JPH09127321A - 回折光学素子 - Google Patents
回折光学素子Info
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- JPH09127321A JPH09127321A JP23010495A JP23010495A JPH09127321A JP H09127321 A JPH09127321 A JP H09127321A JP 23010495 A JP23010495 A JP 23010495A JP 23010495 A JP23010495 A JP 23010495A JP H09127321 A JPH09127321 A JP H09127321A
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Abstract
要次数光によるフレアの発生等を有効に防止し得る回折
光学素子を提供する。 【解決手段】 積層された複数の光学材料11,12 を有
し、その少なくとも一つの互いに異なる光学材料の境界
面にレリーフパターン21を形成してなる回折光学素子に
おいて、レリーフパターン21を形成した境界面に接する
互いに異なる光学材料11,12 を、それらの屈折率n
1(λ) ,n2(λ) が、n1(λ) >n2(λ) 、〔{n1(λ
2)−n2(λ2)}/{n1(λ1)−n2(λ1)}〕>〔{n
1(λ2)−1}/{n 1(λ1)−1}〕(ただし、λ1 <λ
<λ2 ;λ1 ,λ2 は任意の光の波長)を満たすものを
もって構成する。
Description
用する回折光学素子に関するものである。
る回折レンズを用いる光学系には、従来の屈折レンズを
用いる場合に比べて、以下のような特長を有することが
知られている。 回折レンズによって非球面波を容易に生成できるの
で、収差補正上効果的である。 回折レンズは、実質的に厚みを持たないので、光学
系をコンパクトにできると共に、設計の自由度を上げる
ことができる。 屈折レンズでいう分散特性に相当する量が、回折レ
ンズでは逆の値を持つので、色収差を効果的に補正する
ことができる。
光学系の性能を向上させることに関しては、例えば、Bi
nary Optics Technology;The Theory and Design of Mu
lti-Level Diffractive Optical Element,Gary J.Swans
on,Technical Report 854,MIT Lincoln Laboratory,Aug
ust 1989. に詳しく記述されている。
光学素子には、従来の屈折素子にはない多くの有用な特
長があるが、他方では、回折効率が波長に依存するため
に、以下に説明するような種々の問題がある。例えば、
光学系に適用する回折光学素子は、レンズ素子として利
用する場合が多いが、このような用途においては、複数
の回折光(複数の焦点)が存在するのは、一般に好まし
くない。そこで、回折レンズにおいては、一般に、図1
9に示すように、使用する波長で透明な基材10に、断
面形状が鋸歯波状のレリーフパターン20を形成して、
特定次数の回折光にエネルギーを集中させるようにして
いる。
形状を鋸歯波状に加工すると、その溝深さによってエネ
ルギーを集中できる波長が異なるため、波長幅を有する
帯域光のエネルギーを特定次数の回折光に集中させるこ
とができなくなる。このような現象は、例えば、レーザ
のような単色と見なせる光を利用する場合には問題とな
らないが、カメラのように白色光を利用する光学系にお
いては、無視できない問題となる。
ある色収差補正効果を実現する場合には、使用する波長
が必然的に複数であるために、特定の波長の光で回折効
率を最適化すると、その他の波長では回折効率が低下
し、特に、可視帯域光で撮像する撮像光学系に適用する
場合には、回折効率の波長依存特性によって、色むらや
不要次数光によるフレアが生じるという問題がある。
いて、基材10としてBK7を用い、レリーフパターン
20を、波長λ=520nmにおいて1次回折効率が1
00%となるような溝深さで形成した場合の1次回折効
率の波長依存特性を示すものである。図20から明らか
なように、一般に可視波長領域と見なせるλ=400n
mからλ=700nmにおいて、回折効率は、最適化し
たλ=520nmから離れるに従って減少し、特に、短
波長領域での低下が著しいことがわかる。このような所
望次数における回折効率の低下は、不要次数光の増加と
して、光学系に悪影響を与えることになる。
されたもので、回折効率の波長依存を低減して、色むら
や不要次数光によるフレアの発生等を有効に防止し得る
よう適切に構成した回折光学素子を提供することを目的
とするものである。
め、この発明は、積層された複数の光学材料を有し、そ
の少なくとも一つの互いに異なる光学材料の境界面にレ
リーフパターンを形成してなる回折光学素子において、
前記レリーフパターンを形成した境界面に接する互いに
異なる光学材料を、それらの屈折率n1(λ) ,n2(λ)
が、
ある。
nm、λ2 =700nmとするのが、適用可能な光学材
料の種類が多く、光学材料の組み合わせの最適化の点で
好ましい。
l2 Oを含むガラスを適用することが、これと対をなす
屈折率n1(λ) の光学材料の選択の範囲を広げる点で好
ましい。
て、その周期構造のピッチTが、
で好ましい。
フパターンは、図1に示すような位相シフト関数φ
(x)で表すことができる。このφ(x)は、レリーフ
パターンの波面変調作用を特長づける関数で、その形状
は、レリーフパターンの断面形状と一致した周期関数で
ある。ここで、位相シフト関数φ(x)の振れ幅(以
後、これを位相振幅と呼ぶことにする)aを用いれば、
図1に示す位相シフト関数φ(x)で表されるレリーフ
パターンのm次回折効率ηm は、
屈折率を1、基材の屈折率をn、溝深さをd、および光
の波長をλとして、
効率が100%となるように最適化した溝深さd0 は、
して位相振幅aが波長に依存することを意味し、この位
相振幅aの波長依存によって、(1)式から明らかなよ
うに、回折効率の波長依存が引き起こされる。図2は、
図20に示した回折効率の波長依存特性に対応する位相
振幅の波長依存特性を示すものである。
するために、(4)式から位相振幅の波長依存を決定す
る要素R(λ),D(λ)を、以下のように定義する。
(λ),D(λ)の位相振幅の波長依存特性を示すもの
である。図3から明らかなように、R(λ),D(λ)
は、波長の増加に伴ってともに単調に減少するが、その
変化は、R(λ)よりもD(λ)のほうが大きい。この
ことから、レリーフパターンの回折効率の波長依存は、
もっぱらD(λ)に依存していることがわかる。
の条件下において、上記のR(λ)がD(λ)の波長依
存を打ち消すように作用し、その結果、位相振幅の波長
依存が低減し、回折効率の波長依存特性を改善できるこ
とを見いだした。すなわち、レリーフパターンを、異な
る光学材料の境界面に形成し、それぞれの光学材料を高
屈折率低分散および低屈折率高分散の組み合わせ(ただ
し、屈折率および分散の高低は、相対的なもの)とす
る。このように構成すると、(4)式に相当する位相振
幅の波長依存は、
相当する位相振幅の波長依存を決定する要素R′
(λ),D(λ)は、
れぞれ高屈折率低分散材料および低屈折率高分散材料の
屈折率である。
空気との屈折率の差を利用して構成していたレリーフパ
ターンを、異なる光学材料の屈折率の差を利用して構成
し、さらにその組み合わせを最適化することによって、
回折効率の波長依存を改善する。具体的には、レリーフ
パターンを形成した境界面に接する互いに異なる光学材
料の屈折率n1(λ) ,n2(λ) が、
るD(λ)の寄与に対して、従来は(5)式で定義され
るR(λ)が対をなして、むしろ回折効率の波長依存を
増加させるように作用していたが、この発明では、
(8)式の条件を満足することにより、従来のR(λ)
の作用と比較して、(7)式で定義されるR′(λ)
が、回折効率の波長依存を低減させる方向に作用するこ
とになる。なお、(8)式において、使用波長幅の上限
(λ2 )および下限(λ1 )は、特に限定されるもので
はないが、実用的には、通常のカメラ等に用いられる可
視光の波長領域に適用するのが、適用可能な光学材料の
種類が多く、光学材料の組み合わせの最適化にとって有
利であることから、λ1 =400nm、λ2 =700n
mとするのが最も効果的である。
フパターンを構成したものとして、例えば、特開平2−
43503号公報(従来例1)に複合光学素子が開示さ
れている。しかし、従来例1は、回折レンズを積層する
ことにより、個々の回折レンズのパワー負担を減少させ
るようにしたもので、この発明の回折光学素子とは、そ
の目的を全く異にすると共に、当然ながらこの発明の特
徴である光学材料の特性に関しては何ら言及されていな
い。
のとして、特開平5−66370号公報(従来例2)
に、波長選択性位相格子光学的ローパスフィルタが開示
されている。このローパスフィルタにおいては、緑色光
(G)波長における光学材料の屈折率差をゼロにするこ
とにより、その波長における回折作用を実質的に無くし
て、G波長近傍における遮断周波数を高くしている。つ
まり、2種類の光学材料の分散を異なるものとすること
によって、G波長から離れるほど遮断周波数が低くなる
ように、すなわち、位相振幅を増加させることによっ
て、回折作用を増加させるように構成している。
の境界面にレリーフパターンを形成する理由は、G波長
における屈折率差をゼロにすることによって、位相振幅
をゼロにするためである。このような構成は、例えば、
特開昭64−61726号公報(従来例3)に開示され
ているように、2種類の光学材料の屈折率差をゼロを中
心にして制御する、一種のスイッチング素子を実現した
ものと同一の思想の上に成り立っている。
に、境界面にレリーフパターンを形成する2種類の光学
材料の屈折率の大小関係が、使用する波長帯域において
反転することがない。また、この発明では、光学材料の
組み合わせを適切に選択することにより、屈折率の波長
依存に伴う作用R′(λ)が、回折光学素子の本質的な
作用D(λ)を打ち消すようにして、回折効率の波長依
存を低減させるようにしているが、このような内容につ
いては、上述した従来例では何ら考慮していない。例え
ば、従来例2の構成においては、確かにG波長において
回折作用をなくすという一種の回折効率の制御を行って
いるが、その周辺の波長における回折作用、つまり回折
効率の波長依存は、必ずしも最適に制御されているとは
いえない。特に、この従来例2についていえば、回折光
学素子の本質的な作用D(λ)に関して全く考慮されて
いない。この発明は、上述した従来例とは、思想が根本
的に異なり、使用する波長帯域全体にわたる総合的な回
折効率に関し、従来にない多大な効果をもたらすもので
ある。
フパターンを形成する2種類の光学材料の屈折率の波長
依存特性の一例を示すものである。ここで、注目すべき
点は、2種類の光学材料の屈折率差が、短波長側で小さ
く、長波長側で大きいことである。このように2種類の
光学材料を選定することにより、図5に示すように、
(7)式で示したR′(λ)が波長の増加に伴って単調
に増加して、D(λ)の効果を打ち消すように作用し、
その結果、(6)式で示した位相振幅の波長依存が低減
されて、回折効率の波長依存が改善される。このような
改善の効果は、図3に示した基材表面にレリーフパター
ンを形成した従来のものと比較して、2種類の光学材料
の特性を、R′(λ)の傾きが増加するように選択した
ときに表れる。
て、(8)式の条件から外れると、基材表面にレリーフ
パターンを形成した従来の回折光学素子と比較して、回
折効率の波長依存が悪化する。例えば、BK7(低屈折
率低分散)とPC(ポリカーボネイト;高屈折率高分
散)との境界面にレリーフパターンを形成すると、その
回折効率の波長依存は、図6に曲線で示すようにな
り、曲線で示す従来の基材(BK7)表面にレリーフ
パターンを形成した回折光学素子における回折効率の波
長依存と比較して悪くなる。なお、図6の曲線および
は、それぞれレリーフの溝深さを、波長λ=520n
mで回折効率が100%となるように設定した場合の波
長依存を示す。このように、光学材料の組み合わせが不
適当であると、むしろ回折効率の波長依存が悪化するた
め、2種類の光学材料の境界面にレリーフパターンを形
成して、回折効率の波長依存を向上させるためには、光
学材料の組み合わせが重要な要素となる。
けるレリーフパターンの溝深さについて言及する。この
発明において、2種類の光学材料の境界面の断面を鋸歯
波状に形成したレリーフパターンの溝深さは、次の
(9)式で表される。これは、基材表面にレリーフパタ
ーンを形成する場合の(3)式に相当する溝深さであっ
て、波長λ0 においてm0 次回折効率が100%となる
ように最適化した溝深さである。
パターンを形成する場合と比較して、一般に深くなる。
しかし、この溝深さが、レリーフパターンのピッチTに
対してある程度深くなると、回折効率の入射角依存が増
大して、光学系への適用の際に問題となる場合があると
共に、回折効率の波長依存に関して、すでに(1)式で
示した関係が不正確なものとなる。このように溝深さが
深いレリーフパターンは、一般に、厚型格子と呼ばれ
る。
さを特徴づけるパラメータとしてのQ値は、溝深さd、
波長λとして、
は、Q<1の条件で分類されるので、この発明にかかる
回折光学素子においても、その周期構造のピッチTが、
Q<1を満たすように構成することが望ましい。すなわ
ち、
れば、特に、Q<0.1のときに、レリーフパターン
は、薄型の性質をよりよく表すことが確認された。した
がって、より好ましくは、Q<0.1を満たすように、
すなわち、
ましい。
レリーフパターンを形成する2種類の光学材料として、
光学ガラスBSM81(オハラ製)と、プラスチック光
学材料PC(ポリカーボネイト)とを用いる。図4は、
それぞれの光学材料の屈折率の波長依存特性を示すもの
で、n1(λ) は高屈折率低分散材料に相当するBSM8
1の屈折率波長依存特性を、n2(λ) は低屈折率高分散
材料に相当するPCの屈折率波長依存特性を示してい
る。かかる光学材料の組み合わせが、位相振幅の波長依
存に及ぼす作用については、図5において既に説明した
ので、以下に、かかる光学材料の組み合わせによって、
位相振幅の波長依存が実際にどのように改善されたか
を、図7を参照しながら説明する。
ので、は、基材(BSM81)の表面にパターンを形
成した従来の回折光学素子の場合を、は、上記の2種
の光学材料(BSM81,PC)の境界面にパターンを
形成したこの実施例による回折光学素子の場合をそれぞ
れ示している。なお、回折効率が最大となるように最適
化した波長は、については520nm、について
は、d-line(587.56nm)とした。この実施例に
おいては、比較的短波長側での位相振幅の波長依存の改
善効果が大きいので、回折効率が最大となるように最適
化する波長は、従来の場合と比較して長波長側に設定す
るのが好ましく、このように設定することにより、使用
波長帯域に亘って位相振幅の変化量をより小さく抑える
ことが可能となる。
特性に対応する回折効率の波長依存特性を示すもので、
は従来の回折光学素子の波長依存特性を、は上記の
2種の光学材料(BSM81,PC)を用いるこの実施
例による回折光学素子の波長依存特性を示している。図
8から明らかなように、この実施例による回折光学素子
によれば、回折効率の波長依存特性を実質的に無視でき
る程度に小さく抑えることができ、改善の効果が著しい
ことが実証された。
料として、プラスチック光学材料PCを用いたが、一般
に、プラスチック光学材料は、低屈折率高分散の特長を
有するので、他のプラスチック光学材料も有効に用いる
ことができる。しかも、プラスチック光学材料は、成形
性に優れているので、回折光学素子をより容易に製造で
きるという利点がある。
を2種類の光学材料の境界面に形成しているので、光学
素子の耐環境性を向上することが可能となる。すなわ
ち、レリーフパターンは、通常の屈折素子(例えば、レ
ンズ)と異なり、その表面が埃や指紋で汚染された場
合、払拭することが一般に困難であるが、この実施例に
かかる回折光学素子では、レリーフパターンを2種類の
光学材料の境界面に形成しているので、汚染の問題が生
じない。
体的構成について説明する。なお、以下に例示する回折
光学素子の全てに共通する特長は、回折効率の波長依存
が改善されたこと、耐環境性が向上されたことにある。
基本的な構成を示すものである。この回折光学素子は、
プリズム作用をなすもので、PCよりなる光学材料11
と、BSM81よりなる光学材料12との境界面に、等
ピッチの鋸歯波状レリーフパターン21を形成したもの
である。また、図10は、図9の変形例を示すもので、
光学材料11,12の境界面のレリーフパターン23
を、集光作用を有するように形成すると共に、光学材料
11の外部と接する面32も集光作用を有するように曲
面としたものである。
ば、素子に入射する光は、特定方向に進行方向が曲げら
れるが、その際に光を曲げる作用の波長依存が、レリー
フパターン21または23(回折面)と、外部に接する
面31または32(屈折面)とで相補的となるので、色
収差が低減されることになる。
に、断面形状が矩形のレリーフパターン22を形成した
ものである。このように、レリーフパターン22の断面
形状を矩形にすれば、複数の次数の回折光を生成するこ
とができると共に、その各次数の回折光の強度分布の波
長依存を防止することができる。したがって、かかる回
折光学素子は、遮断周波数の波長依存を低減した空間的
ローパスフィルタとして好適に用いることができる。
を2面として、それぞれの境界面にレリーフパターン2
1,22を形成したものである。2つの境界面を形成す
る光学材料11,12および13は、中間の光学材料1
2をPC、両側の光学材料11,13をBSM81とす
るか、中間の光学材料12をBSM81、両側の光学材
料11,13をPCとするか、あるいは、それぞれ異な
る3種類の光学材料とする。この回折光学素子によれ
ば、パターンピッチの制限等によって光を曲げる角度が
制限される場合に、各パターン面(回折面)が負担する
曲げ量を低減できるので、所望の特性のものを容易に得
ることができる。
び14を積層して得られる2つの境界面の一方にレリー
フパターン23を、他方に球面33を形成したものであ
る。この場合、レリーフパターン23を形成する光学材
料11,12は、例えば上記のBSM81とPCとの組
み合わせとするが、光学材料14は、任意の光学材料を
用いる。
n2(λ) の低屈折率高分散の光学材料を、少なくともT
l2 Oを含むガラスをもって構成する。一般に、ガラス
材料にTl2 Oを添加すると、高屈折率高分散へと変化
し、その変化の軌跡は、ガラスマップ上で低屈折率高分
散の方へ曲がった弓状になる。例えば、SiO2 (シリ
カガラス=石英ガラス)にTl2 Oを添加すると、図1
4に示すように変化する。なお、図14は、SiO2 に
Tl2 Oを0mol %から25mol %まで添加した場合を
示している。
l2 Oガラスの分布は、市販のガラスに比べて低屈折率
高分散となる。したがって、このSiO2 −Tl2 Oガ
ラスを低屈折率高分散の光学材料として用いれば、これ
と境界をなす屈折率n1(λ)の高屈折率低分散の光学材
料の選択範囲が広がり、市販のガラスを使用することも
可能となる。
光学材料は、SiO2 −Tl2 Oの2成分ガラスに限ら
ず、さらに他の成分を添加することができる。このよう
に他の成分を添加すれば、添加する成分やその添加量に
よって、ガラスの屈折率および分散が変化し、図14に
示す曲線の周辺に分布する様々なガラスを得ることが可
能となる。
iO2 に限らず、B2 O3 (酸化ほう素)等の他の材料
を用いることができる。このように元の材料を変える
と、図14において、Tl2 Oおよびその他の成分を添
加したときのガラスマップ上での軌跡の出発点が変わ
り、また変化の仕方も変わるので、レリーフパターンを
形成する2種類の光学材料の組み合わせ範囲をより広く
することが可能となる。
を他の材料に変えたり、Tl2 Oおよび他の成分の添加
量を、連続的に変えたりすることができるので、ガラス
マップ上の所定の範囲内に分布する任意のガラスを得る
ことが可能になる。なお、Tl2 Oの添加量は、30mo
l %を越えると、ガラスを生成することが困難になるの
で、30mol %以下とするのが望ましい。
率高分散材料に含まれるTl2 Oの割合は、7.5mol
%以上が特に好ましい。このようにすれば、n1(λ)の
高屈折率低分散材料の市販のガラスと組み合わせる場
合、低屈折率高分散材料がプラスチック光学材料の場合
に比べて、上記(11)式の右辺の値を小さくでき、し
たがってレリーフパターンのピッチをより小さくするこ
とができるので、光を曲げる角度の範囲を広くでき、回
折光学素子の適用範囲を広げることができる。
ンを形成する2種類の光学材料として、光学ガラスLA
L11(オハラ製)と、SiO2 −Tl2 O(Tl
2 O:8.75mol %)とを用いる。図15は、それぞ
れの光学材料の可視域における屈折率の波長依存特性を
示すもので、n1(λ) は高屈折率低分散材料に相当する
LAL11の屈折率波長依存特性を、n2(λ) は低屈折
率高分散材料に相当するSiO2 −Tl2 Oの屈折率波
長依存特性をそれぞれ示している。
もので、は、基材(LAL11)の表面にレリーフパ
ターンを形成した従来の回折光学素子の場合を、は、
上記2種の光学材料(LAL11,SiO2 −Tl
2 O)の境界面に鋸歯形状のレリーフパターンを形成し
たこの実施例の回折光学素子の場合をそれぞれ示してい
る。なお、回折効率が最大となるように最適化した波長
は、については510nm、についてはd-line(5
87.56nm)とした。この実施例においても、第1
実施例の場合と同様に、比較的短波長側での位相振幅の
波長依存の改善効果が大きいので、回折効率が最大とな
るように最適化する波長は、従来の場合と比較して長波
長側に設定するのが好ましく、これにより使用波長帯域
に亘って位相振幅の変化量をより小さく抑えることが可
能となる。
依存特性に対応する回折効率の波長依存特性を示すもの
で、は従来の回折光学素子の波長依存特性を、は上
記2種の光学材料(LAL11,SiO2 −Tl2 O)
を用いるこの実施例による回折光学素子の波長依存特性
を示している。図17から明らかなように、この実施例
による回折光学素子によれば、回折効率の波長依存特性
を実質的に無視できる程度に小さく抑えることができ、
改善の効果が著しいことがわかる。
2種類の光学材料は、上記の例に限らず、種々の組み合
わせが可能である。その幾つかの組み合わせについて、
従来の回折効率と、この実施例により改善された回折効
率とを、波長400nmから700nmの範囲で、50
nmごとに表1に比較して示す。なお、表1において、
各欄の上段は市販ガラス(材料1)を、下段はSiO2
−Tl2 Oガラスで、Tl2 Oを表記の割合(mol %)
で含むもの(材料2)をそれぞれ示す。また、各欄にお
いて、従来の回折効率は、その左欄上段の材料1の表面
にレリーフパターンを形成した回折光学素子のものを示
し、この実施例(本発明)にかかる回折効率は、その左
欄上段の材料1と、下段の材料2との境界面にレリーフ
パターンを形成した回折光学素子のものを示す。この表
1から、この実施例による回折光学素子によれば、いず
れの組み合わせにおいても、回折効率の波長依存が著し
く改善されていることがわかる。
0nmの範囲について示したが、上記(8)式で示した
使用波長帯域の上限および下限は、この帯域に特に限定
されるものではない。しかし、通常のカメラ等の大半の
光学機器は、可視領域で用いられていると共に、この領
域で適用可能な光学材料の種類は多く、材料の組み合わ
せの最適化にとって有利であるので、この実施例による
回折光学素子も、実用的には、可視光の波長領域に適用
することが最も効果的である。
もの以外にも、連続的に変えることができ、これにより
図14の曲線上に分布するガラスを連続的に得ることも
できる。さらに、SiO2 −Tl2 Oガラスに他の成分
を添加して、屈折率および分散を微調整することによ
り、図14の曲線からわずかに離れたガラスを得ること
もできる。また、母体材料をSiO2 から、例えば、B
2 O3 等の他の材料に置き換えることもでき、この場合
も、Tl2 Oの添加量により、屈折率と分散を変えるこ
とができる。
量を調節することにより、所望の低屈折率高分散のガラ
スを容易に得ることができるので、使用できる屈折率n
1(λ) の高屈折率低分散材料も非常に多くなる。その結
果、上記(8)式を満たす組み合わせが多数存在するこ
とになり、市販のガラスも数多く使用することができる
ようになる。
と同様に、レリーフパターンを2種類の光学材料の境界
面に形成しているので、汚染の問題がなく、したがって
光学素子の耐環境性を向上することができる。また、特
に、この実施例では、2種類の光学材料をともにガラス
とすることができるので、プラスチック等を用いる場合
に比べて、光学性能、耐久性に優れた回折光学素子を得
ることができる。
具体的には、図9〜13と同様に構成することができ
る。すなわち、図9に示す構成においては、光学材料1
1をSiO2 −Tl2 Oガラス、光学材料12をLAL
11として、それらの境界面に、等ピッチの鋸歯波状レ
リーフパターン21を形成する。また、図10に示す構
成においては、SiO2 −Tl2 Oガラスよりなる光学
材料11とLAL11よりなる光学材料12の境界面の
レリーフパターン23を集光作用を有するように形成す
ると共に、光学材料11の外部と接する面32も集光作
用を有するように曲面とする。
と同様に、素子に入射して特定方向に進行方向を曲げら
れる光の波長依存が、レリーフパターン21または23
(回折面)と、外部に接する面31または32(屈折
面)とで相補的となるので、色収差を低減することがで
きる。
l2 Oガラスよりなる光学材料11とLAL11よりな
る光学材料12の境界面に、断面形状が矩形のレリーフ
パターン22を形成する。かかる回折光学素子によれ
ば、第1実施例の場合と同様に、複数の次数の回折光を
生成することができると共に、その各次数の回折光の強
度分布の波長依存を防止することができるので、遮断周
波数の波長依存を低減した空間的ローパスフィルタとし
て、好適に用いることができる。
材料が接する境界面を2面として、それぞれの境界面に
レリーフパターン21,22を形成する。この場合、2
つの境界面を形成する光学材料11,12および13
は、中間の光学材料12をSiO2 −Tl2 Oガラス、
両側の光学材料11,13をLAL11とするか、中間
の光学材料12をLAL11、両側の光学材料11,1
3をSiO2 −Tl2 Oガラスとするか、あるいは、そ
れぞれ異なる3種類の光学材料とする。この回折光学素
子によれば、第1実施例の場合と同様に、パターンピッ
チの制限等によって光を曲げる角度が制限される場合
に、各パターン面(回折面)が負担する曲げ量を低減で
きるので、所望の特性のものを容易に得ることができ
る。
料11,12および14を積層して得られる2つの境界
面の一方にレリーフパターン23を、他方に球面33を
形成する。この場合、レリーフパターン23を形成する
光学材料11,12は、上記のSiO2 −Tl2 Oガラ
スとLAL11との組み合わせとするが、光学材料14
は、任意の光学材料を用いる。
限定されるものではなく、幾多の変形または変更が可能
である。例えば、図9〜13においては、透過型の回折
光学素子の具体的構成について示したが、この発明にか
かる回折光学素子は、外部に接する面にミラーコートを
施すことにより、反射型素子として構成することもでき
る。例えば、図18に示すように、光学材料11,12
の境界面にレリーフパターン21を形成すると共に、光
学材料12側の外部に接する面34にミラーコートを施
す。なお、光学材料12の層の厚さは、レリーフパター
ン21と同程度とする。この回折光学素子によれば、光
が面31の側から入射した場合、波面変調作用がほぼミ
ラーコート面34で生じていると見なせるので、実質的
に反射型格子を得ることができる。
利用効率を向上させるために、レリーフパターンやミラ
ーコートを形成しない面に、反射防止コートを施すこと
もできる。
一つの互いに異なる光学材料の境界面にレリーフパター
ンを形成してなる回折光学素子において、前記レリーフ
パターンを形成した境界面に接する互いに異なる光学材
料を、それらの屈折率n1(λ) ,n2(λ) が、
学素子。 2.付記1記載の回折光学素子において、λ1 =400
nm、λ2 =700nmとしたことを特徴とする回折光
学素子。 3.付記1または2記載の回折光学素子において、屈折
率n2(λ) の光学材料が、Tl2 Oを含むガラスからな
ることを特徴とする回折光学素子。 4.付記1、2または3記載の回折光学素子において、
溝深さdで形成した前記レリーフパターンの周期構造の
ピッチTが、
有率が30mol %以下であることを特徴とする回折光学
素子。 6.付記3記載の回折光学素子において、Tl2 Oの含
有率が7.5mol %以上であることを特徴とする回折光
学素子。 7.付記1〜4のいずれか記載の回折光学素子におい
て、前記レリーフパターンは、鋸歯波状の断面形状を有
することを特徴とする回折光学素子。 8.付記7記載の回折光学素子において、前記レリーフ
パターンは、レンズ作用を有するパターンであることを
特徴とする回折光学素子。 9.付記1〜4のいずれか記載の回折光学素子におい
て、前記レリーフパターンを形成しない面の少なくとも
1つの面に、反射防止コートを有することを特徴とする
回折光学素子。 10.付記1〜4のいずれか記載の回折光学素子におい
て、前記レリーフパターンを形成しない面の少なくとも
1つの面を曲面としたことを特徴とする回折光学素子。 11.付記10記載の回折光学素子において、前記曲面
は、レンズ作用を有することを特徴とする回折光学素
子。 12.付記1〜4のいずれか記載の回折光学素子におい
て、外部に接する面の少なくとも1つの面に、ミラーコ
ートを有することを特徴とする回折光学素子。 13.付記12記載の回折光学素子において、前記ミラ
ーコートを有する面を構成する光学材料と接する異なる
光学材料の面に前記レリーフパターンを形成すると共
に、前記ミラーコートを有する面を構成する光学材料の
厚さを、前記レリーフパターンの溝深さと実質的に等し
くしたことを特徴とする回折光学素子。 14.付記1〜4のいずれか記載の回折光学素子におい
て、互いに接する異なる2種類の光学材料の少なくとも
一方を、プラスチック光学材料をもって構成したことを
特徴とする回折光学素子。
を有効に低減することができるので、例えば、カメラの
ような白色光で使用する光学系に適用した場合には、色
むらや不要次数光によるフレアの発生等を有効に防止す
ることができる。また、レリーフパターンを素子の内部
に形成するようにしたので、耐環境性を向上することが
できる。
相シフト関数φ(x)を示す図である。
する位相振幅の波長依存特性を示す図である。
(λ),D(λ)の波長依存特性を示す図である。
ーフパターンを形成する2種類の光学材料の屈折率の波
長依存特性の一例を示す図である。
長依存を決定する要素R′(λ),D(λ)の波長依存
特性を示す図である。
適切な選択による回折光学素子との回折効率の波長依存
特性を比較して示す図である。
光学素子との位相振幅の波長依存特性を比較して示す図
である。
る回折効率の波長依存特性を示す図である。
示す断面図である。
この発明による回折光学素子の構成を示す断面図であ
る。
学素子の一例の構成を示す断面図である。
%まで添加した場合の屈折率分散の変化を示す図であ
る。
リーフパターンを形成する2種類の光学材料の屈折率の
波長依存特性の一例を示す図である。
折光学素子との位相振幅の波長依存特性を比較して示す
図である。
れぞれ対応する回折効率の波長依存特性を比較して示す
図である。
構成を示す断面図である。
る。
波長依存特性の一例を示す図である。
Claims (1)
- 【請求項1】 積層された複数の光学材料を有し、その
少なくとも一つの互いに異なる光学材料の境界面にレリ
ーフパターンを形成してなる回折光学素子において、 前記レリーフパターンを形成した境界面に接する互いに
異なる光学材料を、それらの屈折率n1(λ) ,n2(λ)
が、 【数1】 を満たすものをもって構成したことを特徴とする回折光
学素子。
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