JP2000303152A - 抗菌性に優れ、2次加工での穴拡げ加工性に優れたオーステナイト系ステンレス鋼およびその製造方法 - Google Patents

抗菌性に優れ、2次加工での穴拡げ加工性に優れたオーステナイト系ステンレス鋼およびその製造方法

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JP2000303152A
JP2000303152A JP11189399A JP11189399A JP2000303152A JP 2000303152 A JP2000303152 A JP 2000303152A JP 11189399 A JP11189399 A JP 11189399A JP 11189399 A JP11189399 A JP 11189399A JP 2000303152 A JP2000303152 A JP 2000303152A
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勝己 石井
Satoshi Suzuki
聡 鈴木
Naoto Hiramatsu
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Abstract

(57)【要約】 【目的】優れた抗菌性を長期にわたって持続し、かつ2
次加工での穴拡げ加工性に優れたオーステナイト系抗菌
ステンレス鋼を提供する。 【構成】このステンレス鋼は、C:0.1重量%以下、
Si:2重量%以下、Mn:5重量%以下、Cr:10
〜30重量%、Ni:5〜15重量%、Cu:3.0〜
4.5重量%含む組成を持ち、Cuを主体とする第2相
がマトリックス中に0.2体積%以上の割合で分散して
いること、ならびに、ΔD=76−90(C+N)−7Ni−0.2Cr
−Si−2Mnで表わされるΔDが0以上、25以下である
ことを満足するよう合金成分を設定する。

Description

【発明の詳細な説明】
【0001】
【発明の属する技術分野】本発明は、厨房機器などの食
品を扱う環境において抗菌性が必要とされる用途で、特
に優れた1次加工性だけでなく2次加工での穴拡げ性を
必要とする流し台のシンクボール部材に適したオーステ
ナイト系ステンレス鋼及びその製造方法に関する。
【0002】
【従来の技術】厨房機器に代表されるような食品を扱う
環境下では、細菌類の繁殖による食中毒の恐れがあるた
め定期的な消毒・殺菌作業が必要となる。流し台に代表
される器物は通常プレスなどの加工によって様々なデザ
インが施されている。このように従来の器物に加工性を
付与しかつ、抗菌性能を付与した素材の開発が望まれて
いた。
【0003】さらに黄色ブドウ球菌等による院内感染が
問題となってきている昨今、バス、電車等の不特定多数
の人間が利用する環境においても衛生面の向上が求めら
れている。これに伴って、各種機械、機具に使用される
材料としても、一般構造材としての特性に止まらず、定
期的な消毒等の感染防止を図る必要がない抗菌性等の機
能を付与したメンテナンスフリーの材料が望まれてい
る。抗菌性を付与した材料としては、特開平5−228
20号公報、特開平6−10191号公報等で開示され
ているように、有機皮膜やめっきによる抗菌コートが一
般的であった。
【0004】しかし、抗菌コートは、皮膜の消失に応じ
て抗菌性が低下する欠点がある。また、皮膜の溶解、摩
耗、欠損等に起因して外観が低下するとともに、抗菌作
用が低下する場合もある。ところで、一般にAg、Cu
等の金属元素は抗菌作用を発揮することが知られてい
る。しかし、Agは貴金属元素で非常に高価であり、工
業的に生産する場合の添加元素として不適と考えた。他
方、CuはAgに比較して安価な元素であること、最近
問題となっているトランプエレメントとしての屑鉄中の
残存Cuにも対応でき、原料として屑鉄のリサイクルが
比較的に容易にできることから、ステンレス鋼等の材料
に添加して抗菌性を付与することが検討されてきた。
【0005】特開平8−53738号、特開平8−22
5895号では、Cu添加による抗菌性の改善を種々検
討し、ステンレス鋼表面のCu濃度を高めることによっ
て抗菌性が改善する技術が開示されている。また、特開
平9−176800号ではCuの作用をさらに高めるた
抗菌性を有するオーステナイト系ステンレス鋼を開示し
ている。
【0006】
【発明が解決しようとする課題】これらのCu添加によ
るオーステナイト系ステンレス鋼では、抗菌性を発現す
るために第2相としてCuリッチ相を析出させるため、
Cu無添加のオーステナイト系ステンレス鋼に比べて、
第2相として析出したCuリッチ相が加工性とくに張出
成形、絞り加工性を低下させるという問題点があった。
【0007】さらに、2次加工での張り出し、絞り、お
よび穴拡げ加工を実施する場合,1次加工により加工硬
化したオーステナイト相と加工誘起マルテンサイト相の
存在が弊害をもたらすことが懸念された。
【0008】本発明は優れた抗菌性能を具備し、加えて
優れた加工性、特に2次加工での穴拡げ性をオーステナ
イト系ステンレス鋼に付与することを目的とする。
【0009】
【課題を解決するための手段】本発明のオーステナイト
系ステンレス鋼は、その目的を達成するため、C:0.
1重量%以下、Si:2重量%以下、Mn:5重量%以
下、Cr:10〜30重量%、Ni:5〜15重量%、
Cu:3.0〜4.5重量%含む組成を持ち、Cuを主
体とする第2相がマトリックス中に0.2体積%以上の
割合で分散していること、ならびに、ΔD=76−90(C+
N)−7Ni−0.2Cr−Si−2Mnで表わされるΔDが8以上、
15以下であること、さらに2C+Nが0.15重量%以
下を満足するよう合金成分を設定することを特徴とす
る。
【0010】このオーステナイト系ステンレス鋼は、さ
らにNb:0.01〜0.50重量%、Ti:0.02
〜1重量%、Mo:2.5重量%以下、Al:1重量%
以下、Zr:1重量%以下、V:1重量%以下、B:
0.05重量%以下および希土類元素(REM):0.
05重量%以下の1種または2種類以上を含むことがで
きる。その場合、ΔD=76−90(C+N)−7Ni−0.2Cr−Si
−2Mn−30Nb−0.8Moで表わされるΔDが8以上、15以
下であること,さらに2C+N+0.1Nbが0.15重
量%以下を満足するよう合金成分を設定する。Cuを主
成分とする第2相は、所定組成を持つオーステナイト系
ステンレス鋼を熱間圧延後から最終製品となるまでの間
に500〜900℃の温度範囲で熱処理を1回以上施す
ことにより、マトリックス中に分散析出する。
【0011】
【作用】ステンレス鋼は、不動態皮膜と称されるCrを
主とする水酸化物で表面が覆われていることから、優れ
た耐食性を呈する。本発明者らは、有効な抗菌性を発現
するCuをオーステナイト系ステンレス鋼に添加し、不
動態皮膜中に含まれるCu量を測定するとともに、黄色
ブドウ球菌を含む液の滴下による抗菌性を調査した。そ
の結果、ある程度以上のCuを含有させたステンレス鋼
は、抗菌性を備えていることが判った。しかし、鋼中に
数%以下のCuを単に固溶させただけでは、抗菌性およ
びその持続性が必ずしも十分ではない場合がある。そこ
で、さらに検討を重ねた結果、同一のCuリッチ相とし
て微細にかつ均一に析出していると、使用環境において
Cuの溶出が容易になり、抗菌性が改善されるとの知見
を得た。また、加工または使用中に表面が損耗を受けた
としても、内部のCuリッチ相が新規表面に現れるた
め、抗菌持続性にも優れている。
【0012】Cuリッチ相を析出させる手段としては、
Cuリッチ相が析出しやすい温度領域で時効等の等温加
熱を施すこと、徐冷により析出温度域の通過時間をでき
るだけ長くすること等が考えられ、種々の条件について
検討した結果、最終焼鈍後に500〜900℃の範囲で
時効処理すると析出が促進され、Cu添加量が低い場合
でも良好な抗菌性が得られることを見い出した。また、
Ti、Nb、Mo等の炭窒化物や析出物を形成し易い元
素を添加すると、これら析出物等の析出サイトとしてC
uリッチ相がマトリックスに均一分散し易く、抗菌性お
よび製造性が改善される。また、Cuの一部がCuリッ
チ相として析出していると、表面のCu濃度が上昇する
とともに、抗菌性も改善されることがわかった。
【0013】しかしながら、上述の知見によって得られ
た素材では、抗菌性に優れた素材を提供することはでき
たが、Cuをマトリックス中に分散析出させるため、通
常のオーステナイト系ステンレス鋼に比較した場合、そ
の加工性とくに張出成形、絞り加工性を低下させるとい
うことがわかった。この原因として、析出したCu原子
は加工によって生じた転位の移動、伝搬時に、転位をト
ラップするのでなく、緩やかに引きずるためと考えられ
ている。そこで、オーステナイト系ステンレス鋼におい
て加工性を改善するために種々の検討を行った。
【0014】一般に、オーステナイト系ステンレス鋼に
おいて加工性を改善する方策として、準安定オーステナ
イト相領域に成分設計を行い、加工によって生じる加工
誘起マルテサイト相を生成することでオーステナイト相
の転位が分散され加工性が向上するいわゆるTRIP
効果がある。この作用は鋼のオーステナイト安定度によ
って効果が左右されるが、本発明者らがこのオーステナ
イト安定度に関して調査したところ、Cuが1重量%を
超えて添加された場合、Cu添加による加工性を阻害す
る効果が顕著に認められず、Cu以外の添加元素を規制
することで従来のオーステナイト系ステンレス鋼よりも
2次加工性、この場合穴拡げ加工性が向上されることを
見い出した。
【0015】すなわち、上述のオーステナイト安定度の
指標として野原らの式より算出したMd30(鉄と鋼,6
3,1977,772.)に代わるものとして、ΔD=7
6−90(C+N)−7Ni−0.2Cr−Si−2Mn−30Nb−0.8Moで表わ
されるΔDが8以上、15以下であること,さらに2C
+N+0.1Nbが0.15重量%以下を満足する合金
成分を設定することで良好な2次加工での穴拡げ加工性
が得られることを知見した。ΔDおよびC,N,Nb量
を規制した式中のNbおよびMoは任意の添加元素であ
り、なくても良い。
【0016】ΔDが15を超えると、鋼のオーステナイ
ト相が過度に準安定になり、穴拡げを行う穴の1次加
工、すなわち打ち抜き加工により、穴端に多量の加工誘
起マルテンサイトが相が生成し、引き続き実施される2
次加工、すなわち穴拡げ加工における、TRIPによる
穴端面の延性の向上に寄与可能なオーステナイト相が減
少するため、穴拡げ率が低下する。一方、ΔDが8未満
の場合、鋼のオーステナイト相が過度に安定になり、打
ち抜き穴形成時の穴端の加工誘起マルテンサイト相生成
量は抑制されるが、過度に安定なオーステナイト相で構
成されているため、引き続く穴拡げ加工において、TR
IPによる延性の向上効果が発現せず、穴拡げ率が低下
する。
【0017】また、C,N,Nbを別式で制限した理由
として、一般にC、Nは加工誘起マルテンサイト相を強化する
元素となるが、過剰に添加することで1次加工で生成さ
れた加工誘起マルテンサイト相が2次加工での穴拡げ性を阻害
するということ、またNbは炭化物を生成することで加
工性を阻害する元素であるためである。これは、一般に
加工誘起マルテンサイト相の生成にはオーステナイト相
およびフェライト相の生成元素のバランスが関与してい
るが、Cuが添加されることで上述のような導出式で制
御できるとの知見を得た。
【0018】
【発明の実施の形態】以下、本発明オーステナイト系ス
テンレス鋼に含まれる合金元素およびその含有量等につ
いて説明する。 C:0.1重量%以下 Cuリッチ相の析出サイトとして有効なCr炭化物を生
成し、微細なCuリッチ相を均一分散させるために有効
な合金元素である。しかし、過剰に添加すると製造性や
耐食性を劣化させることから、C含有量の上限を0.1
重量%に規制した。 Si:2重量%以下 耐食性を改善するために有効な合金元素であり、抗菌性
を向上する作用も呈する。しかし、2重量%を超える過
剰なSi添加は製造性を劣化させる。
【0019】Mn:5重量%以下 製造性を改善するとともに、鋼中の有害なSをMnSと
して固定する作用を呈する。しかし、5重量%を超える
多量のMn含有は、耐食性ならびに冷間加工性を劣化さ
せる。 Cr:10〜30重量% オーステナイト系ステンレス鋼の耐食性を維持するため
に必要な合金元素であり、必要な耐食性を確保する上か
ら10重量%以上のCrが要求される。しかし、30重
量%を超える多量のCrが含まれると、製造性、加工性
が劣化する。
【0020】Ni:5〜15重量% オーステナイト相の安定化に重要な合金元素である。し
かし、多量添加は、高価なNiを消費し鋼材コストを上
昇させることから、Ni含有量の上限を15重量%に規
制した。 Cu:3.0〜4.5重量% および Cuリッチ相:
0.2体積%以上 本発明のステンレス鋼においても最も重要な合金元素で
あり、良好な抗菌性を維持するためには0.2体積%以
上のCuリッチ相が析出していることが必要であり、本
系のオーステナイト系ステンレス鋼で安定した0.2体
積%以上のCuリッチ相を析出させるためにCu含有量
3.0重量%以上が要求される。しかし、5.0重量%
を超える過剰のCuを含有させると、製造性、加工性、
耐食性が劣化する。Cuリッチ相は、析出物の大きさが
特に限定されるものでものでないが、製品表面全体にお
いて均等に抗菌性を発揮させるため、また研磨等が施さ
れた場合にも良好な抗菌性を維持するためには、析出相
が表面および内部においても適宜に分散して分布してい
ることが好ましい。
【0021】以下に選択元素について明記する。 Nb:0.01〜0.5重量% 必要に応じて添加する元素である。Cuリッチ相は、N
bの析出物の周囲に析出傾向を示す。そのため、Cuリ
ッチ相を均一に析出させるためには炭化物、窒化物、炭
窒化物を微細に析出させた組織が好ましい。しかし、過
剰にNbを添加すると、製造性、加工性が劣化する。こ
のようなことから、Nbを添加する場合、0.01〜
0.5重量%の範囲に含有量を調整することが好まし
い。 Ti:0.02〜1重量% 必要に応じて添加される元素であり、Nbと同様に炭窒
化物を形成し、その周囲にCuリッチ相を均一析出させ
る作用を呈する。しかし、Tiの過剰添加は、製造性や
加工性を劣化させ、製品表面に疵が発生しやすくなる。
そのため、Tiを添加する場合、その含有量を0.02
〜1重量%の範囲に設定することが好ましい。
【0022】Mo:3重量%以下 必要に応じて添加される合金元素であり、耐食性を向上
させる作用を呈するとともに、Fe2Mo等の金属間化
合物として析出し、微細なCuリッチ相の核サイトとな
り析出を容易にする。また、MoおよびMoを含む化合
物は、それ自体でも抗菌性を向上させる作用を呈する。
しかし、3重量%を超える過剰のMo添加は、製造性お
よび加工性を劣化させる。 Al:1重量%以下 必要に応じて添加される合金元素であり、Moと同様に
耐食性を改善するとともに析出物を形成し、微細なCu
リッチ相の析出に有効な合金元素である。しかし、Al
の過剰添加により製造性および加工性が劣化するので、
Alを添加する場合その上限を1重量%に規制する。 Zr:1重量%以下 必要に応じて添加される合金成分であり、炭窒化物を形
成し、微細なCuリッチ相の析出を容易にする。しか
し、過剰に添加すると、製造性、加工性が劣化する。そ
のため、Zrを添加する場合、その上限を1重量%に規
制する。
【0023】V:1重量%以下 必要に応じて添加される合金元素であり、Zrと同様に
炭窒化物を形成し、微細なCuリッチ相の析出を容易に
する。しかし、過剰に添加すると、製造性、加工性が劣
化する。そのため、Vを添加する場合、その上限を1重
量%に規制する。 B:0.05重量%以下 必要に応じて添加される合金成分であり、熱間加工性を
改善するとともに、析出物となって母相に分散する。し
かし、過剰に添加すると熱間加工性が劣化するので、B
を添加する場合その上限を0.05重量%に規制する。
希土類元素(REM):0.05重量%以下必要に応じ
て添加される合金成分であり、適量の添加でBと同様に
熱間加工性が改善される。また、Cuリッチ相の析出に
有効な析出物となって母相に分散する。しかし、過剰に
添加すると熱間加工性が劣化するので、REMを添加す
る場合その上限を0.05重量%に規制する。
【0024】熱処理温度:500〜900℃ Cuリッチ相を析出させるためには、500〜900℃
の時効処理が有効である。時効処理温度が低くなるほ
ど、母相中の固溶Cu量が少なくなり、Cuリッチ相の
析出量が多くなる。しかし、低すぎる時効処理温度で
は、拡散速度が遅くなり、析出量が逆に減少する。温度
条件を変えて種々の時効処理を施すことが工業的に有効
な温度範囲であることが判った。この時効処理は、熱延
後から最終製品となるまでの何れの段階で施しても有効
である。
【0025】
【実施例】表1に示した組成を持つオーステナイト系ス
テンレス鋼を30kg真空溶解炉で溶製し、鍛造および
熱延後に焼鈍および時効処理を施し、熱延焼鈍板を得
た。そして、冷延および焼鈍を繰り返し施し、最終的に
板厚0.7mmの冷延焼鈍板を得た。時効処理条件は85
0℃で、100時間に設定した。得られた供試材を透過
型電子顕微鏡で観察し、Cuリッチ相の析出量を定量し
た。また、各試験片を次の抗菌性試験に供した。Sta
phylococusaureusIFO12732
(黄色ブドウ球菌)を普通ブイヨン培地で35℃、16
〜24時間振盪培養し、培養液を用意した。培養液を減
菌リン酸緩衝液で20,000倍に希釈し、きん液を調
整した。5cm×5cmの試験片を#400研磨した表
面に菌液を1mlを滴下し、24時間保存した。保存
後、試験片をSCDLP培地(日本製薬株式会社製)9
mlで洗い流し、得られた液について標準寒天培地を用
いた混釈平板培養法(35℃、2日間培養)で生菌数を
カウントした。また、参照としてシャーレに菌液を直接
滴下し、同様に生菌数をカウントした。
【0026】参照の生菌数と比較して99%以上が死滅
したものを○とし、それ以下のものを×として評価し
た。また、2次加工性評価用のサンプルは、直径200
mmのポンチにてポンチ底の板厚減少率が15%になる
深さまで成形を行い、ポンチ底の部分から採取した。穴
拡げ加工性の評価としては、直径90mmの円板サンプ
ルの中心部に直径20mmの穴を打ち抜き、その後、直
径50mmの平底円筒ポンチにて打ち抜き穴周囲部に割
れが生ずるまで張り出し加工を行う。元の打ち抜き穴の
直径に対する割れが生じた時点での打ち抜き穴の直径の
変化率を穴拡げ率として100分率で表わす。
【0027】この穴拡げ率が従来のSUS304鋼のも
のに対して、同等以下、もしくはそれ以下のものを×、
50%以上工場したものを○として評価した。これらの
抗菌性の評価結果ならびに2次加工における穴拡げ加工
性の評価結果をΔDと併せて表1に示す。表1に示され
るように、3%以上のCuが添加され、かつ時効処理に
よりCuリッチ相が析出し、なおかつΔDが8〜15の
範囲で,さらに2C+N+0.1Nbが0.15重量%
以下を満足する試験番号1〜8では、いずれも抗菌性は
もちろんのこと2次加工性についても良好な結果が示さ
れている。
【0028】これに対して、Cu量が3.0重量%に満
たない試験番号9,10では、時効処理後の抗菌性は不
安定であり、2次加工性がSUS304と同等かもしく
は若干の向上が認められる程度である。試験番号11で
はΔDが規制範囲内の0〜25にあっても、Cu量が3
重量%に満たず、時効処理を施しても抗菌性が認められ
ない。試験番号12ではΔDが規制範囲内の0〜25に
あリ、Cu量も3.9重量%であるが、時効処理が未実
施であり抗菌性が認められない。試験番号13,14,
15,16ではΔDおよびCu量が規制範囲外であり、
時効処理を実施することで抗菌性は認められるが、2次
加工性はSUS304以下のものである。
【0029】試験番号17,18はNbを0.5重量%
以上添加した場合の効果を示す。時効処理を実施するこ
とで抗菌性は認められるが、2次加工性はSUS304
以下のものである。
【0030】さらに、時効処理をせず、かつΔDが規制
内である試験番号19,20では抗菌性が認められず、
かつ加工性にも劣ることが示されている。以上のことか
ら、本発明鋼である優れた抗菌性を発現しつつ、高加工
性を有するオーステナイト系ステンレス鋼を得るために
は、前述の条件での時効処理はもちろんのこと、ΔDが
8以上、15以下であること,さらに2C+N+0.1N
bが0.15重量%以下を満足するよう合金成分を設定
が有効であることが判る。
【0031】
【表1】
【0032】
【発明の効果】以上に説明したように、本発明のオース
テナイト系ステンレス鋼はCu含有量が3.0重量%以
上かつ時効処理を施すことで、無垢材でも優れた抗菌性
を発揮する。この抗菌性は、材質に由来するので長期間
にわたって持続する。また、合金成分をΔD=76−90(C
+N)−7Ni−0.2Cr−Si−2Mn−30Nb−0.8Moで示されるΔ
Dが8以上、15以下であること,さらに2C+N+0.
1Nbが0.15重量%以下である場合(NbおよびM
oは任意の添加元素の寄与項)、2次加工での穴拡げ加
工性がSUS304以上のものを得ることができる。こ
の場合、穴拡げ性の指標として穴拡げ率を用い、この値
がSUS304のものの1.1倍以上を示すことを特徴とす
る。これにより、本発明のステンレス鋼は厨房機器、病
院等で使用される各種器材および電車やバス等の輸送機
関において人体ならびに食品等が接触する機器等の中で
基本的に抗菌性を持つことが望ましい部材に適用され
る。また、その使用される部材は、高加工が要求され、
かつ2次加工性、特に穴拡げ加工特性が必要とされる分
野において使用されることで生活環境の更なる改善が図
られる。

Claims (3)

    【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】C:0.1重量%以下、Si:2重量%以
    下、Mn:5重量%以下、Cr:10〜25重量%、N
    i:5〜10重量%、Cu:3.0〜4.5重量%含む
    組成を持ち、時効析出処理によりCuを主体とする第2
    相がマトリックス中に0.2体積%以上の割合で分散し
    ており、かつΔD=76−90(C+N)−7Ni−0.2Cr−Si−2Mn
    で表わされるΔD:8〜15であること,さらに2C+N
    が0.15重量%以下を満足するよう合金成分を設定し
    た抗菌性に優れ、かつ2次加工での穴拡げ性に優れるオ
    ーステナイト系ステンレス鋼。
  2. 【請求項2】 更に、Nb:0.01〜0.50重量
    %、Ti:0.02〜1重量%、Mo:2.5重量%以
    下、Al:1重量%以下、Zr:1重量%以下、V:1
    重量%以下、B:0.05重量%以下および希土類元素
    (REM):0.05重量%以下の1種または2種類以
    上をさらに含み、その場合、ΔD=76−90(C+N)−7Ni−
    0.2Cr−Si−2Mn−30Nb−0.8Moで表わされるΔD:8〜
    15であること,さらに2C+N+0.1Nbが0.1
    5重量%以下を満足する請求項1記載の抗菌性に優れ、
    かつ2次加工での穴拡げ性に優れるオーステナイト系ス
    テンレス鋼。
  3. 【請求項3】 請求項1または2記載の組成をもつオー
    ステナイト系ステンレス鋼を熱間圧延後から最終製品と
    なるまでの間に500〜900℃の温度範囲で熱処理を
    1回以上施し、Cuを主体とする第2相の析出を促進さ
    せることを特徴とする抗菌性に優れ、かつ2次加工での
    穴拡げ性に優れるオーステナイト系ステンレス鋼。
JP11189399A 1999-04-20 1999-04-20 抗菌性に優れ、2次加工での穴拡げ加工性に優れたオーステナイト系ステンレス鋼およびその製造方法 Withdrawn JP2000303152A (ja)

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