JPH09170053A - 抗菌性に優れたフェライト系ステンレス鋼及びその製造方法 - Google Patents
抗菌性に優れたフェライト系ステンレス鋼及びその製造方法Info
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- JPH09170053A JPH09170053A JP34773595A JP34773595A JPH09170053A JP H09170053 A JPH09170053 A JP H09170053A JP 34773595 A JP34773595 A JP 34773595A JP 34773595 A JP34773595 A JP 34773595A JP H09170053 A JPH09170053 A JP H09170053A
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Abstract
(57)【要約】
【目的】 持続性のある抗菌性を付与したフェライト系
ステンレス鋼を得る。 【構成】 このフェライト系ステンレス鋼は、C:0.
1%以下,Si:2%以下,Mn:2%以下,Cr:1
0〜30%及びCu:0.4〜3%を含み、マトリック
ス中にCuリッチ相が0.2体積%以上の割合で析出し
ている。更に、0.02〜1%のNb及び/又はTi含
むことができ、Mo:3%以下,Al:1%以下,Z
r:1%以下,V:1%以下,B:0.05%以下,希
土類金属元素(REM):0.05%以下の1種又は2
種以上を添加しても良い。Cuリッチ相は、最終焼鈍
後、500〜800℃の時効処理によって0.2体積%
以上析出させる。
ステンレス鋼を得る。 【構成】 このフェライト系ステンレス鋼は、C:0.
1%以下,Si:2%以下,Mn:2%以下,Cr:1
0〜30%及びCu:0.4〜3%を含み、マトリック
ス中にCuリッチ相が0.2体積%以上の割合で析出し
ている。更に、0.02〜1%のNb及び/又はTi含
むことができ、Mo:3%以下,Al:1%以下,Z
r:1%以下,V:1%以下,B:0.05%以下,希
土類金属元素(REM):0.05%以下の1種又は2
種以上を添加しても良い。Cuリッチ相は、最終焼鈍
後、500〜800℃の時効処理によって0.2体積%
以上析出させる。
Description
【0001】
【産業上の利用分野】本発明は、厨房機器,電気機器,
建築材料,機械機器,化学機器等の広範囲な分野におい
て抗菌性が必要とされる用途に適したフェライト系ステ
ンレス鋼及びその製造方法に関する。
建築材料,機械機器,化学機器等の広範囲な分野におい
て抗菌性が必要とされる用途に適したフェライト系ステ
ンレス鋼及びその製造方法に関する。
【0002】
【従来の技術】厨房機器,病院等で使用されている各種
機材や、バス,電車等の輸送機関の手摺り用パイプ等で
は、一般環境における耐食性が要求されるため、SUS
304に代表されるステンレス鋼が主として使用されて
いる。しかし、黄色ブドウ球菌による院内感染が問題と
なってきている昨今、バス,電車等の不特定多数の人間
が利用する環境においても衛生面の向上が求められてい
る。これに伴って、各種機械,器具に使用される材料と
しても、一般構造材としての特性に止まらず、定期的な
消毒等の感染防止を図る必要がない抗菌性等の機能を付
与したメンテナンスフリーの材料が望まれている。抗菌
性を付与した材料としては、特開平5−22820号公
報,特開平6−10191号公報等で開示されているよ
うに、有機皮膜やめっきによる抗菌コートが一般的であ
った。しかし、抗菌コートは、皮膜の消失に応じて抗菌
性が低下する欠点がある。抗菌性が消失した有機質は、
栄養源となり却って細菌や雑菌を繁殖させる虞れもあ
る。抗菌剤成分を混入した複合めっきを施したもので
は、めっき層の密着性が十分でなく、加工性を低下させ
る欠点がある。また、皮膜の溶解,摩耗,欠損等に起因
して外観が低下すると共に、抗菌作用が低下する場合が
ある。
機材や、バス,電車等の輸送機関の手摺り用パイプ等で
は、一般環境における耐食性が要求されるため、SUS
304に代表されるステンレス鋼が主として使用されて
いる。しかし、黄色ブドウ球菌による院内感染が問題と
なってきている昨今、バス,電車等の不特定多数の人間
が利用する環境においても衛生面の向上が求められてい
る。これに伴って、各種機械,器具に使用される材料と
しても、一般構造材としての特性に止まらず、定期的な
消毒等の感染防止を図る必要がない抗菌性等の機能を付
与したメンテナンスフリーの材料が望まれている。抗菌
性を付与した材料としては、特開平5−22820号公
報,特開平6−10191号公報等で開示されているよ
うに、有機皮膜やめっきによる抗菌コートが一般的であ
った。しかし、抗菌コートは、皮膜の消失に応じて抗菌
性が低下する欠点がある。抗菌性が消失した有機質は、
栄養源となり却って細菌や雑菌を繁殖させる虞れもあ
る。抗菌剤成分を混入した複合めっきを施したもので
は、めっき層の密着性が十分でなく、加工性を低下させ
る欠点がある。また、皮膜の溶解,摩耗,欠損等に起因
して外観が低下すると共に、抗菌作用が低下する場合が
ある。
【0003】
【発明が解決しようとする課題】ところで、Ag,Cu
等の金属元素は、有効な抗菌作用を発揮することが知ら
れている。しかし、Agは、非常に高価で耐食性にも劣
っていることから、腐食が予想される環境に曝される用
途で使用されていない。他方、Cuは比較的安価な元素
であり抗菌成分としても有効なことから、ステンレス鋼
等の材料に添加して抗菌性を付与することが検討されて
いる。本発明者等も、Cu添加による抗菌性の改善を種
々検討し、ステンレス鋼表面のCu濃度を高めることに
よって抗菌性が改善されることを見い出し、特願平6−
209121号,特願平7−55069号で提案した。
本発明は、先に提案したCuの作用を更に高めるべく案
出されたものであり、Cuを主体とする第2相(以下、
Cuリッチ相という)を所定量析出させることにより、
優れた抗菌性をフェライト系ステンレス鋼に付与するこ
とを目的とする。
等の金属元素は、有効な抗菌作用を発揮することが知ら
れている。しかし、Agは、非常に高価で耐食性にも劣
っていることから、腐食が予想される環境に曝される用
途で使用されていない。他方、Cuは比較的安価な元素
であり抗菌成分としても有効なことから、ステンレス鋼
等の材料に添加して抗菌性を付与することが検討されて
いる。本発明者等も、Cu添加による抗菌性の改善を種
々検討し、ステンレス鋼表面のCu濃度を高めることに
よって抗菌性が改善されることを見い出し、特願平6−
209121号,特願平7−55069号で提案した。
本発明は、先に提案したCuの作用を更に高めるべく案
出されたものであり、Cuを主体とする第2相(以下、
Cuリッチ相という)を所定量析出させることにより、
優れた抗菌性をフェライト系ステンレス鋼に付与するこ
とを目的とする。
【0004】
【課題を解決するための手段】本発明のフェライト系ス
テンレス鋼は、その目的を達成するため、C:0.1重
量%以下,Si:2重量%以下,Mn:2重量%以下,
Cr:10〜30重量%及びCu:0.4〜3重量%を
含み、マトリックス中にCuリッチ相が0.2体積%以
上の割合で析出していることを特徴とする。本発明のフ
ェライト系ステンレス鋼は、0.02〜1重量%のNb
及び/又はTiを含むことができる。更に、Mo:3重
量%以下,Al:1重量%以下,Zr:1重量%以下,
V:1重量%以下,B:0.05重量%以下,希土類金
属元素(REM):0.05重量%以下の1種又は2種
以上を含んでも良い。このフェライト系ステンレス鋼
は、所定の組成をもつフェライト系ステンレス鋼を冷間
圧延し、最終焼鈍した後、500〜800℃で時効処理
を施し、Cuリッチ相を0.2体積%以上析出させるこ
とにより製造される。
テンレス鋼は、その目的を達成するため、C:0.1重
量%以下,Si:2重量%以下,Mn:2重量%以下,
Cr:10〜30重量%及びCu:0.4〜3重量%を
含み、マトリックス中にCuリッチ相が0.2体積%以
上の割合で析出していることを特徴とする。本発明のフ
ェライト系ステンレス鋼は、0.02〜1重量%のNb
及び/又はTiを含むことができる。更に、Mo:3重
量%以下,Al:1重量%以下,Zr:1重量%以下,
V:1重量%以下,B:0.05重量%以下,希土類金
属元素(REM):0.05重量%以下の1種又は2種
以上を含んでも良い。このフェライト系ステンレス鋼
は、所定の組成をもつフェライト系ステンレス鋼を冷間
圧延し、最終焼鈍した後、500〜800℃で時効処理
を施し、Cuリッチ相を0.2体積%以上析出させるこ
とにより製造される。
【0005】
【作用】ステンレス鋼は、不動態皮膜と称されるCrを
主とする水酸化物で覆われていることから、優れた耐食
性を呈する。本発明者等は、有効な抗菌性を発現するC
uをフェライト系ステンレス鋼に添加し、不動態皮膜中
に含まれるCu量を測定すると共に、黄色ブドウ球菌を
含む液の滴下による抗菌性を調査した。その結果、ある
程度以上のCuを含有させたステンレス鋼は、抗菌性を
備えていることが判った。しかし、鋼中に数%以下のC
uを単に固溶させただけでは、抗菌性及びその持続性が
必ずしも十分ではない場合がある。そこで、更に検討を
重ねた結果、同一のCu含有量であっても、Cuの一部
が図1に示すようなCuリッチ相として析出している
と、表面のCu濃度が上昇すると共に、抗菌性も改善さ
れることが判明した。有効な抗菌性を付与する上では、
Cuリッチ相を0.2体積%以上の割合で析出させる必
要がある。Cuリッチ相は、FCC構造をもつものやH
CP構造をもつもの等がある。
主とする水酸化物で覆われていることから、優れた耐食
性を呈する。本発明者等は、有効な抗菌性を発現するC
uをフェライト系ステンレス鋼に添加し、不動態皮膜中
に含まれるCu量を測定すると共に、黄色ブドウ球菌を
含む液の滴下による抗菌性を調査した。その結果、ある
程度以上のCuを含有させたステンレス鋼は、抗菌性を
備えていることが判った。しかし、鋼中に数%以下のC
uを単に固溶させただけでは、抗菌性及びその持続性が
必ずしも十分ではない場合がある。そこで、更に検討を
重ねた結果、同一のCu含有量であっても、Cuの一部
が図1に示すようなCuリッチ相として析出している
と、表面のCu濃度が上昇すると共に、抗菌性も改善さ
れることが判明した。有効な抗菌性を付与する上では、
Cuリッチ相を0.2体積%以上の割合で析出させる必
要がある。Cuリッチ相は、FCC構造をもつものやH
CP構造をもつもの等がある。
【0006】Cuリッチ相を析出させる手段としては、
Cuリッチ相が析出し易い温度領域で時効等の等温加熱
を施すこと,徐冷により析出温度域の通過時間をできる
だけ長くすること等が考えられる。そこで、種々の条件
について検討した結果、最終焼鈍後に500〜800℃
の範囲で時効処理すると析出が促進され、Cu添加量が
低い場合でも良好な抗菌性が得られることを見い出し
た。Ti,Nb等の炭窒化物や析出物を形成し易い元素
を添加すると、これら析出物等の析出サイトとしてCu
リッチ相がマトリックスに均一分散し易く、抗菌性及び
製造性が改善される。Cuリッチ相の析出量と表面Cu
濃度との関係を更に調査した結果、表面の一部にCuリ
ッチ相が存在し、この部分においてはCrを主体とする
不動態皮膜が存在せず、結果的に抗菌性に有効なCuの
溶出が容易になったものと推察された。
Cuリッチ相が析出し易い温度領域で時効等の等温加熱
を施すこと,徐冷により析出温度域の通過時間をできる
だけ長くすること等が考えられる。そこで、種々の条件
について検討した結果、最終焼鈍後に500〜800℃
の範囲で時効処理すると析出が促進され、Cu添加量が
低い場合でも良好な抗菌性が得られることを見い出し
た。Ti,Nb等の炭窒化物や析出物を形成し易い元素
を添加すると、これら析出物等の析出サイトとしてCu
リッチ相がマトリックスに均一分散し易く、抗菌性及び
製造性が改善される。Cuリッチ相の析出量と表面Cu
濃度との関係を更に調査した結果、表面の一部にCuリ
ッチ相が存在し、この部分においてはCrを主体とする
不動態皮膜が存在せず、結果的に抗菌性に有効なCuの
溶出が容易になったものと推察された。
【0007】以下、本発明フェライト系ステンレス鋼に
含まれる合金元素及びその含有量等について説明する。 C:0.1重量%以下 フェライト系ステンレス鋼の強度を向上させると共に、
本発明では、Cr炭化物の生成によりε−Cu相の析出
を均一分散させる有効な合金元素である。しかし、Cの
過剰添加は製造性や耐食性を劣化させるため、上限を
0.1重量%に規制した。 Si:2重量%以下 耐食性及び強度を改善する合金元素であるが、過剰添加
は製造性を劣化させる原因となるので、上限を2重量%
に規制した。 Mn:2重量%以下 製造性を改善すると共に、鋼中の有害なSをMnSとし
て固定する合金元素である。しかし、過剰添加により耐
食性が劣化することから、上限を2重量%に規制した。
含まれる合金元素及びその含有量等について説明する。 C:0.1重量%以下 フェライト系ステンレス鋼の強度を向上させると共に、
本発明では、Cr炭化物の生成によりε−Cu相の析出
を均一分散させる有効な合金元素である。しかし、Cの
過剰添加は製造性や耐食性を劣化させるため、上限を
0.1重量%に規制した。 Si:2重量%以下 耐食性及び強度を改善する合金元素であるが、過剰添加
は製造性を劣化させる原因となるので、上限を2重量%
に規制した。 Mn:2重量%以下 製造性を改善すると共に、鋼中の有害なSをMnSとし
て固定する合金元素である。しかし、過剰添加により耐
食性が劣化することから、上限を2重量%に規制した。
【0008】Cr:10〜30重量% フェライト系ステンレス鋼の耐食性を維持するために重
要な合金元素であって、10重量%以上が必要とされ
る。しかし、30重量%を超える多量のCrは、製造性
を悪化させる。 Cu:0.4〜3重量% 及び Cuリッチ相:0.2
体積%以上 本発明のフェライト系ステンレス鋼において最も重要な
合金元素であり、良好な抗菌性を維持するために0.2
体積%以上のCuリッチ相が析出していることが必要で
ある。0.2体積%以上のCuリッチ相を析出させるた
めには、0.4重量%以上のCu添加が必要である。し
かし、過剰添加により製造性や耐食性が低下するので、
Cu含有量の上限を3重量%に規制した。また、Cuリ
ッチ相は、析出物の大きさが特に限定されるものでない
が、製品表面全体において均等に抗菌性を発揮させるた
めには、析出相が適宜に分散して分布していることが好
ましい。
要な合金元素であって、10重量%以上が必要とされ
る。しかし、30重量%を超える多量のCrは、製造性
を悪化させる。 Cu:0.4〜3重量% 及び Cuリッチ相:0.2
体積%以上 本発明のフェライト系ステンレス鋼において最も重要な
合金元素であり、良好な抗菌性を維持するために0.2
体積%以上のCuリッチ相が析出していることが必要で
ある。0.2体積%以上のCuリッチ相を析出させるた
めには、0.4重量%以上のCu添加が必要である。し
かし、過剰添加により製造性や耐食性が低下するので、
Cu含有量の上限を3重量%に規制した。また、Cuリ
ッチ相は、析出物の大きさが特に限定されるものでない
が、製品表面全体において均等に抗菌性を発揮させるた
めには、析出相が適宜に分散して分布していることが好
ましい。
【0009】Nb及び/又はTi:0.02〜1重量% 必要に応じて添加される合金元素であり、析出物となっ
て、その周囲にε−Cu相を均一析出させる作用を呈す
る。このような作用は、0.02重量%以上で顕著にな
る。しかし、1重量%を超える過剰添加は、製造性や加
工性を低下させる。 Mo:3重量%以下 必要に応じて添加される合金元素であり、耐食性及び強
度を向上させる作用を呈する。しかし、3重量%を超え
る過剰添加は、製造性や加工性を低下させる。 Al:1重量%以下 必要に応じて添加される合金元素であり、Moと同様に
耐食性を向上させる作用を呈する。しかし、1重量%を
超える過剰添加は、製造性や加工性を低下させる。
て、その周囲にε−Cu相を均一析出させる作用を呈す
る。このような作用は、0.02重量%以上で顕著にな
る。しかし、1重量%を超える過剰添加は、製造性や加
工性を低下させる。 Mo:3重量%以下 必要に応じて添加される合金元素であり、耐食性及び強
度を向上させる作用を呈する。しかし、3重量%を超え
る過剰添加は、製造性や加工性を低下させる。 Al:1重量%以下 必要に応じて添加される合金元素であり、Moと同様に
耐食性を向上させる作用を呈する。しかし、1重量%を
超える過剰添加は、製造性や加工性を低下させる。
【0010】Zr:1重量%以下 必要に応じて添加される合金元素であり、炭窒化物を形
成し、鋼材の強度を向上させる作用を呈する。しかし、
1重量%を超える過剰添加は、製造性や加工性を低下さ
せる。 V:1重量%以下 必要に応じて添加される合金元素であり、Zrと同様に
炭窒化物を形成し、鋼材の強度を向上させる作用を呈す
る。しかし、1重量%を超える過剰添加は、製造性や加
工性を低下させる。 B:0.05重量%以下 必要に応じて添加される合金元素であり、熱間加工性を
改善する作用を呈する。しかし、0.05重量%を超え
る過剰添加は、逆に熱間加工性が低下する原因となる。
成し、鋼材の強度を向上させる作用を呈する。しかし、
1重量%を超える過剰添加は、製造性や加工性を低下さ
せる。 V:1重量%以下 必要に応じて添加される合金元素であり、Zrと同様に
炭窒化物を形成し、鋼材の強度を向上させる作用を呈す
る。しかし、1重量%を超える過剰添加は、製造性や加
工性を低下させる。 B:0.05重量%以下 必要に応じて添加される合金元素であり、熱間加工性を
改善する作用を呈する。しかし、0.05重量%を超え
る過剰添加は、逆に熱間加工性が低下する原因となる。
【0011】希土類金属元素(REM):0.05重量
%以下 必要に応じて添加される合金元素であり、Bと同様に熱
間加工性を改善する作用を呈する。しかし、0.05重
量%を超える過剰添加は、逆に熱間加工性が低下する原
因となる。 時効処理:500〜800℃ Cuリッチ相を析出させるためには、500〜800℃
の時効処理が有効である。時効処理温度が低くなるほ
ど、マトリックス中の固溶Cu量が少なくなり、Cuリ
ッチ相の析出量が多くなる。しかし、低過ぎる時効処理
温度では、拡散速度が遅くなり、析出量が逆に減少す
る。温度条件を変えて種々の時効処理を施し、抗菌性に
有効な温度範囲を検討した結果、500〜800℃が工
業的に有効な温度範囲であることが判った。
%以下 必要に応じて添加される合金元素であり、Bと同様に熱
間加工性を改善する作用を呈する。しかし、0.05重
量%を超える過剰添加は、逆に熱間加工性が低下する原
因となる。 時効処理:500〜800℃ Cuリッチ相を析出させるためには、500〜800℃
の時効処理が有効である。時効処理温度が低くなるほ
ど、マトリックス中の固溶Cu量が少なくなり、Cuリ
ッチ相の析出量が多くなる。しかし、低過ぎる時効処理
温度では、拡散速度が遅くなり、析出量が逆に減少す
る。温度条件を変えて種々の時効処理を施し、抗菌性に
有効な温度範囲を検討した結果、500〜800℃が工
業的に有効な温度範囲であることが判った。
【0012】
【実施例】表1及び表2に示した組成を持つフェライト
系ステンレス鋼を30kg真空溶解炉で溶製し、鍛造及
び熱延後に焼鈍を施し、熱延焼鈍板を得た。そして、冷
延及び焼鈍を繰り返し施し、最終的に板厚0.5〜1.
0mmの冷延焼鈍板を得た。一部の板については、1時
間の時効処理を施した。得られた供試材を透過型電子顕
微鏡で観察した。たとえば、K4鋼を800℃で1時間
時効処理した供試材を薄膜サンプルにした後で観察した
ものでは、図1の観察結果にみられるように、Cuリッ
チ相(ε−Cu相)が均一且つ微細に分散析出してい
た。このようにε−Cu相が均一且つ微細に分散析出し
た組織をもつものほど、優れた抗菌性を呈した。また、
この観察結果からε−Cu相の析出量を定量した。
系ステンレス鋼を30kg真空溶解炉で溶製し、鍛造及
び熱延後に焼鈍を施し、熱延焼鈍板を得た。そして、冷
延及び焼鈍を繰り返し施し、最終的に板厚0.5〜1.
0mmの冷延焼鈍板を得た。一部の板については、1時
間の時効処理を施した。得られた供試材を透過型電子顕
微鏡で観察した。たとえば、K4鋼を800℃で1時間
時効処理した供試材を薄膜サンプルにした後で観察した
ものでは、図1の観察結果にみられるように、Cuリッ
チ相(ε−Cu相)が均一且つ微細に分散析出してい
た。このようにε−Cu相が均一且つ微細に分散析出し
た組織をもつものほど、優れた抗菌性を呈した。また、
この観察結果からε−Cu相の析出量を定量した。
【0013】抗菌性試験には、Staphylococ
us aureus IFO12732(黄色ブドウ球
菌)を普通ブイヨン培地で35℃,16〜24時間振盪
培養し、培養液を用意した。培養液を滅菌リン酸緩衝液
で20,000倍に希釈し、菌液を調製した。5cm×
5cmの試験片を#400研磨した表面に菌液1mlを
滴下し、25℃で24時間保存した。保存後、試験片を
SCDLP培地(日本製薬株式会社製)9mlで洗い流
し、得られた液について標準寒天培地を用いた混釈平板
培養法(35℃,2日間培養)で生菌数をカウントし
た。また、参照としてシャーレに菌液を直接滴下し、同
様に生菌数をカウントした。生菌が検出されなかったも
のを◎,参照の生菌数と比較して95%以上が死滅した
ものを○,60〜95%未満の範囲で死滅したものを
△,60%未満の死滅量であったものを×として評価し
た。評価結果を、ε−Cu相と併せて表1及び表2に示
す。
us aureus IFO12732(黄色ブドウ球
菌)を普通ブイヨン培地で35℃,16〜24時間振盪
培養し、培養液を用意した。培養液を滅菌リン酸緩衝液
で20,000倍に希釈し、菌液を調製した。5cm×
5cmの試験片を#400研磨した表面に菌液1mlを
滴下し、25℃で24時間保存した。保存後、試験片を
SCDLP培地(日本製薬株式会社製)9mlで洗い流
し、得られた液について標準寒天培地を用いた混釈平板
培養法(35℃,2日間培養)で生菌数をカウントし
た。また、参照としてシャーレに菌液を直接滴下し、同
様に生菌数をカウントした。生菌が検出されなかったも
のを◎,参照の生菌数と比較して95%以上が死滅した
ものを○,60〜95%未満の範囲で死滅したものを
△,60%未満の死滅量であったものを×として評価し
た。評価結果を、ε−Cu相と併せて表1及び表2に示
す。
【0014】
【0015】
【0016】表1から明らかなように、0.4重量%以
上のCuが添加され且つε−Cu相が0.2体積%以上
析出している材料は、優れた抗菌性を呈していることが
判る。これに対し、Cu含有量が0.4重量%未満であ
る表2のK14〜K16では、ε−Cu相の析出量が少
なく、低い抗菌性を示した。同レベルのCu含有量であ
ってもε−Cu相析出用時効処理を施していない表2の
試験番号K1,K2では、抗菌性に若干の改善がみられ
るものの、十分な抗菌性が得られなかった。0.4重量
%以上のCuを添加したものでも、400℃で時効処理
した表2のK3及び900℃で時効処理した表2のK4
では、ε−Cu相の析出量が0.2体積%未満になって
おり、抗菌性が不足していた。また、本発明で規定した
温度範囲で時効処理した表2のK17及びK18では、
Cu含有量が不足していることから抗菌性も劣ってい
た。
上のCuが添加され且つε−Cu相が0.2体積%以上
析出している材料は、優れた抗菌性を呈していることが
判る。これに対し、Cu含有量が0.4重量%未満であ
る表2のK14〜K16では、ε−Cu相の析出量が少
なく、低い抗菌性を示した。同レベルのCu含有量であ
ってもε−Cu相析出用時効処理を施していない表2の
試験番号K1,K2では、抗菌性に若干の改善がみられ
るものの、十分な抗菌性が得られなかった。0.4重量
%以上のCuを添加したものでも、400℃で時効処理
した表2のK3及び900℃で時効処理した表2のK4
では、ε−Cu相の析出量が0.2体積%未満になって
おり、抗菌性が不足していた。また、本発明で規定した
温度範囲で時効処理した表2のK17及びK18では、
Cu含有量が不足していることから抗菌性も劣ってい
た。
【0017】
【発明の効果】以上に説明したように、本発明のフェラ
イト系ステンレス鋼では、素材のCu含有量を規制する
と共に、所定量のCuリッチ相を析出させることによ
り、無垢材での優れた抗菌性を発現させている。このよ
うにして抗菌性が付与されたフェライト系ステンレス鋼
は、長期間にわたって優れた特性を持続させることか
ら、厨房機器,病院で使用される器材,バスや電車等の
輸送機関の手摺り等の抗菌性が必要とされる分野で使用
され、生活環境が改善される。
イト系ステンレス鋼では、素材のCu含有量を規制する
と共に、所定量のCuリッチ相を析出させることによ
り、無垢材での優れた抗菌性を発現させている。このよ
うにして抗菌性が付与されたフェライト系ステンレス鋼
は、長期間にわたって優れた特性を持続させることか
ら、厨房機器,病院で使用される器材,バスや電車等の
輸送機関の手摺り等の抗菌性が必要とされる分野で使用
され、生活環境が改善される。
【図1】 800℃×1時間の時効処理したCu含有フ
ェライト系ステンレス鋼供試材を透過型電子顕微鏡で観
察した組織
ェライト系ステンレス鋼供試材を透過型電子顕微鏡で観
察した組織
───────────────────────────────────────────────────── フロントページの続き (51)Int.Cl.6 識別記号 庁内整理番号 FI 技術表示箇所 C22C 38/38 C22C 38/38 (72)発明者 大久保 直人 山口県新南陽市野村南町4976番地 日新製 鋼株式会社技術研究所内
Claims (4)
- 【請求項1】 C:0.1重量%以下,Si:2重量%
以下,Mn:2重量%以下,Cr:10〜30重量%及
びCu:0.4〜3重量%を含み、マトリックス中にC
uリッチ相が0.2体積%以上の割合で析出している抗
菌性に優れたフェライト系ステンレス鋼。 - 【請求項2】 0.02〜1重量%のNb及び/又はT
iを含む請求項1記載のフェライト系ステンレス鋼。 - 【請求項3】 Mo:3重量%以下,Al:1重量%以
下,Zr:1重量%以下,V:1重量%以下,B:0.
05重量%以下,希土類金属元素(REM):0.05
重量%以下の1種又は2種以上を含む請求項1又は2記
載のフェライト系ステンレス鋼。 - 【請求項4】 請求項1〜3の何れかに記載の組成をも
つフェライト系ステンレス鋼を冷間圧延し、最終焼鈍し
た後、500〜800℃で時効処理を施し、Cuリッチ
相を0.2体積%以上析出させる抗菌性に優れたフェラ
イト系ステンレス鋼の製造方法。
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