JP2003253393A - 原油及び重油の貯蔵容器用耐食鋼材、原油及び重油の貯蔵容器用耐食性塗料、及び耐食性に優れた原油及び重油の貯蔵容器 - Google Patents

原油及び重油の貯蔵容器用耐食鋼材、原油及び重油の貯蔵容器用耐食性塗料、及び耐食性に優れた原油及び重油の貯蔵容器

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JP2003253393A
JP2003253393A JP2002052202A JP2002052202A JP2003253393A JP 2003253393 A JP2003253393 A JP 2003253393A JP 2002052202 A JP2002052202 A JP 2002052202A JP 2002052202 A JP2002052202 A JP 2002052202A JP 2003253393 A JP2003253393 A JP 2003253393A
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Japan
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crude oil
steel material
oil
corrosion
rust
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English (en)
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Tatsuya Yasunaga
龍哉 安永
Takenori Nakayama
武典 中山
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Kobe Steel Ltd
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Kobe Steel Ltd
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Abstract

(57)【要約】 【課題】 原油タンカー、石油タンク、原油タンカーの
カーゴタンク、油井用パイプライン等に代表される、原
油及び重油の貯蔵容器に特に好適な耐食鋼材を提供す
る。 【解決手段】C :0.00010〜0.1%(質量%
の意味、以下同じ),Si:0.0010〜1.0%,
Mn:0.0010〜2.0%,Cr:0.00010
〜0.1%,Cu:0.0010〜2.0%,Ni:
0.0010〜2.0%,Ti:0.00010〜0.
1%を含有する錆層が形成されており、且つ、該錆層を
X線回折法で分析したとき、硫黄と硫化鉄を合計で1.
0〜70%,α−FeOOHと非晶質成分を合計で20
%以上含有する錆層が形成されている原油及び重油の貯
蔵容器用耐食鋼材である。

Description

【発明の詳細な説明】
【0001】
【発明の属する技術分野】本発明は、原油や重油等の液
体燃料を貯蔵する貯蔵容器の内面に生じる腐食に対し、
優れた耐食性を発揮する原油及び重油の貯蔵容器用耐食
鋼材;重防食用塗料に代表される原油及び重油の貯蔵容
器用耐食性塗料;及び耐食性に優れた原油及び重油の貯
蔵容器に関するものである。本発明の鋼材は、無塗装で
使用される鋼材の寿命を向上できるのみならず、被覆層
を有する鋼材(例えばジンクリッチ塗料が施されたジン
クリッチ塗装鋼材、亜鉛めっきや合金化亜鉛めっきが施
された鋼材等)の寿命も向上できるので、特に原油タン
カー、石油タンク、原油タンカーのカーゴタンク、油井
用パイプライン等の原油及び重油の貯蔵容器に好適に用
いられる。
【0002】
【従来の技術】原油タンカーのカーゴタンクや石油タン
ク等の鋼製貯蔵庫の内面は、硫化物を含む雰囲気下に曝
される為、無塗装のままで使用すると激しく腐食するこ
とが知られている。特に原油が充満していない上部甲板
の裏面及び側面上部(これらを総称して「Vapor Spac
e」と呼ばれる)は、原油等から発生する硫化水素に曝
され、更に外気温の著しい変化により結露する等して、
極めて過酷な腐食環境下に曝される為、年間1mmを超
える板厚の減少が問題となっている。また、石油タンク
等の底部では、ピット状の局部腐食により、数mm/年
もの侵食が発生し、安全設計上大きな問題となってい
る。
【0003】そこで、かかる原油及び重油の貯蔵容器の
耐食性向上を目的として、例えば特公昭53−4161
2号には、原油と海水の共存環境下における腐食防止対
策として、Cr,Si,Mo等を添加した耐食用鋼が開
示されている。また、特公昭56−33460号及び特
公昭59−40220号には、硫化物を含む環境下での
腐食防止対策として、CuとWを複合添加することによ
って耐硫化物腐食割れを抑制できることが;特開200
1−214236号には、原油、重油などの原燃料を貯
蔵する際の腐食防止対策として、Cu,Ni,Cr,M
o,Sb,Snを添加すれば全面腐食性及び局部腐食に
対する抵抗性が向上することが、夫々、記載されてい
る。
【0004】これらの方法により、耐食性を或る程度向
上させることはできるが、特にタンカーや原油タンク等
の大型貯蔵容器に適用する場合には、十分な効果が得ら
れない。これらの原油及び重油の貯蔵容器は溶接箇所が
多く、合金化に伴う溶接性の低下を回避すべく、添加し
得る合金の量が制限される為である。
【0005】
【発明が解決しようとする課題】本発明は上記事情に鑑
みてなされたものであり、その目的は、天然ガス・原油
・重油などの輸送ラインパイプ、油井用パイプライン、
油井用ケーシング、原油タンカー、石油タンク、原油タ
ンカーのカーゴタンク等に代表される「原油及び重油の
貯蔵容器」に使用される鋼材であって、当該貯蔵容器内
の腐食環境下に曝されても良好な耐食性を発揮し得る鋼
材、防食用塗料、及び耐食性に優れた原油及び重油の貯
蔵容器を提供することにある。
【0006】
【課題を解決するための手段】上記課題を解決し得た本
発明の原油及び重油の貯蔵容器用耐食鋼材は、C :
0.00010〜0.1%(質量%の意味、以下同
じ),Si:0.0010〜1.0%,Mn:0.00
10〜2.0%,Cr:0.00010〜0.1%,C
u:0.0010〜2.0%,Ni:0.0010〜
2.0%,Ti:0.00010〜0.1%を含有する
錆層が形成されており、且つ、該錆層をX線回折法で分
析したとき、硫黄と硫化鉄を合計で1.0〜70%,α
−FeOOHと非晶質成分を合計で20%以上含有する
錆層が形成されているところに要旨を有するものであ
る。
【0007】上記錆層は、更にMg,Ca,P,S,
B,N,La,Ce,及びミッシュメタルよりなる群か
ら選択される少なくとも一種を合計で0.00010〜
1.0%含有することが好ましい。
【0008】上記の鋼材において、更に亜鉛含有被覆層
(ジンクリッチ塗料が施された被覆層、亜鉛めっき層、
合金化亜鉛めっき層等)が被覆されたものは本発明の好
ましい態様である。
【0009】更に本発明は被覆層を有する鋼材であっ
て、該被覆層が、C :0.00010〜0.1%,S
i:0.0010〜1.0%,Mn:0.0010〜
2.0%,Cr:0.00010〜0.1%,Cu:
0.0010〜2.0%,Ni:0.0010〜2.0
%,Ti:0.00010〜0.1%を含有する原油及
び重油の貯蔵容器用耐食鋼材も本発明の範囲内に包含さ
れる。尚、上記鋼材の露出部分には、前述した錆層が形
成されていることが好ましい。
【0010】この様な原油及び重油の貯蔵容器用耐食鋼
材によって得られた貯蔵容器(例えば原油タンカー、石
油タンク、原油タンカーのカーゴタンク等)も本発明の
範囲内に包含される。
【0011】更に本発明には、C :0.00010〜
0.1%,Si:0.0010〜1.0%,Mn:0.
0010〜2.0%,Cr:0.00010〜0.1
%,Cu:0.0010〜2.0%,Ni:0.001
0〜2.0%,Ti:0.00010〜0.1%を含有
する原油及び重油の貯蔵容器用耐食性塗料も本発明の範
囲内に包含される。
【0012】
【発明の実施の形態】本発明者らは、硫化物を含む環境
下で使用される原油及び重油の貯蔵容器の耐食性、特に
原油タンカー、石油タンク、原油タンカーのカーゴタン
ク等、大容積を有する貯蔵容器の耐食性を高めるべく、
特に、鋼材表面、若しくは塗装鋼材において塗装が剥離
して鋼材が露出した部分(これらを鋼材の露出部分と呼
ぶ)に形成される錆層に着目して鋭意検討してきた。そ
の結果、上記錆層の成分組成が適切に制御され、且つ、
X線回折法で分析したときの錆層成分が所定範囲に制御
されたものは所期の目的を達成し得ることを見出し、本
発明を完成した。
【0013】以下、本発明を構成する各要件について説
明する。
【0014】(1)まず、本発明における錆層には、
C:0.00010〜0.1%,Si:0.0010〜
1.0%,Mn:0.0010〜2.0%,Cr:0.
00010〜0.1%,Cu:0.0010〜2.0
%,Ni:0.0010〜2.0%,Ti:0.000
10〜0.1%が含まれている。これら元素を上記範囲
に制御することにより、錆のなかでも、特に過酷な環境
下における耐食性向上に有効なα−FeOOH成分及び
非晶質成分の割合が高くなり、微細で緻密な錆を形成で
きるのみならず、耐食性に悪影響を及ぼすβ−FeOO
Hが抑制された錆が形成できると共に、錆層中に硫黄と
硫化物が所定量含まれる結果、優れた防食効果が発揮さ
れるからである。ここで、上記元素の下限を限定したの
は、所望の効果を得るのに必要だからであり、上限を限
定したのは、それ以上添加すると錆による保護効果がむ
しろ悪化するからである。
【0015】尚、錆層の成分組成を上記範囲に制御する
ことにより、何故、前述した微細で緻密な錆が形成でき
るか、そのメカニズムは詳細には不明であるが、地鉄
が腐食溶解する際に、錆中に含まれる上記成分の炭化物
や窒化物等の微細粒子が溶出し、これら微細粒子が鉄錆
(FeOOH)の核として作用するか、地鉄が腐食溶
解する際に、Ti等もイオンとして溶出し、これら金属
イオンが酸化、加水分解等により微細なコロイド若しく
は水酸化物を形成し、これらが鉄錆の核となること等が
考えられる。即ち、これらの核が形成されることによ
り、粗くて脆く剥離しやすい結晶性錆(β−FeOOH
等)の発生及び成長を抑制することができ、その結果、
安定して緻密な錆の形成、更には促進が図られると考え
られる。
【0016】この様な効果を得るに当たっては、好まし
くは、Cを0.001%以上、0.08%以下;Siを
0.01%以上、0.6%以下;Mnを0.01%以
上、1.6%以下;Crを0.0005%以上(より好
ましくは0.001%以上、更により好ましくは0.0
05%以上)、0.06%以下(より好ましくは0.0
5%未満、更により好ましくは0.03%以下);Cu
を0.01%以上、1.6%以下;Niを0.01%以
上、1.6%以下;Tiを0.001%以上(より好ま
しくは0.04%以上、更により好ましくは0.008
%以上)、0.08%以下に制御することが推奨され
る。
【0017】上記元素のうち、特にTi及びCrは、所
望の錆層を得るのに極めて重要である。これらは他の元
素に比べ、緻密な錆の形成効果が極めて大きいからであ
る。従って、特に厳しい腐食環境下に曝される場合に
は、当該環境の程度に応じて、錆層中のTi及びCr量
を、上記範囲のなかでも好ましい範囲、更に、より好ま
しい範囲へと、適切に制御することが推奨される。
【0018】更に上記の錆層には、Mg,Ca,P,
S,B,N,La,Ce,及びミッシュメタル(発火合
金)よりなる群から選択される少なくとも一種を合計で
0.00010〜1.0%含まれていることが好まし
い。これらの元素も、所望の錆を得るのに有用である
が、多量に添加すると、錆層における非晶質層の形成が
阻害され、保護効果が低下する。より好ましくは0.0
05%以上、0.5%以下である。上記元素は単独で使
用しても良いし、2種以上併用することができる。ここ
で、ミッシュメタルは、CeやLa等の希土類元素を主
体にしたもの(例えばCe主体の希土類元素混合体、C
eに30%程度のFe,Ni,Co等を添加したもの、
La−Mg系合金、La−Pb系合金、La−Sn系合
金等)と、それ以外のもの(Zn−Sn系合金、U−F
e系合金等)とに大別されるが、本発明では、これら両
方が包含される。
【0019】(2)更に本発明における錆層には、上記
元素を含有すると共に、該錆層をX線回折法で分析した
とき、硫黄と硫化鉄を合計で1.0〜70%,α−Fe
OOHと非晶質成分を合計で20%以上含有している。
【0020】一般に錆は、結晶性錆(α−FeOOH,
β−FeOOH,γ−FeOOH,マグネタイト)と、
非晶質錆に分けられる。このうちα−FeOOHは、熱
力学的に安定で耐食性に優れるという傾向がある。ま
た、非晶質成分(本発明では、後記するX線回折により
定量可能な結晶成分以外の成分を「非晶質成分」と定義
する)は、結晶性成分に比べ、極めて微細で緻密な安定
した錆層を形成することが知られている。しかも、この
非晶質成分は、結晶性の錆(特にβ−FeOOH)によ
り、塗膜中に欠陥部分や剥離部分が形成されたとして
も、当該部分を減少させる「欠陥補修機能」も有してお
り、長期間にわたって鋼材の耐食性を確保するのに極め
て有用である。この様な観点から、本発明では、優れた
防食効果を発揮する錆成分として、α−FeOOHと非
晶質成分を合計で20%以上に定めた次第である。好ま
しい範囲は、後記する硫黄と硫化鉄の合計量によっても
変化するが、30%以上である。また、その内訳として
は、α−FeOOHを20%以下(好ましくは10%以
下)、非晶質成分を10%以上(好ましくは20%以
上)に制御することが推奨される。
【0021】また、腐食を促進する錆成分であるβ−F
eOOHは、好ましくは10%以下に抑制することが推
奨される。
【0022】更に本発明における錆層は、硫黄と硫化鉄
を合計で1.0〜70%含有するものである。この様に
本発明では、錆層をX線回折法で分析したとき、上記α
−FeOOH及び非晶質成分のみならず、硫黄と硫化鉄
を所定量含有するところに特徴がある。本発明の如く原
油及び重油の貯蔵容器に用いられる鋼材の場合、貯蔵容
器内は硫化物を含む雰囲気下に曝され、原油等からの硫
化水素に由来して錆層中に硫黄と硫化鉄が含まれるが、
これらの合計量を上記範囲内に制御すると、微細で緻密
な錆層の形成が促進され、優れた防食効果が得られるこ
とが本発明者らの研究により明らかになった。1.0%
未満では、所望の効果が得られず、一方、70%を超え
ると、錆層形成による保護効果が低下する。硫黄と硫化
鉄の合計量の好ましい量は、前述した「α−FeOOH
と非晶質成分の合計によっても変化し得るが、概ね、5
%以上、65%以下(より好ましくは10%以上、60
%以下)に制御することが推奨される。
【0023】ここで、本発明における上記硫化鉄には、
硫化鉄(II)FeS、硫化鉄(III)Fe23、二硫化
鉄FeS2が含まれる。
【0024】ここで、上記成分を分析する為のX線回折
法について説明する。
【0025】X線回折法による錆の定量に当たっては、
ZnOを標準物質とする岩田らの方法[岩田、中山、泊里
ら、腐食防食 '95C-306]を採用することが推奨され
る。このX線回折法により、錆を精度良く定量できるか
らである。詳細には上記方法は、内部標準物質として
一定重量比のZnOを用い、これを、鋼材から採取した
錆試料と混合して微粉末化し、通常のX線回折法により
同定し、組成が既知の標準サンプルを基準にして作成
された検量線に基づき、種々の錆が有する固有の回折ピ
ークの積分強度比から錆試料中の成分を定量するという
ものである。
【0026】以上、本発明の原油及び重油の貯蔵容器用
耐食鋼材を特徴付ける錆層について詳述した。この様な
錆層は、要するに鋼材と接する部分(鋼材表面)に形成
されていれば良く、これにより、所望の防食効果を発揮
させることができる。尚、上記錆層は、所望の防食効果
が得られる程度に鋼材表面の少なくとも一部に形成され
ていれば良く、必ずしも鋼材表面の全面に形成されてい
る必要はない。
【0027】本発明鋼材には、被覆層を有しない無塗装
鋼材のみならず、被覆層を有する塗装鋼材も含まれる。
無塗装鋼材においては、上記錆層が形成されている為、
防食効果が発揮されるが、更に被覆層が施された塗装鋼
材においては、当該被覆層による防食効果に加え、たと
え、当該被覆層(塗装部分)が腐食して欠陥部分や剥離
部分が生じ、鋼材が露出したとしても、鋼材の露出部分
に上記要件を満足する錆層が形成されている為、優れた
防食効果が得られることになる。
【0028】上記被覆層としては、代表的に亜鉛含有被
覆層が挙げられる。具体的には当該亜鉛含有被覆層とし
て、高濃度の亜鉛粉末を含有するジンクリッチ塗料が施
された被覆層の他、溶融亜鉛めっき層、電気亜鉛めっき
層、蒸着亜鉛めっき層、合金化亜鉛めっき層等が例示さ
れる。上記亜鉛含有被覆層を被覆すれば、亜鉛の溶出量
も抑制される結果、めっきや塗装の耐久寿命が著しく向
上する。
【0029】上記亜鉛含有被覆層のうち、耐食性向上の
観点からすれば、亜鉛含有率が概ね25%以上の亜鉛含
有被覆層(ジンクリッチ塗料が施された被覆層)の使用
が推奨される。尚、ジンクリッチ塗料は有機系、無機系
のいずれも使用できるが、施工性や塗料密着性等も含め
た耐食性向上という観点からすれば、無機系のものを使
用することが推奨される。
【0030】その他、原油及び重油の貯蔵容器に汎用さ
れる塗装鋼材において用いられる表面処理層(タールエ
ポキシ塗料、変性エポキシ塗料、ショッププライマー
等)も被覆することができる。
【0031】また、圧延等の熱処理を施した後に形成さ
れる酸化膜(黒皮)等も、上記被覆層のなかに含まれ
る。黒皮は通常、鋼材を600〜1200℃で1〜10
分間圧延等するして形成されるものであるが、本発明で
は、鋼材に形成される黒皮すべてを包含するものであ
る。
【0032】更に上記被覆層には、前述した公知の表面
処理層のみならず、鋼材に所望の錆層を形成することの
できる「所定の成分組成を満足する新規な被覆層」も本
発明の範囲内に包含される(後記する)。
【0033】次に、この様な所定の錆を形成する方法に
ついて説明する。
【0034】前述した通り、本発明は、無塗装鋼材およ
び塗装鋼材の両方を包含するものであるが、このうち、
無塗装鋼材では、例えば鋼中成分を適切に制御すること
により;一方、塗装鋼材では、必ずしも鋼中成分を制御
する必要はなく(勿論、鋼中成分を制御しても良い)、
鋼材に施される被覆層の組成を適切に制御することによ
り、所望の錆層を得ることができる。従って、被覆層を
有する塗装鋼材では、合金を添加しない普通鋼を使用す
ることも可能である。
【0035】(1)まず、無塗装鋼材において、所定の
錆層を形成することのできる好ましい鋼中成分について
説明する。その為には、要するに錆層の組成が前記範囲
に制御し得る様に調整されていれば良く、C:0.00
010〜0.1%,Si:0.0010〜1.0%,M
n:0.0010〜2.0%,Cr:0.00010〜
0.1%,Cu:0.0010〜2.0%,Ni:0.
0010〜2.0%,Ti:0.00010〜0.1%
を含有し、残部:鉄及び不可避不純物とすることが推奨
され;更に、Mg,Ca,P,S,B,N,La,C
e,及びミッシュメタルよりなる群から選択される少な
くとも一種を合計で0.00010〜1.0%含有して
も良い。好ましくは、Cを0.001%以上、0.08
%以下;Siを0.01%以上、0.6%以下;Mnを
0.01%以上、1.6%以下;Crを0.0005%
以上(より好ましくは0.001%以上、更により好ま
しくは0.005%以上)、0.06%以下(より好ま
しくは0.05%未満、更により好ましくは0.03%
以下);Cuを0.01%以上、1.6%以下;Niを
0.01%以上、1.6%以下;Tiを0.001%以
上(より好ましくは0.04%以上、更により好ましく
は0.008%以上)、0.08%以下に制御すること
が推奨される。
【0036】(2)次に、被覆層が施された塗装鋼材に
ついて、所定の錆層を形成することのできる好ましい方
法について説明する。所定の錆層を得る為には、前記
(1)に記載の如く鋼中成分を制御しても良いが、使
用する鋼は、合金を添加しない普通鋼を使用し、且つ、
鋼材に被覆される被覆層を適切に制御することにより所
望の錆層を形成する方法を採用することもできる。
【0037】ここで、上記「鋼材に施される被覆層」と
は、鋼材に被覆される層をすべて意味する。従って、単
層の被覆層が施されているときは、当該被覆層を意味す
るが、鋼材に複数の被覆層が施された多層積層タイプの
場合は、鋼材と直接接して被覆された層のみならず、当
該被覆層の上に更に被覆された層も含まれる。本発明
は、腐食により、多層または複数の被覆層に欠陥部分や
剥離部分が生じ、鋼材表面が露出したとしても、鋼材の
露出部分に形成されている所定の錆層によって防食効果
を期待するものであり、所望の錆成分を得る為の供給源
として、無塗装鋼材の場合には鋼材成分を、塗装鋼材の
場合には主に鋼材に施された被覆層の成分を、夫々、適
切に制御しようというものである。
【0038】上記の方法では、上記被覆層の組成は、
C:0.00010〜0.1%,Si:0.0010〜
1.0%,Mn:0.0010〜2.0%,Cr:0.
00010〜0.1%,Cu:0.0010〜2.0
%,Ni:0.0010〜2.0%,Ti:0.000
10〜0.1%を含有し、残部:鉄及び不可避不純物と
することが推奨される。更にMg,Ca,P,S,B,
N,La,Ce,及びミッシュメタルよりなる群から選
択される少なくとも一種を合計で0.00010〜1.
0%含有していても良い。この様な所定の被覆層を有す
る原油及び重油の貯蔵容器用耐食鋼材は新規であり、本
発明の範囲内に包含される。上記被覆層の好ましい範囲
は、C:0.001%以上、0.08%以下;Si:
0.01%以上、0.6%以下;Mn:0.01%以
上、1.6%以下;Cr:0.0005%以上(より好
ましくは0.001%以上、更により好ましくは0.0
05%以上)、0.06%以下(より好ましくは0.0
5%未満、更により好ましくは0.03%以下);C
u:0.01%以上、1.6%以下;Niを0.01%
以上、1.6%以下;Ti:0.001%以上(より好
ましくは0.04%以上、更により好ましくは0.00
8%以上)、0.08%以下である。
【0039】また、上記の場合に用いられる鋼は、合
金を添加しない普通鋼(Mild Steel、TMCP鋼等)等が挙
げられる。勿論、前記(1)の組成を満足する鋼を用い
ても良い。
【0040】この様な被覆層を得るに当たっては、C:
0.00010〜0.1%,Si:0.0010〜1.
0%,Mn:0.0010〜2.0%,Cr:0.00
010〜0.1%,Cu:0.0010〜2.0%,N
i:0.0010〜2.0%,Ti:0.00010〜
0.1%を含有する塗料(残部は塗膜主成分及び不可避
不純物である)の使用が推奨され;更にMg,Ca,
P,S,B,N,La,Ce,及びミッシュメタルより
なる群から選択される少なくとも一種を合計で0.00
010〜1.0%含有していても良い。この様な組成か
らなる塗料は原油及び重油の貯蔵容器に使用される塗料
としては新規であり、本発明の範囲内に包含される。好
ましくは、Cを0.001%以上、0.08%以下;S
iを0.01%以上、0.6%以下;Mnを0.01%
以上、1.6%以下;Crを0.0005%以上(より
好ましくは0.001%以上、更により好ましくは0.
005%以上)、0.06%以下(より好ましくは0.
05%未満、更により好ましくは0.03%以下);C
uを0.01%以上、1.6%以下;Niを0.01%
以上、1.6%以下;Tiを0.001%以上(より好
ましくは0.04%以上、更により好ましくは0.00
8%以上)、0.08%以下に制御することが推奨され
る。
【0041】上記塗料における皮膜形成成分(バインダ
ー樹脂)としては、公知の有機樹脂が使用可能であり、
エポキシ樹脂、フッ素樹脂、シリコンアクリル樹脂、ポ
リウレタン樹脂、アクリル樹脂、ポリエステル樹脂、フ
ェノール樹脂、アルキッド樹脂、メラミン樹脂等を、公
知の硬化剤と共に使用可能である。特に耐食性の観点か
らすれば、エポキシ樹脂、フッ素樹脂、シリコンアクリ
ル樹脂等の使用が推奨される。その他、塗料に添加され
る公知の添加剤、例えば着色用顔料、カップリング剤、
レベリング剤、増感剤、増粘剤、酸化防止剤、紫外線安
定剤、難燃剤などを添加しても良い。
【0042】また、塗料形態も特に限定されず、溶剤系
塗料、粉体塗料、水系塗料、水分散型塗料、電着塗料
等、用途に応じて適宜選択することができる。
【0043】上記塗料を用い、所望の被覆層(防錆塗料
の皮膜)を鋼材に形成させるには、ディッピング法、ロ
ールコーター法、スプレー法、カーテンフローコーター
法等の公知の塗工方法を用いればよい。被覆層の厚みと
しては、200〜500μmが好ましく、この範囲であ
れば良好な耐食性が発揮される。
【0044】以上、本発明を特徴付ける錆層の形成方法
について、無塗装鋼材及び塗装鋼材の両方について詳述
した。
【0045】尚、本発明の塗装鋼材においては、鋼材に
上記要件を満足する被覆層を被覆した後、更に用途に応
じ、耐候性や塗料密着性を高め、色調やデザイン等意匠
性を付与する目的で、他の(上記要件を満足しない)被
覆層を被覆しても良く、この様な多層の塗装鋼材も本発
明の範囲内に包含される。具体的には、上述した本発明
の塗料やジンクリッチ塗料を施したり、亜鉛めっきなど
を行った後、エポキシ下塗り、エポキシ中塗り、ポリウ
レタン上塗り等、原油及び重油の貯蔵容器等で汎用され
る塗装を施しても良い。なかでも耐食性の観点から、フ
ッ素樹脂やシリコンアクリル樹脂の使用等が推奨され
る。その他、塗装下地処理、リン酸塩処理等の化成処理
等が施されていても良い。
【0046】以下実施例に基づいて本発明を詳述する。
ただし、下記実施例は本発明を制限するものではなく、
前・後記の趣旨を逸脱しない範囲で変更実施することは
全て本発明の技術範囲に包含される。
【0047】
【実施例】実施例1:無塗装鋼材における錆成分と防食
性との関係 本発明では、被覆層を有しない無塗装鋼材において、鋼
中成分を種々変化させることにより錆層の元素及び結晶
成分等を変えた場合における、錆成分と防食性との関係
について調べた。
【0048】まず、鋼中にC,Si,Mn,Cr,C
u,Ni,Tiの各基本成分;更に必要に応じて、M
g,Ca,P,S,B,N,La,Ce,及びミッシュ
メタルよりなる群から選択される少なくとも一種の元素
(以下、選択成分で代表させる場合がある)を、添加量
を変えて添加した各種鋼を溶製した後、50mm×50
mm×5mmtの試験片に切出し、その重量を予め測定
しておいた(腐食前の鋼材重量)。
【0049】各試験片を、原油タンカーカーゴタンクVa
por Space内の上甲板裏面及びタンク底に夫々、固定
し、1年間(365日間)原油環境下に曝した。その
後、上記試験片表面の錆層を剥ぎ取って採取し、当該錆
層に含まれる元素を化学分析(原子吸光光度法及び燃焼
赤外線吸収法)により定量すると共に、前述したX線回
折に従い、各結晶成分の組成を定量した。具体的にはX
線回折による錆成分の定量は、錆とZnOを混合して測
定し、ZnOのピークに対する各結晶ピークの相対強度
から各結晶成分の組成を算出した。ここで、相対強度と
各結晶成分の組成との関係は、組成が既知の標準サンプ
ルを基準にして作成された検量線により決定した。ま
た、X線回折で定量可能な結晶成分以外の成分は「非晶
質成分」と定義した。
【0050】このうち上甲板裏面に固定した試験片につ
いては、当該試験片の錆層を除去した後の試験片重量を
測定し(腐食後の鋼材重量)、腐食試験前後の重量差よ
り腐食減量を算出し、腐食面積から上甲板裏面の板厚減
少量に換算した。一方、タンク底固定した試験片につい
ては、錆層を除去した後、腐食ピットの最大深さをノギ
スで測定した。
【0051】上記の腐食実験を、各鋼種につき、夫々1
0個の試験片について同様に行った。10個の腐食減量
を同様にして算出し、その最高値と最低値を除いた残り
の8個の平均値を、夫々、「上甲板板厚減」及び「タン
ク底の最大ピット深さ」とし、表1に表した。
【0052】
【表1】 表1より、以下の様に考察することができる。
【0053】まず、表1のNo.9〜12は、鋼中の基
本成分及び選択成分がいずれも本発明の好ましい範囲を
満足している為、錆層に含まれる元素及び成分が本発明
の要件を満足する本発明例であるが、いずれも上甲板板
厚減及びタンク底の最大ピット深さは夫々、0.06m
m以下、2.4mm以下と著しく低く、耐食性に極めて
優れていることが分かる。
【0054】尚、No.8/No.13は錆中の選択成
分の合計量が本発明の好ましい範囲を下回る/超える例
であり、上甲板板厚減及びタンク底の最大ピット深さが
夫々、約0.1mm、約3mmと若干厚くなったもの
の、鋼中の基本成分はいずれも本発明の好ましい範囲を
満足している為、下記の比較例に比べると、良好な耐食
性を有している。
【0055】これに対し、No.1は鋼中のCが0.0
0008%と少ない為、錆層中のCも少ない例;No.
2は鋼中のSiが0.0007%と少ない為、錆層中の
Siも少ない例;No.3は鋼中のMnが0.0006
%と少ない為、錆層中のMnも少ない例;No.4は鋼
中のCrが0.00008%と少ない為、錆層中のCr
も少ない例;No.5は鋼中のNiが0.0006%と
少ない為、錆層中のNiも少ない例;No.6は鋼中の
Cuが0.0008%と少ない為、錆層中のCuも少な
く、且つ、錆層中の硫黄と硫化鉄の合計量が少ない例;
No.7は鋼中のTiが0.00007%と少ない為、
錆層中のTiも少なく、且つ、錆層中の(α−FeOO
Hと非晶質成分の合計量)が少ない例;一方、No.1
4は鋼中のCが0.2%と多い為、錆層中のCも多い
例;No.15は鋼中のSiが1.4%と多い為、錆層
中のSiも多い例;No.16は鋼中のMnが3%と多
い為、錆層中のMnも多い例;No.17は鋼中のCr
が0.3%と多い為、錆層中のCrも多い例;No.1
8は鋼中のNiが3%と多い為、錆層中のNiも多い
例;No.19は鋼中のTiが0.3%と多い為、錆層
中のTiも多い例;No.20は鋼中のCuが3%と多
い為、錆層中のCuも多く、且つ、錆層中の硫黄と硫化
鉄の合計量が多い例であり、いずれも上甲板板厚減及び
タンク底の最大ピット深さが夫々、0.2mm以上、
6.9mm以上と、極めて大きく、耐食性が著しく劣化
していることが分かる。
【0056】実施例2:黒皮被覆材における錆成分と防
食性との関係 本発明では、黒皮(大気酸化膜)を有する被覆材におい
て、黒皮層の成分を種々変化させることにより錆層の元
素及び成分を変えた場合における、錆成分と防食性との
関係について調べた。
【0057】まず、普通鋼(TMCP鋼;C:0.13
%,Si:0.24%,Mn:1,1%,P:0.02
%,S:0.002%)を実施例1と同様に処理して5
0mm×50mm×5mmtの試験片に切出した後、8
00℃で10分間の熱処理を施し、黒皮を形成させた。
尚、黒皮中の成分組成は、黒皮が形成された試験片の一
部を抜き出し、各試験片の黒皮を剥がし、実施例1と同
様にしてその成分組成を化学分析して調べた。その結果
を表2に記載する。
【0058】また、黒皮形成後の錆成分と耐食性との関
係を調べる目的で、上記の如く黒皮が形成された試験片
の「腐食前の鋼材重量」を実施例1と同様にして測定し
た後、原油タンカーカーゴタンクVapor Space内の上甲
板裏面とタンク底に夫々、固定し、1年間(365日
間)原油環境下に曝した後、実施例1と同様にして錆層
中の元素及び成分組成、並びに上甲板板厚減及びタンク
底の最大ピット深さを測定した。
【0059】これらの結果を表3に記載する。
【0060】
【表2】
【0061】
【表3】 これらの表より、以下の様に考察することができる。
【0062】まず、表3のNo.9〜12は、黒皮中の
成分がいずれも本発明の好ましい範囲を満足している
為、錆層に含まれる元素及び成分が本発明の要件を満足
する本発明例であるが、いずれも上甲板板厚減及びタン
ク底の最大ピット深さは夫々、0.05mm以下、2.
5mm以下と著しく低く、耐食性に極めて優れているこ
とが分かる。
【0063】尚、No.8/No.13は錆中の選択成
分の合計量が本発明の好ましい範囲を下回る/超える例
であり、上甲板板厚減及びタンク底の最大ピット深さが
夫々、0.13mm、約3.5mmと若干厚くなったも
のの、錆中の基本成分はいずれも本発明の好ましい範囲
を満足している為、下記の比較例に比べると、良好な耐
食性を有している。
【0064】これに対し、No.1は黒皮中のCが少な
い為、錆層中のCも少ない例;No.2は黒皮中のSi
が少ない為、錆層中のSiも少ない例;No.3は黒皮
中のMnが少ない為、錆層中のMnも少ない例;No.
4は黒皮中のCrが少ない為、錆層中のCrも少ない
例;No.5は黒皮中のNiが少ない為、錆層中のNi
も少ない例;No.6は黒皮中のCuが少ない為、錆層
中のCuも少なく、且つ、錆層中の硫黄と硫化鉄の合計
量が少ない例;No.7は黒皮中のTiが少ない為、錆
層中のTiも少なく、且つ、錆層中の(α−FeOOH
と非晶質成分の合計量)が少ない例;一方、No.14
は黒皮中のCが多い為、錆層中のCも多い例;No.1
5は黒皮中のSiが多い為、錆層中のSiも多い例;N
o.16は黒皮中のMnが多い為、錆層中のMnも多い
例;No.17は黒皮中のCrが多い為、錆層中のCr
も多い例;No.18は黒皮中のNiが多い為、錆層中
のNiも多い例;No.19は黒皮中のTiが多い為、
錆層中のTiも多い例;No.20は黒皮中のCuが多
い為、錆層中のCuも多く、且つ、錆層中の硫黄と硫化
鉄の合計量が多い例であり、いずれも上甲板板厚減及び
タンク底の最大ピット深さが夫々、0.21mm以上、
7.1mm以上と、極めて大きく、耐食性が著しく劣化
していることが分かる。
【0065】実施例3:塗装鋼材における錆成分と防食
性との関係 本発明では、被覆層を有する塗装鋼材において、被覆層
の成分を種々変化させることにより錆層の元素及び成分
を変えた場合における、錆成分と防食性との関係につい
て調べた。
【0066】まず、普通鋼(TMCP鋼;C:0.13
%,Si:0.24%,Mn:1,1%,P:0.02
%,S:0.002%)を実施例1と同様に処理して5
0mm×50mm×5mmtの試験片に切出した後、
「腐食前の上甲板板厚重量」を同様に測定した。次に表
4に記載の塗料、即ち、C,Si,Mn,Cr,Cr
u,Ni,Tiの各基本成分;更に必要に応じて、M
g,Ca,P,S,B,N,La,Ce,及びミッシュ
メタルよりなる群から選択される少なくとも一種の元素
を含む塗料を塗布し、これらの試験片を実施例1と同様
にして、原油タンカーカーゴタンクVapor Space内の上
甲板裏面及びタンク底に夫々、固定し、1年間(365
日間)原油環境下に曝した後、実施例1と同様にして錆
層中の元素及び成分組成、並びに上甲板板厚減及びタン
ク底の最大ピット深さを測定した。これらの結果を表5
に記載する。
【0067】
【表4】
【0068】
【表5】 これらの表より、以下の様に考察することができる。
【0069】まず、表5のNo.9〜12は、被覆層
(塗膜)成分がいずれも本発明の好ましい範囲を満足し
ている為、錆層に含まれる元素及び成分が本発明の要件
を満足する本発明例であるが、いずれも上甲板板厚減及
びタンク底の最大ピット深さは夫々、0.05mm以
下、2.5mm以下と著しく低く、耐食性に極めて優れ
ていることが分かる。
【0070】尚、No.8/No.13は錆中の選択成
分の合計量が本発明の好ましい範囲を下回る/超える例
であり、上甲板板厚減及びタンク底の最大ピット深さが
夫々、0.13mm、約3.2mmと若干厚くなったも
のの、錆中の基本成分はいずれも本発明の好ましい範囲
を満足している為、下記の比較例に比べると、良好な耐
食性を有している。
【0071】これに対し、No.1は塗膜中のCが少な
い為、錆層中のCも少ない例;No.2は塗膜中のSi
が少ない為、錆層中のSiも少ない例;No.3は塗膜
中のMnが少ない為、錆層中のMnも少ない例;No.
4は塗膜中のCrが少ない為、錆層中のCrも少ない
例;No.5は塗膜中のNiが少ない為、錆層中のNi
も少ない例;No.6は塗膜中のCuが少ない為、錆層
中のCuも少なく、且つ、錆層中の硫黄と硫化鉄の合計
量が少ない例;No.7は塗膜中のTiが少ない為、錆
層中のTiも少なく、且つ、錆層中の(α−FeOOH
と非晶質成分の合計量)が少ない例;一方、No.14
は塗膜中のCが多い為、錆層中のCも多い例;No.1
5は塗膜中のSiが多い為、錆層中のSiも多い例;N
o.16は塗膜中のMnが多い為、錆層中のMnも多い
例;No.17は塗膜中のCrが多い為、錆層中のCr
も多い例;No.18は塗膜中のNiが多い為、錆層中
のNiも多い例;No.19は塗膜中のTiが多い為、
錆層中のTiも多い例;No.20は塗膜中のCuが多
い為、錆層中のCuも多く、且つ、錆層中の硫黄と硫化
鉄の合計量が多い例であり、いずれも上甲板板厚減及び
タンク底の最大ピット深さが夫々、0.22mm以上、
7.2mm以上と、極めて大きく、耐食性が著しく劣化
していることが分かる。
【0072】実施例4:ジンクリッチ塗装鋼材における
錆中成分と防食性との関係 本発明では、ジンクリッチ塗装が施された塗装鋼材にお
いて、鋼中成分を種々変化させることにより錆層の元素
及び成分を変えた場合における、錆成分と防食性との関
係について調べた。
【0073】まず、鋼中にC,Si,Mn,Cr,C
u,Ni,Tiの各基本成分;更に必要に応じて、M
g,Ca,P,S,B,N,La,Ce,及びミッシュ
メタルよりなる群から選択される少なくとも一種の元素
を、夫々、添加量を変えて添加した各種鋼を溶製し、7
0×150×5mmtの試験片に加工した後、酸洗、脱
脂、ショットブラストを行ってから、(1)無機ジンク
リッチプライマーを塗布(厚さ50μm)し、更にエポ
キシ系樹脂を塗布する(厚さ250μm)か、若しくは
(2)亜鉛めっきを施し(厚さ50μm)、浸漬方式に
よるリン酸亜鉛化成処理の後、エポキシ系塗装(厚さ2
50μm)を行った。
【0074】上記(1)または(2)の塗装後の試験各
試験片の表面に、深さ400μmの、素地に達するクロ
スカット(傷)を×印状に入れ、原油タンカーVapor Sp
aceの上甲板裏面に固定し、1年間(365日間)原油
環境下に曝した。
【0075】試験終了後、塗膜劣化によるクロスカット
部のふくれ幅を測定した。同様の試験を、各試験片毎に
10回ずつ行い、その最大ふくれ幅を表6に示す。
【0076】また、各試験片の錆を実施例1と同様にし
て測定し、錆層中の元素と成分組成を測定した。これら
の結果を表6に併記する。
【0077】
【表6】 表6より、以下の様に考察することができる。
【0078】まず、表6のNo.9〜12は、錆中の基
本成分及び選択成分がいずれも本発明の好ましい範囲を
満足している為、錆層に含まれる元素及び成分が本発明
の要件を満足する本発明例であるが、ジンクリッチ塗装
を施した場合、亜鉛めっきを施した場合のいずれの態様
においても、最大ふくれ幅は夫々、1.4mm以下、
1.5mm以下と著しく低く、耐食性に極めて優れてい
ることが分かる。
【0079】尚、No.8/No.13は錆中の選択成
分の合計量が本発明の好ましい範囲を下回る/超える例
であり、最大ふくれ幅は、ジンクリッチ塗装の場合は約
2.1mm、亜鉛めっきを施した場合は2.3mmと、
若干厚くなったものの、鋼中の基本成分はいずれも本発
明の好ましい範囲を満足している為、下記の比較例に比
べると、良好な耐食性を有している。
【0080】これに対し、No.1は鋼中のCが0.0
0008%と少ない為、錆層中のCも少ない例;No.
2は鋼中のSiが0.0007%と少ない為、錆層中の
Siも少ない例;No.3は鋼中のMnが0.0006
%と少ない為、錆層中のMnも少ない例;No.4は鋼
中のCrが0.00008%と少ない為、錆層中のCr
も少ない例;No.5は鋼中のNiが0.0006%と
少ない為、錆層中のNiも少ない例;No.6は鋼中の
Cuが0.0008%と少ない為、錆層中のCuも少な
く、且つ、錆層中の硫黄と硫化鉄の合計量が少ない例;
No.7は鋼中のTiが0.00007%と少ない為、
錆層中のTiも少なく、且つ、錆層中の(α−FeOO
Hと非晶質成分の合計量)が少ない例;一方、No.1
4は鋼中のCが0.2%と多い為、錆層中のCも多い
例;No.15は鋼中のSiが1.4%と多い為、錆層
中のSiも多い例;No.16は鋼中のMnが3%と多
い為、錆層中のMnも多い例;No.17は鋼中のCr
が0.3%と多い為、錆層中のCrも多い例;No.1
8は鋼中のNiが3%と多い為、錆層中のNiも多い
例;No.19は鋼中のTiが0.3%と多い為、錆層
中のTiも多い例;No.20は鋼中のCuが3%と多
い為、錆層中のCuも多く、且つ、錆層中の硫黄と硫化
鉄の合計量が多い例であり、ジンクリッチ塗装の場合に
は4mm以上、亜鉛めっきの場合には4mm以上の最大
ふくれ幅が見られ、耐食性が著しく劣化していることが
分かる。
【0081】
【発明の効果】本発明は上記の様に構成されているの
で、原油タンカー、石油タンク、原油タンカーのカーゴ
タンク、油井用パイプライン等に代表される、原油及び
重油の貯蔵容器に特に好適な耐食鋼材;当該耐食鋼材用
塗料;及び耐食性に優れた原油及び重油の貯蔵容器を提
供することができた。
───────────────────────────────────────────────────── フロントページの続き Fターム(参考) 4K044 AA02 AB02 BA10 BA12 BA19 BA21 BB03 BB04 BB11 BC02 CA11 CA18 CA53 CA62

Claims (10)

    【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】 鋼材に、C :0.00010〜0.1
    %(質量%の意味、以下同じ),Si:0.0010〜
    1.0%,Mn:0.0010〜2.0%,Cr:0.
    00010〜0.1%,Cu:0.0010〜2.0
    %,Ni:0.0010〜2.0%,Ti:0.000
    10〜0.1%を含有する錆層が形成されており、且
    つ、該錆層をX線回折法で分析したとき、硫黄と硫化鉄
    を合計で1.0〜70%,α−FeOOHと非晶質成分
    を合計で20%以上含有する錆層が形成されていること
    を特徴とする原油及び重油の貯蔵容器用耐食鋼材。
  2. 【請求項2】 前記錆層は、更にMg,Ca,P,S,
    B,N,La,Ce,及びミッシュメタルよりなる群か
    ら選択される少なくとも一種を合計で0.00010〜
    1.0%含有するものである請求項1に記載の原油及び
    重油の貯蔵容器用耐食鋼材。
  3. 【請求項3】 更に、亜鉛含有被覆層が被覆されたもの
    である請求項1または2に記載の原油及び重油の貯蔵容
    器用耐食鋼材。
  4. 【請求項4】 前記亜鉛含有被覆層は、ジンクリッチ塗
    料が施された被覆層である請求項3に記載の原油及び重
    油の貯蔵容器用耐食鋼材。
  5. 【請求項5】 被覆層を有する鋼材であって、該被覆層
    は、C :0.00010〜0.1%,Si:0.00
    10〜1.0%,Mn:0.0010〜2.0%,C
    r:0.00010〜0.1%,Cu:0.0010〜
    2.0%,Ni:0.0010〜2.0%,Ti:0.
    00010〜0.1%を含有することを特徴とする原油
    及び重油の貯蔵容器用耐食鋼材。
  6. 【請求項6】 前記鋼材の露出部分には、請求項1また
    は2に記載の錆層が形成されているものである請求項5
    に記載の原油及び重油の貯蔵容器用耐食鋼材。
  7. 【請求項7】C :0.00010〜0.1%,Si:
    0.0010〜1.0%,Mn:0.0010〜2.0
    %,Cr:0.00010〜0.1%,Cu:0.00
    10〜2.0%,Ni:0.0010〜2.0%,T
    i:0.00010〜0.1%を含有することを特徴と
    する原油及び重油の貯蔵容器用耐食性塗料。
  8. 【請求項8】 請求項1〜6のいずれかに記載された原
    油及び重油の貯蔵容器用耐食鋼材によって得られた原油
    及び重油の貯蔵容器。
  9. 【請求項9】 請求項1〜6のいずれかに記載された原
    油及び重油の貯蔵容器用耐食鋼材によって得られた原油
    タンカーのカーゴタンク。
  10. 【請求項10】 請求項1〜6のいずれかに記載された
    原油及び重油の貯蔵容器用耐食鋼材によって得られた油
    井用パイプライン。
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* Cited by examiner, † Cited by third party
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