JP2000160294A - 高硬度抗菌性鋼材およびその製造法 - Google Patents
高硬度抗菌性鋼材およびその製造法Info
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Abstract
供する。 【解決手段】 質量%で、Cu:2.0〜5.0%,C:0.6
〜1.5%,Si:3.0%以下,Mn:3.0%以下,Cr:
5.0%以下を含み、必要に応じてさらに、Ni:0〜2.0
%,Mo:0〜1.0%,W:0〜2.0%,V:0〜1.0%,T
i:0〜0.2%,Nb:0〜0.2%,Co:0〜3.0%,B:
0.001〜0.005%を含み、残部がFeおよび不可避的不純
物からなり、マルテンサイト組織を主体とした金属組織
を呈してHv700以上の硬さを有する抗菌性鋼材。この鋼
材は、550℃〜Ac1点の温度範囲で10分以上保持してC
u濃化相を析出させた鋼を、750〜950℃で1〜60分保持
してCu濃化相が存在している状態から焼入れすること
によって製造できる。
Description
度を有しかつ抗菌性を有する鋼材およびその製造法に関
するものであり、特に食品加工や厨房関連で使用される
刃物に適した鋼材およびその製造法に関するものであ
る。
に抗菌性を有する材料が注目されている。これは、生活
環境の衛生指向が強まる中、大腸菌O-157による集団食
中毒や耐性ブドウ球菌(MRSA)による院内感染が社会問
題化したこともあり、感染経路となることが懸念される
部位に使用される材料を抗菌性のあるものに変えようと
する傾向が一般化してきたことが一因と考えられる。
ものに抗菌性を持たせたもの、抗菌性のある塗料等を素
材に被覆したものがある。このうち、前者の代表例とし
ては樹脂系抗菌材料と抗菌ステンレス鋼がある。
えば洗濯機の内部)など、強度,耐熱性,耐疵付き性な
どの特性において樹脂系抗菌材料や抗菌性塗料の塗布で
は対応できない用途にもっぱら使用されている。包丁な
どの刃物に使用されるマルテンサイト系ステンレス鋼に
おいても抗菌性を付与したものが開発されており、例え
ば特開平9−195016号公報に示されている。
ンレス鋼は、従来から一般家庭用の包丁などに広く用い
られている。しかし、マルテンサイト系ステンレス鋼の
刃物は「切れ味」の面で高炭素鋼の刃物に遠く及ばない
のが現状である。この切れ味の優劣は主として素材の硬
さに起因すると考えられる。マルテンサイト系ステンレ
ス鋼で作った刃物の硬さは通常Hv580程度である。これ
に対し、高炭素鋼で作ったいわゆる打ち刃物は、SK5程
度の高炭素鋼を素材として用いながら焼入れを行うこと
によってHv800程度の刃先硬度を得ている。
を例にとると、プロの料理人としての切れ味へのこだわ
りからHv700以上の硬さが要求されることに加え、細菌
汚染防止の観点からは抗菌性を有していることも昨今強
く望まれている。しかし、マルテンサイト系抗菌ステン
レス鋼ではHv700以上といった高硬度を実現することは
困難である。一方、高炭素鋼に抗菌性を付与した高硬度
素材が開発されていないのも現状である。
てはCuを含有させる方法がよく用いられており、特開
平9−195016号公報に開示のマルテンサイト系抗菌ステ
ンレス鋼もその一例である。しかし、高炭素鋼の場合
は、Cuを含有させると焼入れ後の残留オーステナイト
が増加し、高硬度が得られなくなってしまうという問題
がある。高炭素鋼で抗菌性のある鋼材が未だ実用化され
ていないのはこのためである。本発明は、上記問題を解
決し、Hv700以上の高硬度を有する高炭素鋼の抗菌性鋼
材を提供することを目的とする。
に、請求項1の発明は、質量%で、Cu:2.0〜5.0%,
C:0.6〜1.5%以下,Si:3.0%以下,Mn:3.0%以
下,Cr:5.0%以下を含み、マルテンサイト組織を主
体とした金属組織を呈してHv700以上の硬さを有する高
硬度抗菌性鋼材である。ここで、マルテンサイト組織を
主体とした金属組織は、概ね70体積%以上のマルテンサ
イト組織を有する金属組織であり、他に残留オーステナ
イト相や炭化物、さらにはε−CuなどのCu濃化相を
有していてもよい。
組成を、質量%で、Cu:2.0〜5.0%,C:0.6〜1.5%
以下,Si:3.0%以下,Mn:3.0%以下,Cr:5.0
%以下,Ni:0〜2.0%,Mo:0〜1.0%,W:0〜2.0
%,V:0〜1.0%,Ti:0〜0.2%,Nb:0〜0.2%,
Co:0〜3.0%,B:0〜0.005%を含み、残部がFeお
よび不可避的不純物からなる鋼組成に変えたものであ
る。ここで、Ni,Mo,W,V,Ti,Nb,Co,
Bの下限値の0%とは、その元素が無添加である場合を
意味する。
組成を、質量%で、Cu:2.0〜5.0%,C:0.6〜1.5%
以下,Si:3.0%以下,Mn:3.0%以下,Cr:5.0
%以下を含み、さらにNi:0.5〜2.0%,Mo:0.1〜
1.0%,W:0.5〜2.0%,V:0.1〜1.0%,Ti:0.05
〜0.2%,Nb:0.05〜0.2%,Co:0.5〜3.0%,B:
0.001〜0.005%のうち1種以上を含み、残部がFeおよ
び不可避的不純物からなる鋼組成に変えたものである。
おいて、金属組織がマルテンサイト組織を主体とし残留
オーステナイト相とCu濃化相を有するものである点を
規定したものである。ここで、Cu濃化相としてはε−
Cuなどが挙げられる。
おいて、マルテンサイト組織が特に焼戻しマルテンサイ
ト組織である点を規定したものである。ここで、焼戻し
マルテンサイト組織は、焼入れで生じたマルテンサイト
組織がいわゆる低温焼戻しによって変化した組織を意味
する。
おいて、鋼材が特に刃物用である点を規定したものであ
る。
高硬度抗菌性鋼材の製造法であって、焼入れ処理の加熱
温度でCu濃化相が0.2体積%以上存在している状態の
鋼を焼入れ(すなわち急冷)することを特徴とするもの
である。
高硬度抗菌性鋼材の製造法であって、550℃〜Ac1点の
温度範囲で10分以上保持する熱処理によりCu濃化相を
析出させた鋼を、750〜950℃で1〜60分加熱保持して焼
入れ(すなわち急冷)するものである。
て、Cu濃化相を析出させる熱処理後焼入れ時の加熱前
に、冷間加工を施す点を規定したものである。
発明において、550℃〜Ac1点の温度範囲で10分以上保
持する熱処理が熱間加工後の冷却過程で行われる点を規
定したものである。
明において、焼入れ後、特に100〜350℃で10〜120分焼
戻しする点を規定したものである。
加しても焼入れ硬さを低下させないようにする手法につ
いて検討を重ねた。Cuが炭素鋼中にある程度多く固溶
すると、Ms点が大幅に低下することに起因して軟質な
残留オーステナイトが多量に生成してしまうために硬さ
が低下する。そこで、焼入れ処理に先立ち固溶Cuをε
−Cu等のCu濃化相として十分に析出させておき、焼
入れ処理では炭化物を適切に溶解させながらもCu析出
物のオーステナイトへの固溶を抑える加熱を施し、Ms
点の低下を抑えた状態から焼入れ(急冷)する手法を見
出した。この手法により、高炭素鋼においてCu添加に
よる抗菌性の付与とHv700以上の高硬度化を両立させる
ことが可能であることがわかった。本発明はこの知見に
基づいて成されたものである。以下、本発明を特定する
ための事項について説明する。
ために必要な合金元素である。高炭素鋼に2.0質量%以
上のCuを含有させると、黄色ブドウ球菌および大腸菌
に対する滅菌率が99%以上という高い抗菌性が付与され
る。3.0質量%以上のCu含有量でこれらの菌に対して
ほぼ100%の滅菌率が得られる。ただし、高炭素鋼に抗
菌性を付与するには5.0質量%以下の含有量で十分であ
り、それより多く含有させると製造性その他の問題が生
じやすくなる。したがって、Cu含有量は2.0〜5.0質量
%、好ましくは3.0〜5.0質量%とする。
素である。0.6質量%未満のC含有量では刃物などに適
した焼入れ硬さが得られない。一方、1.5質量%を超え
て含有させても硬さは必ずしも上昇せず、却って靱性の
低下をきたす。したがって、C含有量は0.6〜1.5質量%
とする。
焼戻し軟化抵抗を増大させ、抗菌性も向上させる。これ
らの効果は3.0質量%で飽和し、それより多く添加して
もSiの増量に見合った性質の改善は見られない。した
がって、Si含有量は3.0質量%以下とする。好ましい
Si含有量の範囲は0.05〜3.0質量%である。
かし、3.0質量%を超えて添加すると熱間圧延材の靱性
が低下する。したがって、Mn含有量は3.0質量%以下
とする。好ましいMn含有量の範囲は0.1〜3.0質量%で
ある。
メンタイト中に溶解してセメンタイトの硬さを大幅に上
昇させる。刃物などの機械的性質を確保するうえで重要
な元素である。しかし、5.0質量%を超えて添加しても
Cr増量に見合った効果は期待できない。したがって、
Cr含有量は5.0質量%以下とする。好ましいCr含有
量の範囲は0.1〜5.0質量%である。
改善し、低温靱性を向上させる元素である。その効果を
十分に得るには0.5質量%以上の添加が望ましい。しか
し、2.0質量%を超えて添加してもそれ以上の効果は期
待できない。したがってNiを添加する場合は、0.5〜
2.0質量%の含有量とすることが望ましい。
向上させる効果を呈する。また、高温焼戻しを行う場合
には二次硬化により高い焼戻し軟化抵抗をもたらす元素
である。これらの効果を十分に得るには0.1質量%以上
の添加が望ましい。しかし、1.0質量%を超えて添加し
てもそれ以上の効果は期待できない。したがってMoを
添加する場合は、0.1〜1.0質量%の含有量とすることが
望ましい。特に、Niとの複合添加で用いることが好ま
しい。
向上させる元素である。その効果を十分に得るには0.5
質量%以上の添加が望ましい。しかし、2.0質量%を超
えて添加してもそれ以上の効果は期待できない。したが
ってWを添加する場合は、0.5〜2.0質量%の含有量とす
ることが望ましい。
効果を有する元素である。その効果を十分に得るには0.
1質量%以上の添加が望ましい。しかし、1.0質量%を超
えて添加してもそれ以上の効果は期待できない。したが
ってVを添加する場合は、0.1〜1.0質量%の含有量とす
ることが望ましい。
を微細化する効果を有する元素である。その効果を十分
に得るには0.05質量%以上の添加が望ましい。しかし、
0.2質量%を超えて添加してもそれ以上の効果は期待で
きない。したがってTiを添加する場合は、0.05〜0.2
質量%の含有量とすることが望ましい。
ト粒界を微細化する効果を有する元素である。その効果
を十分に得るには0.05質量%以上の添加が望ましい。し
かし、0.2質量%を超えて添加してもそれ以上の効果は
期待できない。したがってNbを添加する場合は、0.05
〜0.2質量%の含有量とすることが望ましい。
化を発揮させる元素である。その効果を十分に得るには
0.5質量%以上の添加が望ましい。しかし、3.0質量%を
超えて添加してもそれ以上の効果は期待できない。した
がってCoを添加する場合は、0.5〜3.0質量%の含有量
とすることが望ましい。
その効果を十分に得るには0.001質量%以上の添加が望
ましい。しかし、0.005質量%を超えて添加してもそれ
以上の効果は期待できない。したがってBを添加する場
合は、0.001〜0.005質量%の含有量とすることが望まし
い。
れマルテンサイトによって硬度を上昇させる。前記化学
組成において、焼入れ後に概ね70体積%以上のマルテン
サイト組織を生成させると、切れ味の良い刃物を作るの
に必要なHv700以上の硬さが得られる。本発明の鋼材は
焼入れままの組織状態で刃物その他の用途に使用できる
が、一般的な高炭素鋼と同様に低温焼戻しを行ってマル
テンサイト組織を「焼戻しマルテンサイト組織」にして
から使用することもできる。
には、炭化物,若干の残留オーステナイト相の他、ε−
Cu等のCu濃化相が含まれていてもよい。Cu濃化相
の析出を利用してMs点の低下を防止する手法に従って
製造した鋼材には、通常焼入れ後にある程度のCu濃化
相が存在している。しかし後述するように、このCu濃
化相の存在有無は抗菌性を得るうえで問題にする必要は
ない。
製造法は、焼入れ処理に際し、その加熱時にMs点の低
下をもたらす固溶Cuを低い濃度に維持しておき、その
状態から焼入れ(急冷)する点に特徴がある。これによ
り通常の高炭素鋼と同様に顕著な焼入れ硬化が実現でき
る。固溶Cuを低い濃度にする手法として、本発明では
ε−Cu等のCu濃化相を析出させる手法を採る。調査
の結果、焼入れ処理の加熱温度でCu濃化相が消失せず
に0.2体積%以上存在している状態にし、この状態から
油や水中に急冷すれば焼入れ性は十分確保できることが
わかった。
せずに存在している状態が維持できるようにするには、
ε−Cu等のCu濃化相をできるだけ多量に析出させ
た状態で焼入れ処理に供すること、および焼入れ処理
の加熱温度・保持時間を適正化することが重要である。
550℃〜Ac1点の温度範囲で10分以上保持する熱処理を
施すことが望ましい。550℃未満ではFe中のCuの拡
散が遅くなって事実上析出が起こらない。Ac1点を超え
るとオーステナイトが生成するが、Cuはオーステナイ
トへの溶解度が大きいこともありCu濃化相は逆に減少
する。保持時間が10分未満ではCu濃化相の析出量が不
十分となりやすい。なお、この熱処理は必ずしも焼鈍と
いう工程をとる必要はない。焼入れ処理の前に最後に施
された熱サイクルで十分多量のCu濃化相が生成されれ
ばよい。したがって、鋳造や熱間加工に伴う熱サイクル
を利用することができる。例えば、パーライト変態過程
においてもε−Cu等のCu濃化相が析出するため、熱
間加工後の冷却過程で上記温度・時間を確保しながらパ
ーライト組織となった鋼は、あらためてCu濃化相の析
出処理を行うことなく焼入れ処理に供してよい。
0〜950℃で1〜60分保持する条件とすることが望まし
い。750℃未満では十分にオーステナイトが生成されな
いため、焼入れ後のマルテンサイト量が少なくなって高
い硬度が得られない。950℃を超えるとCu濃化相のオ
ーステナイトへの溶解が速くなるため固溶Cuが増加し
てMs点が低下し、焼入れ性が悪くなる。保持時間が1
分未満では炭化物の溶解とオーステナイトの形成が不十
分なため、焼入れ硬さが低下する。60分を超えて長時間
保持するとCu濃化相の溶解が進行することにより焼入
れ性が劣化する恐れがある。
マルテンサイト系抗菌ステンレス鋼では不動体皮膜がC
u溶出の障害となることから、ε−Cu等のCu濃化相
を不動体皮膜の外に多数露出させることが抗菌性を付与
するうえで必要とされた(特開平9−195016号公報)。
しかし不動体皮膜を形成しない炭素鋼の場合は、2.0質
量%以上のCuを含有させることにより、Cuの存在形
態(例えばCu濃化相を形成しているか鋼中に固溶して
いるか)に関わらず高い抗菌性を示すことが発明者らに
よって確認されている。つまり、抗菌性に関する限り、
本発明の鋼材ではε−Cu等のCu濃化相の存在を問う
必要はない。この意味で、本発明においてCu濃化相を
析出させる目的は、マルテンサイト系抗菌ステンレス鋼
の場合と明らかに相違する。
た状態で焼入れ処理に供することができる限り、焼入れ
処理の前に任意の形状に加工・成形してもよい。例え
ば、550℃〜Ac1点の温度範囲で10分以上保持する熱処
理によりCu濃化相を十分析出させた鋼に対して、冷間
加工を施して所望の刃物形状に成形し、その後750〜950
℃で1〜60分保持して焼き入れする、という工程を採用
することができる。
そのまま使用してもよいが、さらに焼戻し処理を施して
もよい。その場合、いわゆる低温焼戻しとすることが望
ましく、具体的には100〜350℃で10〜120分保持する条
件が好ましい。100℃未満では靱性向上の効果が希薄で
ある。350℃を超えると硬さが低下する。保持時間が10
分未満では靱性向上の効果が得られない。120分を超え
ても更なる特性の向上は期待できない。なお、焼戻し後
においても抗菌性は十分発揮される。
kg真空溶解炉で溶製し、鍛造→熱延→冷延の工程で冷
延鋼板を得た。熱延は、1050℃に30分加熱した後、板厚
20mmから4mmまで圧延し、空冷する方法で実施し
た。冷延材は板厚2mmとした。この供試材に対し、表
2に示す条件の組合せでε−Cu析出処理,焼入れ処
理,および一部のものについて焼戻し処理を順次施し
た。焼入れ後の試料、または焼戻し処理を施したものに
ついては焼戻し後の試料について、硬さ測定と、抗菌試
験を行った。
ウ球菌(Staphylococcus aureus IFO 12732)、およ
び、大腸菌(Escherichia coli IFO 3972)を普通ブイ
ヨン培地で35℃,16〜24時間振盪培養し、培養液を用意
した。培養液を滅菌リン酸緩衝液で20000倍に希釈し、
菌液を調整した。50×25mmの試験片を#400研磨した
表面に菌液1mlを滴下し、25℃で24時間保存した。保
存後、試験片をSCDLP培地(日本製薬株式会社製)9ml
で洗い流し、得られた液について標準寒天培地を用いた
混釈平板培養法(35℃,2日間培養)で生菌数をカウン
トした。また、対照として、シャーレに菌液を直接滴下
したものについて、同様の方法で生菌数をカウントし
た。
700以上の硬さが得られたものを○,Hv700未満であった
ものを×とした。抗菌の評価は、生菌性の指標は、対照
の生菌数と比較した死滅率を用いた。評価基準は、死滅
率80%未満のものを×,80%以上95%未満のものを△,
95%以上99%未満のものを○,99%以上のものを◎とし
た。また、総合評価は、硬さ,黄色ブドウ球菌に対する
抗菌性,および大腸菌に対する抗菌性の全てが○以上の
評価であったものを○とした。
より低いため抗菌性に劣る。試験記号cはC含有量が0.
6質量%より少ないため硬さか低い。試験記号d〜fは
いずれも化学組成は本発明規定範囲にあるものの、dは
ε−Cu析出処理温度が低すぎ、eはε−Cu析出処理
温度が高すぎ、fは焼入れ温度が高すぎたことにより、
それぞれ硬さが低い。これに対し、化学組成,ε−Cu
析出処理条件,焼入れ処理条件,(さらに焼戻し処理条
件)が全て本発明規定範囲にある試料記号g〜rの場合
は、いずれも硬さおよび抗菌性とも優れた結果が得られ
ている。
性を維持しながら抗菌性を付与することが可能になっ
た。本発明によって提供される鋼材は、硬さの面で従来
のマルテンサイト系抗菌ステンレス鋼をはるかに上回る
ものであり、プロ用刃物をはじめステンレス鋼が適用で
きなかった高硬度鋼材の分野において抗菌材料の普及を
もたらすものである。
Claims (11)
- 【請求項1】 質量%で、Cu:2.0〜5.0%,C:0.6
〜1.5%以下,Si:3.0%以下,Mn:3.0%以下,C
r:5.0%以下を含み、マルテンサイト組織を主体とし
た金属組織を呈してHv700以上の硬さを有する高硬度抗
菌性鋼材。 - 【請求項2】 質量%で、Cu:2.0〜5.0%,C:0.6
〜1.5%以下,Si:3.0%以下,Mn:3.0%以下,C
r:5.0%以下,Ni:0〜2.0%(無添加を含む),M
o:0〜1.0%(無添加を含む),W:0〜2.0%(無添加
を含む),V:0〜1.0%(無添加を含む),Ti:0〜
0.2%(無添加を含む),Nb:0〜0.2%(無添加を含
む),Co:0〜3.0%(無添加を含む),B:0〜0.005
%(無添加を含む)を含み、残部がFeおよび不可避的
不純物からなり、マルテンサイト組織を主体とした金属
組織を呈してHv700以上の硬さを有する高硬度抗菌性鋼
材。 - 【請求項3】 質量%で、Cu:2.0〜5.0%,C:0.6
〜1.5%以下,Si:3.0%以下,Mn:3.0%以下,C
r:5.0%以下を含み、さらにNi:0.5〜2.0%,M
o:0.1〜1.0%,W:0.5〜2.0%,V:0.1〜1.0%,T
i:0.05〜0.2%,Nb:0.05〜0.2%,Co:0.5〜3.0
%,B:0.001〜0.005%のうち1種以上を含み、残部が
Feおよび不可避的不純物からなり、マルテンサイト組
織を主体とした金属組織を呈してHv700以上の硬さを有
する高硬度抗菌性鋼材。 - 【請求項4】 金属組織がマルテンサイト組織を主体と
し残留オーステナイト相とCu濃化相を有するものであ
る請求項1〜3に記載の高硬度抗菌性鋼材。 - 【請求項5】 マルテンサイト組織が焼戻しマルテンサ
イト組織である請求項1〜4に記載の高硬度抗菌性鋼
材。 - 【請求項6】 鋼材が刃物用である請求項1〜5に記載
の高硬度抗菌性鋼材。 - 【請求項7】 焼入れ処理の加熱温度でCu濃化相が0.
2体積%以上存在している状態の鋼を焼入れする、請求
項1〜6に記載の高硬度抗菌性鋼材の製造法。 - 【請求項8】 550℃〜Ac1点の温度範囲で10分以上保
持する熱処理によりCu濃化相を析出させた鋼を、750
〜950℃で1〜60分加熱保持して焼入れする、請求項1〜
6に記載の高硬度抗菌性鋼材の製造法。 - 【請求項9】 550℃〜Ac1点の温度範囲で10分以上保
持する熱処理によりCu濃化相を析出させた鋼を、冷間
加工した後、750〜950℃で1〜60分加熱保持して焼入れ
する、請求項1〜6に記載の高硬度抗菌性鋼材の製造
法。 - 【請求項10】 550℃〜Ac1点の温度範囲で10分以上
保持する熱処理が熱間加工後の冷却過程で行われる請求
項8または9に記載の製造法。 - 【請求項11】 焼入れ後、100〜350℃で10〜120分焼
戻しする、請求項6〜10に記載の製造法。
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JP33237098A JP4026962B2 (ja) | 1998-11-24 | 1998-11-24 | 高硬度抗菌性鋼材およびその製造法 |
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