JPH09157947A - ポリエステル繊維とウールとの混合布帛染色製品 - Google Patents

ポリエステル繊維とウールとの混合布帛染色製品

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JPH09157947A
JPH09157947A JP34504095A JP34504095A JPH09157947A JP H09157947 A JPH09157947 A JP H09157947A JP 34504095 A JP34504095 A JP 34504095A JP 34504095 A JP34504095 A JP 34504095A JP H09157947 A JPH09157947 A JP H09157947A
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JP
Japan
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wool
polyester fiber
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polyester
fastness
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JP34504095A
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Jinichiro Kato
仁一郎 加藤
Tadashi Tanabe
忠 田辺
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Asahi Chemical Industry Co Ltd
Original Assignee
Asahi Chemical Industry Co Ltd
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Publication date
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Abstract

(57)【要約】 【解決手段】 ポリエステル繊維とウールとの混合布帛
染色製品において、ポリエステルが平均分子量500〜
4000のポリエチレングリコール1.5〜4.5重量
%とアジピン酸9〜6重量%を共重合し、同時に1.3
≦アジピン酸の重量%/ポリエチレングリコールの重量
%≦6を満足するポリエチレンテレフタレートであって
且つ損失正接のピーク温度が90〜110℃のポリエス
テル繊維とウールを用いた混合布帛染色製品。 【効果】 常圧可染性ポリエステルを混用することによ
って、ウールを熱劣化させることなく、本来の風合い、
物性を最大限に発揮し、かつポリエステルの機能性を兼
備したポリエステル繊維とウールとの混合布帛染色製品
を提供できる。

Description

【発明の詳細な説明】
【0001】
【発明の属する技術分野】本発明は、ポリエステル繊維
とウールとの混用布帛染色製品の改良に関するものであ
る。更に詳しくは、本発明は、常圧可染性ポリエステル
を混用することによって、ウールを熱劣化させることな
く、本来の風合い、物性を最大限に発揮し、かつポリエ
ステルの機能性を兼備したポリエステル繊維とウールと
の混合布帛染色製品に関するものである。
【0002】
【従来の技術】近年、衣料用繊維に要求される性能は多
岐に渡り、単独の繊維のみでは、その要求を満たすこと
が困難になりつつある。このような状況で、複合化素材
への期待が非常に高まっている。ポリエステル繊維の場
合も、種々の繊維素材、例えば、ウール、ウレタン、セ
ルロース繊維等との複合化が行われている。
【0003】ウールのみからなる布帛は常圧可染が可能
であり、風合いや色合いに優れている反面、バルキー
性、原糸強度が乏しい上に、ウォッシュアンドウェアー
性、プリーツ性、仕立て栄え、黄変性、防虫、防かび性
等の機能性が欠如している。ウールに欠けているこれら
の機能をポリエステル繊維を混用して補うことが行われ
ている。
【0004】確かにポリエステル繊維を混用すると、ウ
ールに欠如している上記の機能を補うことができるが、
通常のポリエステル繊維は難染性であるために、ウール
と同じ条件で染色すると、色が薄くなりウールと同色が
得られない。一方、通常のポリエステル繊維の染色温度
である130〜135℃で染色すると、ウールが熱劣化
を受けて風合いが悪くなると同時に、黄変、強度・伸度
低下といった問題が生じる。従って、ポリエステル繊維
とウールとの同色性と、混用するウールとの風合い、強
度、伸度との兼ね合いから妥協点を見いだしつつ問題を
抱えながら、ポリエステルとウールとの混用布帛が生産
されているのが現状であった。
【0005】以上のような問題を解決する方法と一つと
して、染色性を高めたポリエステル繊維を使用する試み
が知られている。すなわち、この試みは、高い染色性を
有するポリエステル繊維をウールと混用することで、低
い染色温度を適用することが可能となり、その結果、ウ
ールの熱劣化が抑えられるという考え方に基づくもので
ある。これまでに知られている技術としては、例えば、
ポリオキシエチレングリコールのみを共重合させたポリ
エチレンテレフタレート易染糸が、特開平2−1540
81号公報、特開平3−69624号公報、特開平4−
41716号公報、特開平4−41732号公報に示さ
れている。
【0006】この繊維は分子量1,000のポリエチレ
ングリコールを6〜10重量%共重合させたポリエステ
ル繊維であり、98℃可染が達成されている。また、ウ
ールとの混用を前提とする技術が開示されている。しか
しながら、この繊維はポリオキシエチレングリコールの
共重合比率が高いために、ドライクリーニング堅牢性、
耐光堅牢性が低く、用途が限定される欠点を有する。ま
た、ウールとの混用を前提にはしていないが、易染性ポ
リエステル繊維が知られている。
【0007】例えば、ポリエチレングリコールとアジピ
ン酸とを共重合させた易染性ポリエステル繊維も知られ
ている(特開昭63−85111号公報、特開昭63−
235536号公報)。特開昭63−85111号公報
には、ポリエチレングリコール4重量%とアジピン酸4
重量%共重合させたポリエステル繊維が開示されてお
り、アントラキノン系の染料で染色した場合に高い吸尽
率が達成されている。しかしながら、この発明で示され
ている染料は比較的分子量が小さいために、繊維へ染料
が染着しやすい。
【0008】従って、この染料で高い吸尽率を達成して
もすべての染料について高い吸尽率を示すというわけで
はないことが本発明者らの検討によってわかった。特
に、黒色の染料については染まりにくい傾向があった。
従って、この繊維はあらゆる種類の染料に対して易染性
を示すものではなく、限定された用途にしか用いること
ができない。特開昭63−235536号公報には、ポ
リエチレングリコール6重量%とアジピン酸5.1重量
%共重合させたポリエステル繊維が開示されているが、
この場合には、高い吸尽率は達成できるものの、やは
り、ポリエチレングリコールの含有量が多いために、ド
ライクリーニング堅牢性、耐光堅牢性が低いという欠点
がある。
【0009】また、5−ナトリウムスルホイソフタル酸
を5モル%以上共重合したカチオン染料可染性ポリエス
テル繊維(例えば、特開昭51−34022号公報、特
開昭60−246847号公報、特開昭60−1731
85号公報等)、5000〜8000m/minの高速
紡糸により非晶部分の配向を低下させたポリエステル繊
維(例えば、特開昭59−59911号公報、特開昭5
8−13739号公報等)、脂肪族ジカルボン酸、脂肪
族ジオール、芳香族ジカルボン酸のみを共重合したポリ
エステル繊維(例えば、特開昭51−130320号公
報、特開昭57−30159号公報)が易染性ポリエス
テル繊維として知られている。
【0010】しかしながら、これらのポリエステル繊維
もまた、ウールとの混用を考えた場合、致命的な欠点を
有する。5−ナトリウムスルホイソフタル酸を共重合し
たカチオン染料可染性ポリエステル繊維は、染色性は高
められるものの、糸強度が低い、バルキー性、ストレッ
チ性に欠ける、風合いにふくらみ感がない、嵩高加工が
実質的には適用できない等の問題がある。
【0011】高速紡糸によるポリエステル繊維では、染
色性の向上程度が低く、常圧可染性を示さない。更に、
収縮率が低いので寸法安定性が悪い、風合いに締まり感
が乏しい、目ずれ欠点が生じやすい、延伸同時仮撚がで
きない等の問題がある。脂肪族ジカルボン酸、脂肪族ジ
オール、芳香族ジカルボン酸のみを共重合したポリエス
テル繊維では、常圧可染性を達成するには、共重合比率
を15重量%以上する必要がある。そのために、原糸強
度低下、熱安定性の低下、耐光性の低下、加工糸の伸縮
回復性の低下、紡糸性不良等の問題がある。
【0012】
【課題を解決するための手段】本発明者らは、かかる従
来技術における欠点を鑑み、ウールに混用するポリエス
テル繊維について鋭意検討した結果、特定の構造を有す
るポリエステル繊維をウールと混用した布帛を染色する
ことによって同色性、更には堅牢性が大幅に改善できる
ことを見い出し、本発明に到達した。すなわち、本発明
の目的は、同色性、更には堅牢性に優れたポリエステル
繊維とウールの混合布帛の染色製品を提供することであ
る。
【0013】すなわち、本発明は:ポリエステル繊維と
ウールとの混合布帛染色製品において、ポリエステルが
平均分子量500〜4,000のポリエチレングリコー
ル1.5〜4.5重量%とアジピン酸9〜6重量%を共
重合し、同時に1.3≦アジピン酸の重量%/ポリエチ
レングリコールの重量%≦6を満足するポリエチレンテ
レフタレートであって、且つ損失正接のピーク温度が9
0〜110℃のポリエステル繊維とウールを用いた混合
布帛染色製品を提供するものである。
【0014】以下、本発明を詳細に説明する。本発明の
ポリエステル繊維を構成するポリマーは、平均分子量5
00〜4,000、好ましくは600〜2,000のポ
リエチレングリコール1.5〜4.5重量%とアジピン
酸9〜6重量%を共重合したポリエチレンテレフタレー
トから構成された共重合ポリエステルであり、同時に
1.3≦(アジピン酸の重量%/ポリエチレングリコー
ルの重量%;以下R値と称する)≦6を満足するもので
ある。
【0015】この組成を満たすことで、実質的に95℃
以下、好ましくは85〜95℃の染色温度で、キャリア
ーを用いることなくポリエステル繊維を染色する際に使
用する、あらゆる種類の分散染料に対し十分な染色性、
堅牢性を示す。ここで、「95℃で染色可能」とは、加
圧下で使用できない染色機を用いることができるという
極めて大きな利点を有する。これ以上の染色温度、例え
ば、98℃でさえ、実質には、若干の温度変動により染
色機内部に圧力がかかるために高圧対応の染色機が必要
となる。
【0016】本発明の目的を達成するためには、ポリエ
チレングリコールとアジピン酸の2つの共重合成分が必
要不可欠である。平均分子量500〜4,000のポリ
エチレングリコールのみを1.5〜4.5重量%共重合
したポリエチレンテレフタレートやアジピン酸のみを9
〜6重量%共重合したポリエチレンテレフタレートでは
95℃で十分な染色性を示さない。
【0017】共重合成分に用いるポリエチレングリコー
ルは、染色性を高めるのに極めて有効な共重合成分であ
る。平均分子量が500未満の場合には、かなり低分子
量のポリエチレングリコールが含まれるために、高真空
下での重合時に減圧留去され、得られたポリマーに含ま
れるポリエチレングリコール量が一定とならない。従っ
て、原糸の強伸度特性、染色性、熱特性等が均一になら
ず、製品として特性のばらついたものとなってしまう。
一方、平均分子量が4,000を越える場合には、ポリ
マー内に共重合されない高分子量のポリエチレングリコ
ールが多くなるため、染色性、耐光性、ドライクリーニ
ング堅牢性の低下が起こる。
【0018】共重合成分として用いるアジピン酸は、繊
維の非晶構造の適当な乱れを起こすために染色性の向上
に寄与する。もちろん、非晶構造の乱れを起こさせて染
色性を高める共重合モノマーとしては、アジピン酸(炭
素数6)以外の脂肪族ジカルボン酸成分も有効である。
しかしながら、炭素数が5以下の脂肪族ジカルボン酸で
は、ポリマーの熱安定性が低くなり、白度の低下が生じ
る。ちなみに、熱安定性の低下は、カルボキシル基に隣
接するメチレン基のモル数に比例するので、このような
結果が生じる。
【0019】一方、炭素数が7以上の脂肪族ジカルボン
酸成分を用いると、非晶部分の乱れが大きくなりすぎる
ために、堅牢性、特に、ドライクリーニング堅牢性、洗
濯堅牢性が著しく低下する。ところが、アジピン酸を用
いた場合には、これらの問題点が特異的に小さかった。
このように、アジピン酸は非常に限られた、狭い範囲か
ら選択された、極めて優れた共重合成分である。この理
由については定かではないが、以下のように推定でき
る。すなわち、アジピン酸は4個のメチレン基を有して
いるが、この長さはテレフタル酸のベンゼン環の長さに
ほぼ相当する。
【0020】従って、本発明のポリエステル繊維は、屈
曲性基によって非晶部の構造は乱されるものの、その程
度が必要最小限に留まるために、熱特性などがポリエチ
レンテレフタレート繊維に最も近い改質ポリエステル繊
維となる。分散染料を用いて、95℃での充分な染色
性、堅牢性を確保するには、ポリエチレングリコールの
量としては、1.5〜4.5重量%である。ポリエチレ
ングリコールの量が1.5重量%未満では染色性が悪く
なる。4.5重量%より多い場合には、耐光堅牢性が悪
くなるほか、ポリマーの重合段階での着色が起こった
り、高真空重合において、突沸や泡立ち現象が顕著とな
り、重合しにくいポリマーとなる。染色性、堅牢性と重
合性のバランスが最もよい量は、2.0〜4.0重量%
である。
【0021】一方、アジピン酸の最適な量は、ポリエチ
レングリコールの量により異なるが9〜6重量%、好ま
しくは8〜6.5重量%である。アジピン酸の量が6重
量%未満ならば、95℃での染色性が不十分となる。ま
た、9重量%を超える場合には、ドライクリーニング堅
牢性、耐熱性が低下し、しかも、紡糸性の劣る繊維しか
得られない。染色性と堅牢性のバランスがよく、しか
も、熱安定性、紡糸安定性の最もよい共重合比率を選ば
ないと、実用性はない。染色性を高めるためには、ポリ
エチレングリコールの量をできるだけ多く共重合する方
がよい。しかし、ポリエチレングリコールの量が多すぎ
ると、ドライクリーニング堅牢性、耐光性が悪くなる。
【0022】そこで、ポリエチレングリコールの量を多
くする代わりに、適度な量のアジピン酸を共重合させる
ことで、ドライクリーニング堅牢性、耐光性の低下を抑
えることができることを見い出した。このような共重合
組成であるためには、1.3≦R≦6なる関係を満たす
ことが必要である。ただし、この不等式で表される組成
を選択した場合でも、アジピン酸の重量%/ポリエチレ
ングリコールの重量%の値が大きくなるほど、風合いが
堅くなる傾向がある。風合いをよくするためには、この
R値が好ましくは4以下、より好ましくは3以下を選択
するのが望ましい。
【0023】本発明のポリエステル繊維において、10
重量%以内の範囲で、好ましくは5重量%以内の範囲で
他のジオール、オキシカルボン酸などのポリエステル形
成能のある共重合成分を含有させてもよい。ただし、こ
の場合、堅牢性の低下が起こらない程度の共重合成分で
ある必要がある。更に、各種の添加剤、例えば、艶消し
剤、熱安定剤、消泡剤、整色剤、難燃剤、酸化防止剤、
紫外線吸収剤、赤外線吸収剤、結晶核剤、蛍光増白剤な
どを必要に応じて共重合、または混合してもよい。
【0024】本発明のポリエステル繊維を構成するポリ
マーは、通常のポリエチレンテレフタレートの製造工程
において、例えば、重縮合が完結する以前の任意の段階
で、ポリエチレングリコールの場合にはそのまま、アジ
ピン酸の場合にはそのまま、あるいは、モノメチルエス
テル、ジメチルエステル、ジエチルエステル、ビス(オ
キシエチル)エステルなどの低級アルキルエステルとし
て、反応系に添加し共重合することによって製造でき
る。その際、これらの共重合成分は、そのまま、あるい
は、エチレングリコールなどの適当な溶剤に分散、溶
解、または加熱処理してから添加することができる。
【0025】本発明のポリエステル繊維では、動的粘弾
性測定から求められる損失正接のピーク温度が90〜1
10℃であることが必要である。これは、この範囲で本
発明が求める染色性、堅牢性が確保できるからである。
損失正接のピーク温度は、非晶部分の分子密度に対応す
るので、この値が小さくなるほど染料が非晶部分に入り
易くなる、すなわち、染色性が高くなると言える。
【0026】本発明の場合、110℃を越えると染色性
改善効果が小さく、より高い温度での染色が必要となる
ので好ましくない。しかし、低ければよいというわけで
はなく、低すぎると伸度が大きすぎたり、熱セット時の
硬化による風合いの悪化、ドライクリーニング堅牢性の
低下の問題が出てくる。実用的には90〜110℃であ
るが、好ましくは98〜105℃である。
【0027】本発明のポリエステル繊維において、95
℃で染色した時の深色度であるK/Sは20以上、好ま
しくは20.5以上である。K/Sの測定方法は実施例
の(4)の方法に従う。染色性の評価に用いた染料は大
きな分子構造を有しているので、この染料を用いて、高
い染色性が得られるならば、どのような種類の分散染料
を用いても高い染色性が確保できる。この場合の高い染
色性とはK/Sが20以上を指す。従って、95℃で染
色をした場合、K/Sが20以上ならば通常のポリエス
テル繊維を130℃染色した時の同等の発色性が発現さ
れたものと考えることができる。
【0028】こうして染色された染色物が高い堅牢性を
示すためには、ドライクリーニング堅牢性、耐光堅牢性
が3級以上であること、好ましくは3〜4級以上が必要
である。特に、ウールとの混用ではアウターに使用する
ことが前提となるので、耐光堅牢性としては4級以上あ
ることが好ましい。本発明でのドライクリーニング堅牢
性は、液汚染を評価するものである。これらの堅牢性の
評価方法については、実施例に記載する。尚、堅牢性の
評価項目としては、水堅牢性、洗濯堅牢性、昇華堅牢
性、摩擦堅牢性等多岐に渡るが、本発明者らの検討によ
れば、ドライクリーニング堅牢性が3級以上あれば、本
発明のポリエステル繊維においては残りの堅牢性はすべ
て工業的に問題のないレベルであることが分かってい
る。
【0029】本発明のポリエステル繊維は、巻取速度
1,500m/min程度で未延伸糸を、2〜3.5倍
程度延撚する通常法、あるいは、紡糸−延撚工程を直結
した直延法で得ることができる。5,000m/min
以上の巻取速度の高速紡糸方法によってもできないこと
はないが、非晶部分の配向性が低くなりすぎ、堅牢性が
低下するため、あまり好ましい紡糸方法でない。紡糸条
件としては、特に限定されるものはなく、公知の条件で
紡糸することが可能である。
【0030】本発明のポリエステル繊維をウールと混用
する場合、繊維形態に特に限定はないが、加工糸として
用いることが好ましい。加工糸としては、嵩高加工糸を
用いることが好ましく、これは、ふくらみ感、バルキー
性が消費者から望まれていること、加工糸形態がウール
のクリンプ形態の糸形状に類似して、交撚、交絡等の手
段でよく馴染みやすいからである。かかる嵩高加工糸の
具体的形態は仮撚加工やプレリヤ加工糸(2段熱処理
糸)が好ましい。他に押込み加工やねじり加工糸等も使
用できる。
【0031】嵩高加工糸の製造方法は特に限定されるも
のではない。例えば、仮撚加工糸、プレリヤ加工糸では
通常の旋回式熱処理加工が適用できる。また、摩擦円板
式、摩擦ベルト式、流体旋回ノズル式等の加工方法によ
っても製造できる。尚、嵩高加工糸に供する原糸として
は、通常の延伸糸の他に、半延伸糸を嵩高加工時に延伸
と同時に加工糸にすることも可能である。
【0032】こうして得られる加工糸の物性としては、
強度4.0〜5.0g/d、伸縮回復率が15〜40%
程度である。本発明で用いるポリエステル繊維をウール
に混用する割合は、ポリエステルの機能性を発揮させ、
また、ウールの風合い、色相外観を良好に保つ観点か
ら、含まれるポリエステル繊維の量は、25〜75重量
%、好ましくは40〜75重量%である。
【0033】本発明において、ポリエステル繊維とウー
ルからなる布帛の形態としては、特に制限はないが、風
合いの面から、ポリエステル繊維をタテ糸あるいは、ヨ
コ糸に配置した交織織物や編物の表あるいは、裏に配置
するリバ−シブル編物が好ましい。交織織物の場合に
は、エステル繊維をタテ糸に用いると、機能性がより発
揮されるので好ましい。ヨコ糸にウールを用いると、起
毛性が向上し、ソフトな風合い効果が得られる。リバー
シブル編物の場合には、例えば、裏面に吸水性、吸湿
性、表面にストレッチ性、強力を付与できるので好まし
い。
【0034】別の形態としては、混繊、交撚、合糸、交
絡する方法があり、ポリエステル繊維とウールとの分散
性が高まって、同色性、風合い、機能面がより改善され
て好ましい。特に、芯部にポリエステル繊維、鞘部にウ
ールを配置するように混合した鞘芯複合糸や交撚糸は天
然素材の風合いを保持しつつ、ストレッチ性、防シワ性
などの機能をも付与でき好ましい。布帛形態としては、
織物、編物のみならず、不織布も含まれる。
【0035】
【実施例】以下、実施例を挙げて本発明をより詳細に説
明するが、言うまでもなく実施例のみに本発明は限定さ
れるものでない。尚、実施例中の主な測定値は以下の方
法で測定した。 (1)ポリマーの還元粘度(ηcp/C) o−クロロフェノールを溶媒として、ポリマー濃度1.
0%、35℃にて測定した。
【0036】(2)強度、伸度 オリエンテック社製テンシロンを用い、糸長20cm、
引張速度20cm/minの条件で測定した。 (3)損失正接 オリエンテック社製レオバイブロンを用い、乾燥空気
中、試料重量約0.1mg、測定周波数110Hz、昇
温速度5℃/分にて、各温度における損失正接(tan
δ)、および動的弾性率を測定した。その結果から、損
失正接−温度曲線を求め、この曲線上で損失正接のピー
ク温度Tmax(℃)を求めた。昇温速度5℃/min、測
定周波数110Hzで求めた。
【0037】(4)ポリエステル繊維の吸尽率、深色度
(K/S)測定(染色性の評価) ポリエステル繊維の染色能力は以下の方法を用いて測定
した。試料はポリエステル繊維の一口編地を用い、スコ
アロール400を2g含む温水を用いて、70℃、20
分間精練処理し、タンブラー乾燥機で乾燥させ、次い
で、ピンテンターを用いて、180℃、30秒の熱セッ
トを行ったものを使用した。
【0038】(イ) 吸尽率は、40℃から95℃に昇温
後、更にそのまま1時間保持した後の吸尽率で評価し
た。染料は、カヤロンポリエステルブルー3RSF(日
本化薬社製)を使用し、6%owf、浴比1:50で染
色した。分散剤はニッカサンソルト7000(日華化学
社製)を0.5g/リットル使用し、酢酸0.25ml
/リットルと酢酸ナトリウム1g/リットルを加え、p
Hを5に調整した。吸尽率は、染料原液の吸光度A、染
色後の染液の吸光度aを分光光度計から求め、以下の式
に代入にて求めた。吸光度は当該染料の最大吸収波長で
ある580nmでの値を採用した。 吸尽率=(A−a)/A×100 (%)
【0039】(ロ) どの程度濃色に染まったかを表す深
色度は、K/Sを用いて評価した。この値は、染色後の
サンプル布の分光反射率Rを測定し、以下に示すクベル
カ−ムンク(Kubelka−Munk)の式から求め
た。この値が大きい程、深色効果が大きいこと、すなわ
ち、よく発色されていることを示す。Rは、当該染料の
最大吸収波長である580nmでの値を採用した。 K/S=(1−R)2 /2R
【0040】(5)染色堅牢性 各種の染色堅牢性は、JIS法に従って評価した。例え
ば、ドライクリーニング堅牢性は、JIS−L−086
0、耐光堅牢性は、JIS−L−0842に従った。
【0041】(6)伸縮回復率 1周が80cmで10回巻きの加工糸のカセを作り、9
0℃、20分間温水にて無緊張状態で処理を行った後、
2時間以上乾燥した。ついで、水中にて100mg/d
の荷重を掛けた時のカセの長さをXとする。除荷重後に
2mg/dの荷重を掛けて2分後に測定した時のカセの
長さをyとする。これらの値から、以下の式に従って、
伸縮回復率を算出した。 伸縮回復率=100×(x−y)/y
【0042】(7)L値 黒発色の明度を多光源分光測色計を用いて測定した。 (8)染色堅牢性 各種の染色堅牢性は、JIS法に従って評価した。例え
ば、ドライクリーニング堅牢性は、JIS−L−086
0、耐光堅牢性は、JIS−L−0842に従った。
【0043】(9)同色性 各実施例で得られた染色製品を分解し、ポリエステル繊
維とウールを取り出し、各々の色相を比較して級判定し
た。5級が最もよく似ている、3級がやや似ている、1
級g似ていない、とし、4級と2級をその間の級として
5段階評価を行った。
【0044】
【実施例1】テレフタル酸ジメチル107部、エチレン
グリコール71.8部、アジピン酸ジメチル(以下、D
MAと略記する)8.42部、エステル交換触媒とし
て、酢酸マンガン4水和塩0.05部を仕込み、150
℃から240℃に徐々に加熱し、3時間を要してメタノ
ールを留出しつつエステル交換反応を行った。ついで、
分子量1,000のポリエチレングリコール(以下、P
EG1000と略記する)4.76部、安定剤として、
トリメチルフォスフェート0.07部および重縮合触媒
として三酸化アンチモン0.05部、艶消し剤として二
酸化チタン0.1部を添加し、50分かけて前重合を行
った。更に徐々に減圧していき、最終的には0.5To
rrで、285℃、2時間40分反応を行い、ηsp/
c=0.87の改質ポリエステルをチップ形態で得た。
【0045】こうして得られたポリマーの組成は、1
−NMRの分析によりPEG1000、4wt%、DM
A7重量%であった。得られたポリマーチップを150
℃で、100ml/minの窒素気流下、20時間乾燥
させた。該乾燥チップを孔数36個の一重配列の紡口を
用い、紡糸温度295℃、紡糸速度1500m/min
で未延伸糸を作成した。
【0046】次いで、得られた未延伸糸をホットロール
80℃、ホットプレート160℃、延伸倍率2.804
倍、延伸速度800m/minで延撚を行い、75デニ
ール36フィラメントの延伸糸を得た。得られたポリエ
ステル繊維は、強度5.0g/d、伸度40%、Tmax1
01.0℃、沸水収縮率9%の糸物性を有していた。
【0047】また、(4)の方法で、測定したK/Sは
21.8であった。本発明のポリエステル繊維の染色性
は、通常法で紡糸されたポリエチレンテレフタレート繊
維(Tmax:136℃)の分散染料による130℃、60
分の染色性と比較することで評価できる。この場合、K
/Sで比較するのが、直接色の濃さの比較ができるので
よい。ちなみに、通常法によるポリエチレンテレフタレ
ート繊維の130℃、60分染色におけるK/Sは2
1.4であった。この結果は、本実施例の95℃、60
分における染色性が、通常法によるポリエチレンテレフ
タレート繊維の130℃、60分の染色性と同等である
ことを示すものである。
【0048】得られた延伸糸を旋回式で熱処理し嵩高加
工糸を得た。加工条件は、熱板温度195℃、加工撚数
3400回/m、フィード率−0.2%とした。つい
で、該加工糸を150デニールの双糸にし、ウールの4
8番単糸と交編して、表面ポリエステル、裏面ウールの
両面リバーシブル交編編物を編成した。ポリエステルの
混用率は45重量%、編成条件は20ゲージ、釜径20
インチとした。得られたエステル加工糸の伸縮回復率は
36%であった。
【0049】得られた編地を常法に従い、染色を行っ
た。染料としては、分散染料としてDianix Black BG-FS
(200%品、三菱化成製)、酸性染料としてKayakala
n Black BGL (日本化薬製)を用いた。濃度は各々7%
owfとし、弱酸性で分散剤存在下、95℃にて一浴染
色を行った。染色後、ソーダ灰1g/リットル、非イオ
ン洗浄剤0.5g/リットルの弱アルカリ浴で70℃、
20分ソーピングを行った。得られた染色製品の同色性
は5級であり、L値が11.8と優れたものであった。
染色物のドライクリーニング堅牢性、耐光堅牢性はいず
れも4級であった。それらの結果を表1に示す。
【0050】
【実施例2〜4】実施例1と同様の方法で共重合組成を
いろいろ変化させて、重合・紡糸実験を行った。その結
果を表1にまとめた。いずれの染色製品についても良好
な染色性、同色性、堅牢性、力学物性を示した。それら
の結果を表1に示す。
【0051】
【比較例1〜6】表1の構造を有する共重合ポリエステ
ルを実施例1と同様に重合して、その繊維を作成した。
本発明の共重合組成からはずれるものは、染色性、同色
性または堅牢性が悪く、実用に耐えない。それらの結果
を表1に示す。
【0052】
【表1】
【0053】
【参考例1】実施例1の染色を130℃で行ったとこ
ろ、発色性、同色性に変化はあまりなかった。しかしな
がら、ウールが熱劣化をうけて、風合いがかなり悪化し
た。また、実施例1の編物を染料を加えず、130℃、
60分間高圧染色と同じ状況に曝したところ、ウールの
部分のみが若干黄色くなっていた。もちろん、風合いも
悪化していた。
【0054】
【発明の効果】常圧可染性ポリエステルを混用すること
によって、ウールを熱劣化させることなく、本来の風合
い、物性を最大限に発揮し、かつポリエステルの機能性
を兼備したポリエステル繊維とウールとの混合布帛染色
製品を提供できる。

Claims (1)

    【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】 ポリエステル繊維とウールとの混合布帛
    染色製品において、ポリエステルが平均分子量500〜
    4,000のポリエチレングリコール1.5〜4.5重
    量%とアジピン酸9〜6重量%を共重合し、同時に1.
    3≦アジピン酸の重量%/ポリエチレングリコールの重
    量%≦6を満足するポリエチレンテレフタレートであっ
    て且つ損失正接のピーク温度が90〜110℃のポリエ
    ステル繊維とウールを用いたことを特徴とする混合布帛
    染色製品。
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