる事
ができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】 陰極電流密度に対する防汚率と電位(7カ月
間通電)の関係を示す。
【図2】 同上(13カ月間通電)。
【図3】 陰極電流密度に対する防汚率と溶解速度(1
3カ月間通電)の関係を示す。
───────────────────────────────────────────────────── フロントページの続き (72)発明者 臼井 英智 埼玉県上尾市中新井417 株式会社ナカボ ーテック技術開発研究所内

Claims (4)

    【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】 海水と接する銅又は銅合金製金網への海
    生生物の付着を抑制し、かつ該金網の列線交差部に生ず
    る隙間腐食を抑制する方法であって、該金網に連続して
    10〜100mA/m2 の微弱な陰極電流を流入させる
    か、又は/及び該金網の電位を自然電位よりも20〜1
    50mV卑に保持することを特徴とする銅又は銅合金製
    金網の防汚及び局部腐食防止方法。
  2. 【請求項2】 前記銅又は銅合金が、純銅又は銅−ニッ
    ケル合金若しくはアルミ黄銅である請求項1に記載の防
    汚及び局部腐食防止方法。
  3. 【請求項3】 前記銅合金製金網の電位は自然電位より
    も20〜100mV卑に保持する請求項1又は2に記載
    の防汚及び局部腐食防止方法。
  4. 【請求項4】 海水と接する銅又は銅合金製金網への海
    生生物の付着を抑制し、かつ該金網の列線交差部に生ず
    る隙間腐食を抑制する装置であって、陽極又は流電陽極
    及び該金網からなる陰極が直流電源を介して又は介さず
    に接続され、該金網に連続して10〜100mA/m2
    の微弱な陰極電流を流入させるか、又は/及び該金網の
    電位を自然電位よりも20〜150mV卑に保持するこ
    とを特徴とする銅又は銅合金製金網の防汚及び局部腐食
    防止装置。
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