JP3910839B2 - 電気防食用鋼材、及び電気防食性に優れた海洋構造物 - Google Patents

電気防食用鋼材、及び電気防食性に優れた海洋構造物 Download PDF

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Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、電気防食用に使用される鋼材の耐食性、犠牲陽極寿命、外部電源方式における防食電流低減等を向上させることができる電気防食用鋼材;重防食用塗料に代表される電気防食用塗料;及び電気防食性に優れた海洋構造物に関するものである。本発明の鋼材は、無塗装で使用される鋼材の寿命を向上できるのみならず、被覆層を有する鋼材(例えばジンクリッチ塗料が施されたジンクリッチ塗装鋼材、亜鉛めっきや合金化亜鉛めっきが施された鋼材等)の寿命も向上できるので、特に船舶、橋梁、船体、船舶用バラストタンク等の海洋構造物に好適に用いられる。
【0002】
【従来の技術】
電気防食法は、鋼材に外部から電流を流すことにより、鋼材の電位を腐食電位より卑な電位に保持して防食する方法であり、外部電源法と犠牲陽極法に大別される。このうち前者の外部電源法は、直流電源により、鋼材をマイナス側に、金属電極をプラス側に夫々接続し、両者の間に電流を流すことによって防食する方法であるが、電力費が増大するという問題を抱えている。一方、後者の犠牲陽極法は、Al,Zn,Mg等の如くFeよりもイオン化傾向が大きい元素を主成分とする合金を鋼材に電気的に接続する方法であり、当該合金は優先的に溶解して防食電流を発生する為、鋼材電位を卑な電位とすることによって防食効果を得るものである。この方法では、陽極の消耗や交換作業等に伴うコスト増大の問題がある。この様に電気防食法では、いずれの方法においても、防食電流を常に流し続けることが必要である為、コスト増大は避けられない。そこで、経済性等の観点から、コストを低減し得る新規な電気防食電流低減技術の開発が切望されている。
【0003】
一般に海水中で電気防食すると、防食電流が経時的に低減することが従来から知られている。これは、海水中に含まれるCaイオン、Mgイオン等が鋼材表面に析出し、鋼材表面を覆う(エレクトロコーティングと呼ばれる皮膜を形成)ことにより、実質的な防食面積が減少し、見かけの防食電流総量が徐々に低減する為であり、これによりコストの削減が可能になる。従って、上記エレクトロコーティングを有効利用する方法が検討されている。
【0004】
例えば特開平11−323483及び特開平11−323486には、0.05%以上のCuを添加することにより、安定したエレクトロコーティングの生成を促進できる旨記載されている。
【0005】
上述した電気防食法は、海水中では有効であるが、空気中では通電が遮断され、防食効果が著しく低減するという欠点がある。例えば船舶等に設けられるバラストタンク等は、タンク内に注入された海水により、タンクを構成する鋼材の腐食が激しいことが知られている。バラストタンク鋼材部分の腐食状況を見ると、海水に接している鋼材部分よりも、海水面上の空間部分に接する鋼材部分の腐食が激しい。特に、海水と接してから徐々に乾燥していく過程では、腐食を促進する海水や酸素が豊富に存在する極めて過酷な腐食環境下に曝される為、通常の電気防食を施しても鋼材の腐食が避けられないという問題を抱えている。
【0006】
そこで、耐海水性を高めるべく、例えば特開平6−264176には、鋼中のS含有量を0.003%以下に極めて低く抑え、且つ、Mn添加量を2.0%超に制御した耐海水性低合金鋼が開示されている。しかしながら、この方法では、特にタンカーや原油タンク等、溶接部分が多い大型海洋構造物において、所望の防食電流低減効果や耐食性を確保することは困難である。
【0007】
また、バラストタンクの防食方法として、特開平7−34270には、鋼中Cr量を0.2〜5%に制御する等して耐食性改善元素を添加すると共に、バラストタンク内の酸素濃度を大気中の0.5倍以下に低減することにより塗装工程の省略が可能な防食方法が;特開平8−216979には、バラストタンク内空間部の湿潤空気を乾燥空気と置換するか、バラストタンク内空間部の湿潤空気中の水分を除去することにより、バラストタンク内空間部の相対湿度を60%以下に保持する防食方法が、夫々、開示されている。この様な雰囲気制御による防食法は、容積が比較的小さなバラストタンクでは有効であるが、開空間である橋梁等の大型海洋構造物に適用することは困難である。更に近年のダブルハルタンカーでは、カーゴタンクの外側全てがバラストタンクになっており、この様に非常に大きな容積の雰囲気を適切に制御することは非常に難しい。
【0008】
【発明が解決しようとする課題】
本発明は上記事情に鑑みてなされたものであり、その目的は、船舶、橋梁、船体、バラストタンク等の海洋構造物に特に好適な電気防食用鋼材であって、耐食性、犠牲陽極寿命、外部電源方式における防食電流低減等を向上させることができる新規な電気防食用鋼材、電気防食用塗料、及び電気防食性に優れた海洋構造物を提供することにある。
【0009】
【課題を解決するための手段】
上記課題を解決し得た本発明の電気防食用鋼材は、
C :0.00010〜0.10%(質量%の意味、以下同じ),
Si:0.0010〜1.0%,
Mn:0.0010〜2.0%,
Cr:0.00010〜0.1%,
Cu:0.0010〜2.0%,
Ni:0.0010〜2.0%,
Ti:0.00010〜0.1%を含有する錆層が形成されており、且つ、
該錆層をX線回折法で分析したとき、CaCO3を5〜50%,α−FeOOHと非晶質成分を合計で20%以上含有する錆層が形成されているところに要旨を有するものである。
【0010】
上記錆層は、更にMg,Ca,P,S,B,N,La,Ce,及びミッシュメタルよりなる群から選択される少なくとも一種を合計で0.00010〜1.0%含有することが好ましい。
【0011】
上記の鋼材において、更に亜鉛含有被覆層(ジンクリッチ塗料が施された被覆層、亜鉛めっき層、合金化亜鉛めっき層等)が被覆されたものは本発明の好ましい態様である。
【0012】
更に本発明は被覆層を有する鋼材であって、該被覆層が、
C :0.00010〜0.10%,
Si:0.0010〜1.0%,
Mn:0.0010〜2.0%,
Cr:0.00010〜0.1%,
Cu:0.0010〜2.0%,
Ni:0.0010〜2.0%,
Ti:0.00010〜0.1%
を含有する電気防食用鋼材も本発明の範囲内に包含される。尚、上記鋼材の露出部分には、前述した錆層が形成されていることが好ましい。
【0013】
この様な電気防食用鋼材によって得られた海洋構造物(例えば船舶用バラストタンク、橋梁等)も本発明の範囲内に包含される。
【0014】
更に本発明には、
C :0.00010〜0.10%,
Si:0.0010〜1.0%,
Mn:0.0010〜2.0%,
Cr:0.00010〜0.1%,
Cu:0.0010〜2.0%,
Ni:0.0010〜2.0%,
Ti:0.00010〜0.1%
を含有する電気防食用塗料も本発明の範囲内に包含される。
【0015】
【発明の実施の形態】
本発明者らは、電気防食状態、特に湿潤状態若しくは乾湿繰返し状態にある船舶用バラストタンク内における耐食性を向上することができるのみならず、橋梁、船体等の大容積を有する海洋構造物における耐食性を高めるべく、特に、鋼材表面、若しくは塗装鋼材において塗装が剥離して鋼材が露出した部分(鋼材の露出部分)に形成される錆層に着目して鋭意検討してきた。その結果、上記錆層の成分組成が適切に制御され、且つ、X線回折法で分析したときの錆層成分が所定範囲に制御されたものは所期の目的を達成し得ることを見出し、本発明を完成した。
【0016】
以下、本発明を構成する各要件について説明する。
【0017】
(1)まず、本発明における錆層には、C:0.00010〜0.10%,Si:0.0010〜1.0%,Mn:0.0010〜2.0%,Cr:0.00010〜0.1%,Cu:0.0010〜2.0%,Ni:0.0010〜2.0%,Ti:0.00010〜0.1%が含まれている。これら元素を上記範囲に制御することにより、錆のなかでも、特に過酷な環境下における耐食性向上に有効なα−FeOOH成分及び非晶質成分の割合が高くなり、微細で緻密な錆を形成できるのみならず、耐食性に悪影響を及ぼすβ−FeOOHを抑制した錆を形成することができるからである。下限を限定したのは、所望の効果を得るのに必要だからであり、上限を限定したのは、それ以上添加すると錆による保護効果がむしろ悪化するからである。
【0018】
尚、錆層の成分組成を上記範囲に制御することにより、何故、前述した微細で緻密な錆が形成できるか、そのメカニズムは詳細には不明であるが、▲1▼地鉄が腐食溶解する際に、錆中に含まれる上記成分の炭化物や窒化物等の微細粒子が溶出し、これら微細粒子が鉄錆(FeOOH)の核として作用するか、▲2▼地鉄が腐食溶解する際に、Ti等もイオンとして溶出し、これら金属イオンが酸化、加水分解等により微細なコロイド若しくは水酸化物を形成し、これらが鉄錆の核となること等が考えられる。即ち、これらの核が形成されることにより、粗くて脆く剥離しやすい結晶性錆(β−FeOOH等)の発生及び成長を抑制することができ、その結果、安定して緻密な錆の形成、更には促進が図られると考えられる。
【0019】
この様な効果を得るに当たっては、好ましくは、Cを0.001%以上、0.08%以下;Siを0.01%以上、0.6%以下;Mnを0.01%以上、1.6%以下;Crを0.0005%以上(より好ましくは0.001%以上、更により好ましくは0.005%以上)、0.06%以下(より好ましくは0.05%未満、更により好ましくは0.03%以下);Cuを0.01%以上、1.6%以下;Niを0.01%以上、1.6%以下;Tiを0.001%以上(より好ましくは0.04%以上、更により好ましくは0.008%以上)、0.08%以下に制御することが推奨される。
【0020】
上記元素のうち、特にTi及びCrは、所望の錆層を得るのに極めて重要である。これらは他の元素に比べ、緻密な錆の形成効果が極めて大きいからである。従って、特に厳しい腐食環境下に曝される場合には、当該環境の程度に応じて、錆層中のTi及びCr量を、上記範囲のなかでも好ましい範囲、更に、より好ましい範囲へと、適切に制御することが推奨される。
【0021】
更に上記の錆層には、Mg,Ca,P,S,B,N,La,Ce,及びミッシュメタル(発火合金)よりなる群から選択される少なくとも一種を合計で0.00010〜1.0%含まれていることが好ましい。これらの元素も、所望の錆を得るのに有用であるが、多量に添加すると、錆層における非晶質層の形成が阻害され、保護効果が低下する。より好ましくは0.005%以上、0.5%以下である。上記元素は単独で使用しても良いし、2種以上併用することができる。ここで、ミッシュメタルは、CeやLa等の希土類元素を主体にしたもの(例えばCe主体の希土類元素混合体、Ceに30%程度のFe,Ni,Co等を添加したもの、La−Mg形合金、La−Pb系合金、La−Sn系合金等)と、それ以外のもの(Zn−Sn系合金、U−Fe系合金等)とに大別されるが、本発明では、これら両方が包含される。
【0022】
(2)更に本発明における錆層には、上記元素を含有すると共に、該錆層をX線回折法で分析したとき、CaCO3を5〜50%,α−FeOOHと非晶質成分を合計で20%以上含有している。
【0023】
錆は、結晶性錆(α−FeOOH,β−FeOOH,γ−FeOOH,マグネタイト)と、非晶質錆に分けられる。このうちα−FeOOHは、熱力学的に安定で耐食性に優れるという傾向がある。また、非晶質成分(本発明では、後記するX線回折により定量可能な結晶成分以外の成分を「非晶質成分」と定義する)は、結晶性成分に比べ、極めて微細で緻密な安定した錆層を形成することが知られている。しかも、この非晶質成分は、結晶性の錆(特にβ−FeOOH)により、塗膜中に欠陥部分や剥離部分が形成されたとしても、当該部分を減少させる「欠陥補修機能」も有しており、長期間にわたって鋼材の耐食性を確保するのに極めて有用である。この様な観点から、本発明では、優れた防食効果を発揮する錆成分として、α−FeOOHと非晶質成分を合計で20%以上に定めた次第である。好ましい範囲は、後記するCaCO3の量によっても変化するが、30%以上である。また、その内訳としては、α−FeOOHを20%以下(好ましくは10%以下)、非晶質成分を10%以上(好ましくは20%以上)に制御することが推奨される。
【0024】
また、腐食を促進する錆成分であるβ−FeOOHは、好ましくは10%以下に抑制することが推奨される。
【0025】
更に本発明における錆層は、CaCO3を5〜50%含有するものである。この様に本発明では、錆層をX線回折法で分析したとき、上記α−FeOOH及び非晶質成分のみならず、CaCO3を所定量含有するところに特徴がある。本発明の如く電気防食用に用いられる鋼材の場合、海水中のCaに由来してCaCO3が錆層中に含まれるが、CaCO3量を上記範囲内に制御すると、微細で緻密な錆層の形成が促進され、優れた防食効果が得られることが本発明者らの研究により明らかになった。5%未満では、所望の効果が得られず、一方、50%を超えると、錆層形成による保護効果が低下する。CaCO3の好ましい量は、前述した「α−FeOOHと非晶質成分の合計量」によっても変化し得るが、概ね、10%以上、40%以下に制御することが推奨される。
【0026】
ここで、上記CaCO3は一般に、Calcite型(安定相)とAragonite型(準安定相)の二種類に大別される。本発明では、錆層をX線回折法で分析したときのCaCO3量が上記範囲に制御されていれば良く、上記種類の含有量についてまで限定するものではないが、所望の効果を得る為には、後者のAragonite型が多く含まれていることが推奨される。具体的には質量比率で、Aragonite型/Calcite型=1〜1000(好ましくは2〜100)の範囲に制御することが推奨される。
【0027】
ここで、上記成分を分析する為のX線回折法について説明する。
【0028】
X線回折法による錆の定量に当たっては、ZnOを標準物質とする岩田らの方法[岩田、中山、泊里ら、腐食防食 '95C-306]を採用することが推奨される。このX線回折法により、錆を精度良く定量できるからである。詳細には上記方法は、▲1▼内部標準物質として一定重量比のZnOを用い、▲2▼これを、鋼材から採取した錆試料と混合して微粉末化し、通常のX線回折法により同定し、▲3▼組成が既知の標準サンプルを基準にして作成された検量線に基づき、種々の錆が有する固有の回折ピークの積分強度比から錆試料中の成分を定量するというものである。
【0029】
以上、本発明の電気防食用鋼材を特徴付ける錆層について詳述した。この様な錆層は、要するに鋼材と接する部分(鋼材表面)に形成されていれば良く、これにより、所望の防食効果を発揮させることができる。尚、上記錆層は、所望の防食効果が得られる程度に鋼材表面の少なくとも一部に形成されていれば良く、必ずしも鋼材表面の全面に形成されている必要はない。
【0030】
本発明鋼材には、被覆層を有しない無塗装鋼材のみならず、被覆層を有する塗装鋼材も含まれる。無塗装鋼材においては、上記錆層が形成されている為、防食効果が発揮されるが、更に被覆層が施された塗装鋼材においては、当該被覆層による防食効果に加え、たとえ、当該被覆層(塗装部分)が腐食して欠陥部分や剥離部分が生じ、鋼材が露出したとしても、鋼材の露出部分に上記要件を満足する錆層が形成されている為、優れた防食効果が得られることになる。
【0031】
上記被覆層としては、代表的に亜鉛含有被覆層が挙げられる。当該亜鉛含有被覆層には、高濃度の亜鉛粉末を含有するジンクリッチ塗料が施された被覆層の他、溶融亜鉛めっき層、電気亜鉛めっき層、蒸着亜鉛めっき層、合金化亜鉛めっき層等が含まれる。上記構成とすることにより、電気防食電流を低減することができ、亜鉛の溶出量も抑制することができる結果、めっきや塗装の耐久寿命が著しく高められる。
【0032】
このうち耐食性向上の観点からすれば、亜鉛含有率が概ね25%以上の亜鉛含有被覆層の使用が推奨される。また、ジンクリッチ塗料は有機系、無機系のいずれも使用できるが、施工性や塗料密着性等も含めた耐食性向上という観点からすれば、無機系のものを使用することが推奨される。
【0033】
その他、海洋構造物に汎用される塗装鋼材において用いられる表面処理層(タールエポキシ塗料、変性エポキシ塗料、ショッププライマー等)も被覆することができる。
【0034】
その他、圧延後に形成される酸化膜(黒皮)等も、上記被覆層のなかに含まれる。
【0035】
更に上記被覆層としては、前述した公知の表面処理層のみならず、鋼材に所望の錆層を形成することのできる、所定の成分組成を満足する新規な被覆層も本発明の範囲内に包含される(後記する)。
【0036】
次に、この様な所定の錆を形成する方法について説明する。
【0037】
前述した通り、本発明は、無塗装鋼材および塗装鋼材の両方を包含するものであるが、このうち、無塗装鋼材では、例えば鋼中成分を適切に制御することにより;一方、塗装鋼材では、必ずしも鋼中成分を制御する必要はなく(勿論、鋼中成分を制御しても良い)、鋼材に施される被覆層の組成を適切に制御することにより、所望の錆層を得ることができる。即ち、被覆層を有する塗装鋼材では、合金を添加しない普通鋼を使用することも可能である。
【0038】
(1)まず、無塗装鋼材において、所定の錆層を形成することのできる好ましい鋼中成分について説明する。その為には、要するに錆層の組成が前記範囲に制御し得る様に調整されていれば良く、C:0.00010〜0.10%,Si:0.0010〜1.0%,Mn:0.0010〜2.0%,Cr:0.00010〜0.1%,Cu:0.0010〜2.0%,Ni:0.0010〜2.0%,Ti:0.00010〜0.1%を含有し、残部:鉄及び不可避不純物とすることが推奨され;更に、Mg,Ca,P,S,B,N,La,Ce,及びミッシュメタルよりなる群から選択される少なくとも一種を合計で0.00010〜1.0%含有しても良い。好ましくは、Cを0.001%以上、0.08%以下;Siを0.01%以上、0.6%以下;Mnを0.01%以上、1.6%以下;Crを0.0005%以上(より好ましくは0.001%以上、更により好ましくは0.005%以上)、0.06%以下(より好ましくは0.05%未満、更により好ましくは0.03%以下);Cuを0.01%以上、1.6%以下;Niを0.01%以上、1.6%以下;Tiを0.001%以上(より好ましくは0.04%以上、更により好ましくは0.008%以上)、0.08%以下に制御することが推奨される。
【0039】
(2)次に、被覆層が施された塗装鋼材について、所定の錆層を形成することのできる好ましい方法について説明する。所定の錆層を得る為には、▲1▼前記(1)に記載の如く鋼中成分を制御しても良いが、▲2▼使用する鋼は、合金を添加しない普通鋼を使用し、且つ、鋼材に被覆される被覆層を適切に制御することにより所望の錆層を形成する方法を採用することもできる。
【0040】
ここで、上記「鋼材に施される被覆層」とは、鋼材に被覆される層をすべて意味する。従って、単層の被覆層が施されているときは、当該被覆層を意味するが、鋼材に複数の被覆層が施された多層積層タイプの場合は、鋼材と直接接して被覆された層のみならず、当該被覆層の上に更に被覆された層も含まれる。本発明は、腐食により、多層または複数の被覆層に欠陥部分や剥離部分が生じ、鋼材表面が露出したとしても、鋼材の露出部分に形成されている所定の錆層によって防食効果を期待するものであり、所望の錆成分を得る為の供給源として、無塗装鋼材の場合には鋼材成分を、塗装鋼材の場合には主に鋼材に施された被覆層の成分を、夫々、適切に制御しようというものである。
【0041】
上記▲2▼の方法では、上記被覆層の組成は、C:0.00010〜0.10%,Si:0.0010〜1.0%,Mn:0.0010〜2.0%,Cr:0.00010〜0.1%,Cu:0.0010〜2.0%,Ni:0.0010〜2.0%,Ti:0.00010〜0.1%を含有し、残部:鉄及び不可避不純物とすることが推奨される。更にMg,Ca,P,S,B,N,La,Ce,及びミッシュメタルよりなる群から選択される少なくとも一種を合計で0.00010〜1.0%含有していても良い。この様な所定の被覆層を有する電気防食用鋼材は新規であり、本発明の範囲内に包含される。上記被覆層の好ましい範囲は、C:0.001%以上、0.08%以下;Si:0.01%以上、0.6%以下;Mn:0.01%以上、1.6%以下;Cr:0.0005%以上(より好ましくは0.001%以上、更により好ましくは0.005%以上)、0.06%以下(より好ましくは0.05%未満、更により好ましくは0.03%以下);Cu:0.01%以上、1.6%以下;Niを0.01%以上、1.6%以下;Ti:0.001%以上(より好ましくは0.04%以上、更により好ましくは0.008%以上)、0.08%以下である。
【0042】
また、上記▲2▼の場合に用いられる鋼は、合金を添加しない普通鋼(Mild Steel、TMCP鋼等)等が挙げられる。勿論、前記(1)の組成を満足する鋼を用いても良い。
【0043】
この様な被覆層を得るに当たっては、C:0.00010〜0.10%,Si:0.0010〜1.0%,Mn:0.0010〜2.0%,Cr:0.00010〜0.1%,Cu:0.0010〜2.0%,Ni:0.0010〜2.0%,Ti:0.00010〜0.1%を含有する塗料(残部は塗膜主成分及び不可避不純物である)の使用が推奨され;更にMg,Ca,P,S,B,N,La,Ce,及びミッシュメタルよりなる群から選択される少なくとも一種を合計で0.00010〜1.0%含有していても良い。この様な組成からなる電気防食用塗料は新規であり、本発明の範囲内に包含される。好ましくは、Cを0.001%以上、0.08%以下;Siを0.01%以上、0.6%以下;Mnを0.01%以上、1.6%以下;Crを0.0005%以上(より好ましくは0.001%以上、更により好ましくは0.005%以上)、0.06%以下(より好ましくは0.05%未満、更により好ましくは0.03%以下);Cuを0.01%以上、1.6%以下;Niを0.01%以上、1.6%以下;Tiを0.001%以上(より好ましくは0.04%以上、更により好ましくは0.008%以上)、0.08%以下に制御することが推奨される。
【0044】
上記塗料における皮膜形成成分(バインダー樹脂)としては、公知の有機樹脂が使用可能であり、エポキシ樹脂、フッ素樹脂、シリコンアクリル樹脂、ポリウレタン樹脂、アクリル樹脂、ポリエステル樹脂、フェノール樹脂、アルキッド樹脂、メラミン樹脂等を、公知の硬化剤と共に使用可能である。特に耐食性の観点からすれば、エポキシ樹脂、フッ素樹脂、シリコンアクリル樹脂等の使用が推奨される。その他、塗料に添加される公知の添加剤、例えば着色用顔料、カップリング剤、レベリング剤、増感剤、増粘剤、酸化防止剤、紫外線安定剤、難燃剤などを添加しても良い。
【0045】
また、塗料形態も特に限定されず、溶剤系塗料、粉体塗料、水系塗料、水分散型塗料、電着塗料等、用途に応じて適宜選択することができる。
【0046】
上記塗料を用い、所望の被覆層(防錆塗料の皮膜)を鋼材に形成させるには、ディッピング法、ロールコーター法、スプレー法、カーテンフローコーター法等の公知の塗工方法を用いればよい。被覆層の厚みとしては、200〜500μmが好ましく、この範囲であれば良好な耐食性が発揮される。
【0047】
以上、本発明を特徴付ける錆層の形成方法について、無塗装鋼材及び塗装鋼材の両方について詳述した。
【0048】
尚、本発明の塗装鋼材においては、鋼材に上記要件を満足する被覆層を被覆した後、更に用途に応じ、耐候性や塗料密着性を高め、色調やデザイン等意匠性を付与する目的で、他の被覆層を被覆ても良く、この様な多層の塗装鋼材も本発明の範囲内に包含される。具体的には、上述した本発明の塗料やジンクリッチ塗料を施したり、亜鉛めっきなどを行った後、エポキシ下塗り、エポキシ中塗り、ポリウレタン上塗り等、海洋構造物等で汎用される塗装を施しても良い。なかでも耐食性の観点から、フッ素樹脂やシリコンアクリル樹脂の使用等が推奨される。その他、塗装下地処理、リン酸塩処理等の化成処理等が施されていても良い。
【0049】
以下実施例に基づいて本発明を詳述する。ただし、下記実施例は本発明を制限するものではなく、前・後記の趣旨を逸脱しない範囲で変更実施することは全て本発明の技術範囲に包含される。
【0050】
【実施例】
実施例1:無塗装鋼材における錆成分と防食性との関係
本発明では、被覆層を有しない無塗装鋼材において、鋼中成分を種々変化させることにより錆層の元素及び結晶成分等を変えた場合における、錆成分と防食性との関係について調べた。
【0051】
まず、鋼中にC,Si,Mn,Cr,Cu,Ni,Tiの各基本成分;更に必要に応じて、Mg,Ca,P,S,B,N,La,Ce,及びミッシュメタルよりなる群から選択される少なくとも一種の元素(以下、選択成分で代表させる)を、添加量を変えて添加した各種鋼を溶製した後、50mm×50mm×5mmtの試験片に切出し、その重量を予め測定しておいた(腐食前の鋼材重量)。
【0052】
一方、10×50×5mmtに加工した船舶用のZn−Al合金犠牲陽極を用意し、当該犠牲陽極の重量を予め測定した後、上記の試験片にネジ止めした。この試験片の端部及び裏面、並びにネジ止めした犠牲陽極の端部に夫々、タールエポキシ塗装を施してマスキングし、試験片の表面と犠牲陽極の表面のみが腐食する様にした。
【0053】
この様に処理した試験片を原油タンカーに設けられたバラストタンクの側面中央の位置に固定し、1年間(365日間)海水環境下(浸漬と湿潤の繰り返し状態)に曝した。その後、上記試験片から犠牲陽極を取外し、且つ、試験片表面の錆層を剥ぎ取って採取し、当該錆層に含まれる元素を化学分析(原子吸光光度法及び燃焼赤外線吸収法)により定量すると共に、前述したX線回折に従い、各結晶成分の組成を定量した。具体的にはX線回折による錆成分の定量は、錆とZnOを混合して測定し、ZnOのピークに対する各結晶ピークの相対強度から各結晶成分の組成を算出した。ここで、相対強度と各結晶成分の組成との関係は、組成が既知の標準サンプルを基準にして作成された検量線により決定した。また、X線回折で定量可能な結晶成分以外の成分は「非晶質成分」と定義した。
【0054】
更に各試験片の錆層を除去し、且つ、タールエポキシ塗装によるマスキングも除去した後の試験片の重量を測定した(腐食後の鋼材重量)。
【0055】
腐食試験前後の重量差より腐食減量を算出し、腐食面積から鋼材の板厚減少量に換算した(表1の「鋼材板厚減」に相当)。一方、ネジ止めに用いた犠牲陽極についても、同様に錆層とマスキングを除去した後、重量を測定し、腐食試験前後の重量差より、腐食減量を算出し、腐食面積から板厚減少に換算した(表1の「犠牲陽極板厚減」に相当)。
【0056】
上記の腐食実験を、各鋼種につき、夫々10個の試験片について同様に行った。10個の腐食減量を同様にして算出し、その最高値と最低値を除いた残りの8個の平均値を、夫々、「鋼材板厚減」及び「犠牲陽極板厚減」とした。
【0057】
これらの結果を表1に併記する。
【0058】
【表1】
Figure 0003910839
【0059】
表1より、以下の様に考察することができる。
【0060】
まず、表1のNo.11〜14は、鋼中の基本成分及び選択成分がいずれも本発明の好ましい範囲を満足している為、錆層に含まれる元素及び成分が本発明の要件を満足する本発明例であるが、いずれも鋼材板厚減及び犠牲陽極の板厚減は夫々、0.15mm以下、0.4mm以下と著しく低く、耐食性に極めて優れていることが分かる。
【0061】
尚、No.11/No.15は鋼中の選択成分の合計量が本発明の好ましい範囲を下回る/超える例であり、鋼材板厚減及び犠牲陽極板厚減が夫々、約0.2mm、0.6mmと若干厚くなったものの、鋼中の基本成分はいずれも本発明の好ましい範囲を満足している為、下記の比較例に比べると、良好な耐食性を有している。
【0062】
これに対し、No.1は鋼中のCが少ない為、錆層中のCも少ない例;No.2は鋼中のSiが少ない為、錆層中のSiも少ない例;No.3は鋼中のMnが少ない為、錆層中のMnも少ない例;No.4は鋼中のCrが少ない為、錆層中のCrも少ない例;No.5は鋼中のCuが少ない為、錆層中のCuも少ない例;No.6は鋼中のNiが少ない為、錆層中のNiも少ない例;No.7は鋼中のTiが少ない為、錆層中のTiも少ない例;No.8は錆層中のCaCO3が少ない例;No.9は錆層中の(α−FeOOHと非晶質成分の合計量)が少ない例;一方、No.16は鋼中のCが多い為、錆層中のCも多い例;No.17は鋼中のSiが多い為、錆層中のSiも多い例;No.18は鋼中のMnが多い為、錆層中のMnも多い例;No.19は鋼中のCrが多い為、錆層中のCrも多い例;No.20は鋼中のCuが多い為、錆層中のCuも多い例;No.21は鋼中のNiが多い為、錆層中のNiも多い例;No.22は鋼中のTiが多い為、錆層中のTiも多い例;No.23は錆層中のCaCO3が多い例であり、いずれも鋼材板厚減及び犠牲陽極板厚減が夫々、0.5mm以上、1.4mm以上と、極めて大きく、耐食性が著しく劣化していることが分かる。
【0063】
実施例2:塗装鋼材における錆成分と防食性との関係
本発明では、被覆層を有する塗装鋼材において、被覆層の成分を種々変化させることにより錆層の元素及び成分を変えた場合における、錆成分と防食性との関係について調べた。
【0064】
まず、普通鋼(TMCP鋼;C:0.13%,Si:0.24%,Mn:1,1%,P:0.02%,S:0.002%)を実施例1と同様に処理して50mm×50mm×5mmtの試験片に切出した後、「腐食前の鋼材重量」を同様に測定した。更に実施例1と同様にしてZn−Al合金の犠牲陽極をネジ止めし、該犠牲陽極と接触していない部分全てに、表2に記載の塗料、即ち、C,Si,Mn,Cr,Cru,Ni,Tiの各基本成分;更に必要に応じて、Mg,Ca,P,S,B,N,La,Ce,及びミッシュメタルよりなる群から選択される少なくとも一種の元素を含む塗料を塗布した。これらの試験片を実施例1と同様にして、原油タンカーに設けられたバラストタンクの側面中央の位置に固定し、1年間(365日間)海水環境下(浸漬と湿潤の繰り返し状態)に曝した後、実施例1と同様にして錆層中の元素と成分組成を測定した。これらの結果を表3に記載する。
【0065】
【表2】
Figure 0003910839
【0066】
【表3】
Figure 0003910839
【0067】
これらの表より、以下の様に考察することができる。
【0068】
まず、表3のNo.11〜14は、被覆層(塗膜)成分がいずれも本発明の好ましい範囲を満足している為、錆層に含まれる元素及び成分が本発明の要件を満足する本発明例であるが、いずれも鋼材板厚減及び犠牲陽極の板厚減は夫々、0.15mm以下、0.35mm以下と著しく低く、耐食性に極めて優れていることが分かる。
【0069】
尚、No.11/No.15は鋼中の選択成分の合計量が本発明の好ましい範囲を下回る/超える例であり、鋼材板厚減及び犠牲陽極板厚減が夫々、約2.5mm、約0.65mmと若干厚くなったものの、鋼中の基本成分はいずれも本発明の好ましい範囲を満足している為、下記の比較例に比べると、良好な耐食性を有している。
【0070】
これに対し、No.1は塗膜中のCが少ない為、錆層中のCも少ない例;No.2は塗膜中のSiが少ない為、錆層中のSiも少ない例;No.3は塗膜中のMnが少ない為、錆層中のMnも少ない例;No.4は塗膜中のCrが少ない為、錆層中のCrも少ない例;No.5は塗膜中のCuが少ない為、錆層中のCuも少ない例;No.6は塗膜中のNiが少ない為、錆層中のNiも少ない例;No.7は塗膜中のTiが少ない為、錆層中のTiも少ない例;No.8は錆層中のCaCO3が少ない例;No.9は錆層中の(α−FeOOHと非晶質成分の合計量)が少ない例;一方、No.16は塗膜中のCが多い為、錆層中のCも多い例;No.17は塗膜中のSiが多い為、錆層中のSiも多い例;No.18は塗膜中のMnが多い為、錆層中のMnも多い例;No.19は塗膜中のCrが多い為、錆層中のCrも多い例;No.20は塗膜中のCuが多い為、錆層中のCuも多い例;No.21は塗膜中のNiが多い為、錆層中のNiも多い例;No.22は塗膜中のTiが多い為、錆層中のTiも多い例;No.23は錆層中のCaCO3が多い例であり、いずれも鋼材板厚減及び犠牲陽極板厚減が夫々、0.5mm以上、1.4mm以上と、極めて大きく、耐食性が著しく劣化していることが分かる。
【0071】
実施例3:ジンクリッチ塗装鋼材における錆中成分と防食性との関係
本発明では、ジンクリッチ塗装が施された塗装鋼材において、鋼中成分を種々変化させることにより錆層の元素及び成分を変えた場合における、錆成分と防食性との関係について調べた。
【0072】
まず、鋼中にC,Si,Mn,Cr,Cu,Ni,Tiの各基本成分;更に必要に応じて、Mg,Ca,P,S,B,N,La,Ce,及びミッシュメタルよりなる群から選択される少なくとも一種の元素を、夫々、添加量を変えて添加した各種鋼を溶製し、70×150×5mmtの試験片に加工した後、酸洗、脱脂、ショットブラストを行ってから、(1)無機ジンクリッチプライマーを塗布(厚さ50μm)し、更にエポキシ系樹脂を塗布する(厚さ250μm)か、若しくは(2)亜鉛めっきを施し(厚さ50μm)、浸漬方式によりるン酸亜鉛化成処理の後、エポキシ系塗装(厚さ250μm)を行った。
【0073】
上記(1)または(2)の塗装後の試験各試験片の表面に、深さ400μmの、素地に達するクロスカット(傷)を×印状に入れ、30℃の海水噴霧と、温度50℃、湿度95%とを、1日3サイクル、合計180日間行った。
【0074】
試験終了後、塗膜劣化によるクロスカット部のふくれ幅を測定した。同様の試験を、各試験片毎に10回ずつ行い、その最大ふくれ幅を表4に示す。
【0075】
また、各試験片の錆を実施例1と同様にして測定し、錆層中の元素と成分組成を測定した。これらの結果を表4に併記する。
【0076】
【表4】
Figure 0003910839
【0077】
表4より、以下の様に考察することができる。
【0078】
まず、表4のNo.11〜14は、鋼中の基本成分及び選択成分がいずれも本発明の好ましい範囲を満足している為、錆層に含まれる元素及び成分が本発明の要件を満足する本発明例であるが、ジンクリッチ塗装を施した場合、亜鉛めっきを施した場合のいずれの態様においても、最大ふくれ幅は夫々、1.5mm以下、2mm以下と著しく低く、耐食性に極めて優れていることが分かる。
【0079】
尚、No.11/No.15は鋼中の選択成分の合計量が本発明の好ましい範囲を下回る/超える例であり、鋼材板厚減及び犠牲陽極板厚減が夫々、約2.5mm、2.2mmと若干厚くなったものの、鋼中の基本成分はいずれも本発明の好ましい範囲を満足している為、下記の比較例に比べると、良好な耐食性を有している。
【0080】
これに対し、No.1は鋼中のCが少ない為、錆層中のCも少ない例;No.2は鋼中のSiが少ない為、錆層中のSiも少ない例;No.3は鋼中のMnが少ない為、錆層中のMnも少ない例;No.4は鋼中のCrが少ない為、錆層中のCrも少ない例;No.5は鋼中のCuが少ない為、錆層中のCuも少ない例;No.6は鋼中のNiが少ない為、錆層中のNiも少ない例;No.7は鋼中のTiが少ない為、錆層中のTiも少ない例;No.8は錆層中のCaCO3が少ない例;No.9は錆層中の(α−FeOOHと非晶質成分の合計量)が少ない例;一方、No.16は鋼中のCが多い為、錆層中のCも多い例;No.17は鋼中のSiが多い為、錆層中のSiも多い例;No.18は鋼中のMnが多い為、錆層中のMnも多い例;No.19は鋼中のCrが多い為、錆層中のCrも多い例;No.20は鋼中のCuが多い為、錆層中のCuも多い例;No.21は鋼中のNiが多い為、錆層中のNiも多い例;No.22は鋼中のTiが多い為、錆層中のTiも多い例;No.23は錆層中のCaCO3が多い例であり、ジンクリッチ塗装の場合には4mm以上、亜鉛めっきの場合には4mm以上の最大ふくれ幅が見られ、耐食性が著しく劣化していることが分かる。
【0081】
【発明の効果】
本発明は上記の様に構成されているので、船舶、橋梁、船体、船舶用バラストタンク等の海洋構造物に特に好適な電気防食用鋼材であって、耐食性、犠牲陽極寿命、外部電源方式における防食電流低減等を向上させることができる新規な電気防食用鋼材、電気防食用塗料、及び電気防食性に優れた海洋構造物を提供することができた。

Claims (12)

  1. 鋼材に、C:0.00010〜0.10%(質量%の意味、以下同じ),Si:0.0010〜1.0%,Mn:0.0010〜2.0%,Cr:0.00010〜0.1%,Cu:0.0010〜2.0%,Ni:0.0010〜2.0%,Ti:0.00010〜0.1%を含有する錆層が形成されており、且つ、該錆層をX線回折法で分析したとき、CaCO3を5〜50%,α−FeOOHと非晶質成分を合計で20%以上含有する錆層が形成されていることを特徴とする電気防食用鋼材。
  2. 前記錆層は、更にMg,Ca,P,S,B,N,La,Ce,及びミッシュメタルよりなる群から選択される少なくとも一種を合計で0.00010〜1.0%含有するものである請求項1に記載の電気防食用鋼材。
  3. 前記鋼材は、C:0.00010〜0.10%,Si:0.0010〜1.0%,Mn:0.0010〜2.0%,Cr:0.00010〜0.1%,Cu:0.0010〜2.0%,Ni:0.0010〜2.0%,Ti:0.00010〜0.1%を含有し、残部:鉄及び不可避的不純物である請求項1または2に記載の電気防食用鋼材。
  4. 前記鋼材は、更に、Mg,Ca,P,S,B,N,La,Ce,及びミッシュメタルよりなる群から選択される少なくとも一種を合計で0.00010〜1.0%含有するものである請求項3に記載の電気防食用鋼材。
  5. 鋼材、C:0.00010〜0.10%,Si:0.0010〜1.0%,Mn:0.0010〜2.0%,Cr:0.00010〜0.1%,Cu:0.0010〜2.0%,Ni:0.0010〜2.0%,Ti:0.00010〜0.1%を含有する被覆層が形成されていることを特徴とする電気防食用鋼材。
  6. 前記被覆層が剥離して鋼材露出した部分には、請求項1または2に記載の錆層が形成されているものである請求項5に記載の電気防食用鋼材。
  7. 前記鋼材は、C:0.00010〜0.10%,Si:0.0010〜1.0%,Mn:0.0010〜2.0%,Cr:0.00010〜0.1%,Cu:0.0010〜2.0%,Ni:0.0010〜2.0%,Ti:0.00010〜0.1%を含有し、残部:鉄及び不可避的不純物である請求項5または6に記載の電気防食用鋼材。
  8. 前記鋼材は、更に、Mg,Ca,P,S,B,N,La,Ce,及びミッシュメタルよりなる群から選択される少なくとも一種を合計で0.00010〜1.0%含有するものである請求項7に記載の電気防食用鋼材。
  9. 請求項1〜8のいずれかに記載された電気防食用鋼材によって得られた海洋構造物。
  10. 請求項1〜8のいずれかに記載された電気防食用鋼材によって得られた船舶用バラストタンク。
  11. 請求項1〜8のいずれかに記載された電気防食用鋼材によって得られた橋梁。
  12. 請求項1〜8のいずれかに記載された電気防食用鋼材によって得られた船体。
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