JP2017206725A - フェライト系ステンレス鋼およびその製造方法 - Google Patents

フェライト系ステンレス鋼およびその製造方法 Download PDF

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Abstract

【課題】優れた抗菌性を有すると共に、厨房機器などに必要な優れた耐食性を有するフェライト系ステンレス鋼を提供すること。【解決手段】質量%で、C:0.001〜0.050%、Si:0.01〜1.0%、Mn:0.01〜2.0%、P:0.05%以下、S:0.01%以下、Al:0.001〜1.0%、Cr:11.0〜32.0%、Cu:0.4〜4.0%、N:0.001〜0.050%以下を含有し、Ti:0.10〜0.60%、Nb:0.10〜0.60%のいずれか1種または2種を含有し、残部がFeおよび不可避的不純物であり、さらにε−Cu相を0.10体積%以上含有し、ε−Cu相の平均粒径が30nm以下であることを特徴とするフェライト系ステンレス鋼。【選択図】図1

Description

本発明は、厨房機器や電気機器等に用いるのに好適なフェライト系ステンレス鋼およびその製造方法に関する。
ステンレス鋼はその優れた耐食性から厨房機器や病院等で使用されている各種機材など、清潔さが求められ、錆による外観の劣化が敬遠される用途に多く適用されている。これらの機器は多くの場合、使用者によって洗浄や消毒によるメンテナンスが行われ、機器上での菌の繁殖を抑制して清潔さが保たれている。しかし、近年では、消費者の除菌意識の高まりと作業コスト低減の要請から、洗浄などの作業による除菌に加えて、これらの材料そのものにも抗菌性を付与することが求められる場合が出てきている。
抗菌性を有する金属としては、AgやCuなどが知られている。そこで、近年ではこれらの元素を添加することで抗菌性を付与したステンレス鋼が製造されている。抗菌性を付与するためにもちいられる元素としては、Agよりも安価であることからCuが選ばれることが多い。
Cuによって抗菌性を付与したステンレス鋼としては、特許文献1〜3などが開示されている。
特許文献1によれば、持続性のある抗菌性を付与したフェライト系ステンレス鋼が得られる。このステンレス鋼はマトリックス中に0.2体積%以上のCuリッチ相を熱延後の500〜900℃のバッチ焼鈍で析出させることで、長期間にわたって優れた抗菌性を得ている。
特許文献2によれば、抗菌性と表面性状に優れた高加工性フェライト系ステンレス鋼板が得られる。このステンレス鋼は、Cuの析出量を0.030重量%以上とすることで抗菌性を得つつ、Nb、Ti、V、Ta、Hf、Zrから選ばれる1種又は2種以上を合計で0.005〜1.0%を含有させることで、炭窒化物を生成し、成形性を改善させたフェライト系ステンレス鋼である。
特許文献3によれば,抗菌性、靱性および切削性を兼ね備えたフェライト系ステンレス鋼が得られる。このステンレス鋼は、その表面にCu主体の相が露出させることで抗菌性を付与している。
しかし、上記の特許文献1〜3に開示のステンレス鋼において、抗菌性を向上させようとすると、耐食性を低下させてしまう場合があった。
特開平9−195009 特開平10−306352 特開2000−8145
従来技術の抱える上記のような問題点に鑑み、本発明は、優れた抗菌性を有すると共に、厨房機器などに必要な優れた耐食性を有するフェライト系ステンレス鋼およびその製造方法を提供することを目的とする。
まず、本発明者らは、上記の特許文献1〜3に開示のステンレス鋼では、ε−Cu相が析出している点に着目し、耐食性は、ε−Cu相の粒径に影響を受けているのではないかと考えた。
そして、本発明者らは、抗菌性を確保しつつ、耐食性を向上させるために、フェライト系ステンレス鋼のε−Cuの析出状態と耐食性との相関を調査した。フェライト系ステンレス鋼(化学成分:質量%で、C:0.003%、Si:0.04%、Mn:0.021%、P:0.01%、S:0.001%、Al:0.001〜1.0%、Cr:18.0%、Cu:1.99%、N:0.009%、Ti:0.10%)に、1100℃で10minの溶体化処理を行い、その後、500〜700℃、10s〜100hの析出処理を行い、ε−Cu相の粒径を変化させた供試材をもちいて、鏡面研磨表面に5質量%の塩水噴霧2h、60℃の乾燥4hを行い、発銹面積率を評価した。図1は、ε−Cu相の平均粒径と発銹面積率の関係を示すグラフである。その結果、図1に示すようにステンレス鋼に存在するε−Cu相の平均粒径が30nm以下であれば発銹面積率が1%以下になり、良好な耐食性を示すという知見を得た。
以上の結果に基づき、本発明は構成される。
すなわち本発明は下記の構成を要旨とするものである。
[1]質量%で、C:0.001〜0.050%、Si:0.01〜1.0%、Mn:0.01〜2.0%、P:0.05%以下、S:0.01%以下、Al:0.001〜1.0%、Cr:11.0〜32.0%、Cu:0.4〜4.0%、N:0.001〜0.050%を含有し、Ti:0.10〜0.60%、Nb:0.10〜0.60%のいずれか1種または2種を含有し、残部がFeおよび不可避的不純物であり、さらにε−Cu相を0.10体積%以上含有し、前記ε−Cu相の平均粒径が30nm以下であることを特徴とするフェライト系ステンレス鋼。
[2]質量%で、さらに、Ni:4.0%以下、Mo:3.0%以下、Co:0.5%以下、W:2.0%以下のいずれか1種または2種以上を含有することを特徴とする、前記[1]に記載のフェライト系ステンレス鋼。
[3]質量%で、さらに、V:0.5%以下、Zr:0.6%以下、B:0.005%以下、REM:0.01%以下のいずれか1種または2種以上を含有することを特徴とする、前記[1]または[2]に記載のフェライト系ステンレス鋼。
[4]前記[1]〜[3]のいずれかに記載のフェライト系ステンレス鋼の製造方法であり、
冷間圧延後の鋼に、880℃以上で10s以上の溶体化処理を施した後に、450〜600℃で10s〜1hの析出処理を施すことを特徴とする、フェライト系ステンレス鋼の製造方法。
本発明によれば、優れた抗菌性を発揮するとともに,厨房機器などに必要な優れた耐食性を兼備するフェライト系ステンレス鋼が得られる。
ε−Cu相の平均粒径と発銹面積率の関係を示すグラフである。
以下に本発明を詳細に説明する。
本発明のフェライト系ステンレス鋼は、質量%で、C:0.001〜0.050%、Si:0.01〜1.0%、Mn:0.01〜2.0%、P:0.05%以下、S:0.01%以下、Al:0.001〜1.0%、Cr:11.0〜32.0%、Cu:0.4〜4.0%、N:0.001〜0.050%を含有し、Ti:0.10〜0.60%、Nb:0.10〜0.60%のいずれか1種または2種を含有し、残部がFeおよび不可避的不純物であり、さらにε−Cu相を0.10体積%以上含有し、ε−Cu相の平均粒径が30nm以下である。
まず、本発明のフェライト系ステンレス鋼の成分組成について説明する。
なお、各元素の含有量を示す%は、特に記載しない限り質量%とする。
C:0.001〜0.050%
Cの含有量が多いと強度が向上し、少ないと加工性が向上する。十分な強度を得るためには、C含有量を0.001%以上にする必要がある。しかし、C含有量が0.050%を超えると耐食性と加工性の低下が顕著となる.よって、C含有量は0.001〜0.050%とする。好ましくは、C含有量は0.002〜0.040%である。より好ましくは、C含有量は0.005〜0.015%である。
Si:0.01〜1.0%
Siは脱酸に有用な元素である。この効果はSi含有量が0.01%以上で得られる。しかし、Si含有量が1.0%を超えると、酸洗性が低下し製造に支障をきたす。よって、Si含有量は0.01〜1.0%とする。好ましくは、Si含有量は0.05〜0.50%である。より好ましくは、Si含有量は0.10〜0.25%である。
Mn:0.01〜2.0%
Mnは、脱酸に有用な元素である。その効果はMn含有が0.01%以上で得られる。しかし、Mn含有量が2.0%を超えるとステンレス鋼の腐食発生の起点となるMnSの生成が顕著となる。よって、Mn含有量は0.01〜2.0%とする。好ましくは、Mn含有量は0.05〜0.50%である。より好ましくは、Mn含有量は0.10〜0.25%である。
P:0.05%以下
Pは、鋼に不可避的に含まれる元素であり、結晶粒界に偏析して、結晶粒界の強度を低下させ、粒界割れを発生しやすくする元素である。よって、P含有量は少ないほど好ましく、0.05%以下とする。好ましくは、P含有量は0.03%以下である。
S:0.01%以下
Sは、鋼に不可避的に含まれる元素であるが、0.01%超の含有はCaSやMnSなどの水溶性硫化物の形成が促進され耐食性を低下させる。よって、S含有量は0.01%以下とする。好ましくは、S含有量は0.005%以下である。
Al:0.001〜1.0%
Alは、耐酸化性および耐食性を向上させる元素である.この効果はAl含有量が 0.001%以上で得られる。しかし、Al含有量が1.0%を超えると製造工程の焼鈍中に形成した酸化スケールの除去が困難となり製造性が低下する。よって、Al含有量は0.001〜1.0%とする。好ましくは、Al含有量は0.005〜0.1%である。より好ましくは、Al含有量は0.01〜0.05%である。
Cr:11.0〜32.0%
Crは、ステンレス鋼の耐食性を決定付ける最も重要な元素である。Cr含有量が11.0%未満ではステンレス鋼として十分な耐食性が得られない。一方で、過剰の含有は、加工性を低下させ、製造に支障をきたすため、Cr含有量は32.0%以下とする。よって、Cr含有量は11.0〜32.0%とする。好ましくは、Cr含有量は15.0〜25.0%である。
Cu:0.4〜4.0%
Cuは、本発明で抗菌性を得るための重要な元素である。Cuイオンには菌の繁殖を抑える効果があるが、本発明における抗菌性は、ステンレス鋼表面に析出したε−Cu相が、表面に形成された薄い水膜中にCuイオンを供給することで発現する。そのため、十分な抗菌性を得るためにはε−Cu相を析出させなくてはならない。Cu含有量が0.4%未満ではε−Cu相の析出が困難であり、Cu含有量が4.0%超であると熱間圧延中に結晶粒界に偏析したCuが融解して割れを引き起こす。よって、Cu含有量は0.4〜4.0%とする。好ましくは、Cu含有量は1.0〜3.0%である。
N:0.001〜0.050%
Nは、鋼の強度を上昇させる効果がある。その効果はN含有量が0.001%以上で得られる。しかし、N含有量が0.10%を超えると耐食性と加工性の低下が顕著となる。よって、N含有量は0.001〜0.050%とする。好ましくは、N含有量は0.002〜0.030%でる。より好ましくは、N含有量は0.005〜0.020%である。
Ti:0.10〜0.60%、Nb:0.10〜0.60%のいずれか1種または2種
Tiは、C、Nと優先的に結合してCr炭窒化物の析出による耐食性の低下を抑制する元素である。その効果はTi含有量が0.10%以上で得られる。しかし、Ti含有量が0.60%を超えると粗大なTiNの生成が促進され、それを起点とした腐食の発生が増加し耐食性が低下する。よって、Tiを含有する場合、Ti含有量は0.10〜0.60%とする。好ましくは、Ti含有量は0.15〜0.40%である。
また、Nbは、C、Nと優先的に結合してCr炭窒化物の析出による耐食性の低下を抑制する元素である。その効果はNb含有量が0.10%以上で得られる。しかし、Nb含有量が0.60%を超えると熱間強度が増加し、熱間圧延の負荷が増大する。よって、Nbを含有する場合、Nb含有量は0.10〜0.60%とする。好ましくは、Nb含有量は0.15〜0.45%である。
残部はFeおよび不可避的不純物である。
以上の成分組成により本発明の効果は得られるが、さらに以下の元素を含有することができる。
Ni:4.0%以下
Niは、ステンレス鋼の耐食性を向上させる元素であり、不動態皮膜が形成できず活性溶解が起こる腐食環境において腐食の進行を抑制する元素である。この効果は、Ni含有量が 0.01%以上で得られる。しかし、Ni含有量が4.0%超えでは、フェライト相中に第2相であるオーステナイト相が形成されフェライト相との成分の違いから耐食性が低下する。よって、Niを含有する場合、Ni含有量は4.0%以下とする。好ましくは、Ni含有量は3.0%以下である。
Mo:3.0%以下
Moは、不動態皮膜の再不動態化を促進し、ステンレス鋼の耐食性を向上する元素である。この効果は、Mo含有量が0.01%以上で得られる。しかし、Mo含有量が3.0%を超えると高温強度が増加し、圧延負荷が大きくなるため製造性が低下する。よって、Moを含有する場合、Mo含有量は3.0%以下とする。好ましくは、Mo含有量は2.0%以下である。
Co:0.5%以下
Coは、低温靭性を向上させる元素である。この効果は、Co含有量が0.01%以上で得られる。しかし、Co含有量が0.5%を超えると加工性が低下する。よって、Coを含有する場合、Co含有量は0.5%以下とする。好ましくは、Co含有量は0.2%以下である。
W:2.0%以下
Wは、Moと同様に耐食性を向上する効果がある。この効果は、W含有量が0.01%以上で得られる。しかし、W含有量が2.0%を超えると強度が上昇し製造性が低下する。よって、Wを含有する場合、W含有量は2.0%以下とする。好ましくは、W含有量は、1.0%以下である。
V:0.5%以下
Vは、VNを形成することでCr窒化物の析出による耐食性の低下を抑制する元素である。この効果は、V含有量が0.01%以上で得られる。しかし、V含有量が0.5%を超えると加工性が低下する。よって、Vを含有する場合、V含有量は0.5%以下とする。好ましくは、V含有量は0.2%以下である。
Zr:0.6%以下
Zrは、C、Nと結合してCr炭窒化物の析出による耐食性の低下を抑制する元素である。この効果は、Zr含有量が0.01%以上で得られる。しかし、過剰の含有は加工性を低下させるうえ、非常に高い元素であるためコストの増大を招く。よって、Zrを含有する場合、Zr含有量は0.6%以下とする。好ましくは、Zr含有量は0.2%以下である。
B:0.005%以下
Bは、結晶粒界を強化し,二次加工脆化を抑制する元素である.この効果は、B含有量が0.0003%以上で得られる。しかし、B含有量が0.005%を超えると加工性が低下する。よって、Bを含有する場合、B含有量は0.005%以下とする。好ましくは、B含有量は、0.003%以下である。
REM:0.01%以下
REMは、耐酸化性を向上して、酸化スケールの形成を抑制し、溶接部の耐食性を向上する。この効果はREM含有量が0.001%以上で得られる。しかし、REM含有量が0.01%を超えると酸洗性が低下して製造性が低下する。よって、REMを含有する場合、REM含有量は0.01%以下とする。
ε−Cu相:0.10体積%以上
後述の実施例に示すように、抗菌性試験の結果、減菌率95%以上の有効な抗菌性を得るためにはε−Cu相の体積率は0.10%以上必要であった。これはε−Cu相の体積率が0.10%以上であれば、ステンレス鋼表面に形成される水膜に対して、除菌に必要なCuイオンが表面に析出したε−Cu相から十分に供給されるためであると考えられる。よって、ε−Cu相の体積率は0.10%以上とする。好ましくは、ε−Cu相の体積率は、0.2%以上である。
ε−Cu相の平均粒径:30nm以下
図1に示すように、ε−Cu相の平均粒径が30nm以下であると発銹面積率が低下し耐食性が向上した。これは、ε−Cu相が脱落や溶解によって腐食発生の起点となった場合でも、ε−Cu相の粒径が十分に小さければ孔食として腐食が成長し始める前に再不動態化を起こすためと考えられる。よって、ε−Cu相の平均粒径は30nm以下とする。好ましくは、ε−Cu相の平均粒径は25nm以下である。
本発明のステンレス鋼はどのような製造方法を用いてもよいが、上述したように、ε−Cu相が0.10体積%以上、かつ、ε−Cu相の平均粒径が30nm以下であることが重要である。以下に好適な製造方法の一例を示す。
上記化学組成のステンレス鋼を1100〜1300℃に加熱後、仕上温度を700〜1000℃、巻取温度を400〜800℃として板厚2.0〜8.0mmに熱間圧延を施す。こうして作製した熱間圧延鋼帯を800〜1100℃の温度で1h以下の焼鈍を施し酸洗を行う。
次に、板厚0.5〜3.0mmに冷間圧延を行い、880℃以上で10s以上の溶体化処理を施す。この溶体化処理によって、これまでの製造工程で生成された結晶粒内のε−Cu相を固溶する。溶体化処理温度が880℃未満では熱延中に生成した粗大なε−Cuが溶け残り、十分な耐食性が得られない。また、溶体化処理時間が10s未満でも同様に熱延中に生成した粗大なε−Cuが溶け残り、十分な耐食性が得られない。好ましくは、上記の溶体化処理の条件としては、900℃以上で1min以上である。より好ましくは、1000℃以上で10min以上である。また、粗大なε−Cu相が再析出するのを防ぐために、溶体化処理後は10℃/s以上の冷却速度で冷却することが好ましい。より好ましくは、上記の冷却速度は100℃/s以上である。その後、450〜600℃で10s〜1hの析出処理を行う。好ましくは、上記の析出処理の条件としては、550〜600℃で1min〜1hである。この析出処理によって結晶粒内に平均粒径30nm以下のε−Cu相が析出する。析出処理温度が450℃未満では、ε−Cuの析出が不足し、十分な抗菌性が得られない。析出処理温度が600℃を超えると、析出したε−Cuが粗大となり、十分な耐食性が得られない。析出処理時間が10s未満では、ε−Cuの析出が不足し、十分な抗菌性が得られない。析出処理時間が1hを超えると、析出したε−Cuが粗大となり、十分な耐食性が得られない。また、析出処理について、溶体化処理後の冷却過程で析出処理を行ってもよい。析出処理後には酸洗を行い、スケールを除去する。スケールを除去した冷間圧延鋼帯にはスキンパス圧延を行ってもよい。
以下、実施例に基づいて本発明を説明する。
表1に示すステンレス鋼を真空溶製し、1190℃に加熱したのち、板厚4.0mmまで熱間圧延した。試験No.15(鋼No.O)はCu含有量が本発明上限を超えたため、Cuが粒界に偏析し熱間圧延中に融解割れが発生し、熱延板が製造できなかった。そのため、試験No.15については、以降の全ての試験材製作と評価試験を行わなかった。
次に、試験No.15以外の全ての熱延板に、1000℃で90sの焼鈍を施し、酸洗によりスケールを除去した。さらに、板厚0.8mmまで冷間圧延し行った。No.1〜14、16、17および19〜23の冷延板に対し、表2に示す条件で溶体化処理を行い、水冷した。冷却速度は特に制御しなかったが、100℃/s以上であった。No.18の冷延板については、本発明範囲内の溶体化処理を行う代わりに、850℃で60sの熱処理を行い、空冷した。その後,試験No.1〜14、16、17および20〜24では表2に示す析出処理を行い、室温まで冷却し供試材とした。
得られた供試材をツインジェット法により薄膜とし透過型電子顕微鏡を用いて500nm四方で5視野観察し、EDXによる分析でCuが原子%で80%以上含まれる粒子をε−Cu相と判断し、ε−Cu相の体積率を画像解析により定量した。さらに、これらのε−Cu相のうち、結晶粒内にあるもので粒径の大きいほうから20個の粒径を平均してε−Cu相の平均粒径とした。ε−Cu相の体積率および平均粒径を表2に示す。
Figure 2017206725
Figure 2017206725
抗菌性試験には、Staphylococus aureus IFO12732(黄色ブドウ球菌)を普通ブイヨン培地で35℃、16〜24時間振盪培養し、培養液を用意した。培養液を滅菌リン酸緩衝液で20000倍に希釈し、菌液を調製した。50×50mmの試験片を#400研磨した表面に菌液1mlを滴下し、25℃で24時間保存した。保存後、試験片をSCDLP培地(日本製薬株式会社製)9mlで洗い流し、得られた液について標準寒天培地を用いた混釈平板培養法(35℃、2日間培養)で生菌数をカウントした。参照の制菌数と比較して95%以上菌が死滅したものを○(合格)、95%以下であったものを×(不合格)とした。結果を表2に示す。
試験No.14、19、21、22はε−Cuの体積率が0.10%未満であったため、抗菌性が不十分であった。
耐食性試験は、供試材を60×80mmに切断し、表面を鏡面研磨仕上げとして、5質量%のNaCl溶液を2h噴霧し、温度60℃、相対湿度50%の環境で4h乾燥したのち、発銹面積率を測定した。発銹面積率が1%以下を○(合格)、1%超を×(不合格)として、結果を表2に示す。試験No.16(鋼No.P)は、Ti、Nbのいずれも含有していないため、鋭敏化が発生し耐食性が不十分であった。試験No.17(鋼No.Q)はCr含有量が範囲の下限未満であったため、耐食性が不十分であった。
試験No.18、20、23、24は、ε−Cu相の平均粒径が30nm超えであったため、耐食性が不十分であった。
以上の結果から、本発明によれば、優れた抗菌性と耐食性を両立したフェライト系ステンレス鋼が得られることが確認できた。
本発明によれば、優れた抗菌性を発揮するとともに,厨房機器などに必要な優れた耐食性を兼備する抗菌性および耐食性に優れたフェライト系ステンレス鋼が得られる。本発明で得られるフェライト系ステンレス鋼は厨房機器など抗菌性が必要とされる用途への適用に好適である。

Claims (4)

  1. 質量%で、C:0.001〜0.050%、Si:0.01〜1.0%、Mn:0.01〜2.0%、P:0.05%以下、S:0.01%以下、Al:0.001〜1.0%、Cr:11.0〜32.0%、Cu:0.4〜4.0%、N:0.001〜0.050%を含有し、Ti:0.10〜0.60%、Nb:0.10〜0.60%のいずれか1種または2種を含有し、残部がFeおよび不可避的不純物であり、
    さらにε−Cu相を0.10体積%以上含有し、前記ε−Cu相の平均粒径が30nm以下であることを特徴とするフェライト系ステンレス鋼。
  2. 質量%で、さらに、Ni:4.0%以下、Mo:3.0%以下、Co:0.5%以下、W:2.0%以下のいずれか1種または2種以上を含有することを特徴とする、請求項1に記載のフェライト系ステンレス鋼。
  3. 質量%で、さらに、V:0.5%以下、Zr:0.6%以下、B:0.005%以下、REM:0.01%以下のいずれか1種または2種以上を含有することを特徴とする、請求項1または2に記載のフェライト系ステンレス鋼。
  4. 請求項1〜3のいずれかに記載のフェライト系ステンレス鋼の製造方法であり、
    冷間圧延後の鋼に、880℃以上で10s以上の溶体化処理を施した後に、450〜600℃で10s〜1hの析出処理を施すことを特徴とする、フェライト系ステンレス鋼の製造方法。
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