JP2001254151A - 抗菌性に優れたAg含有マルテンサイト系ステンレス鋼及びその製造方法 - Google Patents

抗菌性に優れたAg含有マルテンサイト系ステンレス鋼及びその製造方法

Info

Publication number
JP2001254151A
JP2001254151A JP2000065906A JP2000065906A JP2001254151A JP 2001254151 A JP2001254151 A JP 2001254151A JP 2000065906 A JP2000065906 A JP 2000065906A JP 2000065906 A JP2000065906 A JP 2000065906A JP 2001254151 A JP2001254151 A JP 2001254151A
Authority
JP
Japan
Prior art keywords
mass
phase
stainless steel
antibacterial
less
Prior art date
Legal status (The legal status is an assumption and is not a legal conclusion. Google has not performed a legal analysis and makes no representation as to the accuracy of the status listed.)
Withdrawn
Application number
JP2000065906A
Other languages
English (en)
Inventor
Takashi Kawagoe
崇史 川越
Takashi Yamauchi
隆 山内
Nobuhisa Hiruhama
修久 蛭浜
Current Assignee (The listed assignees may be inaccurate. Google has not performed a legal analysis and makes no representation or warranty as to the accuracy of the list.)
Nippon Steel Nisshin Co Ltd
Original Assignee
Nisshin Steel Co Ltd
Priority date (The priority date is an assumption and is not a legal conclusion. Google has not performed a legal analysis and makes no representation as to the accuracy of the date listed.)
Filing date
Publication date
Application filed by Nisshin Steel Co Ltd filed Critical Nisshin Steel Co Ltd
Priority to JP2000065906A priority Critical patent/JP2001254151A/ja
Publication of JP2001254151A publication Critical patent/JP2001254151A/ja
Withdrawn legal-status Critical Current

Links

Landscapes

  • Heat Treatment Of Sheet Steel (AREA)

Abstract

(57)【要約】 【目的】 球状のAg相をマトリックスに分散析出させ
ることにより抗菌性を付与し、HV500以上の硬さを
もつマルテンサイト系ステンレス鋼を提供する。 【構成】 C:1.2%以下,Si:3%以下,Mn:
2%以下,Cr:10〜20%,V:0.01〜1.0
%,Ag:0.01〜1%を含み、必要に応じて更にT
i:1%以下,Nb:1%以下,Zr:1%以下,M
o:4%以下,Al:0.2%,B:0.05%,Y:
0.2%以下,希土類元素(REM):0.2%以下の
1種又は2種以上を含み、球状のAg相がマトリックス
に分散析出している。鋼帯を900〜1300℃の温度
域に保持するとき、Ag相が球状化する。Ag相は、圧
延後に900〜1300℃で熱処理することにより球状
化される。

Description

【発明の詳細な説明】
【0001】
【産業上の利用分野】本発明は、調理用器具,医療用器
具等の抗菌性が要求される用途に適し、硬さ及び抗菌性
に優れたマルテンサイト系ステンレス鋼に関する。
【0002】
【従来の技術】包丁,ハサミ,メス等の刃物や医療器
具,歯科用器具等の用途では、優れた強度及び耐食性が
要求されることからSUS402J2,SUS440等
のマルテンサイト系ステンレス鋼が従来から使用されて
いる。しかし、黄色ブドウ球菌等による院内感染や0−
157による食品汚染が問題になっている昨今では、強
度,耐食性等の一般特性に加えて抗菌性という機能面も
要求されるようになってきており,食品を扱う刃物,医
療用の器具等ではその傾向が一層強くなってきている。
抗菌性を付与した材料としては、抗菌剤を配合した塗
料,樹脂等を塗布積層したステンレス鋼板,マトリック
ス中に抗菌成分を含むめっきを施したステンレス鋼板,
鋼材自体に抗菌性を付与したステンレス鋼板(特開平5
−228202号公報,特開平6−10191号公報,
特開平9−170053号公報)等が知られている。
【0003】
【発明が解決しようとする課題】抗菌剤を配合した塗料
や樹脂をステンレス鋼板の表面に塗布積層すると、ステ
ンレス鋼特有の質感や表面光沢が損われ、商品価値が低
下する。しかも、抗菌性皮膜は、加工時や使用中に割
れ,欠損,摩耗等の損傷を受け易い。損傷個所のある皮
膜が湿潤環境に曝されると抗菌成分の溶出が促進され、
外観や抗菌性を劣化させる原因となる。抗菌成分を混入
した複合めっきでは、めっき層の密着性が十分でなく、
加工性を低下させる欠点がある。また、めっき層の溶
解,摩耗,欠損等に起因して外観が劣化すると共に、抗
菌作用も弱くなる。これに対し、Ag,Cu等の抗菌成
分を添加したステンレス鋼では、材料自体が抗菌性をも
つことから、塗装やめっきに比較して抗菌持続性があ
り、ステンレス鋼本来の金属光沢や加工性が損われな
い。
【0004】Cu添加抗菌ステンレス鋼では、Cuを析
出物として鋼中に分布させると抗菌作用が改善される。
しかし、Cu析出のために熱延後に長時間の時効処理が
必要とされ、生産性の低下や生産コストの上昇の原因に
なる。Cu含有量を高く設定するとき、時効処理時にC
uが析出し易くなり、短時間の時効処理が可能になる。
しかし、高いCu含有量は、ステンレス鋼の熱間加工性
を悪化させ、製造性低下の原因となる。これに対し、A
gは、微量でも大きな殺菌作用を発揮し、Agイオンが
存在することによって周囲の雑菌や細菌を死滅させる作
用も呈する元素である。しかも、比重が大きなAgは、
Fe中にほとんど固溶しない元素であり、ステンレス鋼
に添加された場合、熱間圧延後に長時間の時効処理を必
要とすることなくマトリックスに異相として分散析出す
る。分散析出した異相は、焼入れ時の熱処理でも再固溶
しないため、焼入れ温度を上げても抗菌性が劣化する懸
念がない。本発明者等は、このようなAgの特性に着目
し、Ag相を分散析出させることにより抗菌性を付与し
たステンレス鋼を特開平10−259456号公報で紹
介した。
【0005】
【課題を解決するための手段】本発明は、先に紹介した
Ag含有ステンレス鋼を更に改良したものであり、抗菌
作用を更に高め、長時間の時効処理を必ずしも必要とせ
ず、所定の硬度を得るために熱処理後に焼入れしても抗
菌作用が安定維持されるマルテンサイト系ステンレス鋼
を提供することを目的とする。
【0006】本発明のAg含有マルテンサイト系ステン
レス鋼は、その目的を達成するため、C:1.2質量%
以下,Si:3質量%以下,Mn:2質量%以下,C
r:10〜20質量%,V:0.01〜1.0質量%,
Ag:0.01〜1質量%を含み、残部が実質的にFe
の組成をもち、球状のAg相がマトリックスに分散析出
していることを特徴とする。このマルテンサイト系ステ
ンレス鋼は,必要に応じて更にTi:1質量%以下,N
b:1質量%以下,Zr:1質量%以下,Mo:4質量
%以下,Al:0.2質量%,B:0.05質量%,
Y:0.2質量%以下,希土類元素(REM):0.2
質量%以下の1種又は2種以上を含むことができる。所
定の組成をもつ鋼帯を900〜1300℃の温度域に保
持するとき、Ag相が球状化する。Ag相の球状化処理
は、たとえば冷間圧延後に行うことができる。
【0007】
【作用】ステンレス溶鋼にAgを単に添加しただけで
は、Ag相が不均一に分布し、高濃度のAgを含む相が
マトリックスに均一分散した組織にならず、安定した抗
菌作用を呈する材料が得られ難い。Agを多量に添加し
たステンレス鋼でも、同様に安定した抗菌性が得られな
い。不安定な抗菌性は、鋼中でAgが偏在し、Ag相の
不均一分布が生じる結果と推察される。Ag含有ステン
レス鋼におけるAg相の均一分散を図るため、製造条件
を種々調査検討したところ、ほとんどのAg相は熱延→
冷延と圧延が進行するに従ってA系介在物のように圧延
方向に引き伸ばされた線状の形態で分布するが、一部の
Ag相は微細な球状形態で分散している。抗菌作用とA
g相の分布形態との関係を調査したところ、Ag相の線
状分布は却って抗菌作用を劣化させる傾向を示し、抗菌
作用の安定化には球状化したAg相の均一分散が有効で
あることを知見した。
【0008】Ag相の球状化及び均一分散は、圧延され
たステンレス鋼帯又は鋼板をAg相の融点以上で熱処理
することにより促進される。Ag相の融点以上でステン
レス鋼帯を熱処理(以下、Ag相の球状化処理という)
すると、鋼中のAgが優先的に溶解し、圧延で線状に伸
ばされたAg相が分断されて球状化する。しかも、Ag
がマトリックスに固溶しないため、球状化したAg相
は、微細粒子としてマトリックスに均一分散される。そ
の結果、抗菌力のある球状化Ag相により、抗菌性が飛
躍的に改善され、高位に安定した抗菌作用が発現され
る。Ag相の球状化処理は、圧延によって線状に伸ばさ
れたAg相を細かく分断する処理である。分断されたA
g相はそのまま分断された形態で凝固するため、完全な
球状にならなくても抗菌性に有効な分散したAg相とな
る。
【0009】Ag相の球状化は、Agの融点(961.
9℃)以上の温度でステンレス鋼帯を熱処理することに
より促進される。鋼中に含まれているAgは、C,S,
Si,Mn,O,Mg,Al,Zn等の金属元素との化
合物又は固溶体として存在している場合が多く、これら
のAg相は通常900〜1300℃の加熱保持で溶解
し、球状化する。他方、高硬度が要求されるマルテンサ
イト系ステンレス鋼では、800℃以上の温度で熱処理
した後に焼入れを施し、所定硬度をもつ最終製品として
いる。このとき、AgがFeにほとんど固溶しないた
め、焼き入れ温度を上げてもAg相がマトリックスに再
固溶して抗菌性が劣化する懸念がない。また、900℃
以上の高温で熱処理した後に焼入れすると、Ag相の球
状化が更に促進され一層安定した抗菌作用が発現される
と共に、HV500以上の硬さが得られる。
【0010】以下、本発明のマルテンサイト系ステンレ
ス鋼に含まれる合金成分,含有量等を説明する。C:1.2質量%以下 マルテンサイト系ステンレス鋼の焼き入れ・焼戻し後の
強度を上昇させる上で有効な合金成分である。しかし、
1.2質量%以上のCが含まれると、製造性及び耐食性
が低下する。Si:3質量%以下 製鋼時に脱酸剤として添加される合金成分であり、焼戻
し軟化抵抗を増大させ、抗菌性の向上にも有効に作用す
る。しかし、3質量%を超える過剰量のSiを添加する
と、製造性が低下する。
【0011】Mn:2質量%以下 製造性を改善すると共に、鋼中のSをMnSとして固定
する合金成分である。しかし、2質量%を超える過剰量
のMnが含まれると耐食性が劣化する。Cr:10〜20質量% マルテンサイト系ステンレス鋼の耐食性を維持するため
に重要な合金成分であり、10質量%以上のCrが必要
とされる。しかし、20質量%を超える過剰量のCr含
有は、焼入れ処理後の硬さを低下させ、粗大な共晶炭化
物生成の要因となり、加工性,靭性を劣化させる。
【0012】V:0.01〜1.0質量% 鋼中のC及びNと反応し炭窒化物を生成し、製品の強度
及び耐摩耗性を向上させる合金成分であり、焼戻し軟化
抵抗の改善にも有効である。生成した炭窒化物は、球状
化処理時にAg相の析出サイトとして働き、Ag相の球
状化を促進させる。しかも、硬質のV炭化物は、研磨時
や刃物としての使用中にAg相の磨耗を抑制する上でも
有効である。しかし、1質量%を超える過剰量のV添加
は、製造性や加工性が低下する原因となる。
【0013】Ag:0.01〜1質量% Agの抗菌作用は、Ag含有量0.01質量%以上で発
現し、Ag含有量が高くなるほど強力になるので、抗菌
性の観点からすると高いAg含有量ほど好ましい。しか
し、Ag含有量が高くなると、Ag相の不均一分布が進
行し、抗菌性にバラツキが生じる虞がある。そこで、優
れた抗菌性をもち、且つAg相の不均一分布に起因した
抗菌性のバラツキが生じないようにAg含有量を0.0
1〜1質量%の範囲に定めた。Ti:1質量%以下 必要に応じて添加される合金成分であり、炭窒化物を生
成し、製品の強度及び耐摩耗性の向上に有効に働く。し
かし、1質量%を超える過剰なTi含有量は、製造性や
加工性を低下させる原因となる。
【0014】Nb:1質量%以下 必要に応じて添加される合金成分であり、Tiと同様に
炭窒化物を生成し、製品の強度及び耐摩耗性の向上に有
効に働く。また、焼戻し軟化抵抗の向上にも有効であ
る。しかし、1質量%を超える過剰なNb含有量は、製
造性や加工性を低下させる原因となる。Zr:1質量%以下 必要に応じて添加される合金成分であり、Ti,Nbと
同様に炭窒化物を生成し、製品の強度及び耐摩耗性の向
上に有効に働く。また、焼戻し軟化抵抗の向上にも有効
である。しかし、1質量%を超える過剰なZr含有量
は、製造性や加工性を低下させる原因となる。
【0015】Mo:4質量%以下 必要に応じて添加される合金成分であり,耐食性の改善
に有効であると共に、Mo又はMo化合物として抗菌性
の向上に寄与する。しかし、4質量%を超える過剰なM
o含有量は、製造性や加工性を低下させる原因となる。Al:0.2質量% 製鋼時に脱酸剤として必要に応じて添加される合金成分
であるが、0.2質量%を超える過剰量のAlを添加す
ると表面欠陥等の悪影響が発生しやすくなる。B:0.05質量% 必要に応じて添加される合金成分であり、熱間加工性の
改善に有効である。しかし、0.05質量%を超える過
剰なB含有は、逆に熱間加工性を低下させる原因とな
る。
【0016】Y:0.2質量%以下 必要に応じて添加される合金成分であり、熱間加工性の
改善に有効である。しかし、Y添加による熱間加工性の
改善は、0.2質量%の含有量で飽和する。希土類元素(REM):0.2質量%以下 必要に応じて添加される合金成分であり、Yと同様に熱
間加工性の改善に有効である。しかし、希土類元素(R
EM)添加による熱間加工性の改善は、0.2質量%の
含有量で飽和する。本発明に従ったマルテンサイト系ス
テンレス鋼は、以上に掲げた合金成分の外にNi,C
o,W,Ca,Mg,Pb,Sn等の1種又は2種以上
を含むことができる。これらの成分は、目的に応じて適
宜の範囲に調整される。また、P,S,N,O等の不可
避的不純物は、通常の製鋼条件で混入する限り抗菌性,
耐食性,加工性等に悪影響を及ぼすことはない。
【0017】Ag相の球状化処理条件:900〜130
0℃ Ag相を球状化し、分散形態の改善を促進させるために
Ag相の融点以上の温度で球状化処理を施せばよく、最
低900℃の温度が必要である。Ag相の分散形態は、
球状化処理が高温になるほど改善される。しかし、13
00℃を超える温度で球状化処理しても、Ag相が球状
化して分散する傾向が頭打ちとなり、却ってマトリック
スの酸化による歩留低下が懸念される。保持時間は長時
間ほど好ましいが、線状のAg相が溶解すると比較的短
時間で分断形態に変化するので、球状化が確認できる範
囲で加熱時間を短くすることも可能である。要は、材質
や板厚に応じて球状化できる条件で保持時間が設定され
る。
【0018】なお、本発明で規定している球状化処理と
は、圧延によって線状に伸ばされたAg相をAg相の融
点以上の熱処理でAg相を細かく分断する処理を意味
し、Ag相が線状から分断された形態に変化している限
り、完全に球状の形態にAg相がなっていなくてもよ
い。また、保持時間とは、鋼帯又は鋼板が球状化温度以
上になっている時間を意味し、加熱炉に入れてから出す
までの在炉時間と異なる。Ag相を球状化処理した後で
冷却することにより、HV500以上の硬さが得られ
る。通常、C含有量の高いマルテンサイト系ステンレス
鋼では、900℃以上の温度に加熱した後、空冷以上の
冷却速度で冷却するだけで十分な焼きが入り、必要硬さ
が製品に付与される。この点、Ag相の球状化処理後に
冷却するだけで抗菌性及び必要硬さをもつマルテンサイ
ト系ステンレス鋼が得られることは本発明の利点であ
る。
【0019】冷却方法は、空冷以上の冷却速度が得られ
る限り特に制約を受けるものではなく、成分,製品に要
求される硬さ,寸法精度等に応じて空冷,水冷,油冷
等、通常の焼入れの際に採用されている冷却方法が選択
される。焼入れ後に硬さを更に向上させる場合にはサブ
ゼロ処理を施しても良く、靭性の向上を必要とする場合
には100〜600度の温度範囲で焼戻し処理を施して
もよい。なお、本発明で言う硬さは、JIS Z224
4で規定されるビッカース硬さ試験方法に準じて測定さ
れる硬さを言う。また、球状化処理及び焼入れ処理は、
それぞれ別工程で実施することも可能である。
【0020】Ag相の球状化処理は、圧延工程以降であ
ればどの工程で実施しても良い。ここでいう圧延には、
造塊法で製造された鋼塊を圧延する分塊圧延,連続鋳造
法で製造された鋳片及び分塊圧延で製造された鋼塊を圧
延する熱間圧延,熱間圧延で製造された鋼帯を圧延する
冷間圧延等がある。圧延後に施される球状化処理は1回
の処理でもよいが、Ag相の分散形態の改善をより促進
させるためには複数回の球状化処理を施すことが好まし
い。重要なことは、製品において最も分散された形態で
Ag相を球状化させる。球状化処理の雰囲気としては、
真空,大気,Ar,N2,H2,CO,CO2及びこれら
の混合ガス等、何れの雰囲気でも良い。
【0021】
【実施例】表1に示した組成のマルテンサイト系ステン
レス鋼を30kg真空溶解炉で溶製し,熱間圧延により
熱延板を製造した。熱延板を焼鈍・冷延し、最終的に板
厚2.0mmの冷延板を得た後、所定の条件で球状化処
理し、水冷による焼入れ処理を施した。
【0022】
【0023】各冷延板から試験片を切り出し、板表面を
研磨してAg相の球状化を調査するとともに、抗菌性試
験及び硬さ試験に供した。抗菌性試験では、Staphyloco
ccus aureus IFO12732(黄色ブドウ球菌)を用い、普通
ブイヨン培地で35℃,16〜24時間振盪培養し、培
養液を用意した。培養液を滅菌リン酸緩衝溶液で200
00倍に希釈して菌液を調製した。菌液1mlを試験片
の表面に滴下し、25℃で24時間保存した。保存後、
試験片をSCDLP(Soybean Casein Digest Both wit
h Lecithin and Polysorbate)培地で洗い出し、得られ
た液について標準寒天培地を用いた混釈平板培養法(3
5℃,2日間培養)で生菌数を測定した。この試験方法
によるとき、初期の生菌数に比較して24時間後の生菌
数が減少しているほど、抗菌性の強い材料といえる。抗
菌試験では各鋼種ごとに2枚の試験片を用意し、2回の
試験の平均値で抗菌性を評価した。また、減菌率(%)
を(初期の生菌数−24時間後の生菌数の平均値)/
(初期の生菌数)×100と定義し、減菌率99%以上
を抗菌性有りと判定した。硬さ試験では、JIS Z2
244に規定されているビッカース硬さ試験方法に準じ
て各試験片の硬さを測定した。
【0024】抗菌性試験結果及び硬さを、Ag相の球状
化処理条件及び焼き入れ条件と共に表2に併せ示す。表
2にみられるように、900℃以上の温度でAg相を球
状化処理した後で水冷した試験番号1〜6(本発明例)
では、何れも球状化及び焼入れが確認され、減菌率が9
9%以上で良好な抗菌性を示し、硬さも500HV以上
であった。これに対し、球状化処理を施さなかった試験
番号8,9(比較例)及び球状化処理温度が低い試験番
号7,10〜12(比較例)では、Ag相の球状化が不
充分で、減菌率99%未満と抗菌性が低く、2枚の試験
片の試験後の生菌数にもバラツキが見られ、安定した抗
菌作用が得られなかった。しかも、硬さもHV500に
達していなかった。
【0025】
【0026】
【実施例2】C:0.45質量%,Si:0.55質量
%,Mn:0.43質量%,Ni:0.11質量%,C
r:13.12質量%,N:0.019質量%,Mo:
0.03質量%,Cu:0.02質量%,Ag:0.0
8質量%,V:0.08質量%,Ti:0.003質量
%を含むマルテンサイト系ステンレス鋼(70トン/チ
ャージ)を電気炉,転炉,VOD工程を経て溶製し,ス
ラブに連続鋳造した。スラブを板厚3.6mmに熱延し
た後、780℃×6時間の加熱・炉冷の熱延板焼鈍を施
し、酸洗後に中間焼鈍を施すことなく冷間圧延により板
厚1.8mmの冷延鋼帯を製造した。冷延鋼帯から試験
片を切り出し、表3に示す各条件で球状化処理した後、
水冷による焼入れ処理を施した。
【0027】焼入れ後の試験片について、実施例1と同
じ方法でAg相の球状化を調査すると共に抗菌性及び硬
さを測定した。表3の調査結果にみられるように、90
0℃以上の温度でAg相を球状化処理した試験番号1〜
4(本発明例)では、減菌率99%以上の優れた抗菌性
が安定して発現されており、硬さも500HV以上であ
った。これに対し、球状化処理温度が低い試験番号5〜
7(比較例)及び球状化処理しなかった試験番号8(比
較例)では、減菌率99%未満と抗菌性が低く、2枚の
試験片の試験後の生菌数にもバラツキが見られ、安定し
た抗菌作用が得られなかった。しかも、硬さもHV50
0に達していなかった。
【0028】
【0029】
【発明の効果】以上に説明したように、本発明のマルテ
ンサイト系ステンレス鋼は、抗菌作用の強い球状のAg
相がマトリックスに分散しており、優れた抗菌性が長時
間維持される。ステンレス鋼自体に抗菌性が付与される
ため、無垢材でも優れた抗菌性が発現され、ステンレス
鋼本来の優れた金属光沢も活用できる。しかも、HV5
00以上の硬さに調質できるため、調理用器具,医療用
器具をはじめとして、抗菌性が要求される広範な分野で
使用される。
───────────────────────────────────────────────────── フロントページの続き (72)発明者 蛭浜 修久 山口県新南陽市野村南町4976番地 日新製 鋼株式会社ステンレス事業本部内 Fターム(参考) 4K037 EA01 EA02 EA04 EA05 EA06 EA07 EA08 EA12 EA15 EA17 EA19 EA27 EA28 EA31 EA32 EA35 EA36 FE00 FF00 FG00 FJ06 FJ07 JA00

Claims (4)

    【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】 C:1.2質量%以下,Si:3質量%
    以下,Mn:2質量%以下,Cr:10〜20質量%,
    V:0.01〜1.0質量%,Ag:0.01〜1質量
    %を含み、残部が実質的にFeの組成をもち、球状のA
    g相がマトリックスに分散析出していることを特徴とす
    る抗菌性に優れたAg含有マルテンサイト系ステンレス
    鋼。
  2. 【請求項2】 更にTi:1質量%以下,Nb:1質量
    %以下,Zr:1質量%以下,Mo:4質量%以下,A
    l:0.2質量%,B:0.05質量%,Y:0.2質
    量%以下,希土類元素(REM):0.2質量%以下の
    1種又は2種以上を含む請求項1記載のマルテンサイト
    系ステンレス鋼。
  3. 【請求項3】 請求項1又は2記載の組成をもつ鋼帯を
    900〜1300℃の温度域に保持し、Ag相を球状化
    することを特徴とする抗菌性に優れたマルテンサイト系
    ステンレス鋼の製造方法。
  4. 【請求項4】 冷間圧延後にAg相の球状化処理を行う
    請求項3記載の製造方法。
JP2000065906A 2000-03-10 2000-03-10 抗菌性に優れたAg含有マルテンサイト系ステンレス鋼及びその製造方法 Withdrawn JP2001254151A (ja)

Priority Applications (1)

Application Number Priority Date Filing Date Title
JP2000065906A JP2001254151A (ja) 2000-03-10 2000-03-10 抗菌性に優れたAg含有マルテンサイト系ステンレス鋼及びその製造方法

Applications Claiming Priority (1)

Application Number Priority Date Filing Date Title
JP2000065906A JP2001254151A (ja) 2000-03-10 2000-03-10 抗菌性に優れたAg含有マルテンサイト系ステンレス鋼及びその製造方法

Publications (1)

Publication Number Publication Date
JP2001254151A true JP2001254151A (ja) 2001-09-18

Family

ID=18585355

Family Applications (1)

Application Number Title Priority Date Filing Date
JP2000065906A Withdrawn JP2001254151A (ja) 2000-03-10 2000-03-10 抗菌性に優れたAg含有マルテンサイト系ステンレス鋼及びその製造方法

Country Status (1)

Country Link
JP (1) JP2001254151A (ja)

Cited By (8)

* Cited by examiner, † Cited by third party
Publication number Priority date Publication date Assignee Title
JP2007014893A (ja) * 2005-07-08 2007-01-25 Toyo Knife Co Ltd 塗布ヘッド
CN100494981C (zh) * 2007-03-16 2009-06-03 中国科学院沈阳应用生态研究所 一种利用硫代巴比妥酸法测定抗菌不锈钢抗菌性能的方法
CN102534427A (zh) * 2012-01-19 2012-07-04 朱育盼 一种具有广谱抗菌作用的马氏体不锈钢
CN102560281A (zh) * 2012-01-19 2012-07-11 朱育盼 一种具有广谱抗菌作用的马氏体不锈钢的制备方法
JP2016065304A (ja) * 2014-08-27 2016-04-28 エスエルエム ソルーションズ グループ アーゲー 鉄合金材料を含む部品の製造方法
CN114657454A (zh) * 2020-12-23 2022-06-24 安徽工业大学科技园有限公司 一种30Cr13系马氏体抗菌不锈钢及其制备方法
CN114657440A (zh) * 2020-12-23 2022-06-24 安徽工业大学科技园有限公司 一种马氏体抗菌不锈钢及其制备方法
RU2800269C1 (ru) * 2022-09-29 2023-07-19 Федеральное государственное автономное образовательное учреждение высшего образования "Белгородский государственный национальный исследовательский университет" (НИУ "БелГУ") Мартенситная нержавеющая сталь для изготовления стержневых медицинских инструментов

Cited By (10)

* Cited by examiner, † Cited by third party
Publication number Priority date Publication date Assignee Title
JP2007014893A (ja) * 2005-07-08 2007-01-25 Toyo Knife Co Ltd 塗布ヘッド
JP4644059B2 (ja) * 2005-07-08 2011-03-02 東洋刃物株式会社 塗布ヘッド
CN100494981C (zh) * 2007-03-16 2009-06-03 中国科学院沈阳应用生态研究所 一种利用硫代巴比妥酸法测定抗菌不锈钢抗菌性能的方法
CN102534427A (zh) * 2012-01-19 2012-07-04 朱育盼 一种具有广谱抗菌作用的马氏体不锈钢
CN102560281A (zh) * 2012-01-19 2012-07-11 朱育盼 一种具有广谱抗菌作用的马氏体不锈钢的制备方法
JP2016065304A (ja) * 2014-08-27 2016-04-28 エスエルエム ソルーションズ グループ アーゲー 鉄合金材料を含む部品の製造方法
US10513748B2 (en) 2014-08-27 2019-12-24 SLM Solutions Group AG Method for manufacturing a component containing an iron alloy material
CN114657454A (zh) * 2020-12-23 2022-06-24 安徽工业大学科技园有限公司 一种30Cr13系马氏体抗菌不锈钢及其制备方法
CN114657440A (zh) * 2020-12-23 2022-06-24 安徽工业大学科技园有限公司 一种马氏体抗菌不锈钢及其制备方法
RU2800269C1 (ru) * 2022-09-29 2023-07-19 Федеральное государственное автономное образовательное учреждение высшего образования "Белгородский государственный национальный исследовательский университет" (НИУ "БелГУ") Мартенситная нержавеющая сталь для изготовления стержневых медицинских инструментов

Similar Documents

Publication Publication Date Title
KR100313171B1 (ko) 향균성이향상된스테인레스강의사용방법
JP6488012B2 (ja) 抗菌性に優れた高硬度マルテンサイト系ステンレス鋼及びその製造方法
US8607941B2 (en) Steel sheet for brake disc, and brake disc
CN109154051A (zh) 具有奥氏体基体的twip钢板
CA2297091A1 (en) Stainless steel having antibacterial properties and manufacturing method therefore
EP0980915B1 (en) Stainless steel product having enhanced antibacterial action and method for producing the same
JP2001254151A (ja) 抗菌性に優れたAg含有マルテンサイト系ステンレス鋼及びその製造方法
JP3223418B2 (ja) 抗菌性に優れたフェライト系ステンレス鋼及びその製造方法
JP3309769B2 (ja) Cu含有ステンレス鋼板及びその製造方法
JP3219128B2 (ja) 抗菌性に優れた高強度マルテンサイト系ステンレス鋼
JP2003511553A (ja) 鋼材料、その用途とその製造
JP3227405B2 (ja) 抗菌性に優れたフェライト系ステンレス鋼
CN114196891A (zh) 一种热加工性优异的马氏体抗菌不锈钢及其制造方法
JP3281526B2 (ja) 抗菌性に優れたマルテンサイト系ステンレス鋼及びその製造方法
JP3232532B2 (ja) 抗菌性に優れたオーステナイト系ステンレス鋼及びその製造方法
JPS6134161A (ja) 刃物用ステンレス鋼
JP2000160294A (ja) 高硬度抗菌性鋼材およびその製造法
JPH1192884A (ja) 抗菌性マルテンサイト系ステンレス鋼及びその製造方法
JP2017190522A (ja) 鋼材
JPH10237597A (ja) 抗菌性に優れた高強度高延性複相組織ステンレス鋼及びその製造方法
JP2000008145A (ja) 抗菌性に優れたフェライト系ステンレス鋼およびその製造方法
JP3398620B2 (ja) 抗菌性に優れたステンレス鋼材およびその製造方法
JP4064554B2 (ja) 安価な抗菌性冷延鋼板
WO2022202507A1 (ja) ステンレス鋼材及びその製造方法、並びに抗菌・抗ウィルス部材
JPH11350089A (ja) 抗菌性に優れ高加工性を具備したオーステナイト系ステンレス鋼およびその製造方法

Legal Events

Date Code Title Description
A300 Withdrawal of application because of no request for examination

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A300

Effective date: 20070605