JP2013205534A - 回折光学素子及びその製造方法並びに回折光学素子を用いた光学系 - Google Patents

回折光学素子及びその製造方法並びに回折光学素子を用いた光学系 Download PDF

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Abstract

【課題】密着2層DOEにおける応力が残存する場合に発生する回折光学素子の中心と周辺での回折効率の場所依存性(むら)を低減できる回折光学素子及びその製造方法並びに回折光学素子を用いた光学系を提供する。
【解決手段】互いに異なる材料により形成される第1の回折格子と第2の回折格子が各々の格子面が接するように積層される回折格子部を有し、第1の回折格子、第2の回折格子は、各々の格子面の下に夫々第1のレンズ側の第1のベース層、第2のレンズ側の第2のベース層を備え、第1の回折格子は、第2の回折格子に対し屈折率が高く分散が低い材料で形成される回折光学素子であって、第1のレンズと第1の回折格子との間に中間層を有する。
【選択図】図1

Description

本発明は、第1の回折格子と第2の回折格子が積層される回折格子部を有する回折光学素子及びその製造方法並びに回折光学素子を用いた光学系に関するものである。
従来、硝材の組み合わせによりレンズ系の色収差を減じる方法に対して、レンズの表面やレンズ系の一部に回折作用を有する回折光学素子を設けることでレンズ系の色収差を減じる方法が知られている。この回折光学素子を用いる方法は、光学系中の屈折面と回折面とでは、ある基準波長の光線に対する偏向方向が逆方向になるという物理現象を利用したものである。また、回折光学素子は、その周期的構造の周期を適宜変化させることで非球面レンズ的な効果を持たせることができるので、色収差以外の諸収差の低減にも効果がある。
一般的に、回折光学素子は、格子面と、その格子面と反対側のベース層から構成されるブレーズ構造より成っている。このようなブレーズ構造の回折光学素子は、特定の一つの次数(以下、「特定次数」又は「設計次数」とも言う)と特定の波長に対して、高い効率で光を回折することができる。
一方、この特定次数の回折効率を、可視波長帯域全域で十分高く得るための回折光学素子構成が知られている(特許文献1)。具体的には、2つの回折格子の格子面を密着配置すると共に、各回折格子を構成する材料に低屈折率高分散材料と高屈折率低分散材料を用い、回折格子の高さを適切に設定する(以下、このような回折光学素子を「密着2層DOE」という)。密着2層DOEにより、特定の次数の回折光に対し、広い波長帯域で高い回折効率を得ることができる。
また、密着2層DOEで、吸収を有する材料で構成された回折効率のベース層を薄くして透過率を高くするために、基板レンズと低屈折率高分散材料の回折格子の間に中間層を形成することが知られている(特許文献2)。
特開2008−241734号公報 特開2009−134223号公報
しかしながら、特許文献1、2には、密着2層DOEにおける格子成形(接合)工程の応力による僅かな屈折率分布によって、回折光学素子の中心と周辺での回折効率の場所依存性(むら)が発生し、光学性能が低下するという問題に対する改善の余地があった。

本発明の目的は、密着2層DOEにおける応力が残存する場合に発生する回折光学素子の中心と周辺での回折効率の場所依存性(むら)を低減できる回折光学素子及びその製造方法並びに回折光学素子を用いた光学系を提供することにある。
上記目的を達成するため、本発明に係る回折光学素子の代表的な構成は、曲面形状の第1のレンズと第2のレンズの間に互いに異なる材料により形成される第1の回折格子と第2の回折格子が各々の格子面が接するように積層される回折格子部を有し、前記第1の回折格子、前記第2の回折格子は、前記各々の格子面の下に夫々前記第1のレンズ側の第1のベース層、前記第2のレンズ側の第2のベース層を備え、前記第1の回折格子は、前記第2の回折格子に対し屈折率が高く分散が低い材料で形成される回折光学素子であって、前記第1のレンズと前記第1の回折格子との間に中間層を有することを特徴とする。
また、上記回折光学素子を用いた光学系も、本発明の他の一側面を構成する。
更に、本発明に係る回折光学素子の製造方法の代表的な構成は、前記第2のレンズ上に前記第2の回折格子を第1の金型を用いて格子成形を行う工程と、前記第2の回折格子と前記第1の金型を離型する工程と、前記第2のレンズの前記第2の回折格子が形成された面に前記第1の回折格子を第2の金型または前記第1のレンズで格子成形を行う工程と、前記第1の回折格子と前記第2の金型または前記第1のレンズを離型する工程と、前記第2のレンズの前記第2の回折格子および前記第1の回折格子が形成された面に中間層を前記第1のレンズを用いて形成する工程と、を有することを特徴とする。
本発明によれば、密着2層DOEにおける応力が残存する場合に発生する回折光学素子の中心と周辺での回折効率の場所依存性(むら)を低減できる。
(a)乃至(h)は本発明の実施形態に係る回折光学素子の製造方法を示す図である。 (a)は第1の実施形態に係る回折光学素子の要部概略図、(b)は第1の実施形態に係る回折光学素子の素子構造を示す模式図である。 第1の実施形態に係る回折光学素子の回折効率のグラフである。 第2の実施形態に係る回折光学素子の素子構造を示す模式図である。 第2の実施形態に係る回折光学素子の回折効率のグラフである。 本発明の実施形態に係る回折光学素子を用いた撮影光学系を示す図である。 比較例の回折光学素子の素子構造を示す模式図である。 (a)乃至(e)は比較例の回折光学素子の製造方法を示す図である。 比較例の回折光学素子の回折効率のグラフである。
《第1の実施形態》
(光学系)
図6に、本発明の実施形態に係る回折光学素子を用いたカメラ等の撮影光学系を示す。同図中、101は撮影レンズで、内部に絞り40と後述する回折格子部10とを有している。41は結像面で、フィルムまたはCCD等の光電変換素子が配置されている。回折格子部10は撮影レンズ101の色収差を補正するが、中心と周辺の回折効率の場所依存性(むら)が低減しているので、像性能の高い高性能な撮影レンズとなっている。図6では、基板レンズとしての第1のレンズ20と第2のレンズ30の貼り合せ面に回折格子部10を設けているが、これに限定されるものではなく、また撮影レンズ内に回折光学素子を単数でなく複数設けても良い。
本実施形態では、カメラの撮影レンズの場合を示したが、これに限定するものではなく、ビデオカメラの撮影レンズ、事務機のイメージスキャナーや、デジタル複写機のリーダーレンズなど広波長域で使用される結像光学系に使用しても良い。
(回折光学素子)
図2(a)は、本発明の第1の実施形態に係る回折光学素子の正面図及び側面図である。
本実施形態に係る回折光学素子は、基板レンズとしての第1のレンズ20、基板レンズとしての第2のレンズ30、回折格子部10から構成される。第1のレンズ20と第2のレンズ30の貼り合せ面(ここでは曲面)に形成される回折格子部10では、互いに異なる材料により形成される第1の回折格子1と第2の回折格子2が各々の格子面が接するように積層される。回折格子部10は、光軸Oを中心とした同心円状の回折格子形状からなり、レンズ作用を有している。
図2(b)は、図2(a)の回折光学素子を図中A−A′断面で切断した断面形状であるが、格子形状を分かりやすくするために、かなりデフォルメされた図となっている。図2(b)において、回折格子部10は、第1の回折格子1と第2の回折格子2の回折面が密着配置(積層)した密着DOEの構成となっている。第1、第2の回折格子は同心円状のブレーズ構造の格子形状からなり、格子ピッチを中心(光軸)から周辺へ向かって徐々に変化させることで、レンズ作用(収斂作用又は発散作用)を得ている。
そして、各回折格子は、全層を通して一つの回折格子部10として作用している。また、第1のレンズ側に第1のベース層11、第2のレンズ側に第2のベース層21を備えるブレーズ構造にすることで、回折格子部10に入射した入射光は特定の回折次数方向に集中して回折する。また、第1の回折格子1のベース層11と基板レンズとしての第1のレンズ20との間に、中間層31を有している。
(高屈折率低分散材料と低屈折率高分散材料)
密着2層DOEにおいて,広い波長帯域で高い回折効率を得るために、第1の回折格子1を形成する材料に高屈折率低分散材料、第2の回折格子2を形成する材料に低屈折率高分散材料を用いる。更に、可視域全域で99%以上の回折効率を得るためには低屈折率高分散材料に部分分散比θgFが通常の材料より小さいリニア分散特性を有する材料を用いることが必要である。このリニア分散特性を得るために、ITO(Indium-Tin Oxide)微粒子を微粒子分散させてベース樹脂材料に混ぜる方法が知られる。
ITOは他の無機酸化物と異なり、電子遷移による屈折率の変化に加え、錫のドーピングや酸素の空孔によりフリーキャリアが発生し屈折率が変化する。この電子遷移とフリーキャリアにより非常に強いリニア分散特性を有する。従って、ITOと同様にフリーキャリアの影響があるSnO2及びATO(アンチモンをドーピングしたSnO2)等も使用することができる。
ITOは透明電極に使用されるなど、透過率が比較的高い材料として知られている。しかしながら、それ以上の高い透過率を要求される光学系にITOを用いる場合には十分とはいえない。このITOの透過率の低下は錫のドーピングに起因しており、強いリニア分散特性を有しかつ透過率が極めて高い材料を得ることは極めて困難である。このため、図2(b)に示すように、密着2層DOE構成の回折光学素子がレンズの境界面に形成されている場合、ITO微粒子を分散した樹脂で構成された第2の回折格子2のベース層21の膜厚がより薄い方が透過率が高くなる。
ここで、ベース層は格子が形成されていない格子の下側の領域であるが、レンズ全域で第2の回折格子2のベース層21の膜厚をより均一にする方が、透過率の素子面内の場所依存性(むら)が小さくなるため、ベース層の膜厚は等しくする必要がある。このため、回折格子2のベース層21の膜厚は薄く、且つレンズ全域に均一に精度高く製造することが重要となる。
(回折光学素子の製造方法)
図1に、本発明の実施形態に係る回折光学素子の製造方法を示す。第1の金型50上に第2の回折格子を構成する紫外線硬化材料22を所要量滴下する(図1(a))。第1の金型50の周辺に設けられた段差部501を第2のレンズ30に押し付けるように加圧しながら、紫外線を照射して紫外線硬化材料22を硬化させ、第2のレンズ上に第2の回折格子2を格子成形する(図1(b)格子接合工程)。第1の金型50の周辺の段差501を利用することによって、第2の回折格子2のベース膜厚21を薄く且つレンズ全域に均一に精度高く製造することが可能である。
紫外線硬化樹脂の硬化の際に生じる重合収縮によって回折面形状が設計値と異なった場合、金型形状を補正することによって設計値に合わせることができる。この工程の際、重合収縮によって応力が生じ、曲率を有する基板レンズの場合、レンズ中心と周辺で応力分布が発生する。その後、基板レンズ30上に硬化した第2の回折格子2を第1の金型50から離型する(図1(c))。この工程によって、硬化によって発生した応力が開放される。その後、第2の回折格子2が形成された基板レンズ30上に第1の回折格子を構成する紫外線硬化材料12を所要量滴下する(図1(d))。
第2の金型51を第2の回折格子2が形成された基板レンズ30に押し付けるように加圧し、紫外線を照射して紫外線硬化材料12を硬化させ、第1の回折格子1を格子成形する(図1(e)格子接合工程)。第2の金型51が紫外線に対して透明な材質の場合は、第2の金型51側または基板ガラス30側から、第2の金型51が紫外線に対して不透明な材質の場合は基板ガラス30側から紫外線を照射する(図では第2の金型51側からの場合を示している)。図1(b)と同様に曲率を有する基板レンズの場合、紫外線硬化樹脂の硬化の際に生じる重合収縮によって中心と周辺で応力分布が発生する。
その後、第2の回折格子2が形成された基板レンズ30上に硬化した第1の回折格子1を第2の金型51から離型する(図1(f))。図1(c)と同様に、この離型の工程によって硬化によって発生した応力が開放される。その後、第1の回折格子1および第2の回折格子2が形成された第2のレンズ30上に中間層31を構成する紫外線硬化材料32を所要量滴下する(図1(g))。第1のレンズ20を用いてを基板レンズ30に押し付けるように加圧し、紫外線を照射して紫外線硬化材料32を硬化させ、中間層31として接合する(図1(h))。この製造方法によって本実施形態の回折光学素子を製造することができる。
回折光学素子の回折効率は回折格子の屈折率に敏感なことがよく知られており、特に99%以上の高い回折効率を得るには屈折率変化を極めて小さくすることが必要である。応力によって屈折率が変化するため、製造上発生する応力分布を開放しないと屈折率分布が発生する。特に、微粒子を分散した材料は応力によっても内部に分散している微粒子分散量は一定なので、応力による屈折率の変化量が大きい。
このため、第1の回折格子および第2の回折格子に応力分布が残存していると屈折率分布が発生し、中心と周辺の回折効率の場所依存性(むら)が発生する。この回折光学素子を撮影光学系に適用した場合には、像性能が低下してしまう。本実施形態の回折光学素子は、第1の回折格子および第2の回折格子の応力を開放しているため、中心と周辺の回折効率の場所依存性(むら)が低減し、撮影光学系に適用した場合に像性能を向上させることができる。中間層には応力分布が残存して屈折率分布が発生しているが、中間層と第1の回折格子の境界面は略曲面または極微小の鋸形状の周期形状であるため、回折効率への影響は小さい。
以上、説明したように、密着2層DOEにおける格子成形工程の応力による屈折率分布によって回折光学素子の中心と周辺の回折効率の場所依存性(むら)が発生し、光学性能が低下するという課題を解決できる。本実施形態によれば、安定した製造ができ、回折光学素子の中心と周辺の回折効率の場所依存性(むら)を低減し、高い回折効率を可能にする回折光学素子およびそれを有する光学系、製造方法を提供することができる。
更に、以下の条件を満足することによって、回折光学素子の中心と周辺の回折効率の場所依存性(むら)を低減し、高い回折効率を可能にすることが見出された。
即ち、中間層、第1の回折格子を構成する材料、第2の回折格子を構成する材料のd線の波長λdにおける消衰係数ki、k1、k2、および第1の回折格子のベース膜厚t1、第2の回折格子のベース膜厚t2とするとき、以下の条件を満足するようにする。
ki < k2 (1)
k1 < k2 (2)
t1 > t2 (3)
中間層を形成しないと、後述する比較例に示すように、第1の回折格子の応力分布が残存してしまうため、中心と周辺の回折効率の場所依存性(むら)を低減することが困難となる。ここで、(1)式、(2)式を満足しないと回折光学素子の吸収が増大し、透過率が低下してしまう。また、(3)式を満足しないと、製造上、中間層と第1の回折格子のベース層との界面に発生する鋸形状の周期構造の格子高さが増大してしまい、高い回折効率が得られる回折光学素子を安定に製造することが困難になる。
また、中間層31と第1の回折格子1のベース層11との界面には、第1の回折格子1および第2の回折格子2の格子周期と同じ周期の鋸形状の周期構造が形成されているが、以下の条件を満足するようにする。即ち、鋸形状の最大高さをdiとし、中間層と第1の回折格子とのd線の波長λdにおける屈折率差△ndとするとき、以下のようにする。
|di×△nd|/λd < 0.005 (4)
(4)式を満足しないと、中間層31と第1の回折格子1のベース層11との界面の鋸形状の周期構造によって回折効率が低減してしまう。
また、中間層31の膜厚をti、第1の回折格子1のベース層11の膜厚をt1、第2の回折格子2のベース層21の膜厚をt2とするとき、以下の条件を満足するようにする。
20μm < ti < 60μm (5)
20μm < t1 < 60μm (6)
1.0μm < t2 < 5.0μm (7)
(5)式、(6)式の下限を満足しないと、製造上、中間層と第1の回折格子のベース層との界面に発生する鋸形状の周期構造の格子高さが増大してしまい、高い回折効率が得られる回折光学素子を安定に製造することが困難になる。(5)式、(6)式の上限を満足しないと、樹脂材料の耐環境性能が劣化してしまう。(7)式の下限を満足しないと第2の回折格子の製造が困難になり、(7)式の上限を満足しないと回折光学素子の吸収が増大し、透過率が低下してしまう。
また、中間層31、第1の回折格子1を構成する材料、第2の回折格子2を構成する材料のd線における消衰係数ki、k1、k2が、以下の条件を満足するようにする。
0 < ki < 1.0×10−6 (8)
0 < k1 < 1.0×10−6 (9)
1.0×10−4< k2 < 1.0×10−3 (10)
(8)式、(9)式を満足しないと、回折光学素子の吸収が増大し、透過率が低下してしまう。そして、(10)式を満足しないと、リニア分散特性を得る材料の選択が困難になる。また、中間層の材料と第1の回折格子の材料のd線の波長λdにおける屈折率差△ndが0.2以下でないと、中間層と第1の回折格子の界面で反射が発生し、ゴーストが発生してしまうので好ましくない。また、中間層31の材料と第1の回折格子1の材料のヤング率Ei、E1が、以下の条件を満足するようにする。
0.5 < Ei/E1 < 2.0 (11)
(11)式を満足しないと中間層の材料と第1の回折格子の材料の機械的特性が大きく異なるために、耐環境性能の特性が低下してしまう。また、中間層31の材料と第1の回折格子1の材料の線膨張係数αi、α1が、以下の条件を満足するようにする。
0.5 < αi/α1 < 2.0 (12)
(12)式を満足しないと、中間層の材料と第1の回折格子の材料の機械的特性が大きく異なるために、耐環境性能の特性が低下してしまう。
更に、回折光学素子の曲率半径Rおよび直径Φが以下の条件を満足するようにする。
2.0mm < R−√{R−(Φ/2)} < 15.0mm (13)
(13)式は、曲面形状の回折光学素子の中心と周辺の光軸方向の距離を示す式である。本実施形態の回折光学素子は、曲面形状の(13)式の下限を満足しないと、屈折力が十分得られない。また、(13)式の上限を満足しないと、金型を用いた格子成形を行う回折光学素子の製造が困難になる。
以下に、本発明の具体的な実施例を示す。
(実施例1)
回折光学素子の具体的な構成として、第1の回折格子1の材料は、アクリル系紫外線硬化樹脂にZrO2微粒子を20vol%混合させた紫外線硬化樹脂を用いた。第1の回折格子1は、nd=1.6186、νd=44.3、θgF=0.569、kd=5.69×10−8である。また、第2の回折格子2の材料としてアクリル系紫外線硬化樹脂にITO微粒子を16vol%混合させた紫外線硬化樹脂を用いた。
第2の回折格子2は、nd=1.5655、νd=19.2、θgF=0.425、kd=7.79×10−4である。また、中間層31の材料として第1の回折格子1と同一のアクリル系紫外線硬化樹脂にZrO2微粒子を20vol%混合させた紫外線硬化樹脂を用いた。中間層31と第1の回折格子1の境界面は、略曲面の連続形状で、格子高さは11.11μm、設計次数は+1次である。なお、部分分散比θgFは以下の式で定義される。
θgF=(ng−nF)/(nF−nC)
本実施例の回折光学素子は、図1の製造方法で製造され、ベース層の膜厚は第1の回折格子1、第2の回折格子2でそれぞれ40μm、2.0μm、中間層の膜厚は40μmである。
図3に、この回折光学素子の中心部と周辺部の設計次数(+1次)での回折効率の特性を示す。η1は周辺部、η2は中心部の回折効率、入射角度は面法線方向の場合である。周辺の回折効率η1が最適になるように設計されており、可視全域(波長400nm〜700nm)で99.9%以上得られている。なお、回折効率は全透過光束の光量に対する各次数の回折光の光量の割合と定義する。
中心に関しては、図1の製造方法で製造しているため、第1の回折格子1および第2の回折格子2を構成する材料の周辺に対する中心の屈折率の変化が0.0015と小さい。このため、中心の回折効率η2も周辺に対しての低減が小さく、可視全域で99.5%以上得られている。この回折光学素子を撮影光学系に適用した場合に像性能の高い撮影光学系を得ることができる。以上、本実施例の回折光学素子は、中心と周辺の回折効率の場所依存性を低減し、高い回折効率を可能にしている。
(比較例)
本実施例の効果をより明らかにするために、以下、比較例を示す。図7は、比較例の回折光学素子の断面形状である。図7において、回折光学素子11が実施例1と異なる点は、第1の回折格子1のベース層11と第1のレンズ20との間に中間層31が存在しない点である。
図8に比較例の製造方法を示す。図8(a)〜図8(c)は図1(a)〜図1(c)と同様に、第2の回折格子2の格子成形と第1の金型50の離型を行う。その後、図8(d)〜図8(e)で、中間層31を製造する工程を行わずに、第1の回折格子1の硬化、接合を行うことで回折光学素子を製造することができる。この比較例は、実施例1と比較して簡易な工程で製造することができるものである。
しかしながら、第1の回折格子1について、実施例1とは異なり、硬化接合後に離型工程を行わないため、紫外線硬化樹脂の硬化の際に生じる重合収縮によって中心と周辺で応力分布が残存したままである。この応力分布により屈折率分布が発生し、中心と周辺の回折効率の場所依存性(むら)が発生してしまう。
回折光学素子の具体的な構成として、第1の回折格子および第2の回折格子、格子高さ、ベース層の膜厚は実施例1と同じである。図9に比較例の回折光学素子の中心部と周辺部の設計次数(+1次)での回折効率の特性を示す。η1は周辺部、η2は中心部の回折効率、入射角度は面法線方向の場合である。周辺の回折効率η1が最適になるように設計されており、可視全域で99.9%以上得られている。
しかしながら、中心に関しては、図8の製造方法で製造しているため、第1の回折格子1を構成する材料の周辺に対する中心の屈折率の変化が0.0050と大きい。このため、中心の回折効率η2が周辺に対して大幅に低減している。この回折光学素子を撮影光学系に適用した場合に像性能が低下してしまう。
(実施例2)
実施例2は、中間層31と第1の回折格子1の境界面形状が実施例1と異なった場合の実施例である。回折光学素子の具体的な構成は、図4に示すように、中間層31と第1の回折格子1の境界面が、第1の回折格子1および第2の回折格子2の格子ピッチと略等しい周期の鋸形状の周期続形状3になっている。第1の回折格子1、第2の回折格子2、中間層31の材料、格子高さは、実施例1と同じである。また、鋸形状の周期続形状3の高さは0.15μmである。
本実施例の回折光学素子は、図1と同様の製造方法で製造されている。ただし、第2の回折格子の格子成形と金型の離型を行う際、硬化収縮によって鋸形状の周期続形状3が生じている。第1の回折格子1、第2の回折格子2のベース層11、21の膜厚は、それぞれ40μm、2.0μmであり、中間層31の膜厚は40μmである。
図5に、この回折光学素子の中心部と周辺部の設計次数(+1次)での回折効率の特性を示す。η1は周辺部、η2は中心部の回折効率、入射角度は面法線方向の場合である。周辺の回折効率η1が最適になるように設計されており、可視全域で99.9%以上得られている。中心に関しては、図1の製造方法で製造しているため、第1の回折格子1および第1の回折格子2を構成する材料の周辺に対する中心の屈折率の変化が0.0015と小さい。
なお、中間層31を構成する材料は内部応力が残存しているため、周辺に対する中心の屈折率の変化が0.0050と大きいが、第1の回折格子と第2の回折格子の屈折率差よりも小さく、回折効率への影響が少ない。これは、鋸形状の周期続形状3の高さが第1および第2の回折格子の格子高さよりも小さいためである。
このため、中心の回折効率η2も周辺に対しての低減が小さく、可視全域で99.4%以上得られている。この回折光学素子を撮影光学系に適用した場合には、像性能の高い撮影光学系を得ることができる。
なお、この鋸形状の周期形状は量産製造の際に個体によってばらつくが、中間層31と第1の回折格子1の屈折率差が小さいため、回折効率への影響が少なく、この結果、安定的に量産製造することができる。
(実施例3)
実施例3は、実施例1と中間層31の材料が異なった場合の実施例である。回折光学素子の具体的な構成は、実施例1と同様、図2(b)に示すように、中間層31と第1の回折格子1の境界面は略曲面の連続形状になっている。第1の回折格子1、第2の回折格子2の材料、格子高さは実施例1と同じである。本実施例では、中間層31の材料としてアクリル系紫外線硬化樹脂(nd=1.5242、νd=51.6、θgF=0.563、kd=3.69×10−7)を用いている。
本実施例の回折光学素子は実施例1と同様、図1の製造方法で製造されている。ベース層の膜厚は、実施例1と同様であり、中間層31の材料が実施例1と異なるだけなので、中間層31が回折効率に影響は与えることがない。このため、本実施例の回折光学素子の中心部と周辺部の設計次数(+1次)での回折効率の特性は実施例1と同じく図3のようになり、中心と周辺の回折効率の場所依存性(むら)を低減している。この回折光学素子を撮影光学系に適用した場合には、像性能の高い撮影光学系を得ることができる。このように、中間層の材料に関しては、適宜選択することが可能である。
(変形例)
なお、本発明は上述した回折格子の材料、製造方法に限定されるものではなく、適宜変更がされても良い。例えば、図1(d)乃至(f)において、第2の金型51の替わりに第1のレンズ20を用いることができる。
1・・第1の回折格子、2・・第2の回折格子、10・・回折格子部、11・・第1のベース層、20・・第1のレンズ、21・・第2のベース層、30・・第2のレンズ、31・・中間層、101・・撮影レンズ

Claims (14)

  1. 曲面形状の第1のレンズと第2のレンズの間に互いに異なる材料により形成される第1の回折格子と第2の回折格子が各々の格子面が接するように積層される回折格子部を有し、
    前記第1の回折格子、前記第2の回折格子は、前記各々の格子面の下に夫々前記第1のレンズ側の第1のベース層、前記第2のレンズ側の第2のベース層を備え、
    前記第1の回折格子は、前記第2の回折格子に対し屈折率が高く分散が低い材料で形成される回折光学素子であって、
    前記第1のレンズと前記第1の回折格子との間に中間層を有することを特徴とする回折光学素子。
  2. 前記中間層、前記第1の回折格子、前記第2の回折格子を構成する材料の各々d線の波長λdにおける消衰係数をki、k1、k2とし、前記第1のベース層の膜厚をt1、前記第2のベース層の膜厚をt2とするとき、以下の条件を満足することを特徴とする請求項1に記載の回折光学素子
    ki < k2
    k1 < k2
    t1 > t2
  3. 前記第1の回折格子の材料が微粒子を分散した紫外線硬化樹脂であり、前記第2の回折格子の材料がITO微粒子を分散した紫外線硬化樹脂であることを特徴とする請求項1または2に記載の回折光学素子。
  4. 前記中間層の材料と前記第1の回折格子の材料が同一であることを特徴とする請求項1乃至3のいずれか1項に記載の回折光学素子。
  5. 前記第1の回折格子の材料がZrO2微粒子を分散した紫外線硬化樹脂であることを特徴とする請求項1乃至4のいずれか1項に記載の回折光学素子。
  6. 前記中間層と前記第1のベース層との界面に、前記第1の回折格子および前記第2の回折格子の格子周期と同じ周期の鋸形状の周期構造が形成されることを特徴とする請求項1乃至5のいずれか1項に記載の回折光学素子。
  7. 前記界面における鋸形状の最大高さをdiとし、前記中間層と前記第1の回折格子のd線の波長λdにおける屈折率差を△ndとするとき、以下の条件を満足することを特徴とする請求項6に記載の回折光学素子。
    |di×△nd|/λd < 0.005
  8. 前記中間層、前記第1の回折格子のヤング率Ei、E1が、以下の条件を満足することを特徴とする請求項1乃至7のいずれか1項に記載の回折光学素子。
    0.5 < Ei/E1 < 2.0
  9. 前記中間層、前記第1の回折格子の線膨張係数αi、α1が、以下の条件を満足することを特徴とする請求項1乃至8のいずれか1項に記載の回折光学素子。
    0.5 < αi/α1 < 2.0
  10. 前記回折光学素子の曲率半径をR、直径をΦとするとき、以下の条件を満足することを特徴とする請求項1乃至9のいずれか1項に記載の回折光学素子。
    2.0mm < R−√{R−(Φ/2)} < 15.0mm
  11. 前記中間層の膜厚をtiとするとき、以下の条件を満足することを特徴とする請求項2乃至10のいずれか1項に記載の回折光学素子。
    20μm < ti < 60μm
    20μm < t1 < 60μm
    1.0μm < t2 < 5.0μm
  12. 前記消衰係数であるki、k1、k2が、以下の条件を満足することを特徴とする請求項2乃至11のいずれか1項に記載の回折光学素子。
    0 < ki < 1.0×10−6
    0 < k1 < 1.0×10−6
    1.0×10−4 < k2 < 1.0×10−3
  13. 請求項1乃至12のいずれか1項に記載の回折光学素子を用いることを特徴とする光学系。
  14. 請求項1乃至12のいずれか1項に記載の回折光学素子の製造方法であって、
    前記第2のレンズ上に前記第2の回折格子を第1の金型を用いて格子成形を行う工程と、
    前記第2の回折格子と前記第1の金型を離型する工程と、
    前記第2のレンズの前記第2の回折格子が形成された面に前記第1の回折格子を第2の金型または前記第1のレンズで格子成形を行う工程と、
    前記第1の回折格子と前記第2の金型または前記第1のレンズを離型する工程と、
    前記第2のレンズの前記第2の回折格子および前記第1の回折格子が形成された面に中間層を前記第1のレンズを用いて形成する工程と、
    を有することを特徴とする回折光学素子の製造方法。
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