JP5264223B2 - 回折光学素子、光学系及び光学機器 - Google Patents

回折光学素子、光学系及び光学機器 Download PDF

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Description

本発明は、回折光学素子に関し、特に互いに異なる材料により形成された回折格子を積層した構造を有する回折光学素子に関する。
レンズ系の色収差を減じる方法として、レンズの表面やレンズ系の一部に回折光学素子を設けることが知られている。この回折光学素子を用いる方法は、光学系中の屈折面と回折面とである基準波長の光線に対する色収差が逆方向に発現するという物理現象を利用したものである。また、回折光学素子は、その周期的構造の周期を変化させることで非球面レンズのような効果を持たせることができるので、色収差以外の諸収差の低減にも効果がある。
回折光学素子を有するレンズ系において、使用波長域の光束が特定の1つの次数(以下、「特定次数」又は「設計次数」ともいう)の回折光に集中している場合は、それ以外の次数の回折光の強度は低いものとなる。強度が0の場合は、その回折光は存在しない。
ただし、実際には、設計次数以外の次数の不要回折光が存在し、該不要回折光がある程度の強度を有する場合は、設計次数の光線とは別の経路で光学系を進行してフレア光となる。このため、回折光学素子の収差低減作用を利用するためには、使用波長域の全域において設計次数の回折光の回折効率が十分高いことが必要となる。また、設計次数での回折効率の分光分布及び設計次数以外の不要回折光の振る舞いについても十分考慮することが重要である。
回折効率を改善し、不要回折光を低減する構造を有する回折光学素子が特許文献1〜4にて開示されている。特許文献1〜4に開示された回折光学素子は、2つの回折格子をこれらの間に空間を設けずに積層した回折光学素子である(このような回折光学素子を以下、密着2層DOEという)。そして、特許文献1〜4では、各回折格子を構成する材料や、それぞれ斜面と壁面を有する格子部の高さ(格子高さ)を適切に設定することで、特定次数の回折光に対して広い波長帯域である程度高い回折効率を実現している。なお、回折効率は、全透過光束の光量に対する各次数の回折光の光量の割合で表される。
特許第3717555号公報 特開平11−271513号公報 特開2003−227913号公報 特開2005−107298号公報
しかしながら、特許文献1〜4では、回折格子の格子部の斜面の作用についてのみ考慮されており、格子部の壁面の作用については考慮されていない。このため、特定次数(設計次数)での回折効率が十分に高くなっていない。
本発明は、格子部の壁面の作用をも考慮して、斜入射光による回折効率の劣化を低減し、使用波長域における設計次数での回折効率が高められた回折光学素子を提供する。
本発明の一側面としての回折光学素子は、互いに異なる材料により形成された第1の回折格子及び第2の回折格子がこれらの間に空間を設けずに積層された構造を有する。ここで、第2の回折格子の材料は、ガラス又はセラミックスである。そして、該回折光学素子は、以下の条件を満足することを特徴とする。
nd1<nd2
νd1<νd2
1.65≦nd1、νd1≦20
1.73≦nd2、15≦νd2≦60
ただし、nd1及びνd1はそれぞれ、第1の回折格子の材料のd線に対する屈折率及びアッベ数であり、nd2及びνd2はそれぞれ、第2の回折格子の材料のd線に対する屈折率及びアッベ数である。
なお、上記回折光学素子と屈折光学素子とを有する光学系、及び該光学系を有する光学機器もそれぞれ、本発明の他の側面を構成する。
本発明によれば、斜入射光による回折効率の劣化が少なく、使用波長域における設計次数での回折効率が高い回折光学素子を実現することができる。
以下、本発明の好ましい実施例について図面を参照しながら説明する。
図1は、本発明の実施例1である回折光学素子の正面図及び側面図である。図2には、図1に示した回折光学素子を、図中のA−A′線で切断したときの断面の一部を示す。なお、図2は、格子形状を分かりやすくするために、格子高さ(深さ)方向(図の左右方向)にデフォルメされている。
図1及び図2において、回折光学素子1は、第1の回折格子2と第2の回折格子3とが互いの格子面間に空間を設けずに積層された構造を有する密着2層DOEである。「格子面間に空間を設けずに」は、「格子面を密着させて」と言い換えることもできる。これら第1及び第2の回折格子2,3によって1つの回折光学素子として機能する。
2bは第1の回折格子2を形成する格子部、2aは該格子部2bが形成されるベース部である。3bは第2の回折格子3を形成する格子部、3aは該格子部3bが形成されるベース部である。第1及び第2の回折格子2,3のそれぞれにおいて、格子部2b,3bは同心円状に複数形成されている。格子部2b,3bのピッチ(以下、格子ピッチという)を中心部から周辺部に向かって徐々に小さくすることで、回折光学素子1にレンズ作用(収斂作用又は発散作用)が与えられている。また、2c,3cは格子部2b,3bの斜面(以下、格子斜面という)であり、2d,3dは格子部2b,3bの壁面(以下、格子壁面という)である。格子斜面と格子壁面をまとめて格子面ともいう。
本実施例では、回折光学素子1を、平面であるベース面上に平板状に形成している。ただし、回折光学素子を設けるベース面は、平面に限らず、球面や非球面であってもよい。
また、両回折格子2,3は、格子部2b,3bの格子ピッチをP(μm)とし、各格子部2b,3bの格子高さ(格子厚ともいう)をd(μm)とするとき、いずれもd/P<1/6を満足している。この条件を満足することにより、格子部2b,3bの形状を作製し易い。
また、本実施例の回折光学素子1の使用波長域(設計波長域ともいう)は、可視波長域である。そして、可視波長域全体で+1次の回折光の回折効率が高くなるように、第1及び第2の回折格子2,3を構成する材料(互いに異なる材料)及び格子高さが選択されている。すなわち、第1及び第2の回折格子2,3を通過する光の最大光路長差が使用波長域内で、該波長の整数倍付近となるよう第1及び第2の回折格子2,3の材料及び格子高さが定められている。最大光路長差は、格子部2b,3bの山の頂点と谷底のそれぞれを通過する光線間の光路長の差である。このように第1及び第2の回折格子2,3の材料及び形状を適切に設定することによって、使用波長域の全域で高い回折効率が得られる。
次に、本実施例の回折光学素子1の回折効率について説明する。まず、従来のスカラー回折理論計算を用いた回折効率について説明する。
密着2層DOEにおいて、設計波長又は使用波長λにおいてある次数の回折光の回折効率が最大となる条件は、格子部の最大光路長差を回折格子全体にわたって加算した値が設計波長の整数倍になるように決定することである。したがって、図2に示すように第1の回折格子2のベース面に垂直に入射し、波長が設計波長λである光線に対して、回折次数mの回折光の回折効率が最大となる条件は、
±(n01−n02)d=mλ (1)
となる。(1)式において、n01は第1の回折格子2を形成する材料の設計波長λでの屈折率であり、n02は第2の回折格子3を形成する材料の設計波長λでの屈折率である。また、dは第1及び第2の回折格子3の格子高さであり、mは回折次数である。
ここで、図2に示した0次回折光よりも下向きに回折する光線の回折次数を正の回折次数とし、0次回折光よりも上向きに回折する光線の回折次数を負の回折次数とする。
(1)式での格子高さの正負の符号は、以下のようになる。第1及び第2の回折格子2,3の材料の屈折率n01,n02がn01<n02の関係にあり、図2の下から上に向かって第1の回折格子2の格子高さが増加する(第2の回折格子3の格子高さが減少する)場合は、負となる。逆に、n01>n02であって図2の下から上に向かって第1の回折格子2の格子高さが減少する(第2の回折格子3の格子高さが増加する)場合は、正となる。つまり、図2に示す構造で屈折率n01,n02がn01<n02である場合、(1)式は、
(n02−n01)d=mλ (2)
と書き換えられる。
図2に示す構造において、設計波長(使用波長)λでの回折効率η(λ)は、
η(λ)=sinc〔π{m−(n02−n01)d/λ}〕
=sinc〔π{m−φ0/λ}〕 (3)
で表わすことができる。(3)式中のφ0は、
φ0=(n02−n01)d (4)
であり、dは格子部2b,3bの格子高さである。
ここで、設計次数を+1次とし、設計波長をd線の波長とすると、(3)式より、回折効率は(4)式に依存し、(4)式の屈折率差と格子高さの積については(2)式の関係を満足する。(2)及び(4)式における屈折率の項については、屈折率の絶対値ではなく、屈折率差に依存することが分かる。このため、例えば、格子高さを10μmに固定した場合、屈折率差が0.058756であれば、回折効率が100%となり、屈折率の絶対値には依存しない。
特許文献1〜4に開示されている回折光学素子はいずれもスカラー回折理論を用いて回折効率を計算し、設計評価を行っている。スカラー回折理論は、回折格子の格子ピッチが波長と比べて十分大きい場合に回折効率を精度高く計算できることが知られている。しかしながら、スカラー回折理論は、回折格子の格子斜面による回折現象について記述しているのみであり、格子壁面の作用については考慮されていない。実際の回折光学素子には、格子斜面のみではなく格子壁面も設けられているため、該格子壁面の作用も考慮する必要がある。このように、特許文献1〜4に記載された回折効率はいずれも、回折格子の格子壁面の影響については考慮されていない値である。
そこで、本実施例では、回折格子の格子壁面の作用も考慮して回折効率を計算することができる手法である厳密波動計算を用いる。厳密波動計算は、Maxwell方程式を数値的に解くことにより、任意形状の構造物に対する各次数の透過回折光及び反射回折光の回折効率を厳密に計算することができるものである。
従来、厳密波動計算は、スカラー回折理論の精度が悪くなる、格子ピッチが波長と比べて小さい場合によく用いられている。しかし、格子ピッチが波長と比べて十分大きい場合に対しても厳密な回折効率を求めることが可能である。また、任意形状に対して計算可能であるため、スカラー回折理論では考慮されていなかった格子壁面の作用をも考慮した回折効率の計算が可能である。このため、発明者は、厳密波動計算のうち厳密結合波解析(RCWA:Rigorous Coupled Wave Analysis)を用いて回折効率の計算を行った。表1及び表2に、パラメータが異なる4種類の回折光学素子(1〜4)におけるスカラー回折理論とRCWAによる回折効率の計算結果を示す。
回折光学素子1〜4の回折効率の計算条件において、第1及び第2の回折格子の材料の屈折率はそれぞれ異なるが、屈折率差は同じである。また、他の計算条件において、入射角度0度及び格子高さ10μmは表1及び表2で共通とし、格子ピッチは表1では100μm、表2では200μmとしている。
なお、RCWAにおいての計算パラメータである計算次数は、不要回折光が十分に0に収束する次数以上とし、レベル数(回折格子の分割段数)は、レベル数に応じた回折光が計算誤差として発生してしまうため、計算次数以上としている。
表1及び表2のいずれにおいても、スカラー回折理論による計算では回折効率は100%となる。これに対し、RCWAによる計算結果では、全透過回折光の回折効率の和で規格化した+1次回折光の回折効率は100%になっていない。さらに、回折光学素子1〜4の+1次光の回折効率は、屈折率の絶対値が高い材料が組み合わされた回折光学素子ほど高くなっている。また、格子ピッチが100μmの場合と比較して、格子ピッチが200μmである方が、+1次光の回折効率が高い。これは、格子ピッチが大きくなると回折作用に対する格子壁面の寄与が小さくなるためである。このため、図1に示した回折光学素子においては、格子ピッチが大きい中心部ほど格子壁面の寄与が小さい。
また、格子ピッチが100μmと200μmのいずれの場合でも、屈折率の絶対値が高い材料が組み合わされた回折光学素子ほど+1次光の回折効率が高い。このため、屈折率の絶対値が高い材料が組み合わされた回折光学素子ほど、回折光学素子の全体において回折効率が高くなるといえる。
このように、スカラー回折理論では回折効率が屈折率差に依存しているため、屈折率差が同じ回折光学素子の回折効率の計算結果は全て同じ値となる。しかし、格子壁面の作用も考慮した厳密波動計算では、屈折率が高い材料同士の組み合わせの方が、+1次回折光の回折効率が高くなることが分かる。また、格子壁面による+1次回折光の回折効率への影響は、格子ピッチが小さい回折光学素子の周辺部ほど大きい。
以上のことから、密着2層DOEを構成する第1及び第2の回折格子2,3の材料は、できるだけ高い屈折率を有するもの同士の組み合わせとするのが好ましい。特に、第1の回折格子2の材料のd線での屈折率nd1が1.65以上で、第2の回折格子3の材料のd線での屈折率nd2が1.73以上であり、かつnd2がnd1より大きいことが好ましい。すなわち、
nd1<nd2
1.65≦nd1
1.73≦nd2
なる条件を満足することが好ましい。
この条件を満足しないと、+1次の回折効率が低くなるとともに不要回折光の回折効率が増加する可能性がある。この条件を満足することにより、本実施例の回折光学素子1をカメラの撮影光学系に応用した場合において、太陽光等の高輝度光源下での撮像や長時間露光を行ったときに不要回折光が画像に影響することを回避することができる。もちろん、より高い屈折率を有する材料を組み合わせた方がよりよい。このことは、後述する他の実施例でも同様である。
次に、本実施例の回折光学素子1の数値例について説明する。なお、本数値例によって本発明における各回折格子の材料や格子高さが限定されるわけではない。このことは、後述する他の実施例の数値例でも同じである。
本数値例では、第1の回折格子2の材料として紫外線硬化樹脂を用い、第2の回折格子3の材料としてガラスを用いている。より具体的には、第1の回折格子2の材料として、紫外線硬化樹脂PVCz(nd=1.696、νd=17.7、θgF=0.686)を用いている。また、第2の回折格子3の材料として、光学ガラスK−VC89(nd=1.810、νd=41.0、θgF=0.567)を用いている。θgFは、該材料のg線とF線に対する部分分散比である。格子高さdは、5.2μmである。
図3には、本数値例の回折光学素子の格子ピッチ100μm及び設計次数(+1次)での回折効率と、設計次数±1次である0次と+2次の不要回折光の回折効率を示す。図3において、左側の縦軸は設計次数である+1次の回折光の回折効率を、右側の縦軸は不要次数である0次光及び+2次の回折光の回折効率を示す。横軸は波長である。
本数値例では、設計次数に関して、可視波長域(430nm〜670nm)の全域で97.2%以上の回折効率が得られており、不要次数の回折効率は可視波長域の全域で1.0%以下となっている。ここでは、格子ピッチ100μmでの回折効率を求めたが、さらに格子ピッチが広い領域においては格子壁面の寄与が小さくなるため、設計次数の回折効率がより高くなり、不要次数の回折効率はより低くなる。
また、ここでは、不要次数として0次と+2次についてのみ回折効率を求めたが、これは設計次数から離れた次数の回折光ほど結像面でのぼけが大きくなり、フレアとして目立たなくなるためである。
また、ここでは、可視波長域として一般に知られている400nm〜700nmよりも狭い430nm〜670nmを可視波長域としている。これは、400nm〜420nm及び680nm〜700nmでは波長比視感度が低いため、画像に対する影響が小さいためである。もちろん、設計次数の回折効率が高く、不要次数の回折効率が低い波長域は、できるだけ広い方がより好ましく、また、その波長域は430nm〜670nmに限定されない。このことは、後述する他の実施例でも同じである。
特許文献2〜4にて開示された回折光学素子はいずれも、格子高さが7μm以上と高いため、該回折光学素子に斜めから入射する光線(以下、斜入射光という)に対する回折効率の劣化が大きく、応用できる光学系に限界がある。これに対し、本実施例の回折光学素子では、特許文献2〜4にて開示された回折光学素子に比べて、格子高さが大幅に低い。このため、本実施例の回折光学素子は、斜入射光に対する回折効率の劣化が大幅に低減され、より幅広い光学系への応用が可能となる。格子高さは低いほど好ましいが、0.5μm以下となると実際に使用する材料の選択肢が狭くなる可能性がある。したがって、好ましくは格子高さdを、
0.5μm≦d≦7.0μm
の範囲で設定するとよい。
また、格子高さを低くして、かつ可視波長域の全域に対して設計次数の回折効率を高くするためには、第1の回折格子2の材料のアッベ数νd1を20以下とし、第2の回折格子3の材料のアッベ数νd2を15以上60以下とするのが好ましい。さらに、νd2がνd1より大きいことが好ましい。すなわち、
νd1<νd2
νd1≦20
15≦νd2≦60
なる条件を満足することが好ましい。
この条件を満足しないと、格子高さが高くなりすぎて可視波長域の全域において高い回折効率が得られなくなる可能性がある。
より好ましくは、第2の回折格子3の材料のアッベ数νd2を25以上55以下とする(25≦νd2≦55)ことが好ましい。この範囲内であれば、使用する材料の選択肢が広がり、本実施例の回折光学素子1の実現性がより高まる。
さらに、設計次数であるm次の回折光に対する各回折格子の山(凸部)と谷(凹部)での光学光路長差を設計次数と波長の積で除した、
(n2(λ)−n1(λ))d/mλ (5)
の値が、0.9217以上1.0783以下の範囲であるとよりよい。すなわち、
0.9217≦(n2(λ)−n1(λ))d/mλ≦1.0783
なる条件を満足するとより好ましい。この範囲では、スカラー回折理論での設計次数の回折効率が98%以上となり、ピッチ100μmの場合の厳密波動計算では設計次数の回折効率が97%以上となる。この範囲外では、設計次数の回折効率が低下し、不要次数の回折効率が増加してしまうため、好ましくない。
なお、本実施例では、設計次数が+1次である場合について説明したが、本発明での設計次数は+1次に限定されず、+2次や+3次等の他の次数であってもよい。この場合、回折光学素子を構成する第1及び第2の回折格子の合成光学光路長差を、希望する設計次数で希望する設計波長となるように設定すれば、本実施例と同様の効果が得られる。
本実施例の回折光学素子1の製造方法を、図4を用いて説明する。まず、ガラスを用いて第2の回折格子3を製作する。具体的には、第2の回折格子3の格子形状を反転した形状を有する金型50と、第2の回折格子3の材料(低融点ガラス)3eと、第2の回折格子3のベース部を形成するための金型51とを用意し(図4(a))、これらをガラスモールド成形機にセットする。
そして、これらをガラス3eの屈伏点温度以上まで加熱し、その後加圧して、金型50の回折格子反転形状をガラス3eに転写する(図4(b))。このとき、モールド成形機の内部を真空状態又は不活性ガスが充填された状態とする。
次に、金型50、ガラス3e(第2の回折格子3)及び金型51を徐々にガラス3eの転移点温度以下まで冷却し、その後、金型50,51を離型する(図4(c))。以上により、第2の回折格子3の製作が完了する。
次に、第1の回折格子2を成形する。具体的には、第2の回折格子3と、第1の回折格子2の材料である紫外線硬化樹脂2eと、第1の回折格子2のベース部を形成するためのガラス型52とを用意し(図4(d))、これらをUV露光機にセットする。
そして、これらを加圧した状態でガラス型52側から紫外線UVを照射することによって紫外線硬化樹脂2eを硬化させる。これにより、第2の回折格子3の格子形状が紫外線硬化樹脂2eに転写される(図4(e))。その後、ガラス型52を離型する(図4(f))。以上により、第1及び第2の回折格子2,3がこれらの間に空間を設けずに積層された回折光学素子1が完成する。
このように、金型を用いてガラスにより第2の回折格子3を先に製作し、この第2の回折格子3を型として用いて紫外線硬化樹脂により第1の回折格子2を製作することにより、量産性が高く、低コストで回折光学素子1を製造することができる。この製造方法は、後述する実施例2,3の回折光学素子の製造にも使用できる。
また、本実施例の回折光学素子では、特許文献2〜4にて開示された回折光学素子に比べて格子高さが大幅に低くなっている。このことは、第2の回折格子3のガラスモールドを行う場合に、格子部の形状をより精度良く作るのに有効である。
なお、上述した回折光学素子の製造方法は例にすぎず、他の製造方法、例えば切削加工、リソグラフィ及びエッチング等を用いてもよい。また、第1及び第2の回折格子2,3を別々に製作した後に、両者を接合(積層)してもよい。
また、本実施例では、第1及び第2の回折格子2,3の格子面同士を接触(密着)させた場合について説明したが、両格子面の間に薄膜層(接着層)を介在させてもよい。この場合も、第1及び第2の回折格子2,3の格子面間に空間は設けられない。薄膜層を設けることにより、格子面同士の密着性を向上させることができる。
また、第1の回折格子2の材料と第2の回折格子3の材料の屈折率差が大きい場合は、それらの界面(格子面)間に反射防止層を設けて、界面での反射率を低減させるようにしてもよい。
また、前述したように、各回折格子の格子面とは反対側の面(ベース部の面)は平面に限らず、球面や非球面であってもよい。この場合、回折格子と同時に球面や非球面形状も同時に成形できるため、製造コストが減少する。
(比較例1)
本実施例の回折光学素子に対する比較例(シミュレーション例)1について説明する。比較例1では、本実施例と同じ格子高さを有する一方、本実施例よりも屈折率の絶対値が低い材料であって本実施例とほぼ同じ回折効率特性((5)式の値が使用波長域の全域でほぼ同じ特性)が得られる仮想材料を用いている。ここでは、第1の回折格子2の仮想材料としてnd=1.480、νd=17.0、θgF=0.400の材料を使用する。また、第2の回折格子3の仮想材料として、nd=1.594、νd=68.9、θgF=−0.521の材料を使用する。格子高さdは5.2μmとする。
この回折光学素子のピッチ100μmにおける設計次数(+1次)での回折効率は、可視波長域の全域(430nm〜670nm)で97.16%以上となったものの、実施例1と比較すると、設計次数(+1次)での回折効率が0.06%低かった。回折効率が0.06%低いことにより、太陽光等の高輝度光源下での撮像や長時間露光を行った場合に不要回折光が画像に影響する。このことから、屈折率の絶対値が高い材料を組み合わせる本実施例の回折光学素子の方が、不要回折光の低減について優れていると言える。
また、格子高さ5.2μmで屈折率が低い材料を組み合わせる場合、実在する材料からの材料の選択が困難である。実在する材料を用いると、特許文献2〜4にて開示されている回折光学素子のように格子高さが高くなってしまい、本実施例とは比較できない。また、格子高さが高いことは、斜入射特性が悪くなることにつながり、この結果、回折光学素子の光学系への応用の幅が狭くなる。
したがって、材料の選択性及び幅広い光学系への応用性の点でも、本実施例の回折光学素子の方が優れていると言える。
実施例1において、第1及び第2の回折格子2,3の材料が紫外線硬化樹脂及びガラスに限定されないことを述べた。本発明の実施例2としての回折光学素子では、第1の回折格子2の材料として、微粒子を混合させた紫外線硬化樹脂を用いる。これにより、可視波長域の全域において、設計次数での回折効率を実施例1よりもさらに高くすることができる。本実施例の数値例を以下に示す。
本数値例では、第1の回折格子2の材料として、紫外線硬化樹脂UV1000にITO微粒子を混合させた樹脂(nd=1.658、νd=15.9、θgF=0.532)を用いる。また、第2の回折格子3の材料として、光学ガラスM−TAF101(nd=1.768、νd=49.2、θgF=0.551)を用いる。格子高さdは5.4μmとする。
図5には、本数値例の回折光学素子の格子ピッチ100μm及び設計次数(+1次)での回折効率と、設計次数±1次である0次と+2次の不要回折光の回折効率を示す。図5において、左側の縦軸は設計次数である+1次の回折光の回折効率を、右側の縦軸は不要次数である0次光及び+2次の回折光の回折効率を示す。横軸は波長である。
本数値例では、設計次数に関して、可視波長域(430nm〜670nm)の全域で98.1%以上の回折効率が得られており、不要次数の回折効率は可視波長域の全域で0.5%以下となっている。
このように、本数値例では、実施例1の数値例と比較して、可視波長域の全域において+1次の回折効率が高く、0次と+2次の回折効率が低く抑えられている。本数値例では、微粒子混合材料(第1の回折格子2の材料)の部分分散比θgF1が0.532と小さい値であるため、実施例1の数値例よりも高い回折効率が得られる材料の組み合わせになっている。
θgF1は、以下の(6)式を満足することが好ましい。E−Xは×10−Xを意味する。
θgF1≦
(−1.665E-07×νd1+5.213E-05×νd1−5.656E-03×νd1+0.675)
(6)
θgF1が(6)式の範囲を超えると、可視波長域の全域における特定の波長域で+1次の回折効率が劣化する可能性がある。本実施例では、θgF1を(6)式の範囲内の値とするための手段の1つとして、紫外線硬化樹脂に微粒子を混合させている。
微粒子材料としては、酸化物、金属、セラミックス、及びこれらの複合物混合物のいずれかの無機微粒子材料が好ましいが、無機微粒子材料に限定されるわけではない。また、微粒子材料の平均粒子径は、回折光学素子への入射光の波長(使用波長又は設計波長)の1/4以下であることが好ましい。これよりも粒子径が大きくなると、微粒子材料を樹脂材料に混合した際に、レイリー散乱が大きくなる可能性が生じるためである。また、微粒子材料を混合する紫外線硬化樹脂としては、アクリル系、フッ素系、ビニル系、エポキシ系のいずれかの有機樹脂が好ましいが、有機樹脂に限定されるわけではない。
(比較例2)
本実施例の回折光学素子に対する比較例(シミュレーション例)2について説明する。比較例2では、本実施例と同じ格子高さを有する一方、本実施例よりも屈折率の絶対値が低い材料であって本実施例とほぼ同じ回折効率特性((5)式の値が使用波長域の全域でほぼ同じ特性)が得られる仮想材料を用いている。ここでは、第1の回折格子2の仮想材料として、nd=1.490、νd=15.0、θgF=0.400の材料を用いる。また、第2の回折格子3の材料として、nd=1.600、νd=86.5、θgF=−0.05の材料を用いる。格子高さdは5.4μmとする。
この比較例の回折光学素子の格子ピッチ100μmにおける設計次数(+1次)での回折効率は、可視波長域(430nm〜670nm)の全域で98.02%以上となったものの、実施例と比較すると、設計次数(+1次)での回折効率は0.05%低かった。
回折効率が0.05%低いことにより、太陽光等の高輝度光源下での撮像や長時間露光を行った場合に不要回折光が画像に影響する。このことから、屈折率の絶対値が高い材料を組み合わせる本実施例の回折光学素子の方が、不要回折光の低減について優れていると言える。
また、格子高さ5.4μmで屈折率が低い材料を組み合わせる場合、実在する材料からの材料の選択が困難である。実在する材料を用いると、特許文献2〜4にて開示されている回折光学素子のように格子高さが高くなってしまい、本実施例とは比較できない。また、格子高さが高いことは、斜入射特性が悪くなることにつながり、この結果、回折光学素子の光学系への応用の幅が狭くなる。
したがって、材料の選択性及び幅広い光学系への応用性の点でも、本実施例の回折光学素子の方が優れていると言える。
実施例2においては、第2の回折格子2の材料として微粒子を混合した紫外線硬化樹脂を用い、第2の回折格子3の材料としてガラスを用いた。本発明の実施例3としての回折光学素子では、実施例2よりも屈折率差がより大きい材料を組み合わせることにより、格子高さをより低くする。本実施例の数値例を以下に示す。
本数値例では、第1の回折格子2の材料として、紫外線硬化樹脂PVCzにITO微粒子を混合させた樹脂(nd=1.716、νd=13.3、θgF=0.542)を用いる。また、第2の回折格子3の材料として、光学ガラスL−LAH83(nd=1.864、νd=40.6、θgF=0.567)を用いる。格子高さdは4.0μmとする。
図6には、本数値例の回折光学素子の格子ピッチ100μm及び設計次数(+1次)での回折効率と、設計次数±1次である0次と+2次の不要回折光の回折効率を示す。
図6において、左側の縦軸は設計次数である+1次の回折光の回折効率を、右側の縦軸は不要次数である0次光及び+2次の回折光の回折効率を示す。横軸は波長である。
本数値例では、設計次数に関して、可視波長域(430nm〜670nm)の全域で98.4%以上の回折効率が得られており、不要次数の回折効率は可視波長域の全域で0.3%以下となっている。
このように、本数値例では、実施例1,2の数値例と比較して、屈折率差をより大きくすることで格子高さを低くした回折光学素子において、可視波長域の全域において+1次の回折効率がより高く、0次と+2次の回折効率がより低く抑えられている。また、格子高さが低いことにより、斜入射光に対する回折効率の劣化がさらに低減され、より幅広い光学系への応用が可能となる。
実施例1〜3では、第2の回折格子3の材料としてガラスを用いた。本発明の実施例4としての回折光学素子では、第2の回折格子3の材料として、可視波長域の光に対して高い透過率を有する透光性セラミックスを用いる。本実施例の数値例を以下に示す。
本数値例では、第1の回折格子2の材料として、紫外線硬化樹脂UV1000にITO微粒子を混合させた樹脂(nd=1.682、νd=12.4、θgF=0.451)を用いる。また、第2の回折格子3の材料として、透光性セラミックスである透明YAGセラミックス(nd=1.83、νd=52、θgF=0.55)を用いる。格子高さdは3.9μmとする。
図7には、本数値例の回折光学素子の格子ピッチ100μm及び設計次数(+1次)での回折効率と、設計次数±1次である0次と+2次の不要回折光の回折効率を示す。図7において、左側の縦軸は設計次数である+1次の回折光の回折効率を、右側の縦軸は不要次数である0次光及び+2次の回折光の回折効率を示す。横軸は波長である。
本数値例では、設計次数に関して、可視波長域(430nm〜670nm)の全域で98.6%以上の回折効率が得られており、不要次数の回折効率は可視波長域の全域で0.3%以下となっている。
本実施例の回折光学素子は、実施例1で説明した製造方法と基本的に同じ製造方法によって製造することができる。ただし、図4(b)に相当する工程では、第2の回折格子3の材料として、セラミックス原材料粉末とバインダーを混合した材料に対して、型50に形成された回折格子反転形状を転写する。そして、図4(c)の工程では、離型した後の第2の回折格子3を高温で焼成する。その後の工程(図4(d)〜図4(f))は、実施例1と同じである。
このように、金型を用いてセラミックスにより第2の回折格子3を先に製作し、この第2の回折格子3を型として用いて紫外線硬化樹脂により第1の回折格子2を製作することにより、量産性が高く、低コストで回折光学素子を製造することができる。ただし、本実施例の回折光学素子の製造方法は、この方法に限定されるわけではない。
また、本実施例では、セラミックス原材料粉末とバインダーを混合した材料を用いて第2の回折格子3を成形及び高温焼成するため、格子高さdが低い方がより格子部の形状精度を良好とすることができる。
実施例4では、第2の回折格子3の材料としてセラミックス材料を用いた。本発明の実施例5としての回折光学素子では、さらに屈折率差の大きい材料を組み合わせて格子高さを低くする。本実施例の数値例を以下に示す。
本数値例では、第1の回折格子2の材料として、紫外線硬化樹脂UV1000にITO微粒子を混合させた樹脂(nd=1.790、νd=6.1、θgF=0.293)を用いる。また、第2の回折格子3の材料として、透光性セラミックスであるルミセラ(nd=2.082、νd=30.1、θgF=0.583)を用いる。格子高さdは2.0μmとする。
図8には、本数値例の回折光学素子の格子ピッチ100μm及び設計次数(+1次)での回折効率と、設計次数±1次である0次と+2次の不要回折光の回折効率を示す。図8において、左側の縦軸は設計次数である+1次の回折光の回折効率を、右側の縦軸は不要次数である0次光及び+2次の回折光の回折効率を示す。横軸は波長である。
本数値例では、設計次数に関して、可視波長域(430nm〜670nm)の全域で99.0%以上の回折効率が得られており、不要次数の回折効率は可視波長域の全域で0.1%以下となっている。
このように、本数値例では、実施例1〜4の数値例と比較して、屈折率差をより大きくすることで格子高さを低くした回折光学素子において、可視波長域の全域において+1次の回折効率がより高く、0次と+2次の回折効率がより低く抑えられている。また、格子高さが低いことにより、斜入射光に対する回折効率の劣化がさらに低減され、より幅広い光学系への応用が可能となる。
なお、本数値例はあくまで例にすぎず、各回折格子の材料及び格子高さは本数値例の値に限定されない。また、実施例1〜5では、第2の回折格子3の材料としてガラス又はセラミックを用いた場合を示したが、有機材料や光学結晶材料を用いてもよい。
以上説明した実施例1〜5で使用する材料について、表3、表4、図9及び図10を用いてより具体的に説明する。表3には、実施例(数値例)1、比較例1、実施例(数値例)2及び比較例2の回折光学素子における諸数値を示している。また、表4には、実施例(数値例)3〜5の回折光学素子の諸数値を示している。諸数値は、第1の回折格子2の材料と、その材料の屈折率nd1、アッベ数νd1、部分分散比θgF1、(6)式の右辺の値を含む。また、諸数値は、第2の回折格子3の材料と、その材料の屈折率nd2、アッベ数νd2を含む。さらに、諸数値は、格子高さd、波長430nm,500nm,670nmにおける(5)式の値、スカラー回折理論計算による回折効率、及び厳密波動計算による格子ピッチ100μmにおける+1次の回折効率を含む。
また、図9は表3,4に示した屈折率ndとアッベ数νdの関係を示し、図10は部分分散比θgFとアッベ数νdの関係を示す。
これらの表3,4からも分かるように、前述した通り、第1の回折格子2の材料のd線での屈折率nd1が1.65以上であり、第2の回折格子3の材料のd線での屈折率nd2が1.73以上であることが好ましい。また、第1の回折格子2のアッベ数νd1が20以下で、第2の回折格子3の材料のアッベ数νd2が15以上60以下とすることが好ましい。
さらに、第2の回折格子3の材料のアッベ数νd2を、25以上55以下とすることがより好ましい。
また、θgF1が(6)式を満足する方が、可視波長域内の特定の波長域での回折効率の低下が少なくなり、可視波長域の全域において高い回折効率が得られるため、より好ましい。
また、(5)式の値が0.9217以上1.0783以下の範囲であれば、スカラー回折理論による設計次数の回折効率が98%以上となり、格子ピッチを100μmとした場合の厳密波動計算による回折効率が97%以上となり、より好ましい。
以上説明したように、実施例1〜5によれば、格子壁面の作用をも考慮して、斜入射光による回折効率の劣化を低減し、使用波長域における設計次数での回折効率が高められた回折光学素子を実現することができる。
実施例1〜5で説明した回折光学素子1を用いた光学系の例を本発明の実施例6として図11に示す。図11には、デジタルカメラやビデオカメラ等の光学機器(撮像装置)に用いられる撮影光学系(撮影レンズ)の断面を示す。
101は主に屈折レンズ(屈折光学素子)によって構成された撮影レンズであり、その内部に絞り102と実施例1〜5の回折光学素子1を含む。回折光学素子1は、平板ガラスを基板として平板状に製作されている。また、回折光学素子1は、撮影レンズ101内で光束径が絞られる絞り102の近傍に配置されている。
103は結像面であり、ここにはフィルム又はCCDセンサやCMOSセンサ等の撮像素子が配置される。
回折光学素子1は、レンズ機能を有し、撮影レンズ101の色収差を補正する。回折光学素子1は、実施例1〜5にて説明したように、可視波長域の全域で設計次数の回折効率が高く、しかも格子高さが低いために斜入射光による回折効率の劣化も低減されている。このため、様々な使用環境下でフレア光が少なく、低周波数での解像力も高く、高い光学性能を有する撮影レンズを実現することができる。

なお、図11では、絞り102近傍に平板状の回折光学素子1を設けた場合について説明したが、絞り102近傍以外の位置に配置してもよいし、基板としてレンズを使用してその凸面や凹面上に回折光学素子1を形成してもよい。また、撮影レンズ101内に、回折光学素子1を複数設けてもよい。
また、本実施例では、カメラの撮影レンズに回折光学素子を使用した場合について示したが、他の光学機器(例えば、イメージスキャナーや複写機)の光学系に使用してもよい。
実施例1〜5で説明した回折光学素子1を用いた光学系の例を本発明の実施例7として図12に示す。図12には、望遠や双眼鏡等の観察光学系の断面を示している。
104は対物レンズ、105は像を正立させるための像反転プリズムである。106は接眼レンズ、107は評価面(瞳面)である。回折光学素子1は、屈折光学素子を含む対物レンズ104の一部として設けられ、結像面103での色収差等の収差を補正する。
回折光学素子1を結像面103よりも物体側の対物レンズ104内に設けることで、対物レンズ104のみで色収差低減効果が得られる。このため、肉眼観察系においては、対物レンズ104内に回折光学素子1を設けることが望ましい。
回折光学素子1は、実施例1〜5で説明したように、可視波長域の全域で設計次数の回折効率が高く、しかも格子高さが低いために斜入射光による回折効率の劣化も低減されている。このため、様々な使用環境下でフレア光が少なく、低周波数での解像力も高く、高い光学性能を有する観察光学系を実現することができる。

なお、図12では、平板状の回折光学素子1を設けた場合について説明したが、基板としてレンズを使用し、その凸面や凹面上に回折光学素子1を形成してもよい。また、観察光学系内に、回折光学素子1を複数設けてもよい。
また、図12では、対物レンズ104内に回折光学素子1を設けた場合を示したが、プリズム105の表面や接眼レンズ106内等、他の位置に回折光学素子1を設けてもよい。この場合も、対物レンズ104内に設けた場合と同様な効果が得られる。
本実施例の観察光学系は、望遠や双眼鏡以外にも、レンズシャッターカメラやビデオカメラ等の光学機器における光学式ファインダに用いることもできる。
以上説明した各実施例は代表的な例にすぎず、本発明の実施に際しては、各実施例に対して種々の変形や変更が可能である。
本発明の実施例である回折光学素子の正面図と側面図。 実施例1の回折光学素子の構造を示す断面図。 実施例1の回折光学素子の回折効率を示す図。 実施例1の回折光学素子の製造方法を示す図。 実施例2の回折光学素子の回折効率を示す図。 実施例3の回折光学素子の回折効率を示す図。 実施例4の回折光学素子の回折効率を示す図。 実施例5の回折光学素子の回折効率を示す図。 実施例1〜5の回折光学素子の材料のnd−νd特性を示す図。 実施例1〜5の回折光学素子の材料のνd−θgF特性を示す図。 実施例6の撮影光学系の概略図。 実施例7の観察光学系の概略図
符号の説明
1 回折光学素子
2 第1の回折格子
3 第2の回折格子
50,51 金型
52 ガラス型
101 撮影レンズ
102 絞り
103 結像面
104 対物レンズ
105 プリズム
106 接眼レンズ
107 評価面(瞳面)

Claims (9)

  1. 互いに異なる材料により形成された第1の回折格子及び第2の回折格子がこれらの間に空間を設けずに積層された構造を有し、前記第2の回折格子の材料は、ガラス又はセラミックスであり、
    以下の条件を満足することを特徴とする回折光学素子。
    nd1<nd2
    νd1<νd2
    1.65≦nd1、νd1≦20
    1.73≦nd2、15≦νd2≦60
    ただし、nd1及びνd1はそれぞれ、前記第1の回折格子の材料のd線に対する屈折率及びアッベ数であり、nd2及びνd2はそれぞれ、前記第2の回折格子の材料のd線に対する屈折率及びアッベ数である。
  2. 以下の条件を満足することを特徴とする請求項1に記載の回折光学素子。
    25≦νd2≦55
  3. 以下の条件を満足することを特徴とする請求項1又は2に記載の回折光学素子。
    0.5μm≦d≦7.0μm
    ただし、dは前記第1及び第2の回折格子の格子高さである。
  4. 以下の条件を満足することを特徴とする請求項1から3のいずれか1つに記載の回折光学素子。
    0.9217≦(n2(λ)−n1(λ))d/mλ≦1.0783
    ただし、λは使用波長であり、n1(λ)及びn2(λ)はそれぞれ、使用波長λにおける前記第1及び第2の回折格子の材料の屈折率であり、mは設計次数である。
  5. 前記第1の回折格子の材料が、紫外線硬化樹脂であることを特徴とする請求項1から4のいずれか1つに記載の回折光学素子。
  6. 以下の条件を満足することを特徴とする請求項1から4のいずれか1つに記載の回折光学素子。
    θgF1≦
    (−1.665E-07×νd1+5.213E-05×νd1−5.656E-03×νd1+0.675)
    ただし、θgF1は前記第1の回折格子の材料のg線とF線に対する部分分散比であり、E−Xは×10−Xを意味する。
  7. 前記第1の回折格子の材料が、微粒子を紫外線硬化樹脂に混合した材料であることを特徴とする請求項6に記載の回折光学素子。
  8. 請求項1からのいずれか1つに記載の回折光学素子と、屈折光学素子とを有することを特徴とする光学系。
  9. 請求項に記載の光学系を有することを特徴とする光学機器。
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